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(1)

チュートリアルはじめての超音波圧電素子:圧電材料の選択法,特性測定法や等価回路,そして応用例について

はじめての水中超音波トランスデューサ

*

竹 内 真 一

(桐蔭横浜大学)∗∗ 43.30.−k, Yj; 43.38.Hz

1. は じ め に

初心者を対象にして,空中超音波トランスデュー サと水中で使用される圧電超音波トランスデュー サのちがい,探信儀や魚群探知機,医療用超音波 診断装置などの水中超音波トランスデューサの応 用,これらに用いる超音波トランスデューサの材 料に求められる特性,超音波トランスデューサの 基本的な構造及び等価回路などについて述べる。

2. 空中超音波トランスデューサと水中超音波

トランスデューサ

2.1

音響負荷のちがい 超音波の伝搬媒質として空気と水を比較した場 合,固有音響インピーダンス,密度,音速が大き く異なっている。このちがいは,空中超音波トラ ンスデューサと水中超音波トランスデューサの構 成に決定的な影響を及ぼしている。表

–1

に示すよ うに空気中の固有音響インピーダンスは

4

.08 ×

10

2

[kg m

−2

s

−1

]

,密度は

1

.2 × 10

−3

[g/cm

3

]

,音 速は約

340 [m/s]

であるのに対して,水中の固有 音響インピーダンスは

1

.48 × 10

6

[kg m

−2

s

−1

]

, 密度は

1 [g/cm

3

]

,音速は約

1,480 [m/s]

と非常 に大きい。空気の密度は水の約

1,000

分の

1

,空 気の音速は水の約

4

分の

1

,空気の固有音響イン ピーダンスは水の約

2,500

分の

1

である。従って, 空中超音波トランスデューサ内の圧電振動子は, 空気中において強い共振状態で振動する。そのた め,空中超音波トランスデューサをインパルス状 の持続時間の短い電気信号で駆動しても,トランス デューサは機械的に非常に長く振動が持続してし まう。これに対して,水中超音波トランスデュー サは密度や固有音響インピーダンスの大きな水中 Tutorial on the underwater or medical ultrasound

transducer.

∗∗Shinichi Takeuchi (Faculty of Biomedical Engineer-ing, Toin University of Yokohama, Yokohama, 225– 8503) e-mail: shin1@toin.ac.jp で動作するため,空気に比べて機械的なダンピン グ効果が大きく作用するので,機械的振動を短時 間で終息させることが可能である。音響整合層や 背板をうまく設計することで,持続時間が非常に 短く距離分解能の優れた超音波トランスデューサ を実現できる可能性を有している。

2.2

周波数帯域のちがい 空中超音波トランスデューサでは,圧電振動子 の周囲の音響負荷の固有音響インピーダンスが圧 電振動子の固有音響インピーダンスに比べて非常 に小さいので,圧電振動子は強い共振をする。そ のため,様々な工夫をしても,空中超音波トラン スデューサの送波感度や受波感度等の周波数特性 は非常に狭帯域となる。これに対して,水中超音 波トランスデューサでは,空気よりも密度や固有 音響インピーダンスがけた違いに大きな水中で動 作するため,音響負荷である水による機械的なダ ンピング効果が大きく作用するため,音響整合層 や背板をうまく設計することで距離分解能の優れ た広帯域超音波トランスデューサを実現できる可 能性を有している。

2.3

空中超音波トランスデューサの構造 空気中では密度や固有音響インピーダンスが非 常に小さいため,高音圧の発生は困難だが,大き な変位や振動速度を発生させることは比較的容易 である。そのため,

20 kHz

100 kHz

以下の低周 波数域で使用する空中超音波トランスデューサで は,バイモルフ振動子あるいは金属板に振動子を 張り付けた構造を用いて,たわみ振動による大き な振動変位や振動速度を発生させるようにしたも のが多い。低周波域で使用するバイモルフ振動子 を用いた開放型空中超音波トランスデューサの構 造図と等価回路を図

–1

に示す

[1]

3. 水中超音波トランスデューサの応用

応用面から水中超音波トランスデューサを分類

(2)

