139
馬鈴薯に関する生理、生態学的研究
ⅠⅤ 俗光催芽に依る早熟療牧の機構に就いて
中 潤 三 郎・大 森 浩
Physiologicaland ecologicalstudiesonpotato plants
IVInvestigaFiononthemechanismofearlier
ma餌rity and yiei心increas￠Of
potat（）eS due to tbe
Sun−Spr・Ou七ing
By
Junzaburo NAKA and HiroshiOMORr
（Laboratory of Crop Science）
王 緒
暖地に於ける馬鈴薯一期作灯於いては：、その枯集完熟蘭風梅雨に遭遇し、収穫の逮斯を失して歴々新
嘗の腐敗を∴見、恩はぬ減牧を招くことがあろ。叉出荷、後作等の関係から梅礪詣灯早掬する場合町於い
ても、未だ生育中の馬十分葦準最を挙げ得なりととが多い0
斯る軌魚を・補ふ一手段左して、榎馨の浴光催芽に・依る栽増洛が考へられる0即ち種蔑をJ定格前或る期
間明処に／於いて高温処理し、緑化催芽せしめた彼我梧する方法であつて、従舜そ・の生育状態並びに．牧患
調奄紅塞き、甲凝増収を「計り得ることが種々・軍曹されている（1・・2・4小5・6・り。感し乍らその依って来
る生理的擁構砿関しては、未だ詳細な報告を二間かない。
蓑常．於レて筆者等は、その卑熱乃至成増牧の瞭辟を：追求せんとして、特に・生育期間後年た於ける地上
部及び塊茎の生理学的問題数中心として行った本実験に就いて報督する。本研究実施に当鋸終始御懇囁を御指導を賜った北大田川教授に・対し、深甚なる謝意をこ表する。備実験
迭行上僅々協力せ・られた香川貴専作物学専攻生諸氏に肘し深謝する。甘 実験材料及び方法
（Å）供 試 材 料実験材料として軋昭和24年秋期北海道産男欝感（90g■蹄後）を用ひた。対照区の軽業は室内にて普通
貯蔵を．、したが、処理区は次の如き方法で浴光鹿芽せしめた。即ちコンクリート短に酷熱物を・約20cm踏み込み、その上忙乾燥した土を3cm内外、更に′ト蒙稗を∵約10cmの厚さ忙届き、それに腰巻を列べて相
子障子を㌻掛け、曇天及び夜間には覆ひを濁した。催芽期間は昭和25年2月4日より3月20日に至る45日
間であって、催芽鞋内の気混は平均120Cであった。植付当時に於ける処理区の肪芽は7mm前後であったが、対照区忙於いても既に休眠を終わ、4mm緒
彼の萌芽が霞められた0備価区共感馨はメルクロこ／さ00倍液で30分・聞表面穀億後．乾燥したものを似用
した。 （B）育 生 法餌場ば香川農大附属農場の土質均一・怒所を選び、努めて丁寧に整地を行った。基肥（1ひアーリレ当り、
以下劉巴盈同様）としては堆肥1】25k臥過燐酸石次朗．5Ukg、硫安及び塩化加鼻各‖診弛gを1施し、8月
20日嘘幅90cm、株聞30cm、覆土10cmとして仝粒の偉播碇した。
両区共4月24日除墳を・■行グて各棟】串立とし、∂月】日舞】牒追肥として硫安並．ぴに．塩化加里夫々
11・2Ekgを施した○次いで5月6日第l回増土を：約6cmの属さに行ひ、更に．5即8日11．25kgの硫安を 邁肥すると共に、紛4cmの第2回樗土を行った。備中研除葦瓜追肥及び培土の毎度に府ひ、又病審虫の発生機少なる焉薬剤撒布は之を行虹なかった。
（C）測 定 法 （a）責務乗合蚤∵ 大酪ScHERlllZ先の方法に．従仏、CbloI・Opbyll（α＋β）をこ測定した，即 ち新鮮襲8∼4gよ鋸純アセトンを用ひて浸出し、b鹸化してChlorophyllinとした。更に之を：7kKI溶解し て．−一億盈とし、DuBOSQUE氏比色計を用化しGuTHR正氏の株準液と比色の逆比数笹よわ牢緑葉の濃度 を定めた。 （b）呼 吸 作 用：地上部及び新著に於ける呼吸作用の状態を検する馬、茨駿こ瓦斯排出最並 びに．酸素吸収量を逼求した。之が番に甘地上蔀及び新著を・夫々容愚約5000ccの吸引ヂシケー・ク←・内に・密 閉し、卦印章軍250Cの恒湿器中に償った。