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デキストラン硫酸誘発腸炎マウスにおける

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 大 川 原 辰 也

学 位 論 文 題 名

デキストラン硫酸誘発腸炎マウスにおける

IVIacrophage IVIigration Inhibitory Factor (IvIIF) cD

発現と役割について 学位論文内容の要旨

[ 緒 言 ] 炎 症 性腸 疾患 は, 潰瘍 性大 腸炎 とCrohn病 が代 表的 であ り緩 解, 再燃 を繰 り返 し なが ら慢 性に 経過 する .そ の病 因は 未だ 不明 であ るが, 異常 な免 疫応答の関与が明ら か にな って きて いる .特 にサ イト カイ ンの 関与 が注 目され てお り, その制御による病状 の 改 善 が 報 告 され てい る.MIFは, 無秩 序なマ ク口 ファ ージ の遊 走を 阻止 する 作用 を有 し 活性 化Tリン ノヾ 球よ り分泌 され るり ンホ カイ ンと して 発見 され た.MIFのcDNAは1989 年 に ヒ ト ,1995年 に ラ ッ ト が ク □ ー ニ ン グさ れ, とも にn4個の アミ ノ酸 から なる こと が 明 ら か に さ れた .MIFの 分布 は, マク 口ファ ージ ,脳 ,腎 臓, 皮膚 ,卵 巣他 ,多 臓器 に 存 在 し , そ の役 割も ,endotoxinshockの際 ,下 垂体 前葉 より 血中 にMIFが放 出さ れ,

抗MF抗 体 に よ り そ の 致 死 率 が 改 善 す る こ と,MFが 低濃 度のglucocorticoid刺 激で 誘導 さ れ, いっ たん 誘導 され ると そのMFがgluC0cortiC0idによ る過 剰な 抗炎症作用に拮抗す る 作 用 を 有 す る こ と な ど が 報 告 さ れ て い る. 抗MIF抗 体の 投与 によ りLPS刺激 肺損 傷や LPS‐BCG刺 激 肝 炎 が 軽 減 し た こ と も 明 ら かに され ,さ らに 炎症 性サ イト カイ ンの 機能 以 外に も細 胞増 殖因 子, 分化 増殖 因子 の可 能性 も指 摘され てい る. 消化管では胃壁細胞 でMFの 存 在 が 確 認 さ れ た が , 消 化 管 の 炎 症 に お け るMIFの 関 与 は 検 討 さ れて いな い.

そ こで 本研 究で は, 炎症 性腸 疾患 モデ ルとしてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)腸炎 マ ウ ス を 用 い MIFの 発 現 や そ の 制 御 に よ る 腸 炎 の 変 化 を 検 討 し た .

[ 方 法 お よ び 結 果 ]DSS腸 炎 は4%DSSを 飲 水 さ せ 作 成 し た , ノ ー ザ ンブ □ ッ ト 法に て DSS投 与 直 前, 投 与1,3,5,7日 後 の 盲 腸 と 結 腸組 織のMJ[ FmRNAを検 討し た. 盲腸 で はDSS投 与 前よ り 発 現 を 認 め , 投 与3日 後に 発 現 のピ ーク を呈 し, その 後発 現は 減弱 し た , 結 腸 で はDSS投 与 前 に は 殆 ど 発 現 を 認 め ず ,DSS投 与 後7日 後 ま で経 時 的 に 発現 が 増 強し た. 免疫 組織 染色に よる 検討 では ,盲 腸のDSS投与前ではりンノヾ球の集積に染色 を 認 め た .DSS投 与7日 後 で は 腸 管 上 皮 細胞 に も 発 現 し て い た . 結 腸 で はDSS投 与前 に は 染 色 は 認 め ら れ ず ,DSS投 与7日 後 に 腸管 上 皮 細胞 で発 現し ,粘 膜固 有層 に浸 潤す る マ ク□ ファ ージ やり ンノヾ 球も 染色 され た.