表–1 様々な媒質の音響特性 媒質 密度 [g/cm3] 音速 [m/s] 固有音響 インピーダンス ×106[kg m−2s−1] 空気 1.2 × 10−3 340 0.00041 水 1 1,480 1.48 生体組織 血液 1.06 1,560∼1,600 1.65∼1.70 脂肪 0.92 1,480 1.36 筋肉 1.07 1,580∼1,610 1.70∼1.72 肝臓 1.06 1,580∼1,610 1.67∼1.71 骨 1.38∼1.8 2,700∼3,800 3.70∼6.84 プラスチック 0.90∼1.20 1,900∼2,700 1.71∼3.24 鉄 7.9 5,300 41.9 図–1 バイモルフ振動子を用いた空中超音波センサ すると,ソナーと超音波診断装置が重要である。 これらについて以下に解説する。

3.1

ソ ナ ー

ソナー(

SONAR

)は,

SOund NAvigation and

Ranging

の省略語であり,音波航法及び測距法を 意味する。ソナーは,軍事,防衛を主用途とする 探信儀と漁業やレジャーに用いる魚群探知機に分 類される。

(1)

探信儀 探信儀は,不法侵入してくる艦船や潜水艦,魚 雷や機雷の探知に用いるソナーである。探信儀に は,自ら音波を標的に送信して,標的からの反射 超音波を受信することで標的の位置情報を得るア クティブ・ソナーと,自らは音波を送信せずに標 的が発する音波を受信するだけで標的の位置を計 測するパッシブ・ソナーがある。アクティブ・ソ ナーは自らも音波を送信するので,相手に気付か れてしまう危険があるが,パッシブ・ソナーは自 ら音波を送信しないので,相手に自分の存在を気 付かれにくいというメリットがある。しかし,相 手のステルス技術の向上によって静穏化されてし まうと探知が困難になる。その場合には,危険を 承知でアクティブ・ソナーに頼ることになる。 このような探信儀の場合,相手が自分の存在に 気付く前に,相手の位置を探知しなければならな いので,分解能もさることながら探知可能距離を なるべく長距離化することが重要である。そのた めに,超音波トランスデューサに求められる性能 の中でも高出力が最も重要と考えられる。

(2)

魚群探知機 漁船に搭載した魚群探知機の送波器から超音波 パルスを水中に向けて送信したときに,その超音 波の伝搬経路に魚群がいると,超音波パルスは魚 にあたって反射し,その漁船に戻ってくる。戻っ てきた反射超音波パルスを受波器で測定すると, 送波から受波までの伝搬遅延時間から魚群の位置 が分かる。また,反射超音波パルスの強弱や位置, 深さから,魚種や魚量を推定する。

(3)

ソナー用超音波トランスデューサ ソナーや魚群探知機は遠方の標的や魚群を探知 する必要があるので,水中超音波トランスデュー サに求められる重要な性能として,高感度なこと が重要である。超音波トランスデューサが高感度 であるためには,電気機械変換係数が大きいこと, 機械的及び電気的損失が小さいこと,更に機械的 強度に優れている必要がある。 このように,ソナーや魚群探知機に用いられる 水中超音波トランスデューサは,図

–2

及び図

–3

に 示すような構造を有するものが多い

[1]

。 図

–2

は,数十

kHz

∼百

kHz

以下の比較的低い 周波数帯で使用するために,圧電振動子としてラ ンジュバンタイプ振動子を使用している。圧電セ ラミック振動子で数十

kHz

の共振をさせるために は

10 mm

以上の厚さが必要になるが,そのよう な圧電セラミックスの分極処理は困難である。そ

(3)

図–2 ゴムモールド型水中超音波トランスデューサ 図–3 樹脂モールド型トランスデューサ こで,圧電セラミックスの両面(表面と裏面)に ジュラルミンなどの金属ブロックを装着して,そ の複合共振で低周波数の振動を実現するランジュ バンタイプ振動子を用いている。 図

–3

は,数百

kHz

程度の比較的高周波帯で使用 することを目的とした水中超音波トランスデュー サの構造図である。この周波数帯域の超音波の送 受信には,特にランジュバンタイプ振動子を用い る必要もなく,単板の圧電振動子だけで十分であ る。むしろ,距離分解能の改善や周波数選択の幅 を広げるために,圧電振動子の前面に音響整合層 を装着した構造となっている。