次に此等デシケ←・クー内の姦東予・定慮を、ORSAT氏瓦斯分析 装置に依り苛性加重及び焦性液食子駁アルカリ溶液に吸収せしめ、以て衆酸瓦斯排出最並び町酸素吸収 恩を測屈すると共に．、両者の庇庖以て呼吸率を二算出した。 （C）貯赦淡水化吻合景：分析試料は蟄・濃淡に拠わ新馨の磯部と皮膚部に・就き、第1報（吾）に・準 じて還元額、非違充頗及び澱粉の定最数行った。 皿 実 験 成 績 （A）生，育 状 況 先づ地上に萌芽が現れたの！ナ対＼暇l真二に．於いては4月16日頃、処理区に於いてはノ1月10日填であって、 平均して−1週間甘後の差が見られた。文花常の発生及び開花始隠両区共に・大差なぐ夫々′∂月1日及び∂ 月i2日頃であったが、開花終了は処矧真の方が約8日樺早く、矧ii賞区に・於いては5月2細噴、処琴区に 於いて暦5月川旧領であ1つた。更に一下尭の巽変開始鱒対照区に於いては6月8日頃、処理区に・於いては 6月∂日頃であり、約3日の差が謎められた。今生骨期間中に於ける両区・草丈の増加状況を示すと第1 表の如くである。次忙・塊茎め状況を∵述べると、先づ饅琴は激職区に・於レーて6月7日頃蓬健存したが、処 第1表 簡区忙．於ける葦丈（茎高）の増加状況 理区に於いては．・そ・れよわ約2週間早く5月2よ 日頃よわ崩壊し始めた。他方新巻は両区共5 ⅤⅠ・15 月3日頃よわ肥大が認められたが、6月21日 ￣叫 牧健迄の両区に於ける生育状況蛙第2表忙示
生7・0 す通わである。備牧穫時に於ける繭区の10ア
4＄・6 −・ル当り塊茎牧最を∵表示すると第ぷ表の如く T である。 ） 第8表析区に於ける塊茎の収監（1けアール当） 第2衆 耐云忙放ける塊茎の生育状況（株当平均 （B）地上部に於ける集線素食蚤及び呼吸作用、・並びに潮馨に於ける尉赫淡水化吻合貴及び呼吸作用 の消長 矧堀区の地上部に於ける集線素食最及び呼吸作用、並びに斯業に於ける貯撤羨フjく化吻合畳及び呼吸作 用等の滑畏に就いて検した結典掠、第4表∼第S衆に示す如ぐである。今此等掟就いて槽謝すれば」開 花終了後2一一8Eの6月24日頃より、地上部の生長は次第に感性となり、葉緑素含最蛤稲々減少してい 第4表 対照区に於ける菜線素含盈の変化（生装鳩嘗） るに風／、呼吸作用は上昇し…8の呼吸率及示 している。而して新著に於い■ては磯部、皮′盛部共に．還元暗合・畠は僅少であるが、非還元糖並び
と箪澱粉は．可磯りの合畳を有し、呼吸作用け低下 して呼吸率は丁・．00である。下葵貰変開始1−2日 前の6月7日頃には、地ヒ部に於ける生長は殆第帽・ ニ ● 第5表 対照区二に於ける軌ヒ部呼吸作東の洒長 （茎葵Ikgl時間当00Cl嵐庄換算） ＼、、＼、、 密洞「 ＼ ∵、、、 ＼＼ 冒
＼ 、
−−、 F 79小85rl17．44 （CCI CO2排田蟄 （CC） 02 吸牧童 呼 吸 率 1ユ3．．56j 9まサ79 ！ l l16．3：‡≡ 9墾‖79 0い98jlい00 ユ乞3・03 非違充精義 こIl吋） 0．96 i殿 ∋扮 羞 第7表‖対照蔭の部落皮替部に於ける貯蔵汲水 化物合盈の変化（生盈Ig当） 第8東 和梢区に於ける新著呼吸作用の滑長 く塊茎ikgl時間当00Cl東庄換算） ⅤⅠ．i5lvT‖91 ＼−＿†＼こ：； （cc） 0‘・幻 CO2排椚選 （cc） 4…76 09 吸収璧 160．．99 呼 吸 琴 ど停止したが、葉緑素合盈控精々増加、呼吸作用は更忙像■F■してその呼吸率1．00である。他方新著に．於 ける還元板及び非違元始偲磯部、皮屏部共年波少しているに反し．澱粉含畳は蘭部に拾い一ア■共に増加し たが．そ・の呼吸作用は更に低下し、依然として呼吸率1．00恩示している。収穫時の6月2＝ヨに於いては 地上部は枯死直静であったので、鄭馨に∴就いてのみ諭するに、兜づ儲部に於ける還元膳の含畳は†減少し ているに反し、非還元階及び澱粉舎監に蕃び増加している。又皮．昏部に於ける還元糖並びに非還元鷹合 患は減少し∵ているが、澱粉の合貴に増加の傾向を統けて−いる。南新馨呼吸作用は厳に彼弱となむ、呼吸 率0．77であった。 