京都光華女子大学におけるキャリア教育の取組
−現代 GP「学生個人を大切にしたキャリア教育の推進」−
山 本 嘉一郎
*阿 部 一 晴
*吉 田 咲 子
** Ⅰ まえがき 大学の学生の多くは卒業時に企業へ就職する。つまり、大学卒業後の進路は 「企業就職」が一般的である。そこで学生にとって最大の関心事の一つが「就職」 となる。そのため大学では、中学校や高校での「進学」と同様、将来の進路と しての「就職」を支援してきた。従来からほとんどの大学には、就職活動を支 援する部署(たとえば就職課)が置かれてきた。ただその役割は主に、就職先 の紹介や求人情報の提供というものであった。ところが、その状況がこの 10 年ほどの間に大きく変化している。 近年、多くの大学でキャリア支援(就職支援)を強化し、さまざまな取組が 行われるようになってきた(上西、2007、p. 2)。その背景については次章で述 べるが、取組の多くは、キャリア形成としての低学年からの教育である。そこ では、就職活動といった直接の支援から、就職に堪える能力の形成へ向けての いわば間接的な支援へと広げられている。働くために必要な基本的能力の養成 である。その理由は主に、多くの学生が働くための基礎能力を十分に備えてい ないという判断による。このようにして、キャリア支援は就職支援からキャリ ア形成支援へと拡大しつつある。またさらに、働くことへの理解といった就労 意識にも課題があると言われる。就労意識の形成である。そこに、総合的なキャ * 人間科学部人間関係学科メディア情報専攻 ** キャリア教育推進センターリア教育の必要性があると考えられる。 以上のようなキャリア教育は大学教育だけの問題ではない。初等、中等、高 等教育を通して社会に出るまでの教育全体に課せられた問題である。これにつ いては中央教育審議会から平成 11 年末にその答申の中で、小学校から発達段 階に応じてキャリア教育を実施することの必要性が指摘され、以後、文部科学 省ではこれを政策課題の 1 つとしてきた(山口、2008、pp. 7 ∼ 10)。また文部 科学省は大学に対して、その教育改革支援事業(大学改革支援プログラム)の 中で、平成 18、19 年度にキャリア教育をテーマとし、21 年度には大学教育・ 学生支援推進事業としてキャリア教育・支援をテーマとした。 これに対して本学でも、就職支援を入学時から開始して就職を総合的に支援 する必要性を認識し、平成 17 年度にキャリア教育を実施することになった。 以来、その認識を深め、キャリア教育の在り方について研究してきた。また、 平成 18 年度からは、学生の修学と生活を体系的・組織的に支援するエンロー ルメント・マネージメントに着手した。キャリア教育はその中で、学生の卒業 後の進路を支援する政策として位置づけられた。ここで報告する現代 GP にお ける実践的総合キャリア教育の取組は、これらの改革の一環として企画・立案 されたものである。 Ⅱ キャリア教育と社会的背景 近年、フリーター・若年無業者や新卒者の早期離職が増加する傾向にある。 このことは大きな社会問題とされ、政府においてもその対策の必要性が強く認 識されている。文部科学省ではこのような問題に対して、学校には社会人・職 業人として自立した人材の育成が強く求められているとして、平成 20 年 12 月、 「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方ついて」を中央教育審 議会へ諮問した(文部科学省、2009a)。これらの問題については、平成 15 年 の文部科学省、厚生労働省、経済産業省による「若者自立・挑戦プラン」の中 でも国家的課題として取り上げられ、その対策の一つとしてキャリア教育が挙
げられている(文部科学省、2009b)。今回の諮問は、この対策をさらに強化・ 前進させることが必要な状況にあることを示している。 さらに文部科学省では、大学に教育改革を求める GP(文部科学省、2009c) の中で、平成 18、19 年度にその 1 つのカテゴリーである現代 GP のテーマと して「実践的総合キャリア教育の推進」を挙げて募集した(平成 19 年度に本 学の取組みが選定)。また 21 年度には、「大学教育・学生支援推進事業」学生 支援推進プログラムとしてキャリア教育を支援している(本学短期大学部の取 組みが選定)。以上のように、大学教育の支援策としても、キャリア教育が大 きな政策課題として取り上げられている。さらに、経済産業省を中心に「社会 人基礎力」の養成が提案され、平成 20 年 12 月に文部科学省が答申を受けた「学 士課程教育」でも、「学士力」の名のもとに社会人基礎力の養成が大学教育の 柱として要請されている。 一方、1990 年代前半のバブル崩壊の後は、就職がそれまでのようには容易で ない時代が続いている。平成 20 年まで数年かけて就職環境はやや改善されたが、 20 年秋以降は世界的な経済不況とともに近年にないほど悪化した。これらは新 卒者についても例外ではなく、22 年春には高校・大学を出ても就職できない若 者が多数予想されている。そのようなことから大学では、この十数年にわたって 就職支援を強化してきている。これは、大学が「就職率」などの就職状況で評価 されることが多いからである。今、学生の「就職力」をいかに高めることができ るかは大学の大きな課題である。少子化時代を迎えて学生確保に困窮する大学で は、「就職力」の育成に力を入れている。そのため、直接の就職支援だけではなく、 入学直後からの幅広いキャリア教育を実施する大学が急増している。 上西(2007)によれば、上記のような社会的背景のもと、近年、大学におい てキャリア教育が強く認識され、実施されている。その背景として上西(2007) は、「政策的な要請」「入学者確保の必要性」「企業側の要請」「動けない学生へ の対応」「学生の権利保障」の 5 つを挙げている。最初の 2 点は既に述べたと おりである。このように現在、キャリア教育にはこれを要請するさまざまな要 因があるものと考えられる。
Ⅲ 本学におけるキャリア教育と GP 申請の経緯 本学でキャリア教育を始めた理由も他と同様である。バブル崩壊後の 1990 年代から 2000 年代初頭にかけて長期の就職難の時代が続いた。その間、さま ざまな就職支援が行われた。その経験の中で、学生に早い時期から就職あるい は職業への関心をもたせ、就労意識を喚起・醸成するところから始める必要が あることが認識された。それまで就職支援は、正課の教育とは切り離して行う とする考えであった。就職課が学生生活支援を担当する学生部の中にあったこ とはその現れと言えよう。教育に結果が求められるようになったこともあり、 これを改め、「就職」を教育の具体的な成果の一つとしてとらえようという発 想が次第に芽生えていった。 その結果、就職支援担当部署(当時は「就職課」)の要請で、それまで同部 署で行っていたキャリアデザイン講座を正課に組み入れることになり、平成 17 年度入学生から 1・2 年次に配当する自由科目(卒業単位に含めない科目)と して開設した。これを平成 19 年度には、全学共通科目として卒業単位とし、キャ リアデザイン講座ⅠおよびⅡの 2 科目に増強した。 一方、平成 18 年度末に人間関係学部(現人間科学部)において、教育支援 と学生支援を連携させた「総合学生支援」策としてエンロールメント・マネー ジメントが提案された。本学のエンロールメント・マネージメントは、入学前 から卒業後まで、学生一人ひとりに対してその立場に立って、その不安を解消 するため、あらゆる支援を体系的・組織的に行うものである。これを同学部で は全学に先立って、平成 19 年度に実施し、20 年度からは全学的に実施される に至っている。就職支援とこれに至るまでのキャリア形成支援は、このエンロー ルメント・マネージメントの取組みの中で見直されることとなり、この取組み の計画策定が行われた。その結果、平成 19 年度の現代 GP として申請するに至っ た。
