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<実践報告>認知行動療法の基本モデルを用いた精神科看護師のストレスと精神健康状態に対する介入効果 利用統計を見る

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認知行動療法の基本モデルを用いた精神科看護師の

ストレスと精神健康状態に対する介入効果

The Effects of Intervention Using the Basic Cognitive Behavioral Therapy Model on Stress

Coping and the Mental Health Status of Psychiatric Nurses

神澤 尚利,中本 和典,水野恵理子

KAMIZAWA Naotoshi, NAKAMOTO Kazunori, MIZUNO Eriko

要 旨

目的:精神科看護師に対して認知行動療法の基本モデルを用いた集団介入を行うことによってストレス対 処行動を取る傾向が強まることを,介入を行わない場合と比較して明らかにすることである。方法:精神科 病院に勤務している看護師 17 名を対象(介入群 9 名,比較群 8 名)とした。介入は,心理教育と認知行動療法 の基本モデルを用いた演習,ディスカッションを取り入れた構成で,1 週間に 1 回,全 4 回,1 回は 90 分で クローズド形式であった。評価には,SSCQ 下位尺度【対処要因】と日本版 GHQ 短縮版 28 を用いた。分析は, 事前と事後における介入群と比較群との得点を比較するために Mann-Whitney の U 検定を行った。結果:事 後の群間比較では,介入群と比較群の「ストレス対処行動」得点に有意差が認められ,GHQ28 得点に有意差は 認められなかった。結論:認知行動療法の基本モデルを用いた今回の介入によって,事後に比較群よりも介 入群で「ストレス対処行動」を取る傾向があった。

PURPOSE: The study aimed to verify the effects on stress coping and mental health status by using the basic CBT model for psychiatry nurses in a group. METHOD: The subjects were 17 psychiatric nurses (inter vention group n = 9, comparison group n = 8) who worked in a Psychiatric Hospital. The intervention was constituted psychoeducation, practice using the basic CBT model and discussions. This program consisted of four sessions, 90 minutes each, over four weeks. The nurses were evaluated using two inventor y sur veys. The Stress and Stress Coping Questionnaire and the General Health Questionnaire-28 scores of the intervention group were compared with those of the comparison group. Mann-Whitney U tests were used for comparison. RESULT: In comparison between groups post-inter vention, the stress coping action score was significantly different and the General Health Questionnaire-28 score was no significantly different. CONCLUSIONS: As the intervention using the basic CBT model, the inter vention group tended to prefer stress coping action compared to the comparison group post-intervention.

キーワード 認知行動療法の基本モデル,ストレス対処行動,精神健康状態,精神科看護師

Key Words The Basic Cognitive Behavioral Therapy Model, Stress Coping Action, Mental Health Status, Psychiatric Nurse

受理日:2016 年 7 月 19 日

山 梨 大 学 大 学 院 総 合 研 究 部:University of Yamanashi, Graduate Faculty of Interdisciplinary Research

して感じ,悲しみや怒り,恐怖等の否定的感情を感じて もそれを抑制して看護し続けること2)から,他科の看護 師と比較してより多くの感情コントロールを要求され る。また,ストレスは精神科看護師のメンタルヘルスや 日常のケアに重大な悪影響を及ぼし離職を引き起こす原 因となり3),精神科看護師は他科の看護師に比べてバー ンアウト率が高い4) といわれている。 看護師がストレス対処として相談をする相手は同僚が 最多であるが,専門家の活用を希望しているにもかかわ

