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債務超過会社の吸収合併 1. 会社法の規制債務超過会社を消滅会社とする合併は 旧 商法では 資本充実の原則 に反するとして認められていませんでした つまり 合併登記が受理されませんでした このため実務上は 不動産や有価証券の含み益を計上するか営業権を認識して債務超過を解消する あるいは債務超過の子会

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平成 22 年 4 月 1 日現在の法令等に準拠

 債務超過会社の吸収合併

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債務超過会社の吸収合併

1. 会社法の規制 債務超過会社を消滅会社とする合併は、旧・商法では「資本充実の原則」に反するとして認められていませんでし た。つまり、合併登記が受理されませんでした。このため実務上は、不動産や有価証券の含み益を計上するか営業 権を認識して債務超過を解消する、あるいは債務超過の子会社を存続会社として黒字の親会社を消滅会社とする逆 さ合併が実行されていました。逆さ合併の場合は、事業目的や経済合理性がなく専ら繰越欠損金の利用目的と認定 されると、行為計算否認規定により租税回避行為に該当するリスクがありました(法法 132、国税不服審判所 平成 13 年1月 22 日裁決事例)。 しかし、会社法では債務超過でも所定の手続きを経れば債務超過会社を消滅会社とする吸収合併が可能です。 債務超過の子会社を吸収合併する場合や抱合株式消滅損が発生する場合は、合併差損が生じます。この場合は、 親会社では株主総会の特別決議と取締役がその旨を説明することが必要となります(会 795①②)。経営の判断とし ては、子会社が債務超過に陥った親会社としての経営責任、事業の将来性・親会社との事業関連性、取引先や販路 維持、雇用や人材確保の観点から救済合併の必要性を説明することになります。 合併対価が親会社の純資産の 20%以下の場合には、「簡易組織再編成」に該当します。この場合は、親会社での 株主総会の決議が不要です(会 796③、簡易合併)。100%子会社を親会社と無対価合併させる場合も、同様です。 上場企業や株主規模の大きい会社にとっては、株主総会決議を省略できるので時間や労力、費用負担が軽減でき ます。ただし、以下のような場合は簡易合併をすることは出来ません。 ① 存続会社が非公開会社で、合併対価に譲渡制限株式が含まれている場合(会 2①五) ② 合併差損が生じる場合(会 796③但し書き、795②一) ③ 一定以上の株主が簡易合併に反対する旨の通知をした場合(会 796④、会施規 197) ②については、債務超過の子会社を吸収合併する場合や抱合株式消滅損が発生する場合が該当します。不利益 を被る親会社の株主と債権者を保護するため、株主総会の特別決議を省略することはできません。上場企業の法務 実務では、子会社救済の説明が要求されます。ただし、親会社が連結配当規制適用会社である場合には、この規 制を受けないことが可能です(会施規 195③~⑤、会計規 158①四)。 また、100%子会社を吸収合併する場合は特別支配関係があるため、吸収合併消滅会社となる子会社サイドでの 株主総会決議は不要です(会 784①、略式組織再編)。

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2.設例 以下の財務内容の 100%子会社を吸収合併する場合(子会社株式の会計・税務簿価は、2,000 百万円) (金額単位:百万円) 諸資産 18,000 諸負債 22,000 資本金 1,000 資本剰余金(資本準備金) 1,000 利益剰余金 △6,000 ※説明の便宜上、適格合併に該当し、親会社の当期利益は抱合株式消却損のみと仮定 (1)会計処理 平成 18 年 4 月 1 日以降は、「企業結合に関する会計基準」が適用されます。従来は、100%子会社を救済合併す る場合、任意に営業権を計上したり不動産や有価証券の含み益を計上して債務超過を解消していました。しかし、企 業結合会計基準の「共通支配下の取引」に該当するものは、簿価引継となりました(企業結合会計基準 41)。このた め、従来のように柔軟な時価による評価替えを適用することが出来なくなりました。 親会社の会計処理としては、子会社の資産負債を簿価で引継ぎます。100%子会社の簿価純資産と親会社が所 有する子会社株式簿価との差額は、「抱合株式消却損益」として損益計算書の特別損益に計上します(企業結合会 計基準 注 10、企業結合適用指針 206(2)①ア、438)。 諸資産 18,000 諸負債 22,000 抱合株式(子会社株式)消却損 6,000 子会社株式 2,000 ※100%親子会社間での合併のため、グループ内企業の再編である。会計上は企業結合会計基準により、100%子会社同士の合併と 同様に「共通支配下の取引」となる。このため、簿価引継ぎで会計処理される。 連結上では、上記の損益取引がなかったものとされ連結消去されます(適用指針 208)。連結決算上は過年度の損 益に計上済みのため、連結剰余金に振り替えます。具体的な連結消去処理は、以下の通りです。 その他の剰余金(連結剰余金) 6,000 抱合株式消却損 6,000