Ⅳ 総合キャリア教育開発への取組(GP における取組) 1 概要 本学では、GP の申請にあたって、本学におけるこれまでのキャリア教育と キャリア支援の経験から、「実践的総合キャリア教育」を次のように考えた。 現代社会がかかえる「若者の就労」の問題に対し、キャリア教育の課題を就労意 識の喚起・醸成と職業人としての基本的能力の養成と捉える。基本的能力としては、 読む、書く、聞く、話すの基礎能力の習得から始め、これを発展・高度化した社会 人基礎力の習得を目指す。そのため、導入教育から専門教育までをキャリア教育の 視点から体系化し、正課の教育課程を大学全体として構築する。さらに、スキルアッ プを含むキャリア形成・就職支援等の正課外教育との連携を図り、総合的で実践的 なキャリア教育課程を構築・推進する。その有効な方法を徹底した個別対応教育に 求め、その実現を支援するために ICT の活用を図る。個別対応教育は多様な学生に 対して、教育効果を上げるための唯一の解決法である。これを実現するには時間的・ 空間的に学習およびコミュニケーション形成の場を広げる必要があり、ユビキタス な教育環境を可能にする ICT の活用で解決する。 (以上、平成 19 年度現代 GP 申請書より) その取組の要点は次のとおりである。ここでは、①「キャリア教育に関する 基本的な考え」(キャリア教育の基本的な目的(ねらい)をどのように考えたか)、 ②それ(目的)を達成するための「教育体系」(キャリア教育としての教育課程)、 ③教育課程を実施するための「(広い意味での)教育の方法」について、その 概要を述べる。 a)キャリア教育に関する基本的な考え(人材育成の目標) 本学が専門職として養成する分野から一般的な職種までを対象として、基本 的に要求される高い就労意識( 働く意欲と希望) および職業人( 社会人) とし ての基本的な能力を十分に備えた人材を育成する。そこで以下の 3 点を目標と して、社会人として必要な要件を備えた人材を育成する。
−就労意識の喚起・醸成 −基本的能力の養成 −社会人基礎力の養成 労働 あるいは 職 に関心を持たず就労意欲が低い、従って学習意欲が低く かつ学習することの意義を見出せないでいる若者が多いことが大きな社会問題 となっている。また、大学生の学力不足が問題視され、大学での教育を経てもな お就労に必要な基本的能力に欠ける者が多いとされている。今、社会は高い就労 意識を持ち基本的能力を十分に備えた人材を求めているものと理解される。 基本的能力 としては、理解力(「聞く・読む」を通してものごとを的確に 理解する能力)、論理的思考力、表現力(表現すべきことを的確に「話す・書く」 ことのできる能力)、調査分析力、他人と共同して問題解決にあたることがで きるコラボレーション力、そしてこれらの能力を支え拡張するための情報シス テム活用力(知的活動に情報機器を活用できる能力)などを対象とする。これ らをさらに高度に習得させることにより、「問題発見・解決」に自立的・能動 的に当たることのできる人材を育成する。 b)教育体系(キャリア教育としての教育課程) 以下のように、「正課」および「正課外」教育からなる、総合的で実践的な「キャ リア教育課程」である。 −正課教育(=正課のキャリア教育課程) 導入教育および発展・応用教育から成り、上記 a)で示した 3 点を目標 として、専門課程を含めて原則としてすべての科目を「キャリア教育」の 視点から体系化する。 −正課外教育 学生のキャリア形成および就職の支援、スキルアップ(ワークスキルの 習得)など、正課内では行えない教育および支援を体系的・組織的に行う。 c)方法 上記の教育課程を実施し、a)の目標を達成するため、次の方法を導入する。 −個別的対応教育
−個別対応 − ICT の活用 2 教育課程 本教育課程(キャリア教育課程)は、既存の全学共通、あるいは学科ごとの 基礎・専門科目をベースにして、「キャリア教育」の視点から構築するバーチャ ルなもの(学科横断的な課程)である。また、正課教育と正課外の教育を体系 化した総合的な課程である。対象は大学の全学部学科としている。その教育課 程は図 4.1 および表 4.1 に示すとおりで、大きく次の 3 点で構成される。また、 カリキュラムとの関係は表 4.2 のとおりである。 −正課教育のうち、全学共通で実施されるもの 図 4.1 の① -1 と -2、②、③(前半部分)、⑤ −正課教育のうち、各学科で実施されるもの この種の教育は、次の 3 種類で構成される 導入・基礎教育(図 4.1 の① -1、および③の前半) ♫ ධ Ꮫ ༞ᴗ ᑵ⫋ ձ-1 ᑵປព㆑ࡢႏ㉳ ձ-2 ᑵປព㆑ࡢ㔊ᡂ ᑟධ࣭ᇶ♏ᩍ⫱ ࣓ࣜࢹࣝᩍ⫱ Ꮫ⩦ࡢືᶵࡅ Ꮫ⩦᪉ἲࡢ⩦ᚓ ճᇶᮏⓗ⬟ຊࡢ⩦ᚓЍ♫ேᇶ♏ຊࡢ⩦ᚓ ⌮ゎຊࠊㄽ⌮ⓗᛮ⪃ຊࠊ⾲⌧ຊࠊㄪᰝศᯒຊࠊࢥ࣮ࣛ࣎ࣞࢩࣙࣥຊࠊ ሗࢩࢫࢸ࣒ά⏝ຊ ࠊ ⱥㄒຊ ᇶ ♏ Ⓨᒎ࣭ᛂ⏝ᩍ⫱ Ⓨ ᒎ յ㈨᱁ྲྀᚓㄢ⛬㸦ᩍ⫋㸪ྖ᭩㸪ࡑࡢ㸧 նࢫ࢟ࣝࢵࣉᨭ ࢫ࢟ࣝࢵࣉㄢእㅮᗙ᳨࣭ᐃヨ㦂㸦ICT㸪ⱥㄒ㸪ࣅࢪࢿࢫ㸧 շ࢟ࣕࣜᙧᡂ࣭ᑵ⫋ᨭ ᑵᏛ┦ㄯ㸪ᑵ⫋┦ㄯ㸪࢝࢘ࣥࢭࣜࣥࢢ➼ ղ ᑟධ ᩍ⫱ մᏛ⛉ᑓ㛛ㄢ⛬ ᑓ㛛ศ㔝ࡢ▱㆑࣭ᢏ⬟࣭ᢏ⾡ࡢ⩦ᚓ ṇㄢᩍ ⫱ ṇㄢእ ᩍ ⫱ 図 4.1 キャリア総合教育課程のイメージ
表 4.1 教育目標と教科・講座 目 標 初期段階(1,2 年次) 発展・応用段階(2 ∼ 4 年次) ①就労意識の喚起・醸成 A 1(基礎ゼミ,キャリア科目)A 2(キャリア科目,インター ンシップ,学外施設実習) ②導入教育 基礎学力の補習 B0(リメディアル教育) 学習の動機付け B1(基礎ゼミ) 学習方法の習得 B2(大学基礎講座、基礎ゼミ) ③基本的能 力の習得 →社会人基 礎力の養成 理解力(聞く・読む)C1 基礎的学習 (大学基礎講座,基礎ゼミ, アカデミックライティングなど) C2 社会人基礎力養成 (主に講読、専門ゼミ、デー タ解析などの専門教育の中 で実施) 論理的思考力 表現力(話す・書く) 調査力(調査・分析) コラボレーション力 英語力 D(英語) 情報システム活用力 E1(情報処理基礎教育) E2(応用的情報処理教育) 社会人基礎力 F 社会人基礎力養成講座 ⑥スキルアップ G1 スキルアップ講座・検定 G2 スキルアップ講座・検定 表 4.2 キャリア教育課程としてのカリキュラム(教育目標と科目) 教育目標 1 年次 2 年次 3 年次 4 年次 前期 後期 前期 後期 前期 後期 前期 後期 ①就労意 識 の 喚 起・醸成 基礎ゼミ キャリアデザ イン講座Ⅰ キャリアデザイン 講座Ⅱ キャリアデザイン 講座Ⅲ→インタ ーンシップ 専門実習(学外施設実習) インターンシップ ② 導 入・ 基礎教育 基礎ゼミ(学習の動機付 け・学習方法の教育) リメディアル 大学基礎講座(学習の動 機付け・学習方法の教育) ③ -1 基 本的能力 の養成 大学基礎講座 基礎ゼミ 情報処理 英語 講読 ③ -2 社 会人基礎 力の養成 専門ゼミ 社会人基礎力講座(基礎) 社会人基礎力講座(発展) ④⑤専門 職教育 専門課程 資格取得課程 ⑥スキル アップ スキルアップ講座(ICT、英語、ビジネス等) 資格検定試験(ICT、英語、漢字、文章能力、ビジネス他) 凡例 正課教育 正課外教育