Ⅰ.緒言

看護師の仕事は感情労働であり,ストレスと関連し燃 え尽き症候群(バーンアウト)に至ることがある1)。精神 科看護師は患者が病的世界で体験したことを,訴えを通

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らずその活用はほとんどないのが実情である5)。実際, 病棟師長や同僚看護師の助けはあっても,日々の業務で 互いに疲弊している現実があり,自分自身でストレス対 処やバーンアウト予防をする必要がある。そのためには, ストレスを自覚し,主体的に健康的な対処行動をとるこ とが望ましい。 ストレスマネジメントの方法の一つに「認知行動療法」 がある6)。認知行動療法の技法を習得した看護師は,患 者の情動変化を促進するための援助を , より自信をもっ て行うことができるようになったと感じる7),精神科看 護師が認知行動療法や心理教育的手法を取り入れたプロ グラムに参加することは,看護師自身の気分や精神的健 康が改善されるとともに患者への態度についても良い影 響がある8)9)との報告がある。また,認知行動療法を集 団で実施することの利点の一つにソーシャルサポート機 能があり10) ,参加者同士が互いに共通する経験を分か ち合い,安心感を得る体験ができる11) 認知行動療法には基本モデル(図 1)があり,このモデ ルを用いて自分のストレス体験を理解することができ る。モデルの特徴は,環境と個人の反応との相互作用と 個人の内部で起きている反応の相互作用を,認知(自動 思考),気分・感情,行動,身体反応にわけて循環的に とらえ問題の全体像を理解することであり,このプロセ スをアセスメントとよぶ。アセスメントを通して環境と 個人の反応との相互作用や個人の反応内の相互作用を理 解することにより,何に対してどのように対処していけ ば良いのかを考えることができるため,ストレス対処を する上で最も重要なプロセスである6) そこで,本研究では,精神科看護師に対して認知行動 療法の基本モデルを用いた集団介入を行うことによって ストレス対処行動を取る傾向が強まることを,介入を行 わない場合と比較して明らかにすることを目的とした。

Ⅱ.研究方法

1. 研究デザイン 無作為割付けをしていない比較群を伴う事前 - 事後テ ストデザインである。 2. 研究期間 2012 年 6 月から 8 月の期間に介入とデータ収集を行っ た。 3. 対象者 対象者の選択基準は A 県内 B 精神科病院に勤務して いる正看護師・准看護師(以下,看護師)として,除外基 準は設けなかった。看護師全 60 名中,研究参加への同 意が得られた 17 名を対象者とした。 対象者の研究参加への手続きと割付けは,下記の通り に研究者が行った。尚,本研究は対象者が少ない可能性 があったこと,研究の実行可能性を考慮したこと,また 無作為割付けを行った場合に勤務病棟,職位,性別等が 偏り病棟業務に支障が出る可能性があったことから, 無 作為割付けは行わなかった。 1) B 精神科病院の看護部長より,各病棟師長を通じて 看護師に,研究の概要と研究説明会の日程を明記し た研究案内用パンフレットを配付し,参加希望者を 募った。 2) 説明会に参加した看護師と,説明会に参加できなかっ たが研究参加を希望した看護師には,後日個別で研 究の説明を文書と口頭で行い,文書にて研究参加へ の同意を得た。 3) 同意の得られた対象者の勤務病棟,職位,性別を考 慮して介入群か比較群に割付けを行い,決定後直ち に介入日時を対象者に伝えた。 4. 介入内容と方法 介入内容と方法は,「認知行動療法を身につける グ ループとセルフヘルプのための CBT トレーニングブッ ク」6)を参考に計画した。 介入各回の内容(時間)とグループディスカッションの 進行を表 1 に示す。介入内容は心理教育と演習,グルー プディスカッションで構成された。場所は B 精神科病 院の会議室を使用した。介入は 1 週間に 1 回,全 4 回, 1 回は 90 分でクローズド形式であった。介入回数と時 間は,対象者が心理教育の内容を理解し演習とグループ ディスカッションができることをプレテストにて確認 し,決定した。 介入群 9 名を 2 グループに分け,各グループ 4 〜 5 名 とし,全ての介入を研究者が 1 人で行った。テーブルを 囲んで座り,第 1 回,第 2 回の演習にて研究者は,主に 認知行動療法の基本モデルの記述方法についての質問に 答え,対象者全員が最近感じたストレスを具体的に書き 出せるように関わった。第 1 〜 3 回の最後には宿題を課 した。研究者は,臨床心理士や看護師が開催している認 図 1 認知行動療法の基本モデル

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知行動療法の研修を受け,心理教育や認知行動療法,集 団プログラムのファシリテーターとしての看護実践経験 をもつ。 本研究では比較群に対して,介入群と同時期に事前・ 事後調査を行ったため,マスキングは不可能であった。 また,介入実施者,アウトカム評価者,データ解析者は 全て研究者本人であり,マスキングは行われていない。 5. 評価 1)評価方法 質問紙は,ストレス対処行動の増加等を評価するため に SSCQ 下位尺度【対処要因】を,不安や抑うつ等の維持・ 改善を評価するために日本版 GHQ 短縮版 28(GHQ28) を用いた。主要評価項目は,SSCQ 下位尺度【対処要因】 の「ストレス対処行動」得点である。 事前,事後に同内容の質問紙調査を施行した。事前調 査は介入群への第 1 回介入前に両群に実施・回収し,事 後調査は介入群への第 4 回介入終了後に両群に質問紙を 配付し 3 日以内に回収した。回収は各病棟にて留め置き で行った。 2)質問紙

