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図書紹介

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Academic year: 2021

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図書紹介・New Publications

的知見が不足しているが,本書の監修を務められている揖 善 継さん(和歌山県立自然博物館学芸員)は,和歌山県下の冨田 川などで,天然記念物となっているオオウナギの生態やニホン ウナギのシラスの加入とその後のクロコの成育などを調べてお られる.和歌山をメインのフィールドにされたお二人の協同の 上に実現したのが本書といえる.私は,揖さんの恩師である九 州大学農学研究院准教授の望岡典隆先生の指導を得て,福岡県 柳川の掘割にかつてのようにニホンウナギが賑わう状態にする 取り組みを進めている.その取り組みには地元の小学生や中学 生も参加し,主役の高校生や大学生を市民が支える形が生まれ つつある.本書は,そのようなウナギの復活活動にとって,と りわけ子供たちが川や生きものに関心を持つ上で,格好の教科 書である. 本書の最後には,もう一度言っておきたいこととして,著者 は以下のように記している.「ウナギを守るということは,小魚 やさまざまな水にくらす生きものたちを守るということ.日本 の川を,たくさんの生きものがくらせる環境にもどし,それを 守ることが将来もおいしいうな丼をたべることができるカギな のだ.」. (田中 克 Masaru Tanaka:〒 988–0582 宮城県気仙沼市唐桑町 東舞根 212 舞根森里海研究所 e-mail: [email protected]

図書紹介・New Publications

魚類学雑誌 63(2):154–154 2016 年 11 月 5 日発行 失われた北川湿地 なぜ奇跡の谷戸は埋められたのか?.—三 浦・三戸自然環境保全連絡会(編).2015.サイエンティスト 社, 東 京.308 pp.ISBN 978-4-86079-079-0.2,500 円( 税 別 ). 私の勤務地である神奈川県三浦半島南部に,県内最大の低地 性湿地である北川湿地があった.そこは,東京からわずか 1 時間半の交通至便な地でありながら,水田耕作の放棄から約 50 年間にわたって開発を免れたうえ,湿性遷移が進まずに湿 潤な環境が保たれた 25 ha の「奇跡の谷戸」だ.夏にハンゲショ ウが香る中ヘイケボタルが乱舞する谷戸底とそれを囲む斜面 林には,ミサゴ,ハヤブサ,サラサヤンマ,チャイロカワモ ズク等の絶滅が危惧される様々な生物が暮らし,貴重な自然 観察の場となっていた.ところが,2006 年に地権者である京 浜急行電鉄によるアセス手続きが開始されたことで発生土処 分場計画が表面化し,これに反対する市民が立ち上がった. 本書は,この谷戸を守るために必死に活動した人々の記録で あり,「この様な理不尽な環境破壊を見るのはこれを最後にし たい」と訴える.反対運動は,署名・陳情やシンポジウムに 始まり,2009 年の大学生を中心とした民事調停の申立てに至 り,2010 年には埋立て工事開始後も事業差し止めの仮処分命 令を申立てた.しかし,こうした活動をよそに工事は進捗し, 司法的解決を待たずして貴重な谷戸は埋立てられてしまった. 身近な自然を守る難しさを痛感するとともに,行政手続きが 開始される前であれば打つ手があったことが悔やまれてなら ない.つまり,北川湿地の重要性の認識が遅れたことによる 動き出しの遅さが致命傷になったのだ.ここでは 2006 年に県 内 2 例目となるミナミメダカが発見されたが,地元では在来 メダカの存在は以前からよく知られていたという.本書の著 者の一人で本学会員の瀬能 宏博士は,「北川湿地の重要性の 認識の遅れは,地域住民と研究者間のコミュニケーション不 足が一因であった」と自戒を込めて指摘する.こうした義の ない環境破壊を二度と繰り返さぬよう,その指摘を胸に深く 刻むものである.また,本書には司法の専門家による裁判論 評や裁判資料が収められており,我々にはなじみが薄い環境 法分野における司法判断やその限界を知るうえでも参考とな ろう. (工藤孝浩 Takahiro Kudo:〒 238–0237 三浦市三崎町城ヶ島養 老子 神奈川県水産技術センター栽培推進部 e-mail: kudo.5k3s@ pref.kanagawa.jp) 魚類学雑誌 63(2):154–155 2016 年 11 月 5 日発行 さめ先生が教える サメのひみつ 10.―仲谷一宏(著).2016. ブ ッ ク マ ン 社, 東 京.127 pp.ISBN 978-4-89308-862-8.1,500 円(税別).本書は日本を代表する “ さめ先生 ” として広く知 られる仲谷一宏氏による,不思議なサメ類の形態や生態につ いて解説された著作である.本書には難しい漢字や専門用語 は使われておらず,小学生でも十分に内容を理解できるよう に配慮されている.また,貴重な標本写真や美しい生態写真 が数多く掲載されており,魚類学を専門とする者にとっても 興味深く読むことができる.本書は大きく二つの章に分かれ ており,第一章は,おもにサメ類の形態について解説されて いる.歯や鱗,交接器など,サメ類を知るうえで欠かせない 主要な部位について,非常に分かりやすく解説されており, コンパクトな内容ながら十分な情報を得ることができる.そ れぞれの解説には写真や図版が多用されており,文章だけで は表すことのできないサメ類の多様性に富んだ神秘的な身体 のつくりに驚かされる.第二章は,“ 世界のおもしろいサメ ” と題して 10 種の特徴的なサメ類が紹介されている.ダルマザ メやジンベエザメ,ミツクリザメといった特徴的でよく知ら れた種のほか,マモンツキテンジクザメなど,少々マニアッ クな種も解説されている.それぞれの種ごとに特徴や分布域 などの基礎的な情報だけでなく,その種の注目すべき点がと りあげられており,興味深く読み進めることができる.例えば, ダルマザメやマオナガは摂餌方法が紹介されており,初見の 方にはその奇妙な生態に驚かされるだろう. 本書にはところどころに,未来のサメ研究を担うであろう

