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著作物再販制度の見直しの評価 (その4) : 見直しのスタンス (中)

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―― 見直 しのスタンス (中)十 一 I は じめ に 著作物再 販制度 の見直 しの ス タンスが問題 に な る局面 は, 二 つ あ る。一 つ は, 見 直 しの枠 の有 無 に係 る局 面 で あ り, そ こでは, 見 直 しの ス タンスが外 的 な制 約 を受けるか否かが問題点 となる。そしてもう一つは,内 容に係る局面であり, それには,制 度に関わる問題点 と商品特性に関わる問題点がある。 見直 しの枠の有無に係 る局面 と,内 容に係 る局面の問題点のうち制度に関わ る問題点については,す でに検討 を加えた。そこで,見 直 しのスタンスの問題 としては,商 品特性に関わる問題点について検討することだけが,残 されたこ とになる。検討課題 とな り得 るのは,具 体的には,次 の″点である。①著作物の 商品特性それ自体 をめ ぐる諸問題。②著作物の内容の評4面と絡めた見直 し議論 の展開の是非。 ① は,著 作物が文化 に関わる財 としての商品特性 を有す るか否か,有 す ると して競争政策 との調整はいかにあるべ きか,に 関わっている。他方,② は,特 定的に名指 しをした個別 の著作物が文化的使命 を果 た していない との立 ち入っ た内容評価 と絡めて,再 販制度の見直 しを展開す ることが是認 され るか否かの 問題 であ る。 この うち,② に関 しては,特 定の著作物が文化的使命 を果 していないのでは ないか との疑念 を抱 く論者 も,そ の ことに絡めて再販制度の見直 しを論 じるこ 1)拙 稿 「著作物再販制度の見直 しの評価 (その 3)一 ― 見直 しのスタンス (上)一 一」彦 根論議310号 1頁 (1998年)参 照。 作 耕 田 内

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42 彦 根論叢 第 313号 とには極めて慎重であるように思われ,取 り立てて問題視す る必要はなP。 そ

こで,① を取り上げて検討することだけが,実 際の課題として残されているこ

とに な る。 もっ とも,本 稿 では,そ の検討に先立 ち,商 品的価値 (価格)と 非商品的価 値 の対立が著作物再販制度の見直 し議論において どのように発現 しているか, その様相 を明 らかにす るとともに若子の検討 を加 えることにす る。 この検討は, 著作物の商品特性 それ 自体 をめ ぐる諸問題の検討に とって,意 味 を持 って くる。 叙述は,以 下の順序 による。 まず,商 品的価値 (価格)と 非商品的価値 (文 化)の 対立の構 図 を明 らかにす るとともに,調 整のあ り得 る姿 を探 る。次に, 「政府規制等 と競争政策に関す る研究会 再 販問題検討小委員会」が1995年7 月に公表 した 「再販適用 除外 が認め られ る著作物 の取扱 いにつ いて (中間報 告)」 (以下,「中間報告」 とい う。)が ,こ の対立の関わ りでどういったスタン スを採 っているのか を明 らかにす る。そ して最後に,若 子の検討 を通 じて,「中 間報告」のスタンスの問題性 を明 白にす る。 2)例 えば,山 田昭雄 「経済取引局取引部の今年の課題」公正取引555号12,13頁 (1997年) は,次 の ように叙述す る。「関係業界が,マ ス コ ミ各団体 であ りますので,再 販制度維持 の意見が強調 されてマス コ ミ報道 されてお りますが (最近 になって,廃 止あるいは見直 し の意見 も掲載 されてい るようになって まい りましたが),政 府規制緩和 ・撤廃や他 の独禁 法適用 除外制度の存置の是非の議論 と同様 に,購 読者や利用者である国民に とって どの様 な仕組 みが最 も適切 であるのか,冷 静 な議論が深 まることを期待 します。」 また,金 子晃「著作物再販の課題一― 中間報告の真意」RIRI流 通産業28巻 4号 1頁 (1996 年)参 照。 さらには,岸 井大太郎 ほか 『経 済法 〔第 2版 〕』268頁 (稗貫俊文執筆)(1998 年)と 稗 貫俊文 「著作物の再販売価格維持行為適用除外 の意義 の再検討」公正取引540号 23頁 (1995年)の 論述の仕方 を比較対照 されたい。 3)な お,本 稿 を含めた一連の小論 の脱稿 が遅 々 としてい るうちに,「再販問題検討のため の政府規制等 と競争政策 に関す る研究会」は1998年1月 に 「著作物再販適用除外制度の取 扱 いにつ いて」 を公表 し,公 取委は 3月 に 「著作物再販制度の取 り扱いについて」 を公表 した。一連の小論 は もはや時機 を失 しない,公 表の意味は乏 しくなった とも考 えられ るが, 気 を取 り直 して継続す ることとし,筆 者の問題関心 を開陳 したい。

