Title
合成化学的手法と計算化学的アプローチによるインフルエ
ンザウイルス糖鎖リガンドの研究( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
澤田, 敏彦
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第442号
Issue Date
2007-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/21374
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本(国)籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 会 澤 田 敏 彦 (愛知県) 博士(農学) 農博甲第442号 平成19年3月13日 学位規則第3条第1項該当 連合農学研究科 生物資源科学専攻 岐阜大学 合成化学的手法と計算化学的アプローチによるイン フルエンザウイルス糖鎖リガンドの研究 主査 岐阜大学 教 授 副査 岐阜大学 教 授 副査 静岡大学 教 授 副査 信州大学 教 授 治 美 市 満 秀 泰 田 曽 氷 田 石 木 碓 虞 論 文 の 内 容 の 要 旨 インフルエンザは、数十年に1度の割合でパンデミックするウイルス感染症であり、世 界中で研究されている。インフルエンザウイルスは、自身が持つヘマグルチニン(ⅡA) というタンパク質の作用によって、標的細胞表面に発現しているシアロ糖鎖(Neu・Gal糖 鎖)に結合して細胞接着・感染する。本研究では、ⅡAとシアロ糖鎖の親和性について、 有機合成化学と構造生物学(計算化学)の両面から研究した。 トリ型ウイルスⅡAのⅡ3亜型はシアロ糖鎖活性部位にGln226を有しており、トリ型 糖鎖であるNeu6Ae(α2・めGalと強く療合する。そしてヒト型Ⅱ8は、山鳩226を持ってい るためにヒト型糖雀=他戚Ae(α2・㊥G81と結合する。臭味深いことにGl血226をbulこ点 変異させたトリ型H8は、トリ型糖鎖よりもヒト型糖鎖に強く結合してヒト細胞に感染で きる。本研究では、rなぜトリ型HAであるGln出6Eさは、トリ型糖鎖と強く結合する のか?なぜ点変異させたトリ型Gln226Ⅰ虎uⅡ3は、トリ型糖鎖よりもヒト型糖鎖に強く 結合するのか?』という疑問に答えるために、トリ型打3とシアロ糖鎖の相互作用を分子 軌道計算で定量的に解析した。トリ型Ⅱ3とシアロ糖鎖の相互作用過程を分子軌道計算で 解析するには、反応系を反応物系(E3、シアロ糖♯)と生成物系(E3-シアロ糖鎖凄合体) に分けて検討すると効率が良い。第一章では、反応物系であるシアロ糖鎖の非運元末端 α-D-〝アセチルノイラミン酸(Neu5A¢α)を密度汎関数法で構造解析した。その結果、 Ne甘地αの安定構造を5タイプ14個見出した。そして、安定構造閉の異性化に伴うエネ ルギー障壁を算出した。さらに、NⅢ5A¢αの擬似水和構造を導き出した。これらの結果は、 反応物系であるNもⅥ5Aeαの構造的な振る舞いを考える上で基礎情報になる。第二章では、 生成物系であるトリ型Ⅱ3-シアロ糖鎖複合体をabi血tioフラグメント分子軌道法で検討
して、両者間の相互作用エネルギーを算出した。トリ型Ⅱ3とトリ型糖鎖の結合エネルギ ーは、トリ型E3とヒト型糖鎖の結合エネルギーよりも、8.2ked/mol大きかった。この 結合エネルギー差が、トリ型Ⅱ3がヒトよりもトリに強く結合する理由である。一方で、 点変異させたトリ型Gln226LeuH3は、トリ型糖鎖のG81ユニットと衝突した。よって、 その結合親和性は著しく低下すると推測できる。また、トリ型Gln出6kⅦⅡきは、ヒト型 糖鎖と問題なく結合した。従って、Gln226を山川に変異させたトリ型Ⅱ3がトリよりも ヒトに強く感染することを理論的に説明できた。本研究を発展させれば、変異型インフル エンザ丑Aのシアロ糖鎖に対する結合親和性が将来予珊できるかもしれない。第三章では、 鶏卵から新たに単#された新規な分子で、様々なインフルエンザHAと蘇合するジシアロ 糖脂質の化学合成を試みた。新規で効率的な合成戦略に基づく合成研究を行って、その利 点と問題点を示した。 本研究は、インフルエンザⅡAのシアロ糖動こ対する結合親和性を、有機合成化学と構 造生物学(主に計算化学)の両面から解明するための基礎研究として重要である。 審 査 結 果 の 要 旨 インフルエンザは、数十年に1度の割合で世界的に流行するウイルス感染症で、盛 んに研究されている。インフルエンザウイルスは、自身が持つ赤血球践素(ⅡA) というタンパク質の作用によって、標的細胞表面に発現しているシアロ糖鎖 (N血・Gal糖鎖)に結合して細胞接着する。本過程が、ウイルス感染の第一段階で ある。 トリ型ウイルスHAのH3亜型は、シアロ糖鎖活性部位にGln226を有しており、 .トリ細胞が発現している■Neu5A血2-3)G血糖貞削こ強く結合する。そしてヒト型H3 は、ku226を持っているためにヒト型糖鎖Nen5A血2-由Gdに唐合する。書くべ きことにGh226をh犯に点変異させたトリ型H3は、トリ型糖鎖よりもヒト型糖鎖 に強く結合してヒト細胞に感染できる。この分子機構は、トリ型ウイルスがヒトに感 染する際の理由の1つとされる。 こうした背景の下、本研究では「そもそも なぜトリ型ⅡAであるG旭26H3 は、トリ型棚と強く結合するのか?なぜトリ型Gk戊26h氾H3は、トリ型糖鎖 よりもヒト型樹に結合しやすいのか?」という疑問に対する答えを、分子軌道法 を用いて化学的に導いた。 トリ型H3とシアロ桝の相互作用週毎を分子軌道法で解析するには、反応系を反 応物系(H3、シアロ糖鎖)と生成物系(Ⅱ3-シアロ糖鎖複合体)に分けて検討する と効率が良い。第一章では、反応物系であるシアロ糖鎖の非遭元末娘 α-D-〟アセ チルノイラミン酸(N由5A瓜)を密度汎関数浩(DFT)で構造解析した。純u5A此 について81個のC-OH結合回転異性体を作成してDFTで検討した結果、14個の安 定構造を得た。得られた安定構造を、分子内水素結合の形成位置によって5タイプ に分類した。最も安定な構造は、N血5血-OMeCO弛の結晶構造と類似した。安
