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認知症 診断・治療・ケアについて

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Academic year: 2021

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認知症とは?

認知症(英 Dementia 独 Demenz)

「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が、慢性的に減退・消失する

ことで日常生活・社会生活を営めない状態」

(先天的な知能発達障害は「知的障害」 認知の障害は「認知障害」)

かつては「痴呆」と呼ばれていたが2004年の厚生労働省の用語検討会で「認

知症」に置き換えられた

狭義では「知能が後天的に低下した状態」

医学的には「知能」のほかに「記憶」「見当識」を含む認知の障害や人格障害

を伴った症候群と定義される

治療により改善する疾患に対しても用いられる

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日本における認知症患者数

高齢者の増加により 2005年 169万人 2010年 270万人と増加

高齢者全体の総数に占める認知症患者の割合は 2005年 6.7%

2010年 9.1%と上昇

およそ高齢者の10人に1人は認知症といわれている

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認知症の症状

認知症の中核症状

記憶障害

認知障害

認知症の周辺症状

妄想

興奮

せん妄

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中核症状 記憶障害

記憶障害(記憶力の低下)

短期記憶(瞬時に覚え数十秒で忘れてしまう)

長期記憶

近時記憶(数分から数時間、数日などの記憶)

食事したこと・頼まれごと

遠隔記憶(数ヶ月から数十年)

誰かが死亡したこと・子供の頃の体験

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中核症状 認知機能障害

認知機能障害(物事を認識し判断する力の衰え)

失行(物事を認識し判断する機能の衰え) ガス台が使えない・服が着られない

失認(認識できなくなる)

相貌失認(家族が誰だかわからなくなる)

時計失認(時間が読めない)

失見当(時間や場所や人物がわからない)

時間的失見当(日時や季節がわからない)

空間的失見当(場所に関わる失見当)

人物に関わる失見当(目の前にいる人がどういう人かわからない)

失語(言葉が上手く出てこない)

失算(計算ができない)

実行機能障害(段取りを考え手順通りにできない) 仕事・炊事ができない

注意分割機能障害(ながら作業ができない)

判断力の障害(判断ができない)

包括的な認識力の障害(その場の状況を全体として捉えることができない)

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周辺症状

BPSD (Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)

妄想(明らかに事実でない思い込みや被害妄想)

物盗られ妄想(記憶障害と作話が昂じた症状)

替え玉妄想(他人がなりすましていると思い込む)

幻覚(実在しない物が見えたり聞こえたりする)

せん妄(意識障害と興奮および幻覚)

睡眠障害(昼夜逆転)

徘徊(無目的に歩き回る)

抑うつ状態(気分の落ち込み・表情が乏しくなる)

攻撃的な言動(罵る・暴力をふるう)

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認知症を疑うポイント

出来事や体験を丸ごとそっくり忘れる

自分が物忘れをしたという自覚がない

物事を認識し判断する力が衰えてきている

以上の症状のため生活に支障が出ている

日常生活あるいは職業を含む社会生活に目立つ支障を来してい

るかが認知症を判断する上では重要

作話・取り繕い(辻褄を合わせる話をしたり行動を取る)があるた

めに判断が難しい場合もある

家族が変化を感じた場合には認知症の可能性が高い

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軽度認知障害

(MCI : Mild Cognitive Impairment)

認知機能の低下を認めるが認知症とは言えない状態

認知症の前段階で「認知症予備軍」

認知障害より記憶障害が主兆候

体験したことを忘れがちになる

歩きながら話すことなどができにくくなる

料理など手順を踏む行動ができにくくなる

一般的な認知機能・日常生活能力はほぼ保たれる

一般住民では1〜2%であるがMCIでは年間10〜15%が認知症に移行

言語・注意・視空間認知の障害を合併していると年間70%以上

MCIの6年間で80%が認知症と診断される

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認知症を引き起こす主な疾患

血管性認知症

多発梗塞性認知症広範虚血型(Binswanger型白質脳症を含む)

