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考察「絵画製作」3 : しなやかな造形活動を求めて

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Academic year: 2021

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- しなやか な造 形 活 動 を 求 め て-佐 藤 五 十 五 (前号に続 く)

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ほ じ く (弾 く) 「ほ じ く」 とい う身体動作は,かつては 「おは じき」 とい う玩具 の遊 びの中に象徴的に繰 り返 されて きた。貝が らや ガラス玉等を指先でほ じいて,当てて取 った り,陣取 りを した り す る古 くか らの遊びである。「御弾」 とい う言葉 は, その身体動作 を取 り上げて, 通用 させ た ものであろ う。人差指の爪先 を親指の腹な どに当てて,はねかえ らせて他の物を打 って, その物を移動 させ ることに代表的な意味がある。 これは,指先 の身体機能に関す る動作で, 親指の腹に当てて人差指を擁めることができな くては

,

「ほ じ く」 とい う力が生れない。 人 差指ばか りでな く指を代えて, どの指で も 「ほ じ く」力が生れた ら,ほ じ く物 を ど の 方 向 に, どこまで と力の コン トロールが必要にな って くる。いつで も力 まかせに 「ほ じく」ばか りでは, ゲームにな らない。 また,は じき方に よって差 が生 じる所 に,繰 り返 され る身体動 作 の意味があろ う。 oおは じきをほじく。 oビー玉をほ じく。 Oどん く・りをほ じく。 o棒で小石をほじく。 o鉛筆を立 ててほじく。 o水をほじ く。 。筆の絵の具をほじ く。 おはじき (御弾) とい うガラスでできた薄い網 目のある玩具か ら 「ほ じ く」物を変えてい くと,当然 の ことなが ら,ほ じき方に変化が生 じよう。 ビー玉 のほ じき方 は, おは じきのは じき方 とは少 し違 う。(前出 7. ころがす の項参照) また, ほじくとい う動作 は手先 の 小 さな動作か ら,全身を使 っての大 きな動作 も可能である。それは屋外で小石 を ほ じ い た り,落葉 をほ じいた りとい う活動の中に見 ることがで きるであろ う。棒の先を地 面 に つ け て,辛,腕, あるいは上半身をかけて擁めることに よって,小石を よ り遠 くへ,ほ じ く力が 生れる。ほ じかれて飛 んで行 くものの飛び方,転 が り方,舞い方,あるいは飛ぶ距離等に よ って,は じき方 の工夫を兄い出す ことになろ う。一つの工夫 は一回の試技で終 る こ と は な い。 また5回,10回,15回 と繰 り返 され ることに よって, この動作 の身体化が実 現 さ れ よ う。屋外で棒切れを持 って,なにげな く落葉をは じきとば した り,小石をほ じきとば した り

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とい う動作 は,所在 な く,淋 しげ な孤立 した幼児 の動作 に見受 け られ る。 しか し, ほ じかれ て転 が ってい く小石 の動 きや, ほ じかれて舞 い上 りヒラ リと落 ち る枯葉 の動 きに心 を奪われ て,何 回 も何回 も繰 り返す ことの中で一 つの精神的 な平衡 が保 たれ るのではなかろ うかD 棒 でほ じ く活動 と大変似た活動 としてほ,机上 に拡げた紙 の上 に鉛筆 を人差指で真直 ぐに 立てて,力を加 えなが ら,少 し斜 めにす る と鉛筆 はほ じかれた よ うに倒れて飛ぶ。その時, 鉛筆 の先 は勢 いのあ る短 い直線 を紙面 に残す。繰 り返 しを捉 しゲームを継続 させてい くもの のひ とつに, この紙面 に残 された線 があ る。 ひ とつ の動作が新 しい変化 を生み,一 つの痕跡 を残す ことになれば, その痕跡に 日を向ける ことに よって,新 たな取 り組み として動作を繰 り返す ことがで きるであろ う。 ビー玉 をほ じいた り, どん く、・りをほ じいた りす ることで, こ うした痕跡 を残す ことができないであろ うか。例 えば,やや濃 い 目に溶 いた絵 の具 の中に ビ ー玉 を入れ赤や責や青 の ビー玉 を広 く拡げた模造紙 の上 に置 いて, 四方 か らは じ き 合 う。 「この どん ぐ りに絵 の具 をつけて紙 の上 では じいた らど うなるか な」 とい うことで 楽 しく取 り組 め るであろ う。 どの色 を用意 し, どんな色 とどんな色 を同 じ紙面 に使わせ るかが保育者 の留意点 となろ う。 また,指先 で水 を 「ほ じ く」 とい うプールや風 呂の中 での動作

