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生徒の視点を踏まえた「臨時休業基準」の探索的検討

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Academic year: 2021

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雑誌名

教職教育研究 : 教職教育研究センター紀要

25

ページ

83-90

発行年

2020-03-31

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生徒の視点を踏まえた「臨時休業基準」の探索的検討

小 川 雄 太

要 約 昨今の気象災害の激甚化等を踏まえ、学校においても災害安全の充実が求められている。その一 つとして気象警報発表時の臨時休業基準には、どのような場合に臨時休業措置となるか等を簡潔明 瞭に記載することが求められる。しかしながら、現状の臨時休業基準に関しては、規定内容の不備 や近隣の学校間での相違等、いくつかの問題点が先行研究で指摘されている。これらの先行研究で は、学校側の視点から臨時休業基準の規定についての検討を行っており、生徒が規定を踏まえてど のように判断しているかについての検討は行っていない。そこで、本研究では、生徒側の視点から 規定内容の探索的な検討を行うことを目的とし、高校生を対象とする調査を実施した。その結果、 高校生は必ずしも学校側が期待するような判断ができている訳ではないことが明らかとなり、臨時 休業基準の規定に関する探索的な検討の上、必要な改善策について論及した。 キーワード:臨時休業基準、危機管理マニュアル、学校安全、災害安全、防災管理 Ⅰ 背景と目的 昨今、甚大な気象災害が頻発しており、「平成30年⚗ 月豪雨」、2019(令和元)年の台風15号及び19号は記憶 に新しい。文部科学省(2018:36頁)は、気象災害に対 する学校安全として「大雨・台風・大雪などによって登 下校時に危険が予測される場合は、児童生徒等の安全を 確保するために臨時休業や学校待機等の措置をとるこ と」を求めている。登校時の臨時休業措置の決定は、校 長の権限として学校教育法施行規則第63条1)に規定があ る。しかしながら、何も基準がない中での決定は難し く、生徒や保護者に対しても、どのような気象状況の場 合、言い換えれば、どのような気象警報2)(以下、警報) が発表された場合に臨時休業措置とするかについて臨時 休業基準3)として周知する必要もある。警報に関して は、2019(令和元)年出水期より住民等が情報の意味を 直感的に理解できるよう、防災情報が⚕段階の警戒レベ ルにより提供されることとなり、大雨警報や洪水警報の 発表は、警戒レベル⚓相当として、市町村から警戒レベ ル⚓「避難準備・高齢者等避難開始情報」が発令される 段階にあたる(内閣府(防災担当)2019)。このような 防災情報の高度化の進展に合わせて、学校の臨時休業基 準も改めて確認する必要がある。 臨時休業基準は学校保健安全法第29条4)によって作成 が義務化されている「危険等発生時対処要領」(以下、 危機管理マニュアル)の一つと捉えることができる。な ぜなら、警報は重大な災害の起こるおそれがある旨を警 告するものであり、その際に学校がどのように対応すべ きかという手順を定めているものが臨時休業基準といえ るためである。危機管理マニュアルに関しては、坂田 (2017:68頁)が「『当該学校の実情に応じて』作成され たものになっているかどうかは疑問の余地がある」と指 摘し、河内(2018:10頁)も「危機管理マニュアルが実 質的に機能するものとなるためには、学校の状況等に応 じて毎年見直しを行い、必要な項目や対応を追加・訂正 する必要がある」と指摘する。つまり、危機管理マニュ アルの作成が学校に義務化されているものの、学校はそ の内容に関する課題を抱えている現状にある。また、小 川・當山(2019b:97頁)は、「危機管理マニュアルに 気象現象を規定する必要」について言及しており、これ は臨時休業基準の重要性を指摘したものと捉えられる。 これまでに臨時休業基準に関する研究は蓄積されてき ている。例えば、當山・小川(2017)は、兵庫県の高校 の臨時休業基準を精査した結果、学校所在地に発表され る可能性のある警報の全てを捕捉できていないこと、近 隣校の間で内容に相違があること等を指摘する。また、 小川・當山(2019a)は、全国の高校を対象とする調査 の結果、「警報の捉え方」、「近隣校との均衡」、「通学区 域」、「交通機関」、「情報伝達」等の課題に学校が直面し ていることを指摘する。一方、小川・當山(2019b)は、 臨時休業基準に対する新任管理職等の把握の程度を明ら かにし、様々な気象現象に対する警戒度を高める必要性

