第14回群馬血液疾患研究会
日 時:平成 20年 11月 27日 (木) 19 :00∼21:00 場 所:群馬ロイヤルホテル 3階 「ふじなみ」 代表世話人:村上 博和(群馬大医・保・応用検査学) 当番世話人:澤村 守夫(国立病院機構西群馬病院)一般演題>
座長:神保 貴宏(藤岡 合病院・内科) 1.髄外腫瘤が急性骨髄性白血病の予後に与える影響の 検討 清水 啓明,斉藤 貴之,大崎 洋平 入沢 寛之,横濱 章彦,内海 英貴 島 孝文,塚本 憲 ,野島 美久 (群馬大院・医・生体統御内科学) 唐沢 正光 (群馬大・輸血部) 半田 寛,村上 博和 (群馬大医・保・応用検査学) 星野 匠臣,初見菜穂子,高田 覚 佐倉 徹,宮脇 修一(済生会前橋病院) 【背 景】 腫瘤形成性白血病 (granulocytic sarcoma, GS) は, 急性骨髄性白血病の約 3.1∼9.1%に見られる稀 な疾患である. GSを伴う AML は予後不良との報告が あるが, 予後因子として確立されていない. そのため, 当 科および済生会前橋病院の症例について後方視的に検討 した. 【対象 ・方法】 1990年 1月から 2007年 12月ま でに診断された AML388名 (年齢 15-86歳 (中央値 55 歳), 男性 230名/女性 148名}を対象とした. GSを合併 した患者は 48名 (12.3%) で,GS群 48名/nonGS群 340 名 で 検 討 を 行った. 【結 果】 年 齢 は, GS群 : 15-76 歳 (中央値 47歳), nonGS群 : 15-86歳 (中央値 56歳) (p=0.0004), と有意に GS 群は年齢が低い傾向が見られ た. 男女比に有意差は見られなかった. FAB 類では GS 群は M4, M5が有意に多く, M3が有意に少ない傾向 が見られた. 表面マーカー, 染色体異常に関しては両群 に一定の傾向は見られなかった.予後について,OS・EFS を Kaplan-Meier法を用いて解析した. OSでは両群に差 を認めなかったが, EFSは GS群で有意に不良であった. 多変量解析においても GSは EFSに対して有意な因子 として抽出された. 【 察】 今回の検討で GS群の 年齢が有意に低いにも関わらず, OSは同等, EFSは有意 に低い結果であった. これは再発が多いためと えられ, 今後, 造血幹細胞移植の適応についても検討していく必 要がある. 2.当科で経験した先天性染色体構造異常に伴った血液 学的異常症例 金澤 崇,田村 一志,塚田 昌大 柴 徳生,小板橋実希子,荒川 浩一 (群馬大院・医・小児科学) 先天性染色体異常症では様々の造血障害を伴うことが あるが, Down症候群など一部を除いてそれらの詳細に ついては不明な点が多い. 当科で経験した先天性染色体 異常症に伴った造血障害症例について検討を行なった. 【症例1】 15歳男,Kleinfelter症候群 (47,XXY)に対し て内 泌外来通院中に血小板減少を指摘され, 骨髄穿刺 施行.HbF 増加,軽度の異型と大球性 血,巨核球減少を みとめ MDSを疑い経過観察中. 【症例2】 9 歳女, モ ザイク Turner症候群 (46, XX/45,XO) に対して GH 療 法施行中. 定期通院中に白血球, 血小板減少を指摘され 骨髄穿刺施行, 経度の低形成骨髄であり軽度再生不良性 血として経過観察中. 【症例3】 13歳女, 関節痛な どの訴えで受診した際に血液検査で血小板減少を指摘, 軽度の顆粒球異型も見られたため骨髄穿刺施行. 染色体 析にて t (5; 12) を 析細胞 20/20で検出, PHA 添加 リンパ球でも同様の結果であり無症候性の 衡型転座と 診断し無治療経過観察中. 【症例4】 0歳男, 母乳性黄 疸にて治療中の血液検査で 血の進行と好中球減少を指 摘され, 骨髄穿刺施行. 顆粒球異型を伴う軽度の低形成 骨髄であり, 少数ながら芽球様細胞の出現も認めた. 血 液学的異常は自然に回復し, 3番染色体の逆位と部 欠 失を 析全細胞で認めたが外表奇形, 発達遅 などは見 られていない. 【症例5】 6歳男, 発熱, 顔色不良で当 科紹介, 高度の汎血球減少を認め, 骨髄穿刺にて再生不 良性 血と診断した. 染色体 析で t (2; 8) を 20/20で 検出したが, 異型ははっきりしなかった. ATG+CsA 療 法を行い, 血球回復したが t (2; 8) は全細胞で検出され 211 Kitakanto Med J 2009;59:211∼212ており, 無症候性の 衡型転座と診断した. 症例 5を除 き, いずれも軽度の血球減少を偶発的に発見されており, 非進行性,あるいは自然回復が見られている.症例 3,4,5 はいずれも外表奇形や発達遅 などは見られず, 既知の 症候群に当てはまる症例ではなかった. 一般臨床で遭遇 する軽度, あるいは一過性の血液学的異常症例にこうし た染色体異常症が含まれる可能性も えられる.
