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海外研修報告 : 北米エビ・カニ訪問紀行

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海外研修報告ー北米エビ・力ニ訪問紀行一

岡 本 一 利

静岡県では,職員を海外に派遣し外国の先進的 な状況を視察させる「海外研修」という制度があ ります. 自らが計画しアポイントをとり訪問する この制度によって,県機関の様々な分野から毎年 総計約

20

名の研修生が海外に派遣されます. 今回,

i

r

海産甲殻類の生態 ・増 養 殖 研 究 と 利 用 方法について』という課題でこの研修への参加が 認められ,カナダ,アメリカを訪問する機会を得 ました. 研修期間は平 成

5

10

4

日か ら

10

30

日まで の27日間でした. 研修行程図を図lに示しました. カナダでは,ニューブランズウィック州モンクト ンとノノてスコシア州ハリファックスを, アメリカ では, ワシントンD.C.,ノイージニア州ノーフォ ー ク,テキサス州ガルベストン,カリフォルニア州 のデイビス ,サ ンフランシス コ, サンディエコ, サンタ パ ーパラを訪問し ました. 主な訪問場所は 次の通りです( 表1). 今 回 の 研 修 に お い て タ ー ゲ ッ 卜 に し た 甲 殻 類 の 種 類 は , ブ ル ー ク ラ ブ

Cαllinectes sapidus,ズ ワ イ ガ ニ C hionoecetes op ilio, ダンジネスクラブ Cαncer mαgister, ア メリカンロブスター H o mαrus a m e n cαnus, イ セ エ ビPanulirus αrgus,ク ル マ エ ビPenαeus aztecus, Penαeus setiferus, Penαeus duorαr u m,

オオエンコウカ。ニGeryon quinquedens等でした. 1. カナダ 10月4 日に成田空港を出発し,太平洋岸にある シアトルで一 泊後,大西洋岸のボス トンに到着し ました. 最初の訪問予定地はカナダですが,割安 であるアメリカ 経由の方を選択し ました. ボスト ン発モンクトン行きの飛行機は

20

人乗りのプロベ ---・---- - - ー・・ー・・ーーーー- - - ーー・ー.、

San Franci sco

p&dfic Ocean

1

_ ",0.川 . / E山 8artla 、 、 一 ",-,、. "'-図 1. カナ ダ,アメリカにおける 訪問場所

Kazutoshi O KAMσro・N orth American

crusta-cean research-an account m y travels

(2)

38 海外研修報告 一北米エビ ・カニ訪問紀行

表1 カナダ,アメリカにおける主な訪問先

カナダ ニュープランズウィ y ク州 Gulf R egion, D epartm ent of Fisheries and Oceans

ノバ ・スコシア州 アメリカ ワシントンD . C パージニア州 テキサス州 カリフォルニア介│ (カナ ダガルフ海区国立海洋水産研究所)

Scotia-Fundy R e gion, Department of Fisheries and

Oceans

( カナダスコシアファンディ海区国立海洋水産研究所)

D epartment of Fisheries, N o v a Scotia Goverment

( ノパ ・スコシア州政府水産部)

N ational M us e u m of Natura l H istory, Smithsonian In-stltutl On

(ス ミソ ニアン自然史博物館)

Department of O ceanography,Old D ominion Univer・

slty

(オール ドドミニオン大学海洋学部)

D epartment of Biological Science, Old Dominion Uni-versity

(オ ールドドミニオン大学生物学部)

G alveston Laboratory, National Marine Fisheries Serv-ice, N O A A

( 商務省海洋漁業局カボルベストン研究所)

M arine B iomedical Institute, T he University of T exas

(テキ サス大学海洋生物医学研究所)

D epart ment of W ildlife and F isheries B iology, Univer・

sity of C alifornia ( カリフォルニア大学デイビス校魚類

野生動物学部)

D epartm ent of A ni m al Science, University of California

( カリフォルニア大学デイビス校動物学部)

F isher man's W harf

( サンフランシスコフィ ッシャ ーマンズ ・ウォ ーフ)

Southwest Fisheries Science Cent巴r,National M arine

Fisheries Service, N O A A ( 商務省海洋漁業局南西漁業

センタ ー)

Step hen Birch A q u a riu m M u s eum

(カリフ ォルニア大学スクリプス 水族博物館)

