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学業成績に対する認知者間の因果帰属の差異が対人感情におよぼす効果

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Academic year: 2021

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(1)

学 業 成 績 に対 す る認 知者 間の 因果 帰属 の

差 異 が 対 人 感 情 に お よ ぼ す 効 果

The Effect of Discrepancies of Perceivers' Causal Attribution

to Academic Performance upon Interpersonal Feelings

Tetsuo Naito

児童 ・生徒の学業成績に対す る評価は,自己概 忠 ,要求水準 ,情緒安定や意欲など,彼 らの広汎 な領域に影響を及ぼすことが知 られている (例え ば,梶田,1975)。ところで ,評価が児童 ・生徒 に与える影響は,到達目標か らみた絶対得点 ,あ るいは他者 との比較としての相対的な得点の高低 に関するフィー ド・バ ック自体によるだけではな い。それよりも,フィー ド・バ ックされた情報に 基づいて,学習者自身が能力や努力や課題の難易 などについて自己評価す るという認知的媒介過程 を通 じて,意欲や達成 目標が左右され ,さらには 学習活動や人格形成に影響を受 けるといえよう。 例えば,本人が成績の向上を望んでいるとして も, 単に学業不振という事実を知 るだけでな く,続い てその原因が努力不足にあると自ら認知す るな ら ば ,はるかにその後の学習行動は促進されること になるであろう。 上述のよ うに,児童 ・生徒の学習活動や人格形 成 において ,成績の因果帰属は重要な意味を持つ のであるが ,学習者 自身による評価は自己防衛的 な心理機制に支配されやすい。また内藤 (1984) の示唆するように,この防衛機制のため他者か ら の帰属変容の影響力はそれほど大きくないと考え られる。しか しなが ら,児童 ・生徒にシダニフイ カ ン ト・アザ- (significantotl一er)と して関 与する教師な らば,彼 らの帰属を変容 し,より望 ま しい効果を引き出すためにかな りの役割を果 し 得 るといえよう。しか しここで問題 となるのは, 教師側の原因の帰属において も,児童 ・生徒-の 期待や権威主義的パ ーソナ リテ ィ (古城 ・天板 ・ 相川,1982)であるとか,ステレオタイプやハロー 1本実験の概要は.日本教育心理学会第19回総会 (内乱 1977)において報告された。 効果や寛容効果などによる歪曲が多いことである。 そこでこうした点を補完するものとして ,複数の 教師間での情報交換が有効ではないかと考え られ る。特にこのような方法は,中学校のよ うに教科 ごとに担当教師がかわる場合においては ,不可欠 であるともいえよう。だが ,上記のような歪曲要 因により教師間の帰属が異な るとした ら,一般的 な帰属の手掛 りや基準 といった ものは存在するの であろうか,また帰属が違 った際の対人感情とは どのような ものであろうか。 本研究は,上述のような背景か ら,(1)手掛 りと して学業成績の変動パ ターンを とりあげ ,これに 基づいて因果帰属は可能なのか ,また

(

2

)

認知者間 で因果帰属が異なるときの対人感情につ いて ,実 験的に検討 したものである。 方 法 被験者 W大学学部学生103名 ,この うち実験操作後の 第2セションに参加 しなか った者 ,及び一部無回 答のあった者の合計13名は,データ分析か ら除外 された。 実験材料 (1)質問紙tA)

・t

B)

・(C)に図示 されたA ・B・C3 者の学業成績の変動パターンは ,それぞれ図1, 2,3のようなものであった。各図の上部 には, 「A (またはB・C,以下Aのみ表記) の第1回 ∼第10回の学業成績は下図のよ うであった」と書 かれていた。また下部には

,「

A

が上図のような 成績を示 したのは,以下の要因がそれぞれ どの程 度影響 していると思いますか」 と書かれており, その下にそれぞれ0- 5点が与え られる6段階尺 -

(2)