(1)SSCQ(Stress and Stress-Coping Questionnaire) SSCQ は八尋らによって開発された質問紙12)で,スト レッサーやコーピングのスタイルを多面的にとらえ,さ らにストレス疾患の形成に影響を与える性格因子を自ら 評価できる13) 。本研究で用いた SSCQ 下位尺度【対処要 因】は,「ストレス対処行動(23 項目)」,「気分を高揚さ せる手立て(15 項目)」,「ストレスへの耐性・性格因子(15 項目)」,「社会的援助を求める能力(12 項目)」の 4 因子 からなる。各項目の質問に「はい」,「いいえ」で答える 2 件法で各々 1 点,0 点と得点化する。因子ごとに得点を 算出し,いずれの因子も得点が高いほどその傾向が強い。 例えば,「ストレス対処行動」得点が高いということは, 「ストレス対処行動」を取る傾向が強いということであ る。本尺度の信頼性と妥当性は確認されている14)。本 研究における SSCQ の使用については開発者に使用許 可を得た。

(2)日本版 GHQ(General Health Questionnaire)短縮版 28 表 1 介入各回の内容(時間)とグループディスカッションの進行 各回の内容(時間) グループディスカッションの進行 第 1 回 ◎心理教育(60 分) ストレスマネジメントについて,認知行動療法について,認知行 動療法の基本モデルについて,認知の階層構造について ◎演習(30 分) 最近感じたストレスを認知行動療法の基本モデルに具体的に書き 出す演習 ◎宿題 自分が日頃,日常的に行なっているストレス対処をたくさん挙げる なし 第 2 回 ◎心理教育(20 分) 認知行動療法の外在化・アセスメントについて ◎演習(40 分) 最近感じたストレスを認知行動療法の基本モデルに具体的に書き 出す演習 ◎グループディスカッション(30 分) ◎宿題 認知行動療法の基本モデルに,ストレスを感じた状況・出来事と ストレス反応(認知(自動思考),気分・感情,身体反応,行動), 対処を書き出す (1) 各参加者が認知行動療法の基本モデルを用いて行っ た演習や宿題の内容を話す。 (2) 第 3,4 回は,各参加者の演習や宿題から話し合う 話題を決める。 (3) 話題提供者のストレッサーやストレス対処の詳細 を聞きながら,他の参加者は質問や意見を自由に 発言する。ディスカッションをして話題を整理し, 深めることで,ストレッサーやストレス対処で話 題提供者の中で何が起きているのか理解を深めて いく。 (4) 研究者はグループディスカッションのファシリテー ターとして,話しを焦点化,細分化,具体化し, ストレスやストレス対処のどこに問題や課題があ るのか参加者が気付き,明確化できるようサポー トする。また,否定的な発言を肯定的に捉えるこ とができる可能性を示し,発言への評価はせず自 由に発言できる環境を作る。 (5) 参加者は,ストレスやストレス対処に対する他人 の意見を積極的に取り入れる。 第 3 回 ◎心理教育(20 分) 自動思考について ◎グループディスカッション(70 分) ◎宿題 認知行動療法の基本モデルを用いて,1 週間自分のストレス体験 をじっくりとアセスメントする 第 4 回 ◎グループディスカッション(90 分)

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GHQ は 1970 年に英国の Goldberg により開発された 質問紙15)で,非器質性非精神病性障害のスクリーニン グとして作成されたものである。主として神経症症状の 把握,評価及び発見に有効とされている。日本語版 GHQ16)の信頼性,妥当性は確認され,職場の精神健康 状態の測定をはじめ広く用いられている。28 項目短縮 版は,Cronbachα 係数 0.88 〜 0.80 で,かつ妥当性はカッ トオフポイント 5 / 6 で感度 90%,特異性 86% であり, オリジナル GHQ と同程度のスクリーニング機能を有し ていることが報告17)18) されている。最高得点は 28 点, 最低得点は 0 点で,得点が高いほど精神健康状態が低い ことを示す。 6. 分析 対象者の基本属性について記述統計を行った後,属性 の群間比較のために Mann-Whitney の U 検定を行った。 各尺度得点について事前,事後における群間比較のため に Mann-Whitney の U 検定,事前 - 事後における群内 比較のために Wilcoxon の符号付き順位検定を行った。 有意水準は 5% 未満に設定した。統計ソフトは SPSS Advanced Ver.20.0 を使用した。 7. 倫理的配慮 対象者に対し,研究の目的や具体的方法,研究対象と なることへの自由意思の尊重,秘密の保持,プライバシー の厳守,中途拒否権の保障,医療と日常生活や日常業務 において不利益を生じないこと,研究者への連絡体制に ついて記した文書を用いて口頭で説明し,署名による同 意を得た。比較群にも研究終了後,同様のプログラムを 実施することにより倫理的公平性を期した。尚,本研究 は対象病院の倫理委員会と山梨大学医学部倫理委員会の 承認(2012 年 3 月 21 日)を得て実施した。