,結果の残 る方法 と結 び つける ことがで きるであろ う。指先 に絵 の具 をつけて, 軽 く 「ほ じ く」だけで,小 さな色 の 飛沫が飛 び散 る。紙 を拡げ, あるいは立てかけて,小 さな容器 に溶 いた絵 の具 を人差指につ けて, ピンピンと 「ほ じ く」。画用紙 が濡れていれば, 小 さな飛沫 は, 落 ちた とた んに潜み なが ら拡が るであろ う。 また,硬 い筆や歯 ブラシに溶いた絵 の具 をつけて指先でほ じいてや る と,絵 の具が霧状に紙面 に落ち る。紙 の上 に物 を置 いた り,形 を切 った紙片を置 いた り, 色 の組み合わせ を工夫 してや るの もよいであろ う。 こ うした幼児 の活動で留意すべ き点は, どれ くらい繰 り返す活動 にな るか とい う点であ る。それには,紙面 に現われた色や点や筋等 を色 々な ものに見たて ることやそ こか ら一枚 の紙面 をつなげてい くことで,道 にな った り, 砂浜 にな った り,空 にな った りと発 想を拡げ る と繰 り返 し活動が展 開 しそ うであ る。 また, それに付随 して必要 な ものの製作 - と発展 しそ うである。一人 で何枚 もの紙 を要求 し,更に 「先生, またあ した もや ろ うよ」 とい う幼児 の反応 が兄 い出せた ら, この活動 の意味 が出て きた ことになろ う。 o糸を ピー ンとは ってほ じく。 oゴムをひ っぼ ってほ じく。 o櫛 の歯 をほ じ く。 o針金をほ じ く。 弾 くことに よって起 る結果 には,物 の移動 のはかに,音 の発生 があ る。 ピア ノを弾 く,辛 ターを弾 くと

,

「弾」の字 を用 いて,その演奏 を表わす程 である。 弦 楽器, 特 にギターやマ ソ ドリンは指先や爪 で 「ほ じ く」 ことな しには,演奏にな らないO弦 をほ じくことをつ まび く (爪弾 く) ともい う。琴や三味線 も 「ばち」で 「ほ じ く」 ことに よって演奏が可能 である

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といえる。糸や ゴムを強 く張 って 「ほ じく」。 糸や ゴムは, 激 し く振動 してかすかな音 を出 す。音は同 じだろ うか, どの ように達 うだろ う。 もっと大 きな音にす ることはで きないだろ うか。ほかに,ほじいて音の出るものは何 があるかな。櫛 の歯 を 「ほ じ く」のは, ち ょっと したいたず らだ。お母 さんに見つかれば きっと大 目玉であろ う。 しか し,櫛 の一本一本の歯 の振動 とその昔は, 他には見つか らない貴重な音だ。 「ほ じ く」 とい う指先の動作 と物 との かかわ り合いは,そのかかわ り方に よって生ず る結果の捉え方に よって,絵画製作 の分野の 色遊びにな った り, 自然 の分野の不思議 さとの出合いにな った り, また音楽 リズムの分野の 楽 しい楽器遊びや音集めに も展開 しよう。

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た た く (叩 く)・うつ (打 つ ) 「たた く」 と 「うつ」は共通 した動作 を表わす ことが多 く,二つの吉葉 を入れ替 えて も全 く差 しつかえない こともあるようである。「手をたた く」 とい う動作は 「手 を うつ」 と言 い 替 えて も違いはない。 勿論

