1 平成 26 年 6 月 25 日 第 112 回海洋フォーラム要旨
「航行安全を脅かす海賊問題について」
一般社団法人日本船主協会 海務部長 田中俊弘[講演要旨]
本日は、ソマリア沖・アデン湾における海賊事件の状況、海賊対策に関する国際機 関等の取組み、日本の対応、商船の海賊対策、今後の課題について話をする。海賊行 為とは、国連海洋法条約 101 条で規定されており、基本的に公海上で不法な暴力行為、 抑留又は略奪行為を私的目的ですることである。したがって、公海上ではなく、領海 内で暴力行為を行うものは海賊とは呼ばない。 海賊にもいろいろなタイプがあり、アジア型といわれるのは、船に密かに侵入して 船用品などを持っていくという盗みのタイプ。南アメリカ型というのは、武器をもっ て、強盗をするタイプ。最近では、船の横取り型、ハイジャック型とどんどんエスカ レートしてくるような動きがあり、特にソマリアエリアでハイジャックの問題が発生 した時に世界的な問題になってきたという背景がある。 国際海事局(IMB)のデータによると、世界における海賊事件発生件数のピークは、 2010 年の、445 件で、そこから件数は下がってきている。一方でアデン湾、紅海、及 びソマリア沖に関しては、騒がれはじめた 2008 年から極端に多発するようになり、 2011 年にピークを迎え、現在は、減少して来ている。2013 年には、IMB に登録される 海賊案件は 15 件にとどまった。減少の理由は、各国による海賊対処の取組み、たとえ ば、自衛隊などが護衛艦隊を出して商船を護っている結果であって、海賊がいなくな ったからではない。実際には不審船の目撃情報は継続的にある。 アデン湾は、インド洋の北西側に位置し、北はアラビア半島、南はアフリカ大陸の ソマリア半島に挟まれた東西に広い楕円形の湾である。日本にとって、大変重要な意 味をもつエリアである。このエリアを通航する日本商船隊は、おおよそ年間 1600 隻か ら 2000 隻余。この湾やその東方沖で、海賊事案が多発すると、海上輸送に大きな影響 が出てくるというような非常に重要なエリアである。 IMB のデータによると、2011 年の、アデン湾及び紅海とソマリア東方沖で発生した 海賊事件件数は、237 件であった。この中で、ハイジャック案件、すなわち船を乗っ 取られ、乗組員を人質にとられて、荷物を奪われるという案件は 28 件発生している。 それが昨年 1 年間のデータを見ると、15 件の海賊案件中、ハイジャック案件は 2 件と かなり改善してきている。2 IMB によると、海賊は遠洋漁業の船のような母船でアデン湾内を移動し、襲撃の時 には 4~5 人が乗るような小型船を使用する。海賊は、大型船をハイジャックすると、 それを母船に使い、そこで生活をしながら、次の海賊行為を行う。海賊によっては、 ロケットランチャー等の相当な威力のある兵器を装備している。 日本関係船の主な海賊襲撃事件については、2008 年に「高山」という原油タンカー が、被弾して、油流出を引き起こした。この事件の時は、有志連合軍のヘリコプター が派遣され、ハイジャックは免れた。また、2010 年には、アフリカ東岸ケニア、モン バサ港の沖合でハイジャックされている。乗組員を人質にして、身代金を要求すると いうような事案であった。 2011 年には、船に海賊が乗り込んできて危害を加えるというケースが起きていたの で、乗組員の人命を護るため篭城できるシタデルを装備するようになった。 国際的な取組みについて、国連安全保障理事会は、このエリアでの海賊・武装強盗 を抑制するため、2008 年に他国の海軍がソマリア沖の領海内に入ることを認める決議 を採択した(2008 年 12 月 1846 決議)。これをベースに、2009 年から日本も日本関係 船が当該エリアで海賊の被害に遭遇しないよう、自衛隊が海上保安庁とともに海上警 備行動を開始している。 国際海運会議所(ICS)の対応としては、船舶に対する海賊行為及び武装強盗の抑制 に か か る 船 主 、 船 舶 運 航 者 、 船 長 及 び 乗 組 員 の た め の 指 針 ( Best Management Practice BMP)を作成している。例えば、通報制度、海賊が乗り込まないための対策、 そういったものをガイドラインとして示している。