第二部経済学科に関する一考察
著者
竹中 佐英子
著者別名
Saeko Takenaka
雑誌名
経済論集
巻
46
号
2
ページ
223-236
発行年
2021-03-10
URL
http://doi.org/10.34428/00012313
第二部経済学科に関する一考察
竹 中 佐英子
1
.テーマ選定理由
日本の大学の学部の中には、「二部」「夜間(やかん)」などと呼ばれる、夜の時間帯に授業を行 う学部がある。このような学部は本来、大学教育を受けたいが、昼間は仕事があり、大学へ通う時 間的、経済的余裕がない者を対象に、仕事が終わった後、夜に大学で学べるよう、設置されたもの である。東洋大学(以下「東洋」)は井上円了の「余資なく優暇なき者に教育の機会を提供する」 という考えの下、創立された大学であり、それを実現するべく、二部を設置し、現在も6学部8学 科で二部を有している。しかし近年、勤労学生の減少、少子化、昼間学部の定員増加といった要因 により、二部の存在意義は薄れつつある。筆者が2019年度に第二部経済学科(以下「二経」)学科 長を務めた際の調査では、1年生で昼間に正社員として働いている学生は133人中4人であり注1、 学生から「合格した昼間学部の偏差値が東洋より低いので、知名度の高い東洋の二経に入学した」 「とりあえず二経に入学しておき、昼間学部への転部を目指す」といった学生の声を聞いてきた。 すなわち、東洋二経に入学して来る学生は、設置当初に対象としていた「昼間は仕事で大学に通え ない者」から「昼間学部の受験に失敗した者」へと変化しているのである。二部の勤務は教職員の 負担でもあることから、多くの大学がこれを廃止しているが、東洋は都心の白山キャンパス全学部 で二部を保持している。東洋および日本の大学が今後、二部を保持するのか、変革するのか、変革 するとしたら何を変革するのかは、議論に値する問題と言えよう。 本稿は東洋二経の学生に対して行ったアンケート調査の結果を分析して、二経の現状を考察し、 他大学の二部・夜間を紹介した上で、東洋二経の今後の課題を提言する。2
.調査方法の紹介
2.1.調査対象 本稿の調査対象は、東洋二経2019年度入学者145人と、東洋国際経済学科(以下「国経」)2019 年度「中国語ⅠB」履修者である。国経の結果も開示、分析する理由は、筆者が国経1年生選択必修科目「中国語ⅠB」を担当し、当該科目履修者を対象に同一の調査を行うことができたこと、そ の結果を二経と比較することで、二経の特徴をよりつまびらかにできると考えるからである。ただ し、二経の調査対象は2019年度入学者全員であるのに対し、国経の調査対象は筆者担当の「中国語 ⅠB」履修者に限られ、調査項目によって対象人数も異なる。よって、国経の結果は国経全体を反 映していないことをお断りしておく。 2.2.調査実施方法 アンケート調査は2020年1月末、記名式で行った。質問項目は東洋での学習・生活および課外生 活に関すること約20項目で、回答は選択肢から選択させると共に、自由記述欄を設け、結果は入学 方式毎に集計した。本稿では全ての結果のうち、分析に必要なもののみを開示している。
3
.調査結果とその考察
本章では、東洋二経、国経に対して行ったアンケート調査の結果を分析しながら、東洋での学習・ 生活および課外生活の現状、認識を考察する。 3.1.学習に対する評価 本節では東洋での学習に対する評価を考察する。グラフ1,2は、東洋での学習に対する満足度 を(a)高い(b)低い(c)どちらとも言えない――の3択で選ばせた結果を、入学方式毎に示し たものである。グラフの見方であるが、二経全体(145人)で、東洋での学習満足度を「(a)高い」 と答えたのは44.14%、「(b)低い」と答えたのは13.1%、「(c)どちらとも言えない」と答えたの は42.76%、二経指定校(33人)のうち、「(
a)高い」と答えたのは42
.42%、「(
b)低い」と答えた のは9.09%、「(
c)どちらとも言えない」と答えたのは48
.48%、ということである。
グラフ1,2を見るに、二経の44.14%、国経の42
.05%が「高い」、二経の13
.1%、国経の7
.95%が
表1.調査対象の内訳 入学方式 文中略称 二経(145人) 国経(グラフ288人)
,4
国経(38人)グラフ6,8
,10
,14
国経(49人)グラフ11,12
付属校推薦 付属校8人
4人
4人
指定校推薦 指定校33人
13人
7人
6人
学校推薦 公募15人
10人
4人
6人
AO型推薦 AO20人
センター試験利用 センター11人
6人
2人
4人
一般入試前期 一般前期22人
24人
12人
12人
一般入試中期 一般中期29人
18人
6人
11人
一般入試後期 一般後期15人
9人
3人
6人
「低い」、二経の42.
