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傾斜地域の地形的特徴とそこに展開されるサービスパターンに関する考察-町田市玉川学園を対象としたヒアリング調査結果より-

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Academic year: 2021

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(1)

傾斜地域の地形的特徴とそこに展開される

サービスパターンに関する考察

−町田市玉川学園を対象としたヒアリング調査結果より−

A Study on Investigation Method Targeting Interview and Service on Sloping Town

○池田理恵 白肌邦生

Rie Ikeda, Kunio Shirahada

北陸先端科学技術大学院大学

Japan Advanced Instirute of Science and Technology

Abstract: On this study, we focus topographic features of sloping town and service pattern. Topography

gives people the possibility of service deployment and is also a hampering service. In this paper, we conducted an interview survey on Tamagawagakuen as a model case of sloping town. This result will help establish service to overcome the disadvantage of the topography in the future as local governments in various parts of Japan will enter an aging society.

1.はじめに

日本では,少子高齢化,都市一極集中による人口 偏重などの社会的問題が加速されることが予測され ており,都市郊外における住宅地は,住環境,交通, 購買など生活を支える基盤の維持が困難になる.傾 斜地においては,地形要因が重なり,高齢者の日常 の移動が困難になっている*1 一方,サービスにおいては,S-D ロジック*2が提 示された.S-D ロジックとは,製品やサービスを区 別することなく,受益者がそれらを使用する過程に おいて,サービス提供者が行なう活動や受益者が取 る行動が価値を生み続けるという前提に立つ.つま り,サービス提供者と受益者が一緒になって価値を 共創する関係にある.しかし,サービスの成熟化に 伴い,経済的な面で人々の生活は豊かになったと言 われるが,人間にとってのWell-being 課題が顕在化 してきている.サービスを捉える上で,筆者らはこ れまで人間の本質的豊かさにかかわるサービス課題 を Transformative Service Research*3の展開とともに 考察してきた.TSR は,人間にとっての Well-Being に注目し,その上でサービス活動を捉え直すことを 主な目的としている. TSR ではこれまで価値共創の中身についての考察 が主であり,環境要因はその価値共創に影響を与え る*3と考えられながらも,十分な研究の蓄積はない. 本論では,環境要因として地形的特徴という傾斜 地に焦点をあて,そこに住まう人間の生活・行動か ら生み出されるサービスとの関係を明らかにしよう とするものである。

2.地形とサービスと行動の関係

2.1 地形とサービス

土地と経済活動の関係については,経済地理学や 産業立地論に代表される,人間が経済行為を行う際 に土地,地域の特徴を捉え,適切な場所を選択する ための方法について扱う領域が存在してきた*4.例 えば,水運は穏やかで大きな川といった特有の地形 から生まれるサービスと捉えることができよう.一 方,地形は人間の経済活動に良い影響を与えるだけ ではなく障害にもなる.例えば,中間山地では広い 土地を耕して農業を行うことはできないため,傾斜 を利用して果樹の栽培を行うことで高収益の農業が 展開されている.これは視点を変えると,地形的困 難の克服に直面した時に新たなサービスが生み出さ れるのである.人間は,時間をかけて自分たちの生 活を豊かにするために地形を変化させてきた.地形 を修正して建築をつくり,傾斜地を開き平坦にする ことで,活動可能領域を広げ,交通や運搬としての 道路や生活の為の建築を造成*5しサービスを展開し てきたのである.

2.2 地形と行動論的アプローチ

(2)

地理学では産業立地論的アプローチを批判する立 場から行動論的アプローチが提唱されたという経緯 がある*6.産業立地論論的アプローチは,経済人を 前提としているのに対し,行動論的アプローチはサ ービスが人間の相互関係の上に成り立つ立場をとる ことにある.人間の行動は,休日数や労働時間とい った時間的制約,あるいはさまざまな社会的習慣・ 制度によって規制をうけており,決して自由に振る 舞えるわけではない.これらの多くは,立地論的ア プローチが見落としてきた視点や前提であることに よる*6. また,建築の環境行動研究分野では,環境と行動 は相互関係にあり,人間は環境の中にある可能性を 見出し,それに応じて行為を変化させることが出来, 環境も人間に可能性を与え,人間の行為によって変 化する*8とされている. 本論においては,環境要因である地形的特徴がそ こに住まう人にどのように影響を与えるか.また, 人と人の相互関係にどのように展開されるか.につ て,考察する第1ステップとして,玉川学園を例に した予備調査例を報告する.地形と人間の相互行為 から生まれるサービスの形成要因同定を目指し,本 調査に向けてどのような調査観点が必要かを考察す る. 図1.研究の枠組み

3.調査方法

3.1 対象とする傾斜地域

本論では,初期段階として,対象エリアを東京都 玉川学園前駅周辺の起伏に富んだ住宅地・商業地と する.玉川学園は,都心より約30 キロ圏に位置し, 人口約2 万人・約 9000 世帯(2016 年)が暮らすま ちである. 土地の形質と景観が丘陵地の起伏そのまままの自 然の地形に沿うような形で整備継承されており,谷 戸と尾根を骨格に,緑,坂道が多く,遠くまで見渡 せる変化のある特徴を持つ.道路は,谷道と等高線 に沿って作られたために曲がりくねり,道路沿いに 植えられた桜により景観を豊かにし,今でもヒュー マンスケールの街路が維持されている. この地域は,1969 年,文教地区に指定されたため, 特別用途地区で定義されており,パチンコ,ゲーム センター,映画館等の遊興施設が建てられないとい った建築用途制限をもつ. しかし,近年の少子高齢化,都心回帰現象に加え, 傾斜地特有の地形要因が重なり,高齢者の日常の移 動が困難になる一方で,相続に伴う土地分割により 若年人口が増加している.