専門教育(図 4.1 の③の後半、および④) 専門職養成教育(学科による。図 4.1 の④) −正課外教育 図 4.1 の⑥および⑦ 正課部分は「導入・基礎教育」と「発展・応用教育」の段階からなり、キャ リア形成へ向けて段階的・体系的に進める。「導入・基礎教育」の段階の目的は、 「① -1 就労意識の喚起」と「③ 基本的能力の習得」(基礎段階)である。③ の 教育へ円滑に入るために、「② 導入教育」を行う。基礎学力についてはリメディ アル教育を実施し、これを必要とする学生は早期に、大学教育を受けるために 必要なレベルへ到達させる。具体的な教育内容は表 4.1 の通りである。 「発展・応用教育」の段階では、「① -2 就労意識の醸成」を図り、「③ 基本的 能力の習得」をいわゆる「社会人基礎力の習得」( 前に踏み出す力、考え抜く力、 チームで働く力)の水準に高める1。前者には表 4.1 の A2 のように、「インター ンシップ」を積極的に活用する。後者については主に、講読、専門演習( ゼミ)、 データ解析などの専門教育の中にこれらの能力を習得させる教育方法を取り入 れて行う。専門職を目指す学習および教職などの資格取得にはそれぞれ、「④ 学科専門課程」および「⑤ 資格取得課程」で対応する。合わせて、課外で「社 会人基礎力養成講座」を開設、正課教育を補完・強化する。両段階と並行して、 正課外で⑥「スキルアップ支援」( キャリア形成に有効な各種の資格取得の支 援など)と⑦ キャリア形成・就職支援を行う。 3 方法 上記の教育課程における所期の目的の達成には、一人ひとりの能力、個性、 状況に応じた「個別対応教育」がきわめて有効であると考える。集合教育では、 たとえ少人数であっても十分な成果を上げることは難しい。第 1 に、重要課題 の「就労意識の喚起・醸成」では、 個別相談・指導など、個々の学生との十分 なコミュニケーションを形成し、その意識を引き出すことが必要である。第 2 に、所定の習得水準を保証した教育には、新たな教育プログラムが必要である。
その実施には、学生の学習・習得状況の的確な把握と支援が必要である。教室 内だけの対面・集合教育では不十分である。これを、ICT の活用と e ラーニン グの併用により解決することとした。これにより、対面教育に加えてユビキタ スな学習環境とコミュニケーションの機会を提供する。学生はいつでもどこで も学習支援を受けることができるなど、個別対応教育の実現に大きな効果を発 揮すると考えられる。本取組の具体的な教育方法は次の 5 点よりなる。 −徹底した個別対応教育の導入 −学習効果を保証する新たな教育プログラムの導入 −学習支援のための ICT と e ラーニングの活用 −学生総合データベースの構築と活用 −体系的なインターンシップの実施とその支援 以下、これらの教育方法について説明する。 (1)徹底した個別対応体制の導入 学生への個別対応体制として、従来の 3・4 年生の「専門ゼミ」に加えて、1・ 2 年生に「基礎ゼミ」を置く。いずれも 10 名程度を原則として、4 年間を通じ てのゼミ担当者による学生とそのキャリア形成への恒常的な対応を可能にす る。授業においては教科担当者が個々の学生の学習状況の把握につとめ、その 状況に応じた支援・指導を行う。これにより学生の主体的な学習意欲を引き出 す。(付録 1) (2)学習効果を保証する新たな教育プログラムの導入 徹底した個別対応教育の下、「指導と評価の精緻化」により学習効果の高い 教育を進める。これにより、目標とする学力( 知識・技能の習得) への到達を 保証する。(付録 2) (3)学習支援のための ICT と e ラーニングの活用 本取組実現の基盤として重要になるコミュニケーション形成を ICT により 支援する。そのユビキタス性によりコミュニケーション環境が時間的・空間的 に大きく広がり、個別対応教育としての支援効果が期待できる。授業は LMS (学習支援システム)上で授業情報・教材を提供、あわせてコミュニケーショ
ンの場を開設する。また、復習・自習教材による各教科の学習支援およびスキ ルアップ学習用に e ラーニングを提供する。学生はユビキタスな学習環境で効 率的にスキルアップと資格取得を目指すことができる。 (4)学生総合データベースの構築と活用 教務、学生生活、就職など、学生に関する情報を一元的に管理し、個々の学 生の状況を詳細に把握する。これにより、個々の状況に応じた迅速・的確な支援・ 指導を可能にし、情報提供を円滑にするための学生ポータルサイトを強化する。 大学での活動に必要な情報を提供し、円滑な学習と学生生活を支援する。 (5)体系的なインターンシップの実施とその支援 目的別にインターンシップを準備し、授業との連携を図るなど、体系的に実 施する(後出の表 5.1 参照)。インターンシップでは、実習中の知識・技能面に 加えて精神面の支援が必要である。これを効果的に行うため、学習支援とコミュ ニケーション形成に ICT を活用する。既存の ICT システム( 電子メールや LMS)を利用するとともに、開発中の学外実習支援システムを利用する。 4 実施体制 実施体制は図 4.2 に示す通りである。図中の①などの番号は、他の図表のも のと対応する。本取組の全体の管理・運営は「キャリア教育推進センター」 (専門部署) が担当する2。① ∼ ③ および⑤ の教育については「全学共通教育 センター」が統括し、主体となってあたる。これに、各学科が協力・担当する。 キャリア形成・就職支援には「キャリア支援センター」が、スキルアップ講座 などの課外講座には「エクステンションセンター」があたる。そのほか、教務 および学生生活に関する事務処理と支援を「学生サポートセンター」が行う。 学生総合データベースと学生ポータルの運用、e ラーニング、その他の ICT 活 用は、情報教育センターおよび IT 推進部が担当する。必要な教材の開発にあ たっては専門業者の協力を得、リメディアル教育の教材開発と実施では、併設 校の京都光華高校の協力を得る。 このため、次の組織を編成することとした。
−キャリア教育推進センター −キャリア教育推進連絡会 (1)キャリア教育推進センター キャリア教育推進センター(以下「センター」)は本取組推進の中核組織と して、新たに設置した。その役割は次のとおりである。 −本取組(総合キャリア教育)の組織及び実施についての統括 −取組推進における全体組織の管理・運営 −取組全体についての実務 センターにはセンター長以下数名の所員(教学および事務)を置くこととし た。所員は、本取組の企画立案にあたった教職員、および推進にあたって関係 の深い部署の代表で構成することとした。またこのために、本事業で新たに専 任の教員と事務職員各 1 名を雇用し、発生する業務の処理にあたることとした。 (2)キャリア教育推進連絡会 キャリア教育推進センターで計画した実施事項の多くは既に述べたように (図 4.2 参照)、学科、付属機関、事務部署で実施される。PDCA サイクル3(以 下 PDCA)を有効に働かせるためには、取組の伝達・報告の場が必要である。キャ ⤫ᣓ㸸࢟ࣕࣜᩍ⫱᥎㐍ࢭࣥࢱ࣮ նࢫ࢟ࣝࢵࣉ㸦G1, G2㸧㸸࢚ࢡࢫࢸࣥࢩࣙࣥࢭࣥࢱ࣮ ղᑟධᩍ⫱㸸⤫ᣓ㸸Ꮫඹ㏻ᩍ⫱ࢭࣥࢱ࣮ ࣭ᇶ♏Ꮫຊࡢ⿵⩦㸦B0㸧㸸Ꮫඹ㏻ᩍ⫱ࢭࣥࢱ࣮ ࣭Ꮫ⩦ࡢືᶵࡅ㸦B1㸧㸸ྛᏛ⛉㸦௦⾲㸸ᇶ♏ࢮ࣑ᤵᴗᢸᙜ⪅㸧 ࣭Ꮫ⩦᪉ἲࡢ⩦ᚓ㸦B2㸧㸸Ꮫඹ㏻ᩍ⫱ࢭࣥࢱ࣮ࠊྛᏛ⛉㸦௦⾲㸸ᇶ♏ࢮ࣑ᤵᴗᢸᙜ⪅㸧 ༠ຊ㛵ಀ ճᇶᮏⓗ⬟ຊࡢ⩦ᚓᩍ⫱㸸⤫ᣓ㸸Ꮫඹ㏻ᩍ⫱ࢭࣥࢱ࣮ ࣭ᇶ♏ⓗᩍ⫱㸦C1㸧㸸Ꮫඹ㏻ᩍ⫱ࢭࣥࢱ࣮ࠊྛᏛ⛉㸦ྛᩍ⛉ᢸᙜ㸧 ࣭ⱥㄒᩍ⫱㸦D㸧㸸ⱥㄒⱥ⡿ᩥᏛ⛉ ࣭ሗฎ⌮ᩍ⫱㸦E1㸪E2㸧㸸ே㛫㛵ಀᏛ⛉࣓ࢹሗᑓᨷ ࣭♫ேᇶ♏ຊ㣴ᡂᩍ⫱㸦C2㸧㸸ྛᏛ⛉㸦௦⾲㸸ྛᩍ⛉ᢸᙜ㸧 մᏛ⛉ᑓ㛛ㄢ⛬ᩍ⫱㸸ྛᏛ⛉㸦௦⾲㸸ྛᩍ⛉ᢸᙜ㸧 յ㈨᱁ྲྀᚓㄢ⛬㸦ᩍ⫋➼㸧㸸Ꮫඹ㏻ᩍ⫱ࢭࣥࢱ࣮ ࢟ 勐 ࣜ ᨭ ࢭࣥ ࢱ勖 Ꮫ ⏕ ࢧ࣏ 勖ࢺ ࢭࣥ ࢱ勖 ձᑵປព㆑ࡢႏ㉳࣭㔊ᡂ(A1, A2)㸸⤫ᣓ㸸Ꮫඹ㏻ᩍ⫱ࢭࣥࢱ࣮ Ꮫඹ㏻ᩍ⫱ࢭࣥࢱ࣮ࠊྛᏛ⛉㸦௦⾲㸸ᇶ♏ࢮ࣑ᤵᴗᢸᙜ⪅ࠊᏛእᐇ⩦ᢸᙜ⪅㸧 ሗᩍ ⫱ࢭ ࣥࢱ 勖 㹇㹒᥎ 㐍㒊 ᨭ 㐃ᦠ IT ࣭IT ά⏝ ᨭ ி㒔 ග⳹㧗ᰯ շ࢟ࣕࣜᙧᡂ࣭ᑵ⫋ᨭ㸸࢟ࣕࣜᨭࢭࣥࢱ࣮ 図 4.2 実施体制(A1, A2 などは表 4.1 中の記号に対応) 実施段階に変更のため,計画(申請)時と一部異なる.