76%、国経の50%が「どちらとも言えない」と答えている。二経は「高い」、国
経は「どちらとも言えない」が優勢である。入学方式毎に見て、満足度が高い順に並べると、二経 センター(63.64%)>国経付属校(62
.5%)>二経公募、国経公募(60%)>国経指定校(46
.15%)
>二経AO(45%)>二経一般前期(44
.83%)>二経指定校(42
.42%)>国経一般前期(37
.5
%)>二 経一般後期、国経センター・一般中・後期(33.33%)>二経一般中期(31
.82%)――となる。この
調査結果からは、二経センターを除き、一般より付属校、指定校、公募、AOといった、入学決定 時期が早い方で学習満足度が高いという傾向が見られる。 3.2.学習環境への要望 本節では東洋の学習環境への要望を考察する。グラフ3,4は、東洋の学習環境で改善して欲し いこと12項目を提示し、当てはまるもの全てに〇を付けさせた結果を示したものである。この調査 では自由記述欄も設けた。 グラフ3を見るに、二経の学習環境への要望は、❶昼間の授業履修可能(65.52%)❷履修者多
グラフ1.二経 学習に対する満足度 D‶㊊ᗘࡣ㧗࠸࠺࡛࠶ࡿࠋ E‶㊊ᗘࡣప࠸࠺࡛࠶ࡿࠋ Fࡕࡽࡶゝ࠼࡞࠸ࠋ グラフ2.国経 学習に対する満足度 D‶㊊ᗘࡣ㧗࠸࠺࡛࠶ࡿࠋ E‶㊊ᗘࡣప࠸࠺࡛࠶ࡿࠋ Fࡕࡽࡶゝ࠼࡞࠸ࠋ グラフ3.二経 学習環境への要望 㺘ᑓ㛛ᚲせ࡞ࡽᚲಟ༞ᴗせ௳ቑࡸࡍࠋ 㺚ᑓ㛛ᚲせ࡞ࡽᩍဨࡣᏛ⏕㧗࠸せồࠋ㺙ᩍဨࡣᏛ⏕ࡸࡉࡋࡃࠋ 㺖ᡂ⦼ⰋࡢᏛ⏕ࡣ␃ᖺ㝖⡠ࠋ 㺕ヨ㦂పᚓⅬ࡞ࡽฟᖍ࡛ࡶ༢ㄆᐃࠋ㺓ฟᖍ⋡పࡗࡓࡽ༢ㄆᐃࠋ 㺑ᑡேᩘࡢᤵᴗࢆቑࡸࡍࠋ 㺒ฟᖍ⋡పࡃ࡚ࡶ༢࠼࡚ࠋ 㺗ᚲಟ⛉┠ࠊ༞ᴗせ௳ࢆῶࡽࡍࠋ 㺔ヨ㦂పᚓⅬ࡛ࡶ༢ࢆ࠼࡚ࠋ 㺐ேᩘ࡛ࡶဨᒚಟᢳ㑅ࡋ࡞࠸ࠋ 㺏➨㒊࡛ࡶ㛫ࡢᤵᴗࢆᒚಟ࡛ࡁࡿࡼ࠺ࡍࡿࠋ数でも抽選無し(35.
