手術説明書2
Ver.1手術を受けられる方へ
この説明書は、手術全般に必要な内容となっております。
わからないことがあれば、何でもご遠慮なくお聞きください。
□ 1.特定生物由来製品の使用目的と副作用について
今回、あなたの手術に際して特定生物由来製品とよばれる製剤の使用が必要となる可能性が あります。予測できない急な出血や、手術中の不測の事態で緊急に輸血や血液製剤の投与を 必要とする際は、医師の判断に任せていただくことがあります。説明内容をご理解の上、同 意いただけましたら、同意書の所定欄に署名をお願いいたします。そのため特定生物由来製 品使用の必要性と副作用、危険性について一般的な内容を説明いたします。不安な点や疑問 点があれば、いつでも担当医師やスタッフにお申し出下さい。 なお、特定生物由来製品の使用を拒否することもできます。また、同意された後でも、随 時これを撤回することができます。その場合は担当医師お申し出ください。 1. 特定生物由来製品使用の必要性について 今回あなたの治療に使用する可能性がある特定生物由来製品は、あなたの疾患の治療上、そ の製品の有効性が副作用などの危険性を上回り、医師が必要と判断した場合に使用します。使 用できない場合、予定通りの処置を実施できない可能性があります。また治療経過によって製 剤の使用量を変更したり、他の製剤を追加することがあります。 2. 特定生物由来製品とは? 医薬品や医療用具の中には『ヒト』や『動物』の血液や組織を原材料として製造される『生 物由来製品』というものがあります。これらのうち 1) 未知の感染因子を含んでいる可能性が否定できないもの。 2) 不特定多数のヒトや動物から採取されているもの。 3) 感染因子の不活化処理などに限界があるもの。 以上、感染の険性があるものを『特定生物由来製品』として、厚生労働省が指定しています。 代表的なものに、輸血用血液製剤や血漿分画製剤があります。 3. 輸血用血液製剤の種類と効果 ① 赤血球製剤 もっとも多く行われている輸血です。赤血球の役割は体の隅々まで酸素を届けることで す。これが不足すると脳や心臓、肝臓、腎臓など重要な臓器が十分に働くことができず、 命に危険が及ぶことがあります。 ② 血小板製剤 血小板は、出血したときに傷口をふさいで血を止めたり、血管を補強して出血を防ぐよ うに働いています。血小板の働きが失われると血が止まりにくくなり、ぶつけていなく ても自然に出血することがあります。 ③ 新鮮凍結血漿 血漿とは、血の上澄みの薄い黄色の液体成分です。主に血液凝固因子(血を止めるため に必要なタンパク質など)を豊富に含みます。凝固因子が不足するとき(大量出血、肝 機能障害等)、血液の成分を交換するとき(血漿交換)などに使用します。4. 血漿分画製剤の種類と効果 血液の中から特殊な成分を取りだして、濃縮したものを血漿分画製剤と呼びます。これらは 不特性多数のヒトの血液を原料としておりますが、現在ではウイルス不活化という処理や、濾 過といった処置がなされています。そのため輸血用血液製剤に比べると感染症のリスクは低く なっています。 ① アルブミン 最も多く使用される血漿分画製剤です。血液中に最も多く含まれる蛋白質で、急な出 血に対して血圧を保つ為や、肝機能障害などによる重症の浮腫(むくみ)を改善させる ために使用します。特殊な血漿交換にも使用します。 ② フィブリン糊製剤 主に手術時の出血を止めるための糊として使います。 ③ 免疫グロブリン製剤 感染症の治療と予防や、免疫反応予防のために使います。 ④ ハプトグロビン製剤 溶血(血管の中で血が壊れること)による副作用の予防に使います。 ⑤ 凝固因子関連製剤 からだのなかで血を止めるための仕組みを適切にするために使います。(血友病、播種 性血管内凝固症候群 DIC、その他の凝固異常) ⑥ アブラキサン 主成分は血液製剤ではありませんが、主成分の薬剤の効果持続時間を長くするために、 ヒト由来のアルブミンが添加されています。 ⑦ その他 血漿分画製剤以外にもヒトの血液や組織を原料とした薬剤や特定生物由来製品に指定 されている薬剤を使う可能性があります。 5. 自己血輸血の選択について 自己血輸血とは、あなた自身の血液をあらかじめ採血し、手術中に使う輸血の方法です。 日本赤十字社が供給している献血由来の血液と違い、他人からの血液を輸血することで起きる かもしれない副作用を防ぐことができます。あなたが受けようとしている手術で、ある程度出 血が予想され、なおかつ手術前の検査で条件を満たしている場合には、自己血輸血を選択する ことができます。ただし自己血輸血を行わないほうが、あなたの治療に良い場合も有るため、 担当医が可能と判断した場合にのみ行います。自己血輸血にも次のような注意点がありますの でご理解ください。 ① 自己血は全血(主に赤血球成分)の血液製剤です。他の成分が必要になった場合には