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(2)税務処理 適格合併では、原則として、合併法人は被合併法人の合併直前の税務上の簿価で資産負債を引継ぎます(法法 62 条の 2①)。株主資本の内訳は、子会社の資本金等の額と利益積立金をそのまま引き継ぎます。マイナスの利益 積立金でも、そのまま引き継ぎます。また、子会社株式(抱合株式)は資本金等の額で消却します(法令 8①二十一 イ)。会計上で計上された「抱合株式消却損」は、法人税法上は認識されず損金算入できません。 (金額単位:百万円) 諸資産 18,000 諸負債 22,000 資本金等の額 2,000 利益積立金 △6,000 資本金等の額 2,000 子会社株式 2,000 なお、債務超過の 100%子会社を吸収合併する組織再編行為に租税回避や債務引受の実態があれば、寄附金 認定される場合もあります(法基通 9-4-1、2)。 (3)申告調整 利益積立金 6,000 抱合株式消却損 6,000 ※借方は別表四を経由せずに直接別表五でマイナス計上、貸方は別表四で加算・留保 (4)別表四、五の記載例 <別表四> 区分 総額 留保 社外流出 ① ② ③ 当期利益又は当期欠損の額 △6,000 △6,000 加算 抱合株式(子会社株式)消却損 6,000 6,000 減算 仮計 0 0

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<別表五(一)> Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書 区分 期首利益積立金 期中増減 期末 減少 増加 利益準備金 抱合株式消却損 6,000 6,000 0 自己株式 繰越損益金 △6,000 △6,000 Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書 区分 期首資本金等の額 期中増減 期末 減少 増加 資本金 資本準備金 利益積立金 会計上では特別損失を計上するので、PL 経由で利益剰余金が 6,000 百万円減少します。税務上では、BS で直接 利益積立金が 6,000 百万円減少します。このため、別表四では抱合株式消却損を無いものとして加算します。別表 五(一)では、別表四を経由しない利益積立金の調整が生じます。申告ソフトの仕様上エラーが出る場合は、強制入 力処理するか別表四で加算・社外流出項目とします。 なお、100%子会社の繰越欠損金は、適格合併の場合は、原則として引き継ぐことが出来ます(法法 57②)。例外 的には、子会社となってから 5 年を経過しておらず、以下の「みなし共同事業要件」を満たさない場合は適格合併で も引き継げません(法法 57③)。さらに、親会社の欠損金も使用制限されるので注意が必要です(法法 57⑤)。グルー プ外部から欠損金を抱えた赤字企業を買収して、直後に黒字の親会社や兄弟会社と適格合併させるという租税回避 スキームを防止するための規制です。 共同事業要件とみなし共同事業要件の異同 比較表 共同事業要件 みなし共同事業要件(法令 112⑦) (1)金銭等不交付要件 不要 (2)従業員引継要件 不要