86%)❸低得点でも単位付与(31
.72%)❹必修・卒業要件の削減(27
.59%)
❺低出席率でも単位付与(26.21%)――の順に多い。
第1位「昼間の授業履修可能」は第2位「履修者抽選廃止」の1.8倍の65
.52%の高きにのぼる。
自由記述欄にも「抽選でもいいので、昼間の授業をもっと選択できるようにしてほしい」(センター) 「2部を廃止して、2部の文系学部を統合して、社会科学部を創立して欲しい。2部はいらない」(一 般中期3教科ベスト2)という意見があった。他の項目に比べて圧倒的に強い要望があるので、今 後の二経のあり方を考える際、必ず検討すべき項目である。 第3位「低得点でも単位付与」については、自由記述欄に「出席していればできる限り単位がほ しい」(指定校)「出席率が高い場合は、単位を与えて欲しい」(公募推薦)「出席率が高かったら成 積の何%か欲しい」(公募推薦、誤字は記述のまま)「どの科目でも出席をとるようにしてほしい。 出席点をつけてほしい。課題を多く出すなどして、試験で点数が低かった場合などの救済があって ほしい。試験100%ではなく、例えば試験50%課題40%出席率10%など、このような評価基準の科 目が増えてほしい」(指定校)といった意見があった。二経は基礎学力が不十分な学生も一定数存 在するため、出席率の高さで定期試験の低得点を補って単位取得したいと思っているようである。 この他、▼「授業のたびにプリントがあると分かりやすいです」(公募推薦)「授業中騒がしく、 集中できないときがある時、用事、体調不良で授業に出られなかった場合、授業内容が一部分から ない状態でのテストを受けることになるので、なるべくネットで資料配布をしてほしい」(指定校) ▼「先生が淡々と資料に沿いながら話倒す講義より、受講している人たちに質問を問いかけてみたり、 グループワークをする等、何も知らずに受講する人たちが自ら学びたくなるような講義をして欲し い。知りたくて受講しているのに先生が淡々と機械のように話倒すだけの講義では、受講する人に とってはとてもつまらないモノとなり、時間の無駄であるというように感じる」(指定校)▼「気兼 ねなく教員と生徒がふれあえる場が欲しい」(公募推薦)▼「もっと授業の種類を増やしてほしい。6, 7限に受けられる授業」(公募推薦)「高校英語をやり直したいので、やさしい英語の授業がほしい。 2部の授業曜日がかたよりが激しいので、もう少しならしてほしい。金土曜日にとれるものが少な すぎる、月曜日にはすごく多いが」(一般後期2教科均等)――など、▽授業資料の配布▽学生の授 業参与の機会▽教員との交流▽開講曜日時限の平準化――といった点に対して要望があった。 グラフ4を見るに、国経の学習環境への要望は、❶必修・卒業要件の削減(36.36%)❷少人数・
履修者多数でも抽選無し(28.41%)❸低出席率でも単位付与(25%)❹低出席率は単位不認定に
(20.45%)――の順に多い。自由記述欄では、▼「パワーポイントを使ってくれる先生は多いが、 それをACEにのせてくださらない先生がいる為、後々見直したり、復習ができず困ります」▼「学 生の中でやる気のある人とない人ではっきりクラスを分けてほしい」「怠惰な学生としては優しく して欲しいが、基準はどのような生徒にとっても、もう少し高くあった方が良いと思う。今の中国語くらいが妥当だと思う」――など、▽授業資料の配布▽単位認定水準――といった点に対して要 望があった。 学習環境への要望で、二経と国経の共通点は、▼必修・卒業要件の削減▼低出席率での単位付与 ▼履修者抽選の廃止▼授業資料の配布――である。前者2項目は教育の質の低下を招くが、後者2 項目は教育の質の向上につながる。学生の意見は全部聴取した上で、応じるべきこととそうでない ことに分類し、後者を実行しなければならない。相違点は、▼二経は「昼間の授業履修」要求が
