肥満症,メタボリックシンドロームに対する医療戦略
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(2) 肥満症,メタボリックシンドロームに対する医療戦略. 847. 外科療法は,2014(平成 26)年 4 月に腹腔鏡下スリーブ状 胃切除術が BMI35 以上で糖尿病,脂質異常症,高血圧のいず れかを合併し,体重減少が困難な肥満症に保険適応となった。 症例を選んで実施することになると思われる。. 運動療法の意義 運動療法は食事療法と並んで重要な肥満症の治療法である。 食事療法は摂取エネルギーを減らすことで体重減少をもたらす 一方,運動療法は消費エネルギーを増すことで体重を減少させ る。その意味からも,運動によるエネルギー消費が多いほど, 体重減少効果は大きい。運動によるエネルギー消費量が 1 日. 図 3 肥満症の合併疾患. 60 kcal 未満であれば,体重の減少は 1 年で約 1 kg であるが, 510 ∼ 705 kcal になると約 9 kg 減少する 4)。エネルギー消費 量と体重減少量は比例するが,運動で消費するエネルギー量は. 体重減少の有効性. 1 時間歩いても約 100 kcal 程度であるので,1 日 500 kcal 消費. 肥満症の合併症の改善には体重減少が効果的である。体重. するためには約 5 時間歩く必要があり,容易ではない。時間を. をどの程度減せばよいかについては,疾患により差があるが,. 短縮するために運動強度を高めると,体重減少や内蔵脂肪減少. 普通体重とされている BMI18.5 ∼ 25 にまで減量する必要性は. 効果も大きくなることが知られている。しかし,激しい運動を. ない。. 頻回に行うことはさらに困難である。. 2008(平成 20)年に開始された特定健診・保健指導の成績. 一般にいう運動とは身体活動を意味し,身体活動は運動と. では,食事・運動を中心とした生活習慣の改善を 6 ヵ月間行う. 生活活動に分かれる。運動とは体力の維持,向上のため,あ. ことで,糖代謝や脂質代謝,血圧が体重減少量が大きくなる. るいは競技で勝利するため目的をもって行う身体活動である。. にしたがって改善されることが明らかになった. 3). 。特に,6 ヵ. 一方,生活活動とは日常の家事や労働に伴う身体活動をさし,. 月間で介入前の体重が 2 ∼ 4%減少しただけで,空腹時血糖や. 非 運 動 性 身 体 活 動(non-exercise activity thermogenesis:. HbA1c,トリグリセリド,血圧が有意に低下し,HDL-コレス. NEAT)と呼ばれる。歩行も生活活動の一部であるが,日本. テロールは有意に上昇している。3%程度のわずかな体重減少. 人の歩行数も年々減少していることが報告されている。国民健. で大きな効果があるのは,少ない体重減少でも内臓脂肪が大き. 康・栄養調査によると,平成 15 年には 1 日の歩行数が男性で. く減少するためで,それに伴って血糖,脂質,血圧などの心血. 7,503 歩に,女性で 6,762 歩であったが,平成 22 年には男性 7,136. 管病危険因子数が減少する。逆に内臓脂肪面積が増えると危険. 歩に,女性は 6,117 歩と減少している。. 因子数は増加することがわかっている。. また,肥満者は座位の時間が長いことも知られている。身体. 肥満症の治療. 活動を運動,低身体活動,座位に分けて肥満者と非肥満者とを 比較すると,運動時間にはほとんど両者に差がなく,肥満者で. 肥満症の治療には,食事や運動,行動療法を組み合わせた生. は低身体活動時間が短く,座位の時間が長い。すなわち,低身. 活習慣改善と,薬物・外科療法がある。. 体活動時間が短いため,長く座位にあると考えられるので,低. 体重の増減は食事から得られる摂取エネルギーが,運動など. 身体活動時間を増すよう指導することが重要である。加えて一. による消費エネルギーより多ければ体重は増え,その逆であれ. 定強度の高い運動を週に 2 ∼ 3 回行うことが勧められる。体重. ば体重は減る。脂肪組織 1 kg は約 7,000 kcal を含むので,摂. が増えると膝関節や股関節などに負荷がかかり,関節痛,腰痛. 取エネルギーを消費エネルギーより 7,000 kcal 少なくすればよ. が起こると運動を避け,生活活動も低下するので,無理をさせ. い。1 ヵ月で 1 kg 減量するためには,1 日あたり約 230 kcal 分. ず体力に見合った運動指導が必要である。. だけ摂取エネルギーを消費エネルギーより少なくすればよい。 エネルギー制限を行う際,糖質,蛋白質,脂質のバランスのと れた食事が求められる。特に蛋白質の制限は体蛋白の崩壊を招 き,筋肉量が減少しサルコペニアとなる。体脂肪の減少が少な ければサルコペニア肥満になるので,筋肉量維持のためには標 準体重 1 kg あたり蛋白質を 1 g 以上摂取することと運動が必 須である。 薬物療法は日本では肥満症治療薬としてまだ十分に有効な薬 物がない。今後の進展が待たれる。. 文 献 1) 日本肥満学会肥満症治療ガイドライン作成委員会:肥満症肥満症 治療ガイドライン 2006.肥満研究.2006; 12(臨時増刊号). 2) 肥満症診断基準検討委員会:肥満症診断基準 2011.肥満研究. 2011; 17(臨時増刊) . 3) 村本あき子,山本直樹,他:特定健診・保健指導における積極的 支援の効果検証と減量目的の妥当性についての検討.肥満研究. 2010; 16: 182‒187. 4) Ades PA, Savage PD, et al.: The treatment of obesity in cardiac rehabilitation. J Cardiopulm Rehabil Prev. 2010; 30(5): 289‒298..
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図
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