リア教育推進連絡会(以下「連絡会」)は、この役割を果たす会議として設置 した。その業務は次のとおりである。 −取組の実施にあたっての各担当学科・部署等間の調整 −取組結果の点検・評価 連絡会のメンバーは各学科の代表、および関係機関・部署の代表で構成する こととした。併設の短期大学部からも、オブザーバーとして参加を要請した。 5 取組の評価 評価体制は図 4.3 の通りである。全体的な評価と個々の教育の評価からなる。 全体の評価点検と改善検討はキャリア教育推進センターが中心になり、学外専 門家も加えて年間 2 回程度行う。あわせて同センターは、個々の教育の評価の とりまとめを行う。また、評価および改善の実効性を高めるため、教務、学生 生活等の関係委員会が協力する。個々の教育の評価は、各実施組織が中心となっ て随時行い、常に授業へのフィードバックを行って改善に努める。あわせて、 全体評価に参加する。以上のように PDCA を徹底する。 本学で進めている教育改革では、評価の精緻化を図っている。個々の学生の 学習効果を精緻に把握するもので、高い精度で学習効果を測定する。社会人基 礎力の習得状況については、HQ( Human Quotient)診断などを導入し、そ の効果を測定する。就労意識については、個別面談とアンケート調査により効 果を判定する。取組の最後には総括と総合評価を行い、本学のキャリア教育を 確立するとともに、今後の展開の方向を定める。 ࢟ࣕࣜᩍ⫱᥎㐍ࢭࣥࢱ࣮ ྛᏛ⛉ ࢟ࣕࣜᨭࢭࣥࢱ࣮ Ꮫእᑓ㛛ᐙ 㛵ಀጤဨ㸦ᩍົ㸪Ꮫ⏕⏕ά㸪)'㸧 యホ౯ ༠ຊ ಶࠎࡢᩍ⫱ ホ౯ጤク ༠ຊ ಶࠎࡢᩍ⫱ࡢホ౯ యホ౯ ࡢཧຍ ሗᩍ⫱ࢭࣥࢱ࣮ Ꮫඹ㏻ᩍ⫱ࢭࣥࢱ࣮ 図 4.3 評価体制(学内体制と学外専門家の支援)
6 全体スケジュール 取組の全体スケジュールは表 4.3 の通りで、3 年計画で実施することとした。 この過程を経て、正課教育と正課外教育を総合してキャリア教育全体の体系化 を進める。あわせてその実施に必要な支援環境を整備し、効果的で円滑な実施 体制を整える。ほぼこのスケジュール通りに進んでいる。 表 4.3 取組の全体スケジュール (表内の番号・記号は前出の表 1 中のものに対応) 取組項目 平成 19 年度 平成 20 年度 平成 21 年度 正課教育 ① 就 労 意 識 の 喚 起・ 醸成 基礎ゼミ・キャリア科目 A1 拡充・強化 継続 継続 インターンシップ A2 検討・準備 試行 実施 ②導入教育 大学基礎講座 B2、基礎ゼミ B1 拡充 継続 継続 リメディアル教育 B0 検討 試行 実施 ③基本的能力の習得 大学基礎講座 C1 拡充 継続 継続 基礎ゼミ C1 試行 実施 完成 英語教育の改善 C1 検討・準備 試行 実施 専門教科の中での実施 C2 検討 実施 継続 情報システム活用力 E1、E2 拡充 継続 継続 ④⑤専門課程 学科専門課程、資格取得課程 検討・試行 実施 実施 新教育方法導入 個別対応教育プログラム 試行 改善・実施 継続 正課外教育 ③社会人基礎力の養成 講座・能力検定 F 試行 試行・実施 継続 ⑥スキルアップ 講座・検定試験 G1、G2 拡充 継続 継続 ⑦キャリア形成・就職支援 面談支援システムの導入 準備・試行 実施 継続 ICT 化と e ラーニング 正課の ICT 化 授業への LMS 導入 拡大 拡大 全授業へ 学外実習支援システム 開発 開発・試行 運用開始 eラーニング導入 正課への導入 試行 導入拡大 継続 スキルアップ講座 導入拡大 継続 継続 Ⅴ 実施状況 本章では、前章で述べた計画の中で主題としてきたものを中心に、これまで 2 年間の実施により得られた主な成果について、平成 19、20 年度の結果報告 (キャリア教育推進センター、2008、2009)に基づいて報告する。
1 取組全体の進め方 本取組は平成 19 年 7 月に選定を受け、実施計画書を提出したのち、10 月か らスタートした。その手順は図 5.1 のとおりで、基本的には表 4.3 にも示したよ うに、年度単位で実施している。まず、初年度には実施組織を編成し、実施体 制を整えた。その体制のもとで、全体および初年度の実施計画を確認、担当部署・ 担当者へ実施依頼を行った。各担当部署・担当者では詳細実施計画を立てて実施、 実施結果は後述の連絡会で報告し、PDCA に努めた。平成 20 年度、21 年度は、 前年度末の総括に基づいて年度初めに当該年度の計画を各担当部署・担当者か ら提出。これを全体で確認して開始し、連絡会で報告・省察する形で進めた。 (1)実施体制の整備(実施組織の編成) 本取組の実施組織とその体制は、前章の 4 節のとおりである。キャリア教育 推進センターおよびキャリア教育推進連絡会がその中核組織である。平成 19 年 7 月に選定が決定し次第、申請計画に基づいて両組織の編成に入った。この うち「キャリア教育推進センター」は学長の指揮のもと、本取組の全権限と全 責任を有する機関として設立した。本取組は単に従来のキャリア教育やキャリ ア支援を強化するものではなく、教育改革の一つであり、強力な推進機能が必 要と考えたからである。キャリア教育推進連絡会を実施および実施事項に関す る「審議機関」とせず、実施にあたってのセンターからの依頼、関係部署間の ィ⏬ 㛤ጞ ᐇయไ䛾ᩚഛ 䠄ᐇ⤌⧊䛾⦅ᡂ䠅 ᖺᗘィ⏬䛾❧ ᐇ౫㢗/☜ㄆ ᐇ ሗ࿌䞉ホ౯䞉ಟṇ ᖺᗘ⤖ᯝ䛾 ホ౯䞉⥲ᣓ ᖺᗘᮎ 㐃⤡ ᢸᙜ㒊⨫ 図 5.1 取組の実施手順
報告、実施状況の省察、情報共有などを主としたのも、同様の考えによる。 連絡会は初年度は隔月、20 年度からは原則として毎月開催している。これに より、これまで教学内では主要な話題としてこなかったキャリア支援やキャリ ア教育について広く認識されるなど、本取組が目的の一つとするキャリア教育 の視点からの教育改革が進んでいるものと評価している。 (2)年度計画の立案・確認 各年度の実施計画はまずセンターにて行われ、文科省へ当該年度の調書(大 学改革等補助金(大学改革推進事業)調書)として提出される。その提出にあたっ ては、事前に連絡会へ報告が行われ、各担当部署ではこれに基づいて、当該年 度の実施計画(到達目標を含む)を作成する。 (3)実施・報告・評価・修正(PDCA) 実施計画に従って、各担当部署およびセンターにて担当事項を実施する。実 施結果および進捗状況について定期的に連絡会で報告・評価し、必要に応じて 計画を修正するなど、その後の実施内容・方法へ反映させている。 2 学生への周知 本取組は、卒業後は社会人として生きていくことになる学生に対して、「自 信をもって生きていくことのできる」人材として育てることを目標としている。 したがって、本教育(キャリア教育)の対象である学生に対して、この取組を 実施することを周知し、その目的・趣旨と内容を十分に理解させ、学生の積極 的参加を促すことは、取組の成否にかかわる重要な課題である。そこで以下の ような方法で、学生に対する丁寧なアナウンスを行った。 −学生配布用リーフレットの作成と配布 −関連の授業での説明 −取組関連の実施事項におけるアピール −ホームページによるアナウンス しかしながら、学生への周知は容易ではなく、実施当初はもちろん、1 年半 を経過した 20 年度末においても十分な状態ではなかった。そこであらためて、