65
.52%の高きにのぼる▼「少人数」要求は、国経で28
.41%だが、二経ではその
4割の12.41%に留
まる▼「低得点でも単位付与」要求は、二経で31.72%だが、国経ではその
6割の19.32%に留まり、
さらに「単位認定水準はもう少し高くて良い」という、二経と逆の意見がある――といった点であ る。以下、相違点について考察する。 まず、二経の昼間授業の履修についてだが、それを許可するか否か、許可した場合、どのように 実施するかは、全学の運営に関わる問題なので、今後各部門がシミュレーションして検討すべきで ある(第5,6章参照)。次に、二経があまり少人数での指導を要求せず、低得点での単位付与を要 求する点についてだが、多くの大学偏差値サイトでは、二経の偏差値が国経より10ポイント程度低 く示され注2、基礎学力が不十分な学生も少なくない。少人数だと、学生の発言機会が増え、教員 に各学生の学力が見えやすくなり、単位認定は厳格に行われるようになる。このため、二経の学生 は、少人数を望まず、単位認定基準を引き下げるよう要求するのだろう。ただし、二経の自由記述 欄では「学生に問いかけ、グループワークさせて欲しい」と要望する学生も存在する。二経の教育 の質を向上させるには、担当教員がこの種の学生を見つけ出し、彼らを核とした授業を行うよう、 努力すべきである。 グラフ4.国経 学習環境への要望 㺕ヨ㦂పᚓⅬ࡞ࡽฟᖍ࡛ࡶ༢ㄆᐃࠋ 㺚ᑓ㛛ᚲせ࡞ࡽᩍဨࡣᏛ⏕㧗࠸せồࠋ 㺖ᡂ⦼ⰋࡢᏛ⏕ࡣ␃ᖺ㝖⡠ࠋ 㺘ᑓ㛛ᚲせ࡞ࡽᚲಟ༞ᴗせ௳ቑࡸࡍࠋ 㺙ᩍဨࡣᏛ⏕ࡸࡉࡋࡃࠋ 㺔ヨ㦂పᚓⅬ࡛ࡶ༢ࢆ࠼࡚ࠋ 㺓ฟᖍ⋡పࡗࡓࡽ༢ㄆᐃࠋ 㺒ฟᖍ⋡పࡃ࡚ࡶ༢࠼࡚ࠋ 㺐ேᩘ࡛ࡶဨᒚಟᢳ㑅ࡋ࡞࠸ࠋ 㺑ᑡேᩘࡢᤵᴗࢆቑࡸࡍࠋ 㺗ᚲಟ⛉┠ࠊ༞ᴗせ௳ࢆῶࡽࡍࠋ3.3.大学生活に対する評価 本節では東洋での生活に対する評価を考察する。グラフ5,6は、東洋での生活に対する満足度 を(a)高い(b)低い(c)どちらとも言えない――の3択で選ばせた結果を、入学方式毎に示し たものである。グラフの見方はグラフ1,2(第3章第1節)と同じである。 グラフ5,6を見るに、二経の53.
79%、国経の47
.37%が「高い」、二経の7
.59%、国経の2
.63%が
「低い」、二経の38.62%、国経の47
.37%が「どちらとも言えない」と答えている。二経は「高い」
が優勢、国経は「高い」と「どちらとも言えない」が同数である。入学方式毎に見て、満足度が高 い順に並べると、二経AO(70%)>二経指定校・センター(63
.64%)>二経公募(60%)>国経指
定校(57.14%)>二経一般後期(53
.33%)>国経付属校・公募・一般前・中期(50%)>二経一般前
期(37.93%)>二経一般中期(36
.36%)>国経一般後期(33
.33%)>国経センター(
0%)――と なる。この調査結果も学習満足度同様、一般より付属校、指定校、公募、AOといった、入学決定 時期が早い方で大学生活満足度が高いという傾向が見られる。 3.4.大学生活への要望 本節では東洋での生活への要望を考察する。グラフ7,8は、東洋の生活環境で改善して欲しい こと13項目を提示し、当てはまるもの全てに〇を付けさせた結果を示したものである。この調査で は自由記述欄も設けた。 グラフ7を見るに、二経の大学生活への要望は、❶インターネット接続環境(33.1%)❷教員に 相談しやすい環境(29.66%)❸学生同士交流する場の提供(25
.52%)❹偏差値向上(21
.38%)―