日本赤十字社の血液製剤を輸血します。 ② 手術前の採血量に限界がありますので、手術中に足りなくなった場合は日本赤十字社 の血液製剤を輸血することがあります。 ③ 採血中や保存中のバッグ破損や細菌汚染により使用できなくなることがあります。 ④ 採血に伴い血圧低下や気分不快の症状が起きることがありますが、適切な処置で通常 は回復します。 ⑤ 自己血採血による貧血を防ぐために鉄剤の服用やエリスロポエチンの皮下注射をする ことがあります。 ⑥ 採血前に下痢・発熱など、体調が悪いときは必ず担当医師にお申し出ください。 6. 特定生物由来製品の副作用や危険性について 特定生物由来製品を使用する場合、主に下記のリスクを含んでいます。いずれも頻度は高い ものではありませんが、ゼロにすることは出来ません。 ① アレルギー反応 他人に由来する血液や組織を原料としているため、じんましん、発熱、かゆみなどのア レルギー反応(可能性は数パーセント程度)や血圧の低下、呼吸困難などの重篤なショ ック症状(可能性は 0.1%以下)を起こす可能性があります。その他、他人由来の成分 に対する免疫反応を起こす可能性があります。もし使用中に異常を感じたら出来るだけ 早く医師、看護師にお知らせ下さい。 ② 感染症 輸血用血液製剤や血漿分画製剤はあらかじめ、献血者の感染症の検査や、製品の中に混 入したウイルスを不活化、濾過するなどの処置を行って、感染のリスクを低くするため の方法が採用されています。しかしながら未知の病原体による感染症のリスクを完全に ゼロとすることは出来ません(可能性は 0.1%未満と推測されています)。特に輸血用 血液製剤に関しては感染予防の観点から、医師が必要と判断した場合に輸血前後の B 型肝炎、C 型肝炎、HIV のウイルス検査を行うことがあります。 ③ 免疫反応 主に輸血用血液製剤の場合に問題となりますが、あなた自身の細胞が他人の成分に対す る抗体をつくる可能性があります。その場合は輸血時に溶血(血液が壊れてしまう)し たり、期待された輸血の効果が得られない場合があります(抗 HLA 抗体による血小板 輸血不応など)。特に赤血球を輸血する前には赤血球に対する抗体(不規則抗体)を早 期に検出するように努めています。 ④ その他 頻度は低いものの、その他さまざまな副作用をおこす可能性があります(輸血関連急性 肺障害 TRALI、移植片対宿主病 GVHD、循環過負荷 TACO、高カリウム血症、電解質 異常、低体温、上記以外の感染症:ウイルス、細菌、原虫など)。
7. 使用にかかわる検査について ① 輸血用の検査 輸血用血液製剤を使うにはあなたの血液型検査、不規則抗体検査を行うための採血が必 要です。特に血液型検査は 2 回採血を行い間違いを防ぎます。 ② 輸血感染症の予防対策 日本赤十字社では厳しい検査を行い、血液製剤の安全性は年々高まっていますが、そ れでも輸血にともなう感染症を完全にゼロとすることはできません。日本では年間約 100 万件の輸血が行われていると推測されており、その中で輸血による B 型肝炎ウイル ス感染は年間約 10 例程度、C 型肝炎ウイルス感染は今までに 1 例、HIV 感染は今まで に 1 例が報告されています。当院では厚生労働省の『輸血療法の実施に関する指針』 に則り、担当医師の判断によりあなたの輸血前の状態を知るために B 型肝炎、C 型肝 炎、HIV 感染に関わる血液検査を行う場合があります。また輸血後 3 ヶ月後にも健康管 理と感染などの副作用の有無を調べるために検査を行うことがあります。 8. 使用記録と検体の保管と、遡及調査時の使用について ① 特定生物由来製品を使用した場合は、あなたの氏名、住所、使用製剤の名称、使用日、 製造番号を病院側で 20 年間保管することが法律で義務づけられています。万が一、あ なたや他の人に特定生物由来製品による感染症の発生が疑われた場合には、被害の拡 大防止のために、原因となる製剤がいつ・誰に使用されたのかを調査し、この個人情 報を医療機関から厚生労働省に報告することが義務づけられています。 ②輸血用血液製剤については、投与される前のあなたの血液検体(血漿)を約 2 年間保管 して、感染症の発生を疑う場合は院内で検査したり、くわしい調査のため日本赤十字 社へ提出することがあります。 9. 生物由来製品感染等被害救済制度について 平成 16 年 4 月 1 日以降、ヒトや動物を原料とした医薬品・医療用具を適正に使用したにも関 わらず、その製品が原因で感染症やその他の副作用によって入院治療を必要とするような状態 や、日常生活に支障をきたすような健康被害を受けた場合が対象となります。患者さん(また はご家族)が独立行政法人医薬品医療機器総合機構に申請し、認定が得られた場合、障害の程 度に応じた給付金が支給されることがあります。万が一あなたが該当した場合には、担当医師 にご相談下さい。 10. 異型適合輸血の実施について 輸血の際には通常、あなたの ABO 型、RhD 型と同じ血液製剤を輸血します。ただし医学的 に問題がない血液型の組み合わせで、治療上必要がある場合には、あなた本来の血液型と違う 型の血液製剤を輸血する場合があります。 ① RhD 陽性(Rh プラスともいいます)の方に、RhD 陰性(Rh マイナス)を使用しても 医学的に全く問題が無いため、当院では Rh プラスの方に Rh マイナスの輸血を行うこ ともあります。
② RhD 陰性(Rh マイナス)の患者さんの赤血球輸血には、原則として Rh マイナスの赤 血球を取り寄せて使います(緊急時を除く)。しかし血小板製剤、新鮮凍結血漿には赤 血球がほとんど含まれていないこと、Rh マイナス製剤の在庫は非常に少ない事などか ら、Rh プラスの製剤を使う場合があります。 ③ 骨髄移植などで血液型が変わる場合や、HLA 適合血小板という特殊な血小板を使う場 合、また緊急時の危機的出血時で救命を優先する場合には、患者さん本来の血液型と 異なる型の輸血用血液製剤を使用することがあります(例:A 型の患者さんに、O 型 の赤血球輸血、AB型の患者さんにA型の血小板輸血など)。以上これらは異型適合輸 血という、医学的に認められている方法です。なお、アルブミンやグロブリン製剤な どの血漿分画製剤を使う際には、血液型は関係ありません。