学生の参加意識を高めるため次のような政策を実施することとした。 − 取組に関連する授業の初回の授業で、当該授業が現代 GP の一環として位 置づけられていること、およびその中での役割について受講生に説明する。 − 各種の講座、およびキャリア支援等の正課外教育において、当該活動が本 取組の一環として実施されるものであることを説明する。 − 関連の事業・行事については、その案内を学生だけでなく、全教職員にメー ルにて行う。 − e ラーニング教材の利用促進へ向けて、授業等において学生への働きかけ を強化する。 − 本 取 組 の ポ ス タ ー の 掲 示、GP マ ー ク の 提 示 を 積 極 的 に 行 い、 取組への認知度の向上を図る。 (1)学生配布用リーフレットの作成 と配布 当初の計画に従って、学生配布用 リ ー フ レ ッ ト を 作 成 し た( 図 5.2)。 学生から見てこの取組によりどのよ うな利益が得られるのか、また学生 に対してどのようなことが実施され るのかなどを中心に掲載している。 リーフレットは平成 19 年度末に完成 し、20 年度初めに全学生を対象に配 布した。またこれに先立ち、19 年 10 月の本取組開始時に、同様の内容の プリントを配布した。 図 5.2 学生配布用リーフレット
(2)関連の授業での説明 キャリア教育としての中心科目であるキャリアデザイン論(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの 3 科目で、それぞれ配当年次は 1、2、3 年)では、受講生に対して直接、キャリ ア教育の重要性、キャリア教育の目的と合わせて、本取組について説明している。 (3)取組関連の実施事項におけるアピール 本取組では、正課の中で中心となる科目の ほか、正課外でのスキルアップなどの講座や eラーニング、キャリアマインドや社会人基 礎力などの評価テストを行っている。その中 では、これらが本取組の一環として行われて いることを説明している。また、本取組のロ ゴマーク(図 5.3)を作成し、関連の事業では配布物などに表示するようにし ている。 (4)ホームページによるアナウンス 取組開始後すぐに、本取組専用の広報用ホームページを開設した。URL は 次のとおりである。 http://www.koka.ac.jp/enrollment/gp.html このページでは、取組の趣旨・内容についての解説を行うとともに、平成 19 年度、20 年度の報告書(キャリア教育推進センター、2008、2009)を掲載して いる。また、活動状況について随時報告するサイトとして専用のブログ(図 5.4) を設けており、このページからアクセスできる。 3 就労意識の喚起・醸成 就労意識の喚起・醸成は前章で述べたように本取組の中心的課題の一つであ る。「高い就労意識(働く意欲と希望)」を持つことをその目標としている。こ れらは主に、次の科目等で行っている。 −就労意識の喚起を目指す科目 1、2 年次に開講される以下の科目 図 5.3 本取組のロゴマーク
基礎ゼミまたはこれに相当する科目 キャリアデザイン講座Ⅰ、Ⅱ −就労意識の醸成を目指す科目等 3、4 年次に開講される以下の科目等 キャリアデザイン講座Ⅲ インターンシップ(正課外) 学外実習科目 (1)基礎ゼミでの就労意識の喚起 本取組では、従来の 3・4 年次の「専門ゼミ」に加えて、1・2 年次に「基礎 ゼミ」を置くこととしている。これにより、4 年間を通じてのゼミ担当者によ る学生とそのキャリア形成への恒常的な対応を可能にする。その中で、「基礎 ゼミ」では「就労意識の喚起」を中心課題の 1 つとして取り組んでいる。実施 にあたっては次の事項を申し合わせた。 −キャリア教育の最も重要な役割は「働くことの意義」を見出すことである。 そのきっかけを作っていく(喚起していく)ことを「基礎ゼミ」の目標の 図 5.4 取組の活動状況報告用ブログ
一つとする。 − そのために十分な時間を充てるとともに、(ごく)少人数の授業の利点を 生かして、効果的な教育を実施する。 − その内容と方法について担当者間および学科等で十分に検討し標準化す る。さらに、PDCA を重ねることが重要である。最終的には、大学全体と しての標準化を目指す。その結果として、「光華方式就労意識喚起教育」 を確立する。 − 学生が興味を持ち自主的な参加に至ることが肝要であり、対話および体験 の要素を取り入れた授業が効果的と考えられる。 − また、個別相談・指導など、個々の学生との十分なコミュニケーションを 形成し、その意識(職への意識)を引き出すことに努める必要がある。こ れを就労意識喚起教育の一つの特色とする。学生の多様性にも対応する必 要がある。 − 入学当初は、特定の学科を除いては、将来についての明確な意識を持たな い学生が多数であることを認識しておく必要がある。最初はまず、今の自 分の他に将来の自分があることを意識し、将来の自分に夢あるいは希望を 持つきっかけを作ることから始めることが効果的と考えられる。 以上について現在(平成 21 年度入学生まで)は、学科によって基礎ゼミあ るいはこれに相当する科目の開設状況が異なり、約半数の学科ではまだ 1 年次 にのみ開設されている。平成 22 年度入学生からはこれを、すべての学科で 1、 2 年次を通して基礎ゼミ(または基礎演習)として開設することとした。とく に新設予定のキャリア形成学部では、4 年間にわたるゼミで体系的に、就労意 識の喚起から醸成までを丁寧に行う。 (2)キャリアデザイン講座と就労意識の喚起 キャリアデザイン講座は、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの 3 科目を開講している。これにより、 職業に就くことへの意欲(就労意識)を高め、さらに就きたい職業への具体的 なイメージが持てるようになることを目標としている。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲはそれぞれ、 1、2、3 年次の配当としている。Ⅲでは後述するように、インターンシップを
授業内容に取り入れ、職業あるいは働くことの具体的な理解を通して就労意識 を高めることを目指している。Ⅰは平成 17 年度、Ⅱは平成 20 年度、Ⅲは平成 21 年度から開始している。そのうちⅠとⅡの具体的な内容は次のとおりで(各 科目のシラバスより)、就労意識の喚起を主要な目的としている。 −キャリアデザイン講座Ⅰ 「自分の将来と大学生活の過ごし方」をテーマとして、①自分の将来を考え、 ②目標をつくる大切さを考え、③社会で必要な能力を考え、④社会で働くと いうことを考え、⑤なりたい自分の実現に向けて大学生活の過ごし方を考え る。これにより、「自ら目標を定め実行する・考え討議する・発表する」力 を修得する。 −キャリアデザイン講座Ⅱ 「職業と私の進路」をテーマとし、卒業後の進路選択に備えて、「働くとは」 「学生と社会人との違い」「働くいきがい」「学生時代のすごし方」などを考え、 働くことの魅力を知る。また、世の中の職種や資格について理解を深め、進 路を具体的にイメージすること、社会人として必要なコミュニケーション力 をつけることを目指す。 (3)就労意識の醸成 就労意識の醸成は前述のように、キャリアデザイン講座Ⅲおよび正課外のイ ンターンシップにおいて行っている。また、学外実習を要する課程では、その 中で職業理解を通して就労意識の醸成を図っている。 a)キャリアデザイン講座Ⅲ キャリアデザイン講座Ⅲは 3 年次前期の配当で、1、2 年次のキャリアデザイ ン講座ⅠおよびⅡに続いて、「職業理解」を主要なテーマの一つとしている。 この科目は、教室での講義・演習に加えて、夏休みに 1 ∼ 2 週間のインターンシッ プを体験することを修得要件としている。教室での講義・演習では、インター ンシップについて理解し参加に必要な知識・技能を習得する。その上で、イン ターンシップに参加し、終了後は教室に戻ってレポートを作成し発表する。こ れにより、体験と省察を通した「職業理解」を目指す。