―の順に多い。 第1位「インターネット接続環境」は3割強で、自由記述欄にも「地下の教室だと自分が使用し グラフ5.二経 大学生活に対する満足度 D‶㊊ᗘࡣ㧗࠸࠺࡛࠶ࡿࠋ E‶㊊ᗘࡣప࠸࠺࡛࠶ࡿࠋ Fࡕࡽࡶゝ࠼࡞࠸ࠋ グラフ6.国経 大学生活に対する満足度 D‶㊊ᗘࡣ㧗࠸࠺࡛࠶ࡿࠋ E‶㊊ᗘࡣప࠸࠺࡛࠶ࡿࠋ Fࡕࡽࡶゝ࠼࡞࠸ࠋているwifiにつながらなくなるため、レスポンできなかったりする」(一般3教科ベスト2平均)「図 書館でも一部のエリアでしかインターネットが使えなかったり、大人数の教室で生徒が一斉にアク セスしようとすると繋がりにくくなるのを改善してほしい」(一般中期3教科ベスト2)「高速イン ターネットをすべての場所で使える用にしっかり投資すること」(一般中期3教科ベスト2)「学生 のみ一度ログインしたら認証済となり、再度ログインの手続きをしなくてもよいようにしてほし い」(指定校)など、多くの意見が挙がった。2020年のコロナウイルス感染拡大以降、非対面授業 が多数となり、学内でもオンライン授業を受講できる環境が必要となっていることから、インター ネット接続環境の整備は当面の急務である。 この他、▼「教員がどこにいるのかなどの情報にアクセスしずらい」(公募推薦)▼「就職活動 はまだやっていないのでわからないのですが、一番重要だと思うので、力を入れてほしい」(AO) ▼「週に何度か学食を夜まで営業してほしい」(公募推薦)「学食の営業時間を22:
00くらいまで延
ばしてほしい」(一般中期3教科ベスト2)「学食はおいしいが、値段を下げて量も少ないメニュー を作ってほしい」(一般後期2教科均等)▼「自動販売機がもっとほしい」(指定校)「各階に自販 機おいて」(一般後期2教科均等)▼「講義室外にもう少し勉強スペースが欲しい」(センター前期 ベスト2)「図書館のフォレストのような場所を増やしてほしい」(公募推薦)「白山キャンパスは 交流場が少なすぎて学食が混みすぎだしうるさい。そこでサークル以外でも教室を借りられるよう にすれば良いと思う」(一般3教科ベスト2)「空いている教室があった場合、より気軽に借用でき る制度」(一般後期2教科均等)▼「明確なサークルないしは部活の情報共有。春に入学し、ある と思っていたものがなかったり、パンフレットに書いていても活動していないことがあった。大学 側主催のプレゼンテーション会の開催。部活紹介みたいな感じ」(公募推薦)「講演会系のボランティ ア以外のボランティア求人を増やしてほしい→障害児、幼児、高齢者、外国人、里親制度利用者の 手伝い、学習支援etc」(指定校)――など、▽教員に相談しやすい環境▽就活指導▽学食の営業時 間▽自販機▽自習、学生交流を行う場所、空き教室利用▽サークル、ボランティア、課外活動の案 内――といった点に対して要望があった。 グラフ7.二経 大学生活への要望 㺒ࢫ࣏࣮ࢶ➇ᢏࡢᡂ⦼ࠋ 㺕ᅗ᭩㤋ࠋ 㺖Ꮫ㣗ࠋ 㺛༞ᴗ⏕ࡢࢿࢵࢺ࣮࣡ࢡࠋ 㺑♫ⓗ࣓࣮ࢪࠋ 㺓ᩍဨࡢ◊✲ᴗ⦼ࠋ㺐ୡ㛫࡛ࡢホุࠋ 㺘ᑵ⫋άືࡢᣦᑟࠋ 㺗ᗑࠋ 㺏೫ᕪ್ࠊࣛࣥࢡࠋ 㺙Ꮫ⏕ྠኈࡢὶࡢሙࡢᥦ౪ࠋ 㺚Ꮫ⏕ࡀᩍဨ┦ㄯࡋࡸࡍ࠸⎔ቃࠋ 㺔ࣥࢱ࣮ࢿࢵࢺ᥋⥆⎔ቃࠋグラフ8を見るに、国経の大学生活への要望は、❶インターネット接続環境(44.
74%)❷教員
に相談しやすい環境(36.84%)❸世間での評判向上(28
.95%)❹学生同士交流する場の提供、偏
差値向上(21.05%)――の順に多い。自由記述欄では、▼「就活支援の部屋が
6号館だけにあると、 あまり使わない学部生は足を運びづらいように感じるので、増設した方が良いと思います」▼「図 書館を24時間開放してほしい」▼「自動販売機が少なすぎる」「自動販売機を増やす」――など、 ▽就活指導▽図書館開放時間▽自販機――といった点に対して要望があった。 大学生活への要望で、二経と国経の共通点は、▼インターネット接続環境▼教員に相談しやすい 環境▼学生同士交流する場の提供▼偏差値向上――である。前者3項目は大学生活の環境であり、 教職員が対応できる。しかし、偏差値向上は前者3項目とは異質の要素で、これに類する「世間で の評判向上」という要望も、二経で15.17%、国経で28
