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オープンソースの e ラーニングシステム Moodle 2.4 の Linux/Windows/Mac OS X

へのインストール手順から、オンラインコースの作成、教材やテストの追加までをスク

リーンショット入りで詳しく解説しています。

Moodle を使用すると、低コストで柔軟性の高い e ラーニングサイトが構築できます。

PC だけでなく、スマートフォンやタブレット端末にも対応可能でオンライン講義を配

信したり、確認テストを実施したりできます。

みなさんも Moodle を使って、授業の Web ページ作成や、e ラーニングコース運用に

チャレンジしてみましょう。

Moodle 2.4 ガイドブック

井上 博樹[著]

[著

e エ デ ュ ケ ー シ ョ ン 総 合 研 究 所 " "

(2)

目 次

はじめに... 10 1. MOODLE とは ... 11 1.1. コース管理システム ... 11 1.2. コンピュータ支援教育とEラーニングの普及... 11 1.2.1. CAIや CBT ...12 1.2.2. カーン・アカデミーへの注目 - 授業をひっくり返す ...12 1.2.3. MANAVEE...17 1.2.4. ITUNES Uの登場 ...18 1.2.5. マルチデバイス対応の教育プラットフォームとしての MOODLE...19 1.3. 教育機関におけるコース管理システムの使用... 22 1.3.1. 高等教育機関におけるコース管理システムの登場...22 1.3.2. オンライン大学の登場と普及...23 1.3.3. コース管理システムの普及フェーズ ...25 1.3.4. MOODLEの使用スタイル...29 1.3.5. インストラクショナルデザインへの注目...30

1.3.6. MOODLEと BLACKBOARD、CANVASの出現...32

1.3.7. BLACKBOARDと MOODLEの違い ...35 1.4. MOODLEの使用状況の概要 ... 37 1.5. 支援組織の重要性 ... 40 1.6. MOODLEの使用場面... 41 1.7. MOODLEの特徴 ... 43 1.7.1. 社会的構成主義...43 1.7.2. オープンソース...44 2. MOODLEの導入... 47 2.1. MOODLEのさまざまな導入方法... 47 2.2. MAC OSX 環境への MOODLEパッケージの導入方法 ... 50 2.3. WINDOWS用パッケージの動作... 53

(3)

3

2.3.1. WINDOWS版 MOODLEパッケージについて ...53

2.3.2. WINDOWS版パッケージ使用上の注意...53

2.3.3. WINDOWS版 MOODLEパッケージの入手方法 ...53

2.3.4. MOODLE PACKAGES FOR WINDOWSのインストール ...54

2.3.5. BITNAMIスタックのインストール...57 2.4. LINUX環境への MOODLEインストールの手順 ... 69 3. MOODLE のナビゲーション... 88 3.1. フロントページ... 88 3.2. 言語表示の切替え ... 90 3.3. ブロックとドック ... 97 3.3.1. ブロックの追加・編集...99 3.4. ログイン後のナビゲーションブロック ... 105 3.5. 設定ブロック... 107 3.6. フロントページの設定を編集する... 110 3.6.1. カテゴリの追加や編集...114 3.6.2. トピックセクションの表示設定 ...119 3.6.3. 移動の確認ダイアログ...121 3.6.4. トピックセクションへのリソースや活動の追加 ...123 3.6.5. その他の設定項目...127 3.7. アピアランス... 128 3.7.1. テーマ...128 3.7.2. テーマ設定...128 3.7.3. テーマの例...133 3.7.4. カレンダー...134 3.7.5. ブログ...135 3.7.6. HTML設定 ...137 3.7.7. メディア埋め込み...139 3.7.8. MOODLE DOCS...141 3.7.9. デフォルトマイホームページ...142 3.7.10. デフォルトプロファイルページ ...144 3.7.11. コース...145 3.7.12. AJAXおよび JAVASCRIPT...146

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3.7.13. タグ管理 ...147 3.7.14. 追加 HTML ...148 4. コースの開設と設定 ... 149 4.1. コースを開設する ... 150 4.2. コースカテゴリ... 156 4.2.1. コースカテゴリの追加...156 4.2.2. コースカテゴリの編集...157 4.2.3. コースカテゴリの削除...157 4.2.4. コースカテゴリの非表示 ...157 4.3. コースフォーマット ... 158 4.4. トピックの移動... 161 5. ユーザの管理と追加 ... 166 5.1. ユーザの表示と編集 ... 166 5.2. ユーザの登録... 170 6. コースへのリソースの追加... 174 6.1. ドラッグ&ドロップによるファイルの追加... 175 6.2. 活動チューザによるファイルの追加... 178 6.3. リソース名のタイトルの編集 ... 191 6.4. URI ... 193 6.4.1. YOUTUBEビデオへのリンク追加 ...198 6.4.2. MERLOTリポジトリの検索と教材へのリンク ...205 6.4.3. MERLOTサイト上でのリソース検索 ...215 6.5. フォルダ ... 221 6.6. ブック... 229 6.6.1. ブックの追加方法...229 6.6.2. ブックの編集方法...232 6.6.3. ブック管理...235 6.7. ラベル... 238 6.8. IMSコンテンツパッケージ... 245

(5)

5 7. コースへの活動の追加 ... 246 7.1. 課題... 249 7.2. フォーラム ... 258 7.2.1. フォーラムの概要...258 7.2.2. フォーラムタイプのいろいろ...266 7.2.3. フォーラムの追加手順...270 7.3. 用語集... 276 7.4. WIKI... 286 7.5. フィードバック(アンケート) ... 293 7.5.1. フィードバックモジュールの有効化手順...294 7.5.2. フィードバックモジュールの設定...298 7.5.3. フィードバックの追加手順...298 7.5.4. CAPTCHAの使用 ...305 7.5.5. テンプレート ...311 7.5.6. 分析と回答の表示...314 7.6. 小テスト ... 315 7.7. ワークショップ... 325 7.7.1. ワークショップの追加...325 7.8. 投票... 340 7.9. SCORM パッケージ ... 345 7.9.1. SCORMパッケージの例...345 7.9.2. SCORMパッケージの追加 ...350 7.9.3. SCORMパッケージの表示とレポート ...355 7.10. チャット ... 363 7.11. データベース... 368 7.11.1. データベースの追加 ...368 7.11.2. データベースフィールドの追加 ...371 7.11.3. データベースへのエントリ追加 ...373 7.12. レッスン ... 376 7.13. 外部ツール ... 382 7.13.1. 外部ツールと LTI 標準規格...382 7.13.2. 外部ツールの追加...384

