Title
大規模ササ型野草地における放牧和牛の栄養管理法の確立(
内容の要旨(Summary) )
Author(s)
中野, 美和
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第466号
Issue Date
2008-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/23473
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本鳳籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 会 中 野 美 和 (滋賀県) 博士(農学) 農博甲第466号 平成20年3月13日 学位規則第3条第1項該当 連合農学研究科 生物生産科学専攻 岐阜大学 大規模ササ型野草地における放牧和牛の栄養管理法の 確立 主査 岐阜大学 副査 岐阜大学 副査 信州大学 副査 静岡大学 授 授 授 授 教 教 教 教 谷 井 澤 大 土 唐 森 滋 守 豊 誠 論 文 の 内 容 の 要 旨 我国における和牛肉生産は高度に集約化され、生産量が増加するとともに品質も向 上したが、一方で飼料自給率の低下や生産コストの上昇、■家畜福祉上の問題が無視で きなくなってきている。繁殖牛を放牧飼養することは、それらの問題解決のための方 策として実現性が高く、特に林地や山地を利用した大規模な野草地での放牧飼養が有 効であると考えられる。しかし、このような放牧地では牛群の栄養管理は難しい。そ れは、大規模な野草地では、栄養管理に不可欠な採食量を測定することが難しいだけ でなく、摂取する_草の栄養価および栄養摂取量に影響する牛の採食場所や採食時間な どの採食行動、さらには、これらの季節変化を測定することも技術的に困難であるこ とによる。本研究は、大規模な野草放牧地における牛の栄養摂取量とその季節変化お よびそれらに影響を与える採食行動を、測定の方法論も合わせて明らかにすることを 目的として行ったものである。論文はの4つの実験とその考察からなっている。 まず、大規模なササ塾野草地における放牧牛の栄養状態の特徴を血液性状から推定 し(第1章)、次に、実験規模のササ型野草地において牛の栄養摂取量とその季節変化 を測定することで主要な栄養素の過不足を定量している(第2章)。さらに、大規模な 放牧地での採食量の推定法を検討し(第3章)、この方法を用いて大規模なササ型野草 地における牛の栄養摂取量とその季節変化および採食行動を測定し、栄養摂取量の変 動要因について解析している(第4章)。 第1章では、大規模なササ型野草放牧地における牛の栄養状態の特徴を明らかにす るために、野草地、牧草地および混合草地に放牧した黒毛和種繁殖牛の血液性状から 栄養状態を季節ごと(入牧日・夏・秋)に推定し、比較、検討している。その結果、入 牧日および夏では、野草地に放牧した牛の栄養状態に目立った特徴はなかったが、秋 では野草地と混合草地の牛のエネルギー摂取量が蛋白質摂取量に比べて少なく、その
-31-摂取バランスが悪いことが示唆され、さらに野草地ではリンの摂取量が不足しやすい という特徴を明らかにしている。 第2章ではこの栄養の過不足を量的に明らかにするために、実験規模のササ型野草 地(1.8ba)において放牧牛の栄養摂取量を季節ごとに測定している。その結果、草 量が十分にある状況でも放牧牛の摂取量と消化率は秋に著しく低下し、エネルギー摂 取量は維持要求量の70%程度しか満たせないことを明らかとし、草量の不足が起こら ないと想定される大規模な野草地でも、放牧牛の栄養摂取量が不足する可能性を指摘 している。 前章で明らかになった栄養摂取量の不足が大規模な野草地でも起きるのかを検討す るために、まず第3章では、大規模な放牧地での牛の採食量推定法の確立を行ってい る。一般的に放牧家畜の採食量ほ排糞量と消化率から間接的に推定される。規模の′j、 さな放牧地では、排糞量の推定には不消化指示物質を1日2回、2週間程度投与する 方法が用いられる。しかし、この方法を大規模な放牧地で実施するには牛の発見と捕 獲にかかる労力が大きく、実施が困難である。これに代わる方法として、指示物質を1 回だけ投与して推定する単投与法が提案されているが、実証例がない。そこで、単投 与法の推定精度と実用性を実測値および従来の推定法と比較検討している。その結果、 単投与法は実際の採食量を過大推定する傾向にあり、従来の方法に比べ個体によって 推定誤差が大きくなりやすいが、大規模な放牧地での採食量推定に利用可能な精度を 有していると評価している。 第4章ではこの採食量推定法用いて、大規模なササ型野草放牧地で牛の採食量とそ の季節変化を定量するとともに、採食量の季節変化に影響する放牧牛の採食行動と採 食場所をGPS/GIS、およびICレコーダを用いた音声モニタリングにより測定してい る。その結果、大規模な野草地における放牧牛の採食量および消化率は夏から低下が 認められ、秋におけるエネルギー摂取量は要求量の50%程度しか満たしていないこと を明らかにしている。秋における牛の採食行動から、春に比べて牛の採食場所は広範 囲となり、比較的蛋白質含量の高いササを多く採食している事も明らかにしている。 しかし、この採食行動は鋸肖化性成分含量が高く採食効率が低いササの採食草を増加 させることとなり、これが栄養摂取量の低下をもたらすものと推察している。 