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特集Ⅰ TWInsプロジェクト紹介 中心研究者 岡野光夫 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 所長 教授 研究分担者 清水達也 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 教授 紀ノ岡正博 大阪大学大学院研究科 教授 松浦勝久 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 特任講師 現准教授 組織ファクト

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Academic year: 2021

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はじめに

 平成26年3月末をもって、内閣府最先端研究開 発支援(FIRST)プログラムが終了した。FIRST プログラムとは、総合科学技術会議により、日本 全国から応募のあった研究者の中からトップの 30人(中心研究者)を選び出し、1人の中心研究 者に約15億円から60億円のプロジェクトを任せ るという非常にユニークな制度であり、新たな知 を創造する基礎研究から、実用化を見すえた研究 開発まで、さまざまな分野や段階を対象とし、お よそ5年で世界のトップを目指す先端的な研究開 発支援プログラムである。  岡野光夫先生を研究代表者として進められた FIRSTプログラムは、先端融合イノベーション 創出拠点プログラムをはじめとした細胞シート工 学の持続的なシーズ開発と臨床応用への知見を土 台に、現在は少数の患者にのみ対応可能である細 胞シート再生医療を、大多数の患者に届くように するために必要となる治療法開発と産業化を実現 する上でkeyとなる次の3つの視点で技術開発に 取り組んだ。一つ目は、現在の細胞加工施設での 再生医療用製品の生産における低生産性、高コス トを解決する全自動生産システム開発、二つ目は、 自家生体組織由来細胞利用のみでは困難である、 細胞数と細胞種に関する課題を解決するiPS細胞 大量培養技術、そして三つ目は、現在の1∼3層 の積層化組織移植では十分でない組織、臓器への 適応拡大を可能にする、血管付与による高機能3 次元組織構築技術、である。本プログラムでは、 図 1に示すように、全自動生産システム開発を 「組織ファクトリーの開発」として、iPS細胞大 量培養技術および血管網付与による3次元組織構 築技術を「臓器創製に向けた基盤技術の確立」と して行い、各研究テーマは、従来の縦型の枠組み に捉われることなく、知識・技術を結集する横断 型の研究実施体制において進められた。  本稿では、FIRSTプログラムの成果の概要と 今後の展開について概説する。

【FIRST】

最先端研究開発支援プログラム

再生医療産業化に向けたシステムインテグレーション

∼臓器ファクトリーの創生∼

大阪大学 大学院工学研究科 生命先端工学専攻 特任研究員

水谷 学

Manabu mizutani

東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 准教授

松浦 勝久

Katsuhisa Matsuura

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組織ファクトリーの

開発における成果の概要

 本研究開発では、従来の自動培養装置のような 工程の一部のみの自動化ではなく、技術的熟練を 要する組織からの細胞単離や、細胞シート作製お よび積層操作について、安全かつ安定した自動処 理技術を開発し、患者より採取した組織から移植 用の培養組織までの全工程を一貫して自動化した。 これにより、高品質かつ安全な再生医療製品を、 迅速かつ安定して供給できる世界に類のない生産 システムを確立した。並行して、工程管理を可能 とするモニタリングシステムの導入により品質の 向上を図りつつ、各装置を無菌的に接続できるイ ンターフェースを開発し、多検体かつ多種の細胞 に対応できる柔軟性を有し、再生医療製品を安価 に製造できる革新システムを構築した。これまでに 得られたヒト臨床技術をベースに、自動化による 高品質かつ安価な製造法を具現化した革新的製造 技術集合体(組織ファクトリー)を構築した(図2、 h t t p s : / / w w w . y o u t u b e . c o m / w a t c h ? v = VFzIeObs_aM, https://www.youtube.com/ watch?v=ultxxibGho8)。具体的には、アイソレー ター技術を採用し、細胞、組織、培養器材を無菌 図 1 実施体制図 組織ファクトリーの開発 支援機関/Support Institutions ① 細胞単離初代 培養システム開発 Development of cell isolation & primary culture system

単離・初代培養

Cell isolation & primary culture

東京女子医科大学

Tokyo Women’s Medical Univ.