次に処理区に放ける前記対照区諸威蹟該当の結典を∴見るに（第9表一卿8表参．照う、兜づ開花終了5日 後の5月24月頃忙は、地上部の生長は精々頗憤となり、某橡素食盈蛙増加しているが、呼吸作用は低下 し呼吸率0．99をこ示している。叉新薯の髄部及び皮醤部に於ける還元粉の含量は極めてき少量であるに．反 し、非還元糖並びに・澱粉偲可成わ含有せられ、その呼吸作用揉低下し】．．00の呼吸率を．・示して−いる。下薬 第10表 処ヨ漫区忙於ける租上部呼吸作用の消長 （基礎1kg一博問当00Cl気庄換算） 第9表 地理区に放ける集線累合盈の変化 （生薬1g当） ＼こ「¶万有 那 （cc） CO2排吊量 （CC） 03 吸牧義 呼l及 率 ユ14．oS l慧ユ．59 0・9墾ぎ 0−99】コ・・00 第11衣 処理区の新薯髄部に於ける贋赦淡水化 物合盈の変化く生嘉】g当） 那豪’貯蔵洪水142 第18未 処理区’に於ける新著呼吸作用の消長 （塊茎1kgl時間当00Cl気圧換箇） ● 箕変開始後8日目の6月7引責には、地上部の生 長は多少停頓したが，英緑葉合盈は檜加し、呼吸 作用軋上昇して呼吸率1．00である。更に．新薯の鰯 部忙於いて−は億元噺並びに非還元鱒は㈲加∴澱粉 掠減少の一時的変化が見られたが、皮督都に於い て姓還元頓鳩−暗唱加、非還元額及び澱粉は激増 の様相を呈している。備此の時期に於ける新薯〆 呼吸作用ば板下の傾向を続け、呼吸率0．96を示し ている。収穫時の6月21日には地上部蘭殆ど枯死 し、新藩の髄部忙・於ける超克軌非違先晩並びに澱粉の争含量按増加し・、皮膚部に・於ける還元糖及び非 法元粒食薯は減少しているが、澱粉の鹿盈は激増している。僻見新嘗の呼吸作用は澄に低下し、0．8ひの 呼吸率を・示している。 ⅠⅤ 考 察 以上の実験威綬より考察するに・、先づ地上部に閲して挙げられる点は、処理区牢於ける菓線素合意は
金生育期を通じ、対照区のそれに此し概して高いことである。これは即ち光合成町依る同化産物生成の
旺盛なることを意味するものであるが、更に．処理区の：草丈が対照区のそれに、比し小さく、云はば一層の 早生倭睦塾を示す点より見て、新巻内への貯描物質韓流を：犬ならしめるちのと解される。他方処理区に 於ける地上部呼吸作用の低下が、対照区に於けるよわも早期に魂れ．然もその呼吸挙が処理区に於いて 精々早く1．00に蘭づく点は：、地上部の生育段階が対照区■より先渡していることを儲し得るものである0 次に新薯た・於ける肝臓炎水化吻合愚の変化を：、夫々髄部及び皮層部に就いて対比するに・、田川氏等（8） の葵験結果より見て、両区間の遠元折合畳にに：・大差なきも．非違充臍及び澱粉払処理区に於いて先行し た形で蓄積されつ」あることが認められる。叉このこと軋新薯呼吸作用の低下が処理区に於いて早く見 られる点、及び処理区に放ける呼吸率が蓮に1．00以下に傾く認笑より見て、田川氏等（8）の報じ汽粗放 搾汁pH慣変化と併せ考へても亦之を瀧し得るものである。 上記の如く風鈴薯の浴光催芽に億る早熟増収の横柄の仙部は、・先づ地上部に・放ける葉緑素含量を「増大 する−溝、呼吸作用を偲に低下せしめる結果、漸落内への貯織物質軸疲及び蓄積を二大ならしめ、以て瀞 魂の成熟をト早めるものであって、早探する場合に於いても普通栽増のものに此し、或程度増収を層すこ とにあるものと思惟される。 Ⅴ 摘 要 本研究忙於いては、馬齢藩搭光耀弊処理に依る早熟檜放の磯癖を：追求せんとして、特に生育像年期の 地上部に於ける秦線素合盈及び呼吸作用、並びに新著忙於ける貯蔵洪水化吻合恩及び呼吸作用等の消長 に1就き、男鰐倭を試料として対照区と比較桧討した。実験結果の概要を列記すれば次の如くである。 1．集線素食盈は一づ投に．処理区に於いて大である。 2．地上部の呼吸作用は対照区よ少も処三哩区に於いてその低下が早い。 3．新蕃内貯蔵淡水化物含蟄の変化れ処規区に・於いて発進的傾向を示す。 4．新巻の呼吸作用は処理区に於いて早く衰彼する。引 用 文 献
（i）HARDENBURG，E・Ⅴ．19f！5：CorneliUniv．Agr．Exp．Sta．r Bul．63B．
