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<教授就任講演>低酸素応答転写因子HIF-1 をターゲットとした血液腫瘍治療の展開(第169回山梨大学医学会例会) 利用統計を見る

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v 第 169 回山梨大学医学会例会 日時:平成 22 年 5 月 7 日(月)午後 5 時∼ 6 時 会場:新臨床研究棟 2 階会議室

教授就任講演

低酸素応答転写因子 HIF-1 をターゲットとした血液腫瘍治療の展開

桐戸 敬太

山梨大学医学部 血液・腫瘍内科

司会 有田  順教授

【要旨】がん細胞は,遺伝子変異により不死化や分化停止などの特性を獲得する。一方,細胞内の 変異に加え,がん細胞を取り巻く周囲の環境(がん微小環境)ががんの生物学において重要な役 割を果たすことが明らかになりつつある。固形がんでは,血管より離れた腫瘍中心部は低酸素状 態に陥るが,これに応答してがん細胞は糖代謝酵素の発現を上昇させ糖代謝経路を酸素非依存性 の解糖系へとシフトさせる。この現象は,低酸素状態への適応のみならず,がん細胞の急激なエ ネルギー消費にも有利に作用する。さらに,がん細胞は能動的に微小環境を自身の生存に適すよ うに改変する。すなわち,がん細胞はサイトカインやケモカインの産生を介して,腫瘍血管を誘 導する。また腫瘍間質細胞に働きかけ,その代謝経路をがん細胞自身の代謝産物の処理に適する ように変化させる。このようながん細胞と微小環境との連携は,薬剤耐性獲得や微小残存病の維 持にも関与しており,がんの治療の観点からも注目を集めている。 がん細胞とがん微小環境との応答は,様々な分子により制御されるが,その中でも,低酸素応 答転写因子 HIF-1(Hypoxia-inducible factor-1)が中心的な機能を果たしている。HIF-1 はがん細胞 において,解糖系酵素及び血管新生に関わる VEGF などの遺伝子発現を制御する。我々は,血液 腫瘍における HIF-1 の役割を解析するとともに,HIF-1 をターゲットとした分子標的治療の可能性 を追求してきた。その結果,腫瘍間質細胞より産生された IGF-1 により血液腫瘍細胞の HIF-1 が活 性化を受けること,また HIF-1 は血液腫瘍の生存維持に関わることを明らかにした。さらに,HIF-1 の機能阻害により,既存の抗がん剤や放射線治療の抗腫瘍効果が増強されることを見出した。こ れらの結果より,HIF-1 は血液腫瘍治療における新たな分子標的となりうることが示唆される。

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