3.2

超音波診断装置 医療用超音波診断装置は,超音波応用機器の花 図–4 超音波診断装置(本多電子 HS-2600 型) 形的な存在である。図

–4

は,その一例である。 超音波プローブから生体組織に向かって非常に 持続時間の短い超音波パルスを照射して,生体中 の音響特性の異なる境界部分で反射されて超音波 プローブに戻ってくる反射超音波パルスを受信す る。受信した超音波パルスから体内の画像データ を再構成するシステムである。生体内部は,空中 や水中の標的とは異なり,非常に小さな空間(生 体)内に多くの異なった組織が複雑な位置関係を 保ちながら存在する。そのため,距離分解能が非 常に重要となる。表

–1

に示すように,生体の大部 分を占める脂肪,筋肉,各種の臓器や血液のよう な生体軟部組織の密度,音速,固有音響インピー ダンス等の音響データは,ほぼ水の音響データと 近似しているので,超音波診断装置用の超音波プ ローブも代表的な水中用超音波トランスデューサ と考えることができる。

(1)

医療用シングルタイプ超音波プローブ 医療用超音波診断装置に用いられている超音波 トランスデューサは超音波探触子(超音波プロー ブ)と称している。医療用超音波プローブの基本 形として構造の最も単純なシングルタイプ超音波 プローブの構造図を図

–5

に示す。 医療用の超音波診断装置では,上述のように,小 さな空間に多くの臓器などの構造物がひしめいて 存在しており,これらを

B

モード診断画像上にキ ちんと表示するためには,極めて持続時間の短い 短パルス状の超音波を送受信できる必要があり,そ のためには送波感度や受波感度の周波数特性の広

(4)

図–5 シングルタイプ医療用超音波プローブ 図–6 医療用アレイ型超音波プローブ 帯域なものが望ましい。このような超音波プロー ブは,図

–5

に示すように圧電セラミック振動子の 前面には音響整合層が装着されおり,圧電セラミッ ク振動子の背面には背板(バッキング材)が装着 されている。基本的には,魚群探知機のプローブ として用いられている図

–3

に示す樹脂モールド型 トランスデューサと類似の構造を有している。

(2)

医療用アレイ型超音波プローブ 容易に

B

モード超音波画像(断層像)を得るこ とができるように開発された

1

次元リニア電子走 査用アレイ型超音波プローブの構造図を図

–6

に 示す。 この超音波プローブも,シングルタイプの超音 波プローブと同様に圧電振動子の前面には音響整 合層があり,背面には背板(バッキング材)がつ いている。最も重要な差異は,振動子を幅

0.2

0.3 mm

の多数の短冊状振動子にスライスして背 板(バッキング材)上にアレイ化(配列化)して いる点である。アレイ化した多数の短冊状振動子 の中から,電子スイッチを用いて送受信回路に接 続する振動子を順番に切り替えて,超音波プロー ブを患者さんの体表に固定したまま超音波ビーム を走査できるように工夫してある。

4. 水中超音波トランスデューサの基本構成

水中超音波トランスデューサの基本構造は,図

–5

や図

–6

に示すように圧電振動子の背面には背板が あり,前面には,音響整合層がついている。ここ では,水中超音波トランスデューサの基本的な構 成要素について解説する。

4.1

圧電振動子 圧電振動子は,電気入力信号を音響信号に変換 したり,逆に音響信号を電気信号に変換する電気 音響変換機であり,水中超音波トランスデューサ において最も重要な部分である。圧電振動子には, 圧電セラミック振動子や圧電単結晶振動子,高分 子圧電フィルム振動子がある。 圧電セラミック振動子は,最も多用されている 圧電振動子であり,その中でも

PZT

と呼ばれて いるジルコン酸チタン酸鉛を基本とした圧電セラ ミック振動子は高感度であることから最も多用さ れている。また,特性に強い異方性を有すること を特徴とするチタン酸鉛や,元祖圧電セラミック ともいうべきチタン酸バリウムもある。最も多用 されている