b)専門実習 いくつかの学科の専門実習および資格取得課程では、当該分野の職場におけ る学外実習を行っている。その際、インターンシップとしての視点をもって実 習につくことを指導している。その対象は、社会福祉学科の学外実習(社会福 祉援助技術現場実習)、健康栄養学科の学外実習(臨地実習)、教育実習、博物 館実習である。 c)正課外のインターンシップ 本取組で実施しているインターンシップを表 5.1 に示す。このうち正課外のも のは表中の①で「一般ビジネス研修」と呼んでいる。毎年、大学コンソーシアム 京都、経営者協会、ハロワーク等からその年度のインターンシップの募集がある。 その説明会を 4 月に開催した後、キャリア支援センターで申し込みを受け付ける。 終了後は報告書の提出を求め、省察することによってその成果の定着を図ってい る。平成 20 年度は 17 名がインターンシップを受けることができた。 表 5.1 正課・正課外のインターンシップ(研修,対象学年,内容) 研修名 対象 時期 内容 ①一般ビジ ネス研修 全学科 2 ∼4 年生 夏休を中心に 2 週 間∼ 1 月程度 ○既存プログラム(大学コンソーシアム京都、経営者 協会、ハロワーク等)を学生の希望に応じて紹介 ○本学で上記団体の説明会を実施する。 ○キャリア支援センターにインターンシップ担当をお いて学生の相談に対応する。 ②教育課程 に組込まれ た実習 人間健康学科 3 ∼ 4 年生 ○管理栄養士養成の教育課程(臨地実習) 給食の運営実習(3 年次 5 日間)、臨床栄養学実習(3 年次 10 日間)、公衆栄養学実習(4 年次 3 日間) ○上記の実習の準備・支援・指導科目として、人間健 康 B 総合演習Ⅰ、Ⅱ(3、4 年)を提供。 社会福祉学科 3 年生 ○社会福祉士養成の教育課程(社会福祉援助技術現場実習) 対象施設は高齢者施設、障害者施設、児童養護施設、 社会福祉協議会等で 3 年次 通年実習(210 時間以上) ○上記の実習の準備・支援・指導科目として、社会福祉援 助技術現場実習指導 A(2 年後期)、B(3 年通年)を提供。 ③光華方式 インターン シップ キャリアデザイン 講座Ⅲ 受講者 3 年生 夏休に 2 週間程度 ○キャリアデザイン講座Ⅲ(業界・企業・仕事研究に 関する講座)の最終仕上げとしてインターンシップを 実施する。 ○インターンシップ先は本学とネットワークの深い(卒 業生が多い)企業が中心。職種は例年希望の多い事務、 営業、販売等を対象とする。 ○インターンシップ先の選定は、本人の希望をもとに キャリア支援センターの職員、ゼミ担当の教員の指導・ 支援、自らが行なう。
4 基本的能力の育成 本取組では、社会人としての「基本的能力」の養成を挙げている。またその 発展として、「社会人基礎力」を習得することとしている。「基本的能力」とし ては、次の項目を想定している。 −理解力(「聞く・読む」を通してものごとを的確に理解する能力) −論理的思考力(ものごとを論理的に考える能力) −表現力(表現すべきことを的確に「話す・書く」能力) −基礎学力 これらの能力はこれまで、基礎ゼミ等、大学基礎講座、英語、情報処理、そ の他、各種の「基礎科目」を中心に養成してきた。しかし、十分な教育効果を 上げるには至らず、その原因として次のような問題が認識されている。 − 教員間で、社会に出る学生の必須な修得能力として十分な認識がされてい ない。むしろ、専門科目に比べて軽視されてきたところがある。 −目的(修得目的)を基準とした体系化が行われていない。 −科目全体として組織的な運営が行われていない。 本取組では、以上の点を中心に上記の科目及びその運営について、以下のよ うな改善に取り組んでいる。 (1)基本的能力の養成としての導入教育の体系化と運営 前記の理解力、論理的思考力、表現力の基礎についてはこれまで、導入教育 として行ってきたものである。該当科目は基礎ゼミ等および「大学基礎講座」 である。大学基礎講座は平成 13 年度に、全学共通の導入教育として開始した も の で あ る( 藤 田、2002a)。 本 学 独 自 の 教 科 書 を 用 意 す る な ど( 藤 田、 2002b)、導入教育としての大きな成果を上げてきた。その目的は、大学での学 び方(ノートの取り方、図書館の利用法、レポートの書き方など)を修得、学 習意欲を喚起し、大学での学習を成功に導くことにある。一方、基礎ゼミ等は、 導入時にきめ細かな教育と指導が必要であるとの判断で、学科ごとに設けられ ていった。その目的は両科目間で相当に重複するため、十分な連携と導入教育 としての体系化が必要と認識され、本取組を機会に検討が進められている。
とくに近年では、より基本的な「読む、書く、聞く、話す」のコミュニケーショ ン基礎力についての教育が必要になっており、導入教育の中で、これらの教育 を重視する方向にある。 (2)基礎英語教育の組織的運営 従来より、全学共通の英語科目については、その教育効果の観点から、内容 の統一と組織的運営が検討されてきた。本取組を機会に、これを 2 年計画で実 施することとした。その要点は次のとおりである4。 −組織的運営の強化 −そのためのテキスト等の統一教材の開発 教材の統一は、本科目全体を組織的に運営するためには必要不可欠である。 そこで今回、本学学生の特性への対応、および本学が目指す英語教育の実現の 観点から、独自の教材を開発してのぞむこととした。以下、この教材について 報告する。なお、教材の開発は本学国際英語学科が担当した。 開発した教材は通常の紙ベースのテキストとこれに基づく電子教材である。 電子教材は学生の自習・復習用にインターネットを介して利用できる e ラーニ ング教材として開発した。用意した電子教材は次のとおりである。テキストを リーディング・リスニングしたのち、練習問題で理解度を確認するといった学 習法を想定している。テキストと音声はダウンロードし、学生のパソコンある いは iPod などの携帯情報端末で利用することもできる。 −リーディング用テキスト(文字)およびリスニング用音声 −練習問題 このほか、iPod での利用を想定して、画面に表示されるテキストを見ながら イヤホンで読上げの音声を聞くコンテンツの開発を試みた(山本他、2008)。 このコンテンツはポッドキャストとして配信している。学生は、自身のパソコ ン上で配信サイトの登録をしておけば動画・音楽の再生・管理ソフト iTunes を使用して自動的に最新のコンテンツをダウンロードすることができる。ダウ ンロードしたコンテンツは iPod で視聴できる(図 5.5)。 これらの教材を使用した英語教育は 1 年次の英語(基礎英語)で、20 年度か
ら実施している。全学科で統一した授業を組織的に実施している。1 年次の英語 は現在、すべての学科で週 2 回、学生は必修科目として履修する。従来、この 2 回で内容が異なるものを履修してきた。今回は、いずれも同じテキストを使用し、 週 2 回の授業で 1 つの内容の科目を受講する形になっている。ただ、既存のカリ キュラムの上で実施していることもあり、体系的・組織的英語教育の効果を上げ るにはさらに改善が必要である。そこで、22 年度入学生からはカリキュラムを 変更し、これをさらに徹底する。とくに新設するキャリア形成学部では、修得レ ベルに応じたステージ制を導入するなど、大きな改善を予定している。 5 社会人基礎力の養成 以下の能力を基礎に、「問題発見・解決」に自立的・能動的にあたることが できる力を養成する。これは、経済産業省の提唱する「社会人基礎力」(「前に 踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」)(表 5.2 参照)の養成を目指し たものである(経済産業政策局産業人材政策室、2009)。 図 5.5 iPod 用音声入りテキストの画面