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を指摘する。 これらの先行研究は、あくまでも学校側からの視点で あり、生徒側の視点からの考察は行われていない。臨時 休業基準は学校外部に対しても公表されているため(小 川・當山2019a)、生徒が読んで理解できなければならな い。そこで、本研究においては、先行研究で明らかにさ れている臨時休業基準に関する現状や課題等を踏まえ、 生徒の視点から規定内容の探索的な検討を試みることと する。 Ⅱ 調査 ⚑ 対象 2019(令和元)年⚗月に実施された A 県教育委員会 主催の「防災ジュニアリーダー育成合宿」5) に参加して いる全生徒32名を対象とした6) ⚒ 調査項目 ⑴属性 回答者の性別、学年等を質問した。 ⑵臨時休業基準を踏まえた様々な事例への対応 まず、架空の学校である X 市立 Y 高校の臨時休業基 準とともに回答者の置かれた状況を提示した。次に、登 校時の様々な事例⚑~⚖にどのように対応するかについ て二択で質問するとともにその理由を自由記述で求め た。なお、それぞれの事例は小川・當山(2019a)を参 考にして作成した7) 設定状況 事例 X市立Y高校の臨時休業基準 X市に警報(大雨警報、暴風警報)が発表された場 合は、以下のとおり対応する。 〇午前⚗時現在 警報が発表されている場合、自宅待機。 〇午前10時現在 A 警報が発表されている場合、臨時休業。 B 警報が解除されている場合、⚕・⚖校時の授業 を行う。 あなたの状況 毎朝⚖時50分に自宅を出て、電車を利用して⚗時40 分に高校へ着く。スマートフォンを持っている。別の 高校に通う兄は、同じく毎朝⚖時50分に自宅を出て、 電車を利用している。 ⚑ 大雪警報が発表されている事例 自宅を出る前の⚖時30分に大雪警報が出ました。臨 時休業となる大雨警報や暴風警報ではありません。選 択肢に○をつけ、あなたの対応やその理由について具 体的に記入してください。 <選択肢>臨時休業になる or 臨時休業にならない ⚒ 鉄道が運休している事例 大雨警報や暴風警報は出ていませんが、台風の影響 により、いつも利用している鉄道が朝から運休してい ます。選択肢に○をつけ、あなたの対応やその理由に ついて具体的に記入してください。 <選択肢>臨時休業になる or 臨時休業にならない ⚓ 別の高校に通う兄の事例 ⚗時に大雨警報が出たので、X市立Y高校は臨時休 業です。兄の通う別の高校は大雨警報が出ても臨時休 業になりません。選択肢に○をつけ、あなたの考えや その理由について具体的に記入してください。 <選択肢>兄も自宅待機すべき or 兄は通学すべき ⚔ 警報が発表されているZ市での部活動の事例 ある休みの日、部活動の大事な試合(コンクール、 発表会等)で、X市のすぐ隣のZ市まで行くことに なっています。⚗時の時点でX市には警報は出ていま せんが、Z市には大雨警報が出ています。選択肢に○ をつけ、あなたの対応やその理由について具体的に記 入してください。 <選択肢>部活動に参加しない or 部活動に参加する ⚕ ⚗時より前に警報が発表された事例 自宅を出る時(⚖時50分)、警報は出ていませんで した。電車に乗っている時(⚗時10分)、スマートフォ ンによって⚖時55分に大雨警報が出ていたことを知り ました。選択肢に○をつけ、あなたの対応やその理由 について具体的に記入してください。 <選択肢>自宅へ帰る or 学校へ行く ⚖ ⚗時より後に警報が発表された事例 自宅を出る時(⚖時50分)、警報は出ていませんで した。電車に乗っている時(⚗時10分)、スマートフォ ンによって⚗時05分に大雨警報が出ていたことを知り ました。選択肢に○をつけ、あなたの対応やその理由 について具体的に記入してください。 <選択肢>自宅へ帰る or 学校へ行く