PZT

系圧電セラミック振動子には,機 械的品質係数

Q

m が小さく,誘電損失

tan

δ

が 大きい

PZT

ソフト系圧電セラミックス(ソフト 材,

Low

Q

材)や機械的品質係数

Q

m が大きく, 誘電損失

tan

δ

が小さい

PZT

ハード系圧電セラ ミックス(ハード材,

High

Q

材)がある。ハー ド材は

Q

値が大きく,感度の周波数帯域幅は狭く ても,高感度が期待できるので,長距離まで超音 波を伝えて探知できる必要のある探信儀や魚群探 知機等のソナー用の超音波トランスデューサに適 している。ソフト材は

Q

値が小さく,広帯域な感 度の周波数特性を期待できるので,持続時間の短 い超音波パルスを送受信することで距離分解能の 高い医療用超音波プローブに適している。しかし, 単純にハード材かソフト材かだけが判断基準では なく,送受信回路との電気的なインピーダンス整 合の容易さなどを考慮して,比誘電率の大きさを 優先して選択することもある。また,感度は低い が,振動子内の不要な雑エコーなどを抑制するた めに,異方性を有するチタン酸鉛(

PT

系)圧電 セラミック振動子を使用することもある。 圧電振動子の挙動を示すために,

(1)

式,

(2)

式 のような圧電方程式

[2–5]

を用いる。

(5)

D = ε

S

E + e S

(1)

T = c

E

S − e E

(2)

ここで,

D

は電極面の電束密度,

E

は電極間の 電界,

T

S

は電極面(前面及び背面の音響端) に発生する応力及びひずみである。また,

ε

S はひ ずみを一定とした場合の誘電率,

c

Eは電界を一定 とした場合の弾性定数(スティフネス),

e

は圧電

e

定数である。また,

Newton

の運動方程式とし て以下の

(3)

式を用いる

[2–5]

ρ ·

2

ξ

∂t

2

=

∂T

∂x

(3)

振動子の前面及び背面の音響端(電極面)におけ る音響的な境界条件と電気的な境界条件を考慮 しながら

(1)

式と

(2)

式の圧電方程式と

(3)

式の

Newton

の運動方程式を連立させて,振動子の前 面及び背面の音響端に作用する応力

T

1

T

2,粒子 速度

v

1

v

2と電極面間に作用する電界強度

E

,電 流

i

の間に成立する関係式は,以下の

(4)

式∼

(6)

式のようになる

[2–5]

。また,マトリクスを用いて

(4)

式∼

(6)

式を整理すると

(7)

式を得る。 T2 = φ · E − j · φ 2 ωC0 · (v1− v2) + jZ 0 sinωl v  · (v1− v2) − j · v2· Z0tan  ωl 2v  =  j · φωC2 0 + jZ 0 sinωl v   · v1  j · φωC2 0 + jZ 0 sinωl v  − j · Z0· tan  ωl 2v  · v2+ φ · E (4) T1=  j · φ2 ωC0 + jZ 0 sinωl v  − j · Z0· tan  ωl 2v  · v1  j · φ2 ωC0 + jZ 0 sinωl v   · v2+ φ · E (5) i = φ · v1− φ · v2+ jω · C0· E (6) ⎡ ⎢ ⎣ T1 T2 i ⎤ ⎥ ⎦= ⎡ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎣ j· φ2 ωC0+ jZ0 sin  ωl v  −j·Z0·tan  ωl 2v  j· φ2 ωC0+ jZ0 sin  ωl v  φ j· φωC2 0+ jZ0 sin  ωl v  j· φωC2 0+ jZ0 sin  ωl v  −j·Z0·tan  ωl 2v  φ φ φ jωC0 ⎤ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎦ · ⎡ ⎢ ⎣ v1 v2 E ⎤ ⎥ ⎦ (7) ただし,φ = − e εS · C0 = − S A l , C0 = εS· S A l , q = D1· SA, cD = cE + e 2 εS

(7)

式から図

–7

に示す

Mason

の等価回路を組み 立てることができる。

4.2

背 板 背板は,壊れ易い又は変形し易い圧電振動子を 背面から機械的に支持する機能と,圧電振動子か ら背面側に放射され再び圧電振動子に戻る不要な 超音波を吸収する吸音材の機能を兼務している。 背板材料としては,エポキシ樹脂やアクリル系 樹脂,ゴム系樹脂の中に金属酸化物やセラミック 系微粒子等をフィラーとして混合して固化させた 物質を使用する。また,最近はフェライトゴムが 背板材料として多用されている。圧電振動子背面 から背板に入射した超音波が完全に吸音されて, 圧電振動子に戻ることがないとすれば,等価回路 は,固有音響インピーダンス

