Title
アンジオテンシンII受容体拮抗薬の心不全に対する有効性
の研究( 内容の要旨 )
Author(s)
清水, 美希
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 甲第203号
Issue Date
2006-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/3142
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 (13) 清 水 美 希(埼玉県) 博士(獣医) 獣医博甲第203号 平成18年3月13日 学位規則第3条第1項該当 連合獣医学研究科 獣医学専攻 東京農工大学 アンジオテンシンⅡ受容体桔抗薬の心不全に対する有効 性の研究 主査 東京農工大学 副査 帯広畜産大学 副査 岩 手 大 学 副査 東京農工大学 副査 岐阜大学 久 夫 男 郎 明 義 明 晴 利 息 根 田 林 崎 藤 山 山 小 岩 工 授 授 授 授 授 教 教 教 教 教 論 文 の 内 容 の 要 旨 ァンジオテンシンⅠⅠ(AngII)受容体括抗薬は、キマーゼにより産生されたAngIIの作 用も阻害するため、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬よりも心不全に対する治療 薬として有効性が期待されている。しかし、実際には、必ずしも期待通りの結果が得られ ているとはいえない。その理由として、キマーゼが有する心筋線維化作用やA喝ⅠⅠ受容体 括抗薬の投与期間が影響しているのではないかと考えた。そこで本研究は、AngII受容体 括抗薬を投与した場合のキマーゼの変化と、心筋線維化に対する作用を明らかにし、本藻 剤の心不全に対する効果について検討した。 第1章では、キマーゼが拡張型心筋症ハムスターの心筋線維化に関与しているかを検討 した。その結果、33適齢の拡張型心筋症ハムスターは、拡張型心筋病変と顕著な心筋線維 化病変を示した。そして、心臓組織中の阜CE活性に変化がみられなかったのに対し、キ マーゼ様活性が増加した。このことから、ACEよりもキマーゼが拡張型心筋症ハムスター の心筋線維化を発現させていることが示唆された。 第2章では、心不全に対する治療を想定して、AngIIタイプ1(ATl)受容体括抗薬を 本モデルに長期投与し、キマーゼの変化と心筋線維化に対する作用、およびその用量依存 性について検討した。その結果、ACE活性は中用量投与により増加し、キマーゼ様活性は 投与量にかかわらず増加した。心筋の線維化は低用量投与では変化しなかったのに対し、 中および高用量投与により増加した。このことから、ATl受容体括抗薬を長期投与する と、キマーゼが投与量にかかわらず増加することが示された○そして、この増加はAngII
-244-の作用が長期にわたって阻害されたことに対する二次的な反応であることが推察された。 また、AngIIの阻害程度により、キマーゼが心筋問質中に分泌されることが推察され、Ang IIの作用を介さない機序により心筋の線維化に関与したことが考えられた。 第3章では、キマーゼによる心筋線維化機序を明らかにすることを目的とした。そこで、 キマーゼにより産生され、心臓組織においては心肥大や心筋線維化作用を持つエンドセリ ン(ET-1)の関与について検討した。その結果、ET・1はATl受容体括抗薬の投与により 低下した。▼このことから、キマーゼによる心筋線維化機序に、ET・1が関与していないこ とが示唆された。そして、AngIIによるET・1の産生刺激がATl受容体括抗薬により抑 制されたため、キマーゼはその産生機序において作用できなかったことが推察された。 第4章では、キマーゼによる二次的な反応を少なくするために、ATl受容体括抗薬の 投与期間をより短期の4週間に設定した。そして、キマーゼの変化と心筋線維化に対する 作用について検討した。その結果、非病態モデル(正常コントロールハムスター)に対し てATl受容体括抗薬を投与した場合は、ACE/キマーゼ様活性、および心筋線姓化に変化 はみられなかった。これに対し、拡張型心筋症ハムスターに投与した場合はキマーゼ様活 性が増加した。一方、心筋線維化は抑制された。このことから、AngIIの作用が抑制され ると、短期投与の場合でもキマーゼが増加することが示された。しかし、短期投与の場合 は、キマーゼが心筋問質中に分泌されないことが推察された。したがって、キマーゼによ る心筋線維化機序よりも、ATl受容体括抗薬による心筋線維化抑制作用がみられたことが 推察された。 