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公共施設 インフラの老朽化は 今日本で一番大きな話題の一つである 安倍首相もこの問題 を所信表明の中で述べて取り組もうとしており 手遅れな感は拭えないが日本は正しい方向に向 かっていると思う

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Academic year: 2021

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公共施設・インフラの老朽化は、今日本で一番大きな話題の一つである。安倍首相もこの問題 を所信表明の中で述べて取り組もうとしており、手遅れな感は拭えないが日本は正しい方向に向 かっていると思う。

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日本の橋の建設実績のグラフをみるとピラミッド型になっている。1970 年代に年間1万本の橋が架 けられたが、その後急激に減り最近は年間1,000 本程度である。橋の耐用年数は 50 年が目安と言われ ているが、日本の橋は世界より早く务化する。地形が急峻で川の流れが急なのと、都市部は渋滞して 重い車の圧力がかかるためだ。また、雪が降ると融雪剤を撒くが、これも路面を傷つける要因になっ ている。世界では雪が固まったらそこは原則通らない。どうしても通りたければ、自己責任で通ると されるが、日本はそういう面でも手厚いと言える。

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50 年経ってもびくともしない橋もあるが、30 年ぐらいで架け替えないといけない橋もあり、平均す ると50 年の耐用年数になる。そうすると、1970 年代から 50 年経った 2020 年代に、年間 1 万本の橋 を架け替えなければいけなくなるが、その時点での予算は1,000 本分にしかならない。足りない分を 他の予算から振り分けようとしても、学校、道路、公営住宅、上下水道も同様のピラミッド型で同じ ように更新時期となるが、今の予算はピラミッドの底と言える。高度経済成長期は、集中的に投資し て短期間に豊かになったが、建替え時期が来た今、その余力はない。

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予算がないからと放っておくと事故が起こる。東日本大震災時に、東京九段会館の天井が崩落し、 2名が亡くなり、遺族は国を相手に訴訟を起こしている。老朽化を知りながら十分な対策を打たず、 結果として人を死に至らしめると、刑法上の犯罪になる。これが学校の体育館なら市の責任である。 今はそのくらい老朽化に対して敏感になっている。 去年12 月の中央道笹子トンネルの天井板崩落事故は、トンネル本体の耐用年数には問題がなかった が、天井板を吊るす金属のボルトに問題があり起きた。中日本高速道路(株)は、ボルト交換に伴う 使用停止による1日数億円の損失や、利用者からの不満を恐れ使い続けた結果、あの事故が起きた。 我々がすべきだったことは、1週間使用停止にしても良いから、安全なものに替える勇気を中日本高 速道路(株)に与えてあげることだった。笹子トンネルは特殊な構造ゆえたまたま起きたと言う人も いるが、日本中のインフラが老朽化している中で、他が安全という理屈が通るのか。 今年2 月に浜松市でつり橋のワイヤーが切れる事故が起きたが、この事故を知っている人は非常に 少ない。そのとき駅伝の練習をしていた高校生7 人が通行中だったが、音に気づき逃げたため無事だ った。もし死亡事故になっていたら、大事故として報道がされ、国民の危機感が高まったと思う。幸 運にも死亡事故にならなかったため、報道規模が小さかっただけである。

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事故が起きる前に手を打つ必要があるため、日本全国の公共施設は続々と使用停止になっている。 使い続けると危ないから、予算を確保できるまでは使用を止めるしかない。我々は使用を止める勇気 を行政に与えないといけない。危ないのに使用を求め続け、事故が起きれば責任を追及するというの は矛盾している。 借金をして公共投資をすれば良いと国の政治家は言うが、借金にも限界がある。公共投資を圧縮せ ざるをえないのは、増える社会保障費(扶助費)があるからである。人件費を削っても、税収が増え ない中で、どんどん増える扶助費に対応するためには、公共投資を削るしかない。日本の借金依存度 は先進国中最悪で、破綻したギリシャより遥かに悪い。これ以上借金はできないと考えた方が良い。 元々日本の借金は、バブル経済崩壊直後の統計で先進国の平均並みだった。戦後の復興からずっと 公共投資をしてきたが、右肩上がりに増加する人口と税収に支えられ借金をする必要がなかった。し かし、バブル経済崩壊や人口減少がわかった後も、公共投資に依存し経済を支えようとしたため借金 が増えていった。 我々は先輩世代から、健全な財政と豊かなインフラを受け取っていながら、子どもたちの世代には、 不健全な財政と老朽化したインフラを渡そうとしている。若い世代は今後のことを真剣に考えないと いけない。

