氏 名 MD. RASADUJJAMAN 博士の専攻分野の名称 博士(工学) 学 位 記 番 号 医工博甲第376号 学 位 授 与 年 月 日 平成28年5月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 グリーンエネルギー変換工学特別教育プログラム
学 位 論 文 題 目 LOW TEMPERATURE DEPOSITION OF CU FROM
SUPERCRITICAL CARBON DIOXIDE FLUID USING A NOVEL CU(I) PRECURSOR: DEPOSITION
CHARACTERISTICS AND IMPACT ON THIN FILM STACKING. (新規 Cu(I)原料を用いた超臨界流体中 Cu 低温堆積:堆積特 性と薄膜積層への影響) 論 文 審 査 委 員 主 査 教 授 近 藤 英 一 教 授 小 宮 山 政 晴 教 授 武 井 貴 弘 准教授 鍋 谷 暢 一 山梨大学 客員教 授 柳 田 真 利 IMEC(ベルギー王国)主幹研究員 Mikhail B. Baklanov
学位論文内容の要旨
マイクロエレクトロニクスデバイスの集積密度は過去数十年にわたって指数関数的に増 加している。高集積マイクロエレクトロニクスデバイスのダウンスケーリング要求を満た
すために、化学的な手法を利用した配線用Cu 薄膜の堆積法が重要となる。この論文は、超
臨界流体中化学堆積法(supercritical fluid chemical deposition, SFCD)により、新規な 1
価Cu アミジナート前駆体を用いた Cu 成膜の研究についてのものである。このプロセスは 高い成膜速度と信頼性を兼ね備えた将来Cu プロセス技術として有望である。 SFCD では、堆積反応媒体として超臨界 CO2(SCCO2)を使用するが、その有用性は実 験室規模では実証されてきた。SCCO2のもつゼロ表面張力、低粘度、調節可能な溶媒能と いった秀でた性質により、コンフォーマル極薄膜堆積や、高アスペクト構造内の充填、金 属エッチング、洗浄などが可能となり、環境調和型プロセスプラットフォームとして期待
されている。 スケールアップは実用化のために必須の技術である。そのためには、SCFD の堆積メカ ニズムを明らかにすることや、密着性などの信頼性の問題を解決する必要がある。また、 金属エッチングなどの新規な応用の開発も既存技術との差別化のためには必要となるであ ろう。 そこで、この論文ではまず、Ni と Cu の二種の前駆体を混合し Cu-Ni 合金ないし積層薄 膜の堆積について検討を行った結果について述べている(第2章)。同時堆積を行うと先に Cu が堆積しついで Ni が堆積する。Cu と Ni の相互拡散が確認されたがこれは堆積温度が 高すぎたためであり、特に共融点の 350℃以上では著しい。合金堆積の原理や Cu/Ni 積層 膜形成条件を理解することができたが、同時に成膜の低温化が必須であることもわかった。 またCu(II)(hfac)2、Ni(II)(hfac)2の2 前駆体はどちらも F と O を含有するため汚染の懸念 もある。 F・O フリー原料の Cu(I)アミジナート前駆体[Cu(I)(dippa)]2を用い成膜温度の低減を図っ た(第3 章)。この前駆体はアセトン/CO2溶液中に十分に分散し、還元剤としてH2を用い ると非常に低温で Cu を堆積できる。堆積開始温度は 140℃であり、Cu(II)(hfac)2 や Cu(II)(dibm)2 前駆体について報告された典型的な温度よりはるかに低い。さらに、Ru や TiN のライナを有するナノトレンチ内に高純度の Cu 膜を堆積させることができ、特に Ru の表面上では滑らかで強い接着性を有する薄膜を堆積することができた。 [Cu(I)(dippa)]2をSCCO2中でH2還元してCu を堆積する際の反応特性をステンレス製の 反応器を有するフロー型システムを使用して検討した(第4 章)。第 3 章で論じた約 140℃ という低い成膜開始温度はバッチ型システムを使用して得られたものである。その場合と 同様に、低い温度で同じく滑らかな表面を有する薄膜を得ることができた。堆積温度140℃ から240℃の範囲で、成長速度の温度依存性から求めた Cu 成長のための平均活性化エネル ギーは0.15±0.03 eV であった。前駆体濃度、H2濃度、成長圧力の成長速度への依存性を 調べた。空表面サイト[Cu(I)(dippa)]2の解離吸着に基づく堆積メカニズムを検討し、総括反 応中の律速段階としてH2の脱着であると提案した。 SCCO2中でのCu の低温堆積を Cu/Ni 積層構造に再適用した(第 5 章)。薄膜と界面を オージェ電子分光法によって分析したところ、Cu 堆積温度(140℃)では急峻な Cu/Ni の界 面構造が得られていることを確認した。スタイラス励振型のマイクロスクラッチ試験で測 定限界の1000 mN を超える高い接着強度(Cu のみだと数 mN)を有していることが確認 できた。高い密着強度は、Cu と Ni との間の強い界面結合に由来する。 最後に、以上の SFCD 技術の化学的知見に基づき開発した、遷移金属(Cu、Ni、Co お