Z

b

=

ρ

b

× c

b の単 純な音響放射抵抗として考えることができる。 圧電振動子の背面に固有音響インピーダンス

Z

b

=

ρ

b

× c

b の背板が装着された状態を等価回路で 表現すると,図

–8

のようになる。図

–7

の等価回 路の背面の音響端子間に背板を装着すると,図

–9

に示すような電気端子対と前面の音響端子対の

2

端子対回路網(

4

端子回路網)で表すことができ る。この

4

端子回路網を

F

パラメータ回路網で表 すと,

F

パラメータの各要素

A

B

C

D

は,

(8)

式になる

[5]

(6)

ATR BTR CTR DTR  = 1 φ · Q 1 j · φ2 ω·C0 jω · C0 0  · ⎡ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎣ cos  ω · l v  + jzBsin  ω · l v  Z0  zBcos  ω · l v  + j sin  ω · l v  j sin  ω · l v  Z0 2  cos  ω · l v  − 1  + jzBsin  ω · l v  ⎤ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎦ (8) ただし,Q = cos  ω · l v  − 1 + jzBsin  ω · l v  , zb= ZB Z0 図–7 厚み振動縦効果圧電振動子の挙動を表す Mason の 等価回路 [2–5] 図–8 Mason の等価回路で表した圧電振動子の背面に固 有音響インピーダンスZb=ρb× cbの背板が装着され た状態の等価回路

4.3

音響整合層 固有音響インピーダンスの異なる二つの媒質の 境界に超音波が入射しようとすると,その一部は反 射し,残りが透過する。ただし,両媒質はともに,境 界と反対側が無限に広がり反射のない半無限媒質 であるとする。圧電セラミック振動子は一般に固 有音響インピーダンスが大きく,例えば代表的な圧 電材料の

C6

材(富士セラミックス)は約

31 MRayl

31

×10

6

kg

·m

−2

·s

−1)であり,一方,超音波伝搬媒 質である水や生体組織は約

1.5 MRayl

である。こ のように,固有音響インピーダンスの異なる媒質

I

と媒質

II

の境界に超音波が入射すると,超音波エネ ルギーの一部は反射し,残りは媒質

II

に透過する。 媒質

I

の固有音響インピーダンスが

Z

1

=

ρ

1

×c

1, 媒質

II

の固有音響インピーダンスが

Z

2

=

ρ

2

×c

2, とすると,両媒質の境界における音圧反射率

R

p と音圧透過率

T

pは,おのおの

(9)

式,

(10)

式で表 され,エネルギー反射率

R

I と音圧透過率

T

Iは, おのおの

(11)

式,

(12)

式で表される

[6]

。 音圧反射率

R

p

=

Z

2

− Z

1

Z

1

+

Z

2

(9)

音圧透過率

T

p

=

2

· Z

2

Z

1

+

Z

2

(10)

エネルギー反射率

R

I

=



Z

2

− Z

1

Z

1

+

Z

2



2

(11)

エネルギー透過率

T

I

=

4

· Z

1

· Z

2

(

Z

1

+

Z

2

)

2

(12)

固有音響インピーダンスが約

31 MRayl

の圧電 振動子(例えば,富士セラミックスの

C6

材)に 相当する媒質

I

から固有音響インピーダンスが約

1.5 MRayl

の水や生体組織のような媒質

II

との境 界に超音波が入射する場合,音圧の約

91%

,音響 エネルギーの約

82%

が反射し,媒質

II

には音圧 の約

9%

,音響エネルギーの約

18%

しか透過でき ない。このような場合には,図

–10

に示すように 固有音響インピーダンスの大きく異なる媒質

I

と 媒質

II

の間に,両媒質の中間の固有音響インピー ダンス

Z

MLを有する中間層(音響整合層という) を挿入することで,反射を抑えて,媒質

II

への透 過率を向上させることができる。

(7)

図–9 Mason の等価回路で表した圧電振動子の背面に固有音響インピーダンス Zb=ρb× cbの背板(バッキング材)が装着された状態の等価回路 [4](電 気側端子対を入力ポート,前面側音響端子対を出力ポートとした等価回路) 図–10 固有音響インピーダンスの異なる媒質 I と媒質 II の境界に中間層が存在する場合の,入射した超音波の反 射,透過 図–11 音響整合層の 1 次元音響伝送線路モデル