Hubbs-Sea W orld R esearch Institute

(ハ ブス海洋研究所) Sea World ( サンディエゴシーワールド) ラ 機 で , ア メ リ カ か ら カ ナ ダ へ の 国 際 線 ( ? ) に しては意外な印象を受けました . 大 西 洋 岸 に は 高 い山もなく , 飛 行 機 か ら 見 た 景 色 は 平地一 面 が 紅 葉 に 覆 わ れ て お り す ば ら し い 眺 めでした . M . M oriyasu と い う 日 本 人 研 究 者 が お り , 大 変 お 世 話 に な り ま し た . ここでは,主にズワイヵーニ Chionoecetes op ilioの資源、生態研究と水産研究 所 の 機 構 に つ い て の お 話 を お 聞 き し ま し た. 無 脊 推動 物 部, 海 産 ・そ 河 性 魚 類 部,増 養 殖 部 の三部 門 で 構 成 さ れ, 約

100

名 の 研 究 者 が 働 い て い ま し た. 甲 殻 類 研 究 チ ー ム は 無 脊 椎 動 物 部 (Chief: カ ナ ダ ガ ル フ 海 区 国 立 海 洋 水 産 研 究 所 モ ンクトン到着後, す ぐ に ガ ル フ 海 区 国 立海洋 水 産 研 究 所 を 訪 問 し ま し た . モ ン ク ト ン の 東北 方 向にはセントロ ー レンス湾があります. ここには, 甲殻類研究チ ー ムの チー フ を や っ て お ら れ る Dr. P aul L a m o ureux) に属しています. カ ナ ダ 大 西 洋 岸 の ズ ワ イ ガ 二 漁 業 は

1967

年 頃 か ら セ ン ト ロ ー レンス湾において開始され, 現 在 年 間 約

30

000

(3)

ンの漁獲があり ニ シン,サケ, ロブスタ ーと並ぶ 重要な漁業となっ ています. 11月から3月までは 海は凍るので漁獲時期 は春から秋までだそうです. カナダ大西洋沿岸のズワ イガニの幼生のふ化時期 は

4

月から

6

月にかけ て行われ,

9

月に稚ガニと して定着します. 定着してから3年間はタラなど の魚類に捕食され易く ,6年後に甲幅約10cm の 成体になり漁獲サイズに達します. 漁業管理にお いては, ライセンス制度を取り入れており ,1ラ イセンスあたりの トラップ数および トラップの網 目サイズの規制,脱皮直後の柔らかな個体の保護, 甲幅10cm 以下の漁獲物サイズの規制, 総漁獲量 の設定等が実施されていました. この研究所では トロ ールで、の調査研究の結果を即座に漁業者に公 表し実績を積み上げることにより ,研究者と漁業 者の信頼関係 を築きあげており参考になりました. さらにM oriyasu氏からはク モガニ科のカニ類の 研究の現状をお聞き し勉強になりました. また, ここでは セ ミナーの時聞を設けていただ き,約2 時間を使 って私 は静岡県の甲殻類の増養 殖 の 現 状 , 特 に タ カ ア シ ガ ニ M a crocheira

hαem pferiとクルマ エビ P enaeusjα:ponicus'こ関 して話をしました. 英語での発表でしたが,英語 が得意ではない私にとって日頃の勉強不足を痛感 させられました. その後,Yvon CHIASSON から はズワイヵーニ漁業について, M arc L ANTEIGNE からはロブスタ ー漁業について,E lmer J. W A D E か ら は コ ン ビ ュ ー タ プ ロ グ ラ ム に つ い て ,R . VIENNEAU からは水中ビデオカメラやデ ー タ入 力装置などの電気機器について,各研究者から 個 別 にお

3

百を聞きました. コ ンビュ ー タープログラ マーや電気機械技師 などの他分野の専門家を配置 することにより,研究を詳細で総合的でかつスピ ー ディーに行っていたのが印象的でした. カナダは 英語とフランス語が使 われているため,名刺, 看 板,パンフレッ ト等 は英語版 とフランス語版の両 方がありました. スコ シアーファンデ ィ海区国立海洋水産研究所 10月7日の夜に モ ンクトンから車でハリファッ クスまで移動しました. ハリファックスは大西洋 に面した天然、の良港として知られています. 翌日 , 港の近くにあるかなり古い建物 のスコ シアーファ ンディ海区国立海洋水産研究所を訪問 しました. ここでは , 底生生物増養殖部門 のC hiefである

Dr. John D. PRINGLE とDr.John T REBRAY に

お世話になりました. ここは特にアメリカンロブ スタ - H o m arus am ericanus の資源生態研究が 活発に行われている研究所でした. カナダノパ ・ スコ ンシア州沿岸のロブスタ ーの産卵期は