多発脳梗塞型

限局性脳梗塞型

遺伝性血管性認知症(CADASIL)

変性性認知症

アルツハイマー病(Alzheimer’s disease [AD])

パーキンソン病(Parkinson’s disease [PD])

前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia [FD])

ピック病(Pick’s disease)

びまん性レビー小体病(Diffuse Lewy body disease [DLBD])

ハンチントン病(Huntington’s disease)

進行性核上性麻痺

感染症

クロイトフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease [CJD])

HIV感染症

5割

3割

1割

その他 1割

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認知症様症状をきたす疾患

中毒性疾患

 薬剤起因性 向精神薬・抗ヒスタミン薬・H2遮断薬・抗腫瘍薬他  中毒性 鉛・水銀・砒素・マンガン・タリウム・有機溶剤・一酸化炭素中毒 

頭蓋内疾患

 正常圧水頭症  頭部外傷 脳挫傷・慢性硬膜下血腫  脳腫瘍・癌性髄膜炎 

感染性疾患

 肺炎・尿路感染症などの感染症に伴うせん妄  神経梅毒・ヘルペス脳炎・髄膜脳炎・脳膿瘍 

代謝性疾患

 低酸素脳症・低血糖・肝性脳症・尿毒症・電解質異常(Na K Ca)・甲状腺機能低下症・ビタミン欠 乏症 

免疫機序

 傍腫瘍性症候群・中枢神経性ループス・サルコイドーシス・多発性硬化症 

うつ病・精神疾患

 うつ病・解離性障害・不安障害

特に重要な可逆的な疾患

(treatable dementia)

慢性硬膜下血腫

・正常圧水頭症

痴呆・尿失禁・歩行障害

・甲状腺機能低下症

・うつ病性仮性認知症

急速に進行する認知症には注意が必要

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アルツハイマー型認知症

脳内でアミロイドβ蛋白が大量に作られ蓄積する

蓄積したアミロイドβ蛋白が神経細胞を死滅させるがその機序は不明

経過は4.5年から長い人では20年

記憶障害はアリセプト等の薬剤がある程度有効であり新薬も認可さ

れている(後述)

ワクチン療法等の開発も進んでいる

危険因子(リスクファクター)

年齢(85歳以上で急激に増加)

家族歴(親が早期発症のアルツハイマーの場合 例:50代前半で20倍)

遺伝因子(APOE4[ε4アレル]が一つあると12才程度早く発症?)

動脈硬化の危険因子(高血圧症・糖尿病・喫煙・高コレステロール血症)

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脳血管性認知症

脳出血や脳梗塞のために神経細胞が死滅して起きる

損傷を受けた場所により症状の現れ方が違う

まだら認知症(失われた機能と残っている機能のギャップが激しい)

発作が起きるたびにガクンと症状が悪くなる。

治療は脳梗塞再発の予防(基礎疾患の治療・抗血小板剤)

危険因子(リスクファクター)

高血圧症・糖尿病・高コレステロール血症などの生活習慣病

メタボリック・シンドローム

不整脈(心房細動[Af]等)

喫煙・過剰な飲酒

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レビー小体認知症

α-シヌクレインという特殊なタンパク質が集まりレビー小体となる

レビー小体が脳内に蓄積し神経細胞が損傷を受ける

認知症の症状の他に身体の動きがおかしくなり妄想・幻覚が多い

 のろのろした動作  チョコチョコした小刻み歩行  歩くときの前傾姿勢  手指の震え  パーキンソン症状  具体的な内容の幻視が特徴  血まみれになった人の顔が見える  カーテンの裏に猿が見える 

アルツハイマー病に比べ寝たきりになるまでが10倍早い

ドネペジル(アリセプト)が有効といわれているが保険適応外

動作に関しては抗パーキンソン病薬・幻覚に対してはリスペリドン(リスパダール)や

クエチアピン(セロクエル)を使用

 薬剤に過敏に反応するため少量からの投与が基本

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ピック病

比較的稀であるが40代から60代の働き盛りが好発期

若年性認知症の3分の1を占める

一部遺伝が関係しているといわれるが発症の原因不明

最初は物忘れは目立たないが語想起の障害が特徴(物の名前が言えない)