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H 商 品 的価 値 ( 価格 ) と 非 商 品 的価 値 ( 文化 ) の 対 立 の構 図 と調 整 の あ り得 る姿 まず,箕 輪成男教授の見解 と伊従寛教授の見解 を紹介す ることを通 じて,対 立の構図 を明 らかにす る。 その後,対 立の調整のあ り得 る姿 を探 る。 1.箕 輪教授の見解 箕輪成男 「再販制論議の トポロジー」RIRI流 通産業28巻12号17頁 (1996年) は,業 界 と公取委の対立軸の一つ として 「価値 と価格」を挙げ,次 のように叙 つ 述す る (17頁)。 「業界が 出版物 は文化財 であ る とい うとき,そ れは出版物 の価値』に着 目 しているのであ り,こ れに対 して公取委が問題 として取上げ るのは市場 におけ る出版物の 『4面格』 なのである。 この ように一般に商品には価値 と価格の両面 があって,互 いに不即不離の関係 にあるが,困 ったことに,経 済学はこの価値 と価格 を統一的に扱 うことには成功 していないのである。 価値 は主観 の世界であ り,価 格 は市場 の存在 を前提に した客観 の世界である。 出版物の文化財性 を強調す る業界人は出版物の主観的価値 を論 じているのであ り,一 方公取委は価格 とい う客観的世界に限定 して論 じようとしているのだ。 だか ら両者の議論はその ままではかみ合 わない,か み合 わせ るためには業者側 が価値の世界の話 をひ とまず置いて,そ うした文化財 としての商品特性 をもっ た出版物の市場 におけ る価格問題 に降 りて くるか,公 取委が価格の他 に出版物 には価値の世界があ り,出 版物の生命はそこにこそあることに思いを致 し,市 4)箕 輪教授は,他 に,対 立軸 として,「文化 と文明」,「協力 と競争」を挙げ,次 のように 叙述す る。前者に関 しては, 日本 という地理的 ・文化的・歴史的 ・社会的背景の中で生ま れてきた出版流通に,独 禁法の貫徹 を主張す る公取委の立場は,「独禁法 とい うアメリカ 生れの法律 をあたか も普通的な価値 をもつ文明 として,そ の完全実施 を求めているのに外 ならない」 と叙述する (17-18頁)。他方,後 者に関 しては,「協力 といい競争 というのは それぞれ 〔日本 と欧米〕の文化の差であ り文化は等価であるという,文 化相対主義の立場 か らはいずれが正,い ずれが邪 というものではないのである」 と叙述する (18頁)。これ らの対立軸 も本稿の展開上無関係 とはいえないが,深 入 りは しない。