.95%に達している。偏差値は入試の難易度、
世間での評判は卒業生の活躍を反映するもので、いずれも学外からの評価である。これらの向上を 要望するという調査結果は、在学生が東洋に対する学外からの評価に満足していないことを示して いる。しかし、偏差値を上げるには合格者数を絞る、世間での評価を上げるには単位認定基準を厳 しくすることにつながるので、実行すれば、改善を要望した在学生も反発するだろう。 二経と国経の相違点は、▼図書館の検索パソコン、開館時間などへの要望は、二経で5.52%だが、
国経はその約3倍の15.79%▼学食の営業時間、メニュー、価格などへの要望は、二経で9
.66%だが、
国経はその1.6倍の15
.79%▼売店の営業時間、場所などへの要望は、二経で17
.24%、国経はその約
3分の1の5.26%――といった点である。この調査結果から、二経は国経より学校に滞在する時間
が限られることから、手軽に利用できる売店が重要視され、図書館を活用しきれていないことが分 かる。 3.5.他大学、他学部に対する評価 本節では他大学、他学部に対する評価を考察する。 グラフ8.国経 大学生活への要望 㺑♫ⓗ࣓࣮ࢪࠋ 㺛༞ᴗ⏕ࡢࢿࢵࢺ࣮࣡ࢡࠋ㺗ᗑࠋ 㺓ᩍဨࡢ◊✲ᴗ⦼ࠋ 㺒ࢫ࣏࣮ࢶ➇ᢏࡢᡂ⦼ࠋ㺕ᅗ᭩㤋ࠋ 㺘ᑵ⫋άືࡢᣦᑟࠋ㺖Ꮫ㣗ࠋ 㺏೫ᕪ್ࠊࣛࣥࢡࠋ 㺙Ꮫ⏕ྠኈࡢὶࡢሙࡢᥦ౪ࠋ㺐ୡ㛫࡛ࡢホุࠋ 㺚Ꮫ⏕ࡀᩍဨ┦ㄯࡋࡸࡍ࠸⎔ቃࠋ㺔ࣥࢱ࣮ࢿࢵࢺ᥋⥆⎔ቃࠋグラフ9,10は、東洋に入学後、他大学へ行きたいと思った経験を(a)ある(b)ない――の 2択で選ばせた結果を、入学方式毎に示したものである。グラフの見方はグラフ1,2(第3章第 1節)と同じである。 グラフ9,10を見るに、二経の46.
9%、国経の57
.89%が「ある」、二経の53
.1%、国経の42
.11%
が「ない」と答えており、二経は「ない」、国経は「ある」が優勢である。入学方式毎に見て、「あ る」と答えた割合が高い順に並べると、国経一般前・中期(83.33%)>二経一般中期(68
.18%)>
国経一般後期(66.67%)>二経一般後期(60%)>二経センター(54.55%)>二経AO(50%)・国 経センター(50%)>二経公募(46.67%)>二経一般前期(44
.83%)>国経指定校(28
.57%)>国経
付属校・公募(25%)>二経指定校(24.24%)――となる。二経と国経の共通点は、一般やセンター
といった、他大学と併願していて、東洋への入学決定時期が遅い入学方式の6∼8割が他大学を羨 望していること、相違点は、▼二経AOの50%が「ある」と答えている▼公募で「ある」と答えた
のが、国経では25%に対し、二経では1.8倍の46
.67%にのぼる――といったことである。
AOや公 募の出願資格には「当該学科を第一志望として入学を志す者。合格した場合、必ず入学することを 確約できる者。」と明記してあるのだが、この調査結果では二経AOと公募には入学1年後に他大 学を羨望している学生が約半数を占めることから、一定数が二経をよく理解せずに受験、入学した と考えられる。 入学前に当該学科のカリキュラムを理解しておかないと、入学後の学習に負の影響を及ぼす。国 経のカリキュラムは、英語と初習外国語(独仏中から1言語)の2言語が必修であるが、グラフ11 はそのカリキュラムを知った時期、グラフ12は国経で初習外国語が完全選択となった場合に履修す るか否か、を入学方式毎に示したものである。全体の42.89%、付属校・センター・一般前期の半
グラフ9.二経 他大学へ行きたいと思うこと D࠶ࡿࠋ E࠶ࡲࡾ࡞࠸ࠋ グラフ10.国経 他大学へ行きたいと思うこと D࠶ࡿࠋ E࠶ࡲࡾ࡞࠸ࠋ数以上が「入学後に知った」、全体の38.
