Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Cigarette smoke condensate modulates migration of
human gingival epithelial cells and their
interactions with Porphyromonas gingivalis
Author(s)
今村, 健太郎
Journal
歯科学報, 116(5): 410-411
URL
http://hdl.handle.net/10130/4149
Right
Description
博士(歯学)・第2078 号(甲第1291号)・平成
27年3月31日
410 歯科学報 Vol.116,No.5(2016) いま むら けん た ろう 氏 名(本 籍)
今
村
健 太 郎
(東京都) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 2078 号(甲第1291号) 学 位 授 与 の 日 付 平成27年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Cigarette smoke condensate modulates migration of human gingival epithelial cells and their interactions with
Porphyromonas gingivalis
掲 載 雑 誌 名 JournalofPeriodontalResearch 第50巻 3号 411-421頁 2015年 論 文 審 査 委 員 (主査) 村松 敬教授 (副査) 新谷 誠康教授 齋藤 淳教授 石原 和幸教授 加藤 哲男教授 論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 喫煙は歯周病の重大なリスクファクターである。喫煙が歯周組織に及ぼす影響については,主にニコチンを 中心に研究がなされてきた。しかし,タバコ煙が宿主細胞に及ぼす影響,とくに歯周病原細菌の存在下におけ る影響については,未だ明らかにされていない。そこで本研究では,タバコ煙濃縮液への暴露と Porphy romonas gingivalis 感染がヒト歯肉上皮細胞の機能,とくに遊走能および細菌の宿主細胞への侵入能に及ぼす影 響を検討した。 2.研 究 方 法 ヒト歯肉上皮細胞 Ca9-22を10%FBS 添加 MEM にてコンフルエントに達するまで培養した。各種濃度のニ コチンまたはタバコ煙濃縮物(CSC)を24h 作用させた後,細胞の生死をトリパンブルー排除試験,細胞増殖 能を WST-1,創傷閉鎖能(遊走能)を wound healing assay にて評価を行った。細胞形態の変化は,位相差顕 微鏡および共焦点レーザー顕微鏡(CSLM)にて解析した。また,integrin の発現局在を CSLM にて観察し, mRNA 発現をリアルタイム RT-PCR を用いて定量した。以上の実験は, P. gingivalis ATCC 33277の感染下 (MOI=100,2h)でも行った。 P. gingivalis の Ca9-22への侵入能は antibiotic protection assay および CSLM
にて評価した。 3.研究成績および結論 喫煙者の唾液中濃度に相当するニコチン濃度の範囲において,Ca9-22の細胞生死と増殖能に変化は認めら れなかった。CSC 濃度0.1-50µg/ml では遊走能に濃度依存性の促進が認められ,位相差顕微鏡では細胞形態 に,CSLM では細胞骨格に変化が観察された。250µg/ml(ニコチン濃度約6.0µg/ml 相当)以上の CSC 濃度で は遊走能の抑制が認められたことから,CSC は濃度により歯肉上皮細胞に二相性の影響を及ぼすことが示唆 された。一方, P. gingivalis を感染させると遊走能は全体的に抑制され,CSC による促進傾向は認められな かった。また,遊走能を促進させた CSC 濃度において,scratch 側に近接した細胞における integrin α3の発 現の亢進が観察され,さらに mRNA 量も約2倍の増加を示した。一方, P. gingivalis を感染させると遊走能, integrin α3の発現は全体的に抑制され,CSC による促進傾向は認められなかった。低濃度 CSC の暴露によ ― 66 ―
411 歯科学報 Vol.116,No.5(2016) り P. gingivalis の Ca9-22への侵入は亢進した。 以上の結果より,CSC は濃度によりヒト歯肉上皮細胞の遊走能に二相性の影響を及ぼし,これには細胞骨 格と integrin 発現の変化が関与していることが示唆された。さらに,このような影響は P. gingivalis 感染によ り修飾されることが確認された。 論 文 審 査 の 要 旨 本研究は,歯周炎の環境面でのリスクファクターとして重要な喫煙が歯周病原細菌と宿主細胞との相互作用 に及ぼす影響について検討することを目的に行われた。その結果,タバコ煙濃縮物(CSC)は濃度によりヒト歯 肉上皮細胞の遊走能に二相性の影響を及ぼし,そのメカニズムとしては細胞骨格と integrin 発現の変化が関 与していることが示唆された。さらに,この影響は Porphyromonas gingivalis 感染により修飾されることが明 らかとなった。 本審査委員会では,1.参考とした唾液中のニコチン濃度は喫煙後,どれくらいで測定されているのか, 2.アクチンのリアレンジメントの関与について,阻害実験は行ったか,3.CSC 添加なしで P. gingivalis 感
染により wound closure の減少がみられないのはなぜか,4.高濃度 CSC で P. gingivalis の侵入が減少して いるが,これは喫煙の利点と考えてよいか,5.他の細胞では同様の結果が得られるか,といった質問および 指摘があった。これらに対して,1.引用文献では最後の喫煙から9時間後に測定されており,これはニコチ ンの half-life を考慮した wash-out period とされている,2.Cytochalasin D 等を使用した阻害実験が考えら れるが,これについては講座の過去の研究および他の研究で既に確認されている,3.減少はみられたが有意 差はなかった。 P. gingivalis の strain の違いや感染時間等の影響もあると考える,4.細菌の侵入が減少した としても,高濃度 CSC では細胞骨格や形態自体が著しく変化し,遊走能も低下しており,これらの点からは 生体には負の影響であると認識している,5.CSC の影響は細胞の種類により異なる可能性があり,今後他 の細胞を使用し検討する必要がある,と概ね妥当な回答が得られた。さらに用語の統一や論文の構成,とくに 考察の論理展開についての指摘があり,修正が行われた。 以上より,本研究で得られた結果は今後の歯学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値する ものと判定した。 ― 67 ―