ソース・モニタリングの実験心理学的研究 −実際の動作とイメージとの混同− [ PDF
4
0
0
全文
(2) 学習条件では,行為がどのくらい面白かったかを評定するよう教示. 行為とあまり行わない行為とではほとんど違いがなくなってしま. する.被験者はそれぞれの行為文について動作・イメージを行った. い,エラーに差が見られなかったのだろう.実験環境を日常生活場. 後,その行為が面白かった程度を「とても面白かった」から「まっ. 面により近づけることで,今回とは異なる結果が得られると予想さ. たく面白くなかった」までの 5 段階で評定する.. れる.今後実験環境を工夫し,さらに検討する必要がある.. 第2セッション:2日後にソース・モニタリングのテストを行う.. 第 1 実験では,動作・イメージは 1 回しか行わなかった.しか. テスト用紙には第1 セッションで呈示された行為文 40 文がランダ. しイメージ→動作のエラーはイメージを何度も繰り返すことで起. ムに並んでおり,行為文の横には「動作」 ・ 「イメージ」と記されて. こりうるので,第 2 実験では動作・イメージをそれぞれ繰り返し. いる.被験者はそれぞれの行為文について,実 際に動作を行ったの. 行って得られるエラーを分析する.またテストを直後と 1 週間後. かイメージしたのかを判断し, 「動作」 ・ 「イメージ」のいずれかに. に設定し,時間経過によるエラーの変化を分析する。. 丸をつける. 第 2 実験. 【結果と考察】 結果を Fig. 1に示す.テストで得られたエラーを2タイプ(動 作→イメージ/イメージ→動作)に分類し,これを被験者内要因と. 【目的】 動作とイメージをそれぞれ繰り返し行うこと,テストを行為文 呈示直後とその1週間後の 2 回行うこと,また選択肢を 3 つにす. して分散分析を行った.. ることによって,ソース・モニタリングのエラーがどう影響される のかを検討する.. 0.300. 【方法】. よく行う行為 あまり行わない行為 平 0.200 均 エ ラ ー 0.100 率. 被験者:九州大学の大学生 意図学習. 20 名. 材料:第 1 実験で用いた材料に加え,16 品の物品,32 文の行為文. 偶発学習. (よく行う行為 16 文,あまり行わない行為 16 文)を用いる(予 備調査より) .第 1 実験ではよく行う行為とあまり行わない行為に おいてエラーに差が見られなかったため,第 2 実験ではこれらを. 0.000 動作→イメージ. 分けずに分析を行う.第 1 セッションでは一人の被験者に対して. イメージ→動作 動作→イメージ イメージ→動作 エラーのタイプ. 56 品の物品,56 文の行為文を呈示するが,その行為文のうち 1 回. Fig. 1 普段よく行う行為とあまり行わない行為における ソース・モニタリングのエラー. 呈示 28 文, 3 回呈示 28 文 (それぞれ実際に動作を行う行為 14 文, イメージする行為 14 文)であるため,計 112 文の行為文を呈示す. その結果,動作→イメージのほうがイメージ→動作よりもエラー が多かった〔F(1,62)=3.150,p< .10〕 .動作の場合,1 回しか行 っておらず,また時間も経過しているため知覚的属性がより不鮮明. ることとなる.それぞれの行為文がすべての条件に均等に配分され るよう,被験者間でローテーションを組んでいる. ソース・モニタリングのテストでは 72 文の行為文が示される.. になりやすく,エラーが多かったのだと思われる.一方イメージの. その行為文のうち第 1 セッションで呈示された行為文が 40 文,物. 場合,1 回しか行っていないことで知覚的属性が鮮明にならず,エ. 品は呈示されたが行為文が異なるものが 16 文,第 1 セッションで. ラーが少なかったのだと思われる.. は呈示されなかった行為文(ディストラクタ)が 16 文(よく行う. 学習条件では,偶発学習のほうが意図学習よりもエラーが多かった. 行為 8 品・8 文,あまり行わない行為 8 品・8 文)である.ディス. 〔F(1,62)=4.676,p<.05〕.偶発学習では覚えようと意識していないた. トラクタはテストでのみ用いる.テストの形式は, 「動作」 ・ 「イメ. め,動作やイメージに注意が向かず知覚的属性は不鮮明である.