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44 彦 根論叢 第 313号 場 経 済万能 の資本 主義 的経済か ら資本 主義 的経済 のあ り方 その もの を反省 す る, 経 済倫理学 な ど近代経 済学 の枠 をこえた領域 に足 をふみ いれ るこ とが必要 であ る。」 2.伊 従教 授 の見解 伊 従 寛 『出版再 販―― 書籍 ・雑 誌 ・新 聞の将来 は ?』 (1996年)は ,「長期 的 D な視野か ら競争 を考 える」 とい う見出 しの下 に,次 の ように叙述す る (127-28頁)。 「中間報告は,出 版物の特殊性や,文 化政策的見地か らの考慮 を否定 し,経 済効率性の貫徹 を主眼 としています。 この こ とを独 占禁止法の見地か らどのように考 えたらよいで しょうか。 独 占禁止法は,競 争 を通 して経済効率 を促進 し,資 源の最適配分 をはか るこ とを目的 としていますが,そ の第 1条 の 目的規定におけ る 『公正 な』競争 とい うこ とばには,誠 実 な とか正 しい競争 とい う意味がふ くまれています し,『一 般消費者の利益』や 『国民経済の民主的で健全 な発達』 とい うことば も 『経済 効率』以外の視″点を予定 しているといえるで しょう。 独 占禁止法は,経 済学の原理 を貫徹す る道具 ではあ りません。法律 は定め ら れた 目的 を通 して,社 会正義の実現 をはか るのであ り,一 定の枠 内で社会的 ・ 政治的 ・文化的な考慮 をおこな うのです。 独 占禁止法は,公 正 で 自由な競争の促進 を目的 としています。 そこでは, 日 5)ま た,伊 従寛 『独 占禁止政策 と独 占禁止法』 (1997年)は ,「出版再販制 と市場経済」 と い う見 出 しの下に,次 の ように叙述す る (858頁)。 「出版再販制は,禁 止原則に対す る必要 な例外 で,独 占禁止法の 目的に適 っている。独 占禁止法の 目的,す なわち自由で公正 な競争の促進 は,文 化 ・安全 ・環境 ・社会的公正 な どの問題へ の配慮 を排除す るものではな く,む しろその配慮によって公正 な競争は促進 さ れ, よ り豊か な市場経済が形成 され る。」 「健全 で豊か な社会 には精神文化 と物質文 明の両者が必要 である。現実 の社会 に存在す る精神文化 と物質文明 とい う基本的な区別 と調和 を無視 して, もっぱ ら経済効率性の見地 か ら出版再販制 を廃止す ることは,決 して望 ましい市場や社会 を実現す るものではないも」 その他,座 談会 「再販維持 は文化 の問題」世 界640号119,125-26頁 (1997年)(伊 従寛 発言)を も参照。

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先 の競 争 では な く,長 期 的 な見地 か ら競 争 を考 え るこ とが必要 な場合 もあ りま す。合理 化 カル テルや 出版物 の再 販制 の よ うな適 用 除外 は, 日先 の現象 的 な競 争 は制 限す るけれ ど も,そ れ に よって達 成 され る, よ り本質 的 な競 争 の促 進 が か えって一般 消 費者 の利益 にな り, また国民経 済の民主的 で健全 な発展 に寄与 す る と考 え られ ます。知 的所 有権 で独 占権 を許容 す る場合 も,同 様 です。 いずれに して も,競 争 とい う概念が幅広 く奥行 きの深いダイナ ミックな概念 なので,抽 象的な一つの原則の買徹 とい う形ではな く,実 態にそ くし,法 の 目 的に照 らして考 えるべ きものであるこ とに注意す る必要があ ります。」 3.対 立の調整のあ り得 る姿 著作物が非商品的価値 (文化)を 有す るとして,商 品的価値 (価格)と 非商 品的価値 (文化)の 対立の調整 は可能 であるか。可能であるとしてその姿は ど の ようであるか。 この点,い ずれか一方の価値 を追求す る限 り,妥 協 はあ り得 ない。調整が可 能 となるためには,相 互 に歩み寄 らなければならない。相互に歩み寄れば,非 商 品的価値 (文化)を 有す る著作物 の商品的価値 (価格)の 追求 はいかにある べ きか,が 課題になる。 非商品的価値 (文化)に 重点 を置 く立場 にあっては,商 品的価値 (価格)に 配慮 しなが ら,非 商品的価値 (文化)の 実現 を確実にす ることを考 えなければ な らない。他方,商 品的価値 (価格)に 重点 を置 く立場にあっては,非 商品的 価値 (文化)に 配慮 しなが ら,商 品的価値 (価格)の 実現 を図 ることを考 えな ければな らない。 ここに,対 立の調整のあ り得 る姿が浮かぶ。 もっ とも,対 立の調整が実際に可能であるとい うためには,な お次の″点の解 明 を待 たなければならない。すなわち,非 商品的価値 (文化)を 有す る著作物 の商品的価値 (価格)の 追求はいかにあるべ きか とい う問題設定が,競 争政策 の観点か らどのように評価 され るか, とい う点である。 競争政策においては非商品的価値 (文化)を 考慮す る余地がない とい うこ と であれば,対 立の調整 は不可能になる。逆に,考 慮の余地があるとい うことで あれば,対 立の調整は可能 とな り,両 者の価値 の調和 を図る最適の解が模索 さ