T

I

= 4

·



Z

1

Z

ML



2

·



1+tan

2

(

θ

ML

)

Z

1

Z

2

+1



2

+



Z

1

Z

ML

+

Z

ML

Z

2



2

· tan

2

(

θ

ML

)

(13)

ただし,

θ

ML

=

ω

c

ML

· l

ML

= 2

π ·

l

ML

λ

ML

,

Z

ML

=



Z

1

· Z

2 このとき,媒質

II

への超音波エネルギー透過 率

T

Iは,

(13)

式で表せる

[4]

(13)

式の分母は,

Z

ML

=

Z

1

· Z

2の関係を満足するときに最少とな り,超音波エネルギー透過率

T

Iは,最大値となる。 この中間層(音響整合層)の厚さが,

4

分の

1

波長の奇数倍のときに,媒質

II

への超音波エネル ギー透過率が,最大値

T

I

= 1

となる。このよう な中間層を

4

分の

1

波長音響整合層という。音響 整合層を伝搬する超音波は,同軸ケーブルや導波 管と同様の伝送線路の等価回路で表現できる

[3]

。 超音波が伝搬する中間層(音響整合層)の等価回 路を図

–11

に示す

[3]

。 更に,

F

パラメータ四端子マトリクスを用いる と,

(14)

式が成り立つ。



A

ML

B

ML

C

ML

D

ML



=

cos



ωl

ML

v

ML



j Z

ML

· sin



ωl

ML

v

ML



j sinh



ωl

ML

v

ML



Z

ML

cos



ωl

ML

v

ML



(14)

背板を有する圧電振動子の前面(音響負荷側) に音響整合層を装着したときの等価回路は,図

–9

に示す背板を有する圧電振動子の

Mason

の等価 回路と,図

–11

に示す音響整合層を表す等価回路 を用いて,図

–12

の等価回路で表すことができる。 なお,図

–12

は,圧電振動子に二重整合層(

4

分の

1

波長音響整合層の

2

段重ね)を装着した超音波 プローブの等価回路を示す。また,この等価回路 を,

F

パラメータ四端子マトリクスで表すと,

(14)

式となる。

(8)

A B C D  = ATR BTR CTR DTR  · A1 B1 C1 D1  · A2 B2 C2 D2  · · · · An Bn Cn Dn  = 1 φ · Q ⎡ ⎣ 1 j · φ 2 ω · C0 jω · C0 0 ⎤ ⎦ · ⎡ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎣ cos  ω · l v  + jzBsin  ω · l v  ZTR  zBcos  ω · l v  + j sin  ω · l v  j sin  ω · l v  Z0 2  cos  ω · l v  − 1  + jzBsin  ω · l v  ⎤ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎦ · ⎡ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎣ cos  ω · l1 v1  j Z1· sin  ω · l1 v1  j sin  ω · l1 v1  Z1 cos  ω · l1 v1  ⎤ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎦ · ⎡ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎣ cos  ω · l2 v2  j Z2· sin  ω · l2 v2  j sin  ω · l2 v2  Z2 cos  ω · l2 v2  ⎤ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎦· · · ⎡ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎣ cos  ω · ln vn  j Zn· sin  ω · ln vn  j sin  ω · ln vn  Zn cos  ω · ln vn  ⎤ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎦ (15) ただし,実際の超音波プローブの設計に際して, 音響整合層の固有音響インピーダンスを

(13)

式の

Z

ML

=

Z

1

· Z

2 のように単純な考え方で決定す るのは不適切である。

(13)

式は,二つの半無限媒 質

I

及び

II

の間に挿入する中間層の固有音響イン ピーダンスを決定する場合に適した式ではあるが, 超音波プローブに用いられている圧電振動子の厚 さは半無限大ではなく

2

分の

1

波長又は

4

分の

1

波長であり,その背面には背板が装着されている からである。圧電振動子の背面が空気の場合も同 様である。そこで,

Goll

ら,

Souquet

ら,

Desilets

らによって音響整合層の固有音響インピーダンス の決定法が研究されている

[7–9]