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7.14. 調査... 388 8. 成績の管理 ̶ 評定 ... 392 8.1. 表示... 394 8.2. カテゴリおよび評定項目... 394 8.3. 評価尺度 ... 395 8.4. 文字... 395 8.5. インポート ... 397 8.6. エクスポート... 398 8.7. 設定... 399 9. コース管理 ... 403 9.1. 「コース管理」メニュー... 403 9.1.1. 編集モードの開始...403 9.1.2. 設定を編集する...403 9.1.3. ユーザ...404 9.1.4. 登録を抹消する...404 9.1.5. フィルタ ...404 9.1.6. 評定...405 9.1.7. バックアップ ...405 9.1.8. リストア ...408 9.1.9. インポート...408 9.1.10. 公開 ...411 9.1.11. リセット ...411 9.1.12. 問題バンク...411 10. サイト管理 ... 411 10.1. 拡張機能の管理... 412 10.2. アウトカム ... 414 10.2.1. アウトカムの有効化 ...415 10.2.2. 評価尺度(スケール)の追加...416 10.2.3. アウトカムの追加...419 10.3. コメント ... 427

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7 10.4. タグ機能 ... 428 10.5. ノート... 430 10.6. ポートフォリオ機能 ... 430 10.7. ウェブサービス... 432 10.7.1. モバイル ...432 10.7.2. 概要 ...433 10.7.3. APIドキュメンテーション ...433 10.7.4. 外部サービス ...433 10.8. メッセージングシステム... 433 10.9. 未読通知を隠す... 434 10.10. 未読通知を削除する ... 434 10.11. 通知メールのオーバーライド ... 434 10.12. 統計... 436 10.13. RSS フィード ... 436 10.14. ブログを有効にする ... 436 10.15. ネットワーキング ... 436 10.16. 完了トラッキング ... 436 10.17. 条件付きアクセス ... 436 10.18. 盗作プラグイン... 436 10.19. ユーザ管理... 438 10.19.1. ユーザ一覧の表示...438 10.19.2. ユーザ情報の編集...440 10.19.3. ユーザの個別登録...445 10.19.4. ユーザの一括登録...447 10.19.5. バルクユーザ処理...450 10.19.6. ユーザプロファイルフィールド ...451 10.19.7. コーホート...452 10.20. コース管理 ... 452 10.20.1. コース・カテゴリの追加 ...452 10.20.2. コースデフォルト設定...452 10.20.3. コース登録方法の設定...455 10.20.4. 削除 ...458 10.20.5. コースリクエスト...458

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はじめに

Moodleはオープンソースのコース管理システムで、授業の Web サイトを作成したり、オンラ イン学習プログラムを提供したりできます。Moodle 2.4 は 2012 年 12 月にリリースされた最新 版で、デザインアイコンが一新され、ドラッグ&ドロップによる資料の掲載、テストやフォー ラム等の活動の設置などが行えます。 また、Windows や Mac OS X などのパソコンからのみならず、スマートフォンやタブレット端 末ごとに表示レイアウトを最適化するレスポンシブなテーマシステムが搭載されています。 HTML5クライアントアプリケーションをカスタマイズしてパッケージすれば、iOS や Android デバイスの両方に対応した、独自の教育ポータルのクライアントアプリケーションも作成でき ます。 一方、インターネットアクセスと情報端末の普及により、毎月 100 万人もの人がカーン・アカ デミーのビデオライブラリにアクセスして学習しています。アメリカでは、自宅ではこうした オンライン講義で勉強し、教室では演習問題を解いたり、クラスメートと教え合ったりすると いう授業スタイルが増えています。こうした講義と演習をひっくり返すスタイルは「Flipped Classroom」と呼ばれ、注目を浴びています。また、アップル社は iTunes U という教育プラッ トフォームを提供し、ユーザ登録をすれば、誰でもオンラインコースを作成・公開することが できるようになりました。 Moodleは、こうしたオープンな学びの提供、そしてさまざまな情報端末からのアクセスなどに 柔軟に対応できます。もちろん、従来の教育活動のサポートにも有効です。 本書では、Moodle の特徴やインストール方法、そしてコースの開設や資料や活動の掲載につい て、スクリーンショットを多く交えてわかりやすく解説しています。 より多くの先生や専門家がオンラインコースを開設したり、授業の Web ページを作成したりし て、さまざまな人が必要な知識を習得し自己実現にチャレンジする一助になることを願います。

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1. Moodle とは

1.1. コース管理システム

Moodle は、インターネット上に授業支援のためのウェブページを作成し、運用するためのコ ンピュータソフトウェアです。そして、インターネットに常時接続されたサーバとよばれるコ ンピュータ上で常時稼動させることで、いつでも使用できます。そのため、学校や自宅、また 通学・通勤途中などに Moodle にアクセスし、学生が授業の資料を閲覧して予習や復習をした り、確認テストを受けたりします。また、先生はテストや課題の採点や分析をしたり、オンラ インでのディスカッションをモデレートしたりします。 こうしたソフトウェアは、国によってさまざまな呼び方があります。北米では、「CMS(Course Management System)」または、「LMS(Learning Management System)」、欧州で は「VLE(Virtual Learning Environment)」などと呼ばれています。日本国内の教育機関で は、「LMS」や「CMS」または「コース管理システム」とよばれることが多いようです。本 書では、「コース管理システム」または「CMS」という名称を使用します。 「コースマネジメントシステム」ですが、「コース」は「授業」、「マネジメント」は「manage」、 つまり「なんとかうまくいくように努力すること」というニュアンスを持つ動詞の名詞形、「シ ステム」は「仕組み」という意味です。ですから、「コース管理システム」という言葉には、 「授業をうまく運用するための仕組み」という意味があります。そのため、Moodle 上では、 授業ごとの Web サイトのことを「コース」とよびます。

Word Press や Movable Type, Drupal などの Web コンテンツ管理システムも「CMS」とい う略称を用いますが、こちらは「コンテント・マネジメント・システム:Content Management System」のことを指します。コース管理システムには、コンテンツ管理機能も搭載されてい ますが、理解度をチェックするテスト機能や、進捗管理機能、成績管理機能などを備えている のが、大きな違いです。コース管理システムを使用すると、教材の配布だけではなく、理解度 の確認や採点、成績データの管理などを実行できます。

1.2. コンピュータ支援教育と e ラーニングの普及

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1.2.1.