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46 彦 根論叢 第 313号 れ得 る こ とに な る。 この点,「中間報告」が どの よ うなスタンスを採 っているかは,章 を改め検 証す る。 III 対立 に係 る 「中間報告」のスタンス 「中間報告」には,商 品的価値 (価格)と 非商品的価値 (文化)の 対立につ いての直接的な言及はない。そこで,対 立に係 るそのスタンスは,関 連す る叙 述 を中心に報告書の全体か ら推 し量 るほかない。 1.関 連す る叙述 (その 1)一 ―再販制度の基本的問題点 「中間報告」は,次 のように叙述す る (3(lD。 「ア 〔 前略),再 販行為は,販 売業者の事業活動において最 も基本的な事項 である販売価格の 自主的な決定 をメー カー等が拘束す るものであ り,言 い換え れば,本 来市場 メカニズムを通 じて 自由に決定 され るべ き価格にメーカー等が 直接介入 し,流 通業者の価格競争手段 を封 じ,ブ ラン ド内の価格競争 を減少 ・ 消滅 させ る効果 を持つ ものである。 したがって,そ れ 自体 としての競争阻害効 果が極めて大 き く,価 格面での消費者の選択 を阻害す るため,独 占禁止法上原 則 として違法 とされているものである。再販制度は,こ れ を許容す るものであ るか ら,必 然的に消費者に対 して価格競争の阻害によるデメ リッ トを与えるこ ととなる。 イ ま た,市 場が寡 占的である等ブラン ド間競争が制約 され る要因がある場 合や ブ ラン ド間競争が活発に行 われていない場合 において,再 販制度によって ブ ラン ド内の価格競争 まで制限 され ると,そ の影響は市場全体 に及び,再 販制 度が もた らす弊害は極めて大 きい もの となる。 ウ さ らに,再 販制度は,価 格面以外に も弊害 をもたらすおそれがある。例 えば,再 販行為 は販売業者の事業活動の基本的な事項の 自主的な決定 を制限す るものであるか ら,流 通業者の事業活動の 自主性が損 なわれ,流 通業者は,多 様 な消費者ニーズに対応す ることを怠 りが ちとなる。再販行為が制度 として長 期 間にわたって継続す ると,こ うした傾 向が助長 され,流 通 システムの固定化

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や サー ビス水準 の低 下 を もた らす お それが あ る。 この ほか,再 販制 度 は,発 行 業者 ・メー カー等の価格 設定 の硬 直化,非 効率 的 な取 引慣行 の助 長 等 の具体 的弊 害 を もた らす 可能性 が あ る。再 販制 度 の運用 が硬直的であった り,他 の制限が付随す る場合 には,こ うした弊害はよ リー層 大 き くなる可能性がある。」 2.関 連す る叙述 (その 2)一 一見直 しの基本的視″点 「中間報告」は,次 のように叙述す る (4(1))。 「再販行為 は,価 格面 での競争阻害 を現 に もたらすだけでな く,そ の他 の面 で も弊害 をもたらすおそれの強い ものであ り,競 争政策の観点か らは,か か る 行為 を正 当化す るこ とは,通 常 は困難 である。 したがって,再 販行為 を適用除 外す るこ とは飽 くまで例外的 な措置であって,何 らかの特別 な要 因によってそ れ を必要 とす るのであれば,次 の ような観点か らみて,国 民各層が納得 し得 る ような明確かつ具体的な理 由が必要 と考 えられ る。 ア 再 販制度は価格競争の阻害 とい う面で現に弊害 をもたらす ものであるか ら,同 制度がイ面格以外の面で何 らかの効果 をもた らす可能性が抽象的に示 され るだけでは,こ れ を正 当化す ることはで きず,そ のような効果が具体的に,か つ,現 実に生 じていることが示 され る必要がある。価格競争の阻害 とい う弊害 が現に生 じる以上,そ の弊害の程度が少 ない とか, 3〔 著作物に係 る再販制度 の問題点〕に挙 げたような個々の具体的弊害の発生 。拡大の防止が担保 され る だけでは,制 度 を維持す る理由 とす ることはで きない と考 えられ る。 イ 〔省略〕 ウ 〔省略〕」 3.関 連す る叙述 (その 3)一 ―現行制度の趣 旨 とされている諸点について の検討 「中間報告」は,概 要,次 のように叙述する (4修》。 現行制度の趣 旨 とされている諸″点 (文化 の普及な ど)は ,「原則禁止 されて いる行為 を例外的に適用除外す る理由 としては,抽 象的にす ぎるのではないか と考 えられ」,「具体的意味について,改 めて幅広 い角度か ら検討す ることが必