Ⅲ.研究結果

1. 対象者の概要 対象者の概要を表 2 に示す。対象者は,介入群 9 名(男 性 2 名,女性 7 名)と比較群 8 名(男性 1 名,女性 7 名) であった。介入群と比較群の年齢,看護職経験年数,精 神科経験年数,B 精神科病院経験年数について有意差は 認められなかった。また,介入群,比較群共に途中脱落 は無かった。 2. SSCQ【対処要因】と GHQ28 の平均得点と得点比較 SSCQ【対処要因】と GHQ28 の平均得点を表 3 に示す。 介入群では,SSCQ【対処要因】全 4 因子の平均得点が, 事前よりも事後で増加した。 SSCQ【対処要因】と GHQ28 得点の群間・群内比較を 表 2 対象者の概要 全体(n=17) 介入群(n=9) 比較群(n=8) p 値a 性別 男 / 女 3/14 2/7 1/7 年齢(歳) 平均(SD) 中央値 47.5(7.4)48.0 48.0(8.1)49.0 47.0(7.2)47.0 .743 職位 師長 主任 副主任 スタッフ 4 3 3 7 2 1 2 4 2 2 1 3 資格 正看護師 / 准看護師 10/7 5/4 5/3 看護職経験年数(年) 平均(SD) 中央値 24.4(8.6)23.0 25.7(9.7)24.5 23.1(7.5)23.0 .673 精神科経験年数(年) 平均(SD) 中央値 14.5(10.0)11.6 17.4(11.6)13.0 11.2(7.0)9.0 .277 B 精神科病院経験年数(年) 平均(SD) 中央値 13.7(10.4)10.0 16.3(12.6)12.7 10.8(7.1)8.3 .541 aMann-Whitney の U 検定 表 3 SSCQ【対処要因】と GHQ28 の平均得点 介入群 比較群 平均(SD) 平均(SD) SSCQa 【対処要因】 ストレス 対処行動 事前 12.2(4.4) 10.5(2.8) 事後 13.8(2.3) 10.0(3.5) 気分を高揚 させる手立て 事前 8.1(3.0) 9.5(2.6) 事後 9.1(2.7) 10.6(2.5) ストレスへの 耐性・性格因子 事前 5.6(2.2) 7.5(2.3) 事後 7.4(2.6) 6.3(1.2) 社会的援助 を求める能力 事前 8.7(2.1) 9.8(1.7) 事後 9.6(1.7) 10.5(1.2) GHQ28b 事前 6.3(3.8) 6.1(3.1) 事後 6.6(4.5) 5.9(4.4)

aSSCQ:Stress and Stress-Coping Questionnaire

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表 4 に示す。事前の群間比較では,全 4 因子得点に有 意差は認められなかった。事後の群間比較では,介入群 と比較群の「ストレス対処行動」得点に有意差(p=.044)が 認められた。また,事前 - 事後の群内比較では,介入群 の「ストレスへの耐性・性格因子」得点に有意差(p=.020) が認められた。 事前の全対象者 GHQ28 平均得点は 6.24(SD±3.38)で, カットオフポイント(5 / 6)を上回ったのは対象者の内 10 名(58.8%)であった。事前,事後の群間比較,また事 前 - 事後の群内比較で,GHQ28 得点に有意差は認めら れなかった。