9

月か ら

12

月で,翌年の

7

月から

9

月に幼生がふ化 し, 着 し, 達するとのことでした. ノパ ・スコシア州政府水産部 ノパ ・スコシア州政府水産部は,港の近くの近 代的な白い高層ビルの中にありました. ノパ ・ス コシア州政府水産部ではM r. G reg R OACH から ロブスターの漁業の実態についてお話をお聞きし ました. 彼は ロブスタ ーの宣伝で一度日本を訪問 したことがあるそうです. ノパ ・ス コシア 州 での ロブスターの漁獲量は約7,000 トンで , その90% 以上を日本に輸出しているということでした. 日 本からの来訪者ということでわざわざ 水産大臣 M r. H on Jim B ARKHOUSE まで仕事の合聞をぬっ て面会していただき , 日本はやはりエビ ・カニ輸 入王国であることを海外であらためて感じました. 漁業管理においては, ライ セ ンス制度を取り入れ ており ,1ライセンスあたりの トラップ数の規制, 保護区の設定,抱卵雌の保護, 甲長( 甲殻の長さ) 8 cm 以下の漁獲物サイズの規制, 秋から春まで の漁期の設定等が実施されており,最近の40年間 は高生産の安定が実現していました. 特に,夏期 はロブスターの脱皮,交尾,産卵時期に相当し , さらにはその時期は ロブスタ ーの値段が低下する ため,夏期の禁漁は非常に有効な手段となってい ました. その他 に,ホ タテガイ 漁業等の現象現状 についてもお話していた その他

ハリファックスにある, Nova Scotia M useu m

of Natural H istory ( ノパ ・ス コシア自然、史博物 館) を訪問しました. ここでは, ノパ ・スコシア

(4)

40 海外研修報告北米エビ ・カニ訪問紀行一 に生息する動植物や地理学の展示,原住民である

ミy クマック ・イ ンディアンの暮らしぶりや手工

芸品を展示して いま した . M aritime M useu m of the A tlan tic (海洋博物館) では,港町であるハ

リファックスらしく ,船や灯台の歴史に関しての 展示がありました. この街には坂が多くありまし たが,大きくもなく小さくもない生活しやすそう な街に思いました. 今回は甲殻類についての研修 ということで,食事に関しでもそれを実行 しまし た. T he F ive Fisher man というこの街で有名な シーフードのレス トランで食事をしまし た. 歴史 的な建物を改造したらちょっとしゃれた屈で,サ ラダパーがありム ール貝は食べ放題,注文した ロ ブスターや白ワインと合わせても

3

000

円以内の 安さでした.

2.

アメリカ大西洋岸 スミソニアン自然史博物館

10

10

日に

10

人乗 りのプロペラ機でカナダのハ リファックスを 出発し , アメリカのワシントン D.C. に到着しました. ここは,アメリカ合衆国 の首都で,緑豊かな美しい街並みを持ち世界でも 屈指の博物館や美術館がそろっている所です. そ の中で,人類とその自然環境に関する豊かな資料 とコレクションが

8

000

万点以上そろっている自 然史博物館を訪問しました. ここでは無脊椎動物 部 甲 殻 類 部 門 のD r.R aym ond B. M A N NIN G に お世話になりました . 甲殻類の研究の現状 につ い て彼の研究室でお話を伺いました . 最近 はオ オエ ンコウガ、ニ類の研究を手がけておられました. こ のカニは甲幅20cm に達する深海性の大形甲殻類 でアメリカでは漁獲対象とされています. 静岡県 でも種は異なりますがオオエンコウガ、ニが深海域 に生息しており,今後の調査対象種として有望で あるものと思われます. その日の彼のネクタイに はガイコツが デザイ ンされており,そのデザイン について質問 したとこ ろ

10

31

日に行われるハロ ウィ ー ン用だという ことでした. また彼の奥さん のLilly K. M A N NIN G 夫人がデザインしたエビ ・ カニが描かれた美しいカ ー ドを頂き,遊び心に富 んだ御家庭であると感じました. コヒ ーを飲みな がらの雑談の後,標本室に案内していただきまし た. ここの博物館の標本 は以前からすごいと聞い ていましたのでワクワク しな がら通路を歩いてい ると ,

r

コンニチワ」 と声を かけられ久しぶりに 日 本 語 を 聞 き ま し た . そ の 方 は Dr.M ark J. G R Y G I E R で,琉球大学熱帯海洋科学センタ ーで カイメン類を研究をしているということでした. しは‘らく話をした後,標本室に向かいました. 扉 を聞けた瞬間,広い部屋に標本棚が数えきれない ほど設置しである光景が目に飛び込み,圧倒され ました . 数多くの標本瓶がある中で, まず彼の専 門のシャコ類の標本の説明を受けた後, クモガ、ニ 科やイワガニ科,オオ エ ンコウガニ等のカニ類, イセ エ ビ等のエビ類を見せて頂きました. そして, 別 の場所に移動し , タカアシカーニの標本を見るこ とができました. タカアシカーニは大きいため,標 本瓶には納まらず,乾燥標本として保存されてい ました . ここの博物館には