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4 8 彦 根論叢 第 3 1 3 号 要 で あ る」。 「文化の普及 とい うこ とは,極 めて抽象的な理 由であるか ら,こ れ を特定の 品 目につ いてだけ再販制度 を維持す る理由 とす ることには慎重であるべ きであ り,そ の意味 を明確 にす ることが必要 である。」 「『文化 の普及』 とは,消 費者が商品を購入す る機会の確保等 という点に帰着 す るもの と考 えられ,こ れが再販制度 を維持す る理 由 となるか どうかは,〔中 略〕,そ の ような効果が現実 に,か つ,具 体 的に生 じているか どうか, とい う 観点か ら検討す るのが妥当ではないか と考 えられ る。」 4。 「中間報告」のスタンスの推量 「中間報告」は,商 品的価値 (価格)を 圧倒的に重視 し,非 商品的価値 (文 化)を 重視 していない。 この こ とは,「著作物 に係 る現行 の再販制度の下 での 具体的問題″点」の展開の仕方 (3修》 をみれば,一 層判然 とす る。 問題 は,商 品的価値 (価格)を 圧倒的に重視 し,非 商品的価値 (文化)を 重 視 しない根拠 である。 この点,「中間報告」は,先 験的に商品的価値 (イ面格) を圧倒的に重視 しているように思われ る。 この こ とは,「中間報告」の次の叙述か らも分か る。「再販行為 は,販 売業者 の事業活動において最 も基本的な事項である販売価格の 自主的な決定 をメーカ ー等が拘束するものであ り,言 い換えれば,本 来市場 メカニズムを通 じて自由 に決定 され るべ き価格 にメー カー等が直接介入 し,流 通業者の価格競争手段 を 封 じ,ブ ラン ド内の価格競争 を減少 。消滅 させ る効果 を持つ」。 加 えて,「中間報告」は再販行為 の原則違法性 を強調 しているが,過 度の強 6)具 体的問題点 として挙げられているのは,次 のフ点である。①ブラン ド間競争までが抑制 されるおそれがある (同調的 ・硬直的な価格設定等)。②流通 システムが固定化 し,消 費 者の多様なエーズヘの対応が怠 られがちとなる (価格低下の形で合理化の利益 を消費者に 還元す る流通 システムの抜本的改善が行われないことなど)。③長期間にわたって抜本的 見直 しが行われないまま推移 していることにより価格設定の硬直化等による弊害が助長さ れてお り, また,他 の制度による制限が付随することにより弊害が助長されることもある (新聞業特殊指定による新聞販売業者の差別的価格割引の禁止等により,長 期購読者等に 対する割引が行われないことな ど)。④非効率的な取引慣行が生 じている (売れ残 りの書 籍 ・雑誌の廃菜など)。

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調 は,商 品的価値 (価格 )と 非商 品的価値 (文化 )の 価値序列 を固定化 し, し か も前者 に圧 倒 的 な優位 を与 え るこ とに な る。非 商 品的価値 (文化 )は ,「国 民各 層が納得 し得 るよ うな明確 かつ具体 的 な理 由」 が あ る場合 に,例 外 的に省 み られ るに過 ぎない。

着日しなければならないのは,商 品的価値 (価格)と 非商品的価値 (文化)

