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Microsoft Word - H-08Y_J.doc

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(研究コード番号:2001GB018)

水素発生用バイオ分子デバイスの開発

研究代表者 Matthias Rögner ルール大学ボッフム:ドイツ 研究分担者 ○三宅 淳 産業技術総合研究所:日本 Karl-Erich Jäger ルール大学ボッフム:ドイツ Thomas Happe ボン大学:ドイツ Jean-Luc Popot CNRS, 国立科学研究センター:フランス 羽藤 正勝 産業技術総合研究所:日本 馬場 照彦 産業技術総合研究所:日本 研究期間:2001年4月~2004年3月 概要 太陽エネルギーを用いて水から水素を生産可能なバイオ分子デバイスの開発を目的とする。当該デバイスは、バ イオ分子である光化学系1、2(PS1, PS2, 光による水分解反応を行うタンパク質)、ヒドロゲナーゼ(H2ase, プロトンを 還元し水素発生を行うタンパク質)と、人工物質のITO電極、メチルビオロゲン(メディエーター)で構成される。これら の要素分子を電極基板上に三次元的に組織化することにより、光エネルギーを水素エネルギーに変換するデバイス の構築が可能である。PS2による水分解反応、PS1による電荷分離、H2aseによるプロトンの還元反応から成る各反応 行程全てを電極基板上で行うことは、開発期間中には成功しなかった。しかし、基板上へのPS1とH2aseの積層は可 能であり、各々の活性は基板上でも維持された。また、基板上のH2aseと溶液中のPS1との間で光駆動型の水素発生 反応が観察された。当該研究は、バイオ分子と人工物質のカップリングというナノバイオテクノロジーの一分野を構築 することが可能と考える。 キーワード: バイオ分子、デバイス、光合成、水素、ヒドロゲナーゼ 1.はじめに 当該プロジェクトは、生物学的モジュール(バイオ分子デバイス)を用いた太陽光エネルギーと水からの直接的な 水素生産に寄与するモデル・システムの構築を目的としている。バイオ分子デバイスの構成要素は、光合成微生物 由来の光化学系、ヒドロゲナーゼ、電子伝達鎖などとこれらの機能性タンパク質を安定化する化学物質である。当該 プロジェクトを通して、適当な電極基板上にヒドロゲナーゼなどを積層・固定化し、電気化学的な水素発生に成功し H−08

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た。当該プロジェクトの目的を達成するためには、光化学系の工学的なアプローチと、長時間の光照射条件下にお いても機能性タンパク質の配向性や安定性を保つことが不可欠である。当該プロジェクトの研究成果は、機能性タン パク質の質的・量的・効率的な改善による高速化、機能性タンパク質を長期に安定化させる特定の化学物質の添 加、光化学系1と光化学系2を用いたエネルギー変換構造の最適化などを解決することにより、高効率なバイオ分子 デバイスの開発が可能であることを示唆した。機能性タンパク質を安定化させる化学物質は、アンピィポールと呼ば れる天然物由来もしくは人工的に合成された特別な脂質分子や完全合成された高分子である。当該デバイスの開 発に適当なアンピィポールの設計・選択により、疎水性の膜タンパク質である光化学系1と光化学系2を完全に水溶 性タンパク質にすることが可能となる。この研究結果は、水素発生用バイオ分子デバイスの設計・組織化における機 能性タンパク質のハンドリングを容易にするために非常に重要と考える。 当該プロジェクトでは、様々な電極基板表面の性状を評価し、デバイス上のヒドロゲナーゼ活性を電流電圧曲線 (CVカーブ)の測定により明らかにすることに成功した。当該技術は、水からの光駆動型水素発生がモデルシステム においても可能であることを証明した。さらに、水素発生ユニットであるヒドロゲナーゼの質的、量的な改善を試み、 様々な微生物から高効率、高安定性を有するヒドロゲナーゼのスクリーニングの検討を行った。当該デバイスの開発 において最も深刻な問題であるヒドロゲナーゼの酸素感受性を解決するため、タンパク質工学により最も高活性なヒ ドロゲナーゼの選択を試みている。当該研究は現在も進行中であり、ヒドロゲナーゼの活性向上とスクリーニング方 法について、直接的な変異株の育種方法や直接的な水素発生のための研究を行っている。 当該NEDO-プロジェクトの研究成果は、太陽光と水からの最も効率的な光水素生産のために評価された全ての構 成要素から成るバイオ分子デバイスを工業的に生産出来る可能性を示唆した。全ての最適化された自己組織化機 能を有する機能性タンパク質-藍色細菌様の-の人工物上での組織化は、様々な機能の発現を目的としたバイオ分 子デバイス開発における基礎的な知見を得られたばかりでなく、少なくとも実現が可能であることを示唆した。当該プ ロジェクトにおけるバイオ分子デバイスの概念図を示す。:

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当該プロジェクトのトピックと目的は、水素を生産することが可能な半人工的なデバイス(水素発生用バイオ分子デ バイス)の構築にある。本デバイスの駆動エネルギーは、太陽光から供給される光エネルギーと酸素発生型光合成 (植物型光合成)による水からの引き抜かれた電子を利用できなくてはならない。これらのエネルギーは基本的にフリ ーであり、酸素発生型光合成反応による水分解は、何億年も以前から構造やシステムが自然界で最適化されてい る。我々の戦略は、当該デバイスの開発に最適な天然物由来の器官や人工的な材料を活用することにある。我々 は、天然物由来の器官として、光の集光・荷電分離に適した安定した光合成器官、水素発生用触媒としてのヒドロゲ ナーゼを選択した。これらの天然物由来の器官・タンパク質は、人工的な界面活性剤、脂質、高分子などで安定化し なければならない。また、電子は、最適な電子供与体、電子受容体間を伝達されなければならなく、同時に電子はこ れらの人工的な物質を固定化するのにも使われる。これらの天然物と人工物による反応プロセスは、最終的には、自 己修復・自己組織化機能を有する自然のデバイスと同じにならなくてはならない。本報告書は、水素発生用バイオ分 子デバイスの開発に必要な各天然物・人工物の選択方法、組織化について報告する。 図2.水素発生用デバイスの概念図: a)短-中期的な開発目標システム(構築可能な様々なシステムの一例) b)中-長期的な開発目標システム(自己修復・組織化が可能なシステム). 2. 実験方法 ヒドロゲナーゼ、光合成器官、電子伝達物質(チトクロームcなど)などの天然物由来の分子は、定法に従い、藍色 細菌(Thermosynechococcus elongatus)、光合成細菌など(Thiocapsa属、Rhodospirillum rubrum, E. Coli)と緑藻類

(種々のChlamydomonas)のような微生物から抽出され精製される。バイオ分子を安定してデバイス化する際に用い る人工合成した糖脂質(Mal3Phyt2など)とアンピィポールは、当該プロジェクト実施中に独自に設計し、合成された。 ラングミュア-ブロージェット法によるバイオ分子の固定化は、シラン修飾されたガラス、ITO-電極または金属電極上 で行われた。 3.実験結果 3-1.デバイス作製のためのバイオ分子の選択方法と最適化 好熱性藍色細菌Thermosynechococcus elongatusの光化学系1と光化学系2は、優れた安定性と比活性を有し、水 素発生用バイオ分子デバイスの開発に最適であった。両光合成器官をヒスチジンによって標識することで、25リット

