Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Innervation of submandibular and sublingual glands
in elderly donated cadavers : a preliminary
histological study of differences in nerve
morphology between mucous and serous acini
Author(s)
浅川, 幸子
Journal
歯科学報, 116(5): 428-429
URL
http://hdl.handle.net/10130/4158
Right
Description
博士(歯学)・第2114 号(乙第789号)・平成
27年4月15日
428 歯科学報 Vol.116,No.5(2016) あさ かわ さち こ 氏 名(本 籍)
浅
川
幸
子
(東京都) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 2114 号(乙第789号) 学 位 授 与 の 日 付 平成27年4月15日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第2項該当学 位 論 文 題 目 Innervation of submandibular and sublingual glands in elderly donated cadavers : a preliminary histological study of differences in nerve morphology between mucous and serous acini
掲 載 雑 誌 名 Anatomy&CellBiology 第48巻 1号 36-43頁 2015年
論 文 審 査 委 員 (主査) 阿部 伸一教授
(副査) 田﨑 雅和教授 山本 仁教授 松坂 賢一准教授
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的
ヒトの神経には,Neuron-specific enolase(NSE),Glial fibrillary acidic protein(GFAP),S100 Protein など が存在している。これらの物質は,特に唾液腺腫瘍で増加することが知られ,特に唾液腺腫瘍の診断に,神経 特異的マーカーとして用いられている。近年,ラットの顎下腺と舌下腺において,神経特異的マーカーの発現 様式が異なることがわかってきた。しかしながら,ヒト正常組織でこれらの神経分布の違いを調べた報告はな く,不明な点が残されている。そこで今回我々は,高齢者の献体標本から摘出した顎下腺と舌下腺を用い,神 経特異的マーカータンパクの発現について検索した。また同時にそれらの物質の発現を,顎下腺と舌下腺の漿 液腺と粘液腺において比較検討した。 2.研 究 方 法 試料として東京歯科大学解剖実習用御遺体15体(女性8体,男性7体,平均年齢88歳)を用いた。献体された 御遺体は通法に従い,10%ホルマリン溶液を注入し固定した。それぞれの頭部から,顎下腺と舌下腺を摘出 後,通法に従いパラフィン包埋を行い,9~10枚の連続切片を作製した。そのうちのいくつかの切片に対し, HE 染色と PAS 染色を,それ以外の切片については,NSE・GFAP・S100タンパク・nNOS・TH・PMP22・ αSMA の免疫組織化学的染色を行った。さらに,顎下腺と舌下腺の漿液腺と粘液腺を比較するために,免疫 組織化学的染色で明らかに差が認められた NSE 陽性細胞数を,漿液腺と粘液腺に分けて一定面積あたりから 算出した。その後,顎下腺と舌下腺のそれぞれについて,漿液腺と粘液腺における差異の有意差を t 検定によ りを求めた。 3.研究成績および結論 免疫組織化学的染色結果から,顎下腺ならびに舌下腺の両方で,小葉間を走行する神経に NSE は陽性を示 した。その中でも,舌下腺において NSE 陽性細胞は,漿液細胞で構成された小葉間に多く,粘液細胞で構成 された小葉間においては少なかった。しかしながら,顎下腺においては,漿液細胞で構成された小葉と粘液細 胞で構成された小葉において差は認められなかった。続いて,顎下腺と舌下腺の漿液細胞で構成された小葉と 粘液細胞で構成された小葉に発現する NSE 陽性細胞数を算出した。その結果,舌下腺の粘液細胞で構成され ― 84 ―
429 歯科学報 Vol.116,No.5(2016) た小葉に比べ漿液細胞で構成された小葉において NES 陽性細胞は多く,その2群間に有意な差が認められ た。しかしながら,顎下腺の粘液細胞で構成された小葉と漿液細胞で構成された小葉において NES 陽性細胞 数に差はなく,有意な差は認められなかった。したがって,舌下腺には粘液腺の小葉が多いにも関わらず,小 葉間を走行する神経に解糖系酵素の NSE が少ないことが明らかとなった。 論 文 審 査 の 要 旨
ヒトの神経には,Neuron-specific enolase(NSE),Glial fibrillary acidic protein(GFAP),S100 Protein など が存在している。これらの物質は,特に唾液腺腫瘍で増加することが知られ,特に唾液腺腫瘍の診断に,神経 特異的マーカーとして用いられている。近年,ラットの顎下腺と舌下腺において,神経特異的マーカーの発現 様式が異なることがわかってきた。しかしながら,ヒト正常組織でこれらの神経分布の違いを調べた報告はな く,不明な点が残されている。そこで今回は,高齢者の献体標本から摘出した顎下腺と舌下腺を用い,神経特 異的マーカータンパクの発現について検索した。また同時にそれらの物質の発現を,顎下腺と舌下腺の漿液腺 と粘液腺において比較検討した。 免疫組織化学的染色結果から,顎下腺ならびに舌下腺の両方で,小葉間を走行する神経に NSE は陽性を示 した。その中でも,舌下腺において NSE 陽性細胞は,漿液細胞で構成された小葉間に多く,粘液細胞で構成 された小葉間においては少なかった。しかしながら,顎下腺においては,漿液細胞で構成された小葉と粘液細 胞で構成された小葉において差は認められなかった。続いて,顎下腺と舌下腺の漿液細胞で構成された小葉と 粘液細胞で構成された小葉に発現する NSE 陽性細胞数を算出した。その結果,舌下腺の粘液細胞で構成され た小葉に比べ漿液細胞で構成された小葉において NES 陽性細胞は多く,その2群間に有意な差が認められ た。しかしながら,顎下腺の粘液細胞で構成された小葉と漿液細胞で構成された小葉において NES 陽性細胞 数に差はなく,有意な差は認められなかった。したがって,舌下腺には粘液腺の小葉が多いにも関わらず,小 葉間を走行する神経に解糖系酵素の NSE が少ないことが明らかとなった。 本審査委員会は,平成26年3月26日に行われ,まず福田幸子専攻生から論文内容の説明がなされた。その 後,各審査委員より次のような質問がなされた。 1)高齢者献体のみを検索した理由,2)NSE のみをカウントしたことについて,3)S100ファミリーの 基礎的事項,4)この研究が将来の歯科医学に与える影響などが質疑として挙げられた。これらに対し て,1)60歳未満の献体を解剖する機会がほとんどないため 2)舌下腺の漿液性小葉と粘液性小葉におい て,NSE 以外の物質の差がなかったため 3)S100A と S100B の違いについて 4)唾液腺の加齢変化と疾 患の解明につながるなどの回答があった。その他,結論の明確化,不適切な表現,用語の統一,付図およびそ の説明の補足など修正すべき点が指摘され,訂正が行われた。 以上の結果から本研究で得られた結果は今後の歯学の進歩,発展に寄与することが大であり,学位授与に値 するものと判定した。 ― 85 ―