,

「手を うつ」 とい う言葉には, 物事 の きま りがついた ことを表 現す る特徴的な意味がある。 しか し,それ も物事の きま りがついて,それを祝 って手を 「た た く」 ことか らの転用 であろ うか ら動作 としては重 なるわけである。一般的に 「うつ」は物 と物 とを強 く当てた り,たたいた りして, ある物 を安定 させた り,固定 させ ることに主な意 味があるが,かな り派生的な意味 も多 く持 っている。 しか し,それ も 「たた く」 とい う動作 を語源に しての意味付けであると思われる使い方 が多い。 それに対 して 「たた く」は,端的 に動作 そのものを表現 している言葉 であるとも言える。 語源は

,

「たた く」時 の音 「たた」 の動詞化 と言われている ように,単に物 と物 とが強 く当た るばか りでな く,それが何度 も繰 り返 し, あるいは続 くよ うな場合や,音を伴 うことに 「たた く」動作 の語源があ る と言 え る。 o手でお母 さんの頬 っぺをたた く。 o握 りこぶ Lで机をたた く。 o手のひ らで障子をたた く。 0両方 の手をたた く。 o紙筒で机をたた く。 。お箸で茶碗をたた く。 「たた く」 とい う動作 は,乳幼児期に於いても, ごく早 く表われ る動作 で,最初は勿論, 目的を持たない無意味な身体の動 きそのものである。喜びの身体表現 としての手の動 きが強 く物に触れ ることに よって始 まると言え よう。 しか し,そ うした偶発的な手の動 きを通 して 序 々に物を知 り,肩か ら上腕,肘,手首 とそれぞれの機能分化 を得 て,手 と手 を うち合わせ た り,玩具を持 った手 で物を 「たた く」 とい う動作に発展す ると言 え よう。 こ うした一連の 動作は,幼児の認知活動には欠かせない もののひ とつであ り,飽 くことのない繰 り返 しのな かに成長,発達があると言え よう。

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oカス タネ ッ トをたた く。 。太鼓をたた く。 oコ ップに水を入れ て棒 でたた く。 o拍子木 をたた く。 「たた く」 ことで音が出て,その昔に よって,更 に繰 り返 しを捉が され る動作 は, この動 作 の語源に通ず る と言 え よ う。物 には,それぞれ個有 の音 がある。硬 い音,柔 らかい音,響 く音,軽い音,重 い音,澄 んだ音,濁 った音,等。 こ うした音 は,箸や棒や石や色 々な物 を 道具 として持 ってたたいた り,素手 の掌 の平 でたたいた り,指先 でたたいた り等,その物に よる適 当なたた き方 に よって,個有 の音 にな ってい る と言 え る。 こ うした音 の違 いは, 自ら 直接,その昔 を出 してみない とわか らない。 また, そのわか り方 も耳か らだけの 音 で は な く,たたいた時に手に響 く,その感触 を通 して聞 こえ る音 でな くては,音 を通 しての 「物」 理解 につなが らない。物 の音 とい う点 では, この 「たた く」動作 は, まだ認知活動 の域 を出 ていない。 しか し,たたけば,その衝撃 として瞬間的に出 る音 と 「ど うした ら, いい音にな るかな」 とい う働 きかけの中で幼児 の工夫 して出 した音 では,身体機能 のかかわ り方 が違 う 筈 であ る。認知活動 としての 「物」理解 の範囲を越 えて,意 図的 で 目的意識 の明確 な動作 を 伴 った活動 であ ると言 え よ う。 それは物 の音か ら楽器 としての音 -の転換点 である。 「たた く」楽器,打楽器 は, まさに この 「たた く」 ことの動作 の究極 を求 め る物 で もあ る。 o握 りこぶ Lで粘土 をたた く。 oス コ ップで砂 の山をたた く。 。金槌 で釘 を うつ。 o石 で木 の実 をたた く。 o花壇 に杭 を うつ。 oバ ッ トでボールを うつ。 oふ とんたた きでふ とんをたた く。 oクレヨンで点を うつ。 粘土 を 「たた く」 ことは,その昔 のためではな く,たた いて平 らにす るためで,握 りこぶ Lで強 くたたいた り,手 の平 を使 って軽 くたたいた り, どれ くらい 目的に合わせて平 らにす ることがで きるか,その ことにのみ集中 した動作 と言 え る.手 をス コップに替 えて,道具 を 使 って砂 をたた く。 これ もたたいて, どの ような形 に変 えた いのか明確 な意図がある。金槌 で釘を 「うつ」 のは, なかなか難 か しいが, は じめは厚 い発 泡スチ ロール な どに軽 い木槌 で やれば よい。 ここに も釘 を打ち込む と言 う明確 な 目的 が必要 だ。 しか し, この 目的 は, あ く まで も 「たた く」ための 目的であ り釘 を打 って, ロボ ッ トを作 る とい う目的 ではない。つ ま り, ロボ ッ ト作 りや舟作 りは,その過程 の一 部に釘 うち とい う動作 があ るに過 ぎないOそ う ではな くて,始 めか ら終 りまで釘 うちを続 けた り,繰 り返す活動 を兄 い出す ことが動作 の身

