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(2)里山の整備

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Academic year: 2021

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森林の現状と課題

1 森林を取り巻く状況の変化

○ 戦後、荒廃した国土の復興と急増した木材需要に応えるため、昭和30年代には、 盛んに木材生産が行われるとともに、成長が早く利用価値の高い針葉樹の造林や木材 の輸入自由化等の対策が進められました。 ○ こうした状況を背景に、木材生産の量的拡大に向けて林業振興を図ることを目指し た林業基本法が昭和39年に制定されました。 この法律では、森林の持つ公益的機能は、基本的には、林業振興を通じて森林所有 者による森林整備が進み、その結果として発揮されるという考え方に立っていました。 ○ しかし、昭和50年代のなかば以降、それまで森林整備を支えてきた林業が、採算 性の悪化等により停滞すると、十分な整備が行われず、間伐などの手入れが不足した 森林が見られるようになりました。 [木材価格、林業労働者賃金の推移] [林業産出額、素材生産量の推移] 0 5000 10000 15000 S53 S58 S63 H5 H10 H15 0 1000 2000 3000 4000 林業産出額 素材生産量 億円 万㎥ 5000 15000 25000 35000 S53 S58 S63 H5 H10 H15 スギ丸太価格[円/㎥] (14~28cm、4m) 木材伐出業賃金[円/人日] 円 参考)林野庁「農林水産統計年報」(全国数値) ○ 一方、集落周辺に広がる里山林は、薪炭材や竹、落葉の採取などのために、地域住 民の日常生活の中で継続的に利用されることで維持管理されていましたが、薪や炭な どの利用が少なくなるとともに、放置された森林が多くなってきました。 ○ こうした状況のまま推移すれば、森林の公益的機能の発揮にも支障をきたすことが 懸念される状況となってきたことから、平成13年には、林業基本法が大幅に改正さ れて森林・林業基本法として成立しました。 これにより、それまでの木材生産主体の政策から、森林の持つ機能を将来にわたっ て持続的に発揮させるための政策へと大きく転換され、森林の持つ多面的機能の発揮 を重視した整備、保全が進められています。

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2 森林の機能

○ 森林の持つ様々な機能(多面的機能)は、大きく分けると、木材やきのこなどの林 産物を供給する経済的機能と、自然環境の保全や災害の防止などの公益的機能とに分 けられます。 ○ 特に公益的機能の恩恵は、県民全体が享受しているものですが、こうした機能を将 来にわたって持続的に発揮させていくためには、天然林であっても人工林であっても、 それが良好な状態に保たれていることが必要です。 [森林の公益的機能] 生物多様性保全 多くの野生動植物の生息・生育の場となるなど、遺伝子や生物種、生 態系を保全する働き 地球環境保全 二酸化炭素の吸収や蒸発散作用により、地球規模で自然環境を調節す る働き 土砂災害防止 土壌保全 森林の下層植生や落枝落葉が地表の侵食を抑制するとともに、森林の 樹木が根を張り巡らすことによって土砂の崩壊を防ぐ働き 水源かん養 森林の土壌が、降水を貯留し、河川へ流れ込む水の量を平準化して洪 水、渇水を緩和するとともに、雨水が森林土壌を通過することにより、 水質を浄化する役割 快適環境形成 蒸発散作用等により気候を緩和するとともに、防風や防音、樹木の樹 冠による塵埃の吸着、ヒートアイランド現象の緩和などにより快適な 環境形成に寄与する働き 保健・レクリエー ション フィトンチッドに代表される樹木からの揮発性物質により直接的に 健康を増進させたり、行楽やスポーツの場を提供する働き 文化 森林の景観が行楽や芸術の対象として人々に感動を与えたり、日本人 の自然観の形成に寄与する働き 参考)日本学術会議「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について (答申)」(平成 13 年 11 月) [森林の公益的機能の評価額] 評 価 額(億円/年) 機 能 の 種 類 全 国 愛知県 二酸化炭素吸収 12,391 136 表面浸食防止 282,565 2,508 表層崩壊防止 84,421 749 洪水緩和 64,686 677 水資源貯留 87,407 1,217 水質浄化 146,361 1,946 化石燃料代替 2,261 111 保健・レクリエーション(うち保養) 22,546 200 合 計 702,638 7,544 参考)1 日本学術会議「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能 の評価について(答申)」(平成 13 年 11 月) 2 愛知県農林水産部資料 2