3

体のタカアシカ。ニの 標本があり , どれも最近 の漁獲物 ではほとんどお 目にかかれない大型のもの でした. 標本室を出た後,一般開放 されている展示会場 まで案内していただき 彼 とは別 れました. そこに は,氷河時代のほ乳動物やネアンデルタ ール人な どの進化 に関する展示をはじめ,人類,動物,鳥 類,昆虫,海の生物,鉱物,損石,宝石,アメリ カ ・アジア ・アフリカの伝統文化 まで, テーマ別 に展示されていました. 特に,海の生物がそれぞ れに生きる自然環境が再現されるなど,生態系を 意識した展示が多く見られました . オールド ドミニオン大学

10

13

日にノイ ー ジニア州ノーフォークに移動し ました . ノー フォ ーク空港では, メガネをかけ, ひ け 、 を は や し た 体 格 の 良 い D r. John R. M C C O N A U G H A の出 向 か い を 受 け ま し た . 彼 は オールドドミニオン大学海洋学部の教授で,カニ 類特にワタリカーニの一 種 で あ る ブ ル ー ク ラ ブ Callinectes sapidus の幼生 の 飼 育, 生 理 研 究 か ら生態研究まで手がけている 研究者です. 空港か ら街まで彼の自家用車で移動し,夕食を御馳走に なりました. ノーフォ ークはチェサピ ー ク湾の入 り口に位置し,海軍の基地があることで有名です. また, チェサピ ーク湾を中心として年間約

60

000

(5)

トンのフ。ル ークラブの漁獲があります. そこでの 夕食はブルークラブを賞味しました. アルコール をたしなみながらの歓談の後,彼に予約をお願い してあった宿泊場所まで送って頂きました. そこ は, 日本でいう民宿風で, しゃれた建物でした. B & Bと呼ばれ" ベッド ・アンド ・ブレックファー ス卜" の略で,個人経営で一般家庭に泊まるよう な温かみが魅力の朝食付きの宿泊施設です. すで に,この研修で高級ホテルから料金の安いモーテ ルまで泊まっていましたので, け色の違う宿泊場 所に興味をもちました . 翌朝,オールドミニオン大学を訪問しました. 彼に一通り案内して頂きました. 海洋学部という ことで,飼育実験室以外に,生物,化学,物理, 地学関係の専門機器が揃っていました. 彼の研究 室で甲殻類の幼生飼育について,お互いの研究に ついて説明した後,餌料の種類 ・密度 ・栄養価 ・ エネルギー 量 ・重金属汚染,種類による水温条件 ・ 飢餓耐性の違い,幼生の脱皮ホルモンや基礎代謝 量等について討論し ました. たかだか数m mの 小さな幼生のストレス要因を探し,飼育環境から いかにそれを除去できるかが大きなポイントであ るが,幼生のホルモンやストレスに関する情報は まだまだ不足しているということでした. さらに, 彼の研究室の大学院生のChris REISS にチェサ ピーク湾におけるブル ー クラブ幼生の分布研究に ついて説明を受けました. また,研究室に置いて ある博士論文等も自由に読むことができ,大変勉 強になりました. 昼食は彼の研究室のメンバーと 歓談しながらサンドイツチを食べました. 午後に は,エビ ・カニを主として魚類等数々の養殖を手 がけている Dr. Anthony J. PROVENZANO にお 話をうかがいしました. 短期間でプランクトン期 を終えるクモガニ科のカニの話はたいへん興味深 く,また彼も閉じクモガニ科であるタカアシガニ の話には興味を持たれたようです. 次の日は , 午 前 中 , 生 物 学 部 の Dr. M a r k

J.

B UTLER にイ セエビ Panulirus αrgusの研究に ついてお話をうかがいました. 彼は 日本で開催さ れた第

4

回ロブスタ ーの国際ワ ー クショップで来 日したことがあり,幼生の分散と定着の機構につ い て 研 究 し て い る 方 で す . 午 後 に は Dr. M c C O N A U G H A の 研 究 室 の 大 学 院 生 で あ る Lisa D R A K E とRobert B R E U M B A U G H に連れられて チェサピーク湾の海上に行 く機会を得ました. オー ルドドミニオン大学では飼育海水を確保するため, 汚染が激しいチェサピーク湾の沿岸水を使用する のはさけて,調査船Linwood Holton号で沖合い で採水を行 っていました. 船長のRobert B R A Y と船員のDonnie PADGETT にお世話にな りまし た. 採水は水中ポンプを使用して

1

トンタンクに

15

6

本分の予定でしたが,途中ポンプが故障しパ ケツで海水を汲む人力作業になってしまいました. Lisaは女性でしたが,パワフルに海水をRobert とともに汲み続けていましたので私も手伝わざる おえなくなりました. 結局その日は港に到着した のが日没を過ぎてしまいました. この船以外にも, フィ ールド調査用の船があり,それでフールークラ ブの生態調査を行っているそうです. その他 ワシントンD.C. では