CAI

や CBT

e ラーニングというと 1990 年代前半から企業等で導入された自学自習型のオンライン教育管 理システムを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。もっと以前には 1980 年代に注 目された CAI(Computer-Assisted Instruction、または Computer-Aided Instruction) や CBT(Computer Based Training)などのコンピュータを使用した学習システムがありま す。 CAI は、1950 年代の B.F.スキナー教授により提唱されたオペラント条件づけの原理に基づい たプログラム学習を具現化したティーチングマシンに端を発します。こうしたコンピュータ支 援教育は、ティーチングマシンにより学習者それぞれの理解度に応じて学習内容を提示するこ とができ、パーソナライズされた教育環境を構築できるのではないかと期待されましたが、コ ンピュータが高価で誰でも利用できるものでなかったことや、実装がなかなか困難であったこ とから、理想的な教育プログラムが開発され、広く使用されるには至りませんでした。

1.2.2.

カーン・アカデミーへの注目 - 授業をひっくり返す

ところが21世紀になり、インターネットの普及やインターネットアクセス可能な情報端末の コモディティ化(日用品化)により、コンピュータやインターネットによる教育や学習の支援 が再び注目されるようになりました。昨今では iPhone、iPad や Android フォン・タブレット 等で、通勤や通学途中の電車内などでオンライン講義の視聴や演習テストをしている方を多く 見かけるようになりました。また、外国語学習の参考書にもこうした端末で再生することを前 提に MPEG-4 形式の講義データを同梱されているものが続々と登場しています。 とりわけ、3,800 本ものオンライン講義を配信しているカーン・アカデミーが大きな注目を集 めています。アジアやアフリカからのアクセスも多く、世界中のたくさんの人々がカーン・ア カデミーの講義で学んでいます。また、アメリカ国内の学校でもカーン・アカデミーの講義ビ デオを予習・復習に使用したり、社会人が大学に入学するための勉強に使用したりする報告が 多数寄せられています。

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13

カーン・アカデミーのサイト1

カーン・アカデミーは、ボストンで働くヘッジファンドのアナリストであったサルマン・カー ン2氏が 2004 年にニューオーリンズに住む姪っ子のナディアさんに数学(単位変換)について

教えてほしいと頼まれ、電話と Yahoo! Messenger の描画機能(Yahoo! Doodle)で遠隔指 導をしたことに端を発します。何年か経って、他の親戚の子どもたちにも勉強を教えるように 頼まれて、時間を割くのが大変になってきました。そこで、2006 年に PC とペンタブレット を使って作成した数学の講義ビデオを Youtube にアップロードしました。それまでは、リア ルタイムで教えていたそうですが、姪っ子からは「ビデオ講義の方がわかりやすいし、何度も わからないところを見返せるので、直接教えてもらうよりも気兼ねなく学べてずっといい」と 言われ、少々ショックを受けたものの、数学だけではなく、物理や科学、歴史の講義等も作成 して Youtube にアップロードしていきました。 1 https://www.khanacademy.org/ 2 http://www.ted.com/speakers/salman_kahn.html

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Youtube 上ではビデオ視聴制限をしていなかったので、姪っ子以外にもビデオ講義を見て勉強 する人が出てきて、コメントや要望が来るようになりました。そして、評判が広まって視聴者 がどんどん増加しました。2008 年には NPO としてカーン・アカデミーを立ち上げます。そ して 2009 年秋にはアナリストの仕事を辞めて、ビデオライブラリの充実、練習問題の作成/ 掲載、学習成果の分析ツール等の提供をするサイト構築・運用に専念します。2010 年には Google から 200 万ドル、ビル&メリンダ財団から 150 万ドル、あわせて3億円程度の投資 を得ました。それを元手にサンフランシスコ郊外にオフィスを借り、エンジニアやデザイナー を雇い入れました。現在まで 3,800 本のビデオ講義がアップロードされ、毎月 100 万人のユ ニークな学習者がいて、これまでに 3,000 万回講義が再生されたといいます。 TEDにおけるサルマン・カーン氏のスピーチ3 3 http://www.ted.com/talks/lang/ja/salman_khan_let_s_use_video_to_reinvent_education.html

(13)

15 講義を見るだけではなく、練習問題に取り組んだり、学ぶ知識の体系をナレッジマップでビジ ュアルに把握したりできるツールも提供し、どの分野の知識をどれくらい習得できたかをチェ ックしながら、学習を進められます。2011 年には、テクノロジーやデザインに関するカンフ ァレンスの TED で、サルマン・カーン氏が「ビデオによる教育の再発明」というスピーチを 行い、衝撃を与えました。 このスピーチでは、カーン氏が最も影響を受けたのはある先生からのメッセージだといいます。 この先生は、「授業をひっくり返した(フリップした)」というのです。これまでは教室で授 業をして、自宅に帰って練習問題に取り組む、というのが普通の授業の流れでした。ところが、 この先生は、まずカーン・アカデミーの講義ビデオを見て勉強してくることを宿題にしました。 そして、教室で練習問題に取り組ませ、わかりにくいところをクラスメート同士で教え合った り、先生が解説したりするようにしたというのです。 こうした既存の教室での教育活動にまでインパクトを与えていることを知ったカーン氏は、仕 事を辞めてビデオライブラリを作り続け、世界中の人々が学ぶ手助けをしています。もちろん 日本からでも視聴できるので、ぜひアクセスしてみてください。 また、こうしたリソースが増えてくると「英語で学ぶ」能力を持っていれば学ぶ機会が飛躍的 に増大します。あいさつや自己紹介などの英会話ができるだけでなく、英語で読み書きしたり、 学んだりする能力を向上させることは日本人にとっても学ぶチャンスを広げるために役立つ スキルなのです。カーン・アカデミーのコンテンツを翻訳する活動も進められているようです が、オリジナルコンテンツに直接アクセスして、英語で数学や理科、歴史を学ぶ、ということ にぜひチャレンジしてみましょう。 「英語を学ぶ」のではなく、「英語で学ぶ」能力がより大切になってきています。単に英会話 ができるだけではなく、英語でリベラルアーツや専門知識を学び、コミュニケーションをとっ て仕事を進めていく。そのようなスキルがグローバル化の進展する社会では重要になってきま す。カーン・アカデミーでも日本以外の国からのアクセスがとても多いそうです。機会があれ ば、こうした学習方法についてもワークショップや書籍を通じて紹介していきたいと思います。