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会員通信・News & Comments

子供たちに向けられた暖かなメッセージが添えられているこ とが印象深い.サメという生物の概要を知るための入門書と して,小中学生や一般の方だけでなく,これから魚類につい て学ぼうと志す大学生にもお勧めしたい一冊である. (三澤 遼 Ryo Misawa:〒 625–0086 京都府舞鶴市長浜 京都 大学フィールド科学教育研究センター舞鶴水産実験所 e-mail: [email protected]) 魚類学雑誌 63(2):155–155 2016 年 11 月 5 日発行 SHARKS  サメー海の王者たちー改訂版.—仲谷一宏(著). 2016.ブックマン社,東京.248 pp. ISBN 978-4-89308-861-1. 3,600 円(税別).2011 年に出版された同タイトルの改訂版. 初版の意図を引き継いだかたちで写真や図が多く使われており, サメ類の分類,進化,形態,分類,分布などが丁寧に解説さ れている.本書の「はじめに」に書かれてあるとおり,アマチュ アから専門家,子どもから大人までが理解できるサメ類の「専 門書」として充実した内容となっている.改訂版では最新の 分類体系が反映されており,例えば,以前はツノザメ目に含 まれていたキクザメ科は,独立の目として扱われている.巻 末には 2016 年 3 月時点での世界の現生サメ類全 509 種のリス トが掲載されており,これは海外産の種を飼育している水族 館関係者にも必須の内容であろう.なお,このリストの部分 や代表的な種の解説では,一部の種に新和名が提唱されており, 特に分類学に関わる方は注意されたい.このほか,いわゆる シャークアタックに関する章で内容がアップデートされており, サメが接近してきた場合,攻撃を受けた場合などの対処方法 が追加して書かれている(もちろん,危険なサメ類に近づか ないことが大原則と言えるが).第一線で 50 年にもおよぶ「サ メ研究」を続けてこられた著者ならではの豊富な知見と経験 にもとに書かれた解説を読んでいると,改めてサメ類の生物 学的な面白さに気付かされる. (甲斐嘉晃 Yoshiaki Kai:〒 625–0086 京都府舞鶴市長浜 京都 大 学 フ ィ ー ル ド 科 学 教 育 研 究 セ ン タ ー  舞 鶴 水 産 実 験 所  e-mail: [email protected]