Ⅳ.考察

1. 介入によるストレス対処の変化について 個人が経験した出来事に対して,どのように評価する (認知的評価)か,どのように対処する(コーピング)かに よって,心身の健康状態は大きく異なる19)。また,対 処のプロセスは単なる自動的な適応行動とは異なり,自 らの評価に基づいて起こるものである20) 精神科看護師はバーンアウト率が高い4)一方で,年齢 が高い者,看護師経験年数が長く職位の高い者,看護職 アイデンティティが高い者はバーンアウト得点が低い21) また,勤務歴が長く,役職についている精神科看護師ほ どストレスに対して認知行動療法アプローチに近い積極 的・協働的対処を用いていること22) が示唆されている。 本研究対象者は,認知行動療法的介入によりストレスマ ネジメント効果の得られた先行研究8)9)23)と比較して, 年齢(平均 47.5 歳),看護職経験年数(平均 24.4 年),精 神科経験年数(平均 14.5 年)が高かった。このことから, 対象者は既に認知行動療法アプローチに近いストレス対 処を行っていたと考えられるため,介入によるストレス 対処に対する変化は困難であった可能性がある。しかし, 本研究の介入で認知行動療法の基本モデルを用いたねら いは,環境と個人の反応との相互作用や個人の反応内の 相互作用を理解することによって,何に対してどのよう に対処していけば良いかを考えることであった。 事後の介入群では SSCQ【対処要因】全 4 因子の平均得 点が上昇し,事後の群間比較では介入群の「ストレス対 処行動」得点が有意に高かった。これは,事後に自分の ストレス体験を理解し,そのストレスへの対処行動を 取った可能性が考えられる。「ストレス対処行動」は,「食 べたり飲んだり旅行をしたり,その他にも楽しい気晴ら しの方法を持っている」,「解決のための計画を立て,そ れを実行する」,「周りの人に援助を求める」等の項目か らなる。ストレスについてグループディスカッションを 行い,他者の意見を聞き,取り入れることで,気晴らし の方法を用いる,問題や課題の計画を立て実行する,他 者に援助を求める等の対処行動を取ろうとした可能性が ある。 また,「ストレスへの耐性・性格因子」は,「私にはい つも悪い事ばかり起こる」,「自分は悪い星の下に生まれ てきたのではないかと思う」,「誰にも負けたくない」等 の項目からなり,一度作られたならば,生涯そのやり方で 対処する安定した素質として機能する自我構造である24) 本 研 究 の 介 入 群 に お け る 事 前 の 得 点( 平 均 得 点 5.6, 表 4 SSCQ【対処要因】と GHQ28 得点の群間・群内比較 介入群 比較群 p 値c 中央値(最小 - 最大値) 中央値(最小 - 最大値) SSCQa 【対処要因】 ストレス対処行動 事前事後 p 値d 11.0(6-19) 13.0(12-18) .171 11.0(7-15) 11.0(4-13) .606 .467 .044 気分を高揚させる手立て 事前事後 p 値d 9.0(4-13) 10.0(5-14) .196 9.5(5-13) 10.5(6-14) .121 .308 .241 ストレスへの耐性・性格因子 事前事後 p 値d 6.0(2-9) 7.0(5-13) .020 8.0(3-11) 6.0(4-8) .072 .080 .428 社会的援助を求める能力 事前事後 p 値d 8.0(5-12) 10.0(7-12) .131 10.0(7-12) 10.5(9-12) .084 .284 .275 GHQ28b 事前事後 p 値d 7(1-11) 5(0-14) .944 7(2-11) 5(0-11) 1.000 .922 .846