これは、現場でも拠り所とされて おり、この BMP に従った対応を現場は続けている状況である。 各国の対応状況としては、それぞれ日本と同様に、アデン湾に艦船を派遣している。 CTF151 と言われる有志連合軍(米国・トルコ・シンガポール・韓国・英国)は、ゾー ン・ディフェンスを行っている。2013 年からそこに、日本の自衛隊も参加するように なっている。EU 軍は、アタランタ作戦として、海賊の陸上基地の攻撃を認め、活動を している。NATO 軍、その他の各国も自国の艦船による警護、哨戒機の派遣を行ってい る。 日本においては、国連の決議案を踏まえて、2009 年 3 月に海上警備行動が発令され た。その後、2009 年 6 月 19 日に、海賊対処法が成立、海賊対処に係わる水上部隊が 派遣されることになった。同年 7 月 23 日に今の海賊対処行動が開始された。翌 2010 年 7 月 16 日には、海賊対処法に基づく対処要項の 1 年延長を決定し、毎年、1 年ごと に更新がされており、2013 年からは、現地に派遣されている2隻の護衛艦の中の1隻 が CTF151 ゾーン・ディフェンスへ参加するようになっている。2014 年 2 月から、P-3C 哨戒機が、2機現地に派遣されており、地域がゾーン・ディフェンスにあるという 体制になっている。 2009 年 3 月 14 日、当時の麻生総理が派遣の指令を、浜田防衛大臣が訓示を行い、 護衛艦「さみだれ」と「さざなみ」が水上部隊として呉港を出港した。
3 日本の派遣海賊対処水上部隊の活動内容については、ソマリア・アデン湾のこの図 では、A 点と B 点、この間で、日本関係船に優先順位をおいて、直接護衛を行う体制 である。対象船舶の優先順位としては、日本籍船、それから、日本人が乗船している 外国籍船、その次が日本の船舶運航事業者が運航する外国籍船または日本の積荷を輸 送する外国籍船であって、我が国国民の安定的な経済活動にとって重要な船舶である。 このエリアは、2010 年 10 月、東方に約 100 マイル、約 200 キロ程度延長されてい る。かなり沖合になるので、モンスーンの時期には海賊が出ないということで、限定 的にモンスーンの時期以外だけ、ここまで延長するという形で行われている。 2009 年 5 月には、P-3C が派遣海賊対処行動航空隊として派遣れている。現在も 2 機 の P-3C が常駐して警戒にあたっている。 航空隊の活動としては、先ほどの A 地点と C 地点、ソマリア沖・アデン湾において、 船舶を防護するため、警戒監視、情報収集及び提供等を行う。実際には、船が船団を 組んで進む、それを先導する形で護衛艦がつき、その上空を P-3C が警戒するという状 況である。 護衛活動のこれまでの実績については、2014 年 5 月 31 日現在のデータによると、 当初の海上警備行動、これは海賊対処法が出来る前に、限定的に日本籍船の安全を担 保するために行った 41 回、それに加えて、対処法が出来てからの 527 回、合わせて 568 回の護衛活動している。その間、護衛活動を受けた船舶の数は、海上警備行動 121 隻を加えて 3461 隻、この中の日本関係船舶は、748 隻である。一回の護衛船舶数、護 衛艦が護衛していく船の平均値であるが 1 回当たり、約 6.3 隻ということである。昨 年の 12 月から、ゾーン・ディフェンスに 1 隻の護衛艦が配備されているが、これまで 延べ 117 日の警護を実施し、このエリアを 4600 隻の船舶が安全に通航するのを確認し ている。P-3C は、1124 回の飛行任務を実施し、この間、9500 回以上の海賊関連情報 を伝えてもらっている。 日本船主協会では、こうした活動に対し、自衛隊や海上保安庁への感謝の意を表明 するために、2010 年より毎年続けて会長・副会長を訪問団長として、ジブチを訪問さ せていただき、感謝の集いを開催している。安全回廊の A 点から C 点という距離は、 約 900 キロあり、東京―博多間の距離に相当する。この間を往復しながら、平均6~ 7隻ぐらいの関係船を護衛していただいているという状況である。 商船の海賊対策としては、まず、安全回廊を護衛船の時間に合わせて通る、という ことをやっており、日本関係船は、日本の護衛艦が最優先で護衛して頂いているので、 スケジュールに合わせて船をもっていくということをやっている。もちろん、博多- 東京間の距離があるので、護衛艦はいつもそこにいてくれるというわけではない。そ のために、海賊が出没するエリアで護衛艦を待っているということは大変危険な状況 でもある。そういう場合は、他国の護衛船団に混ぜていただくということもしている。 中国、ロシア、インド、韓国の海軍が最優先で自国関係船を警護しているが、そこに 関係船として入れていただき、通行するというケースがある。もちろん、日本の自衛