の関係 も,「原則―例外」の関係 として把握されるということである。このこ

とは,次 の二つの問題を生む。一つは,厳 格な原則維持のスタンスが採られれ

,ゴ(「

中間報告」の立場 もそうである),調 整は現実味を失うということである。

そして, もう一つは,非 商品的価値 (文化)を 有する著作物の商品的価値 (価

格)の 追求はいかにあるべきか, という調整指向的な発想とは異質であり,そ

の発想に基づ く立場 とは調整の接点を見出すことが困難になるということであ

る。

この ようにみて くると,次 のことが,本 章の一応の結論 となる。すなわち, 「中間報告」のスタンスは調整原理の一つを示 したもの といい得 るが,そ れは 極めて硬直的であるとい うことである。 しか し,「中間報告」のスタンスの問題性 は,こ れに とどまらない。 さらに, 根本に関わる次の疑義がある。一つは,今 日の時点において も依然 として,競 争政策の観″点か らは商品的価値 (価格)が 常に非商品的価値 (文化)に 比 して 圧倒的な優位 を与 えられ ると断言で きるか, とい うことである。そして もう一 つは,商 品的価値 (価格)に 圧倒的な優位 を与え,極 めて例外的にしか非商品 的価値 (文化)を 省みないことが,公 正競争阻害性の判断構造 と整合的である か, とい うことである。 これ らの疑義 につ いては章 を改め検討 し,「中間報告」のスタンスの問題性 を一層明 白にす る。 IV 「 中間報告」の ス タンス に係 る根本 的疑義 検討は,次 の順序による。①競争政策の観″点からは商品的価値 (価格)が 常 に非商品的価値 (文化)に 比 して圧倒的な優位 を与えられると断言できるか。

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50 彦 根論叢 第 313号 ②商品的価値 (価格)に 圧倒的な優位 を与え,極 めて例外的にしか非商品的価 値 (文化)を 省みないことが,公 正競争阻害性の判断構造 と整合的であるか。 なお,① の検討に際 しては,非 商品的価値一般 を念頭に置きながら,競 争政 策において非商品的価値に配慮する必要性があることを説き,商 品的価値 (価 格)が 圧倒的な優位 を与えられるとの断言に異議を唱える, というアプローチ の を採 る。 1.商 品的価値 (価格 )は 圧倒 的 な優位 を与 え られ るか 今 日,消 費者 は,生 活者 として登場 し,地 球 環境 の創造 。保全,わ が国にお け る農 業 の維持 ・食糧 自給 の達 成,品 格 のあ る社会 の達 成, といった非商 品的 働 価値の実現にも関心 を寄せ るようになった。その事態は,従 来,商 品的価値 (商 品それ自体が帯有する価値)の 実現のみを関心事 としていたのとは大 きく異な っている。問題は, こういった新たな事態への対処が,競 争政策の課題 といえ るか否かである。 の この点,経 済学の世 界では,次 の ように主張 され るに至 っている。「市場経 済は真空中に孤立 して存在す るのではな く,そ れ を支 える社会総体 との相関の 中で初 めてその機能 を果 たすのであ り,社 会総体 のあ りかた如何 に よって, も 7)こ のアプ ロー チは,確 かに,「中間報告」のスタンスに係 る根本的疑義 に直接的に答 え るもの ではない。 それに もかかわ らず ここで このアプ ロー チ を採 ったのは,次 の理 由に よ る。①文化 は特別 の顧慮 に値す る非商品的価値 であるか,独 禁法上文化 に配慮す る必要が あ るか,配 慮の局面 ・態様 は どの ようであるか,に ついては稿 を改め トー タルに検討す る こ とを予定 している。② このアプ ローチに よって も,「中間報告」のスタンスの問題性 を 一層明 白にす るとい う目的は,最 低限達成す ることが可能である。 8)な お,本 節の叙述は,「消費者取引の適正化 と競争政策の課題」公正取引561号50頁(1997 年)で 開陳 した 問題関心 の繰 り返 しの域 を出ていない。 9)中 村達也 「消費者主権 を超 えて」RIRI流 通産業30巻 1号 5, 5頁 (1998年)。 また,中 村教授 は,次 の よ うに もい う (9, 5頁 )。「社会 的費用 は,本 来,市 場 システム を超 える 諸 システムの,そ れ ぞれ異質 な諸要素か ら構成 されているのであって,こ れ まで経済学 を 一つの統一的体系 として成立 させ て きた単一的数量化の原理 と,そ れ を前提 として成立す る効率 的資源配分 の基準 は,改 めて検討 されなければな らないのである。」「市場的合理性 を超 えた何 らかの規範 をどの ように形成す るのかが,緊 急の課題 としてわれわれに突 きつ け られ たのであ る。」