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体化に通ず るといえ よう。 ロボ ッ トな ら釘 ロボ ッ トで,手 も足 も目も口もア ンテナ も釘を う って,できるだけた くさんの釘を うって, ロボ ッ トを作 るとい う活動 として成 り立たせたい ものである。 こうした動作が 目的通 りに実現 され るた糾 こは,例 えば,道具が しっか り握れ た り, しなやかに手首や肘 が機能 した り, あるいは

,

「たた く」 目標 を しっか り見据 えるこ とができた り,適当な力を込めた り抜いた り,視覚 との脇応や身体全体 の対応がで きな くて はなるまい。逆に言 えば, こうした対応や しなやか さは, 目的や明確 な 意 図 を 持 った 「た た く」 とい う動作を,その 目的に少 しで も近づ くよ うに繰 り返す ことに よって獲得 され る と 言 えないであろ うか。

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5

ひ っぼ る (引 っ張 る) 対象を手 もとに近づけ ようと力を加 える動作を 「ひ く」 と呼ぶが

,

「ひ っぼ る」は普 通 の 状態 とは違 って,その事が一段 と顕著な様を表現 してい よう。 また,語源 「ひ きはる」には 「無理に連れてい く」や 「た るみのない ように強 く引いて張 る」や 「強 い意志 を持つ」等 の 語意があ り

,

「はる」 とい う言葉 の持つ意味を示 してい ようO 身体 のかかわ りは手を中心に して

,

「指先でつまんでひ っぼ る

「指にか らげてひ っぼ る

「手 でつか んでひ っぼ る

「足を ふんば って全身の力でひ っぼ る」 と,身体機能の成長 ・発達に伴 って,身体各部へ と広が り を持 ってい く。また,総 じて,細 くて長 いものがひ っぼ る対象 となるのは,長いひ も状の形 態 がひっぼ られてのびて長 くなった形態 と疑似 していることに よるものであろ う。 oお母 さんの手をひ っぼ る。 o洋服をひ っぼ る。 o髪 の毛をひ っは るO 。テ ィッシ ュベ ーパ-をひ っぼ り出す。 「ひ っぼ る」 とい う動作 は,手 の磯能 としての 「つ まむ

「に ぎる

「つかむ」 とい う持つ 動作 と一体 のもので, こうした手の機能の働 きとして現われ ると言 え よう。つ ま り幼児が物 を手にす ることは,それを手近に引 き寄せ る意図があ っては じまると言えるか らである。物 をつかんで,引 き寄せ ようとい う時にそれが固定 されていた り,その片方や一部が動かない 時に, この引 っは る とい う状態が生れ ると言 え よう。乳児がお っぱいを飲みなが ら, お母 さ んの髪の毛をひ っぼ る動作は,無意識的に振 って動かす手に加 え られた抵抗感 で,振 る力や つかむ力への刺激 となろ う。「ひ っぼ る」動作 は, 常に, そ うした抵抗感を伴 っての身体活 動 で,その抵抗感を打ち破 った時に,ひっぼ った成果が兄い出 され るとも言える。 こ うした 繰 り返 しの中で

,

「ひっは る」 ことの意味 とその結果が身体化 されてい くと言える。 箱に入 ったテ ッシ ュベーパ-をつまんで 「ひっは る」のほ,何 とも不思議 な快感であ る。ひ っぼ っ た結果は,す ぐに現われ る。 しか し箱は, また元 どお りに,つ まんでひっぼ ることを待 って いる。 自分 の横に山の ようにひ っは り出 されたテ ィッシュペーパーには 日も くれず,次か ら 次 といつ までも繰 り返 しが続 く。 これは, まだ這い這いをする くらいの 0歳児 の行動 として