科学技術振興機構

Japan Science & Technology

② 細胞大量継大 培養システム開発 Development of cell expansion system ③ 細胞シート積層化 システム開発 Development of cell sheet layering system

インターフェース 開発

Development of interface system for cell processing

インターフェース /Interface 中心研究者 岡野光夫 (東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 所長・教授) 研究分担者 清水達也 (東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 教授) 紀ノ岡正博 (大阪大学大学院研究科 教授) 松浦勝久 (東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 特任講師(現准教授)) 大量培養 Expansion culrure 積層化 Laering of cell sheets 自動化細胞 無菌製造技術確立 Construction of automated cell aseptic

processing systems 臓器創製に向けた基盤技術の確立 ① 肝細胞大量 培養技術開発 Development of large scale stem cell expansion methods 大量培養 Expansion culture of ES/iPS cells ② 細胞選別 技術の開発 Development of cell fractionation methods ③ 血管網付与 技術の開発 Development of fabricating vascularized 3D tissue methods ④ モニタリング 技術の開発 Development of monitoring technology モニタリング /Monitoring 細胞選別 Differentiation & separation 血管付与 Vassularization into 3D tissues 臓器創製 基礎技術確立 Establishment of basal technology for

organ fabrication

研究機関 /Academic Institutuions 企業 /Companies

大阪大学

Osaka Univ.

物質材料研究機構

Natl. Inst. for Material Sciencee Asahi Kasei旭化成 セルシードCellSeed Terumoテルモ

早稲田大学

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的に封じ込め、生産における一連の工程をモ ジュールで自由に組み合わせることにより、柔軟 な生産工程システムfMP(フレキシブル・モジュ ラー・プラットフォームーム)を構築した。モ ジュールの接続口(インターフェース)を標準化 することで目的とする生産工程に応じて柔軟な組 み合わせが可能であり、医薬品製造に適応した安 全・安心・安価を実現させることができると考え ている(1, 2)  平成24年度には、組織片から細胞を単離、大 量培養、細胞シート作製および積層までの操作を、 一貫して無菌的に自動処理する臨床システムを試 作し、ブタ組織を用いた試験製造を実施し、心筋 梗塞モデル動物を作製し、非臨床試験を開始した。 平成25年度(最終年度)には、工程操作に必要 な「道具」を自動供給できる補助デバイス(搬入 ポッド、細胞シート転写用ゲル作製モジュール、 等)を試作し、全工程にて人的培養操作を一切行 わない完全自動化の検討を実施した。同時に、各 工程モジュールの制御システムを連携させ、生産 管理できる統合制御システムを設計した。本研究 開発では、統合制御プログラムおよび統合監視シ ステムを試作し、運用を開始した。本開発の最終 目標である、計50層の積層細胞シートの自動製 造についても、10層×5枚の検討にて達成するこ とができた。  組織ファクトリーの概念fMPは、本プロジェ クトで創成され、平成24年8月に国内特許(第 5051677号)を取得できた。国際特許の予備審査 でも産業への貢献、新規性、進歩性ありとされて おり、平成26年2月には韓国での登録を達成した。 今後我々が主導し、世界標準としていくことも可 能であると考える。さらに、本研究開発では、高 価な観測機器が複数の検体間で清浄度に影響を及 ぼさない共有可能な、観測機能付きインキュベー ターモジュール等の試作を行い、より低コストの 運用手順構築に向け検討を進めた。再生医療製品 の製造加工業の事業シミュレーション(ライフサ イクルコスト試算)を実施し、工程自動化の導入 効果を評価した。 図 2 モジュール方式を採用した細胞生産システム T-Factory 細胞播種・ 培地交換モジュール インキュベータ モジュール 大量継代 培養モジュール 細胞シート 積層化モジュール 搬送モジュール 原料・資材 搬入モジュール 細胞単離・初代賠償 モジュール

