要旨
[目的]
本研究の目的は、ドミニカ共和国農村部の高血圧と診断された人々を対象とした保健プ ログラム作成支援のための示唆を得ることである。研究目標は、高血圧と診断された人々の 血圧管理に関する認知・行動・生活環境を記述することと、認知・行動・生活環境を踏まえ、
高血圧と診断された人を対象とした保健プログラムについて考察することとした。
[方法]
研究デザインは質的記述的研究とした。研究フィールドはドミニカ共和国サマナ県 A 市 の農村部とし、研究参加者は公立一次医療機関(地域保健ユニット; 以下UNAP)を利用す る人のうち以下の条件を満たし、研究の説明を理解した上で参加の同意を得られた人とし た。条件は①ドミニカ人である、②45歳以上 65歳未満である、③UNAPの医師に高血圧 と診断されている、④妊娠中でない、とした。データ収集は、Health Belief Model(Janz
& Becker, 1984; Champion & Skinner, 2008)の構成要素を参考に作成したインタビュー ガイドを用いて半構造化面接を行い、質的帰納的に分析した。また血圧測定を実施し、
UNAPの研修医や看護助手、UNAP近隣に居住し地域との交流も多い住民から一般的な生 活環境についての情報提供を受けた。
[結果]
研究参加者12名に半構造化面接を実施した。分析の結果、5つの大カテゴリーと、12の カテゴリー、31 のサブカテゴリーが抽出された。人々は主観的な健康状態を、身体症状が ない状態であることと捉えていた。そして、人々は【高血圧の重大性】を強く認知しており、
重大性の認知が、【日常的に行う血圧管理行動】の動機の一部となっていた。【日常的に行う 血圧管理行動】には食事や運動など健康的なライフスタイルを取り入れることと、内服や受 診といった医療行動があった。【日常的に行う血圧管理行動】は、【血圧管理の主体】をどの ように捉えるかということの影響を受けながら、【血圧管理行動の主観的価値】の有用性と 負担のバランスによって選択されていた。【日常的に行う血圧管理行動】によって血圧管理 が良好な場合もあれば、血圧管理が不良となる場合もあった。そして、高血圧症状がない状 態を維持できることもあれば、高血圧症状が出現することもあった。高血圧症状が出現した 際は、【症状出現時の対処行動】をとっており、【症状出現時の対処行動】には医療的な対処 と経験的に信じている自分なりの対処があった。
[結論]
ドミニカ共和国サマナ県 A 市の高血圧と診断された人々の血圧管理行動に影響を与えて いる要因には、自分や身近な人の経験に基づいて認知された重大性、短絡的な血圧管理行動 の有用性の認知、知識不足や知識と行動のずれ、血圧管理の主体の捉え方が外的統制優位で あること、が考えられた。高血圧患者を対象とした保健プログラムには、高血圧や血圧管理 に関する一般的な知識の提供、適切な保健医療システムの運用、人々が継続的な血圧測定を 行える環境作り、医療従事者による効果的な健康教育の開発を含める必要が示唆された。