Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
高齢社会が抱える諸問題−医学・医療経済の視点から
Author(s)
井藤, 英喜
Journal
歯科学報, 114(5): 499-499
URL
http://hdl.handle.net/10130/3463
Right
我が国の人口の高齢化は世界に例を見ない速度で進展し,今後もその傾向が継続すると考えられている。そ の結果,2060年には高齢化率が約40%に達するだろうという,どの国も経験したことのない超高齢社会となる と推計されている。 「平成23年度国民医療費の概況」によると,わが国の国民医療費の総額は38兆5,850億円(GDP の8.15%), 内65歳以上が21兆4,497億円(総国民医療費の55.6%),75歳以上が13兆1,226億円(総国民医療費の33.3%) と,国民医療費の半分以上が高齢者の医療に費やされている。国民1人あたり医療費は高齢になればなるほど 高額となるが,今後後期高齢者が増加することも含め現行の医療保険制度,さらに介護保険制度が危機的状況 になるであろうことは誰が考えても明らかである。 一方,我が国では少子化も顕著になってきており,わが国がむかえる超高齢社会は超少子高齢社会でもあ る。超少子高齢社会では高齢者を支える若者が減り,支えられる側の高齢者が増えるということとなり,その 意味でも勤労世帯からの手厚い支援により成り立っている現行の医療・介護保険,年金制度を継続することは 難しい課題となる。 このような超高齢化社会がもたらす問題の解決には,高齢期に多発する疾患や要介護の予防策をみつけ,健 康かつ生産的な高齢者の比率を多くすることが必要と考えられる。このような状況を背景に,最近高齢者で大 きな問題となる認知症や要介護の予防に関する研究が盛んに行われ,多くの成果が得られている。現時点で得 られている成果を大まかにまとめると,肉・魚などのたんぱくの摂取不足,野菜・くだものの摂取不足,運 動・身体活動の不足,喫煙,糖尿病・高血圧・脂質異常症・肥満といった生活習慣病の存在などが要介護,認 知機能低下の危険因子となることが多くの観察研究で明らかになってきた。さらに,逆に肉・魚,野菜をしっ かり摂取する,身体活動量を増やしたところ要介護や認知症の発症頻度が少なくなったといった介入研究の結 果も出始めている。したがって,食生活の適正化や運動・身体活動を多くする,それらのことを広報し,実行 しやすい社会システムを構築していくことが,今後重要になると考えられる。 今後の医学・医療には,単に病気に陥った人を診察するという受け身の医療から,より積極的に高齢者の健 康増進をはかる予防医学的なアプローチが求められるのである。その中で歯科の先生方が果たされる役割も大 きく,講演では歯科の先生方への期待も含めて高齢社会の抱える諸問題について述べることとする。 ≪プロフィール≫ <略 歴> 1970年3月 京都大学医学部卒業 1972年4月 東京都老人医療センター内科 1979年5月 米国国立老化研究所老年病研究センター内 分泌部門 1981年4月 東京都老人医療センター内分泌科医/部長 1999年6月 東京都多摩北部医療センター副院長/院長 2006年4月 東京都老人医療センター院長・東京都老人 総合研究所所長 2009年4月 地方独立行政法人東京都健康長寿医療セン ターセンター長 現在に至る <研究分野> 老人医療 糖尿病,脂質異常症 <所属学会> 老年医学会(理事・指導医・認定医),動脈硬化学会(評 議員),糖尿病学会(功労評議員・指導医・認定医),糖 尿病合併 症 学 会(評 議 員),内 科 学 会(指 導 医・認 定 医),日本病態栄養学会(評議員) <その他> 平成27年度日本老年学会会長