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臓器ファクトリー:

臓器創生に向けた

基盤技術開発における成果の概要

 再生医療を進める上で、原材料となる細胞ソー スは解決すべき課題である。現在の細胞シート再 生医療は、自家組織由来細胞を用いて行われてい るが、対象となる組織・臓器によっては、組織か らの細胞回収が困難であり、また必要となる細胞 数の点からも、適応拡大のハードルとなる。その 意味で、無限増殖能を有し、かつ多能性を有する ヒトiPS細胞の大量培養技術は、この課題を解決 する基盤となる。本研究開発では、ヒトiPS細胞 の大量培養を可能にする低シェアストレス、高効 率撹拌の3次元浮遊撹拌懸濁培養装置を開発した ( h t t p s : / / w w w . y o u t u b e . c o m / w a t c h ? v = g7lyTsxbt2U)。これによりヒトiPS細胞の高密 度培養が可能となり、従来の培養手法に比して、 コストは約3分の1、作業時間は約10分の1に削 減され(3)、さらに30mL、100mL、1Lの各培養槽 の開発により、1×109個程度までのヒトiPS細胞 の未分化増幅が可能となった。この30mLおよび 100mLの培養槽は、FIRSTプログラム終了後の 2014年4月より市販が開始された。また本培養手 法を、ヒトiPS細胞の心筋分化誘導に応用すると、 100mLの培養槽において1×108個を超える心筋 細胞が約2週間で取得可能となり、さらに温度応 答性培養皿への播種によりヒト心筋シートの作製 が可能となった(4)  血管網付与技術開発では、生体外で生体内皮下 組織と同様の血管床を作製し自動還流培養システ ムによる安定した組織培養を実現、さらにその血 管床上へ血管構成細胞を含む心筋シートを繰り返 し積層することで生体外での毛細血管網の付与と スケールアップを実現した。血管床として 1)移 植時に再吻合可能な径の動静脈を有した生体由来 組織と、2)生体外で微細加工技術により人工的 に作製したマイクロ流路付コラーゲンゲルを用い た二つの手法を並行して開発した。生体由来血管 床・人工血管床いずれを用いた方法でも生体外にお ける毛細血管の形成に成功し、ラット心筋シートの 繰り返し積層を達成する手順を開発した(https:// www.youtube.com/watch?v = TcBXek3b6EQ)。 生体外にて還流可能な血管網付の三次元組織を構 築できる技術としては世界初であり、その成果は Natureの姉妹紙(Nature Communications(5) よびScientific Reports(6))に掲載され、平成25 年7月には国内特許(第5322332号および5322333 号)を取得した。一方で、生体外において最大 20層までの細胞シート積層化には実現したが、 更なる積層化組織構築の実現に必要な課題も明ら かとなった。すなわち、血液代替の培地成分の改 善や、酸素運搬体の開発、およびiPS細胞より血 管などを構成する他の細胞源の獲得など、多くの 課題の解決が必要と考えられる。

今後の展開について

 平成26年3月末をもってFIRSTプログラムは 終了したが、現在下記3つのプロジェクトが、 FIRSTの後継として進行中である。本FIRSTプ ロジェクトの分担研究者が各後継プロジェクトに おいて中心的役割を担い、相互に連携する体制を 維持しつつ、FIRSTの最終的な目標である再生 医療の世界普及に向け、研究開発を行っている (図 3)。  新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) の再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事