理性の座(前頭前野)が機能低下を起こすと問題行動が始まる

無思慮・傍若無人・羞恥心や自制心がなくなる

本人には病気の自覚(病識)がない

アルツハイマー型認知症よりも進行が遅く、寝たきりの状態に至るまで10年

以上かかることも多い

病気の進行を遅らせる効果的な薬剤はない

生活リズム・環境を整えることが重要

薬剤による治療は問題となる周辺症状に対する治療が中心となる

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認知症診断のための検査

 問診・身体診察  心理テスト  長谷川式認知症スケール・MMSE・ウェクスラー成人用知能検査(WAIS-R)  頭部CT・MRI  頭蓋内疾患の鑑別  SPECT・PET  脳血流の評価  [11C]-PIB-PET アミロイドβの脳への沈着を検出しアルツハイマー病診断に有用  脳脊髄液検査  感染症性脳炎・膠原病 髄液細胞数・蛋白  髄液中アミロイドβペプチド濃度 アルツハイマー病で低下  採血  甲状腺ホルモン 甲状腺機能低下症  血中ビタミンB1 大酒家 ウェルニッケ脳症  血中ビタミンB12 胃全摘後  血中ホモシステイン アルツハイマー病の30〜40%  血中銅 健常者では10% アルツハイマー病で30%  電解質・血糖値・肝機能・アンモニア・腎機能

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認知症治療の基本的な考え方

本人の自尊心を損なわない

規則正しく安定した生活を目指す

周辺症状の出現には「不安感」が大きく関わっている

生活環境の整備

玄関・廊下・トイレ・浴室・ベッド

食事

内服薬の管理

機能維持

デイへの参加

買い物・家事等本人が出来ることのサポート

家族・関係者の支援

上手な介護

薬物療法

アルツハイマー治療薬

周辺症状への薬物治療

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上手な介護

「叱る」「怒る」「注意する」「なじる」は本人のやる気をそぐ

できないことをそっと手助けする

優しいアドバイスを心がける

寄り添って一緒に行動する

患者の自尊心を尊重する

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アルツハイマー型認知症の治療薬

基本的には認知症の進行(特に記憶力)をある程度抑制する効果

コリンエステラーゼ阻害薬

ドネペジル(アリセプト)

アセチルコリンエステラーゼを阻害することによりアセチルコリンの濃度を高め

コリン作動性神経の神経伝達を促進

ガランタミン(レミニール)

コリンエステラーゼ作用は弱い一方、ニコチン性アセチルコリン受容体と呼ばれ

る神経細胞のアセチルコリン受容体に働きかけることで神経細胞間のシグナル

伝達の効率を高める

リバスチグミン(イクセロンパッチ・リバスタッチパッチ)

アセチルコリンを分解するブチルコリンエステラーゼとアセチルコリンエステラー

ゼの双方を阻害する

NMDA受容体拮抗薬

メマンチン(メマリー)

アルツハイマー型認知症のために活性化したNMDA受容体の神経伝達物質で

あるグルタミン酸の受容体を阻害し神経細胞に過剰なカルシウムイオンが流入

することを防ぎ神経細胞を保護する

これだけが作用機序が違い上記の3剤と併用可能

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アルツハイマー型認知症の治療薬

コリンエステラーゼ阻害薬

ドネペジル(アリセプト)

剤型:錠剤・細粒・崩壊錠・ゼリー

重症度に関係なく処方が可能

ガランタミン(レミニール)

剤型:錠剤・崩壊錠・内用液

適応は軽度から中等度アルツハイマー型認知症

リバスチグミン(イクセロンパッチ・リバスタッチパッチ)