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○ 近年、台風等による山地災害の多発や地球温暖化問題等もあって、森林の公益的機 能に対する社会的な認識は高まっています。 ○ 内閣府が昭和55年から行なっている世論調査によると、国民が森林に期待する機 能として、木材の生産よりも、災害の防止や地球温暖化防止、水資源のかん養等に関 心が集まっています。 [森林に期待する働きに関する世論調査結果] 災害防止 地球温暖化防止 水資源かん養 大気浄化・騒音緩和 保健休養 野生動植物 野外教育 木材生産 林産物生産 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 昭和55 61 平成5 11 15 順位 参考)林野庁「平成 16 年度森林・林業白書」 (注)期待する割合の高いものから順に並べている。

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3 愛知県の森林の現状

○ 愛知県の区域面積51万6千 ha のうち、森林は22万 ha で、森林率は43%とな っています。地域別では、尾張部の森林率が11%であるのに対し、三河部は58% となっています。 [土地利用の現況] 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 宅地 森林 農用地 道路 17% その他 43% 16% 9% 参考)愛知県「土地に関する統計年報平成 17 年版」 ○ 森林のうち、国有林を除く民有林は208千 ha で、そのうち人工林が132千 ha を占めており、民有林の人工林率は64%となっています。 人工林を樹種別に見ると、ヒノキが62千 ha で最も多く、次いでスギが5万 ha と なっており、この2種で人工林全体の85%を占めています。 一方、天然林は76千 ha で、これを分布地域別に見ると、山間地域に広がる奥山林 が42千 ha、都市近郊の里山林が34千 ha となっています。 [愛知県の森林の概要] 参考)愛知県「平成 16 年度愛知県林業統計書」 (注1)人工林とは、主に人が苗木を植えて造成した森林。天然林とは、主に自然に生えた木で 構成された森林。 (注2)天然林の面積には、竹林等を含む。 (注3)一般的に里山林とは、居住地近くに広がり、薪炭材の伐採等を通じて地域住民に利用さ れてきた森林を指すが、ここでは、その中でも特に都市部に隣接した地域の天然林、竹 林を里山林とし、その他を奥山林としている。 10% (5%) 民有林 208 千 ha 森林 220 千 ha 国有林 12 千 ha 天然林 76 千 ha 人工林 132 千 ha スギ・ヒノキ林 112 千 ha マツ林等 20 千 ha 里山林 34 千 ha (95%) (64%) (36%) (85%) (15%) (45%) (55%) 河川等 5% (5%) 奥山林 42 千 ha 4

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[愛知県の森林(民有林)の分布状況] 三河部 尾張部 人工林 天然林 参考)愛知県農林水産部資料 ○ こうした森林の中には、主に自然のバランスにより良好に維持されているものもあ りますが、特に人工林や里山林は、人の手で整備、管理を行うことで良好な状態が保 たれてきました。

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4 森林整備の現状と課題

(1)-1 人工林の現状

○ 人工林は植栽から伐採まで非常に長い年月を要しますが、その間、樹木の成長にあ わせて適期に手入れを行っていく必要があります。 [人工林作業の概要] 作業の種類 時期 内 容 地ごしらえ 植栽前 植栽する前に、植え付け場所に残った材や枝などを整理する作業 植栽 - 林地に目的樹種の苗木を植え付ける作業 下刈り 1~5 年 植栽木が健全に成長するために、他の草や低木を刈りとり被圧を 防止する作業 つる切り 適宜 稚樹の幹等に絡みつき、幹折れや幹曲がりの原因となるつるを取 り除く作業 除伐 6~15 年 育成の対象となる樹木の生育を妨げる他の樹木を切り払う作業 間伐 16~60 年 除伐後に行う作業で、森林を健全に成長させるため、樹木の混み 具合に応じて密度を調整するために伐採(間引き)する作業 ○ 本県の人工林の大半を占めるスギ・ヒノキ人工林は、戦後から盛んに造林が行われ てきた結果、16年生から60年生の森林が多くなっており、作業の中心は間伐とな っています。 ○ 今後15年間に1度は間伐が必要な森林は約7万2千 ha(スギ・ヒノキ人工林の 65%)あり、これを単純に平均すると年間4千8百 ha の間伐が必要になります。 [本県のスギ・ヒノキ人工林の林齢構成] 0千 10千 20千 1~ 5 6~ 1 0 11 ~ 15 16 ~ 20 21 ~ 25 26 ~ 30 31 ~ 35 36 ~ 40 41 ~ 45 46 ~ 50 51 ~ 55 55 ~ 60 61 ~ 65 66 ~ 70 71 ~ 75 76 ~ 80 81 ~ 85 86年 以 上 林齢 面積 (ha) (16~60年生) 参考)愛知県「平成 16 年度愛知県林業統計書」 6