4 隊も日本関係船舶を優先順位としているが、それ以外の船にも、当然ながら余裕のあ る時には、警護をしているという状況である。 EU軍によるアタランタ作戦での船団方式、これは、艦船が随行するというわけで はないが、この時間にあわせて、ここを通ることによって、集中的にモニターされて、 そこに EU 軍がいつでも支援に駆けつけられる体制になっている。それと UKMTO の通報 制度、インド洋の広いエリアから通報しておくことで、不審船の情報等があれば、事 前に連絡がもらえるという体制である。 船舶に海賊を侵入させない物理的な対策としては、レーザーワイヤーを船の上方 (上甲板)に張り巡らす、ということをやっている。一枚一枚剃刀の歯がついている ので、直に触れると、血だらけになる。これをこのエリアに入る前に、設置するので あるが、大型のタンカーなどで、この作業をするとなると手空きの乗組員ほとんど全 員でやっても一日がかりの仕事である。また、これを付けたまま、入港を認めてくれ る港はなく、このエリアを通るために準備をして、このエリアを通り抜けて次の港に 入港する前に全部取り外さないといけない。帰路も同様である。現場はそういう状況 であるということをご理解いただきたい。 ガンネルスパイクという装置をもっている船がある。ロケットランチャーで撃たれ ても大丈夫のようにフェンスを付けたり、ほとんど気休めだが、ミサイルで撃たれて も大丈夫なように土嚢を積み上げるなど、船のほうでは種々対応している。 放水措置も持っており、小さなゴムボートで近寄ってくる海賊は、船側に近寄れな いというように、放水をずっと続ける。 更に、篭城施設。特別な篭城用エリアを持っている船もあるし、通常の機関室や操 舵室を、中から完全にロックできるようにして、そこに飲料水だとか外部との通信設 備をもっているというような船も多い。 民間武装ガードが乗船していると、一回撃てば終わりというロケットランチャー程 度の海賊や、ゴムボートで近づいてくるような海賊の場合は、なかなか船まで上がっ てこられない、というのが現状のようである。最近の IMB レポートでも、民間武装ガ ードが武器をみせるだけで退散していくというケースもある。それでも逃げていかな い場合は、警告発射ということで、空や海面に向けて、実際にライフル銃を撃ったり ということもあるが、そこまですると、さすがに海賊も逃げていくというケースが多 い。非常に効果の高いものとなっている。 2013 年 11 月 30 日、日本籍船においても、限定的ではあるが、武装ガードが乗れる ような法律「海賊多発地域における日本船舶の警備に関する特別措置法」が施行され た。日本籍船で武器を持ったガードが限定的な船種で、公海上の限定的なエリアに限 って乗船できるという多くの制限付きである。武装ガードは原油タンカーの満載した 船舶で、ペルシャ湾を出てからインド洋公海上、そこでの武装ガードの乗下船という ように条件が多く付いている。さらに、日本籍船で武器を積み込むということに対し て厳重なチェック、武装ガードが降りた後に武器が残っていないとかというような入