  次 に マ ウ ス を 抗MF抗 体 投 与 群 とnon‐immuneIgG投 与 群 に 分 け ,DSS投 与 開 始 前と 投 与2,4,6日 後 に 腹 腔 内 投 与 し た . 抗MF抗 体,non−lmmuneIgG投 与 両 群 に つ い てDSS 投 与7日 後 まで 体 重 ,下 痢, 血便 の有無 を確 認し ,DSS投 与7日 後に 結腸 を採 取し 腸管 の 長 軸方 向の 長さ を測 定した .盲 腸と 結腸 を組 織学 的に 炎症 の程 度と 病変 範囲にっき検討 し た ,DSS投 与7日 後 で は 投 与 前 と 比 較 し て , 抗MF抗 体 投 与 群 は コ ン ト 口一 ル 群 と 比 較 し体 重の 増加 (pく0.05)も良好で,下痢(pく0.01)や血便の頻度(pく0.05),腸

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管の短縮は有意に抑制された(pく0.05).盲腸の病変はnon‑immune IgG投与群では炎症 細 胞 の 浸 潤 ,Cryptの消 失,上 皮細 胞の 破壊 を認 めた が, 抗MIF抗体 投与 によ り何 れの 障害も軽微になり,炎症の程度を有意に抑制した(pく0.01).また盲腸と結腸の病変範囲 は 有 意 に 縮 小 す る こ と が 確 認 さ れ た ( 盲 腸 ;pく0.0 01.結 腸 ;pくO.05) .

[ 考 察 ] 本 研 究 に よ っ てDSS腸 炎 の 発 症 に 伴 いMIFの 発現 の増 強が 明ら かにな った .炎 症 性疾 患では これ まで に慢 性関 節リ ウマ チ, 腎炎 などでMIFの発現の増強を認めている.

DSS腸 炎 で はMIFmRNAの 発 現 は 結 腸 がDSS投 与 前 で は 発 現 を 認 め な い が ,DSS投 与 後 , 経 時 的 に 発 現 が 増 強 し た . こ れ はDSS刺 激 が 持 続 した こと がMIFの 発現 に影響 した と思 わ れ る , 盲 腸 はDSS投 与 前 よ り 発 現 が 認 め ら れ ,DSS投与 後は 早期 に発 現のピ ーク を迎 え , そ の 後 発 現 が 減 弱 し た .MIF免 疫 染 色 でDSS投 与 前 は 結 腸 で は 染 色 を 認 め ず ,DSS 投 与7日 後 に は 腸 管 上 皮 細 胞 にMIFの 強 い 発 現 を 認 め た . 盲 腸 で はDSS投 与 前 に も 粘膜 固 有 層 内 の マ ク 口 フ ァ ー ジ や り ンパ 球 が 陽 性 に 染 ま り,DSS投 与7日後 には結 腸と 同様 に 腸 管 上 皮 細 胞 が 強 く 染 色 さ れ た . 盲 腸 で のMIFmRNAMIFの 変 化 は ,DSS投 与 前 で も 固有 粘膜層 にり ンノ ヾ球 ,マ クロ ファ ージ など の集積がみられ,それらに起因するMIF が 発 現 を 呈 し ,DSS投 与後 の発 現の 変化 は腸 管上 皮細 胞の 発現 の増 強に 由来し てい ると 考 えら れた,

  MF免 疫 染 色 に お い て は 結 腸 , 盲 腸 と も にDSS投 与7日 後 で も 強い 染 色 を 認 め る が , 盲 腸 に 関 し てMIFmRNA発 現 の 消 失 を認 め るDSS投 与7日 後 のMIF免疫 染 色 が 強 陽 性 で あ る こ と は ,TNF‐aで 刺 激 さ れ た 脂 肪 細 胞 がMFmRNAとMF蛋 白 が 相 関 せ ず 解 離 し た と の 報告 もある が, 蛋白 の定 量を 検討 する 必要 があ る.