78%、指定校・センター・一般中期の半数以上が「完全選
択になったら履修しない」と答えている。この調査結果は、国経の特徴を理解せずに入学すると、 入学後に必修科目の学習に拒否反応があることを示すものである。国経の学習の核となっている初 習外国語を、実に約4割もの学生が積極的に取り組めないという事実は、ゆゆしき問題である。 なお今回の調査では、他大学のどんな点を羨望しているかについては調査しなかったので、今後 の研究課題とする。 グラフ13,14は、二経・国経に入学後、学内他学部他学科へ行きたいと思った経験を(a)ある(b) ない――の2択で選ばせた結果を、入学方式毎に示したものである。グラフの見方はグラフ1,2 (第3章第1節)と同じである。 グ ラ フ13,14を 見 る に、 二 経 の55.86%、 国 経 の55
.26% が「 あ る 」、 二 経 の44
.14%、 国 経 の
44
.74%が「ない」と答えており、二経、国経共に「ある」が優勢である。入学方式毎に見て、
「ある」 グラフ11.国経 初習外国語が選択必修と知った時期 DධᏛࡋࡓᚋࠋ EධᏛࡍࡿ๓ࠋ グラフ13.二経学内他学部他学科へ行きたいと思うこと D࠶ࡿࠋ E࠶ࡲࡾ࡞࠸ࠋ グラフ12.国経 初習外国語が完全選択と知った時期 Dᒚಟࡋ࡞࠸ࡔࢁ࠺ࠋ Eᒚಟࡍࡿࡔࢁ࠺ࠋ グラフ14.国経学内他学部他大学へ行きたいと思うこと D࠶ࡿࠋ E࠶ࡲࡾ࡞࠸ࠋと答えた割合が高い順に並べると、二経AO、国経付属校(
75%)>二経一般後期、国経一般前・
後期(66.67%)>二経一般中期(59
.09%)>二経一般前期(58
.62%)>国経指定校(57
.14%)>国経
センター(50%)>二経指定校(48.48%)>二経公募(40%)>二経センター(36
.36%)>国経一般中・
後期(33.33%)>国経公募(25%)――となり、二経
AO・一般、国経付属校・一般前・後期で6 ∼7割と比較的高いのに対し、二経センター、国経一般中期では3割に留まっている。この調査結 果から、▼二経AO・一般は当初、学内の昼間学部を第一志望としており、他学部他学科への羨望 が強い▼二経センター、国経一般中期は第一志望の他大学不合格後に東洋を受験し、学内他学部他 学科についてあまり知らない▼国経付属校は高等学校内で推薦をとる時、希望しない学科に振り分 けられた――といった可能性があると考えられる。4
.調査結果の総括
本章では二経のアンケート調査の結果を総括する。第3章の分析より、二経の特徴は以下の6点 に総括される。 (1) 学習に対しては4割強、大学生活に対しては5割強が「満足度が高い」と答えている。 (2) 6割強が昼間の授業履修を要望している。 (3) 3割が低得点でも単位付与を要望し、少人数での指導を要望するのは、約1割に留まる。 (4) 学校に滞在する時間が短いことから、自販機、売店は使用しているが、図書館を活用しき れていない。 (5) 他大学を羨望する割合は4割強、他大学と併願した一般中・後期では6割と比較的高く、 加えて第一志望を出願資格とするAOや公募でも4∼5割に達する。 (6) 他学部他学科(昼間学部)を羨望する割合は5割強、AOで75%、一般で6割程度だが、
センターでは4割以下である。5
.他大学の二部・夜間紹介
本章では他大学の二部・夜間学部について紹介する。 第1章で論じた通り、勤労学生の減少、少子化、昼間学部の定員増加などにより、多くの大学は 夜間の授業だけで卒業できる二部・夜間学部を縮小・廃止して、昼夜開講制へ移行したり、社会人 向け夜間開講の専門職大学院を強化している。大学入試情報図書館RENAによると、現在、夜間お よび土曜の授業のみで卒業可能な学部を持つ大学は国立22、公立3、私立13の計38大学あり(表2 参照)、国立大学を中心に保持されている。では現在、東洋と同じく、都心にキャンパスを持つ私 立大学文系学部の二部・夜間学部の現状はどうなのか?以下、3つの二部・夜間学部を紹介する。表2.夜間(および土曜)のみで卒業可能な学部を持つ大学注3 北海道東北 関東 北陸甲信越東海 近畿 中国四国九州 国立 4校 5校 4校 2校 7校 公立 1校 1校 1校 私立 3校 6校 1校 3校 5.1.國學院大学 國學院大学HPによると、神道文化学 部(渋谷キャンパス)は、昼夜開講制(フ レックス制)を導入している。1日の授 業7時限のうち、平日の1∼5時限と土 曜日の1∼2時限を昼間、平日の5∼7 時限と土曜日の1∼7時限を夜間、月∼ 金曜日の5時限と土曜日の1∼2時限を 共通時間帯とする。学生は入試出願時に 「フレックスA(夜間主)コース」と「フレックスB(昼間主)コース」のいずれかを選択する。 これは入学後変更不可である。必修科目は選択したコースの時間帯のもの、その他の科目は都合の 良い時間帯のものを受講する。科目によっては昼間のみ、夜間のみ開講するものもある。フレック スA(夜間主)コースの学生は、必修科目は夜間および共通時間帯に履修しなければならないが、 それ以外の科目は昼間に選択でき、2年次以降であれば、昼間中心の時間割を組むことも可能 である。ただし、フレックス特別給付奨学金を受給する場合、夜間(および共通時間帯)開講 の授業しか履修することができない。 5.2.駒澤大学 駒澤大学HPによると、法学部法律学科(駒沢キャンパス)にはフレックスAといわゆる夜間学 部に当たるフレックスBがある。フレックスBは月∼金曜日の6・7時限(18:00∼21:10)と、 土曜日の3∼7時限(13:00∼21:10)に開講される授業を中心に履修する他、卒業までにフレッ クスAの全学共通教養科目を