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見 うけ られ るもので, しば らくす る と余 りに も単純す ぎて見 向 きもしな くな るが, これを ヒ ソ トにひ っぼ る ごとに違 った ものが出て くる ような箱を作 ることがで きた ら,年令層に関係 な くひ っぼ る活動 として楽 しめるであろ う。 。布や紙 をひ っぼ る。 o糸やひ もをひ っぼ る。 o綱 ひ きの綱 をひ っぼ る。 oゴムをひ っぼ る。 oエキスパ ンダーをひ っぼ る。 oクラ ッカーのひ もをひ っは る。 o釘抜 きやの こぎ りをひ っぼ る。 「ひ っぼ る」 とい う動作 は,原初的には 自 らの手 もとに引 き寄せ る とい う意 を含 んだ もの で, それは時 には, お互 いに 「ひ っぼ り合 う」 とい う状況で成 り立つ動作 で もあ る。一枚の 新 聞紙 も友達 と互 いに取 りあげれば

,

「ひ っぼ る」 とい う動作 として, その結果 に期待を寄 せ ることにな る。紙 であれば破れ る とい う結果 が待 ってい るわけであるが, ひ っぼ ることに よって変形す るものは, また別 の興味を呼 び さますであろ う。ひ っぼ り合 うもの の 代 表 は 「つなひ き」 であ る。両手 で しっか りと綱 を握 って,足をふ んば って,腰 をおろ して全身 の 力を こめて 「ひ っぼ る」。 綱 は, なあ とびの ロープであ った り, くる くる巻 いて筒 に した紙 であ って もよいであろ う。新 聞紙 で もこ うすれば,簡単 に破れは しない。 ゴムは, ひ っぼ り 合 いには使 えないが,ひ っばればのび るし離 せば勢 い よ く元 に戻 る。 ゴムには不思議 な力が ある。ひ っぼれば, のびた分だけひ っは り返す力が生れ るのだ。輪 ゴムに紙切れをつけて, ひ っは って離 せば, クル クル回 りなが ら飛 んでい く。 この単純 な,ひ っぼ って離 すだけの動 作 で ゴムは貴重 な遊 び道具 にな る。 ゴムを使 えば, ひ っは らず には遊べ ない。そ うした点 で は,輪 ゴムか ら始 まって長 い平 ゴムやバ ン ド状 の強 い ゴム等,多種類 の ゴムが, お もち ゃ箱 に入 っていて もよいだろ う。エキスパ ンダーやぜ んまい も, ひ っぼ って離 せば勢 い よ く戻 る。 しか し, ゴムの柔 らか さや多様性 は,何 とい って も幼児に もって こいだ。 ゴムを使 った 簡単 なお もち ゃ作 りと,その遊 びは もっとた くさん考 え られ て よいだろ う。その他, 日常 の 遊 びの場面 で コマのひ もをひ っば った り, タ コ揚げの糸をひ っぱ った り, コー ドやホースを ひ っぱ った り, また, の こぎ りや釘抜 きや巻尺やペ ンチ等 の道具類 を使 う時 も力を込 めて引 く動作 「ひ っぼ る」を欠かす ことはで きない。そ して,それは, しっか り握 った り,つかめ ない とで きない。た くさんの色 々な物 とのかかわ りの中で,ひ っぼ り方 もしなやかに, また 力強い動作 として身 についていかな くてほな らないであろ う。

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は る (掘 る) 「は る」 とい う動作は,指先や爪 で物 に穴 を あけた り,窪みをつけた りす ることか ら始 ま って,指や爪 に替 わ る色 々な物 を道具 として使 いなが ら,対象 の変化 とかかわ りあ ってい く