71-皮 (非常に関係がない,かな り,やや ,やや ,か な り,非常に関係がある)か らな る次の4項 目が 用意 された。それ らは,テス トの莞易度 によるも の (テス トが易 しい,あるいは難か しい),運に よるもの (運が良か った ,あるいは悪か った), 本人の能力によるもの (能力がある,あるいはな い),本人の努力によるもの (努力 した ,あるい は しなか った),である。 (2)評価能力の判断な らびに好悪感情を測定す る 囲

00

鮒 約 70 00 即 40 討 訪 m

l

m

∽ 4。 知

-桐

鮒 釦 7。 6。 知 4。 知 加 -一一_I-. 実線(Aの成績 ) 2 3 4 5 6 7 8 9 10匝) 図1 Aの学業成績に関する図 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10匝l 図

2

βの学業成績に関する図 一▲

l

-

-

l一一一、 実線(Cの成績 ) 点線 (学級の平均 ). 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10桓) 図

3 C

の学業成績に関する図 ための質問紙(aい (bい (C)2。前者 には, 「Ⅰ,A の成績を評価 した人について ,あなたはどう思い ますか」と書かれた下に,6- 0点が与え られ る

7

段階尺度 (全 くそのとうり,かな り,やや ,ど ち らともいえない,やや ,かな り,全 くちが う) か らな る次の4項目がおかれたOそれ らは ,伝)判 断が適確である,㊥理解力がす ぐれてい る,㊥人 を見る目がある。また後者には

, 「

Ⅱ,①あなた はAの成績を評価 した人を好きになれそうですか

と書かれた下に,6-0点が与え られ る7段階尺 皮 (全 く好 きになれる,かな り,やや ,どち らと もいえない,やや,かなり,全 く好きになれない) 及び

㊥同 じく

,A

の成績を評価 した人 と共に仕 事を してみたいと思いますか」と書かれた下 に, 同様に6- 0点が与え られ る7段 階尺度 (全 くし てみたい,かな り,やや,どち らともいえない , やや ,かな り,全 くした くない)がおかれた。 手 続 まず質問紙㈱

・(

B)

・lC)のいずれかを被験者にわ りあて ,それぞれの刺激人物の学業成績 に対す る 因果帰属を回答 させたあと回収 した。つ いで ,名 前の部分が切 り取 られた質問紙LAj・lB)・(C)の うち, さきに当該被験者が回答 したものと同種のもので , 回答のプロフィール全体を反対方 向に 0 (被験者 の もの と全 く同 じ)または1また は3ポイ ン トず らしたにせの用紙 (筆記用具ない しは○のっ け方 は被験 者 と異な るよ う配慮 された )を配布 し, 「他の人の ものである」 と教示 して ,その評価能 力の判断な らびに評価者に対す る好悪感情を,質 問紙(aは たは(bは たは(C)に回答 させた。 結果 と考察 学業成績のパターンと因果帰属 A・B・C3者 の成績パ ター ンに対す るそれ ぞ れの因果帰属は,表

1

のようにな った。各要因の 影響度 についての判断をみ ると,学級平均の上下 を小 さ く変動す るAと,かな り低 い得点か ら学級 平均まで上昇す るBとでは,努力 ,能力 ,道 ,難 易の順 とな ってお り,波状に大 き く変動す るCで は,前2者 と異なり,能力と運が入れ代 ってい る ことがわか る。 この結果は ,各パ ター ンが形成 さ 質問紙(bト (C)は,(a)の質問紙のAがB・Cと入れ代る だけである。

ー7

(3)

2-れ るに至 った原因 と して は ,かな り大 きな変動が ないかぎり,運や課題の難 易 とい った外的要因 よ りも,学習者の内的要因の方 に帰属 しやすい こと を示唆するものであろう。 さらに ,安定 した能力 よ りも,変化の容易な努力の方 を重視す る傾 向が あるといえよう。 しか しなが らこの点については , 表l A・B・Cの成績に対する因果環属のM

S

D

と検 定結果

:

S

Dは ( ) 続 A B C F (N-30) (N-30) (N-30) 難 易 (f・.27) (描 ) (ミニ…3) 運 (2.1.3335) (11..4203) (21..7343) 能 力 (fl.9334) (雪霊 ) 需 08) 努 力 (3.1,2734) (4.0.572)0 (4.10.835) 5.455削 ( 7.893兼 昔 2.131 4.635*

*p<.