3

臼間滞在し,各博物館 やホワイトハウス , ワシントン記念塔,国会議事 堂 等 を 見 て 回 り ま し た National Aquarium ( 国立水族館) は,淡水,海水生 物 を 展 示 し た 圏 内最古の水族館で,商務省の地下にあり看板が小 さいため見過ごし易いため注意する必要がありま す. National Air and Space M u s e u m ( 航空字 宙博物館) は,スミソニアンの博物館の中で最高 の人気を誇る博物館でライト兄弟の飛行機からア ポロの司令船など航空に関する多くのものが展示 されていました. 私が見学した日も各々のアトラ クションに長い人の列ができていました. Na-tional M u s e u m American History ( アメリカ歴 史博物館) は,自然、史博物館の西側に位置し,ア メリカの政治,文化,科学,技術の各分野の変遷, 歴史が展示されており,アメリカの歴史やその精 神を実物大で体験できる博物館でした. これ らの 博物館は国立の機関に属していて,すべてが無料 で公開されており, 写真も自 由に撮影できたのは, 日頃日本の博物館を見なれている者にとっては驚 きであると同時に,アメリカの教育普及活動 のレ ベ、ルの高さを感じました.

(6)

42 海外研修報告 一北米エビ ・カニ訪問紀行 3. アメリカメキシコ湾& 太平洋岸 アメリカ商務省海洋漁業局ガルベストン研究所 10月16日の早朝6 ・40発の飛行機に乗り込み, 3 日間大学の研究室に入り浸っていたノ ーフォ ー クを後にしました. デトロイト , ヒューストンを 経 由して,テキサス州ガル ベス トンに到着し まし た. 先に訪問したカナダ, アメリカ大西洋岸の気 温はちょうど良L、か少し寒い くらい でしたが, こ こベルガストンはほとんど夏のような気温でした. この地域は観光地でもあり , また海ではサーフィ ンをする若者が多く観察されました. アメリカの 水産に関す る研究機関は商務省に属しています. ここでは,研究所長のDr. R o ger J. Z I M M E R M A N,

D r . Neal B A XTER, Dr. Zoula P. ZEIN -ELDIN に

御世話になりました . 当初アポイ ン 卜を とったの は,D r . Edward K LIMA でしたが, この1月に 退職されたということでした. 新所長のD r .R . J. Z I M M E R M AN もクル マエビやその生息場の研 究をなされていた方で,大変親切にしてもらいま した.

Dr. Neal B A XTER とDr. Zoula P. ZEIN -ELDIN

からは,クルマエビ、の研究の現状に つ いて御話を 伺いました. ガルベスト ン研究所には総計92名 の 職員が働いていて,水産研究部,生態研究部,絶 滅危機動物部の三部門で構成されていました. メ キシコ湾でのエビの漁獲量は約100,000トンで, アメリカでのエビの総漁獲量のおよそ8 0 %を占め ています. そのうち約50% がブラウンシュ リンプ P enaeus aztecus,約3 0 %がホワイトシュリンプ P enaeus setiferus,約20% が ピ ン ク シ ュ リ ン プ P enaeus duorαr u mで,主に3種類のクルマ エビ がトロールによって漁獲されています. この研究 所でのクルマエビの研究の歴史は古く 1931年から 開始され, 生活史や移動能力 の解明,標識方法の 開発,生理生態研究, 生息場の 研究,飼育システ ムの開発,漁獲生産量の予測等数々の実績 を残し ています. 漁業管理においては, ライ セ ンス制度 を取り入れており,漁獲物サイズ ・網 目 ・漁期の 規制,保護区の設定等が実施されていましたが, メキシコ湾に面するフロリダ,アラパマ, ミシシッ ピー,ルイジアナ ,テ キサス各州によってその実 施方法はまちまちだそうです. また ,新進気鋭の 研究者D r .Thomas J. MINELLO とも 意見 を交換 することができました. お会いした時はち ょう ど 足にギブツをし松葉杖をついていました. 理由を 聞くとビーチ ノてレ ーで骨折したとい うことでした. また,彼の奥 さんは,寿司,刺身, 豆腐などの日 本食が好きだということで話もはずみました. 彼 は,クルマエビ の魚類等による 捕食 の影響,稚エ ビにと っての湿地植物の重要性 の研究などを精力 的に進めていました. 特に全長

1

4

c m の稚エ 分がヒラメなどの魚類による捕食であることを明 らかにし ていました. さらに,それ らの捕食から 稚エビを保護する湿地植物の役割についても調査 を行 っていました. 私 も静岡県の 甲殻類,特にクルマエビの増殖研 究の現状に関して話をするなかで,種苗生産,種 苗放流の規模の大きさと ,漁業者自らの種苗生産 の事例に関して,各研究者とも大変興味を示しま した. それと同時に,大量放流が生態系に与える 遺伝的な問題点についても指摘されました.