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動 作である。その変化 は,次第 に穴 が大 き くな った り,深 くな った りとす るのだが,視点 を 変 える と,反対 に削 り取 られて小 さ くな った り,薄 くな った りしてい るわけである。「は る」 ことは,取 って無 くす ることで, い らない余計 な部分 を取 り去 ることに よって,物 の形 を見 つけてい く方法で もあ る。 また砂や土や雪 や氷等 の 自然物 を対象 に しての遊 びの場面 では, なにげ な く繰 り返 され る動作で もあ る。それ は 「は る」 とい う動作 が,山を作 った り,線 を 引いた り, うめた り,集 めた りとい う活動 の中に必然的に組 み込 まれ てい る動作 であ るか ら であ る。 また,穴 をあけ るとい う動作 は平面的 な ものを対象 とす ると 「さす」「破 く」「とお す」等 の 言葉 で示 され るが,立体的 な ものを対象 とす ると 「は る」 とい う動作 にな るO これ は,「は る」 とい う動作が本来的 に立体的 な "もの"を対象 として取 り組む動作 であ る こ と を示 してい よ う。 o指先でパ ンに穴をあけ る。 o指先で壁 に穴をあけ る。 0両手で砂 をは る。 o雪 をかためてス コ ップではる。 o発泡スチ ロ-ルを指先 ではる. パ ンや葉物 に穴 をあけ ることか ら始 まって 「は る」 とい う動作 で幼児が喜ぶのは,穴が向 こ うにつ き抜けて, トンネルがで きることであ る。穴 を通 して見 え る向 こ うは,何故か違 う よ うに見 え るのだ。砂場遊びで盛 んなのは,決 って トンネル は りであ る。 しか しこれは,た だ砂を 「は る」だけではなかなか成功 しない。砂 が水 を含 んで湿 っていな くてほ な ら な い し, しっか り固めた山を作 らな くてはだめだ。慎重 に少 しず つ, は っては固めなが ら進 まな い と うま くいかない。大 きな山な ら, あっちか らも, こっちか らも トンネル は りがで きる。 どこかでだれかの手 と握手がで きた ら,貫通 だ。 トンネルを通 って,電車が走 る。 トンネル を抜けた ら鉄橋だ

川 をはろ う, ダムを作 ろ う,池 もはろ う,水 も流そ うと砂場 の活動 は展 開す るであろ う。砂場 の こ うした活動で大切 なのは,腕 ま く りを して,素足にな って,肌 を 通 して砂 の感触を知 ってい くことであろ う。砂 まみれにな ること,汚れ ることへの心配 や嫌 悪感を取 り除いてや ることが保 育者 の仕事 で もあ る。 。ス コ ップで土 に穴をは る。 o木 の板をは る。 o畑 の芋をは る。 o宝物 をは る。 。化石をはる。 畑や花壇 の活動 の中で も, この 「は る」動作は欠かせない。芋 は りは,そ うした活動 の中 では代表的 な ものであ る。鰍 では った り, ス コ ップでは った り,手 や指 でほ った りして大 き な芋をは り出す ことがで きた ら,大変 な感激 であ る。 1つほ った ら, また 1つ。次か ら次 と

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は りた くて しかたがない。は られた芋 は宝物の よ うである。 「は る」 ことは, 土 の中に埋 っ てい る宝物を 「は り出す」 ことで,芋 は りの最中に不思議な色の石や動物に似た形 の石が見 つか った りもす る。そ うして平 らなスべスべ した石や丸 い白い石が,いつ まで もポケ ッ トに 入 ってい る宝物 にな った りす る。 また宝物 は,いつでも土 の中にあるわけではないか ら,衣 んなで宝物を埋 めてか ら宝 さが Lをす ることにな った りす る。土や砂ばか りではな くて,冒 の中に埋め るの もおもしろいだろ う。 こうして 「はる」 ことは 「埋 める」 ことに よって捉が され 「埋める」 ことはまた 「はる」 ことに よって捉 されて,楽 しい繰 り返 し活動が展開 しそ うであ る。(前 出 10. うめ る の項参照)

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は る (貼 る ・張 る) 「は る」 とい う動作は,乳幼児か らの身体動作 の横能分化 の上で決 して偶発的に始 まる動 作 ではな く,具体的な指導に よって初 めて,身体化 されてい く動作であ る。それは,紙や布 等 の薄 くて平 らな ものを対象 とした指先の動作 であるが,その平 らな もの と指だけのかかわ りにおいて成 り立つ動作ではな く