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ルのフォトバイオリアクターを用いた後の抽出・精製工程を簡易化した。光化学系1と光化学系2の活性と長期に渡る 安定性は、可溶化の為の界面活性剤を前述の糖脂質やアンピィポールにすることで、さらに改善された。脂質の場 合には、一連の人工的に設計された脂質の間で最適なものは、Mal3Phyt2(驚異的な安定性を有する糖脂質)であっ た。可能な選択肢として、三次元的に合成された脂質による基礎実験を行った。とりわけ、溶解性と長期安定性(日 単位から週単位まで)は、アンピィポールを用いることにより改善することが可能であった。基本的なアンピィポール から始めて、安定性はNAPol Lの使用によって増加した。そして、アンピィポールは特に酸性pH条件における安定 性維持のために設計された。Thiocapsa roseopersinicaのNi-Fe-ヒドロゲナーゼが極めて良好な安定性と酸素耐性を 有することから、当該デバイスに使用するヒドロゲナーゼとして選択した。同時にChlamydomonasのFe-ヒドロゲナー ゼ(最も単純で最も高活性)についても工学的な利用を試みた。40株以上の緑藻類Chlamydomonas moewusiiをスクリ ーニングし高活性ヒドロゲナーゼの単離を試み、緑藻の5倍以上活性が高いヒドロゲナーゼを単離することに成功し た。その緑藻を用いて、ヒドロゲナーゼ大量発現を目的とした遺伝子工学的な検討を試みた。 3-2.超薄タンパク質膜の作成 安定したPS1、PS2やヒドロゲナーゼの単分子膜は、ポリビオロゲン類(PBV、POV、PDVとPBenV)などを含む緩衝 溶液表面で形成される。ヒドロゲナーゼ、PS1やPS2とこれらの混合物、界面活性剤から成るラングミュア-ブロージェ ット膜は、水晶振動子、ITOガラス、ガラスカーボン電極表面に形成され、紫外-可視スペクトルやヒドロゲナーゼの活 性を測定される。水平引き上げ方法は、従来の垂直引き上げ方法より安定した膜が形成することが可能であった。 修飾電極上に形成したPS1/高分子(ビオロゲン)複合体LB膜のサイクリック-ボルタングラムの測定により、顕著な 還元ピークを計測した。この結果は、電極基板上に組織化されたバイオ分子-人工物間における電子の授受に伴う 反応であり、光合成のシステムが電極基板上で再構成できたことを示している。PS1の代わりに光増感剤として知られ る亜鉛ポルフィリン化合物(ZnTMPyPなど)を使用した超薄膜の形成も可能であり、亜鉛ポルフィリン化合物を使用し たデバイスでは、光駆動型の水素発生や電流の発生が可能であった。 ガラスカーボン電極、ITO電極、ビオロゲン修飾したITO電極表面上に形成されたヒドロゲナーゼ単分子膜の電気 化学的な水素発生が測定可能であった。ビオロゲンによって修飾されたITO電極では、ヒドロゲナーゼ-電極間の電 子伝達効率が向上することが確認された。 また、H2aseをガラスカーボン電極上にクレイとポリビオロゲンから成る複合キャスティング膜の作成に供した。電子 伝達効率は、クレイのみの膜よりクレイとポリビオロゲンを複合した膜によって大幅に向上した。クレイ/ポリビオロゲ ン膜はガラスカーボン電極表面で高い安定性を示した。我々はクレイ/ポリビオロゲン膜の水素センサーとしての可 能性も検討し、商業的に用いられている白金電極よりも優れた性質を有していることを明らかにした。 3-3. デバイスの作成 様々なアプローチにより当該デバイスの開発を試みた。PS1とPS2は、ガラスまたは電極表面(ITO、金その他)に単 層構造もしくは多層構造で固定化が可能である。我々は、人工的な糖脂質分子にPS1等を分離する積層方法を構築 した。この積層方法により、8層に光合成系を電極表面上に積層した。修飾電極上に形成した8層のPS1/高分子(ビ オロゲン)複合体LB膜のサイクリック-ボルタングラムを測定し、顕著な還元ピークを計測した。これはビオロゲンが光 り駆動型水素発生反応における電子伝達の効率を向上させたためと考えた。 PS1、メルカプト酢酸、メチルビオロゲンとヒドロゲナーゼから成る溶液系の実験では、光駆動型水素の発生が観察 された。また、人工的な光増感剤であるポルフィリン、EDTA、メチルビオロゲンの系においても光駆動型の水素発生 が観察された。2種類の測定システムは、PS1を用いた光駆動型水素発生用にバイオット社によって共同開発され

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た。本測定装置によって溶液中のPS1由来の光駆動型水素発生反応を水素電極によって測定した。 図3.水素発生用デバイスの実験概念図. 3-4. バイオ分子の高機能化 高酸素耐性を有したヒドロゲナーゼを発現させるために、我々は最初にChlamydomonasのFe-ヒドロゲナーゼを発 現系の探索をランダムミューテーション、サイトスペシフィックなミューテーションによって試みた。これらの試みは非 常に困難であったが、我々は最終的にClostridium acetobutylicumにおける異種発現系の構築に成功した。C.