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練習問題(PRACTICE)のページ 練習問題のページでは、いろいろな分野の理解度を確認する問題に取り組めます。そして、10 問連続で正解したら、次に進めます。不正解の場合には解説を確認したり、基礎知識が足りな い場合に解説講義を視聴したりできます。これまでの授業ではちゃんと理解できたかどうかに 関わらず授業の内容は先に進んでいきます。しかし、カーン・アカデミーでは連続で 10 問正 解する、つまり完全に理解するまで先に進めないのです。また、問題はランダムに出題される ので、解答を暗記生徒は焦らず、理解できるまで講義を視聴し、ヒントを読み、問題に取り組 みます。 まさにパーソナライズされた教育体験が提供されています。もしかしたら、e ラーニングの威 力は一斉講義形式ではなく、こうした各人の理解できるスピードで学んで行くスタイルで威力 を発揮するのかもしれません。こうした議論は、「教育 x 破壊的イノベーション 教育現場を 抜本的に改革する(クレイトン・クリステンセン他)」という書籍で紹介されています。

(15)

17 演習問題のポイントを解説するビデオ

1.2.3.

manavee

2010 年に立ち上げられた「manavee」では、東京大学の学生を中心にさまざまな教科の講義 を収録し、配信を行っています。全国の生徒の受験勉強に役立てようと、日々コンテンツの充 実を図っています。2013 年1月現在、2980 本の講義が配信されています。先に紹介したカ ーン・アカデミーでは一人のスーパースターであるカーン氏があらゆる講義を行っていますが、 manavee では多数の先生(を担当する学生)が講義をしています。彼らは、受験における地 理的・経済的格差の解消手段として「誰もが無料で行きたい大学に行くための勉強ができる学 習環境を WEB 上に実現する」ことを標榜しています。 みなさんにも、それぞれの知識や経験を活かしオンライン講義の作成や配信にチャレンジして いただき、より多くの人が学ぶチャンスが広がるとすばらしいと思います。Moodle を使用す ると、カーン・アカデミーや manavee のようにプログラミングする人がいなくても、オンラ インコースを作成し、講義を配信したり、練習問題を提示したりできます。また、サーバ運用 費用をまかなったり、教材作成の機材に投資したりするためにコース登録に課金する仕組みも あります。「こうでなくてはいけない」という決まりはありませんで、無理のないところから

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始めてみるのがいいでしょう。 manavee のサイト4

1.2.4.

iTunes U

の登場

iTunesは、アップル社が提供するオープン・エデュケーショナル・プラットフォームです。2012 年1月、アップル社は、iTunes U にコースマネージャというコース管理機能を追加しました。 さらに、大学単位だけではなく、個人でも登録ができるようになり、誰でも iTunes U 上にオン ラインコースを開設し、iBooks Author を使用してマルチタッチテキストを作成し、iPad 上で 講義を視聴してもらったり、iBooks 形式で作成されたマルチタッチテキストを提供したり、理 解度テストを実施できるようになりました。テキストには、オーディオ、ビデオ、プレゼンテ ーション、書類、PDF、ePub 形式の eBook、iOS アプリケーション、ウェブリンクなどを含め られます。

コースの作成は iTuns U Course Manager という Web サイトにログインして行います。コース へのアクセスは、iOS を搭載している iPad もしくは iPhone の iTunes U アプリケーションか ら行います。

(17)

19 マルチタッチテキストの例(http://www.apple.com/jp/education/itunes-u/ より) ただし、マルチタッチテキストの作成および視聴が、アップル社の Mac および iOS デバイスに 限定されるため、すべての教育支援を iTunes U で行うのは現実的ではないかもしれません。し かしながら、コース運用や、電子教科書(アップル社はマルチタッチテキスト、と呼んでいま す)を誰でも作成/配信できるような仕組みや、出版の専門家でなくても編集が可能なツール を提供していることは、非常に大きなインパクトがあります。

1.2.5.

マルチデバイス対応の教育プラットフォームとしての Moodle

現在普及しているさまざまな情報端末からのアクセスを考えると、iTunes U よりも Moodle を 使用する方がいろいろなデバイスからアクセスして、より多くの学習者にコースを使ってもら うことができます。PDF や ePub、MPEG-4 ビデオ、MP3 オーディオであれば、Android フォ ンやタブレットや Windows PC でも再生が可能です。もちろん、iOS デバイスや Mac でも使用 できます。

さらに、Moodle の公式アプリの後継である HTML5 クライアントパッケージをネイティブアプ リ化すれば、iOS アプリにも Android アプリとしても使用できます。また、Moodle 以外の教務 システムやポータルシステムへのアクセス機能も含めれば、マルチデバイス対応の各大学のポ ータルアプリケーションを構築できます。ぜひ、みなさんの教育機関でもチャレンジしてみま しょう。

(18)

アップル社の iTunes U のサイト5

(19)

21

Moodle のモバイル用テーマ

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1.3.

1.3.1.