以上の結果と実際の管理作業性を考慮して、林地や山地を利用した大規模なササ型 野草放牧地における栄養管理法として、1)補給する栄養量は繁殖牛の体重の低下とそ れに伴う繁殖成練の低下を緩和する程度を目標とし、2)夏頃からエネルギー主体の補 助飼料の給与量を多くする管理法が適切であることを提案している。 審 査 結 果 の 要 旨 我国における和牛肉生産は高度に集約化され、生産量が増加するとともに品質も向上した が、一方で飼料自給率の低下や生産コストの上昇、家畜福祉上の問題が無視できなくなってき ている。一繁殖牛を放牧飼養することは、それらの問題解決のための方策として実現性が高く、特 に林地や山地を利用した大規模な野草地での放牧飼養が有効であると考えられる。しかし、こ のような放牧地では牛群の栄養管理は難しい。それは、大規模な野草地では、栄養管矧こ不 可欠な採食量を測定することが難しいだけでなく、摂取する草の栄養価および栄養摂取量に影 響する牛の採食場所や採食時間などの採食行動、さらに軋これらの季節変化を測定すること も技術的に困難であることによる。本研究私大規模な野草放牧地における牛の栄養摂取量と
-32-その季節変化およびそれらに影響を与える採食行動を、測定の方法論も合わせて明らかにす ることを目的として行ったものである。論文は4つの実験とその考察からなっている。 実験1では、大規模なササ型野草放牧地における牛の栄養状態の特徴を明らかにするため に、野草地、牧草地および混合草地に放牧した黒毛和種繁殖牛の血液性状から栄養状態を季 蔀ごと(入牧日・夏・秋)に推定し、比較、検討している。その結果、入牧日および夏では、野草 地に放牧した牛の栄養状態に目立った特徴はないが、秋では野草地と混合草地の牛のエネル ギー摂取量が蛋白質摂取量に比べて少なく、その摂取バランスが悪く、また野草地ではリンの 摂取量が不足しやすいという特徴を明らかにしている。 実験2ではこの栄養の過不足を量的に明らかにするために、実験規模のササ型野草地(1.8 ha)において放牧牛の栄養摂取量を季節ごとに測定している。その結果、草量が十分にある状 況でも放牧牛の摂取量と消化率は秋に著しく低下し、エネルギー摂取量は維持要求量の70% 程度しか満たせないことを明らかにし、草量の不足が起こらないと想定される大規模な野草地で も、放牧牛の栄養摂取量が不足する可能性を指摘している。 実験2で明らかになった栄養摂取量の不足が大規模な野草地でも起きるのかを検討するた めに、まず実験3で、大規模な放牧地での牛の採食量推定法の確立を行っている。放牧家畜 の採食量推定は一般的に不消化指示物質を1日2回、2週間程度投与する方法が用いられる が、この方法を大規模な放牧地で実施するには牛の発見と捕獲にかかる労力が大きく、実施が 困難である。これに代わる方法として、指示物質を1回だけ投与して推定する単投与法が提案 されているが、実証例がない。そこで、単投与法の推定精度と実用性を実測値および従来の推 定法と比較検討している。その結果、単投与法は実際の採食量を過大推定する傾向にあり、従 来の方法に比べ個体によって推定誤差が大きくなりやすいが、大規模な放牧地での採食量推 定に利用可能な精度があると評価している。 第4章ではこの採食量推定法用いて、大規模なササ型野草放牧地で牛の採食量とその季節 変化を定量するとともに、採食量の季節変化に影響する放牧牛の採食行動と採食場所を GPS/GIS、および音声モニタリングにより測定している。その結果、大規模な野草地における放 牧牛の採食量および消化率は夏から低下が認められ、秋におけるエネルギー摂取量は要求量 の50%程度しか満たしていないことを明らかにしている。秋における牛の採食行動から、春に比 べて牛の採食場所は広範囲となり、比較的蛋白質含量の高いササを多く採食している事も明ら かにしている。しかし、この採食行動は軒肖化性成分含量が高く採食効率が低いササの採食量 を増加させることとなり、これが栄養摂取量の低下をもたらすものと推察している。 以上の結果と実際の管理作業性を考慮して、林地や山地を利用した大規模なササ型野草放 牧地における栄養管理法として、1)補給する栄養量は繁殖牛の体重の低下とそれに伴う繁殖 成横の低下を緩和する程度を目標とし、2)夏頃からエネルギー主体の補助飼料の給与量を多 くする管理法が適切であることを提案している。 以上の研究結果は大規模な野草放牧地における放牧牛の栄養状態を、季節を通して把握し たもので、放牧による肉用牛生産に寄与すること大である。よって、審査委具全員一致で本論 文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学位論文として十分価値あるものと認めた。 基礎となる学術論文 1.Seasonalvariationofnutrientintakeanddigestibilityofforageinbeefcowsgrazedona dtvarfbamboo(タIeiobhzstusaTgenteOStriatwfgZaber)dominantpasture・GrasslandScienc 53:69-77.2007・Nakan0,M・,Yayota,M・,Karasima,J・Ohtani,S・ 2.Evaluationofthesinglepulsedoserrrethodfbrestimatingherbageintakebycattleinlarge scale丘ee-ranglngSyStem・GrasslandScience・2007・Nakan0,M・,Yhyota・M・,Ohtani,S・ (2007年11月18日受理)