5 港前のチェックがある。エリアについてはもう少し広げていただかないと、うまく機 能しない場合があること、船種も原油タンカー以外は襲われないわけではないので、 今後、関係団体・官民一体となって、検討を進めていきたい。 海賊対処行動の継続については、7 月 24 日から 1 年間という限定で、まもなくその 期限がやって来る。ソマリア・アデン湾域での海賊事案は、IMB のレポートでは、非 常に数が減ってきているが、これは今の海賊対処行動、各国の連携した警備行動が大 変大きな抑止力になっている成果であると認識しており、船主協会としては、国交省、 防衛省に引き続きこれを継続させていただきたいということで、期間の延長を要望し ている状況である。 ソマリア・アデン湾域においては、確かに各国軍が出てきて、これも公海上という こともあり、各国の連合軍・有志軍が非常に活動しやすい環境にあり、海賊は非常に 減ってきている。一方で、西アフリカ(ギニア湾)では、ほとんどが領海エリア、各 国の主権下にあるエリアの中での武装行動事件が多発している。ここでは、武装ガー ドを乗せて入港することは当然認められない。ところがナイジェリア、カメルーンな ど現地の海軍が、きちんと治安を維持してくれているかというと、なかなかそうでも なく、特に西アフリカ・ギニア湾において、凶暴な銃撃戦が発生しているというのが 現状である。これに対する国際的な動きとしては、情報の共有、海賊事案の軍への通 報をして、各国軍に対処をお願いするとか、そういう情報共有するための制度を作っ ているというのが今の取組みである。MTISCG という情報共有センターの運用をトライ アルベースで始めており、日本も IMO を通して、基金を投入している。 さらに、最近、インドネシア、マラッカ・シンガポールにおける海賊事案が、かな り増えてきている。ソマリアエリアについては、皆厳重に対応しているのが、こちら のエリアでの海賊対策がおざなりになっているということもあるのかもしれないが、 最近、インドネシアでの窃盗事件が、増えてきている。国土交通省により注意喚起も 出されており、船主協会もメンバー船社に注意を喚起している状況である。 最終的な解決方法は非常に難しく、当面は、海賊事案が沈静化するまで、こうした 護衛活動、更に、武装ガード、また、領海エリアにおける各国の海軍・軍隊と連携す るような非武装ガードを乗せて対応していくということが考えられる。そして国際的 に情報交換をしながら、IMO レベルで対応を検討していくということになっていくと 思う。最終的には現地への国際的な取組みを強化して、各国それぞれ主権国家が安定 化していくということが究極的なゴールであると思っているが、船主協会としてもそ こへ向けての現場からの声を、皆様にお伝えしながらご協力をお願いしていくという 状況である。明日にでも海賊に対面するかもしれない船乗りの声として、お聞き戴け れば幸いである。
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[質疑応答]
Q: 2 点を教えてください。アデン湾などで海賊は激減している。彼らの暮らし、ど うやって収入を得ているのか、新しいことをやっているのか。海賊問題に根本的な解 決になっているのか?2 点目なのですが、国としての体制が大事だと思うが、どうす べきなのかを教えてください。 A: 海賊がどのような生業をたてているかは、よくわからないが、いろいろ聞く話に よると、ソマリアで海賊をやってきた人が花婿の第一の候補というような時代があっ たということなので、おそらく身代金の金額を考えてみると、海賊自身にどれくらい お金が残っているは知らないが、一度成功すれば、おそらく一生食べていけるくらい 稼いでいるであろうと考えられる。そういう人たちが急に出て来なくなったという背 景としては、リスクを犯して、黒い艦船が一杯いるようなエリアに命がけで出て行か なければならないという状況ではなくなったということがあるのかも知れない。一方 にはある程度お金を蓄えた海賊は、武器を購入できるようになり、武器を持って、異 なるエリアに出て行っているのでは、というような噂もある。ただ私は海賊の専門家 ではないので、わからない。実態として当該海域での海賊事件発生数は減っているこ とが事実であるというように考えている。 もう 1 点は、まさに、ご指摘のあったとおりと思っているが、そこに海軍がいるのに、 自分が勝手に退治するのは外交問題に成り得るので、今我々が出来ることとしては、 外務省、海上安全保障政策室にも相談して、現地の政府に働きかけるとか、現地での 感覚では海軍と連携して連れてこられるようなコーディネーターを乗せているのがい いかも知れない、というアドバイスをいただいている。自分で身を守るしかないので、 現地の警官、軍隊を連れてくるということが現在の対処方法である。 