博 士 ( 工 学 ) 鳥 養 祐 二
学 位 論 文 題 名
地 層処 分 工学 障壁 材 ベン トナ イ ト中 の水の特性評 価に関する研究
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
高レベル放射 性廃棄物の地層処分の安全解 析の一環として、工学障壁 材(緩衝材)の核種封 じ込め性能を評 価する必要がある。この中で 、緩衝材として使用が考え られている圧密ベント ナイト中での核 種の移行過程のモデ´レ化、 溶解度の評価、地球化学計算コードの適用条件の特 定が必要となる 。核種は圧密ベントナイト中 の水を介して移行すること が考えられるため、圧 密 ベ ン ト ナ イ ト 中 の 水 の 特 性 を 明 ら か に す る こ と は 極 め て 重 要 で あ る 。 このような観 点から本論文では、圧密ベン トナイト中の水の特性評価 を行った。蒸気圧測定 法により、ベン トナイト及びぺントナイトの 主成分であるモンモリロナ イト中の水の熱力学的 特 性を 決定 した 。ま た 、熱力学的データとX線回折 法による測定結果を比較し 、水の存在状態 を特定し、それ らの水の存在率を明らかにし た。さらに、トリチウム水 を用いてトリチウムの 拡 散 係 数 を 決 定 す る こ と に よ り 、 圧 密 ベ ン ト ナ イ ト 中 の水 の 動的 特性 を明 ら かに した 。 本 論 文 の 構 成 は 全 5章 か ら な り 、 そ の 内 容 は 以 下 に 示 す と お り で あ る 。 第1章 は序 論 であ り、 地層処分の概念と現在まで の研究を簡単に紹介し、地 層処分研究の問 題点を明らかに し、本研究の目的と内容につ いて述べた。
第2章 では 、 圧密 ベン トナイトおよび圧密モンモ リロナイトの膨潤による構 造変化、および 圧密ベントナイ トと圧密モンモリロナイトの 乾燥密度と膨潤時の飽和含水率の関係を検討した。
粉末のぺントナ イトおよぴモンモリロナイト は、水と任意の割合で混合 し、ペースト状になる が、圧密試料の 場合には、拘束を受けるため 、飽和時でも吸水率が一定値を越えることはない。
飽和時の含水率 は空隙率によってのみ決まる 。飽和した状態から少しず つ水を抜いて、それぞ れ の状 態で のX線回 折を 行い 、 層間 の水 分子 数を 調べた。その結果、圧密試料 では最大3分子 層の水が眉間に 存在し、含水率を低下させる と含水率に応じて2分子暦や 、1分子層の状態が現 れ た。 また 、含 水率 に より、3分子数と2分子層、2分子層と1分子層が共存した 。すなわち1つ の 含水 率に 対応 する 眉 間の水分子数は1つではなく 、複数の水分子数が共存す ることを見出し た。また、乾燥 密度0.80Xl03kg m一3の圧密 モンモリロナイトの場合、眉間に水が入り眉間が膨 張するが、層間 全体に3分子層の水が入るの に十分な空隙が存在するため、3分子層のみとなる。
乾 燥密 度1.20Xl03kg m‑3では空隙の量が少なくな り全体が3分子層になるほど の空隙はない。
従 って 、2分 子 層と3分 子層が共存する。乾燥密度1.76Xl03kg m一3では、空隙 が少なくなりも はや3分子層が形 成されるほど間隙は存在し ない。従って2分子層のみと なることを見出した。
第3章 では 、 圧密 ペン トナイト中に存在する水の 熱力学的状態について述べ る。圧密ベント ナイトおよび圧 密モンモリロナイト中に含ま れる水の蒸気圧を、水で完 全に飽和した状態から 水を少しずつ抜 いて、それぞれの状態で測定 した。それぞれの含水率に おける水の活量を求め
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る と と も に 、 相 対 部 分 モ ルGibbs自 由 エ ネ ル ギ ー △GH,O` 相 対 部 分 モ ル エ ン タ ル ピーAHHp` 相 対 部 分 モ ル エン ト ロ ピ ー △ SH,Oを 求 め た 。 乾 燥密 度1.76Xl03kg m一3の べ ン ト ナイ ト の ク ニ ゲ ル VlとMX‑80お よ び モ ン モ リ ロ ナ イ ト の ク ニ ピ ァF中 の 水 の 活 量 の 含 水 率 依 存 性 を 検 討 し た 。 ク ニ ゲ ルVlの 膨 潤 直 後 の 飽 和 含 水 率20.3wtcYoに お け る 水 の 活 量 は0.998で あ り 、 拘 束の ほ と ん ど 無 い 自 由 水 が 存 在 す る 。 二 方 、 飽 和 含 水 率18.1wtcjoのMX‑80中 の 水 の 活 量は0.846、 飽 和 含 水 率 22.9wt%の ク ニ ピ ァF中 の 水 の 活 量 は0.839で あ り 、 飽 和 状 態 に お い て も 水 が あ る 程 度 束 縛さ れ て い 、 る こ とを 示 し た 。 乾燥 密 度0.8、1.2、1.76Xl03kg m‑3の 圧密 モ ン モ リ ロナ イ ト に つ いて 水 の 活 量 の 含 水 率 依 存 性 を 検 討 し 、 同 一 含 水 率 で は 同 じ水 の 活 量 を 示す こ と を 明 らか に し た 。 ま た 、 粉 末 試 料 と 比 較 し 、 含 水 率 が 同 じ で お れ ば 同 じ 水の 活 量 を 示 した 。 従 っ て 、圧 密 ベ ン ト ナ イ ト 中 の 水 の 活 量 は 、 水 で 飽 和 し た 領 域 を 別 と し て 乾燥 密 度 に 依 存す る の で は なく 含 水 率 に 依 存 す る こ と を 明 ら か に し た 。 