aSSCQ:Stress and Stress-Coping Questionnaire

bGHQ28:日本版 GHQ(General Health Questionnaire)短縮版 28 cMann-Whitney の U 検定

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SD=2.2)が梶原ら24)の結果(平均得点 7.67,SD=2.96)よ りも低かったことは,ストレッサーに対するストレス対 処方法が確立できていない者が存在した可能性がある。 しかし,介入群の事後得点(平均得点 7.4,SD=2.6)が梶 原ら24)の結果と同等であり,群内比較で有意に高値で あったことは,本研究の介入により自分自身のストレス やストレス体験をアセスメントし,自分自身のストレス 反応の特徴に気付いたうえで,ストレスに対処しようと した可能性があった。 介入群で「ストレス対処行動」得点が事前と比較して事 後の方が高かった者は 9 名中 6 名であった。6 名中 4 名 の職位はスタッフであり,特に 2 名はそれぞれ事前の 6 点・7 点から 12 点に上がっていた。また,6 名中 4 名は 資格が准看護師であり,介入群に含まれた准看護師全員 の得点が上がっていた。これらのことから,今後は管理 職(師長や主任等)ではないスタッフや准看護師を対象と したストレス対処プログラムが必要であると考えられ た。 2. 介入による不安や抑うつ等の精神健康状態への影 響について 事 前 の 全 対 象 者 の GHQ28 得 点( 平 均 得 点 6.24, SD=3.38)は,本武25)が精神科看護師を対象に行った結 果(平均得点 8.51,SD=5.44)や森本27)が一般診療科の看 護師を対象に行った結果(平均得点 11.7,SD=5.86)と比 べて低く,精神健康状態は良好な傾向であった。また, カットオフポイント(5 / 6)で「何らかの異常がある」と 判定される本研究の対象者の割合(58.8%)は,本武25) 結果(74.6%)や森本26) の結果(74%)よりも低かった。こ れらのことから,本研究対象者は精神健康状態が良好で あり,本研究の介入による精神健康状態への肯定的な結 果が得られなかった可能性があった。 介入群で GHQ28 得点が事前と比較して事後の方が高 かった(精神健康状態が低くなった)者は 9 名中 4 名で, 特に 2 名は事前の 3 点・1 点から 10 点・14 点に上がっ ていた。この 2 名は資格が准看護師であることが共通し ており,1 名は SSCQ【対処要因】の「ストレス対処行動」 が 7 点から 12 点に上がった者であった。これは,精神 健康状態が低くなったためにストレス対処行動が増加し ている可能性があった。 3. 研究の限界と今後の課題 限定された地域の精神科病院に勤務し,限られた人数 で業務を行っている多忙な看護師に研究への協力依頼を したため,対象者は 17 名と少数であり,選定に偏りが あったことは否めない。また,集団認知行動療法では, メンバー構成が対象者の満足度や効果に影響する可能性 があり,さらにマスキングが不可能であったことからプ ラセボ効果やホーソン効果が生じている可能性が否定で きず,1 施設のみの少数の対象者であった本研究の試み では限界があった。 本研究の主要評価項目である SSCQ 下位尺度【対処要 因】の「ストレス対処行動」平均得点における事後の介入 群 9 名(平均得点 13.8,SD=2.3)と比較群 8 名(平均得点 10.0,SD=3.5)の結果より,有意水準を両側 5%,検出力 を 80% として得られた必要なサンプルサイズは片群 94 名であった。今後の研究においては計算で得られたサン プルサイズを考慮した対象者数の決定や,そのために必 要な対象病院,対象者の属性を統一することが課題であ る。 また,認知行動療法の基本モデルを用いたアセスメン トを繰り返し実施し,自分に役立てられるようになるこ とがストレスと上手く付き合うための基礎になる27) したがって,ストレス対処に関する意識や行動を変化さ せ,効果を維持するためには,セルフアセスメントを継 続し,認知行動療法の知識や基本モデルを用いたセルフ アセスメントの習熟が必要であったと考える。今後は, 職位や資格を考慮した介入期間・介入時間の設定が必要 である。

Ⅴ.結語

1. 認知行動療法の基本モデルを用いた本介入によっ て,介入群では比較群よりもストレス対処行動が 増加することが示唆された。 2. 本介入によって,ストレス耐性や性格が向上・改 善する可能性が示唆された。 3. 本介入によって,精神科看護師の精神健康状態の 変化は認められなかった。

謝辞

本研究にご協力いただきました施設スタッフの皆様に 心より深く御礼申し上げます。 尚,本研究は 2013 年山梨大学医学工学総合教育部修 士課程に提出した修士論文の一部を加筆・修正したもの であり,一部は第 10 回日本うつ病学会総会にて発表し た。 文献

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15) Goldberg D(1978)Manual of the general health questionnaire. NFER,England.

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表 4 に示す。事前の群間比較では,全 4 因子得点に有 意差は認められなかった。事後の群間比較では,介入群 と比較群の「ストレス対処行動」得点に有意差(p=.044)が 認められた。また,事前 - 事後の群内比較では,介入群 の「ストレスへの耐性・性格因子」得点に有意差(p=.020) が認められた。 事前の全対象者 GHQ28 平均得点は 6.24(SD±3.38)で, カットオフポイント(5 / 6)を上回ったのは対象者の内 10 名(58.8%)であった。事前,事後の群間比較,また事 前 - 事後の

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