。これらの音響 整合層の固有音響インピーダンスの式を表

–2

に示 す。

Desilets

らによって提案された音響整合層の 固有音響インピーダンスの式を用いると最も良好 な特性を示すと言われている。 図

–12

の等価回路で表される送信用超音波プロー ブ(圧電振動子として

C-6

材を使用)から水中に 放射された超音波パルスを,対向して設置した同 一の特性を有する超音波プローブで受信する場合 の,送受信の伝達関数(

Sittig

らによる)

[5]

を計 算した結果を図

–13

に示す。 図–12 背板を有する圧電振動子の前面に二重音響整合層を装着した場合の等価回路

(9)

表–2 整合層の固有音響インピーダンスの式 研究者 整合層の固有音響インピーダンスの式 単一整合 二重整合 第一整合層 第二整合層 Goll √Z0· ZM 3 Z02· ZM 3 Z0· ZM2 Souquet 3 2Z0· ZM2 Desilets 3 Z0· ZM2 7  Z4 0· ZM3 7  Z0· ZM6 図–13 各種音響整合層付超音波プローブの伝達関数

図中には,

Goll

ら(

Z

ML

= 7

.8 MRayl

),

Souquet

ら(

Z

ML

= 5

.7 MRayl

)及び

Desilets

ら(

Z

ML

=

4

.1 MRayl

)が提案した各固有音響インピーダン スの音響整合層を有する超音波プローブの伝達関 数を併記してある。前述したように図

–13

の計算 結果からも,

Desilets

らの提案した式を用いて決 定した音響整合層が,最適値に最も近い特性を示 すことが分かる。一方,圧電振動子の固有音響イ ンピーダンス

Z

0と音響負荷(水)の固有音響イン ピーダンス

Z

Mの幾何平均

Z

ML

=

Z

0

· Z

M を 用いる

Goll

らの音響整合層を採用すると,中心 周波数で伝達関数が大きく割れてしまい,不適切 であることも分かる。

5. お わ り に

本稿では,初心者を対象にして,超音波を伝搬 させるべき媒質の特性に由来する空中超音波トラ ンスデューサと水中超音波トランスデューサの動 作,設計上のちがいについて述べた。また,探信 儀や魚群探知機,医療用超音波診断装置などの水 中超音波トランスデューサの応用と,これらの超 音波トランスデューサの用いる圧電材料や背板, 音響整合層等の材料に求められる特性についても 述べた。更に,超音波トランスデューサの基本的 な構造及び等価回路とその考え方について解説し た。著者の力不足と紙面の関係から十分な情報を 伝えることができたか不安であるが,少しでもこ の分野で活躍しようとする方々のお役に立てれば 幸いである。 文 献 [ 1 ] 電子材料工業会 監修, 圧電セラミックスとその応用 (電波新聞社, 東京, 1974), pp. 181–210.

[ 2 ] G.S. Kino, Acoustic waves: Device, Imaging, and

Analog Signal Processing (Prentice-Hall Inc.,

Engle-wood Cliffs, NJ, 1987).

[ 3 ] J.F. Rosenbaum, Bulk Acoustic Wave Theory and

Device (Artec House, Norwood, MA, 1988).

[ 4 ] 山本美明, 超音波基礎工学(日刊工業新聞社, 東京, 1988).

[ 5 ] E.K. Sittig, “Effect of bonding and electrode lay-ers on the transmission parametlay-ers of piezoelectric transducers used in ultrasonic digital delay lines,”

IEEE Trans. Sonics Ultrason.,SU-16, 2–10 (1969).

[ 6 ] 実吉純一, 電気音響工学(コロナ社, 東京, 1976), pp. 20–23.

[ 7 ] J.H. Goll, “The design of broad-band fluid-loaded ultrasonic transducers,” IEEE Trans. Sonics

Ultra-son.,SU-26, 385–393 (1979).

[ 8 ] J. Souquet, P. Defranould and J. Desbois, “De-sign of low-loss wide-band ultrasonic transducer for noninvasive medical application,” IEEE Trans.

Son-ics Ultrason.,SU-26, 75–81 (1979).

[ 9 ] C.S. Desilets, J.D. Fraser and G.S. Kino, “The design of efficient broad-band piezoelectric trans-ducer,” IEEE Trans. Sonics Ultrason.,SU-25, 115– 125 (1978).

参照

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