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た らされ る結果 が大 き く異 な るこ とが 明 らか にな って きた。 いいか えれば,狭 義 の市場 経 済分 析 に視 野 を局 限 したの では見 えない よ うな問題 が意味 を もつ よ うになってきたのである。たとえば,市 場での合理的主体たる消費者の視点の みではうかがい知 ることのできないような問題が問われるようになってきた。 単なる消費者 としてではな く,消 費者であることを一部 として含むような生活 者へのまなざしが求められるようになってきたといってもよい。」 また,法 律学の世界でも,競 争秩序規制に関連 して,次 のような見解が示さ れるに至っている。「市場の前提 としてそれを枠づける 『秩序』『公正倫理』 と いうものが,法 的問題の重要な局面 としてあると考えてお り,そ の意味で 『良 き人生』 (good life)(正しく魅力的な知的文化)を 促進するような社会のあ り 方,競 争の秩序づけを個別具体の場において模索するようなアプローチも必要 だと考える。」 学問のこういった現況に照 らせば,非 商品的価値の実現 という新たな事態へ の対処は,今 日,競 争政策の課題 として認識されるに至ったとみなければなら ない。このことは,競 争政策の観点か らは商品的価値 (価格)が 常に非商品的 価値 (文化)に 比 して圧倒的な優位 を与えられるとの断言を,一 層疑わしめる ことにもなる。 2.公 正競争阻害性の判断構造 と整合的であるか まず,公 正競争阻害性の判断構造について整序する。その後,商 品的価値 (価 格)に 圧倒的な優位 を与え,極 めて夕J外的にしか非商品的価値 (文化)を 省み ないことが,公 正競争阻害性の判断構造 と整合的であるか否か,検 討する。 (1)公 正競争阻害性の判断構造 整 序は,① 行為類型別にみた公正競争阻 害性の違いが公正競争阻害性の判断構造に違いをもたらすか,② 公正競争阻害 性の判断に際 しての考慮要因の間に価値序列はあるか,に 分けて行 う。 (a)行 為類型別にみた公正競争阻害性の違いと公正競争阻害性の判断構造の 違い 不 公正な取引方法の各行為類型は,大 きく,行 為の外形から原則 とし 10)吉 田邦彦 「不正 な競争に関す る一管見一一競 争秩序規制の現代的展開一一」 ジュ リス ト 1088号42,51頁 (1996年)。

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52 彦 根論叢 第 313号 て公正競 争 阻害性 が認 め られ る行為 類 型 と,個 別 に公正競争 阻害性 が備 わ って 初 め て違 法 とな る行為 類 型 に三分 す るこ とが で きる。 問題 は,行 為 類 型別 にみ た公正競 争 阻害性 の違 いが,公 正競 争 阻害性 の判 断構造 に違 い を もた らすか否 か であ る。 この点,論 理的にみれば,公 正競争阻害性の判断構造に違 いはな く,違 法 と なる範囲に広狭があるに過 ぎない。換言すれば,行 為 の外形か ら原則 として公 正競争阻害性が認め られ る行為類型にあっては公正競争阻害性がない範囲が相 当狭 く,個 別 に公正競争阻害性が備 わって初めて違法 となる行為類型にあって は公正競争阻害性がない範囲が広い, とい う違 いがあるに過 ぎず,公 正競争阻 害性 の判断構造 は,類 聖的にみた公正競争阻害性の違い とは無関係 である。 こ のことは,判 例か らも確認で きる。 行為 の外形か ら原則 として公正競争阻害性が認め られ る行為類型 (再販売価 格 の拘束)が 問題 とされたが,旧 一般指定が適用 された第一次育児用粉 ミルク (和光堂)事 件 (最判昭和50。 7。 10,民 集29巻 6号 888頁)に お いて は,次 の判断構造が採 られている。すなわち,拘 束条件付取引が相手方の事業活動に おける競争 を阻害す ることとなる″点に不 当性 を認め,具 体的な場合 に不当性が ない ものを除外す る, とい うものである。 行為の外形か ら原則 として公正競争阻害性が認め られ る行為類型 (典型的 な 不 当廉売)が 問題 とされた者B営芝浦 と畜場事件 (最判平成元。12・14,民 集43 巻12号2078頁)に おいては,次 の判断構造が採 られている。すなわち,原 価 を 著 しく下 回る対価 で継続 して商 品 ・役務 を供給す るこ とは,企 業努力や正常 な 競争過程 を反映せず,競 争事業者の事業活動 を困難にさせ るなど公正 な競争秩 序 に悪影響 を及ぼすおそれが 多い とみ られ るため,原 則 として禁止 し,具 体的 な場合 に不 当性がない もの を除外す る, とい うものである。 他方,個 別 に公正競争阻害性が備 わって初めて違法 となる行為類型 (抱き合 わせ販売 ・競争者に対す る取引妨害)が 問題 とされた東芝昇降機サー ビス事件 11)第 一 次育児用粉 ミル ク (明治商事)事件 において も,同 様の判断構造が採 られている (最 判昭和50・ 7・ 11,民 集29巻 6号 951頁)。