表 5.2 社会人基礎力− 3 つの能力 12 の要素− 基礎力 .net(2009)を参考に作成 3 つの能力 12 の要素 前に踏み出す力 一歩前に踏み出し、失 敗しても粘り強く取り 組む力 主体性…物事に進んで取り組む力 働きかけ力…他人に働きかけ巻き込む力 実行力…目的を設定し確実に行動する力 考え抜く力 疑問を持ち、考え抜く力 課題発見力…現状を分析し目的や課題を明らかにする力 計画力…課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力 創造力…新しい価値を生み出す力 チームで働く力 多様な人々とともに、目 標に向けて協力する力 発信力…自分の意見をわかりやすく伝える力 傾聴力…相手の意見を丁寧に聴く力 柔軟性…意見の違いや立場の違いを理解する 情況把握力…自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力 規律性…社会のルールや人との約束を守る力 ストレスコントロール力…ストレスの発生源に対応する力 − 調査分析力(問題の発見・解決に必要な情報を探索・収集し、これを分析 する能力) −プレゼンテーション力 −レポート作成能力 −コラボレーション力(他人と共同して問題解決に当たることができる能力) − ICT(情報通信システム)活用能力 社会人基礎力の養成は基本的能力の養成を経て、その発展として位置づけてい る。従って主に、3、4年次を中心とする専門課程教育と正課外の講座で行って いる。 (1)社会人基礎力養成講座 社会人基礎力養成講座としては、厚生労働省の YES プログラム5(厚生労働省、 2009)に準じた講座として、正課外でⅠ、Ⅱ、Ⅲの 3 つの講座を実施している。 このうちⅠ、Ⅱは 2 年生、Ⅲは 3 年生を対象にしている。各講座の内容は表 5.3 のとおりである。その受講状況は表 5.4 に示すとおりである。表に示すように、 受講者数は目標をかなり下回る。就職面接や資格対策などのスキルアップ講座 では比較的多くの受講者があるのと対照的である。その要因はいくつか考えら れるが、より基礎的な能力の習得といったものへの関心が不十分であることや
時間設定などが主要な要因と考えられる。前者については、低学年、とくに初 年次でのキャリア教育をしっかり行うことが肝要と考えられる。その意味で、 初年次の基礎ゼミの役割は重要である。後者については、平成 21 年度から平日 (それまでは土曜日)開催とし、回数を 15 回から 8 回程度とする対策をとった。 (2)専門科目における社会人基礎力養成 専門課程教育では主に、専門ゼミ等の演習科目と専門実習科目において、社 会人基礎力養成の要素を意識的に取り入れた。問題発見・解決、レポート作成、 プレゼンテーションを主題としている。その方法・結果を連絡会で報告・議論 することにより、有効な教育法を追求している。専門ゼミ等において、発表・ 討論の時間の増加、社会を意識したテーマの設定、さらには PBL(問題やプロ ジェクトにもとづく学習)の導入など、その影響が現れている。 表 5.3 社会人基礎力講座の構成と内容 対象学年 1・2 年生 3 年生 講 座 社会人基礎力養成講座Ⅰ 社会人基礎力養成講座Ⅱ 社会人基礎力養成講座Ⅲ 内 容 ①基礎学力(読み書き) ・説明文を書く ・要約文を書く ・意見文を書く ②基礎学力(計算) ・整数の計算 ・分数・小数の計算 ・方程式 ・集合 ③基礎学力(社会人常識) ・税金の仕組み ・環境問題 ・高齢化社会 ・情報化社会 ・日本の歴史と文化 ④キャリアデザイン(職業人意識) ・ 大学生活、何してる? 何しよう? ・会社で働くということ ・いろいろな仕事 ・社会で求められる力 ・私のキャリアデザイン ⑤コミュニケーション ・分かりやすく話す ・意見の主張 ・プレゼンテーション ・的確に聴く ・ディスカッション ⑥社会のマナー ・挨拶の基本 ・言葉遣いと敬語 ・電話と訪問のマナー ・来客対応のマナー ・仕事の基本と気配り 表 5.4 社会人基礎力講座の受講状況 講 座 内 容 対象学年 受講者数 社会人基礎力養成講座Ⅰ 読み書き・コミュニケーション 2 13* 社会人基礎力養成講座Ⅱ 計算・社会人常識 2 10* 社会人基礎力養成講座Ⅲ ビジネスマナー 3 63** * 平成 20 年度,** 平成 21 年度
6 ICT システムの活用 取組の課題を解決する方法として、「個別指導・個別対応教育」と並んで ICTの活用を考えた。本取組の特徴の一つである。ここでは、その導入・活用 状況について報告する。 (1)キャリア形成・キャリア支援面談システム 図 5.6 にシステムとその運用の概念を示す。図のように、本システムには入 学時および在学中に発生する各種の学生情報を収録する。その情報を学生への 個別指導等に活用し、学生のキャリア形成と就職活動の支援を行う。本システ ムは、学生総合情報管理・提供システム「光華 navi」6内に用意した。計画では、 次の情報を収録することとした。 −学生のアセスメントデータ 基礎学力、性格、意識(キャリアマインド)、適正などの自己分析結果 −教職員による面談・指導の記録 面談の日時、目的、内容、経過など アセスメントとしては、1 年次と 3 年次を対象として、基礎学力、性格、意識、 適正などのテストを実施し、全学年を対象に社会人基礎力評価のテスト(HQ テスト)を実施している。これらは一部、システムへの入力を行っているが、 図 5.6 キャリア形成・キャリア支援面談システムとその運用
システムの機能上の問題などで、まだ全面的にシステムへ収録するには至って いない。一方、面談・指導の記録については、個人情報保護やプライバシーへ の配慮などの問題が指摘され、その解決にあたっているところである。 面談記録・閲覧のシステムの導入と試験運用は予定通りに進んだが、本運用 にあたってはこれらの課題を順次解決しているところである。その中でキャリ ア支援面談については、平成 20 年度末に一部解決し、21 年 4 月より、学生キャ リア支援センターにて運用中である。キャリア支援センターでは現在、次の項 目についてシステムへの記録を行っている。 −面談日(必須) −面談者(自動記録のため入力不要) −面談事項(必須。カテゴリー化) −種別(必須。メニューより選択) − 担当教員・関連他部署(学生サポートセンター、学生キャリア支援センター) に伝えたいこと。(任意) これらの記録はこれまで、同センターで手書きのカードを使って行われてき たものであるが、同センターでの参照を容易にするとともに、担当教員(ゼミ、 クラス担当)も随時閲覧することができ、学生の指導に役立てられるものと考 えている。 本システムは今後、本学の総合学生支援(平成 20 年度学生支援 GP に選定) に引き継がれる。同取組では、学生の過去・現在の状況についての総合評価(ア セスメント)を支援の基礎に置いており、上記の課題の解決策について検討中で ある。 (2)ラーニングポートフォリオ(e ポートフォリオ) ラーニングポートフォリオは、学習目標、学習計画、学習結果など、学生の 学習・生活活動を記録し、自己の省察および教員とのコミュニケーションによっ て、学生のスキル、精神面、人格形成などさまざまな面での成長を支援するも のである。とくに、その成果を数量的に評価することが困難なものについて有 効であるとされている。就労意識の喚起・醸成あるいは社会人基礎力の育成と
いった課題には有効であろうと考えられる。 現在、本学で実施している e ポートフォリオの使用形態は次の 2 とおりである。 −教員が設問形式で記入させる形態 たとえば、学年初めに、その学年での達成目標とその計画を回答させる。 これに設問者の教員がコメントすることにより、教員と学生のコミュニケー ションを図り、学生を励ましアドバイスを与えることによって支援しようと するものである。図 5.7 にその 1 例(学生が開く設問の画面)を示す。これ は筆者の一人が、担当のゼミで行っている例である。 −学生が自身で記録する形態 学生が日記のように、自身の学習や生活についての目標、計画、活動など の記録を行い、自身の意識と行動を確かめ省察することによって成長しても らおうとするものである。 このように通常、ポートフォリオは学生の自発的な書込みを前提としている。 これが原因と考えられるが、書込みは多くない。ゼミなどで担当教員が授業の 図 5.7 e- ポートフォリオの画面例