適応は軽度から中等度アルツハイマー型認知症

唯一パッチ剤がある

共通する副作用として嘔気・嘔吐・腹痛 興奮

NMDA受容体拮抗薬

メマンチン(メマリー)

剤型:錠剤

適応は中等度〜高度アルツハイマー型認知症

上記コリンエステラーゼ阻害薬と併用が可能

併用により効果が高まる

副作用:めまい 転倒につながる可能性

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周辺症状の薬物治療

不眠・不穏・幻覚・妄想

 抗精神病薬 (睡眠薬は症状を悪化させる可能性)  リスペリドン(リスパダール) 糖尿病には慎重投与  クエチアピン(セロクエル) 糖尿病には禁忌(血糖上昇)  抑肝散 

易怒性

 抗けいれん薬 眠気・ふらつき・肝障害・顆粒球減少  カルバマゼピン(テグレトール)  バルプロ酸ナトリウム(デパケン・バレリン・ハイセレニン)  抗精神病薬  リスペリドン(リスパダール)  クエチアピン(セロクエル) 

自発性の低下

 アマンタジン(シンメトレル) 

鬱状態

 SSRI 効果が出るまで2週間程度 副作用:嘔気・下痢(2週間程度で治まる)  フルボキサミン(デプロメール・ルボックス)  パロキセチン(パキシル)

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認知症患者を取り巻く問題点

告知はどうすればよいか?

物忘れと伝える? 認知症と伝える?

誰が告知するかどうかを決定する?

延命治療の是非

どこからが延命治療?

食べられなくなったら点滴?

胃瘻による経管栄養は?

気管切開による吸痰は?

誰に決定権があるのか?

事前指示? 尊厳死?

答えのない倫理的な問題に対応する困難さ

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高齢者虐待 ネグレクト

ネグレクト

高齢者を衰弱させるような著しい減食、又は長時間の放置、

擁護者以外の同居人による虐待行為の放置など、養護を

著しく怠ること

入浴しておらず異臭がする

髪が伸び放題である

水分や食事を十分に与えられていないことで、脱水症状

や栄養失調の状態にある

劣悪な住環境の中で生活させる

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高齢者の虐待

2000年には成年後見制度の法改正

2006年には高齢者虐待防止法が施行される

虐待の「おそれがある」と思われる段階で地域包括センターへの通報

家庭内での虐待は発見が難しいため保健師・介護保険専門員・

ホームヘルパーなどによる早期発見が重要

防止法による高齢者虐待の分類

養護者による高齢者虐待

身体的虐待

ネグレクト

心理的虐待

性的虐待

経済的虐待

要介護施設従事者等による高齢者虐待

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高齢者虐待 身体的虐待

身体的虐待

高齢者の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある

暴行を加えること

平手打ち

つねる・殴る・蹴る

無理やり食事を口に入れる

やけどをさせる

ベッドに縛り付ける

養護を著しく怠ること

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高齢者虐待 心理的虐待

心理的虐待(心理的外傷を与えるような言動)

高齢者に対する著しい暴言、又は著しく拒絶的な対応、

その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を

行うこと

排泄の失敗等を嘲笑する等により高齢者に恥をか

かせる

怒鳴る・ののしる

侮辱を込めて子供のように扱う

話しかけを無視する

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高齢者虐待 性的虐待・経済的虐待

性的虐待

高齢者にわいせつな行為をすること、又は高齢者をしてわいせつな行為

をさせること

排泄の失敗に対して懲罰的に下半身を裸にして放置する

キス・性器への接触

経済的虐待(高齢者から不当に経済上の利益をえること)

擁護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分すること、

その他高齢者から不当に財産上の利益をえること

日常生活に必要な金銭を渡さない

本人の自宅等を本人に無断で売却する

年金や預貯金を本人の意思・利益に反して使用する

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参考

「認知症 家族はどうしたら良いか」 長谷川和夫 池田書店

認知症診療Q&A」 川端信也 日本医事新報社

参照

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