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(大阪高判 平成 5・ 7。 30,判 時 1479号21頁)に お いては,次 の判 断構 造 が採 られ て い る。す なわ ち,「 『不 当に』 とは,公 正 な競争 を阻害す るか否かの有無 に よ り判 断 され るべ きであ る」, とい うもの であ る。 これ らを比較検討すれば,具 体的な場合 に個別的な判断 をす るとい うことで 公正競争阻害性の判断構造に違 いはな く,違 法 となる範囲に広狭があるに過 ぎ ない とい うのが,判 例 の立場 であることが判明す る。 (b)考 慮要 因間での価値序列 都 営芝浦 と畜場事件判決 (前出)は ,次 の ように判示す る。公正競争阻害性 は,「専 ら公正 な競争秩序維持の見地に立 ち, 具体的 な場合 におけ る行為 の意図 ・目的,態 様,競 争関係の実態及び市場の状 況等 を総合考慮 して判断すべ きものである」。 また,東 芝昇降機サー ビス事件判決 (前出)は ,「『不 当に』 とは,公 正 な競 争 を阻害す るか否かの有無に よ り判断 され るべ きである」 と判示す る一方,次 の ように判示す る。「商品の安全性の確保 は,直 接の競争の要 因 とはその性格 を異にす るけれ ども,こ れが一般消費者の利益 に資す るものであることはい う まで もな く,広 い意味での公益 に係 わるもの とい うべ きである。 したがって, 当該取引方法が安全性の確保のため必要 であるか否かは,右 の取引方法が 『不 当に』なされたか どうか を判断す るに当た り,考 慮すべ き要因の一つである。」 これ らの判示 に従 えば,公 正競争阻害性 は,「専 ら公正 な競争秩序維持 の見 地 に立 ち」,あ るいは 「公正 な競争 を阻害す るか否かの有無に よ り」判断 され なければな らないが,考 慮要 因の間に固定的な価値序列はない, といえる。 修)判 断構造 との整合性 商 品的価値 (価格)に 圧倒的な優位 を与 え,極 めて例外的に しか非商品的価値 (文化)を 省みないことは,公 正競争阻害性の 判断構造 と整合 的であ るか。 判断構造 につ いての整序か らは,次 のことが分か る。一つは,公 正競争阻害 性の判断構造は類型的にみた公正競争阻害性 の違 い とは無関係 である, とい う こ とである。すなわち,行 為の外形か ら原則 として公正競争阻害性が認め られ る行為類型であるか,個 別 に公正競争阻害性が備 わって初めて違法 となる行為 類型であるかによって,公 正競争阻害性の判断構造に違いが もたらされ ること

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54 彦 根論叢 第 313号 はない, とい うことである。 そ して もう一つは,公 正競争阻害性は 「専 ら公正 な競争秩序維持 の見地 に立 ち」,あ るいは 「公正 な競争 を阻害す るか否かの有 無に よ り」判断 されなければならないが,考 慮要 因の間に固定的な価値序列は ない, とい うことである。 その限 りで,商 品的価値 (価格)を 圧倒的に重視 し,非 商品的価値 (文化) を重視 しない 「中間報告」のスタンスが公正競争阻害性の判断構造 と整合的で あ るかは,大 いに疑間である。少な くとも,そ れが極めて一面的であるとの批 判は,免 れ ようがない。

参照

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