0

5

**

p<.

0

1

(

1

)

M

の数値大 :影響大 さ らに帰属 の際の資料 とされ る学級平均 の変動 と 組 み合せて検討 してみ る必要があ ろう。 次に ,本研究において採用 されたよ うな成績パ ターンに応 じて ,それぞれ独 自の因果帰属が可能 とみな され るか否かを統計的に検討す るために , 各要因 の影響度 をA・B・Cのパ ター ン間で検 討 した ものが ,表1のF値であ る。表か らあさ らか なように,能力を除いた3要EBで有意差がみ られ る。この結果は ,成績パ ター ンに基づ いて因果帰 属が可能であることを示す もの と解釈で きよ う。 また能力において差がみ られなか ったのは ,いず れのパ ター ンにおいて も少な くと も2回は学級平 均を上 回っていたことか ら,3着 と も能力面で問 題な しと判断されたのではないか と考え ることが で きよ う。 評価能力の判断 4項 目-の回答が合計 され るため ,得点の分布 範囲は0-24点 とな り,高得点 とな るほど評価能 力ありと判断 したことにな る。それぞれの群 のM とSDは表2に示 されて い る。 ここで注 Ejされ る のは他者による帰属のずれ の要因であ り

,0

ポイ ン ト (被験者の帰属 と全 く同 じ) と1ポイ ン ト条 件で は

,A・B・C

の いず れ のパ ター ンにおいて も12点を越えてお り,他の帰属者 の評価能 力 (煤 属能力)があるとみな して い ることがわか る。 こ れ に対 し3ポイ ン トもずれた条件で は ,かな り低 く評定 している。ついで帰属のずれ と成績パ ター 蓑2 帰属のずれが他者の評価能力の判断におよはす 効果のM

S

D:

S

Dは ( ) A B C 13.60 16.30 15.90 (2.80) (4.69) (4.28) 15.80 13.00 14.10 (3.89) (4.10) (●3.30) 9.70 9.20 6.60 (4.38) (3.94) (3.83) 注(1)各セルの被験者数はいずれも10名 (2) Mの数値大 :評価能力高 ンの2要因について分散分析 した ところ,表 3の よ うにな った。検定結果は ,成績のパ タ ー ンと交 互作用で は差がみ られず ,ずれの要 因の みが0・1 %水準で有意で あ ることを示 して い る。またAの パ ターンの場合には ,ずれ1ポイ ン トの方が 0ポ イ ン トよ りも高い評価を得てい るが ,統 計 的には 差がなか った。 以上の結果は,学業成績 のどの よ うなパ ター ン であ って も,因果帰属にお ける観察者間 のずれが 大 きいと,他の認知者の評価能力 は劣 って い ると 判断され ることを示 してい る。す なわち ,児童 ・ 蓑3 帰属のずれが他者の評価能力の判断におよほす 効果の分散分析表 変動 因 平方和 自由度 平均平方 F ずれ(I) 803.61 2 401181 23・186* 半 券 成績(2) 11・34 2 5・67 -(1)×(2) 126.33 4 31・58 1・822 誤 差 1404,01 81 17・33

*辛*

p<.

0

0

1

(4)

-73-生徒の学業成績のパ ターンの原因を帰属す る教師 間で評価が異なるとき,他 の教師は,理解力がな く判断が不適切で ,人を見 る目がな く,偏見 に影 響 されているとみなされる傾向のあることがあさ らかとなったといえよう。 好悪感情の生起 測定のための尺度 として