高等教育機関におけるコース管理システムの登場

1990 年代前半にインターネットの商用サービスが開始され、政府や教育機関だけではなく、 企業や一般家庭からでもインターネットにアクセスできるようになりました。また、同時期に Web ブラウザが開発され、短期間に普及しました。そこで、大学などでも授業のホームページ を作成したり、電子掲示板を使用したりして、授業時間以外にも学生や先生がコミュニケーシ ョンする取り組みが始まりました。 しかし、当時は授業の Web ページを作るには、HTML タグを使用して HTML ファイルを作成 しサーバにアップロードする、CGI プログラムを作成して掲示板やテストを行う、などの作業 が必要で、授業ページの作成にはある程度の専門知識が必要でした。そして、当時多くの大学 でティーチングアシスタントやステューデントアシスタントをしている学生たちが先生の依 頼を受けて、こうした授業のページを作成していました。筆者も自分の担当する授業のページ を作成し、フォーラムやテストを実施する CGI プログラムを書いていました。授業時間外にも 質問できるので好評でしたが、授業外にも掲載する資料の作成やディスカッションのファシリ テーションなど多くの時間を割かなければならず大変でしたが、懸命に勉強する学生がたくさ いて、教室では遅くまで課題に取り組み、自宅からは質問を投稿してきたりして、とても励み になりました。教える側にも、授業の構成や内容を振り返る機会となったのです。 このような授業の Web ページ作成の仕事をしているうちに、なんとかもう少し簡単に授業の ページを作成する、資料を掲載したり、テストを作成・採点したり、課題を回収できるように できないか、と考える人が出てきました。そして、HTML タグによるマークアップなどをしな くても、現在のブログ感覚で、Web ページ上で資料をアップロードしたり、掲示板やテストを 作成したりできるような仕組みが開発されました。現在のブログや Facebook を使用するよう な手軽さで、授業の Web ページを作成できるようになり、タイミングを逸することなく予習 や復習に役立てたり、学生へのフィードバックを行ったりすることが可能になったのです。 その中でも広く普及したソフトウェアがいくつかありました。カナダ・バンクーバーにあるブ リティッシュコロンビア大学の研究プロジェクトを発端に Murray Goldberg 先生の研究グル ープが開発した WebCT(Web Course Tools)や、ニューヨーク近郊のコーネル大学の John Knight 氏などの学生グループが開発した CourseInfo(後に商用化され、Blackboard

(21)

23

Learning System [ 現 在 の Blackboard Learn+] と 名 称 を 変 更 し ま す ) 、 Angel 、 Desire2Learn などがありました。いずれも、大学内の先生たちが教室で行なっている授業の Web ページを簡単に作成し、学習のサポートを提供するための仕組みでした。そして、1990 年代後半にはこうしたソフトウェアが他の大学に配布され、後に商用サポートを提供するベン チャー企業の出現につながります。 その後、コース管理システムは、世界中の教育機関で普及し、欧米諸国および韓国などの教育 機関では初中等教育から生涯教育に至るまで導入されています。そして、その多くは先生が教 室で行なっている授業のサポートをするために使用されてきました。 コース管理システム上では、日々学生が自宅からアクセスして予習や復習のための資料をダウ ンロードして学習を進めたり、課題に取り組んで作成したレポートを提出したり、確認テスト を受けたりしています。また、先生は講義に関連する資料をアップロードしたり、提出課題を チェックして採点をしたり、フォーラム上でのディスカッションに参加したりします。

1.3.2.

オンライン大学の登場と普及

さらにこの仕組みを使用して、オンラインのみで学習を進め、学位が取得できるプログラムを 提供する大学が登場しました。日本でも、ビジネスブレイクスルー大学6(経営学部)、サイバ ー大学7(IT 総合学部)、信州大学大学院8(工学系研究科情報工学専攻)、熊本大学大学院9(社 会文化科学研究科教授システム学専攻)、京都造形芸術大学、武蔵野大学10など、オンライン 教育プログラムを提供する教育機関が続々と登場しています。 2013 年4月にスタートする、京都造形芸術大学の芸術教養学科では、「手のひら芸大」をキ ャッチフレーズに、以下のような特徴をうたっています。 1. PC・スマホで好きな時間に学習を 2. 四年制大学の卒業資格を取得 3. 1ヶ月あたり約 15,000 円。年間 17 万円の学費。 6 http://bbt.ac/ 7 http://www.cyber-u.ac.jp 8 http://cai1.cs.shinshu-u.ac.jp/xoops/ 9 http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/ 10 http://www.mwu-wbt.jp/tsushin/

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これまでのインターネット大学は、スクーリングと学費負担が大きかったのではないか、と い観点から学習者の交流サイトやコンテンツの充実を図ってスクーリングを極力減らし、学 費を最小限に抑えることで、入学しやすくしようという工夫をしています。これまでのイン ターネット大学プログラムと費用面で大きく差があり、今後の動向が注目されています。 京都造形芸術大学の芸術教養学科11(2013 年 4 月開講) 学習の進め方12 こうしたオンライン大学では、講義資料の提示や、課題の提出、履修生同士のディスカッショ 11 http://www.kyoto-art.ac.jp/t-tenohira/ 12 http://www.kyoto-art.ac.jp/t-tenohira/learning/ より

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32 境が整ったのです。そして、Moodle をレンタルサーバにインストールしたり、クラウド型サ ービスを使用すれば、インターネット上に授業ページを開設し、講義をオンデマンドやライブ で配信したり、演習問題を提供したり、ディスカッションしたりすることができます。iTunes U のように端末を限定することもありません。 Moodle には、コース毎にオンライン決済を行う仕組みが搭載されています。また、サードパ ーティベンダーからは、月次課金を実現する仕組みも提供されています。ですので、コンテン ツに自信のある方はビジネスとして取り組むこともできます。ただし、無料コンテンツもどん どん充実してきていますので、講義の品質向上に継続的に取り組むなどの工夫をする必要があ ります。 Moodle をきっかけに、多くの人が必要な知識やスキルを学び自己実現を図る、またさまざま な専門家が授業を配信する、そうした機会が増えると将来への希望を持てる社会の実現に貢献 できるのではないかと思います。

1.3.6.

Moodle

と Blackboard、Canvas の出現

コース管理システムの中で、世界中で広く使用されているのが本書で紹介する Moodle と、ア メリカ・ワシントン D.C.を拠点とする Blackboard 社により開発・販売されている Blackboard 製品群の2つです。後者は、WebCT や Angel など競合製品の開発企業を次々と買収し、米国 では 70%程度の高等教育機関で使用されています18。Moodle は 10%程度となっています。 しかし、Moodle は年々使用率が増加していて、上記調査結果では毎年 10%導入校が増加して いるのに対して、Blackboard 製品は毎年 5%程度減少しています。 また、近年急速に導入が進んでいるプラットフォームには、Instructure 社がオープンソース (AGPLv3)で配布している Canvas があります。Canvas は、非常にシンプルな画面構成に なっていて、これまでの CMS 間の競争による高機能化に敢えて取り組まず、使いやすさを追 求しているのが興味深いところです。

18 2010 Distance Education Survey Results

(24)

Canvasと他の CMS の比較21

1.3.7.