D r . Neal B A X T E R とDr. Zoula P . ZEIN-ELDIN

には港に係留されているシュリンプボ ー トを見せ ていただき, 昼食をご一緒していただきました. ここで も例 のごとくホワイ トシュリ ンフ。を賞味し ました. 絶 滅 危 機 動 物 部 に 属 し て い る Dr.C. T . FONTAINE には , ウミガメの研究施設を見せて 頂きました. 世界の色々な種類のウミガメの飼育 研究がなされ,さらにウミガメを保護するための 漁獲器具の開発なども行っていました. 水産生物 に限らず海の生態系を重視した研究体制になって いました .

r

絶滅の危機に瀕 している 動 物 を 保 護 するためには,子供の時か らの教育が重要であ る」 と言 った彼の言葉は 印象的でした. 結局,まるま る2 日間,こ の研究所に入 り浸って いました. テキサス大学海洋生物医学研究所 テキサス大学では,D r. Phillip G. L E E に御世 話になりました . 訪問し た研究所は,商務省海洋 漁業局ガ、ルベストン研究所と閉じガルベストンの 街 の中に あり ました. ここでは,色々なイカ類の 飼育研究が行われていました. アオリイカや冷水

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性のオウム貝も飼育されていました. さらに,飼 育水槽や飼育水浄化装置の開発, コンビューター による飼育環境の管理による飼育システムの開発 が行われていました. 特に,注水,飼育水槽,浄 化水槽等の様々な水質項目をコンビューターによっ て自動的に記録し,制御された飼育システムは大 変参考になりました. 10月20日にガルベストンをたち,次の目的地カ リフォルニア州のデイビスに向かいました. カリフォルニア大学デイビス校 宿泊したホテルから歩いて5分のところにデイ ビス校はありました. 魚類野生動物学部のDr. Louis W . BOTSFORD を訪問しました. 彼は, ダ ンジネスクラブCancer magister 等の個体群動 態や甲殻類の成長等多くの要因が絡んだ複雑なシ ステムについて, コンピューターを駆使してモデ ル化することにより,解析や予測を行っている研 究者です. 彼には,特にダ ンジネスクラブの話を 伺いました. また,私もタカアシガニやクルマエ ビの話をすると大変興味をもってもらいました. ダンジネスクラフーの漁業は1800年代半ば頃から開 始され,現在アラスカからカリフォルニアの沿岸 で行われ,年間約18,000トンの漁獲があります. 月に産卵し, 1月頃にふ化します. そして約3 ヶ 定着し ,

2

年 半 で 成 体 と な り

4

年 後 に 甲 幅 約 16cm となって漁獲サイズに達します. このカニ は約

10

年間の周期で資源の増減を繰り返している ことが知られています. その原因についての研究 が多数なされており ,エ ルニ ーニョ現象による水 温変動や風による表層水の・流れの動向などの環境 要因,共食いなどの密度依存による生物要因,そ の両者によるものなど多くの仮説がだされている 状況です. 漁業管理においては, ライセンス制度 を取り入れており ,1ライセ ンスあたりのトラッ プ数およびトラップの構造が規制されており ,雄 の甲幅約16c m以上のカニのみ漁獲が許されてい 皮時期を避けているそうです. 彼は翌日の学会の 準備のため忙しかったので一通り話をした後は, 彼の研究室に属し,主にコンビューター解析の研 究をしている , 南 ア フ リ カ 出 身 の 女 性 研 究 者 Mrs. Coleen MOLONEY にお世話になりました. 彼女の旦那さんは南アフリカの大学で鳥の研究を しているということでした. しばらくの歓談の後, 大学のキャン パ スを案内してもらいました

. 1 0

月 の大学の校舎や庭には,多くの学生で満ちあふれ ていました. アメリカの新学期は

9

月から始まる ので, このような状況は日本の大学のように最初 の数カ月だけかにと彼女に質問したところ ,そ うではないという答が返ってきました. また,バ イクは全然、と 言 ってよいほど見あたらず, ほとん どの学生が自転車に乗っているためキャンパス内 が静かなのが印象的でした. 学生はよく見ると結 構アジア系が目だち,おそらく日本人であろうと 思われる人もかなりいました . 午後には,動物学 部のDr.Douglas

E.

