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学校美術館の実践報告-生徒とアーティストをつなぐ鑑賞活動-

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Academic year: 2021

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1. 研究の背景と目的 2. 学校美術館の活動 3. 作品・展示について 4. 2015 年学校美術館の実践報告 5. 考察

1. 研究の背景と目的

平成 20 年改訂の小・中学校の図画工作, 美術の学習 指導要領の内容では, 「A表現」 と 「B鑑賞」 に加えて 「共通事項」 として自分の感覚や活動を通して形や色, 動きなど造形的な特徴をとらえ, これをもとに自分のイ メージを持つことが行われるようにするとある. また 「B鑑賞」 において言語活動の充実をはかることや, 鑑 賞指導における美術館の利用や連携も指導の配慮事項に 挙げられている. 「A表現」 と 「B鑑賞」 は, いずれも自分のイメージ, 考え, 思いを表すことを目的とする. とくに 「B鑑賞」 は, 感じて, 考え, 話す, という過程が重要である. 絵 や彫刻などを見て, さまざまに感じて表す行為と言える. それは, ひとつの解答に向かって行うのでなく, その子 なりの思いや考えが尊重され, 鑑賞しながら意見を出し 合う中で, ひとりでは気付かなかった作品のよさや制作 者の思いを理解することができる. その鍵となるのは, 言語活動と言われる言葉や文字によるコミュニケーショ ンである. 図画工作科における言語活動として, コミュ

学校美術館の実践報告

生徒とアーティストをつなぐ鑑賞活動

日本福祉大学 子ども発達学部

The Practical Report of School Museum:

Appreciation Activities Connecting Students and Artists

Kazuhiko EMURA

Faculty of Child Development, Nihon Fukushi University

Keywords:鑑賞教育, 実践報告, 学校美術館, ギャラリートーク 要旨 本研究は, 2012 年から始まった学校美術館という出前美術鑑賞活動の実践報告である. 小中学校の図工・美術の授業にお いて, 絵画, 彫刻, 工芸のアーティストが作品を展示し, ギャラリートークや造形ワークショップを行って児童・生徒と交 流を図った. 美術館での鑑賞とは異なり作品に直に触れたり, アーティストから技法, 材料について聞いたりすることで, より深く作品について理解を深める機会となった. 今後の課題として, 生徒の創作意欲をさらに伸ばすために, 現場教師と アーティストとの研修機会を設ける必要性を感じた.

実践報告

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ニケーションや感性・情緒の基盤という言語の役割にか んしては, 例えば, 体験から感じ取ったことを言葉や歌, 絵, 身体などを使って表現する (音楽, 図画工作, 美術, 体育等)」 と述べられている. このことから, 図画工作・ 美術では, 子どもたちが自分の感覚を通してとらえた色 や形, イメージを, 絵や工作であらわすだけでなく, 互 いの作品を見てさらに表現したり思考したりコミュニケー ションする鑑賞活動を言語活動としてとらえ, より鑑賞 活動の充実が図られることが望まれていると言える. 本研究は, アーティストの作品を小・中学校に持ち寄っ て展示する 「学校美術館」 の企画・運営に参加していく なかで, 作品を通して作家と子どもたちとが交流した実 践報告である. これらの実践は, 学習指導要領 「B鑑賞」 に該当し, 小・中学校と他の教育機関が連携した取組み である. 児童生徒らと鑑賞活動を行い, より美術や工芸 分野に関心を持つようになること, また図画工作や美術 の制作・鑑賞活動がより身近なものになることを目的と する. この活動により, アーティスト, 教師, 児童・生 徒をつなぐ対話による芸術鑑賞および表現活動が展開さ れ, 異文化や世代間の理解を深める一助になることを検 証したい. 本実践報告は, 2012 年から 2015 年の 4 年に わたり展開している, 「学校美術館」 を概観し, 特に 2015 年の活動について取り上げる.