本研究では、キマーゼによるAngII産生機序を持つハムスターに対してATl受容体括 抗薬を投与すると、キマーゼが増加することが明らかとなった。特に、AngII受容体括抗 薬を単独で長期にわたって投与した場合は、キマーゼの二次的な増加が心筋線維化をもた らすことが推察された。しかし、単独で短期投与を行った場合は、キマーゼは増加してい るものの心筋線維化は抑制され、心筋線線化抑制の観点では、AngII受容体括抗薬の効果 が得られたといえる。本研究でも投与期間によりその効果に大きな差が認められたように、 ATl受容体括抗薬はその使用方法によっても有効性に違いがでる薬剤であると考えられ る。今後は、ATl受容体括抗薬によるキマーゼの増加およびキマーゼによる心筋線維化機 序を明らかにすることにより、本薬剤の有効な使用法に関する指針が得られることが期待 される。 審 査 結 果 の 要 旨 アンジオテンシンⅠⅠ(AngII)受容体桔抗薬は、キマーゼにより産生されたAngII の作用も阻害するため、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬よりも心不全に 対する治療薬として有効性が期待されている。しかし、実際には、必ずしも期待通
りの結果が得られているとはいえない。その理由として、キマーゼが有する心筋線
維化作用や投与期間が影響しているのではないかと考えた。そこで本研究は、Ang.ⅠⅠ 受容体括抗薬を投与した場合のキマーゼの変化と、心筋線維化に対する作用を明らかにし、.本薬剤の心不全に対する効果について検討した。
第1章では、キマーゼが拡張型心筋症ハムスターの心筋線維化発現に関与しているかを検討したところ、心臓組織中のACE活性に変化がみられなかったのに対し、 キマーゼ様活性が増加した。このことから、ACEよりもキマーゼが拡張型心筋症ハ ムスターの心筋線維化を発現させているこ-とが示唆された。 第2章では、心不全に対する治療を想定し、.AngIIタイプ1(ATl)受容体括抗
薬を本モデルに長期投与し、キマーゼの変化と心筋線椎化に対する作風、およびそ
の用量依存性について検討した。その結果、ACE活性は中用量投与により増加し、 キマーゼ様活性は投与量にかかわらず増加した。心筋の線椎化は低用量投与で変化 しなかったのに対し、中および高用量投与により増加した。このことから、ATl 受容体括抗薬を長期投与すると、キマーゼが投与量にかかわらず増加することが示 された。そして、この増加はAngIIの作用が長期にわたって阻害されたことに対する二次的な反応であることが推察された。また、AngIIの阻害程度によりキマーゼ
が心筋問質中に分泌されることが推察され、AngIIの作用を介さない機序により心 筋の線純化に関与したことが考えられた。 第3章では、キマーゼによる心筋線推化機序を明らかにすることを目的として、キマーゼにより産生され、心筋線推化に関与しているエンドセリン(ETl)につい
て検討した。その結果、ET-1はATl受容体括抗薬の投与により低下したことから、 キマーゼによる心筋線維化機序に、ET-1が関与していないことが示唆された。 第4、章では、キマーゼによる二次的な反応を少なくするために、ATl受容体括 抗薬の投与期間をより短期の4週間に設定し、キマーゼの変化と心筋線維化に対す る作用について検討した。その結果、キマーゼ様活性は増加したが、心筋線椎化は 抑制された。このことから、AngIIの作用が抑制されると、短期投与の場合でもキ マーゼが増加することが示された。しかし、短期投与の場合は、キマーゼが心筋問 質中に分泌されないことが推察され、キマーゼによる心筋線純化機序よりも、ATl 受容体括抗薬による心筋線維化抑制作用がみられたことが推察された。 本研究では、キマーゼによるAngII産生機序を持つハムスターに対してATl受 容体括抗薬を投与すると、キマーゼが増加することが明らかとなった。特に、AngII受容体括抗薬を単独で長期にわたって投与した場合は、キマーゼの二次的な増加が
心筋線椎化をもたらすことが推察された。しかし、単独で短期投与を行った場合は、キマーゼは増加しているものの心筋線維化は抑制され、心筋線維化抑制の観点でち享、
AngII受容体括抗薬の効果が得られた。本研究では投与期間によりその効果に大き な差が認められたように、ATl受容体括抗薬はその使用方法によっても有効性に違 いがでる薬剤であると考えられた。今後は、ATl受容体結抗薬によるキマーゼの増 加およびキマーゼによる心筋線推化機序を明らかにすることにより、本薬剤の有効 な使用法に関する指針が得られることが期待される。以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究科の