Q: 不審な船の特徴みたいなものを教えてください。 A: 基本的には、ソマリアの沖合に約 300 マイルも出てこられるような船ではない。 どこかの母船から出てくるようなケースが多い。一斗缶に燃料を積んで走ってくる船 もあるが、沖合で小さなボート(スキフ)に出会うと、難民船か不審船かそのどちら かだと思う。 Q: 現在、機雷掃海の問題について、集団的自衛権で議論されているが、例えば、ホ ルムズ海峡に機雷が敷設されているときに、現場は、どのように感じているか、教え ていただければと思う。 A: 機雷の話については、我々民間の船なので、きちっと認識できていないと思う。 ホルムズ海峡のように航行エリアが限定されている場所に機雷がある、という情報や 注意喚起が出た場合には、やはりそこへは行けなくなる。すなわち、ペルシャ湾には 原油を積みに行けなくなると思っている。ただ、どうやれば機雷があるエリアに入っ ていけるというような勉強や訓練もしていないので、今の段階でこの質問に答えるの は難しい。7 Q: 船舶の装備についてお聞きしたいのですが、シタデルとかレーザーワイヤーとか こういう装備があれば、クルーも乗っていて安心だというものがあったら教えてほし い。また、今の構造上、海賊が狙ってきやすいところ、脆弱性のあるようなところが あるのか、教えてほしい。 A: これがあれば安心、というものはなかなか限定しにくい。水を撒いて近寄らない ようにする、というところから始まって、防弾チョッキのような直接的なものまであ る。ただ、どこまでやっても、現場の乗組員にとっては不安だと思う。 今の船は、完全にあるエリアをロックアップできる形になっている。ハウスの外側に あるような階段とかは、バリケードで完全に閉鎖できるようになっているのは普通で ある。ただ、どこまで隠れてもロケット弾がぶち込まれたら終わりだし、船橋で見張 りをするためには前が見えていないといけないので、そこに防弾装備というところま ではなかなかいっていないのが現状ではないかと思う。 Q: 2 点をお聞きしたい。一つ目は、ハイジャックされてしまったあとの解決手段は どうなのか?あとは、海賊を逮捕した後の処置。この 2 点について教えてほしい。 A: ハイジャックされてしまったら、ということについて、世の中には、そういう案 件に対応してくれるスペシャルミッションをもった人がいるらしい。海賊が、人質を 盾にいろいろな要求をして来ることに対して、身代金はどれくらいとか交渉するネゴ シエーターが登場するケースがあると聞いている。ハイジャックされてしまうと、通 信がとれなくなるので、船がどこに行って、何をされているのか、全くわからなくな るというケースが多い。その中で海賊の方からのいろいろな要求への対応をとって人 質の無事解放を目指す、ということで、2009 年の事案で紹介したケースでは、乗組員 が解放されて船が返ってくるまで、相当長い時間がかかった、と聞いている。海賊を 逮捕した後についてですが、まず逮捕していいかどうか、ということがある。これに ついては、現在の海賊対処法の中でどこまでの権限が認められているのか、正当防衛 に絡む話はできるが、相手を逮捕して良いか、乗り込んで行って抑えていいか、海上 警察権は自衛隊ではなく海上保安庁にある、などいろいろなルールがある。相手が抵 抗した場合や凶暴性のある場合は、拘束せざるを得ないということで、連行する場合 もある。日本の関係船で、そういう海賊を逮捕して日本で裁判にかけた例があったよ うに記憶している。 Q: 2013 年から多くなってきたインドネシアの海賊について聞く。凶暴さや犯罪の種 類とかは、従来からのマラッカで起きた海賊事案と全く同じようなものなのか、凶暴 化しているのか、どのように感じているのかを教えてほしい。 A: 今まで、南シナ海、インドネシア海域の海賊はこそ泥系と認識をしていた。見た ことないが、蛮刀を振りかざして、乗組員を襲い、ナイフをつき付けて船長室に連れ て行かせ船用金を掴めるだけ掴むというタイプの案件がインドネシア海域で多発して いる、と認識していたが、こちらのエリアでも、ハイジャック案件が最近増えてきて いる。かなり凶暴性がある武装した泥棒がいる。かつて、こそ泥だったものが、強盗 になったという印象がある。 (以上)