2. 学校美術館の活動

(1) 学校美術館の定義 学校美術館という名の活動は, 全国各地で行われてお り, その内容も様々である. 小中学校へ美術館から学芸 員が絵や彫刻などの所蔵作品を持ち込み, 作品や作家に ついてギャラリートークや鑑賞学習を行うものや, 図画 工作や美術の授業などで制作した児童や生徒の作品を学 校内で美術館のように展示するものなど, 各地で展開し ている. 四宮は 1994 年に村上タカシらが学校施設を使っ たアートプロジェクト 「イズミワク」 で中学生と学校内 でアートを作り上げた活動を紹介している (四宮 2002, p.8). 岐阜県関市の関特別支援学校の 「学校を美 術館にしよう」 では, 生徒たちの共同作品を展示したり, 地元の陶芸家, 芸術家の作品も同じように展示された (岐阜県立関特別支援学校 2012). このように学校内を美術館, アート空間にするという点 では共通している. 筆者が参加している 「学校美術館」 では, 画家, 彫刻家, 工芸家などの作家が, 自身の作品 を小・中学校などの校内に展示し, 鑑賞活動や造形ワー クショップなどを行うことを意味する. (2) 学校美術館の経緯 学校美術館は, 2012 年 10 月に岐阜大学教育学部美術 教育講座の辻泰秀氏の呼びかけにより始まった活動であ る. この活動が始まる経緯として以下の現状があった. 図画工作, 美術の授業の中で, 鑑賞活動に取り組む場合 は学校にある絵画や彫刻の写真やミニチュアなどによる 鑑賞活動を行う. 当然実際の作品ほどの臨場感はなく, ミニチュアには質感を感じることは難しく鑑賞活動の限 界を感じずにはいられない. しかし, クラス単位や学年 単位で美術館に出かけて鑑賞活動を行うことは, とても 困難な現状である. その中で, 辻氏が他の教育機関との 連携した教育活動に関心があり, 自らも制作活動を続け ている大学教員, 小中学校, 高校の教員に呼びかけ, 「学校美術館」 として鑑賞学習の充実と造形ワークショッ プの普及を目的とした企画が進められることになった. 第 1 回目の学校美術館は 2012 年 11 月 29 日∼12 月 12 日の期間, 愛知県海部 郡飛島村立飛島学園で 「飛 島学園美術館」 として美術 館で開催された. 全校での 鑑賞会をはじめ, 造形ワー クショップや一般公開もさ れた. 以降 2013 年, 2014 年には, 第 2 回, 第 3 回学 校美術館が 10 月∼12 月に かけて, 岐阜県岐阜市立藍 学校美術館展示風景 ギャラリートーク

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川北中学校, 岐阜県美濃市立藍見小学校, 愛知県弥富市 立十四山東部小学校の 3 校で開催された. 3 か所の小中 学校でそれぞれ出品作家がギャラリートークを行う機会 が設けられ, 児童や生徒たちと作品を通して交流するこ とができた. (3) 出品者と作品について 出品者は, 辻氏の発案に賛同した人物が参加する形で 集められた. 愛知, 岐阜に在住または在勤しアーティス ト活動, 制作を続けている人物で, 教育活動にも興味を 持って取り組む人物である. その多くは, 大学, 中学校, 高等学校などで教員を勤めている. アーティストは, 次 の条件のもと参加した. ①数か所で行う学校美術館に, 自分で作品を搬入搬出できる. ②展示期間中に開催され るギャラリートークまたはワークショップに参加できる ③それらにかかる費用は自費で行う. 出品作品の内容に 関しては, アーティストに一任された.