定構造間の異性化、すなわち分子内水素結合の組み換えた伴うエネルギー障壁は
2.8・6.7k血1であり、反応物系であるN血5A軋の構造的な振る舞いを考える上 で基礎情報になる。Neu5A(氾の分子内水素結合に対する馳0分子の効果を検討した。その結果、H20がNeq5Aeαの分子内水素結合の間に挿入された。そのために、 Neu5Aoα・H20複合体におけるN由5Aoαの構造が互いに類似した。この結果は、 NMRによって解析されたN血5Ao∝の構造と類似しており、擬似的なNb血の水 和構造として妥当である。この方法論によって、N血5A血2・3またはα2・由Gdや Neu5Ac・Gal-GIcNAcが効率良くDFTで解析できる。 第二章では、生成物系であるトリ型H3-シアロ糖鎖複合体をab血フラグメン ト分子軌道法(abi血椚ほ0)で検討して、両者間の相互作用エネルギーを算出し た。トリ型H3とトリ型糖鎖の結合エネルギーは、トリ型Ⅱ3とヒト型糖鎖の結合エ ネルギーよりも、8.2k独仏nol大きかった。この結合エネルギー善が、トリ型Ⅱ3が ヒトよりもトリに強く結合する理由である。一方で、トリ型Gh226kuⅡ3は、ト リ型糖鎖N血血2-めGdのG山ユニットと衝突したので、その篇合親和性は著し く低下すると推測できる。それに加えて、トリ型Gk戊26buH3は、ヒト型柵 Neu鮎血2一由G山と閉居なく結合できた。従って、Gh226をh犯に変異させたト リ型H3がトリ細胞よりもヒト細胞に強く感染できるという実験事実が、理論的に説 明できた。 第三章では、様々なインフルエンザHAと結合する糖脂質で、鶏卵から新たに単#
されたジシアロ脚旨質の化学合成を試みた。新規で効率的な合成戦略に基づいた今成
研究を行って、その利点と間唐点を示した。 本研究は、インフルエンザⅡAのシアロ糖鎖に対する結合親和性を、有機合成化 学と構造生物学(計算化学)の両面から解明するための基礎研究として重要である。 以上について、審査委鼻全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学位 論文として十分価値があるものと認めた。 学位論文の基礎となる学術論文 1)旦塾wa血,でHa8鮎皿Ob,E.N血0,M.S出師皿鹿叫Ⅱ.b旭a,M.粒弧 Co血tiona18tudyofα-Naαtyl-D・neuraJmiacidbyden8ityfunctio血 七山犯Ⅳよ瑚血(漁腫.25,200¢,887-405. 2)TLSaw*.THa8himoto,H.N血,TISumki,H.IBhida,M.Ei弧Wby血籾 avianiduenzaAviru8hemagglu血血bindtominreceptor8tmngerthantO humanre℃紀ptOr?Abimitio丘agmentmolecularOrbitalstudie8,地eLZ2. 劇物如現風浪dⅧ皿皿.351,200¢,40-43. 既発表学術論文 1)S.協Ⅱ払ねYSu鴫℃Su鴫M.Q.k,C.A∴Nidom,YS血・恥g訂ⅣちY MumInOb,M.Ⅰね,M.E由0,℃Ho血b,E.S軸乳旦Saw血M一正i釦,℃ U8ui,TIMurata,YLin,AH職L.FIHaire,D.J.Steven8,RJ.RⅦ8能札S.J. Ga血b払J.J.Sk血etYXawa血Haemag由血血mn地ns柁8pO曲血r tbeb血血喝破E5Nl止血enzaA血旭飴bbu山一如epeoep血潤,胸血抑444, 2006,378-382. 2)旦_出島S.Flわii,H.Nakano,S.Ohtake,K.Eimata,0.HabudhiSynthe8is Of飢l地血娘pbeny12-aαぬ皿姐0-2・deoxy-ひgahd叩yran血s.4-αS血d pheny12・a飴tamido・2-deoxy・B-D-gahctopymno8idei烏aOO皿petitivea∝eptOr thatdeぽeaSe$Su地点onofd10ndroitin飢曲ねbyNace蜘組皿血e4-8曲鹿6-α8ul血はan占免職8e,物女鹿340,2005,1983-1銚娼. 3)H.Nakano,TlIBhihaBhi,旦蝕塾塾.Unexpectedfomationofnovelpyrrole derivative昌bythereactionofthioamidewith血旭thyla恍tyk!nedicaiboxyhte. 飽む凝血血ムe比44,200さ,4175・4177. 心℃Ohda,伽Ⅱ.N血,KM血b紆a,YM血血,M.机輌0. Habud止MoⅥ8eル相和他山血糊皿血4-8止脆址aI蛤飴ra8e8-1and-2.Mo抽 do血ng,eXp理由叫dm皿0帥m山Ⅱはpp血gandde血nof血血a應軸鵬九