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3.無対価合併について 100%子会社を親会社が吸収合併する場合や 100%子会社同士の合併では、同じ企業グループ内での組織再編 成なので子会社の株主(=親会社)に新株を交付しない「無対価合併」が一般的です。旧・商法時代でも可能と解釈 されていましたが、会社法ではそれが明示されました(会 744①五)。 (1)会計上の取り扱い 債務超過の 100%子会社と合併する場合で新株を発行しない無対価合併のケースは、会社計算規則 35 条が適用 されます。しかし、無対価合併の場合に資本金や準備金を増加させることは不自然なため、子会社の株主資本の各 項目を原則として引き継ぎ、増加する払込資本の内訳項目は、子会社の資本金及び資本準備金はその他資本剰余 金として引き継ぎ、利益準備金はその他利益剰余金として引き継ぎます(企業結合適用指針 437-2)。 (2)税務上の取り扱い 法人税法上は、無対価での合併が適格合併の要件である金銭等不交付要件を満たすかかが気になるところです (法法 2①十二号の八)。この点については、合併法人の新株を交付しなくても、金銭等の交付に該当しないので適 格合併の要件を満たすものとされます。 (3)平成 22 年度税制改正 法人税法上の無対価での組織再編成(合併、会社分割)の取り扱いを明確化すること、適格合併の際の繰越欠損金 の制限措置が見直しされることが公表されています。具体的には、設立時から継続的に 100%子会社であった場合 は合併する際の欠損金の制限措置が適用除外とされました(新・法法 57③④)。これにより、親会社の特定資本関係 が成立した事業年度以前の繰越欠損金が利用可能となります。また、抱合株式については、譲渡損益を計上しない ことになりました。この取扱いは、平成 22 年 10 月 1 日から適用されます。 4.参考 連結配当規制とは、ある事業年度の末日の翌日からその事業年度の翌期の末日までの間における、当該株式会 社の分配可能額の算定において、連結ベースと単独ベースでの分配可能額を比較し、いずれか小さい方を分配可 能額とすることを選択することをいいます(会計規 2③五十一)。連結計算書類を作成している会社は、各事業年度 ごとに任意に選択することが出来ます。連結配当規制の適用会社は、その適用事業年度の前事業年度の決算書に 注記して開示する必要があります(会計規 115)。平成 21 年 3 月期決算で連結配当規制を採用している主要な上場 企業は、以下の通りです。 ・日本バルカー工業(株) ・イオン北海道(株) ・日野自動車(株) ・サンケン電気(株) ・(株)香川銀行 ・(株)近鉄エクスプレス ・パナソニック(株) ・(株)岡三証券グループ ・セイコーホールディングス(株) ・アイフル(株) ・大和工業(株) ・(株)丹青社 ・宝印刷(株) ・(株)ニッピ ・三菱鉛筆(株) ・クリナップ(株) ・(株)富士通ビジネスシステム ・東映(株)

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連結配当規制の適用会社を選択するメリット・デメリット比較は、以下の通りです。 メリット ① 連結配当規制適用会社の子会社間における親会社株式の取得の柔軟化(会施規 23①十二) ② 連結配当規制適用会社が、簿価債務超過の子会社を吸収合併消滅会社とする組織再編を実行する場合 に簡易組織再編によることが可能 デメリット 連結ベースでは配当可能利益がなく無配銘柄となり、上場企業としての責任を果たせない。株価が下落する。 5.100%子会社から親会社への分割型吸収分割 親から子ではなく子から親へその事業の一部を会社分割する場合も、部分的に合併したかのように抱き合わせ株 式消却損益が親会社の単独損益計算書に発生します(企業結合適用指針 218(2)、206(2)①ア)。消却損が生じる 場合は、上記1.と同様に株主総会の特別決議が必要となります。

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本レターに掲載している情報は、一般的なガイダンスに限定されています。この文書は、個別具体的ケースに対する会計・税務のア ドバイスをするものではありません。会計上の判断や税法の適用結果は、事実認定や個別事情によって大幅に異なることがありえます。 また、解説の前提となる会計規則や税制が変更されている可能性もあります。実際に企画・実行される場合は、当事務所の担当者にご 確認ください。

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