3. 作品・展示について

展示される作品は, 絵画, 彫刻, 版画や陶器, ガラス, 木工などの工芸, クラフト作品のほか, インスタレーショ ンなど多岐にわたっている. 出品点数はひとり 2, 3 点 を目安に, 大きさ重さは自由だが, 手で持って運べるも のとした. (1) 展示作品 筆者が 2012 年から 2015 年までに学校美術館で出品し た作品は 13 点である. その中で 3 点を紹介する. 1) 「mother」 2013 W43xD34xH50 (㎝) 陶 筆者は幼少期からマンガやテレビアニメ, 映画などで 様々なタイプのロボットを見てきた. 巨大な悪を退治す るヒーローや, ガンダムに代表されるような戦争兵器と してのロボットだけでなく, 人間の生活を支えたり, ま るで人間と同じ人格を備え感情をあらわすものもロボッ トとして表現されていた. いわば人間ではないが人に寄 り添うもの, 子どもの頃で言えばペットやぬいぐるみな ど身近にいて安心する存在がロボットではないかと考え た. そんな存在をやきもので表現できないか, 人類は火 を獲得してからやきものをつくり続けてきた. 日本の縄 文や弥生時代につくられた, 土偶や埴輪に代表されるよ うな人型のやきもので親和性を表現したいと考え, 5 年 ほど前からロボットを制作している. 「mother」 もその ひとつで, その体型から母のようにやさしく包み込むよ うな存在として制作した. 2) 「ユーオプロケファルス」 2012 W24xD55xH23 (㎝) 陶 恐竜の名前はラテン語での呼称が多く大変読みづらい. しかし筆者にはその名前も魅力のひとつである. ユーオ プロケファルスはよろい竜と呼ばれる草食恐竜のアンキ ロサウルス科に属し, 白亜紀後期 7500 万年ほど前に北 米大陸に生息していたとされる恐竜である. 骨格標本や 図鑑の復元図でその鎧のような, 角やトゲに魅力を感じ, からだを西洋の甲冑のイメージで装飾を加えていきなが ら制作した. 筆者は子どもの頃より恐竜に興味関心があ り, 1990 年代の恐竜温血説から鳥類の祖先であるとい う現代の説に至るまで様々な姿を模索することができる 恐竜を自分なりのイメージで形にしたいと制作に取り組 んできた. ことに草食恐竜と呼ばれるものは肉食恐竜か ら身を守るためにからだに鎧や兜のような飾りを付けて 生きていたとされており, その形のバリエーションは制 作者の想像力を刺激するものである. mother ユーオプロケファルス

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3) 「サカナトカゲ」 2012 W60x34x37 (㎝) 陶 恐竜が生きた時代の海に棲んでいた海生爬虫類である イクチオサウルスをモチーフに潜水艦のようなメカニッ クなイクチオサウルス (さかなとかげの意) を制作した. 流線型を意識してロクロ成形により胴体部分をつくり, 顔やヒレなどをより機械仕掛けのようにつくりこんで仕 上げた. 炭酸銅を呈色剤にしたトルコマット釉を掛けて, 海の中を進むイメージをあらわした. 木製の台座にハシ ゴ状の脚で支えることで, 下部も見えるように展示に工 夫した. (2) 作品のねらい 学校美術館での作品展示は, 作家と児童・生徒との出 会いの場である. 筆者は, これまでに子どもたちが見た ことないようなものを提示したいという考えから, 恐竜 やロボットの陶のオブジェを出品展示してきた. やきも のは愛知県や岐阜県では常滑・瀬戸・美濃など産地もあ り, 小・中学校でもやきものづくりを授業に取り入れて いるところもあるので, 児童生徒たちにとってなじみの ある素材である. しかしそこでは, 主にカップやお皿な どの食器や素焼きの土器, 埴輪などを制作するがオブジェ の恐竜やロボットは見る機会はない. そこに, 子どもの 興味関心を引き寄せ図画工作や美術への関心をつなげた いと考えた. (3) 展示方法 展示空間は, 学校内の空き教室やフリースペース, 廊 下や体育館などである. ギャラリーや美術館のような専 門的な施設ではない. 展示台やピクチャーレールのよう な什器がないため, 学校内にある机や椅子, ロッカーな どで展示することとした.