乾 燥 密 度1.76Xl03kg m‑3の 圧密 ベ ン ト ナ イト 中 の 水 の3分 の1は 、 熱 力 学 的 に 純 水 に 非 常 に 近 く 、 層 間 に 存 在 す る3分 子 層 の 水 は 、 熱 力 学 的 に 自 由水 と ぃ っ て よ い 。3分 子 層 と2分 子 層 の 間 で は 、AHHユ0が2U molII程 度 低下 し た だ け で、 熱 力 学 的 安定 性 に ほ と ん ど 差 は な い 。2分 子 層 か ら1分 子 層 に 変 化 す る と き に は 急 激 に 安 定 化 し た 。ま た 、 層 間 に1 分 子 層 の 水し か 存 在 し ない と き の △ SH,Oは 、氷 の融解 のエン トロピ ーであ る‑22J K‑imol.lよ りや や 低 く 、 従 っ て 、 層 間 に1分 子 層 存 在 す る水 は 、 融 点 近傍 の 氷 程 度 に束 縛 さ れ た 水で あ る こ と を 明 ら か に し た 。 水 の 脱 離 をBET型 の 吸 着 と し て 説 明 し た 。 乾 燥 密 度1.76Xl03kg m'3の 圧 密 ベ ン ト ナ イ ト で は 、 含 水 率20.3wt%の 水 の 内 、 約90%が 層 間 に 、 残 り の10010が 層 間 外 に 存在 す る 。 同 様 に 、 乾 燥 密 度0.80Xl03kgm‥ 、 飽 和 含 水 率45.Owl9tの 圧 密 モ ン モ リ ロ ナ イト で は 、 約7090 の 水 が 層 間 に 、30q0の 水 が 間 隙 に 存 在 す る 。 ま た 。 乾 燥 密 度1.20Xl03kg/m3以 上 の圧 密 モ ン モ リ 口 ナ イ ト で は 間 隙 水 は ほ と ん ど 存 在 し な い 。 こ れ らの 水 の 存 在 状態 を 検 討 し 、層 間 外 の 水 は 熱 力 学 的 に も 溶 液 論 的 に も 自 由 水 と 同 等 で あ る が 、 圧密 試 料 で 大 半を 占 め る 層 間中 の 水 は 希 薄 溶 液 中 の 水 で は な く 、 イ オ ン 強 度 の 高 い 溶 液 中 の 水 に 相 当 す る こ と を 明 ら か に し た 。 第4章 で は 、 ト リ チ ウ ム 水 を 用 い て 圧 密 モ ン モ リ ロ ナ イ ト 中 で の ト リ チ ウ ムの 拡 散 係 数 を決 定 し 、 乾 燥 密 度 と の 関 連 性 を 明 ら か に し た 。 さ ら に 拡散 係 数 の 温 度依 存 性 か ら 拡散 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー を 求 め 、 ト リ チ ウ ム の 拡 散 機 構 を検 討 し た 。298.15Kに お け る 乾燥 密 度1.0か ら2.0X 103kgmう の ト リチ ウ ム の 拡 散係 数 は 、 純 水中 と 比 較 し て1桁 程度小 さく、1.83X10.|0m2s.1か ら 5.lXlO川m2s.Iで あ っ た 。 ま た 、 拡 散 係数 は 、 乾 燥 密度 の 増 加 と 共に 減 少 し た 。 これ ら の こ と か ら 圧 密 モ ンモ リ ロ ナ イ ト中 で の ト リ チ ウム の 拡 散 は 、拡 散 に 用 い られ る 水 の 状 態で は な く 、 拡 散 経 路 の 幾 何 学 的 な 変 化 に 依 存 す る こ と を 明 ら か に した 。 圧 密 モ ンモ リ ロ ナ イ ト中 の ト リ チ ウ ム の 拡 散 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー は 乾 燥 密 度 に 依 存 せ ず 、 純 水 の 自 己 拡 散 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー
(19.2kJmoI.l) とほと んど同 じ16.8か ら19.3kJmol.1であった。また、層間の水分子数の変化や、
熱 力 学 的 状 態 の 変 化 に 対 応 す る 活 性 化 エ ネ ル ギ ー の 変化 は 見 ら れ なか っ た 。 従 って 、 圧 密 モ ン モ リ ロ ナ イ ト 中 の ト リ チ ウ ム の 拡 散 は 、 乾 燥 密 度2.0X103kgm■ の よ う に 間 隙 水 がな く 熱 力 学 的 に か な り 安 定 し た 水 し か 存 在 し な い 領 域に お い て も 、氷 の よ う な3次 元 的 に 束 縛さ れ た 水 で は な く 、 純 水 程 度 に 自 由 な 水 を 介 し て 行 わ れ る 。 ト リ チ ウ ム 水 は 純 水 中 でrの 形 で同 位 体 交 換 に よ り 拡 散 す る の で 、 自 由 な 場 合 ( 純 水 ) と 束 縛 さ れ てい る 場 合 ( モン モ リ ロ ナ イト 中 ) の い ず れ に お い て も 、rの 拡 散 が 酸 素 表 面 で の ス ラ イ デ イ ン グ で あ る と い う モ デ ル を 考え る こ と に よ り 説明し た。
第5章 で は 本 論 文 の 結 論 を 述 べ る と と も に 、 残 さ れ た 課 題 に つ い て 言 及 し た 。
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