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Academic year: 2021

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主 論 文

Identification of novel urinary biomarkers for predicting the renal prognosis in patients with type 2 diabetes by glycan profiling in a multicenter prospective cohort study: U-CARE Study 1

(糖鎖プロファイリングによる 2 型糖尿病患者における尿中腎予後予測バイオマーカー の同定:U-CARE研究1)

【緒言】

ヒトゲノムの配列が決定され、ポストゲノム研究が注目を集める中、糖尿病および糖尿病 合併症の発症や進展に糖鎖異常が関与していることが報告されている。近年、糖尿病患者に おける血清中のN 型糖鎖の違いと糖尿病血糖コントロールや糖尿病合併症との関連を検討 した研究は少数ながら報告があるが、尿中の糖鎖修飾の差異と糖尿病患者の腎予後との関 連を検討した研究はなかった。我々は、共同研究者であるグライコテクニカ社の開発したレ クチンアレイを用いることで、ハイスループットに45種類の異なる特異性を持ったレクチ ンに結合する糖鎖を定量化した。そして、尿中糖鎖プロファイリングを進めることで、糖尿 病腎症の新規バイオマーカーとしてfetuin-Aを同定し、尿中fetuin-A排泄量が糖尿病患者に おける横断研究で腎機能(eGFR: 推定糸球体濾過量)と相関する有用なバイオマーカーであ ることを報告した(PLos One 8(10):e77118, 2013)。またその研究の予備解析実験において、ほ ぼ同じ尿蛋白量や腎機能を呈し異なる腎疾患(糖尿病腎症、高血圧性腎硬化症、膜性腎症)を 有する 3 名の患者における血清および尿中の糖鎖プロファイリングを比較したところ、血 清の糖鎖プロファイリングでは 3 者間で差は認めなかったものの、尿中の糖鎖プロファイ リングでは大きな違いが認められた。この結果から、尿中の糖鎖排泄量の違いというのが腎 疾患特異的な違いを反映している可能性、各腎疾患における組織学的な進展を反映する可 能性があると考え、糖尿病患者における腎予後予測因子を同定するため尿中糖鎖プロファ イリングを行った。

【材料と方法】

対象患者

岡山県内 8施設(岡山大学病院、岡山医療センター、岡山済生会病院、倉敷中央病院、榊 原病院、津山中央病院、岡山赤十字病院、岡山市民病院)における2型糖尿病患者688名の うち、観察期間中に緩徐進行型1型糖尿病の診断に至った8名と2012年度(観察開始時:ベ ースライン)のeGFRが15 ml/min/1.73m2/year未満であった5名を除いた675名が対象とな った。

予測因子および主要臨床因子

観察開始時に採取後、-80℃で保管していた随時尿サンプルを用いて尿中糖鎖プロファイ リングを行い、45 種類のレクチンに結合する尿中糖鎖排泄量を測定した。観察開始時点及 び、以降1年に1回主要な臨床情報(年齢、BMI、外来血圧、糖尿病網膜症の有無と重症度 [単純、前増殖、増殖]、CVD[心血管]イベントの有無、悪性腫瘍合併の有無、治療の詳細[降 圧剤、糖尿病の治療薬剤ないしはインスリンの使用の有無、高脂血症治療薬、高尿酸血症治

療薬]、HbA1c、随時血糖、血清クレアチニン、尿中アルブミン排泄量[UACR])を収集した。

アウトカム

アウトカムはベースラインからの eGFR 30%低下または末期腎不全による透析導入時点 と定義した。

解析方法

単変量及び多変量 Cox 回帰分析によりアウトカムに関連する尿中糖鎖排泄量/SD(標準偏 差)のハザード比(HR)と95%信頼区間(95% CI)を求めた。多変量Cox回帰解析において、尿 中糖鎖排泄量/SD以外の独立変数は、ベースラインの年齢、性別、中心動脈圧、HbA1c、eGFR、

(対数変換後)UACRとした。また、多変量Cox回帰モデルの独立変数として採用した既存の

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バイオマーカーのみによるモデルに尿中糖鎖排泄量を加えることでモデル予測能がどの程 度向上するかを検討した。具体的には、観察期間の中央値であった4年以内にアウトカムを 発 症 す る/し な い と い う ロ ジ ス テ ィ ッ ク 回 帰 モ デ ル に よ る NRI (Net reclassification improvement), IDI (Integrated discriminated improvement), AIC (Akaike Information Criterion)を算 出し、Cox 回帰モデルによるC-statisticsを算出し既存のバイオマーカーのみの Cox回帰モ

デルのC-indexと尿中糖鎖排泄量を加えたモデルによるC-indexの差を求めた。

【結果】

観察期間、アウトカム発生数、患者背景

中央値4.0年(四分位[IQR]: 3.9-4.0)の観察期間中に63人がアウトカムを発症した。全患者 におけるベースラインのeGFRは71.4 ± 17.1 ml/min/1.73m2、UACRの中央値は17.3 (mg/gCr,

