• 検索結果がありません。

肥満症,メタボリックシンドロームに対する医療戦略

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "肥満症,メタボリックシンドロームに対する医療戦略"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)理学療法学 第 846 42 巻第 8 号 846 ∼ 847 頁(2015 年) 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 分科学会・部門教育講演. 肥満症,メタボリックシンドロームに対する医療戦略* ─身体活動の重要性─. 宮 崎   滋**. 肥満の判定と肥満症の診断  肥満の判定には BMI を用いる。 「肥満とは脂肪組織が過剰 な状態」と定義され,体脂肪量によく相関するとされている BMI が世界的に用いられている 1)。しかし,BMI は身長に比し, 体重が重いということを示しているに過ぎず,BMI だけで病 気であるかどうかは決められない。  「肥満症とは肥満に起因ないし関連する健康障害を合併する か,その合併が予測される場合で医学的に減量を必要とする 病態をいい,疾患単位として取扱う」と定義されている。BMI が 25 以上で,肥満に起因ないし関連する 11 種の健康障害が合 併しているか,健康障害を引き起こしやすい内臓脂肪型肥満が. 図 1 肥満症の診断. あれば肥満症と診断する(図 1)。一口でいえば「肥満症とは 減量治療すべき肥満」といえる。  内臓脂肪蓄積のスクリーニングとして,臍レベルでの腹囲 (ウエスト周囲長)の測定を行う。女性では 90 cm 以上,男性 では 85 cm 以上であれば内臓脂肪の過剰蓄積が疑われるので, CT 検査を施行する。  メタボリックシンドロームは,内臓脂肪蓄積とそれに引き続 いて起こる高血糖,高血圧,脂質異常が伴えば,動脈硬化が促 進しやすく,心血管疾患を引き起こしやすい病態をいう(図 2)2)。  2007(平成 19)年の国民健康・栄養調査によると,日本の 40 歳以上のメタボリックシンドローム該当者の割合は男性で 30.3%,女性で 8.2%と推定され,疑われる人を含めると男性で. 図 2 メタボリックシンドローム診断基準(日本). 56.2%,女性で 19.2%であった。男性では 30 歳代から増加して いるのに対し,女性では 50 歳代以降に増加している。この理 由は内臓脂肪蓄積が,男性では 30 歳代から増えはじめるのに. 糖尿病や脂質異常症,高血圧,脂肪肝などの合併頻度が高まり,. 対し,女性では 50 歳代から増加するためである。. 合併症の病態も悪化し,有病率も高まる。. 肥満症の合併症は内臓脂肪の蓄積が原因  肥満症には多くの疾患が合併する。また,BMI が増加すると,.  肥満症には様々な疾患が生じ,おもに内臓脂肪蓄積が原因と 考えられている。脂肪細胞がトリグリセリドを貯留し肥大化 すると,これらの疾患を引き起こすアディポサイトカインの 産生 ・ 分泌異常により,糖尿病や高血圧,脂質異常症の他に. *. The Medical Strategy for Obesity and Metabolic Syndrome: The Importance of Physical Activity ** 結核予防会 総合健診推進センター (〒 101‒0061 東京都千代田区三崎町 1‒3‒12) Shigeru Miyazaki, MD, PhD: Center for Health-check and Promotion, Japan Anti-Tuberculosis Association キーワード:身体活動,肥満,メタボリックシンドローム. も,高尿酸血症,脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患) ,骨・ 関節疾患,肥満関連腎臓痛(CKD),癌などが一斉に発症する (図 3) 。.