3.2 調査内容

(a) 対象 本調査前の予備調査と位置づけ,半構造化インタ ビューを実施した.実施日は2017 年 6 月 9 日(金), ヒアリング対象者は2名,玉川学園に在住し同地域 に関連するフリーペーパー企画・発行しているA 氏 と,玉川学園の青果店で,近年宅配サービスを開始 した商店主のB 氏に依頼した. (b) 予備調査項目 両者ともに,なぜ当該地域でサービスを開始した のか,その経緯と,地形に対する関連について尋ね た.具体的にA 氏には,玉川学園と他地域の違い, フリーペーパーを発行するに至った動機,玉川学園 の特徴である坂をどのように捉えているかについて 尋ね,B 氏には,顧客の年齢層,個人宅への宅配サ ービスを始めたきっかけ,地域との関わり,につい て尋ねた.

3.3 結果及び本調査へ向けて

サービス開始の背景について,A 氏は「小学校の 役員を引き受けたことをきっかけとして地域との関 わりが増え,地域のガイドブックを編集するに至っ た.玉川学園で活躍されている魅力あるお店や人を 紹介しようと思った」ことがあるという.特に,住 民が作り出す街の雰囲気に特長を見出し,「玉川学園 にお住まいの方は,社会資本を持っていらっしゃる 方が多いと感じる.家族や親戚や友人はもちろんの こと,困ったときに信頼できるつながりをもってい る」という. 坂が多い地形についての認識は「坂であることの 不便さと景色の良さを比べる景色の良さの充実度は 高い.坂である不便さを楽しめることが,玉川学園 のよいところ」であるという.一方,青果店の店主 への聞き取りでは,「特にきっかけというものはない が,坂が多く登り下りが大変な地域ということは認 識している.」と答え,傾斜地特有の景観と生活のト

(3)

レードオフの認識があることが推察される. 小学校で自分自身の街や仕事について語った経験 もあるという青果店店主は,「お客さんとの会話の中 で,「運ぶのが重たい」や「坂上まで運べない」など の話になり,自然と宅配サービスするに至った」と いう.そして今では,「商品を宅配すだけでなく,秋 の時期には栗の皮むきのサービスをしたり,今時期 はらっきょうを漬けたものを提供したりと,注文も 多くつくることが追いついていない状況.」このよう に,傾斜地としての生活困難性を改善する中から生 じる人間関係性が新たなサービスのアイデアや新し い経済活動を創造していることがわかる. これらの回答から,傾斜地であることの共通認識 が人との関係の中でサービスに影響をもたらしてい ることが言えそうである.傾斜地という共通の不便 さを抱えることで,困った時に信頼できる人と人と のつながりが形成されていると捉えることができる. 今後においては,町内会や玉川学園コミュニティ バスに関わる人などへのヒアリング調査を拡大する とともに,個人が地域への関わりを促す参入敷居や 頻度についても調査する必要がある.また,傾斜地 を特徴とする尾道や横須賀など他地域についても同 様の調査を実施する.

謝辞

本論を作成するにあたり, お忙しい中,2 名の方 にお時間とご回答を頂戴し,本文を完成することが 出来ました.心からの感謝の気持ちと御礼を申し上 げたく,謝辞にかえさせていただきます.

参考文献

[1] 松田博幸, 難波義郎: 「呉市斜面住宅地の生活バリア と社会システムによるバリアフリー」, 『近畿大学工 学部研究報告』47,pp39-48(2013)

[2] Vargo,L.Lusch,R. :“Evolving to a New Dominant Logic For Marketing” Journal of Marketing,68pp.1-17(2004) [3] Anderson,L.et.al :“Transformative service research: An

agenda for the future,” Journal of Business Research, 66(8), pp. 1203-1210. (2013) [4] ディッケン・ロイド:『改訂版 立地と空間』古今書院 (1997) [5] Beque,A,木岡伸夫(訳):『風景という地 近代のパラダ イムを超えて』世界思想社(2011) [6] 林上:『都市サービス地域論』原書房(2005) [7] 高橋鷹志,長澤泰,鈴木毅:『環境と行動』シリーズ人間 と環境2 巻,朝倉書店(2008) [8] 田中美子:「玉川学園地域のコミュニティバス導入を 事例とした、市民と自治体の役割」『自治体学』27(2) pp.73-77(2014)

参照

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