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業「再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工シ ステムの開発」(サブプロジェクトリーダー:大 阪大 紀ノ岡正博)では、FIRSTにおける低コス トかつ安定した品質で採取組織から最終製品まで 一貫製造可能な生産システムの設計・開発を踏ま え、GCTP(Good Gene, Cellular, and Tissue-based Products Manufacturing Practice)に対応 した品質管理と無菌環境維持の達成、5年後に必 要な細胞工場の要求仕様・機能仕様・設計仕様作 成の手順化に向けて、包括的な技術開発の体制構 築を推進するとともに、多くの公的機関と連携を 行うことで、iPS細胞を利用する種々の事業形態 を想定し、経済性評価や標準化策定までを含め、 産業化に必要な要素の検討を実施している。  日本科学技術振興機構(JST)再生医療実現拠 点ネットワークプログラムにおいては、技術開発 個別課題「再生医療用製品の大量生産に向けた iPS細胞用培養装置開発」(研究代表者:東京女 子医大 松浦勝久)において、FIRSTで開発し たヒトiPS細胞用培養容器の再生医療での応用を 目指し、京都大学CiRAを含め多くの公的機関と 連携しつつ臨床用iPS細胞株および試薬等での培 養実証およびスケールアップ培養槽開発を行い、 また安定・安全かつ安価な再生医療用細胞供給に 図 3 FIRST プログラム後の展開 再生治療開発と産業化 再生治療開発と産業化 再生治療開発と産業化 再生治療開発と産業化 再生治療開発と産業化 全自動化生産 高安定性・低コスト・ 高波及性 →中核製造拠点での  製造同種細胞 →製品の大量生産 自己細胞 ファクトリー生産 臨床応用の加速化・普及・産業化 再生医療社会の 創出 完全臓器による 根本治療 国際連携における 技術移転の促進 多品種対応 低コスト ヒト iPS 細胞の大量培養 難病・障害の多数の患者を治す 組織ファクトリー 全自動製造システム 設計・製造の完成 血管網付 三次元 組織構築技術 産学連携研究開発拠点 持続的なシーズ開発 世界初のヒト臨床開始 2D 組織移植 手作業生産 低安定性・高コスト 難病・障害の多数の患者を治す 難病・障害の多数の患者を治す 再生医療の 世界普及 (医療機関単位の製造) CSTEC FIRST FIRST 40 兆円 市場の創出 角膜 心筋 軟骨 歯周 ヒト iPS 細胞の大量培養 ヒト iPS 細胞の大量培養 3D 組織・部分臓器移植 更なる適応拡大・ 根本治療へ FIRST 根本治療へ

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向け、培地自動交換システム、透析技術を用いた 培地再利用・培養環境維持システム、培養環境制 御モニタリング技術の開発を行っている。  新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) の立体造形による機能的な生体組織製造技術の開 発事業「細胞を用いた機能的な立体臓器作製技術 の研究開発」(研究開発推進責任者:東京女子医 大 清水達也)では、FIRSTにおける生体外血 管床上での3次元心筋組織開発の実績を基に、新 たに構築する生体外血管床にヒトiPS細胞由来心 筋シートを段階的に積層化、さらに管状化し、バ イオリアクターを用いて灌流培養することで毛細 血管網を有したヒトに移植可能な立体臓器を世界 に先がけて作製することを目標としている。  絶え間ないback and forthが可能な医学と工学 を融合させた産学連携研究開発拠点における持続 的なシーズ開発を基盤に、上記後継プログラムの 結実により、FIRSTプログラムの成果が、再生 医療の世界普及を通して、障害や難病に苦しむ多 くの方々の福音となるよう、今後も日夜研究開発 に励んでまいりたい。 参考文献 (1) 松浦勝久,水谷学.最終年を迎えるFIRSTの進捗と今後 の展望.未来医学.2013;No.27:44-54. (2) 水谷学,清水達也,岡野光夫.第12章 再生医療の臨床応 用,再生医療・細胞培養の開発と市場.シーエムシー出版, pp135-149(2013). (3) 松浦勝久.多能性幹細胞の3次元大量培養システム 生物 工学会誌 92(9):483-486

(4) Matsuura et al. Creation of human cardiac cell sheets using pluripotent stem cells,

. 2012;425(2):321-327

(5) Sekine et al. In vitro fabrication of functional three-dimensional tissues with perfusable blood vessels.

. 2013;4:1393.

(6) Sakaguchi et al. In vitro engineering of vascularized tissue surrogates. . in press.

参照

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