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では具体的にどうするか。まずデータをしっかり取ることが大事である。日本全体でお金が足りな いと言うが、自分の自治体でどれくらい足りないかをしっかり計算する必要がある。東洋大学が公開 する無償計算ソフトで、埼玉県宮代町を計算したとき、最初の10 年間は大丈夫だが、次の 10 年に 1970 年代に建てた7 つの小中学校の更新時期が来て、それを乗り越えたら上水道、下水道と次々と更新時 期がくる。一気に整備した分、一気に更新が来る。全ての更新に対応するには、今の予算を1.3 倍に する必要があるが、首都圏自治体は国からの援助はないと町長に話すと、学校の統廃合、公共下水道 の拡大停止、民間への譲渡などを1年半の間に総合計画に盛り込んだ。

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2012 年 1 月に人口一人当たりの公共施設面積を調査したところ、多摩市は東京市部の中で多い方か ら2番目だった。少ない方の国分寺、小金井、国立などもこの問題に取り組もうとしているが、取り 組む必然性、必要性は遥かに多摩市の方が高い。すぐに精密検査をしないと相当危ない感じがする。

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さらに、他の道府県では市が施設を所有しているものだが、東京は都の施設が多い。市と都を合わ せると東京の市町村は4.43 ㎡で、相対的客観的に言って、近隣県からみれば恵まれていて贅沢である。

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「お金がないからこの施設を廃止します」では論理的でなく市民に理解されない。行政には哲学が 必要で、きちんと市民に説明する義務がある。その哲学の一つの考え方として示しているのが、3階 層マネジメントである。

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公共施設は利用者の範囲によって、階層が分かれる。 まず、一番広いのが全域で、文化ホールや体育施設、中央図書館等の市民全体に恩恵を与える施設 が入る。これらの施設では広域化を図る。都内であれば電車で10~15 分で隣の市に行けるため、自分 の市で全ての施設を持つ必要はない。隣の市にある施設を分担金を払って一緒に使うというように、 複数の市が共同で建設し維持することでコストが分担される。法律上の問題はない。反対する人が多 いが、自分の市に必要という以上の理屈があるだろうか。 2番目は学校区で、小中学校、児童館、学童クラブ、地区図書館等校区に一つくらいあるものが入 る。この中で一番古い学校は、必要な統廃合を行った上で、真っ先に建替える必要がある。学校区の 各施設は、今まで単独で建てられていたが、学校建替えの際に、公民館、集会所、保育所等様々な機 能を入れていく。児童生徒数が減り、空き教室が増える中では、ニーズのあるものにどんどん転用す ることが必要である。これが多機能化で、単なる複合化と違うのは、何にでも使えるよう、すぐに変 えられるようにしておく点にある。 3番目は集会所や公営住宅等の住区である。これらはソフト化する。公営住宅の建替え時に民間ア パート等に入ってもらい、費用を補助する。これは公営住宅を廃止しているのではなく、同じ費用で 民間住宅に住む権利を保障している。集会所も民間施設で代替できる。私の町内会は集会所を持たず、 学習塾の空き時間を1 時間 1,000 円で借りている。利用の多くが趣味であるため、自分達で費用負担 すべきと割り切れば何でもできる。これで空いた土地や建物を民間に貸したり売ったりすれば良い。 以上を行えば、施設を3割削減できる。最大のポイントは、各機能は全てあり、サービスレベルが 下がらない点である。ただ不便にはなるかも知れない。しかし、目の前にあったものが遠くになった からと言って、山ふたつ越えないと病院がない所の話とは違う。都市の住民は、便利さばかりを追求 するのではなく、できる範囲で節約することで、日本全体のアンバランスを緩和していく役割がある。

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学校を多機能化すると、いろんな人が学校に入ってきて防犯上困るという意見もあるが、文部科学 省も多機能化を認めはじめている。学校の中に公民館、コミュニティセンター、老人福祉センターな どを入れて、地域の大人の目で児童・生徒を見守ろうという考えである。おじいちゃん、おばあちゃ んが顔見知りになれば、変な人が入ってきてもすぐにわかる。図書館があれば若いお兄ちゃん、お姉 ちゃんも来る。どんなに頑丈に警備しても、越えてくる場合は必ず超えてくる。ハードで守るのでは なく、ソフトで守る仕組みがこのような多機能化施設ではできる。

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不動産を活用した事例として、文京区にある奈良県の施設は、空いている土地を民間に貸して、賃 貸マンションを建て、その収入を前払いしてもらって公共施設を無償で建てることができた。空いて いる民間施設を借上げても良い。それにより官も民も助かる。