学位論文として十分価値があると認めた。 -246一基礎となる学術論文 1) 題 目:E飽ctofangiotensinIItypelreceptorblockeroncardia-c angiotensin・COnVertingenzymeandchymase-1ikeactivities, andcardiacfibrosi8incardiomyopathichamsters 著 者 名:Shimizu,M.,Tanaka,R.,Uchida,M.,0rito,K.,Shimamura,S. and%mane,Y 学術雑誌名:TheJournalofⅥterinaryMedicalScience 巻・号・貢・発行年:68(3):,2006 2)題 目:CardiacremodelmgandangiotensinII-formingenzyme activityoftheleftventricleinhamsterswithchronicpre$Sure OVerloadinducedbyascendingaorticstenosis 著 者 名:Shimizu,M.,Tanaka,R.,Fukuyama,T.,Aoki,R.,Orito,K. and%mane,Y 学術雑誌名:TheJournalofV6terinaryMedicalScience 巻・号・貫・発行年:68(3):,2006 既発表学術論文 1)題 目:経皮的バルーン弁口拡大術を行った大動脈弁下狭窄症の犬の2例 著 者 名:小林正行,町田乳星克一札平尾秀博,清水美希,島村俊介, 秋山緑,田中綾,丸尾幸阿山根義久 学術雑誌名:動物の循環器 巻・号・貫・発行年:35(1):58・67,2002
.2)寧
日:全身性転移がみられた大の心底部大動脈小体腫瘍の1例 著 者 名:清水美乾田中綾,丸尾幸嵐山根義久,桐原信之,町田登 学術雑誌名:動物の循環器巻・号・貢・発行年:35(2):113-118,20d2
,3) 題 目:心室中隔欠損症の開JL、術後に第二度房室ブロックが消失した大 の1治験例 著 者 名:星克一敗永島由紀子,平尾秀鳳小林正行清水美軋 秋山織田中晩丸尾幸嗣,山根義久 学術雑誌名:動物臨床医学 巻・号・貢・発行年:11(2):93・97,20024)題 目:人工心肺装置による体外循環下関心術によって根治した大の右 室二腔症の1例一 著、者 名:清水美乳永島由紀子,星克一敗平尾秀博ノ」、林正行, 田中綾,丸尾幸嗣,山根義久 学術雑誌名:動物臨床医学 巻・号・頁・発行年:11(3):137・142,2002 5)題 目:犬の特発性腸リンパ管拡張症の2例 著 者 名:清水美泉田中綾,星寛一恥平尾秀鳳小林正行,丸尾幸吼 岩崎利郎,町田登,山根義久 学術雑誌名:動物臨床医学 巻・号・貫・発行年:12(1):13・17,2003 6)題 目‥ Surgicalcorrectionofcortriatriatumdexterinadogunder extracorporealcirculation 著 者 名:Tanaka,R.,Hoshi,K.,Shimi2;u,M.,Hirao,H.,Akiyama,M・, Kobayashi,M.,Machida,N.,Maruo,K.andYhmane,Y 学術雑誌名:JournalofSmallAnimalPractice 巻・号・貢・発行年:44(8):370・373,2003 7)題 目:Implantationofpermanenttransvenousendocardial pacemakerinadogwithatrioventricularblock 著 者 名‥ Kobayashi,M.,Hoshi,K.,Hirao,H.,Shimi2:u,M・,Shimamura, S.,Akiyama,M..Tanaka,R.,Maruo,K:andYamane,Y 学術雑誌名:TheJournalofVbterinaryMedicalScience 巻・号・頁・発行年:65(10):113Ⅰ・1134,2003 8)題 目:僧帽弁閉鎖不全症に併発した左心房破裂に外科的修復術を行っ た犬の1例 著 者 名:清水美軋田中 観星克一取平尾秀鳳小林正行,丸尾幸軌 桐原信之,山根義久 学術雑誌名:動物臨床医学 巻・号・貢・発行年:12(2):105・108,2003 .9)題 目:心不全モデル犬における持続性アンジオテンシンⅡ受容体括抗 薬カンデサルタン・シレキセチル(TCVl16)の血行動態への影響 著 者 名:小出和風小出由起子,長揮裕,佐藤秀軌長久アユサ, 片岡智凰坂井尚子1高島一昭,清水美象山根義久 学術雑誌名:動物臨床医学 巻・号・貢・発行年:12(3):131・139,2003