そのた. ージ」・ 「見てない」のいずれかを選択する 3 択である.. めエラーがより多かったのであろう.意図学習,偶発学習それぞれにお. 手続き:第 1 セッション:行為文を 1 文 10 秒間(インターバル 2. いては,エラーのタイプによってほとんど差はみられなかった.. 秒)でランダムな順序で呈示する(3 回呈示する行為文が連続して. またよく行う行為とあまり行わない行為では,エラーに差は見ら. 呈示されないようにする) .第 1 実験と同様に, 「動作」の場合に. れなかった.日常生活においては,よく行う行為のほうがあまり行. は物品を用いて実際に動作を行い, 「イメージ」の場合には自分が. わない行為よりもエラーが多いように感じる.この生活上の実感と. その行為をしているところを物品には触らずにイメージする.また,. 実験結果との違いは,実験環境が日常生活場面とかけ離れているこ. 今回の実験はすべて偶発学習条件で行う.手続きは第 1 実験と同. とが原因であろう.つまりよく行う行為を実験室の中で行うことが. じである.. 被験者に違和感を生み,その行為を行う際に注意を必要とし,イメ. 第 2 セッション:行為文呈示直後,ソース・モニタリングのテ. ージする際には心的な努力を必要としたのではないだろうか.そう. ストを行う(テスト①).行為文の横には, 「動作」 ・ 「イメージ」 ・ 「見. することで,動作やイメージをする際に得られる情報は,よく行う. てない」と記されており,被験者はそれぞれの行為文について,実. -2-.
(3) 際に動作を行ったのかイメージしたのか,あるいは呈示されていな. ーがどう影響されるのかを検討する.. いかを判断し,いずれかに丸をつける.. 【方法】. 第 3 セッション:1 週間後,もう一度ソース・モニタリングのテ. 被験者:九州大学の大学生. 20 名. ストを行う(テスト②).. 材料:第2実験と同じ. 【結果と考察】. 手続き:第2実験とほぼ同じである.ただしソース・モニタリング. 結果を Fig. 2に示す.テストで得られたエラーを 4 タイプ(動. のテストは行為文を呈示した直後には行わず,1週間後の1回だけ. 作→イメージ/動作→見てない/イメージ→動作/イメージ→見. 行う.. てない)に分類し,これを被験者内要因として 3 要因(呈示回数. 【結果と考察】. ×遅延期間×エラーのタイプ)の分散分析を行った.. ○直後テストの有無におけるエラー分析. <1 回呈示>直後では動作→イメージ,イメージ→動作のエラー. 結果を Fig. 3に示す.テストで得られたエラーを 4 タイプに分. は見られなかった.動作の場合は知覚的属性が鮮明であり,イメー. 類し,これを被験者内要因とする.また第 2 実験での 1 週間後の. ジの場合は不鮮明であったためであろう.. テスト成績を直後テストあり条件,第 3 実験でのテスト成績を直. 1 週間後では動作→イメージのエラーが見られ,直後と比較して. 後テストなし条件として,これを被験者間要因とする.. 多かった〔F(1,76)=5.384,p<.05〕.またイメージ→動作のエラ. 3 要因(直後テストの有無×呈示回数×エラーのタイプ)の分散. ーは,直後と同様にほとんど見られなかった.これにより時間経過. 分析を行った.その結果, テストを 2 回行った場合,1 回目(直後). に伴って知覚的属性がより不鮮明になることが示された.. のテストが 2 回目(1 週間後)のテストに影響を与えていたことがわ. <3 回呈示>直後では動作→イメージ,イメージ→動作のエラー. かった.しかしその影響が見られたのは,1 回呈示での動作→イメ. は見られなかった.動作の場合は知覚的属性が鮮明であったためで. ージ,動作→見てないのエラーだけであった〔それぞれ F(1,. あろう.イメージの場合,3 回行っても「動作」と誤って帰属して. 304)=4.046,p<.05;F(1,304)=5.827,p<.05〕.このことから,. しまうほどには知覚的属性が鮮明にならなかったと考えられる.. ソース・モニタリングのテストによって,実際に動作を行った行為. 1 週間後では動作→イメージのエラーが見られたが, 1 回呈示. に関する知覚的属性が強化されることが示唆される.. と比較してより少なかった〔F(1,152)=5.642,p<.05〕 .