(2) 肥満症,メタボリックシンドロームに対する医療戦略. 847.  外科療法は,2014(平成 26)年 4 月に腹腔鏡下スリーブ状 胃切除術が BMI35 以上で糖尿病,脂質異常症,高血圧のいず れかを合併し,体重減少が困難な肥満症に保険適応となった。 症例を選んで実施することになると思われる。. 運動療法の意義  運動療法は食事療法と並んで重要な肥満症の治療法である。 食事療法は摂取エネルギーを減らすことで体重減少をもたらす 一方,運動療法は消費エネルギーを増すことで体重を減少させ る。その意味からも,運動によるエネルギー消費が多いほど, 体重減少効果は大きい。運動によるエネルギー消費量が 1 日. 図 3 肥満症の合併疾患. 60 kcal 未満であれば,体重の減少は 1 年で約 1 kg であるが, 510 ∼ 705 kcal になると約 9 kg 減少する 4)。エネルギー消費 量と体重減少量は比例するが,運動で消費するエネルギー量は. 体重減少の有効性. 1 時間歩いても約 100 kcal 程度であるので,1 日 500 kcal 消費.  肥満症の合併症の改善には体重減少が効果的である。体重. するためには約 5 時間歩く必要があり,容易ではない。時間を. をどの程度減せばよいかについては,疾患により差があるが,. 短縮するために運動強度を高めると,体重減少や内蔵脂肪減少. 普通体重とされている BMI18.5 ∼ 25 にまで減量する必要性は. 効果も大きくなることが知られている。しかし,激しい運動を. ない。. 頻回に行うことはさらに困難である。.  2008(平成 20)年に開始された特定健診・保健指導の成績.  一般にいう運動とは身体活動を意味し,身体活動は運動と. では,食事・運動を中心とした生活習慣の改善を 6 ヵ月間行う. 生活活動に分かれる。運動とは体力の維持,向上のため,あ. ことで,糖代謝や脂質代謝,血圧が体重減少量が大きくなる. るいは競技で勝利するため目的をもって行う身体活動である。. にしたがって改善されることが明らかになった. 3). 。特に,6 ヵ. 一方,生活活動とは日常の家事や労働に伴う身体活動をさし,. 月間で介入前の体重が 2 ∼ 4%減少しただけで,空腹時血糖や. 非 運 動 性 身 体 活 動(non-exercise activity thermogenesis:. HbA1c,トリグリセリド,血圧が有意に低下し,HDL-コレス. NEAT)と呼ばれる。歩行も生活活動の一部であるが,日本. テロールは有意に上昇している。3%程度のわずかな体重減少. 人の歩行数も年々減少していることが報告されている。国民健. で大きな効果があるのは,少ない体重減少でも内臓脂肪が大き. 康・栄養調査によると,平成 15 年には 1 日の歩行数が男性で. く減少するためで,それに伴って血糖,脂質,血圧などの心血. 7,503 歩に,女性で 6,762 歩であったが,平成 22 年には男性 7,136. 管病危険因子数が減少する。逆に内臓脂肪面積が増えると危険. 歩に,女性は 6,117 歩と減少している。. 因子数は増加することがわかっている。.  また,肥満者は座位の時間が長いことも知られている。身体. 肥満症の治療. 活動を運動,低身体活動,座位に分けて肥満者と非肥満者とを 比較すると,運動時間にはほとんど両者に差がなく,肥満者で.  肥満症の治療には,食事や運動,行動療法を組み合わせた生. は低身体活動時間が短く,座位の時間が長い。すなわち,低身. 活習慣改善と,薬物・外科療法がある。. 体活動時間が短いため,長く座位にあると考えられるので,低.  体重の増減は食事から得られる摂取エネルギーが,運動など. 身体活動時間を増すよう指導することが重要である。加えて一. による消費エネルギーより多ければ体重は増え,その逆であれ. 定強度の高い運動を週に 2 ∼ 3 回行うことが勧められる。体重. ば体重は減る。脂肪組織 1 kg は約 7,000 kcal を含むので,摂. が増えると膝関節や股関節などに負荷がかかり,関節痛,腰痛. 取エネルギーを消費エネルギーより 7,000 kcal 少なくすればよ. が起こると運動を避け,生活活動も低下するので,無理をさせ. い。1 ヵ月で 1 kg 減量するためには,1 日あたり約 230 kcal 分. ず体力に見合った運動指導が必要である。. だけ摂取エネルギーを消費エネルギーより少なくすればよい。 エネルギー制限を行う際,糖質,蛋白質,脂質のバランスのと れた食事が求められる。特に蛋白質の制限は体蛋白の崩壊を招 き,筋肉量が減少しサルコペニアとなる。体脂肪の減少が少な ければサルコペニア肥満になるので,筋肉量維持のためには標 準体重 1 kg あたり蛋白質を 1 g 以上摂取することと運動が必 須である。  薬物療法は日本では肥満症治療薬としてまだ十分に有効な薬 物がない。今後の進展が待たれる。. 文  献 1) 日本肥満学会肥満症治療ガイドライン作成委員会:肥満症肥満症 治療ガイドライン 2006.肥満研究.2006; 12(臨時増刊号). 2) 肥満症診断基準検討委員会:肥満症診断基準 2011.肥満研究. 2011; 17(臨時増刊) . 3) 村本あき子,山本直樹,他:特定健診・保健指導における積極的 支援の効果検証と減量目的の妥当性についての検討.肥満研究. 2010; 16: 182‒187. 4) Ades PA, Savage PD, et al.: The treatment of obesity in cardiac rehabilitation. J Cardiopulm Rehabil Prev. 2010; 30(5): 289‒298..

(3)

図 1 肥満症の診断

参照

関連したドキュメント

Effect of mixure of aqueous extra from Salacia reticulate and cyclodetrin on the serum grucose and glucose level change and gastro-intedtinal disorder.. by massive

学生部と保健管理センターは,1月13日に,医療技術短 期大学部 (鶴間) で本年も,エイズとその感染予防に関す

日医かかりつけ医機能研修制度 令和 年度応用研修会 「メタボリックシンドロームからフレイルまで」 飯島勝矢 Tamakoshi A ら. Obesity

〇新 新型 型コ コロ ロナ ナウ ウイ イル ルス ス感 感染 染症 症の の流 流行 行が が結 結核 核診 診療 療に に与 与え える る影 影響 響に

High rates of long-term renal recovery in survivors of coronavirus disease 2019–associated acute kidney injury requiring kidney replacement therapy.. Figure 1Renal outcomes

It is suggested by our method that most of the quadratic algebras for all St¨ ackel equivalence classes of 3D second order quantum superintegrable systems on conformally flat

JICA

相談件数約 1,300 件のうち、6 割超が東京都、大阪府、神奈川県をはじめとした 10 都