,

「糊」 とい う特殊な性質を持 った材料を介在 させ る こ と に よって,初 めて

,

「は る」 とい う動作 として成 り立 ってい ると言え る。 また 「は る」 とい う身体動作は複合的な動作 で,は る紙を 「切 る

「ちぎる

「やぶ く」 ことや,糊 を 「塗 る」 「のばす

「つけ る」 ことや,は る紙を 「お さえ る

「こす る」 こと等のい くつかの動作の連 続 として考えることがで きよう。 これは, 目的意識 とその結果を充分に予測 しなが らの活動 として位置付け ることがで きる。 しか し, それはまた

,

「は る」 ことが方法 ・手段 として色 々の活動の補助的な役割を課せ られ る一因で もあ る。 。テープを切 って リングにして糊ではる。 o色紙をちぎって糊ではる。 。セ ロテープで紙をつなげてはる。 oシールをはる。 「は る」 とい う動作は特定 の身体の動 きはな く,色 々な他の動作の複 合 で あ る。それ故 「破 く

「きる

「つなげ る

「な らべ る」等 の他 の動作 と一体にな って,互 いに新 しい 変 化 を生 んで幼児の発想に働 きかけ,更にその繰 り返 しを誘 う動作 としての意味があろ う。 テー プを切 って, リングに して 「はる」 とい う活動は,そ うした意味では,最適な ものである. 次第,次第に長 くつなが る変化に刺激 されて,蛇 が電車に,電車が川に変 って糊では る動作 は楽 しく繰 り返 され る。糊を塗 るのは指先で,糊材のぬ るぬ る,つ るつ るした,その感触を 通 して,は りつ くとい う感覚的な理解が必要 であ る。(前出 9. ぬ る の項参照) また, 色紙をちぎって,糊では って どんどんつなげて, この道 どこまで続 くかな とい う年少向けの 活動 も同様であろ うo ここでは糊のほかにセ ロテ-プや ガムテ-プを使 って もよ い で あ ろ う。ひ っぼ ってつなげ る吊 り橋の ような場合 は,糊 よ りも接着力が強 くて,活気に満 ちた活 動 が滞 ることな く大 きく拡が るか も知れない。

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o和紙を切 って リンゴにはる。 (張子を作 る) oダ ンボ-ル箱に色紙をはる。 (ゴ ミ箱を作 る) 。いすに,す っぽ り紙をはる。 紙をは るのに,紙 と紙ではな くて,物に紙をは ることも多い。 張子作 りは,物の上に紙を幾重に も幾重に もは り重ねて, まさに 「は る」動作を主 とした 活動であ ると言え よう。張子を作 るのには薄い紙 でな くてはいけない し,それで適当な厚 さ まで,は り重ねてい くことにな ると, 日を置いて乾燥 させなが ら,ひたす ら 「は る」のみで あ る。勿論

,

「は る」だけででき上 るわけではな く, 切 った り, 色を塗 った りして, ようや くでき上 ることにな る。 こ うして, でき上 った ものを飾 った り物入れ として使 った りす るの は,それな りの物の取扱いではあるが,思い切 って転が した り,つなげて吊るした り,ひ も をつけて回 した り等 の動的な活動の遊具 として使 うことに よって, も う一度,張子を作 ろ う とい う繰 り返 し活動の展開は得 られないであろ うか。 「はる」 ことは,そ こに何 らかの 目的意識があることは前に も述べたが, 物 の 上 に 「は る」 ことに よって,その物を隠す ことも,そ うした 目的のひ とつであろ う。 ダ ンボ-ルの味 気ない表面や 目ざわ りな広告は,別 のお気に入 りの紙をは って隠す ことに よって,新 しい も の として生れ変 ることになる。 ゴミ箱作 りか ら始 まって, ダンボ-ル とダンボ-ルを高 く積 んではって ビルに した り,長 くつなげては って基地に した りして,そのダンボ-ルに紙をは った り,色を塗 った り,線を引いた りと 「は る」 ことか ら始 まる活動 も大 きな展開を見 るこ とができるであろ う。(1985.1.10) (次号に続 く)

参照

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