acetobutylicumは、緑藻(特にH-クラスター)と類似のFe-ヒドロゲナーゼを有している。緑藻C. reinhardtiiのhydA遺伝

子は、新規のベクターにクローンされC. acetobutylicumに導入された。C. acetobutylicum内で発現した藻類のヒドロ ゲナーゼは、単離され高い比活性を有していることが確認された。これは、ランダムミューテーション、サイトスペシフ ィックなミューテーションによって酵素の酸素耐性を向上させる決定的な手法である。同時に、ヒドロゲナーゼの新規 発現系の構築を紅色非硫黄性光合成細菌(Rhodospirillaceae科)で成功した。2つの発現系により、別の緑藻類 (Chlamydomonas moewusii)のヒドロゲナーゼについても大量発現を試みている。この酵素は多くの緑藻類から高い 選択圧によるスクリーニングによって発見され、通常の緑藻Fe-ヒドロゲナーゼよりも5倍以上高い活性を有している。

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4.考察 光合成器官を可溶化する技術的課題を解決し、全てのバイオ分子を様々な人工物上に固定化する技術(LB法、 水平・垂直引き上げ法、標識方法など)を開発した。ヒドロゲナーゼの活性は、溶液中もしくは電極基板上の単分子 膜においても維持された。電極基板上に固定化した光合成器官の活性は、測定することができなかった。これは分 子をさらに高密度化・配向制御を高めることで解決可能と考える。また、サイズの大きい基盤の作成技術、高感度な 検出システムの開発、人工的な電子供与体・電子受容体の設計・合成技術の開発により、光合成活性を利用できる 技術となる。当該プロジェクトで得られた結果により、光合成器官とヒドロゲナーゼのカップリングの可能性が見いださ れた。 5.結論 水素発生用バイオ分子デバイスの構築を可能にする要素技術の開発に成功した。PS1とポルフィリンLB膜は、光 駆動型水素生産に適した材料であることが示された。水素発生のためのPS1とヒドロゲナーゼのカップリングが可能 であり、PS2も電極基盤上に単分子膜として固定化可能であった。また、新規界面活性剤等の開発により、全てのバ イオ分子の活性維持時間が、時間単位から日または週単位に延長することが可能であった。緑藻類からFe-ヒドロゲ ナーゼを大量に得るための新規発現系の構築が可能であった。また、異種ヒドロゲナーゼの遺伝子の発現も可能で あった。 6.今後の展望 当該プロジェクトを通して、バイオ分子のハンドリングを容易にする化学物質の合成、ハンドリング技術の向上によ り、目的のバイオ分子を人為的に組織化する技術が開発された。本技術は、バイオ分子と人工物をカップリング技術 であり、生体由来の高機能物質の活用や、高機能な新規人工材料等のカップリングより、各種デバイスを構築するこ とが可能であると思われる。 7.謝辞 当該研究は、ネド国際共同研究グラントによってサポートされた。高安定性ヒドロゲナーゼは、ロシア科学アカデミ ーのNゾーリン博士から提供を受けた。 8.引用文献

[1] BIOHYDROGEN II (Miyake, J., Matsunaga, T., Pietro, A. S., eds.), Elsevier, London, UK , (2002). [2] BIOHYDROGEN III (Miyake, J., Igarashi, Y., Roegner, M., eds.), Elsevier, London, UK, (2003).

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本研究テーマによる代表的な発表論文、特許 等のリスト 論文

[1] BIOHYDROGEN II (Miyake, J., Matsunaga, T., Pietro, A. S., eds.), Elsevier, London, UK , (2002).

[2] BIOHYDROGEN 2002 (Special issue of BioHydrogen2002 published by International Journal of Hydrogen Energy), Elsevier, London, UK, (2003).

[3] BIOHYDROGEN III (Miyake, J., Igarashi, Y. Roegner, M, eds.), Special reviewed book of Expert meeting on Biohydrogen, Elsevier, London, UK, (2003).

口頭発表

[1] J.Miyake et al., “Molecular engineering approach for biohydrogen production”, Expert Meeting on BioHydrogen- Scope and View for Future -, Kyoto, (2002).

[2] J.Miyake et al., “Organized ultrathin films of PSI and porphyrins for photoinduced hydrogen evolution”, International NEDO-Meeting on Biohydrogen-Present status and outlook, Paris, (2003).

[3] M.Roegner et al., “Semiartificial device: The photosynthesis part”, International NEDO-Meeting on Biohydrogen-Present status and outlook, Paris, (2003).

[4] J.Miyake et al., “Biohydrogen in the next-generation energy system”, 6th International Marine Biotechnology Conference, 5th Asia pacific Marine Biotechnology Conference, Chiba, (2003).

参照

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