-248-10)題 目:β遮断薬(メトプロロール)の投与で長期観察を行った僧帽弁閉 鎖不全症の犬の1例 著 者 名:小林正行,星克一郎,平尾秀博,清水美希,島村俊介,秋山織 田中綾,丸尾幸嗣,山根義久 学術雑誌名:動物臨床医学 巻・号・貢・発行年:12(3):151・156,2003 11)題 目:大動脈弁下部狭窄の線推輪上に認められた嚢状物により心室中 隔欠損症の短絡の消失がみられた大の1例 著 者 名:島村俊介,高島一昭,星克一郎,平尾秀鳳′J、林正行清水美希, 秋山緑,田中綾,丸尾幸軌山根義久 学術雑誌名:動物臨床医学 巻・号・貢・発行年:12(3):161-165,2003 12)題 目:PDAコイルオクルージョンが実施できず開胸下での結染術を実 施した大の2例 著 者 名:田中綾,平尾秀博,清水美希,小林正行,島村俊介,町田登, 丸尾幸嗣,山根義久 学術雑誌名:動物の循環器 巻・号・貫・発行年:36(1):27・35.2003 13)題 目:僧帽弁閉鎖不全症モデル犬に対するβ速断薬(メトプロロール) の作用効果の検討 著 者 名:小林正行,渡辺清見平尾秀博,清水美希島村俊介田中綾, 山根義久 学術雑誌名:動物の循環器 巻・号・貢・発行年:36(2):66・78,2003 14)題 目:Surgicalcorrectionofsubvalvularaorticstenosisusing cardiopulmonan,bypassinadog 著 者 名‥ Hirao,H.,Hoshi,K.,Kobayashi,M.,Shimizu,M.,Shimamura, S.,Tanaka,R.,Machida,N.,Maru0,K.and%mane,Y 学術雑誌名:TheJournalofV占terinaryMedicalScience 巻・号・頁・発行年:66(5):559・562】2004 15)題 目:甲状腺癌摘出後、血中チロキシン、カルシウム値をコントロール できた大の1例 著 者 名:馬橋華人上野芳軌島村俊介,清水美希′ト林正行平尾秀鳳 田中艶丸尾幸軌町田登,山根義久 学術雑誌名:動物臨床医学 巻・号・頁・発行年:13(2):71-75ま2004
16) 題 目:Percutaneoustranscathetercoilembolizationofaventricular SePtaldefectinadog 著 者 名:Shimi21u,M.,Tanaka,R.,Hirao,H.,Kobayashi,M., Shimamura!S.,Maruo,K.and「ねmane,Y 学術雑誌名:TheJournalofAmericanVbterinaryMedicalAssociation 巻・号・頁・発行年:226(1)‥69・72,2005 17)暦 日:Anexperimentalstudyofapico・aOrticvalvedconduit仏AVC) forsurgicaltreatmentofaorticstenosisindogs 著 者 名:Hirao,H.,Inoue,T.,Hoshi,K.,Eobayashi,M.,Shimamura,S., Shimizu,M.,Tanaka,R,,Takashima,K.,Mori,Y,Noish汰i,Y and%mane,Y 学術雑誌名:TheJournalofV6terinaryMedicalScience 巻・号・頁・発行年:67(4):357-362,2005 18)題 目:MegaesophaguswascomplicatedwithBiurothI gastroduodenostomyinacat 著 者 名:Shimamura,S.,Shimizu;M.,Kobayashi,M.,Hirao,Hリ Tanaka,R.and%mane,Y 学術雑誌名:TheJournalofⅥterinaryMedicalScience 巻・号・頁・発行年:67(9):935-937,2005 19)題 目:犬の僧帽弁閉鎖不全症による慢性心不全に対するβ遮断薬(メト プロロール)の有効性の検討 著 者 名:′J、林正行,星克一恥平尾秀風情水美希,島村俊介,田中綾, 山根義久 学術雑誌名:動物臨床医学 巻・号・貫・発行年:14(2):51・57,2005