  こ れ ま で の 報 告 でMIFは 免疫 担当 細胞 以外 には 皮膚 基底 層細 胞, 眼レ ンズ細 胞, 骨芽 細 胞, ヒト自 血球 細胞 (HL160)の ように 増殖 能を 持つ未分化細胞や,下垂体前葉細胞,

膵B細胞 の よ う な 内 分 泌細 胞, 高分 化で 増殖 能を 殆ど 持た ない 胃壁 細胞 に発現 して いる こ と が 明 ら か に な っ て い る . 本 病態 に お い て はDSSの 刺激 によ り上 皮細 胞が 反応 しMIF を 産生 したと 思わ れる .さ らに その 後の 催炎 症作 用ま たは 生体 防御反 応に 関与 している 可 能性 も考え られ る.

  臨 床 所 見 , 腸 管 の 長 さ と 組 織 学的 検 討 に お い て 抗MIF抗 体の 投与 によ りDSS腸炎 の軽 症 化 が 図 ら れ る こ と が 確 認 さ れ た. こ れ に よ りMIFがDSS腸炎 の発 症に 関与し てい るこ と が 証 明 さ れ た . そ の機 序は 明ら かで はな いが,I亅PS刺 激肺 損傷 にお いて報 告さ れた MIFの上 昇 に よ る 好 中 球や 単球 の肺 胞へ の浸 潤や 気管 支肺 胞洗 浄中 への 誘導, 自血 球遊 走 因子 のーつ であ るmacrophageinnammatoryprotem(MIP)‐2の産生によるものや,LPS‐ BCG刺 激 肝 炎 で 報 告 さ れ たMIFの 増 加 の 後 ,TNFaが 増 加 しTリ ンパ 球 の 肝 組 織 へ の 浸 潤 が 起 き ,MIFがTNFaを 介 し た サ イ ト カ イ ン ネ ッ ト ワ ー ク を 活性 化 し た こ と が 本 病態 に も関 与して いる と思 われ る. さら にMIFがmatrixmetalloprotemases分泌 を刺 激するこ と で 組 織 障 害 を 来 す こと も明 らか にな って おり,M【FのDSS腸 炎に おけ る炎症 のメ カニ ズ ムに ついて 同様 の機 序の 関与 も考 えら れる .

【結語]

1.DSS腸 炎 マ ウ ス のMIFm RNAの 発 現 は 盲 腸 で は 投 与3日 後 に 発 現 の ピ ー ク を 呈 し ,     そ の 後 減 弱 し た , 結 腸 に で はDSS投 与7日 後 ま で 発 現 の 増 強 を 認 め た . 2.免 疫 組 織 学 的 検 討 で 盲 腸 の 粘 膜 固有 層 の り ン バ 球 や マ ク □ フ ァー ジにMIFの 発現 を     認めた.    DSS腸炎マウスでは盲腸,結腸共に腸管上皮細胞,リンノヾ球やマク□ファ     ージに強い発現を認めた.

3. 抗MIF抗 体 投 与 でDSS腸 炎 の 軽 減 が 認 め ら れ た .DSS腸 炎に お い てMIFが 炎 症 惹 起     に 関与 してい るこ と, 又そ の制 御に より 治療 効果 が得 られる可能性が示唆された.

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学位論文審査 の要旨

     学位論文題名

     デ キ ス ト ラ ン 硫 酸 誘 発 腸 炎 マ ウ ス に お け る Macrophage Migration Inhibitory Factor (Ix/IIF) の      発現と役割について

  炎症性腸疾患の病因は未だ不明であるが,異常な免疫応答の関与が報告されている.そ のーっにサイトカインの関与が注目されており,特にTNFa,IL−6などの関与やその制 御による病状の改善が報告されている,   Macrophage migration inhibitory factor (MIF)は活性化Tリンバ球,マク口ファージ,脳,腎臓の他,多臓器に存在し,その役割 も多機能にわたっているが,特に免疫や炎症への関与が明らかになっている.しかし腸管 の免疫や炎症におけるMIFの関与は未だ検討されていない.そこで本研究では,炎症性腸 疾患モデルとして認められているデキストラン硫酸誘発腸炎(DSS腸炎)マウスを用い MIFの発現やその制御による腸炎の変化を検討した,