12単位、専門選択科目(一部除き)を40単位まで修得することができ
る(他コース授業時間帯での他学部履修による修得単位を含む)。所定の試験に合格すれば、2・ 3年次からフレックスAへのコース変更も可能である。 5.3.日本大学 日本大学HPによると、法学部法律学科第二部(水道橋キャンパス)は、月∼金曜日の16:20∼
21:00と土曜日の9:00∼17:50に授業を開講している。第二部の学生は卒業単位数124単位のう
ち、第一部開講科目から42単位までを卒業要件に含むことができる。2年次・3年次に進級する際、 第二部から第一部への転部制度があり、当該学年後学期までの成績などにより、学籍移動すること ができる。 5.4.東洋二経と他大学二部・夜間学部の比較 本節では、東洋二経と、上記3大学の二部・夜間学部を比較する。 共通点は、▼キャンパスが交通至便な東京23区内に位置する▼月∼金曜日は夕方4時(5限)以 降の授業しか履修できない▼卒業に必要な単位数の一部を昼間学部で取得できる――といった点で ある。相違点は、▼土曜日授業を、東洋は夜6時15分(6限)∼しか受講できないのに対し、駒澤 大学では昼1時(3限)∼、國學院大学と日本大学では朝9時(1限)∼、受講できる▼入学後、 昼間学部中心に変更したい場合、東洋、日本大学は転部試験、駒澤大学は所定の試験に合格すれば 可能だが、國學院大学は変更不可で、さらに奨学金受給者は夜間しか受講できない――といった点 である。6
.東洋二経の今後の課題
本章では東洋二経の今後の課題を提言する。第3,4章の分析結果と、第5章の都内他大学の二 部・夜間学部の状況を踏まえ、今後の二経のあり方を考える際、以下の3点を重点的に検討するよ う、提言する。 (1) 受講可能な時限の再検討。東洋二部では現在、月∼土曜日の6∼7限および5限の一部し か受講できないが、6割以上の二経学生が昼間の授業履修を要望していることから、都内他 大学二部・夜間に倣い、まず土曜日昼間、次に月∼金曜日の昼間受講について検討し併せて 上限単位数や増額する学費などについても検討する。 (2) 二部存続の是非。2020年のコロナウイルス感染拡大は、時間を問わず受講できる非対面授
業の可能性を広げ、二部は井上円了の「余資なく優暇なき者に教育の機会を提供する」を体 現する唯一の方法ではなくなった。昼間に正社員という学生がほとんどいないという現状を 鑑みても、夜間開講の必要性は高くない。 (3) 入試の再検討。他大学や他学部と併願した一般・センターの他、出願資格に当該学科を第 一志望とする者とある指定校・公募・AOでも、4割以上が他大学や他学部を羨望している。 本人が二経を理解せぬまま、高校の進路指導教員によって機械的に推薦先をあてがわれた可 能性もある。学科に対する理解の低さは「必修卒業要件の削減」「低得点でも単位付与」とい う要望に表れ(第3章第2節参照)、入学後の学習に負の影響を及ぼす(第3章第5節参照)。入試の種類を増やして定員確保するより、当該学科を理解した学生を確保すべきである。ま た、入試課は付属校や指定校の面接を削減したが、面接は本人の意思を直接問える最後の機 会であり、入試改革は慎重に行う必要がある。 【注】 1.2020年1月末の調査による。 2.ベネッセマナビジョンでは二経が53、国経が62である。 3.夜間に授業を行っていても、卒業するのには平日昼間の通学が必要となる学部は除いている。 【参考資料】 ベネッセマナビジョン,https://manabi.benesse.ne.jp/hensachi/kanto_area_index.html 國學院大學神道文化学部HP,https://www.kokugakuin.ac.jp/education/fd/shinto/curriculum 駒澤大学法学部法律学科HP,https://www.komazawa-u.ac.jp/academics/faculty/flex.html 日本大学法学部法律学科第二部HP,http://nulaw.jp/course/law_02/ 大学入試情報図書館RENA,http://www.rena.gr.jp/surveys/yakan/g.html