会員通信・News & Comments

魚類学雑誌 63(2):155–157 2016 年 11 月 5 日発行

新知見紹介

千曲川中流域におけるサケ稚魚の確認

A record of chum salmon fry from middle reaches

of the Chikuma River, central Japan

本州中部から日本海へ流れる信濃川・千曲川のサケ

Oncorhynchus keta は古来より食糧資源として広く利用さ

れてきた(市川,1977).しかし,1930 年代になって水

力発電用の大型ダムが新潟県や長野県の本流下流域に相

次いで建設されると,1925–1935 年に約 5,600–66,400 kg

あった漁獲量は急減し,1944 年の約 600 kg を最後に長

野県の漁獲統計から消滅した(長野県漁業共同組合連合

会,1969).一方,サケの遡上復活への要望は水産関係

者のみならず市民の間でも根強く,1979–2000 年の間は

長野県が,また 2007 年からは NPO 法人新潟水辺の会を

中心とした市民団体が,稚魚放流や生態調査をその規模

を拡大させながら継続的に実施している(新潟水辺の会,

2015).このような取り組みと併せ,ダムに設置された

魚道の改善(佐藤ほか,2004;信濃川中流域水環境改善

検討協議会,2012, 2013),2008 年に起きた新潟県宮中取

水ダム(信濃川河口から約 133 km)での不正取水事件

をきっかけにした放水流量の増加などを背景に,信濃川・

千曲川のサケ遡上数はおおむね増加傾向にある(新潟水

辺 の 会,2015). 例 え ば, 新 潟 県 の 宮 中 取 水 ダ ム で は

2001 年以降,毎年(2007–2008 年を除く)9 月中旬から

11 月初旬まで魚道を遡上するサケの数が調査されてい

るが,2001–2006 年に平均 29 尾(範囲 11–45 尾)だった

遡上数は,2009–2014 年には平均 314 尾(範囲 135–736 尾)

となり,2015 年には 1,514 尾と近年の最高数を記録した

(新潟水辺の会,2015).同様に,その上流の長野県の西

大 滝 ダ ム( 信 濃 川 河 口 か ら 約 166.5 km) で も,2001–

2006 年 に 平 均 4 尾( 範 囲 1–12 尾 ) だ っ た 遡 上 数 は,

2009–2014 年 に は 平 均 11 尾( 範 囲 2–35 尾 ) に 増 加 し,

2015 年には 12 尾(雄 10 尾, 雌 2 尾) が確認されてい

る(新潟水辺の会,2015, 2016).

一方,西大滝ダムを越えたサケの生態については不明

な点が多い.西大滝ダムの約 85.0–86.5 km 上流に位置す

る上田市の半過ヤナ(石井ヤナ)および中山ヤナではサ

ケ親魚が 2010 年と 2012 年に各 1 尾,2015 年 11 月 25 日

から 12 月 6 日にかけては 5 尾が確認され(新潟水辺の会,

2015, 2016),その遡上実態の一部が明らかになる一方,

遡上親魚が繁殖に成功しているのか否かは明らかでな

かった.今回,我々の調査によって,千曲川中流域にお

いてサケの稚魚 1 個体が確認され,それが稚魚放流され

たものではなく,自然産卵に由来することが強く示唆さ

れたので,ここに報告する.

参照

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わからない その他 がん検診を受けても見落としがあると思っているから がん検診そのものを知らないから

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