よびFe)薄膜を SCCO2でエッチングする技術について述べられている。これらの金属は、 SCCO2に溶解したキレート剤ヘキサフルオロアセチルアセトンと反応させ可用性の生成物 を得ることにより除去した。温度は100℃~250℃で圧力は 10 MPa に固定した。薄膜が実 際にエッチングされたことは光透過率や蛍光 X 線分析により確認した。従来これらの金属 はドライエッチングによる除去が困難であった。本SCCO2プロセスは、磁気抵抗メモリ処 理のための金属薄膜のエッチングに適用可能であると期待される。 以上本研究では、Cu/密着層積層構造体の信頼性向上と新規 SFCD プロセスの開発を主眼と し、新規1 価 Cu アミジナート錯体の利用の試みと成膜特性の詳細な検討、ひいては実際に 積層構造体の作製を行ない優位性を実証した。さらにドライエッチング法では不可能な遷 移金属の新規エッチング法を開発した。
論文審査結果の要旨
RASADUJJAMAN 氏の学位論文は LOW TEMPERATURE DEPOSITION OF Cu FROM SUPERCRITICAL CARBON DIOXIDE FLUID USING A NOVEL Cu(I) PRECURSOR: DEPOSITION CHARACTERISTICS AND IMPACT ON THIN FILM STACKING(新規 Cu(I)原
料を用いた超臨界流体中Cu 低温堆積:堆積特性と薄膜積層への影響)と題するものである。
RASADUJJAMAN 氏の研究は、超臨界流体中化学堆積法(supercritical fluid chemical deposition, SFCD)による、新規な 1 価 Cu アミジナート前駆体を用いた Cu 成膜の研究に ついてのものである。このプロセスは高い成膜速度と信頼性を兼ね備えた将来Cu プロセス 技術として有望である。RASADUJJAMAN 氏は Cu/密着層積層構造体の信頼性向上と新規 SFCD プロセスの開発を主眼とし、新規 1 価 Cu アミジナート錯体の利用の試みと成膜特性 の詳細な検討、ひいては実際に積層構造体の作製を行ない優位性を実証した。さらにドラ イエッチング法では不可能な遷移金属のエッチングを開発した。 第1章は集積回路・実装分野における Cu 配線技術、成膜方法と SFCD 法についての詳 細なレヴューである。第2章はNi と Cu の二種の前駆体を混合し Cu/Ni 積層薄膜の堆積に ついて検討を行った結果について述べられ、構造体の信頼性向上のためには成膜の低温化 が 必 須 で あ る こ と が 明 ら か に さ れ て い る 。 第 3 章で は Cu(I)アミジナ ート前駆 体 [Cu(I)(dippa)]2を用いた成膜の実証と低温成膜性ならびに微細構造体内への優れた埋込に ついての実証について述べられている。ついで、Cu 堆積反応特性と堆積メカニズムをフロ ー型システムを使用して検討し、結果を第4 章にまとめた。Cu 成長のための活性化エネル ギーは0.15±0.03 eV であり、[Cu(I)(dippa)]2の解離吸着に基づく堆積メカニズムを提案し た。SCCO2中でのCu の低温堆積を Cu/Ni 積層構造に適用した結果は第 5 章にまとめられ
ている。Cu 堆積温度を 140℃まで下げ急峻で高信頼の Cu/Ni の界面構造を得ることに成功
している。最後に、以上のSFCD 技術の化学的知見に基づき、遷移金属(Cu、Ni、Co お
よびFe)薄膜を SCCO2でエッチングする技術を開発した。この成果は第6 章にまとめら
れている。
RASADUJJAMAN 氏の研究結果のうち、Ni と Cu の二種の前駆体を混合し Cu/Ni 積層薄
膜の堆積について検討を行った結果、Cu(I)アミジナート前駆体[Cu(I)(dippa)]2を用い成膜 の実証と低温成膜性ならびに微細構造体内への優れた埋込についての実証、フロー型シス テムを使用したCu 堆積反応特性と堆積メカニズムの検討、低温堆積 Cu を Cu/Ni 積層構造 に適用した結果の発表に基づき、提案された成膜メカニズムの物理化学的意味や他のメカ ニズムとの差異、学術成果の工業的応用、金属拡散機構などに関する質疑応答ならびに口 頭試問を行った。 以上の内容についての公聴会発表、質疑応答ならびに最終試験結果の結果から全審査委 員一致のもとにRASADUJJAMAN 氏に博士(工学)の学位を授与することがふさわしいと 判断した。