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[間伐実施林] [手入不足の森林] 適切な間伐は、利用価値の高い林木を育成するだけではなく、林内に適度な空間が生 じ太陽の光が差し込み、下草や低木類が生え地表面を覆うことになり、植栽木と相まっ て土壌の流出を防ぐとともに、豊かな森林土壌を育み水源かん養機能等の公益的機能を 高度に発揮します。 また、間伐により元気な森林を育成することは、二酸化炭素の吸収源としての機能を 高め、地球温暖化防止に貢献したり、大気の浄化や安らぎや憩いの場の提供など、都市 住民の生活にも深く関わります。 間伐の意義

(1)-2 現行の施策

○ 間伐の実施は、近年、造林補助事業により約1千3百 ha、治山事業により約1千 ha、その他水源基金事業や市町村事業等により約8百 ha となっており、間伐必要面 積の3分の2程度の3千 ha 前後が実施されています。 [間伐推進のための事業の概要] 区 分 平成14~16 年度 平均間伐実績(ha) 内 容 等 森林所有者が行う間伐作業に対して補助を 行っています。 造林補助事業 1,293 保安林内で、全額公費による間伐を実施して います 治山事業 999 水源基金事業や豊田市の水道水源保全事業 等の地域独自の取組み等により間伐が実施 されています。 その他 796 合 計 3,088

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(1)-3 人工林整備の課題

○ 森林の多くが私有財産であることから、間伐等を始めとする森林整備の実施は、森 林所有者の意欲、意思に委ねられており、補助金などの援助があるものの、採算の合 わない所では、整備が進まない傾向があります。 このため、間伐の遅れが原因で下層植生の衰退した不健康な人工林が増え、公益的 機能の低下が懸念されます。 (奥地の人工林の整備) 林道などから遠い奥地の人工林は、採算性が悪いため、管理放棄されているところ も見られます。 そこで、水源かん養等の機能の低下を防ぐだけでなく、奥地林での多様な動植物の 生息、生育を促し、カモシカやイノシシなどによる農作物等の被害軽減策の一つとす るためにも、奥地の人工林の手入れが必要です。 (公道沿いの人工林の整備) 国道、県道などの公道は通行車両が多いため、安全上の問題などからその周囲の森 林では間伐などの作業がやりにくく、整備が遅れがちになり、地震や台風などの災害 時に生活、経済の生命線である公道への被害が心配されます。 そこで、公道沿いの森林を防災機能の高い森林として整備していくことが必要です。 8

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(2)-1 里山林の現状

○ かつて里山林※は、薪炭材や竹、落葉の採取などのために継続的に利用されること で維持管理されてきました。しかし、化石燃料がエネルギーの主体となったこと等に より、薪炭や肥料として利用されることが少なくなったため、放置された森林が多く なっています。 (※ここでは、都市部に隣接した地域の天然林、竹林を里山林としています。) ○ 一方で、生物多様性の確保や環境保全等の観点から、里山林の価値が再認識されて おり、ボランティア団体(約50グループ)などによる里山林整備が見られるように なってきましたが、その活動範囲は限られています。 [放置された里山林の状況] [ボランティアによる里山林整備の活動例]

(2)-2 現行の施策

○ これまで、里山保全活動を促進する里山保全アドバイザーの養成、生活環境保全林 の整備、県民と行政が協働した里山林整備等が行われています。 また、愛知万博の原点である「海上の森」において、里山に関する学習・交流や人 材の育成等の拠点づくりを進めるとともに、各地域の里山林整備の取組を一層促進す ることにしています。 [里山林整備のための事業等の概要] 区 分 内 容 等 森林整備、里山に関する学習交流の実施、指導的 人材の育成、情報発信などを行います。 あいち海上の森保全活用事業 治山事業 保安林内で、生活環境保全林の整備を行います。 県、市町村等と県民が協働して里山林整備などに 取り組んでいます。 その他

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(2)-3 里山林整備の課題

○ 里山林が放置されると生物多様性の確保や生活環境の保全、災害の防止等の公益的 機能の発揮に支障をきたす恐れがあります。また、里山林は森林環境学習や健康づく りの場の提供等、今日的な役割が期待されております。 このため、里山林の様々な役割に応じ、将来にわたって保全活用されるよう整備し ていく必要があります。 (里山林の実態の把握) 地域ごとに特色のある里山林の整備を進めるうえで、その里山林の利用の歴史や 生態系、生物の多様性などを調査、把握し、効果的な管理手法を研究していく必要 があります。 (里山林の生物多様性の保全) 里山林における生物多様性の保全を図るため、希少野生動植物の保護や生態系に 著しく影響を及ぼす外来種の放逐等の防止を進めていく必要があります。 (里山林整備のモデル林の整備) 各地域の里山林保全活動を促進するため、モデルとなる見本林の整備を進めてい くことが必要です。 (災害防止のための里山林の緊急整備) 里山林の中でも、特に集落や公共施設に接した森林では、山地災害防止のなどの 防災機能を高めるための整備が必要です。 10

参照

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