（2）岩壌錘夫、岩間誠篭19鰻‥盛業及取芸、33（乃）、iS5−ユ弼・ （3）中 潤≡郎ユ950‥香川戯専研究領農、1（3）、汚6−出 （4）西 田 弘 大1939：盛業及園芸、1−4（ユユ）、2603一望606． （5）島蕃郷、伊味正輔1ミ1拍；羞髄及園芸、20（7）、305−30う （6）−、−− 「 ユ9√48：北方遊学、ユ（話）、コ−・ユ7（7）STUART，WII，EDMUNDSON，W・C・ト，LoMBARD，P．M．．andDEWEY，C小W，ユ927；U．S．
AgrnDept．TechいBul”5，1・36． （8）田川隆．岡沢竃三ユ949：北海道属鎗薯採琵組合連合会資料No．．5，ユーユ3143
R占sum占
Tt has already been reportedbys＠Veralauthor・SthatthesproutlngOfseedpotatoes
inthesun（Sun−SPrOuting）resdltsinearlier matur・ityandyield−incrIeaSeOfthe neW
紬bers．No physiologiQalexplanation seems to havebeengiven，aS yet，Ofthemecha−
nism by which the sunqSprIOuting prIOduces such favorable effects upon the gr・OWth
Of potatoes．
王nordertoobtainsomeinformationsonthemechanismofsun−SPrOutlng，thepresent
investigationwasundertakenwithpotatoesofthevar・ietyIrishCobbler・1n the pr・eSent
Paper are described the variation of chlorIOphyllcontents and of the r・esPir・ation of
theshoot，tOgether with the physioIogicalbehaviorIOfr・eSeTVe Carbohydratesand of
therespirIationofthenewtuberIduringthelatterIPartSOfthegr・OWlngSeaSOn，incontr・ast
tothoseofthe contr・OIplants．The experimentalresults obtained maybesummarized
afollows‥
1．In theleaves of the treated plants the chlorophyllcontents were generally
higher than that of the control plants.
2．The respiratioh ofthe shoots of treated plants fellearlier than that of the
COntrOIplants．
3．The behavior of reserve carbohydratesin thenew tubers of the treated plant畠
Showed the tendency of earlier matur・ity．
4．The respiration of the new tubers of the treated plants fellearlier than that
Of the controIplants’
5・The following copclusions′ar’etobe drawn fromthe resultsjust dcscr・ibed！the
mechanism of earlier maturity and yield−increase of the new t11bers小caused by the ●