Blackboard

と Moodle の違い

さて、現在多くの教育機関で導入・運用されている、Blackboard と Moodle ですが、最も大 きな違いはソフトウェアライセンス費用とカスタマイズ性が挙げられます。 Blackboard 社製品を使用するには、年間ソフトウェア使用料を支払う必要があります。また、 その料金は年々増大しています。小規模な教育機関でも毎年数百万円程度のライセンスコスト がかかります。その一方、Moodle は無償で配布されていて、経済的な制約の多い中小規模や、 初中等の教育機関などでも導入が進んでいます。 しかしながら、ライセンスコストはかかりませんが、システムを維持したり、利用をサポート したりする人材を配置するコストは発生します。これまで商用製品のライセンス費用にかけて いた費用をシステム管理や、先生の教材作成やシステム利用のサポートをする人材を雇用する 費用に充てる方が得策だと考える機関が Moodle を積極的に採用しています。システムだけイ 21 http://www.instructure.com/compare-canvas

(25)

37 述した Canvas です。 多くのオプションのうち、2013 年 1 月時点で Blackboard でしか実装されていないのが、教 育機関で注目されている「ラーニングアウトカムズ評価」への対応する「Outcomes Assessment」です。これは、各コース内の課題やテスト、アンケートなどのデータを 1 箇所 に集約し、全学横断的な学習目標達成度(ラーニングアウトカムズ)評価や各種調査を実施で きます。また、こうした機関調査は、IR(Institutional Research)とも呼ばれていて、現在 さまざまな取組みが各大学で行われています。その際に、授業内で実施されている課題やテス トのスコアなどを自動的に集計できると、集計や分析にかかる時間の大幅な短縮や、人的労力 の軽減につながるでしょう。こうした関連ある機能を同じインタフェースに統合しているとい う点が Blackboard 製品の特徴的なところです。

1.4. Moodle の使用状況の概要

Moodle の公式サイトに掲載されている統計によると、2012 年 10 月現在、Moodle 公式サ イトに登録されているだけで、世界 222 か国、69068 サイトで運用され、およそ 6242 万人 の登録ユーザがいます。そのうち 129 万人は先生です。Moodle の公式サイトでは、登録され ているサイトの統計データを定期的に自動収集していて、毎日自動的に更新されます。 Moodleの使用統計 登録サイトのトップ 10 カ国は以下のようになっています。括弧内は登録サイト数です。これ を見ると、南北アメリカ、EU、オーストラリアなどで多数使用されていることがわかります。

(26)

放送大学 ICT 活用・遠隔教育センターが全国の高等教育機関を対象に 2009 年および 2010 年 に行った、文部科学省先導的大学改革推進委託事業「ICT 活用教育の推進に関する調査研究」 の報告書24によると、オンラインで何らかの授業を行なっている大学は 35.7%(n-2,699、2010 年)、LMS の導入率は 40%です。しかし、1 割以上の科目で LMS を使用している割合は 25.3%(2010 年)でそのうち 21.3%は 3 科目以内なので、大学におけるすべての開講科目数か ら考えると、LMS の使用されている科目は数%程度なのが実情です。 今後は、日本の教育機関においてもこうしたツールをうまく使用して、教育成果の向上や、グ ローバル化に対応した人材を輩出することが期待されます。

1.7. Moodle

1.7.1.

社会的構成主義

Moodle の公式ドキュメント25によると、Moodle の特徴は、社会的構築主義・社会的構成主義 26という考え方に基づいて、学習者が他の学習者に対してアイデアを説明したり、共同で作品 を作り上げる作業を行ったりするためのツールが充実し、インタラクションを通じ学ぶ活動を 実施しやすいところにもある、としています。 構成主義とは、「人は自分を取り巻く環境と相互作用する中で知識を形成するものだ」という 考え方です。そして、社会的構成主義とは個人だけではなく、人々がグループ内でインタラク ションしながら何らかの成果物(アルティファクト)を作り上げる過程において、知識を形成 していくという考え方です。 そのために、Moodle のフォーラム機能ではいろいろな表示形式が選択できたり、発言に対し て配点を与えたり、相互評価を実行する【ワークショップ】という機能や、学生と先生の共同 編集が可能なドキュメントを設置する【ウィキ】、【用語集】といった共同で成果物を作成す る機能が搭載されています。 もう一つのシェアの高い教育プラットフォームである、Blackboard Learn 製品群はこうした 教育理論について言及することはなく、どのような教育モデルにでも使用ができるというスタ 24 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/itaku/1307264.htm 25 http://docs.moodle.org/23/en/Philosophy 26 http://viking.coe.uh.edu/~ichen/ebook/et-it/social.htm

(27)

2. Moodle

の導入

2.1. Moodle のさまざまな導入方法

Moodle は、インターネットに 1 日 24 時間接続されたサーバコンピュータにインストールし て運用します。そのため、学生や先生が、通学通勤の途中や、休み時間、帰宅後など好きな時 間にパソコンや携帯端末から Moodle 上の授業のページ(Moodle では「コース」と呼びます) にアクセスして資料を参照したり、課題を提出したりすることができます。

Moodle 上では、こうした授業の Web サイトのことを『コース』と呼びます。Moodle 上に は複数のコースを開設して運用することができるので、授業ごとにサーバやソフトウェアを設 置する必要はなく、学部や学科、もしくは全学で共通で利用できる Moodle サーバを用意する と、各先生のサーバ管理の負担を減らすことができるでしょう。 みなさんが実際に Moodle を導入して使い始めるには、いくつかの方法があります。 1)学内/社内にサーバを設置し、Moodle をインストールする この方法は柔軟性が高いですが、24時間インターネットに接続するサーバコンピュータの管 理をする人材の確保や、停電時の停止/再稼働などを実施が必要があります。 学内にシステム管理者がいて、既にサーバコンピュータが設置されている環境では、  回線接続コストを抑えられる  柔軟な運用が可能になる などのメリットがあります。 2)学外のサーバコンピュータを借りて、Moodle をインストールする インターネットデータセンターなどに設置されているサーバコンピュータを借りて、そこに Moodle をインストールして運用します。

(28)

