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原発性肝臓癌

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Academic year: 2021

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(1)

原 磯 性 肝 臓 癌

教授 助 手

矢佐

部藤

   清述

榮  子筆記

  患者。男六十歳、職は大工。 一、血族。詳しく調べてみたが、患者の血族中に癌腫と結核に罹たものがないやうである。 二、既往暦。小見時代は健康で麻疹も種痘も経過した。二十八歳の時に結婚し、子供は二人置る。 五十三歳頃に大きな戸棚の下敷となったことがある。其汐時前胸部に痛があり深呼吸や咳漱もできない位で あった。併し加療一ケ月位で治癒した。 五十九歳の時帥ち一ケ年前に右前胸部に痛を訴へ一週山窟は寝返も自由でない程であったが、熟も無い其當 時右の肋膜炎と診断せられ、加療一ケ月位で全治した。  患者は花柳病に罹たことが無い。日本酒を好み毎日七一入合位嗜んでみた。  昭和五年一月中旬より原因がなく右胸痛が起り咳漱や仕事の際にも増悪した。爲に左胸を下にして寝るこ とができない。之と同時に胃部に膨満及び緊張の感があり、胃の所が硬く成てるるのを氣附いた、次第に食    佐藤11原中性肝臓癌      九三

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   佐藤目原襲性肝臓癌      九四 慾も減じ、他人から痩たと言はれた。 現症。常格は中等、無氣力のやうに見え、皮膚は蒼白、黄疸も浮腫も無く、榮養は全燈衰へてるる。 頭部を槍するに特記する病攣が無い。胸部を見るに、右側の前胸部の下部が百々膨隆し居るも、呼吸蓮動に は⋮愛化がなく唯、此一帯は呼吸音が弱い。心音に激ては特記することが無い。 腹部は坐位に於て一般に膨虚し.麟窩より劒尖に向って恐諭せる艀脈がある。鯛二上、上腹部には抵抗があ るも他の部には異常を認めない。 胃部を歴すると歴痛があるが、腫瘍などは燭れない。 肝臓の下縁は右側乳線の所で肋骨弓を越えること五糎位、質は硬く、備荒葉の聴許部に小指頭から栂指頭大 の硬い隆起物を鯛れる。併し歴痛もない。謄嚢附近及び脾臓には特記することがない。 尿はゼ!ル様で痕跡の蛋自質と輕微のインヂカン反慮がある、されど膿汁は無い。 便には胴鐘卵と鞭鹸卵があるが、潜在出血を謹明しない。 血液⋮赤血球二三〇・○自血球二五〇〇・W氏反鷹は陰性、四一ワルド・ボァス氏朝食試験によると遊離盤酸 ○.〇四%、総酸度は二五、乳酸雄鷹陰性、粘液広々多量、血液は無い。  このやうな臨前上の所見であるが其内必要なことを潅げると︵−︶患者は酒客である、︵2︶年齢も相當に 老いてみる、︵3︶榮養障碍があり、食慾不振、︵4︶無熱であb︵5︶胃には癌の症候が不明で却て肝臓に凸凹 ある腫大があることから原登性肝臓癌を考ふ乏き病症である。 併し黄疸も腹水も土ハに無く叉、左鎖骨上窩に腫大した淋巴腺も無い、それ故、此患者は未だ門脈と血道を腿 併しない程度の肝臓癌と診断されたのであった。

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筒、本病に分葉肝を考なければならないが、脾腫も無く叉、W反鷹は陰性である。 病症の経過。肝臓は次第に大さを増し、其下縁は贋部に達し、肝臓部に疹痛を訴へ、胃痛嘔吐などがめり、       コ つ       つ ぬ 五月頃より爾⋮下肢に浮腫が現はれ、六月には吐血があった、次第に腹水も加はり、輕度の黄疸も現はれ、遽 に衰弱し八月八日に死亡した。   病理解剖。 外景。忌事衰へたる男屍。爾下肢に輕度の俘腫があり、腹部は多少膨満し、波動が鰯れ、杢身に輕度の黄疸 がある。 内景。腹腔内には約四〇〇〇蛭の帯黄色の腹水がある。胃及腸管は牧縮の歌態にある。 大網膜は萎縮し、癒着がない。     つ  へ  つ  あ  へ  も  つ  も  う  ヘ  ヘ  ヘ  へ  あ    ゐ  ヘ  マ ヘ  へ  あ  ら  ぬ  む  ヘ  マ  へ  あ  ぬ  り  つ 胸部では右肋膜は大部分繊維性に癒着し、生前右胸痛があったことを説明する。左側は髄虫に癒着があった 併し患者は左胸痛は訴へてるなかった。 爾肺には水腫、血液沈墜などが主で、氣三枝加多見もある、併し結核竈はない。 心臓には褐色萎縮がある外著明な病憂はない。 腹部、では胃粘膜に多藪の出血性魔欄がある、腫瘍はない。 肝臓。全等穫は二四糎で固葉の矢壷穫は一五糎左葉は十二糎、右葉の高さは一二糎、左葉の高さは五糎で、 直筆として腫大はあるが著明でない。表面は凹凸壷口で硬度も増加してみる。割面を見ると下葉血膿は癌に 憂り殊に中心部に艶紅竈と思はる㌧壊死並に出血部がある。左葉内には多欺の自家轄移結節が見える。        ら 癌腫の増殖につれて肝組織は遠心的に厘排されたやうに見えるが、この肝組織を槍するに常態とは異なり間    佐藤μ原螢性肝臓癌      九五