4. 2015 年学校美術館の実践報告

(1) 岐阜市立岐阜中央中学校での学校美術館の実践 2015 年岐阜県岐阜市立岐阜中央中学校で行われた実 践について報告する. これは, 平成 27 年 11 月 12, 13 日に開催された平成 27 年度全国造形教育連盟・日本教 育美術連盟合同研究大会の企画のひとつとして, 公開授 業で開催されたものである. 2015 年 11 月 12 日岐阜県岐阜市立岐阜中央中学校に おいて, 学校美術館が行われた. 作品を通して作家と児 童・生徒たちの交流を目的として企画され, 様々なジャ ンルのアーティスト 28 名の作品が, 学校内の多目的ス ペース, 廊下, 体育館などに展示され, 美術館のように 展開した. 会場には中学校の生徒のほか, 近隣の幼稚園, 小学校の子ども達総勢 370 名が参加した. 活動は二部構 成となり前半はギャラリートーク (鑑賞教室) を行い, 後半は造形ワークショップを行った. 公開授業 1 として, 校内各所でギャラリートークが行 われた. 作品をはさんでアーティストと子どもたちが語 り合った. そこでは作家が作品の前で説明し対話を通し サカナトカゲ 体育館での展示 机やロッカーを展示台にする

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て子どもたちと交流した. およそ 30 分ずつ前後半に分 かれクラス単位で絵画, 彫刻, 工芸, インスタレーショ ンなどさまざまな作品が展示されたコーナーに集まり, 作家とともに鑑賞活動が始まった. 間近に寄って作品の 大きさ, 立体感や奥行き, 材質感, 筆の使い方や微妙な 色彩などを感じることができ, より深く作品を理解する ことができた. それは作家自身がギャラリートーク (鑑 賞教室) を行い, 子ども達が作品を介して直接触れ合う ことができたからである. 作品の素材や制作方法などを 話すだけでなく, 作品の後ろや裏を見たり, 触ったり持っ たりすることができた. 中には, 自身の作品の続きを一 緒に作ろうという試みも見られ会場が一体感に満ちた瞬 間もあった. これらの体験は, 子どもたちにとって見て いる作品がより身近なものになり, 作品を見ること, つ くること, 素材について興味を持つことにつながると考 えられる. 公開授業 2 として, 校内に 13 の造形ワークショップ の活動を行った. 多目的スペース, ピロティーや廊下, 体育館, 柔剣道場など学校の各所で, 子どもたちがアー ティストと交流しながら表現活動を行った. 様々な素材, 技法を使って多彩な表現が生まれた. ワークショップの 講師は, 大学の教員, 学校教諭, 教員や保育者を目指す 学生がつとめた. 普段の図画工作や美術の授業とは違い, 大きなビニール袋の風船の中に入ったり, 石に点描した り, 大人数で粘土にまみれたりした. ワークショップの 多くは, 素材体験やあそびを展開した. 作品づくりでは なく, ひたすら素材と向き合うことで, いつも見ている 周りのものを別の角度から見て考える機会になった. (2) 愛知県弥富市十四山東部小学校での学校美術館の 実践 2015 年 11 月 27 日愛知県弥富市十四山東部小学校に おいて, 学校美術館が開催された. あわせて, 平成 27 年度現職教研美術部会指導法研究会が, ギャラリートー クの後に開かれた. 小学 4 年生を対象に, 2 グループに 分かれてそれぞれ展示してある作品について, 4 名のアー ティストが 5 分程度ギャラリートークをした. 筆者自身のギャラリートークでは, 児童たちの反応を 見ながら, 制作に使用した土を見せて土の可塑性や乾燥 や焼成による大きさ・色や質の変化を話した. また釉薬 を入れた瓶などを見せてやきものの色についての話をし た. さらに, 筆者の個人的なエピソードを話す機会にも 恵まれた. 子どもの頃, 絵を描くのは好きだったけれど 算数や理科は嫌いだった. けれど表現したい色を出すた めに化学的な勉強をし直すことになり, 好きなことだけ では乗り越えられない, 苦手なことにも向き合わなけれ ばならず改めて勉強し直したことを話した. 恐竜やロボッ トが好きでいつしかやきもので表現するようになったが その根底にあるものは好奇心である. 「面白そう, やっ てみたい」 という気持ちを持ち続けてほしいと伝えた. 子どもたちはどの作品も興味津々に見入っていた. 筆 者はオブジェの感触を味わってもらうために, 作品に触っ てもらう試みを行った. 普段生活の中で使っている茶碗 やカップと同じ素材で恐竜やロボットができて, それが ギャラリートーク 造形ワークショップ ギャラリートーク

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粘土という図画工作で体験したことのある素材のひとつ であることを知るためである. 恐竜に興味のある子はそ の名前を言ったり, 釉薬の色あいに興味を抱いたり, 「冷たい」 「固い」 など作品の触れた感触を教えあってい た. 美術館での作品鑑賞ではおしゃべりはできないが, 学校であることから素直な反応を発することができる. それが児童にとってとても重要な時間なのではないかと 感じた. 自分自身の視覚, 触覚で感じたものを話しなが ら整理していくことで作品をより丁寧に見ることができ ていた.