2

項 目が用意 された こ とか ら,得点は0-12点の範囲で分布が可能であ り,高得点 ほど相手に対 して好意的感情を生起 し たことになる。各群の

M

S

D

を算出 したところ. 表 4のようにな った。表の中で 目につ くのは,成 績′ヾター ンBの 1ポイ ン トずれの群を除けば ,評 価能力の判断の場合 と同様 に,0ポイ ン ト条件 と 1ポイ ント条件では中央の6点を越えてお り,他 の帰属者に対 し好感情を生起 している点である。 これに対 し3ポイン トと大 き くずれ る条件では, い くぶん悪感情を懐いていることがわか る。つぎ 表4 帰属のずれが他者への好悪感情生起におよほす 効果の

M・SD:S

Dは ( ) A B C 7.40 7.70 7.10 (2.69) (2.61) (2.02) 7.40 5.70 7.30 (1.56) (1.90) (1.49) 4.50 5.10 4.60 (2.25) (2.30) (2.42) 注(1) 各セルの被験者数はいずれも10名 (2) Mの数値大 :好感情 に帰属のずれと成績パ ター ンの2要因に関 して分 散分析 したところ,表5のようにな った。 この結 果は,さきの評価能力 と全 く同様 に,成績パ ター ンと交互作用で差がみ られず ,ずれの要因におい てのみ0.1%水準で有意差のあることを示 して い る。 上述の結果は,学業成績のパターンに関係な く, 認知著聞の帰属のずれが大 き くな るにつれ ,他の 認知者に悪感情を生 じることを示 してお り,評価 能力の場合 と同様な傾向をあさ らかに していると いえよう。すなわち,児童 ・生徒 の学業成績のパ 裏5 帰属のずれが他者への好悪感情生起におよぽす 効果の分散分析表 変動因 平方和 自由度 平均平方 F ずれ(1) 117.41 2 58.71 11.162汁*半 成蹟(2) 1.08 2 0.54 (1)×(2) 21.00 4 5.25 誤 差 425.80 81 5.26 兼TX-

紫P<.

0

0

1

ターンが形成された原因を教師 らが帰属する際に, ずれが大き くな るにつれ ,相手の教 師を好 きにな れず ,一緒に仕事を した くないと感 じるよ うにな るのである。 総合的論議 学業成績の因果帰属に際 しては,児童 ・生徒を 内発的に動機づけ,意欲を喚起 し,人格の向上が 期待されるように方向づけねばな らないといえよ う。そのために教師は互いに協力 し,児童 ・生徒 の一人一人に効果的に働 きかけることが必要であ ろう。 ところが既述のように,教師の帰属に際 して も, 期待やパ ーソナ リテ ィによる歪曲や ,評価 におけ る一般的な偏向要因を完全に回避す ることはで き ない。そ して本実験の結果 は,帰属 の食い違いが 大 きくなるほど,他の認知帰属者- の対人感情 は 非好意的となることをあさ らかに したのであ る。 すなわち,帰属のずれが大 き くな るほど,他 の帰 属者の評価能力は劣 ってお り,偏 っているとみな すようになるだけでな く,好 きになれない し,一 緒に仕事を した くないと感 じる傾向を示 したので ある。 上述のような事情 にあっては,認知者の帰属を 偏向させ る諸要因を解明す るために努力す ること はもちろんであるが ,それよ りも教 師各 自が帰属 が異なるときにどのような対人感情が生 じやすい かを認識 し,留意す ることが肝要で あろう。また 今後の課題 としては,個々の児童 ・生徒の特性 に 応 じた因果帰属のための客観的 ・操作的な指標や 基準づ くりを進めること,そ して彼 らに効果的に 関与す るためには教師はどのように働 きかければ 74

(5)

-よ いか をあ さ らか に して い くことが あ げ られ -よ う。 引 用 文 献 梶 田叡- 1975教育における評価の理論 金子書房 古城和敬 ・天板哲治 ・相川 充 1982教師期待が学業 成績の原因帰属に及ぼす効果 教育心理学研 究,30,2,1-9. 内藤哲雄 1977 学業成績の評価における因果帰属のち がいが対人感情におよぼす効果 日本教育心 理学会第19回総会発表論文集,526-527. 内藤哲雄 1984 因果の 自己帰属 ,他者か らの帰属 と対 人感情 社会心理学 評論,3,64-71. ー75

参照

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