一環として(成績評価の対象として)回答を要請したときのみ、書込みが多く なるという状態である。そこで、ポートフォリオの運用について、次の 2 点を 提案しておきたい。一つは、学生に対して書込みを強制するような方法をとる 必要があるということである。授業の一環とするのもその一つである。幸い本 学では、基礎ゼミなどでキャリア形成を主題としていくので、この方法が可能 になると思われる。もう一つは、教員がコメントを丁寧に行うということであ る。ポートフォリオは学生と教員の密接なコミュニケーションにより成果が得 られるものであり、丁寧なコメントは不可欠である。これが学生のポートフォ リオへの信頼と期待につながるものと考えられる。 (3)e ラーニングコース LMS(学習支援システム)上に自習用コースとして、次のような学習コース を用意している。 −リメディアル等 統計学、日本語(ASP を利用)、英語(本学独自開発) −スキルアップ TOEIC 対策、レポート作成、プレゼンテーション、ディベート −就職活動支援 就職面接対策、働く意義と会社の仕組み、社会人マナー その目的は、e ラーニングの「いつでもどこでも学習できる」ユビキタス性 を活用し、学生へ幅広い学習機会を提供することにある。利用状況は全体にや や低調であるが、一部のコースでは利用者が多いものもある。20 年度末に利用 状況を分析し、利用率の向上策を検討した。その結果、学生への周知に最大の 課題があるとして、授業での案内など、その対策を強化している。 (4)実習支援システム この ICT システムは、学外実習の円滑な実施とその学習効果の向上を図るこ とを目的としている。学外実習がかかえるさまざまな問題、とくに実習生への 支援を、IT を利用することによって解決しようとするものである。インターネッ ト上に構築される仮想的なコミュニケーション空間のユビキタス性を活用し、
大学・実習先・実習生との間でリアルタイムで高密度な連携および支援を実現 する。支援の第 1 は、学外実習期間中の学生への迅速で十分な支援である。第 2 は、実習先施設および実習先指導者との連携の問題である。第 3 は、実習中 に他の授業を欠席せざるを得ない場合への学習支援である。 このシステムが対象とするのは、社会福祉学科の学外実習(社会福祉援助技 術現場実習)、健康栄養学科の学外実習(臨地実習)、教育実習、博物館実習で ある。この中から社会福祉学科の学外実習を対象に試験システムを開発し、平 成 20 年度に試験運用を行った。その結果、いくつか改善点はあるが、上記支 援における基本的な目的は達成できるものであることが確認できた。そこで 21 年度はこれを拡大して、教育実習などその他の学外実習に適用しているところ である。また、当初の対象に加えて、インターンシップへの活用を準備中である。 7 アセスメント 本取組ではこれまで述べたように、高い就労意識、基本的能力、社会人基礎 力をその教育目標としている。これらの現状と習得状況を評価するため、次の ようなアセスメントを行っている(表 5.5 参照)。これらの受診状況は表 5.6 の とおりである。 −プレースメントテスト −自己発見レポート − HQ テスト −就職適性検査 プレースメントテストは基礎学力を調べるもので、入学時、2 年、3 年への進 学時に行っている。科目は国語、英語、数学である。現在、学科によって実施学 年と実施科目は異なるが、今後はこれを統一していく方向で計画している。それ ぞれ、関係の科目での習熟度別クラス編成など学生の学習支援に役立てている。
表 5.5 学生の意識・能力評価の実施年次と評価目的 種別 1 年生 2 年生 3 年生 自己発見 自己発見レポート ・基礎学力 ・学習スタイル ・性格の傾向 ・社会的強み プレースメントテスト ・基礎学力 自己プログレスレポート ・成長感 ・行動レベルの自己評価 ・学びへの度合い ・学びへの考え方 就職適性検査 ・社会的強み ・能力の強み ・好きな仕事分野 ・適性職種 HQ (H u m a n Quotient) 第 1 回 HQ 診断 ・性格 ・思考 ・態度 ・スキル ・行動 第 2 回 HQ 診断 ・性格 ・思考 ・態度 ・スキル ・行動 第 3 回 HQ 診断 ・性格 ・思考 ・態度 ・スキル ・行動 表 5.6 各種アセスメントの受診状況 テスト 対象学年 受験者数 20 年度 21 年度 自己発見レポート 1 167 253 就職適正検査 3 179 − HQテスト 全学年 151 745 就労意識調査 1 325 348 自己発見レポートは、進路に対する意識、性格の傾向、問題解決のスタイル、 基礎学力、社会的強み、職業への興味を測定する。入学時に全学生を対象に実 施している。21 年度入学生の受診率は 62% である。現時点では、20、21 年度 の実施結果より、本学学生の現状の評価とその分析を行ったところであり、本 取組みで挙げる基本的能力の強化と就労意識は強化すべき課題としてあらため て認識された。 HQテストは、社会人基礎力を評価するものとして、全学年を対象に実施し ている。学生の現在の能力と可能性、行動の傾向、性格、職業適性などが評価 される(株式会社ジェイ・エス・エル、2009)。学生はこれを、進路選択に生 かすことができる。大学としては、学生の個々の指導・支援に生かすことがで きる。とくに、就職支援には重要な情報となる。結果は、Web によって担当教 員が閲覧でき、学生の指導・支援に活用することができる。ただ、このテスト は 1 回約 40 分を要し、受診者の負担が大きく、改善を要すると考えている。 就職適性検査は 3 年生を対象に実施している。就職活動を開始するにあたっ
て、学生の就職適正を検査し、就職先の選択やアピールポイントの認識など、 就職活動の戦略・戦術の検討に役立てている。平成 20 年度、179 名の受診があ り、対象者の約半数が受診しており、比較的関心が高い。 このように、学生への個別対応と個別的対応教育に必要な情報として、現在、 さまざまな測定を行い、その有効性を検証しているところである。そのため、 ここで示したように測定内容が相当に重複しているところがある。21 年度中に 今後の評価システムを確定したいと考えている。その要点は次のとおりである。 −全体の体系化 −エンロールメントマネージメント(付録 1)の一環としての実施 −学生の負担を最小限にするコンパクトなテスト Ⅵ まとめ 本取組の計画とその実施状況について述べた。そこで述べてきたようにこの 取組は、今、社会が大学に求める「社会人としてふさわしい人材の育成」に応 えるため、その教育課程を「キャリア教育」の視点から見直し、大学の教育を 社会に対して責任を果たせるものとするための教育改革である。実施状況に見 る限り、その最終的な成否はまだ判定できないが、解決法は少しずつ明らかに できつつある。また各取組事項では、計画した事項を着実に実施している。取 組完了時には、これらの実施結果をもとに、上記の視点からのキャリア教育の 在り方と有効な方法が見出せるものと期待している。以下、この取組によりこ れまでに認識できた事項について述べ、本論のまとめとする。 6.1 大学の在り方とキャリア教育 大学は今、これまでになく大きな社会的責任を問われている。同時に期待も されている。その回答を考えるには、50% を超える若者が大学へ進学する大学 大衆化を前提とする必要がある。大学に課せられているのは社会が期待する社 会人を育成することである。これを「大衆化」と合わせて考えると、大半の大