5. 考察

(1) 学校現場の現状と学校美術館の成果 弥富市十四山東部小学校で学校美術館の後に行われた 現職研修会で意見交換をした際に, 教師は日々児童や生 徒たちの為により良い図工や美術の授業づくりを模索し ていると感じた. 図工・美術の授業時間の縮小や評価あ りきの創作活動に矛盾を感じながら, 子どもたちにより 良い授業をつくっていきたいという思いは伝わってきた. しかし現状は厳しい. 例えば美術館鑑賞のために校外へ 子どもたちを引率することは, 時間的にも授業運営的に も困難である. 仮に美術館へ引率できても, しゃべるな, 走るな等の禁止事項を伝えることが先行してしまい, の びのびとした鑑賞活動などなかなかできないという意見 もあがっていた. その点では, アーティスト自らが作品 を持ち寄り, 作品の前でさまざまな話をする学校美術館 は鑑賞教育のきっかけとして意味があると言える. 間近 で見るだけでなく, 時には作品に触ることができ, また 作者本人から作品や制作背景, 作者自身の話を聞くこと ができることにこの活動の意義がある. それぞれの作品 がどのような背景, 思い, 過程を経て, できあがったか を知ることができ, 作品がより身近なものになる. また 素材について興味を抱いたり, 日常に様々な制作のアイ デアが転がっていることに気付き, 感性を育んだり, も のをみる力を養うことにもつながると考える. 出品したアーティストは, 筆者も含め自身の作品を見 つめるこどもたちの発する言葉や新鮮な驚きの声が, 新 たな創造のきっかけになると感じた. さらに話すことで 自分自身の制作観を整理することができ, 他の作家との 交流からは新しい刺激を受けた. 作者にとって作品のど こに関心を持っているのか, 伝えたい思いや自分の内な る問いの答えをつかむヒントを与えてくれる良い機会に なったと言える. (2) 学校美術館を継続するうえでの課題 2015 年 11 月 12 日の岐阜中央中学校での学校美術館 では, 鑑賞, ワークショップ後に, 各部会が開かれた. ここでの実践は, 大規模な活動になり成果もあげられた が, それぞれの負担も少なくなかった. 大学部会の意見 交換では, アーティスト, または作品と子どもたちをつ なぐ教師の役割の重要性が挙げられた. つまり, 教師が ファシリテータとしての役割を担わなければ, 活動が持 続しなくなる恐れがあるということである. 作家と子ど もたちのコミュニケーションから芽生えた創作意欲の芽 を, いかに伸ばしてあげられるかを教師が握っていると いうことである. だが一方的に教師がその役割を担うの は荷が重すぎる. 今後は, 研究者でもあるアーティスト と現場の教師との双方向の研修機会を設けるなど連携を 深める必要があると考える. (3) 今後の展開∼見せるアーティストから見せて語る アーティストへ∼ アランは 芸術論 20 講 のなかで, 芸術家の制作に 対する姿を明瞭にとらえている. 「わたしたちは, 形が それ自体が美しいのではなく, ある種の闘いによって, また, 観念のしるしではまったくない存在のしるしによっ て美しいのだということを理解するように心がけねばな らない. ∼中略∼芸術作品がわたしたちを喜ばせるのは, 形が, 困難な作業を経て目に見えるものとしてそこに具 現されているからだ.」 (アラン/長谷川 2015, p.188) アーティストが作品を通して子どもたちと交流する意 味はこの言葉にあると考える. つまり目の前に展示され た作品は, はじめから設計図通りに淡々と制作されたの ではない. おぼろげな想いから始まり, 素材に向かい, 道具を用いて, 体を使う行為を重ねていく. その格闘の なかから, 自分が求める色彩, 形や動きを見出していく. 制作過程は, 試行錯誤の連続である. だがその証として の作品を, 予備知識のない子どもたちは, 瞬時に感じ取 り 「本物」 として正確にとらえている. そのみる力の源 は, 好奇心ではないだろうか. 好奇心をくすぐる作品を, 彼らの日常的な空間に持ち込んだことがより刺激的な体 験になったと言える. 文部科学省では, 平成 22 年度から 「次代を担う子ど もの文化芸術体験事業」 の具体的な方策として 「児童生