これは 3. 直後にテストを行った場合,1 回動作を行った行為に関しては知. 回呈示のほうが 1 回呈示よりも,知覚的属性がより鮮明であった. 覚的属性がどのようなものであったのかが確認され(例えば「持っ. ためであろう.イメージ→動作のエラーも見られ,直後と比較して. たときの感触は柔らかかった」など) ,そうすることで知覚的属性. より多かった〔F(1,152)=7.446,p<.01〕.これは知覚的属性が鮮. はより強固なものになるのではないだろうか.そのため直後テスト. 明であったためであると考えられる.しかし直後では不鮮明であっ. ありのほうがなしよりも,1 週間後において動作→イメージ,動作. たと思われる知覚的属性が,1 週間後に鮮明になっているとは考え. →見てないのエラーが少なかったと考えられる.3 回動作を行った. られない.このことについては知覚的属性だけでは説明できないと. 行為に関しては知覚的属性はすでに鮮明であり,テストを行っても. 思われる.. それ以上強固なものにならなかったのだろう.そのため直後テスト あり・なしどちらでも,1 週間後のテストには影響しなかったもの と思われる.. 0.600. イメージした行為に関しては,知覚的属性は確認されない.その. エラー 直後. 0.500. エラー 1週間後 平 均 エ ラ ー 率. 0.400. ためテストを行うことでは知覚的属性は変わらず,直後テストあ. 0.300. り・なしどちらでも,1 週間後のテストには影響しなかったものと. 0.200. 思われる.. 0.100. ○直後・1 週間後(直後なし)におけるエラー分析. 0.000 イメージ 見てない. 動作. 動作. 見てない イメージ 見てない. イメージ 1回呈示. 動作. 動作. 見てない. 直後テストを行うことで,1 週間後のテストに影響がみられた.. イメージ. そのため第 2 実験の 1 週間後のテスト成績は,時間経過に伴うエ. 3回呈示 エラーのタイプ. ラーの変化を検討するうえで正確なものとは言えない.そこで,直. Fig.2 直後・1週間後のテストにおけるソース・モニタリングのエラー. 後テストの成績と直後テストを行っていない 1 週間後のテスト成 績とを比較する. 第 3 実験. 結果を Fig. 4に示す.第 2 実験での直後テストの成績を直後条 件,第 3 実験での 1 週間後(直後テストなし)のテスト成績を 1. 【目的】 テストを 2 回行うことによって,ソース・モニタリングのエラ. -3-. 週間後条件として,これを被験者間要因とする..
(4) 3 要因(遅延期間×呈示回数×エラーのタイプ)の分散分析を行. 全体的考察. った.結果は,第 2 実験で得られた結果のパターンとほぼ同じで. ソース・モニタリングの判断を行う際,知覚的属性だけでは判断. あった.その中で,異なるところを以下に挙げる.まず 1 週間後. が難しいことが示唆された.ではほかにどのような手がかりを用い. のイメージ→動作のエラーでは,3 回呈示のほうが 1 回呈示よりも. て判断しているのであろうか.ここで考えられるのは,情報の多様. エラーが多かった〔F(1,152)= 8.441,p<.005〕 . 1 週間後では,. 性である.つまり, 「動作」の記憶には認知的操作の情報のほかに. 1 回呈示・3 回呈示どちらも知覚的属性は不鮮明になっているだろ. 多くの情報が含まれていると思われる.動作を行う前には,動作の. う.しかし知覚的属性は 3 回呈示のほうが 1 回呈示よりもより鮮. 手順などのプランを立てる.その際に,認知的操作の情報が多く得. 明であるので,3 回呈示のほうがイメージ→動作のエラーが多かっ. られる.その後実際に動作を行っている際には,物に触れたり音を. たと考えられる.. 聞いたりすることによって感覚情報も豊富に得られる. 一方イメー. 1 週間後・1 回呈示では,動作→イメージはイメージ→動作より. ジする場合,認知的操作の情報は多く得られるが,感覚情報はほと. エラーが多かった〔t(228)=4.471,p<.05〕 .先述したように,イメ. んど得られない.