CONKLIN を訪ねました. 彼 は,アメリカンロブスタ ーの幼生や稚エビの飼育 研究や飼育システムの開発に取り組んでいる研究 者です. 甲殻類の幼生飼育について意見をかわす ことができたのは大変勉強になりました. サンフランシスコフィッシャーマンズ・ウォーフ 10月

22

日には,デイビスからAmtrak鉄道で サンフランシスコまで向かいました. サンフラン シスコには,山がありすぐ近くには海があるとい う今までの訪問した各街に比べて静岡県の雰囲気 に近いものを感じました. ホテルに荷物を置き, パウエル通りでフィッシャーマンス ・ウォーフf丁 きのケーブjレカーに乗りました. ケーフ‘ルカーは, 急な坂道が多いこの街の人々の足として, 100年 以上も活躍しているそうです. フィッシャーマン ズ ・ウォーフは,昔イタリア人漁師によりカニ漁 が盛んに行われていた船着き場だった所が,今で はサンフランシスコ屈指の人気スポットとな って いる場所であります. 100軒 のブティックやレス トランがあるレンガ造りの建物の Ghirardelli Sq uare,かつてベルモンテの缶詰工場だったレン力。 造りの建物を利用したショッピングセンターの

The Can nery, カニやエビなどの魚介類の屋台 が軒を連ねていたダンジネスクラブサイン塔近辺, 木造二 階建てのしゃれた居やレストランが並ぶ

(8)

44 海外研修報告 一北米エビ ・カニ訪問紀行

図2. カナダ, アメリカにおける訪問風景

A: 調査船のトロールによって採取されたズワイガ二Chionoeceles opilio (ガルフ海区国立海洋水産研究所)

B:

セミナー終了後,研究者達と (ガルフ海区国立海洋水産研究所)

C: ノパ・スコシア州政府水産部水産大臣Mr. H. J . B A R KH OUSE (右) とMr. G . R O A CH (左)

D: Dr. R a y m o n d B. M A N NING とオオエンコウガニGeryon quinquedens (スミソニアン自然史博物館)

E: スミソニアン 自然史博物館の甲穀類標本室

(9)

G: Dr. John R. M C C O N AUGHA と (オールドドミニオン大学)

H: Dr. Anthony J . PROVENZANO (オールドドミニオン大学)

1: D r. Roger J . ZIMMERMAN (中),Dr. Neal B AXTER (右), Dr. Zoula P. ZEIN-ELDIN (左)(ガルベストン研究

所)

J : Dr. T h o m a s J. MINELlρ (ガルベストン研究所)

K: D r. Louis W . BσrSFORD ( 右) と Mrs. Coleen M o凶NEY (左) (カリフォルニア大学デイビス校)

(10)

46

海外研修報告 一北米エビ ・カニ訪問紀行 Pier

39

など,桟橋 (Pier)を改造して造られたショッ ピングセンタ ーやレ ストランが多数ありました. 例 のごとく ,今度は屋台でダンジネスクラブを賞 味しました. 蒸してほぐしたカニの身がカップに 入って約

300

円でした . 屋 台 で は 安 く 地 元 の も の を味わうことができます. アメリカ商務省海洋漁業局南西漁業センター 10月23日,サンフランシスコカ〉らサンディエゴ まで飛行機で移動しました . サンディ エ ゴはカリ フォルニアの最南端に位置し ,料理や建築物 な ど にメキシコ文化 の影響を見いだすことができます. ここには

3

日間滞在しました. 街から北へ約

20k

m のところに , ラ ・ホーヤ (L a Jolla) という高 級リゾー卜地があります. そこに,海洋漁業局南 西漁業センタ ーはありました . ここも,テキサス のガルベストン 研究所と同じくアメリカ商務省に 所属し

120

人の 研究 者 が 働 い て い る 大 き な 研 究 所 です. ここでは,D r. Richard N E A L に最初 にお 会いした後,M rs. C onnie B LAIR にお世話にな りました . ここでも , ダンジネスクラフの生態研 究が行われていましたが担当研究者は転勤したと いうことでした. それで,彼女からは色々な資料 を用意していただきました . D r. L . ROBERTSON には, イワシ類の生態や飼育実験についてお話を う か が い ま し た 近 年 の オ ゾ ン 層 破 壊 の た め 紫 外 線量が増大していますが, それによる影響を調査 するための飼育実験も行っており, 研究の視点の 広さを感じました. カリフォルニア大学スクリプス水族博物館