特別講演>
座長:澤村 守夫(国立病院機構西群馬病院) MDS の診断 田 晃(埼玉医科大学国際医療センター 造血器腫瘍科) 骨髄異形成症候群 (MDS) に共通的な生物学的指標は 未だ明らかではない. したがって, MDSの診断と 類は 形態学的評価に依存する部 が大きい. 軽微な異形成を 認める血球減少症, 例えば anemia of chronic disorders (ACD), 肝疾患, ウイルス感染症との鑑別, 骨髄が低形成 の場合に問題となる再生不良性 血 (AA) との鑑別, 基 礎疾患を認めず形態学的にも異形成が軽微な血球減少症 (idiopathic cytopenias of uncertain significance,ICUS)の 存在など, 多くの問題が MDSの診 断 に は 内 在 す る. 【MDS の診断基準】 A.「特発性造血障害に関する調査 研究班」の診断基準 (平成 16年度改訂)この診断基準は, 主に FAB 類に従ったものである. 末梢血での 1∼3系 統の血球減少, 末梢血および骨髄の血球形態に異形成所 見を認め, 末梢血, 骨髄のいずれにおいても芽球は 30% 未満であることのすべてが必要とされる. また, 血球減 少の原因となる他の疾患の除外が要求される. 診断の確 実性を増す検査所見として, 正ないし過形成の骨髄所見, 骨髄細胞の染色体異常, 血液細胞の細胞化学的異常 (環 状鉄芽球, PAS陽性赤芽球, ペルオキシダーゼ陰性好中 球, 好中球アルカリホスファターゼスコア低下) が挙げ られている. B. Valent P, Bennett JM らによる診断基準 (2007年) MDS の診断のためには, 持続する血球減少を 1系統以上に認めることと, 血球減少と異形成の原因と なる他の疾患を除外することが必須となる. その上で, 1 系統以上での 10%以上の異形成, 15%以上の環状鉄芽 球, 骨髄の芽球比率が 5-19%であること, typicalな染色 体異常があることのうち, 1つ以上が, 認められた場合 に, MDSの診断が確定する. ここまでで, MDSの基準を 満たさないものの, 輸血依存性の大球性 血など MDS に typicalな臨床所見を示す場合は,さらなる検査の追加 (co-criteria) が推奨されている. このレポートでは新た な病型である ICUSについても記載されている. C.「不 応性 血 (骨髄異形成症候群) の診断のための診断確度 区 」(2008年) この診断確度区 はすべての施設で現 実的に対応可能なものを目指したもの, すなわち, 細胞 形態学と骨髄染色体検査に主眼をおいたものである. 本 診断確度区 では, Valentらのコンセンサスレポートお よび, 特発性造血障害に関する調査研究班」の診断基準 と整合性をはかり, かつ細胞形態学については, Interna-tional Working Group on Morphology of MDSの方向 性,染色体所見については,Haaseらの報告を加味してあ る. 骨髄の芽球比率, 上記の異形成の程度の区 , 染色体 所見の区 より, MDSの診断確度の区 を Definite. Probable, Possibleに 類し, さらに, ICUSの区 を設 定している. Definite, Probable, Possibleの順で MDSと しての診断確度は高くなる. 【既存の診断基準の問題 点】 MDSの診断は除外診断と形態学的評価に依存す る部 が未だ大きい点が問題である. フローサイトメト リーや SNP array,gene chip profiling の診断に対する有 用性の報告がある. 今後, MDSに共通的な生物学的指標 が明らかになることが期待される.第 14回群馬血液疾患研究会 212