このように「動作」の記憶と「イメージ」の記憶. ージ→動作のエラーは知覚的属性がより鮮明になることで起こり. には,情報の多様性という面で違いがあると考えられる.. 得るので,1回呈示ではほとんど見られない.そのため,知覚的属. 知覚的属性の鮮明さと情報の多様性を用いて,説明を試みたもの. 性がより不鮮明になることで起こり得る動作→イメージのほうが,. が Fig. 5のモデルである.この図はそれぞれの記憶表象であり,. イメージ→動作よりエラーが多かったのであろう.. 星のあしの部分が情報の多様性を,全体の大きさが知覚的属性の鮮. また 1 週間後・3 回呈示において,イメージ→動作が動作→イメ. 明さを表している.ここで 1 週間後における 3 回呈示のイメージ. ージよりエラーが多かった〔t(228)=3.040,p<.05〕 .イメージ→動. と 1 回呈示の動作に注目すると,同じ記憶表象になっている.そ. 作のエラーが見られたのは知覚的属性が鮮明であったためである. のためこの記憶表象間で混乱が起こり,直後では見られなかったイ. と考えられる.しかし,それではなぜ直後においてイメージ→動作. メージ→動作のエラーが 1 週間後に見られたと考えられる.. のエラーが見られなかったのか.知覚的属性の鮮明さで判断してい. 直後. るのであれば,1 週間後に見られたイメージ→動作のエラーは直後 でも見られるはずである.このことから,知覚的属性という概念だ けでは説明が難しいことが示唆される.. 3 回 呈 示. 0.600 0.500. 1週間後. 動作. 動作. イメージ. イメージ. 動作. 動作. イメージ. イメージ. エラー 直後なし エラー 直後あり. 0.400. 平 均 エ 0.300 ラ ー 0.200 率. 1 回 呈 示. 0.100 0.000. イメージ 見てない. 動作. 動作. 見てない イメージ 見てない. イメージ 1回呈示. Fig.5 「動作」と「イメージ」の記憶表象のモデル. 見てない. 動作. 動作. イメージ 3回呈示. エラーのタイプ. Fig. 5のモデルは,多くの仮定を含んでいる. 「動作」の記憶に. Fig.3 直後テストの有無におけるソース・モニタリングのエラー. は認知的操作の情報以外のさまざまな情報が含まれていること,認 知的操作の情報は時間経過に影響されないが,それ以外の情報は影 0.600. 響を受け,大幅に減衰してしまうことなどである.今後の研究では, 0.500 平 均 エ ラ ー 率. エラー 直後. これらの仮定について検討していくことが必要である.. エラー 1週間後 0.400 0.300. 引用文献. 0.200. Goff, L. M., & Roediger Ⅲ, H. L. (1998) Imagination inflation. 0.100. for action events:. 0.000 イメージ 見てない. 動作. 動作. 見てない イメージ 見てない. イメージ 1回呈示. 動作. 動作. 見てない. Repeated imaginings lead to illusory. recollections. Memory & Cognition, 26,. イメージ. 20-33.. Johnson, M. K., Hashtroudi, S., & Lindsay, D. S. (1993) Source. 3回呈示 エラーのタイプ. Monitoring. Psychological Bulletin, 114, 3-28.. Fig.4 直後・1週間後(直後なし)のテストにおける ソース・モニタリングのエラー. -4-.
(5)
関連したドキュメント
れによって社会一般の行動様式とは異なる態度を示すということは、あま
問題例 問題 1 この行為は不正行為である。 問題 2 この行為を見つかったら、マスコミに告発すべき。 問題 3 この行為は不正行為である。 問題
1.基本理念
③
問題集については P28 をご参照ください。 (P28 以外は発行されておりませんので、ご了承く ださい。)
[r]
einer rechtliche Wirkung gerichtete
( 同様に、行為者には、一つの生命侵害の認識しか認められないため、一つの故意犯しか認められないことになると思われる。