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   佐噛腿μ原登性肝曲臓癌       乱乃六  へ つ や つ ゐ う つ ら っ あドら つ マ つ つ つ つ み つ 質の溺荊曼性増殖による硬礎性の病繍久がある。 この結締織の増殖につれ、肝小葉は假性小葉に代てるるが、レンネック氏肝硬愛の像がなく、寧ろ急性、悪 急性黄色肝萎縮を経過した像に一致してみる。 謄嚢や総輸謄管には憂化がない。 脾臓は一〇〇位琵で欝血像がある。 爾側腎臓には問質の増殖と動脈硬墾による硬化竈がある。 食道の下端には静脈瘤がある。 其他の臓器には特記することはない。  本例は黄疸も腹水も共に出現しない前に臨林上、肝臓癌と診断されたのである、解剖上、この癌腫は右葉 の申央部から原吝し、浸潤性の登達を螢むと共に門脈や静脈によりて自家福移を起してみたが、他の臓器に は轄移結節,がない。  さて肝臓から原譜する癌腫には二種類ある。郎ち肝臓細胞から瑳生するものと謄管上皮細胞からできたも のである。本例は原登性丁丁質細胞癌帥ち山並博士の名指されたへバトーマである。日常から申すと實質性 肝癌の方が頻度が多い。怒鷺Nの百十六例の肝臓癌中潜質性肝癌は九九に腐し、愚管癌は一七の割合であっ た。貴家博士が東大病理學教室に於て調査せる肝癌百十例昔話質性肝癌は八三例帥ち七五・四五%に閉し膿 管癌二七例即ち二四・五五%である。 叉肝臓癌の登育する形が、結節性に來るものが最も多く、肝臓全膿が彌蔓性に大くなることは少ない。 叉、腫瘍の位置は右葉に多いことは一般に認められてみる。

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衣に肝臓癌は必ず腫大するものと限てるない。殊に肝硬凝を有して居るものは臨林上、肝腫が著明でないこ とがある。本腰は肝硬礎と肝癌とを併恥してるるが、これは肝癌の爲めに績登的に肝硬愛を起したものか、 或は初めに肝硬獲があって、それから肝癌が磯生したものが或は導者が偶然併即したものであるかの疑議が ある。  §馬の八十四例中硬愛を有するものは八五.四%で之を溶くもの一四。六%であっπ。肝硬礎の内肥大性 肝硬獲は僅かに一一・四%であるのみにて他は萎縮性肝硬憂は八八⊥ハ%であった。東大病理學教室に於て貴 家博士が調査した所によると、肝喜憂症と肝癌とは六六・七%に見られ、就申、實質性肝癌に於ては七六。五 %である。 山極博士は我國に於て肝女鑑癌が比較的多きは肝硬墾が他國より多き爲なりと唱道せられた。 兎角、我國に於て實験せられた肝實質癌は肝硬墾が最初にあって、それから秀麗したものが多い、それ故こ の肝総掘の原因となるものには日本住血吸贔、肝蛭、欝血、徴毒、耳石⋮等がある、就中、酒精の申毒によ る肝硬獲は我が國には多い。 本葺は酒精によりて肝硬骨が起りつ\ある問にこの刺戟が肝細胞に群肝犀鎚風昌。8暮αω①<霞帥巳。鐸ロσqを起さ しめたと癖馬する。叉、本例には脾腫と云ふ程でないが多少腫大し欝血の像があった。一般に肝硬礎を件て るる肝癌には約九割の脾腫がある。 本妻の末期に輕度の黄疸と腹水が出現したのは肝臓内に於ける膿管の閉塞、門脈枝の慶迫或は閉塞が原因で あることは明である。 次に肝臓の表面が所々横隔膜と癒着し肋膜が横隔膜と癒着し、或は脾臓附近の大網膜は腹壁と癒着した所が    佐藤H・心墨畦↑肝臓癌       九七

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   佐藤”原登性肝臓癌      九入 あった品等は側枝血行によるもので、筒、食道下部に静脈瘤のあることは肝硬墾症に必登の所見で、之から 暴出して死亡した例もある。本例も死ぬニケ月評に吐血があった、恐らく此部分あらであろう、荷本尊の末 期に胃に小なる出血性魔欄も、門脈枝に欝血があった結果のやうである。 併し本意の謄附近に蛇行駿の静脈の怒張はなかったが、上腹部.には絵程以前から欝欝がよく見えてみた。 而して患者は頻と右胸部の無痛を訴へてるたが、急性の肋膜炎の病竃は無く、慢性繊維性癒着性の炎症であ った。 之は恐く肝癌を俘ふ肝尾州による肝内血行調節の蝕めに血行性癒着嘗嬉αω。く零再診︸誘電晩の刺戟的症候のや うにも解許せられる。兎角、肝癌と診漸せられた當時に腹水が不明であったのは肝内並に肝外の血行調節が 相當に行はれてるたと考へたい。 終りに本例に於ける門脈枝の循環障碍は次のやうに調節されてみたQ 一、横隔膜と爾肋膜の癒着と肺肋膜と肋骨肋膜の癒着 之は門脈の血行が肺循環に入りて心臓に選るものが あり叉、奇様静脈、牛奇様静脈を経て上室静脈に注ぐものがある。 二、大綱膜が脾臓の一部と癒着し且つ膿壁にも癒着してみる故に門脈血は腹壁静脈を通りて腋窩艀脈へ連絡 するものがある。 三、食道静脈は門脈と吻合して、この部から平様静脈、牛落様艀脈に連結してみる。 四、本例に於ける心嚢液は増加し血性であった、之は横隔膜の癒着から門脈と間接の吻合によるもの\やう である。よく肝癌に於て胸腔に漿液或は血性の欝欝が瀦思することがあるが、之は軍純の肋膜炎ではな︽、 …門 ャとの間接的吻合によることがある。

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