IQR: 7.8-71.1)で、正常アルブミン尿、微量アルブミン尿を呈していた患者はそれぞれ429人

(64%)、165人(24%)であった。

Cox回帰分析と既存バイオマーカーへの上乗せ効果の検討結果

単変量と、多変量 Cox 回帰モデル双方においてアウトカムに有意に関連していた糖鎖結 合レクチンはSNA (HR: 1.42 [95% CI: 1.14-1.76])、RCA120 (1.28 [1.01-1.64])、DBA (0.80 [0.64- 0.997])、ABA (1.29 [1.02-1.64])、Jacalin (1.30 [1.02-1.67])、ACA (1.32 [1.04-1.67])であった。

SNA、RCA120、DBAに結合する特異的糖鎖はそれぞれSiaα2-6Gal/GalNAc、Galβ1-4GlcNAc、

GalNAcα1-3GalNAcであり、ABA、Jacalin、ACAに共通する特異的結合糖鎖はGalβ1-3GalNAc であった。また、これら6種類の糖鎖シグナルをベースラインのUACRやeGFRなどで構 成されたモデルに加えることでアウトカムの予測能は有意に向上することが示された(NRI:

0.51 [95% CI: 0.22-0.80], relative IDI: 0.18 [0.01-0.35], AIC 296→287)。

【考察】

本研究では、尿中Siaα2-6Gal/GalNAc、Galβ1-4GlcNAc、Galβ1-3GalNAc排泄量増加および

尿中GalNAcα1-3GalNAc排泄量低下がベースラインのUACRやeGFRなどとは独立して腎

予後に関連していることが示された。また、これらの尿中糖鎖排泄量を既存のバイオマーカ ーで構成される予後予測モデルに組み合わせることにより、予測能が有意に向上すること が示された。本研究は糖尿病患者における尿中糖鎖排泄量と腎予後との関連を示した初め ての報告であった。

糖鎖は、発生、免疫、感染、細胞接着など多彩な生体機能に関わっており、セリン/スレオ ニンへの結合から始まるO型糖鎖と、アスパラギン酸への結合から始まるN型糖鎖の2つ に大別される。また、糖鎖の最大の特徴である構造上の“多様性・異質性”をもたらす糖鎖の 付加反応は糖転移酵素によってなされ、この反応は Glycosylation と呼ばれるが、酵素によ らない化学反応を指すGlycation(糖化反応, メーラード反応)とは異なっている。

腎臓ポドサイトの主要な構成成分であるポドカリキシンも、Glycosylationにより構造が維 持される代表的な糖蛋白質である。ポドカリキシンはシアル酸を多く含む O 型糖鎖によっ て構成されるが、マウスにおいてこのシアル酸を欠損させると、腎糸球体で足突起癒合が起 こり、尿蛋白量が増加することが報告されている。また、O型糖鎖の伸長反応プロセスの根 幹にある糖鎖である Galβ1-3GalNAc の合成に必要な糖転移酵素(glycosyltransferase core 1 synthase and glycoprotein-N-acetylgalactosamine 3-β-galactosyltransferase 1: C1galt1)のノックア ウトマウスにおける腎臓では、糸球体硬化、間質の線維化、足突起癒合、糸球体基底膜の肥 厚、アルブミン尿を呈することや、ポドカリキシンにおける糖鎖Siaα2-6Gal/GalNAcが低下 していることが報告されている。

本研究結果の機序を、これら基礎研究結果を基に考察すると、尿中Siaα2-6Gal/GalNAc、

Galβ1-4GlcNAc、Galβ1-3GalNAc 排泄量増加および尿中 GalNAcα1-3GalNAc 排泄量低下は、

糖尿病腎症における組織学的な糖鎖修飾の変化を反映しており、この組織学的糖鎖修飾の 異常が糖尿病腎症における新たな進展機序である可能性が示唆された。予備実験における 血清と尿中の糖鎖プロファイリングの違いがあったことも、この尿中への糖鎖排泄量が全 身性というよりは腎局所における糖鎖修飾の違いを反映している可能性を裏付ける結果で

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あると考えられた。血清中のN型糖鎖と糖尿病合併症および血糖コントロール(HbA1c)との 関連を調べた既報研究結果と異なっていたことも、この推論を裏付けるものであると考え られる。本研究では、実際に全ての患者において、腎生検によって腎病理組織学的な変化と 尿中糖鎖排泄量との関連を検討できているわけではなく、この点がlimitationの一つとなる が、将来的には、現在施行中の当科における研究的腎生検による前向き研究によって検証予 定である。

【結論】

2 型糖尿病患者における尿中Siaα2-6Gal/GalNAc、Galβ1-4GlcNAc、GalNAcα1-3GalNAc、

Galβ1-3GalNAc排泄量は有用な腎予後予測因子となり得ると考えられた。

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