この方法は1と同様に柔軟な運用が可能ですが、サーバをレンタルする初期費用と月次利用料 が発生します。 しかし、ある程度の規模のユーザがいて、電源管理や障害対応、停電対応などシステム管理者 のサーバ管理負担を減らしたい場合には有効な選択肢です。 また、レンタルサーバには専用型と共用型があります。専用型は1台以上のサーバコンピュー タを占有して利用するもので、他のユーザの利用に よる回線混雑やパフォーマンスの低下、 データを盗み見られる等のセキュリティ上の不安を回避できます。 その代わりに共用型と比較するとコストが高くなる傾向にあります。ただし、料金の安い専用 サーバだと月額1万円程度から利用することができます。負荷の上昇や、回線の混雑具合に応 じて、構成台数を増やしたり、回線の接続速度を増速したりするなどの対策が可能です。 共用型は複数の利用者が1台のコンピュータを共有して利用する方式で、他のユーザの利用に よる回線混雑やパフォーマンスの低下、データを盗み見られるかもしれないなどの不安があり ます。一方で比較的低コストで導入、運用できるというメリットがあります。 たとえば、さくらインターネットのスタンダードプランなどだと年間5,000 円程度のコストで レンタルサーバを利用することができます。先生が個人で自分の担当している授業のコースを いくつか運用する程度であれば、この形式で十分な場合もあります。ただし、資源を共有して いるため、教室からの一斉利用などの負荷には耐えきれないことがあります。その場合には、 上記の専用サーバや学内への設置を検討した方がよいでしょう。 また、Moodle の動作要件は WordPress などのソフトウェアなどと比較すると、PHP や MySQL などのバージョンなどの要件が厳しく、共用型のホスティングサービスではインスト ールを実行できないケースもあります。できれば、PHP のバージョン管理などが自由にできる 専用サーバを採用すると確実に Moodle を導入/運用することができます。

また、Amazon Web サービス(Amazon Elastic Compute Cloud/Amazon EC2)などク ラウド環境上の OS イメージを使用する方法もあります。後ほど紹介する BitNami ではこの環 境ですぐに Moodleh が使用できるスタック(ソフトウェア一式をパッケージしたもの)の配

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49 布も行われています。この方式は、  サーバリソース(使用する CPU 数やメモリ、ディスク容量)を利用増大に併せて動的 に変更できる  使用量やデータ転送量に応じた従量課金でサービスを利用できる などの長所がありますが、オペレーティングシステムの導入/管理などをする必要があります ので、エンジニアのいない環境では導入/運用が難しいと思います。 3)クラウド型の SaaS サービスを利用する 近年は、クラウド型で Moodle または Moodle を拡張したシステムを利用できるサービスも登 場しています。クラウド型サービスは、SaaS(Software as a service)型とも呼ばれ、サー ビス提供者が管理するサーバ群にインターネットを通じてログインしアプリケーションを利 用する形態のことです。 そのため、ユーザはサーバの電源やオペレーティングシステム、Moodle のプログラムの更新 などを自ら実施する必要がなく、コンテンツ作成や指導に注力できるという利点があります。 アメリカの MoodleRooms 社やオーストラリアの NetSpot 社では SaaS 型で小中学校から大 学まで多くの教育機関に Moodle ベースのサービスを提供しています。前者は「Joule」とい う名称で Moodle にさまざまな機能を付加したシステムを提供しています。後者は、導入する 教育機関毎に個別の環境を提供します。 サービス提供者は負荷に応じて動的にサーバに割り当てるメモリや、追加のサーバマシン(仮 想 OS)などの資源を増設します。 初中等教育や技術系の先生や職員のいない大学でも、クラウド型サービスを利用すると Moodle を使用することが可能になります。また、国によっては、地域の教育委員会(Board of education)がデータセンターを運用して、地域内の学校にサービスを提供しているケースも あります。とりわけ、K-12、初中等教育の分野でそうした運用が見られます。 さらにオンラインだけでなく、スクーリングで対面教育を実施したり、短期間集中で新たなジ ョブスキルを習得したりして起業や、キャリアチェンジを支援するような取り組みをする NPO

(30)

や企業も出てきています。社会状況の変化が激しく、またグローバル化の進む現代において、 自分のやりたいことを実現するために教育を受けたり、自ら学んだりすることの重要性が大き くなってきていると考えられます。

2.2. Mac OS X 環境への Moodle パッケージの導入方法

Moodle 公式サイトでは、Moodle の標準パッケージだけではなく、Mac OS X や Windows 環境ですぐに Moodle の動作を体験できるパッケージが配布されています。このパッケージに は Web サーバやデータベースサーバなど、標準パッケージには含まれないソフトウェアも同 梱されており、ダウンロードして解凍するだけですぐに Moodle を動作させることができます。 ただし、Moodle やデータベースサーバのパスワードが公開されているため、外部からのアク セスが可能な環境ではそのまま使用するのは危険です。その場合は、必ず各種パスワードの変 更を行うなどの対策が必要です。 この節では、Mac OS X 用の Moodle パッケージをダウンロードして、使用するまでの手順を 説明します。

(31)

51

Moodle packages for Mac OS X28

1.Moodle 公式サイトにて、「ダウンロード > 標準 Moodle パッケージ」のリンクをク リックします。そのページ内の「Mac OS X」のリンクをクリックします。 2.動作させたいバージョンの Moodle を含むパッケージをダウンロードします。一番上は開 発用で不具合を多く含むこともあるので、慣れていない方は2番目以降の安定版を使用しまし ょう。 3.ダウンロードしたら dmg ファイルを解凍します。ブラウザの設定によっては自動的に解 凍されます。 4.解凍されたパッケージに含まれる XAMPP フォルダを「アプリケーション」フォルダにコ ピーします。 28 http://download.moodle.org/macosx/

(32)

2.3. Windows

2.3.1.

Windows

版 Moodle パッケージについて

Moodleの開発は主に Linux 上で行われています。しかし、Windows や Mac OS X などのロー カル環境に Moodle をインストールして、機能拡張の開発やデザインテーマの開発などができ るようにインストールパッケージが配布されています。Windows 版パッケージ(公式ドキュメ ントでは、「Complete install packages for Windows」という名称。)には、Moodle 本体だ けではなく、Moodle の動作に必要な Apache(Web サーバ)、PHP、MySQL(データベース サーバ)なども同梱されているので、すぐに Moodle を動作させることができます。

2.3.2.

Windows

版パッケージ使用上の注意

Windows版 Moodle パッケージは、スタンドアローン環境での使用を想定しているため、デー タベースサーバの初期パスワードが設定されていないなど、セキュリティ設定が意図的に厳し くされていません。そのため、本番環境にそのまま導入するのは推奨されていません。本番環 境への導入の際には、Moodle 本体(公式ドキュメントでは Moodle コアと呼ばれています)の みをダウンロードし、Web サーバ、PHP、MySQL を個別にインストールすることが推奨され ています。

2.3.3.