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徒のコミュニケーション能力の育成に資する芸術表現体 験」 を展開し, 芸術家等と教師の連携による芸術表現体 験活動を取り入れたワークショップ型の授業を実施して いる (文部科学省 2010). 「学校美術館」 は, アーティ ストと現場の教師が連携し, 鑑賞という対話を軸にした コミュニケーション能力を育成する芸術表現体験と言え る. まさに図画工作・美術教育の現状に合致した活動で ある. 筆者もギャラリートークや造形ワークショップを 通して, 小・中学生に十分に伝わるように話せたかは疑 問が残る. 子どもたちがさらに図工・美術の世界に興味 を示すようなプレゼンテーションするために, アーティ ストである筆者たち自らがそれを伝えられる 「ことば」 を持たなければならないと感じた. つくる, えがくだけ でない言葉を持つアーティストが求められてくるのでは ないか. そのためにも, 教師, 研究者とアーティストの 相互に連携する形を柔軟に考えていく必要がある.

最後に

本実践報告をまとめるにあたり, さまざまな学校の先 生方にご協力いただいた. 特に岐阜大学教育学部辻泰秀 教授には, 学校美術館のプレゼンテーションやワークショッ プのあり方などを, 活動を共にさせていただきながら, その基本的な手法を教えていただいた. また実践の会場 となった, 愛知県海部郡飛島村立飛島学園, 愛知県弥富 市立十四山東部小学校, 岐阜県岐阜市立藍川北中学校, 岐阜県岐阜市立岐阜中央中学校, 岐阜県美濃市立藍見小 学校では, 各校長先生はじめ図画工作, 美術教科担任や 各学年の先生方, 海部地区現職教研美術部会指導法研究 会に参加された多くの先生方にご協力いただいた. また 写真掲載も承諾くださり, 大変感謝している. この場を かりて御礼申し上げます. 引用文献 ・アラン著/長谷川宏訳 (2015) 芸術論 20 講 , 光文社古典 新訳文庫 ・文部科学省 (2008), 小学校学習指導要領 参考文献 ・神野善治・杉浦幸子・紫牟田伸子・仲野泰生・鈴木敏治 (2008) ミュージアムと生涯学習 , 武蔵野美術出版局 ・岐阜県立関特別支援学校 (2012) 第 10 回学校美術館リーフ レット, 関特別支援学校 ・国立近代美術工芸館 (2007) たんけん!こども工芸館:タ カラモノみつけた:東京国立近代美術館工芸館の鑑賞教育 ブログラム , 東京国立近代美術館編 ・四宮敏行 (2002) 学校が美術館−発送から実現までの記 録− , 美術出版社 ・「児童生徒のコミュニケーション能力の育成に資する芸術表 現体験」 http://www.mext.go.jp/a-menu/shotou/commu/1289958.htm 2016 年 7 月 28 日取得

参照

関連したドキュメント

Young, 「Doubt and Certainty in Science」,岡本章祐訳「人間はどこまで機械か」 (白揚社), p.86,

はじめに

ならないと考える。

キーワード:芸術と教育、生きる力、表現力、人格形成、鑑賞教育..

第1に,美術館で作品鑑賞を行うことで,実際に作品を目前にして感覚を研ぎ澄ましたり,身体感

写真2:タイの農村風景

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Sapporo Junior High School Attached to Hokkaido University of