  DSS腸炎 は4%DSS水溶液 を飲 水させ作成した.ノーザンブ口ット法にてDSS投与直 前 ,投 与1,3,5,7日 後の 盲腸と結腸組織のMIFmRNAを検討した.盲腸ではDSS投与 前より発現を認め,投与3日後に発現のピークを呈した.結腸ではDSS投与後7日後まで 経時的に発現が増強した,MIF免疫組織染色による検討では,結腸,盲腸ともDSS投与後 に腸管上皮細胞と粘膜固有層に浸潤したマ夕口ファージやりンバ球に染色を認めた.次に DSS腸炎マウスに抗MIF抗体を投与し臨床症状と組織学的所見を検討した.マウスを抗 MIF抗体投与群とnon―immune IgG投与群に分け,DSS投与開始前と投与2,4,6日後に 腹腔内投与した.抗MIF抗体,non―immune IgG投与両群についてDSS投与7日後まで体 重,下痢,血便の有無を確認し,DSS投与7日後に結腸を採取し腸管の長軸方向の長さを

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測定した,また盲腸と結腸を組織学的に炎症の程度と病変範囲にっき検討した,抗MIF抗 体投与群は体重の増加も良好で,下痢や血便の頻度,腸管の短縮は有意に抑制された.結 腸,盲腸の病変はnon―immune IgG投与群では炎症細胞の浸潤,Cryptの消失,上皮細 胞の破壊を認めたが,抗MIF抗体投与により何れの障害も軽微になり,炎症や組織障害の 程度を抑制することが証明された.また盲腸と結腸の病変範囲は有意に縮小することが明 らかになった,

  口頭発表に際し,副査の藤堂教授より,炎症性腸疾患とMIFとの関係に着目しそのモデ ルであるDSS腸炎でMIFの関与をみた仕事として興味深いものであるとのコヌン卜の後,

この動物モデルにおけるMIFと催炎症性サイトカインとの,特にTNFaとの関与につい て,また結腸と異なり盲腸においてMIFmRlxlAとMIF蛋白の解離が起こる機序について質 問があったが,申請者はMIFがTNFaなどのサイトカインネットワークを制御している可 能性と盲腸においてネガティブフイードパックが起こった可能性を回答した.次に、副査 の吉木教授より,DSS腸炎は薬剤により誘発される腸炎であるが,このモデルがヒトの炎 症性腸疾患のモデルとしての妥当といえるのか,DSS腸炎が起こる病変は大腸以外の消化 管には認めないのか,また抗MIF抗体投与量や投与時期を換えた検討についての質問があ り,申請者はDSS腸炎の形態学的特徴が潰瘍性大腸炎極めて類似しており実験モデルとし てよく利用されていること,病変は大腸に限局すること,今後投与量や方法を変えて検討 する予定であると回答した.さらに副査の吉木教授からはDSS腸炎以外の,遺伝子操作マ ウスを使用しMIFを検討する実験を組んだ検討や他の腸炎モデルの検討も必要となろうと のコメントがあった.また、主査の浅香教授より,DSS腸炎の発症ヌカニズムおけるMIF の関与とTNF口などのサイトカインネットワークにおける位置付けについて,MIFノック アウトモデルでの腸炎の検討について,さらに最近抗TNFd抗体がヒト炎症性腸疾患に 臨床応用されたが,MIFの制御による炎症性腸疾患治療への可能性はどうかについての質 問があり,申請者はMIFのTNFaなどのイニシェ一夕ーや増強因子としての可能性を示 し,またMIFノックアウトモデルの検討を進めていること,ヒトヘの臨床応用の可能性が 高いことを回答した.

  本研究は,デキストラン硫酸誘発腸炎におけるMIFの発現ならびにその制御による腸炎 の抑制について,はじめて科学的に報告したという点で高く評価され,今後は他の動物モ デルやヒト炎症性腸疾患でのMIFの検討の研究を進めることにより,病因の解明や治療へ の応用が期待される.

(5)

  審査員一同は,これらの成果を高く評価し,大学院課程における研鑚や所得単位なども 併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した,

参照

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