Windows

版 Moodle パッケージの入手方法

Windows版 Moodle パッケージは以下の 3 種類の方法で入手、インストールが可能です。

1) Moodle ダウンロードサイトの「Moodle packages for Windows」の一覧から、パッケー ジファイルをダウンロード・インストールする。最も標準的な方法です。

2) Microsoft 社のサーバから直接ダウンロード・インストールする。

Microsoft Web Platform installerのリンクからインストールを実行する。 3) BitNami スタック(Moodle 2.x for Windows)をダウンロードする。

BitNamiはさまざまな Web アプリケーションのスタック(すぐに動作するように必要な コンポーネントを同梱したパッケージ)を配布しているサイトで、Windows パッケージ だけではなく、Mac OS X や Linux 用の Web アプリケーションのインストールパッケー ジ、各種仮想マシンのイメージや、Amazon 社のクラウドサービス上への導入に最適化し たスタックなども配布しています。

4) VMware 上で動作する仮想 OS イメージをダウンロードし、VMware 上で動作させる。 この方法は、Mac OS X や Linux 上でも使用できますが、VMware に関する知識が必要

(33)

54

になります。本書ではページ数の関係で取扱いません。

公式ドキュメントでは Windows Vista や Windows 7 でのインストールがうまくいかない報 告が多数されていて、その場合には3の BitNami スタックの使用を勧めています。

2.3.4.

Moodle packages for Windows

のインストール

1.Moodle 公式サイトの「Moodle packages for Windows」のページ (http://download.moodle.org/windows/)を開きます。

「Moodle packages for Windows」のページ

2.一覧の最初に表示されている Moodle 2.4.1(MOODLE_24_STABLE)の Download 欄 のパッケージのアイコン、または「Download」リンクをクリックします。

3.すると SourceForge のサイトにリダイレクトされ、ダウンロードが開始されます。

(34)

索 引

Amazon EC2, 48

Angel, 32 BitNami, 48, 53

BitNami Cloud Hosting, 61 Blackboard, 22, 32

Canvas, 32 Captcha, 305 CMS, 11

Complete install packages for Windows, 53 Flipped Classroom, 27 IMS CP, 235 IMSコンテンツパッケージ, 245 Instructure, 32 IP ブロッカー, 467 LCMS, 25 LMS, 11 LTI, 236, 382 MERLOT, 205

Microsoft Web Platform installer, 53 Moodle, 11 Moodle Docs, 141 MoodleRooms, 49 NetSpot, 49 O2O, 29 Open Courseware, 25 Safe Exam Browser, 491 VLE, 11 WebCT, 22, 32 Wiki, 286 アウトカム, 414 インストラクショナルデザイナー, 30 インストラクショナルデザイン, 30 ウィークリーフォーマット, 158 ウェブサービス, 432 エモーティコン, 137 オープンソース, 44 カーン・アカデミー, 12 カレンダー, 134 クラウド, 49 ゲストアクセス, 154 構成主義, 43 コース, 11, 47, 149 コースページ, 89 コース管理システム, 11 コーホート, 116, 452 コミュニティ・オブ・プラクティス, 30 コメント, 427 コンテント・マネジメント・システム, 11 Saas, 49 サイトページ, 106 サイト管理, 108, 110, 411 サルマン・カーン, 13 CAI, 12 CBT, 12 チャット, 363 ティーチングマシン, 12 データベース, 368 データベースドライバ, 76 デフォルトプロファイルページ, 144 ドック, 98 トピックセクション, 123

(35)

503 トピックフォーマット, 158 ナビゲーション, 97 ノート, 430 ハイブリッド型, 30 バックアップ, 110 バルクユーザ処理, 450 ファイルピッカ, 210 フィードバック, 293 フィルタ, 110 フォーラム, 258 ブック, 229 プライベートファイル, 184 ブレンディッドラーニング, 30 ブログ, 135 ブロック, 89 フロントページ, 88, 112 フロントページ設定, 84, 108 ポートフォリオ, 430 Martin Dougiamas, 30 マイ コース, 107 マイ プロファイル, 107 マイホーム, 106, 142 manavee, 17 マルチメディアフィルタ, 202 メッセージングシステム, 433 メディア埋め込み, 139 ラーニングアウトカムズ評価, 37 ラベル, 238 リストア, 110 レッスン, 376 レポート, 487 ログイン時のフロントページ, 112 ワークショップ, 325 移動アイコン, 102 外部ツール, 382 外部リポジトリ, 197 活動, 246 活動チューザ, 123 言語インポートユーティリティ, 90, 91 言語パック, 90 公式 iPhone アプリ, 191 講義収録型教材, 31 社会的構成主義, 30 設定, 107 調査, 388 投票, 340 盗作プラグイン, 436 評定, 392 編集モードの開始, 99 問題バンク, 110 用語集, 276

(36)

504

■著者紹介

井上博樹 (hinoue@learningdesign.jp) e エデュケーション総合研究所 チーフコンサルタント 1970 年生まれ。東京大学工学部卒。 富士総合研究所、国際大学、Blackboard, Inc.を経て、独立。 Moodle や WordPress などオープンソースソフトウェアをベースにした e ラーニングサイト やポータルサイト構築、スマートフォンアプリ制作、オンライン講義作成支援などを担当して いる。

■e エデュケーション総合研究所について

e エデュケーション総合研究所では、オープンソースソフトウェアをベースにした教育支援環 境構築の研究開発やサポートを行っています。Moodle による教育ポータル構築、医療機関の 教育プラットフォーム開発、Drupal による大学ポータル構築、Wordpress による多言語サイ トや会員制サイトの構築などをご提供してきました。 また、こうした研究成果をまとめ電子書籍として出版したり、e ラーニングサイトを低コスト ではじめられる e ラーニングスターターパックを提供したりしています。詳しくは、当研究所 の Web サイトをご覧ください。 Moodle ガイドブックの関連情報や補足情報も掲載しています。 http://www.learningdesign.jp/ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 2013年1月26日 初版発行 2013年2月1日 改訂1版発行 書名: Moodle 2.4ガイドブック 著者: 井上博樹 発行: eエデュケーション総合研究所 本書の無断複写、データの複製・配布は著作権法上の 例外を除き禁じられています。複写ならびに 教育機関内などで配布されたい場合は、機関ライ センス契約をご提供しています。

参照

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