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公共施設にばかり目を奪われているが、実は怖いのは、道路、橋、上下水道、ごみ処理場等のイン フラである。これは多機能化やソフト化ができないので難しい。今できる数少ないやり方として、事 後保全を予防保全に切り替えることがある。今までの管理は、道路に穴があいたらその穴をふさぐと いう事後保全であったが、必要なのは道路に穴があかないように管理し予防することである。予防保 全は日常の点検が重要であるため、人手がかかる。行政の場合、民間に委託し委託費用を払うため、 予防保全は確かに費用がかかる。しかし、しっかり行えば事後保全費用はかからず、さらに寿命が延 びるため、全体の費用としては大幅に安くなる。だいたい3割程度安くなると報告されている。

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行政だけではできない予防保全などは、民間にどんどん提案してもらい、良い提案だけをしっかり 採用すれば良い。民間は金儲け主義できちんとやらないのではないかとの意見もあるが、しっかりと ルールを決めれば、民間はちゃんと仕事をしてくれる。

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コンセンサスマネジメントというのは、合意形成していくということである。市民が理解して行政 を支えていくことが必要である。よく利用者にだけ意見を聞いて結論を出しているが、それは意見を 聞いたことにはならない。必要なのは、市民全体、特に納税者の意見である。納税者が自分の税金を 使っても良いと思うかどうかが重要なのである。そのために多くの自治体が無作為抽出のアンケート を取っている。兵庫県伊丹市を例にとると、8割の人が減らすことについて賛成した。積極的な賛成 ではないかもしれないが、絶対反対という人はほとんどいない。その他各地でも公共施設の再編は賛 成という意見が過半数を超えた。近隣では武蔵野市が調査を行い、施設の統廃合・複合化について、 積極的反対1人に対して積極的賛成が7人だった。公共施設の再編について市民が決して後ろ向きで はないことが示されている。

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オプション・アプローチというのは、費用対効果に関する情報(数字)を提供し、他の選択肢との比 較で判断してもらうというやり方である。大体、公共施設というのは受ける便益、メリットの方だけ で議論されるが、本来はいくら使う価値があるかという、費用対効果で考えるべきである。 例えば公立図書館は貸出者数1人当たり1,000 円の費用がかかっている。図書館は大事という意見 はあるが、本代には100 円しかかかっておらず、残りの 900 円は人件費と施設関係費となっている。 なぜ人とハコのために900 円もかけて公立図書館を運営しなければいけないのか。公民館も同じで、 1室借りると1万円のコストがかかるが民間では大体1時間1,000~2,000 円で借りられる。それから、 学校跡地を公園として保全してほしいという意見があるが、この場合は売ったお金で別の学校を新し くすることができることと公園として保全することを比べなければいけない。自分が維持したい状態 を実現する運動、ナショナルトラストとして考えると、自分の目の前の緑を維持したい場合、一世帯 当たり100 万円以上払わなければならなくなる。100 万円払って跡地をそのまま維持してほしいとい う人はいないと思う。 図書館も公民館も、いるかいらないかで言えばあった方が良いということになるが、その判断には 費用情報が入っていない。費用情報がないと判断が狂うため、常に市民に提供していく必要がある。

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公共施設マネジメントの意識は浸透してきた。手順としては、まず施設白書を作成することが必要 であり、その後方針を策定して実施となる。まだ実施まで至っている自治体は少ないが、ものすごい 勢いで進んでいる。

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公共施設マネジメントでは、新しいものをやめようとか、どれくらい減らすかという数値目標を立 てることが重要になってくる。また、インフラについても記述することが必要と考える。

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石油危機後、日本は高騰した石油を使わずに、「省エネ」技術を磨いてきたからこそ、現在燃費の良 い日本車が売れている。危機を乗り越え経済成長したのである。これからはインフラの量を減らして サービスを維持する「省インフラ」の方法を皆で考える時代に入っている。今までどおりのインフラ が必要と主張するのは「わがまま」を言っているのと同じである。

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省インフラにはいろいろな手法がある。企業にとってもビジネスチャンスとなる。過去に省エネで 成功した企業が発展したように、これからは省インフラで成功する企業が発展する。

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省インフラは日本の伝統である。 江戸時代の寺子屋を考えると、寺は宗教施設だけでなく、公民館、学校、旅館などの様々な機能を 持っていた。立派な施設はなくても、誰でも寺子屋に通って勉強できる環境があった。こうして世界 一の識字率を実現できたのである。その最大のポイントが寺子屋のシステムにあり、ユネスコが新興 国に広めるために「ワールド・テラコヤ・ムーブメント」という活動をしているほどである。お金が ない国でもいかにして教育していくのか、その知恵を日本人は持っているという、日本人の節度を讃 える活動でもあると言われている。 私が伝えたかったことは、公共施設がより多く、より身近に、より立派にあることが豊かではない ということである。できる限りインフラの負担を軽くして、次の世代に送ってあげられる、そのきっ かけに今日の講演がなれば良いと思う。

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