正 式 名 称 は ,Stephen B irch A quqrium M u seu mと言 い,海洋研究では老舗のカリフォルニ ア大学スクリフ。ス海洋研究所の付属施設になりま す. 先ほどの, 商務省海洋漁業南西漁業センタ ー の近くにありまし た. オ ープンしてからまだ2年 もたっておらず新 しい施設です. ここでは,海産 生物の展示ばかりでなく 地球の構造や海洋研究の 歴史についての紹介があり ,子供などが海の生物 をじかに触れることのできるコ ーナーなどがあり ました . J、ブス海洋研究所 次に, サンディ エゴ の街 とラ ・ホーヤの間の M ission B ay P ark内にあ るハブス海洋研究所を 訪 問 し ま し た . そ こ で は , M a rk A. D RAWBRIDGE にお世話になりました. 彼は, ホ ワイトシーパス等の種苗生産と種苗放流技術を担 当していました. 親魚養成,稚魚飼育の現場や放 流用標識等を見せて頂きました . 生き物飼育の仕 事はどこも同じ様で,休みがほとんどとれないと い うことでした. アメリカでは日本とは違い種苗 放 流 はスポ ー ツフィッシングのために行っている そうです. ここの研究所では, それ以外に , クジ ラ,イルカなどの海産ほ乳類,海鳥, ウミガメ等 の水産生物以外の生態研究も行われていました . サン ディ ヱゴシーワールド シー ワールドは, ハブス海洋研究所の隣にあり ました. シー ワールドとハブス海洋研究所は組織 的には別個 ですが,協力関係 にあり行き来は自由 だそうです. M . A . Drawbridgeに, 研究 所 の 裏 口からシーワールド 内 に案内して頂きました. 広 い圏内には,色々な海産生物を展示した水族館や シャチ , アシカ , イルカなどのショ ープールを含 む,

7

つのステ ー ジと

10

以上の展示パビリオンが あり , さらにそれら動物の飼育環境や病気等に対 処 するための研究施設もありました . また, シー ワールドの名前からすると異質のように感じまし たが, ワシ , オウム,フクロウなどの多数多種類 の鳥達が鎖でつながれずに,屋外で飛び回るショー は珍しいものでした. その他 サ ン デ イ エ ゴ で は , 世 界 最 大 と 称 さ れ る San D iego 200 ( サンディエゴ動物園) に行きました. ここでは,約

1600

種,

4000

頭もの動物や鳥類が飼 育され,希少動物の保護 と繁殖にも力を入れてい るそうです. 最初は, 圏内パスツア ーで一周した 後,歩いて見て回りまし た. 高低差があるところ では, ロープウェイや屋外エスカレ ー ターが設置 しでありました . 動 物 園 を 含 むBalboa Park内 のSan Diego Natural H istory M useum (サンテーイ エゴ自然史博物館) には,海洋,陸上生物や地学

(11)

関係の展示があり,私が訪れた時は,アメリカを 代表する鳥Bald eagle ( 白頭ワシ) とメキシコを 代表するハゲタカの一種Caracara ( カラカラ) に関する特別展示がありました. サンディエゴの 次にサンタパーパラに移動しました. 赤い瓦と白 亜の南欧風建物のM u s e u m of Natural History ( 自然史博物館) や, Stearns Wharfの桟橋にあ

るThe Sea Centerには,地元の動物,植物,鳥 類,昆虫,海産生物などが展示されていました. 北米の大西洋,メキ シコ湾,太平洋各沿岸を見 て回り,自然史博物館,水族館等で甲殻類を含め た生物相を観察したり,多くの研究者と話し合う なかで,静岡県の沿岸は駿河湾の深海域を含み海 洋環境,海産生物ともに多種多様であり世界に誇 れる財産であることを再認識しました. 各訪問先 では,甲殻類の生態,増養殖研究について多くの ことを学ぶと同時に,水産生物に限らず海洋さら には地球生態系を視野にいれた研究テーマが多く 見られ,今後の水産研究のあり方について参考に なりました. さらに,試験研究機関において,基 礎的な情報量を地道に蓄積してし、く持久性と研究 成果を即座に普及してし、く俊敏性が必要であり, 組織として個人として研究者の活力をし、かに維持 するかが重要なポイン卜であることを感じました “国際化" が叫ばれているなかで,計画作成から 訪問まで自力で行うことにより,“国際化" を直 接肌に感じることができたのは大変有意義でした. 今回の海外研修を通じて,お話を伺った研究者等 の数は

D

r.

18

人を含む約

40

人であ りましたが, 国際化の一歩はまず人対人であることを痛切に感 じました. 最後に,カナダ,アメリカにおいて御世話になっ た方々, このような貴重な研修機会を与えていた だいた静岡県自治研修所,林業水産部,栽培漁業 センターの皆様に心よりお礼を申し上げます. ま た,海外の情報を提供して頂いた福井県水産試験 場今依博士,水産庁養殖研究所小西光一博士に謹 んで感謝申し上げます. ( 静岡県栽培漁業センター 現静岡県水産試験場 伊豆分場)

表 1 カナダ,アメリカにおける主な訪問先
図 2. カナダ, アメリカにおける訪問風景

参照

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