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⚓ 分析の方向性 まず、それぞれの事例における選択肢の間で有意な差 が認められるかを確認するため、直接確率計算(両側検 定)を行った。次に、選択の理由に関する自由記述を整 理して、判断の根拠について考察を行った。なお、自由 記述に関しては、選択の理由として関連が低いものを除 外した上、類似する内容が⚒~⚓例以上確認できたもの を考察に反映した。 ⚔ 回答者の属性 回 答 者 は 高 校 生 32 名 で あ っ た。性 別 は 男 性 ⚗ 名 (21.9%)、女性25名(78.1%)となり、学年は⚑年生17 名(53.1%)、⚒ 年 生 10 名(31.3%)、⚓ 年 生 ⚕ 名 (15.6%)となった。 Ⅲ 結果と考察 ⚑ 大雪警報が発表されている事例 本事例は、X市立Y高校の臨時休業基準に規定されて いる大雨警報や暴風警報とは異なる大雪警報が発表され た場合を想定している。結果は、「臨時休業になる」15 名(46.9%)、「臨時休業にならない」17名(53.1%)と なった(表⚑)。直接確率計算を行ったところ、p = 0.86となり、有意な差は認められなかった。本事例のよ うな状況下での「臨時休業になる」もしくは「臨時休業 にならない」の判断は拮抗しているといえる。 それぞれの選択の理由は以下のとおりとなった。「臨 時休業になる」に関しては、「警報が出ているので危険 な状況だと思うから」、「大雨でも大雪でも危ないから」、 「家で待機する。警報が出たということは、それだけで 危ないから」というように、警報の種類に関わらず、登 校は危険であると判断した例があった。また、「電車を 利用しているなら雪の影響で電車が止まるかもしれない から」、「雪が降ったら、電車とか止まりそうだと思った から」「大雪は電車が止まってしまうことがあり、電車 が止まったら休みになると思うから」というように、大 雪の影響から鉄道が運休することを予想して、登校でき ないと判断した例もあった。一方、「臨時休業にならな い」に関しては、「大雨警報や暴風警報ではないから」、 「大雪警報は⚗時に解除されなくても臨時休業にはなら ないと思うので学校へ行く」、「臨時休業基準の規定は大 雨警報と暴風警報の場合なので、取り敢えず行く」とい うように、X 市立 Y 高校の臨時休業基準に大雪警報は 臨時休業になるとは規定されていないことから判断した 例があった。また、「まだ⚖時30分で午前10時まで警報 が出ているとは限らないから」、「⚗時になる前にもし解 除されたら学校に間に合わないから」、「警報が⚗時まで 続くとは限らないから」というように、大雪警報は臨時 休業になる警報として規定されていないにも関わらず、 臨時休業に当然になるものと捉えた上、確認時間のみを 問題にして判断した例もあった。 以上を踏まえると、臨時休業基準には学校の所在地や 生徒の居住地等に発表される全ての警報を規定する必要 があると考えられる。例えば、大雪警報が発表された場 合の措置は、学校の置かれている環境等によって、授業 を行う場合も臨時休業とする場合もあり得る。いずれに しても、本事例のような場合に生徒の判断が拮抗してい る点を踏まえた規定が必要である。学校が「実情」を把 握した上で、危機管理マニュアルを設定することは学校 保健安全法に規定がある。また、大川小学校津波訴訟判 決(仙台高等裁判所2018(平成30)年⚔月26日判決)8) においても、事前防災に関する学校の責任の大きさが指 摘されている。臨時休業基準の規定に従って、生徒一人 ひとりが登校すべきなのか、自宅待機すべきなのかを迷 いなく判断できるようにし、学校管理下である点を踏ま えて登校前の生徒の安全を確保する必要がある。 ⚒ 鉄道が運休している事例 本事例は、X市立Y高校の臨時休業基準に規定されて いる大雨警報や暴風警報が発表されていない中で、気象 状況によって鉄道が運休した場合を想定している。結果 は、「臨時休業になる」10名、(31.3%)、「臨時休業にな らない」22名(68.8%)となった(表⚒)。直接確率計 算を行ったところ、p = 0.05となり、有意な差は認めら れなかった。本事例のような状況下での「臨時休業にな る」もしくは「臨時休業にならない」の判断は拮抗して いるといえる。 それぞれの選択の理由は以下のとおりとなった。「臨 時休業になる」に関しては、「鉄道が運休だったら学校 に来れない子が出てくるから」、「交通手段がないので行 くことができないから」というように、鉄道の運休に よって登校できない事態となるために臨時休業と判断し 表⚑ 大雪警報が発表されている事例 表⚒ 鉄道が運休している事例 項目 数 割合 臨時休業になる 15 46.9% 臨時休業にならない 17 53.1% n = 32 項目 数 割合 臨時休業になる 10 31.3% 臨時休業にならない 22 68.8% n = 32

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た例があった。また、「普段使っている路線がないのな ら行かなくてもいいと学校の先生が言っていたのを聞い たことがあるから」「公欠になると思います」というよ うに、学校の慣習として公欠等になることを聞いた覚え があることを踏まえて判断した例もあった。一方、「臨 時休業にならない」に関しては、「自宅待機後、警報が 出ておらず、電車が動いたら学校に行く」、「風が強いだ けで、警報は出ていないから」、「大雨警報や暴風警報が 出ていないから」というように、臨時休業基準に規定す る警報が発表されていないために登校すべきであると判 断した例があった。また、「自分が利用している鉄道が 止まっているだけで、他の生徒は学校に行っているか ら」、「鉄道以外の交通手段で学校に通う。鉄道以外で 通っている人との間で不平等があるから」、「鉄道会社の 判断で止まっているので、自分には関係ない。他の公共 交通機関を使う」というように、鉄道が運休して登校で きない生徒がいてもそれ以外の生徒は登校していること や鉄道以外の代替手段で登校すべきであると判断した例 もあった。 以上を踏まえると、臨時休業基準には公共交通機関の 運休時に関する規定も必要であると考えられる。「⚑ 大雪警報が発表されている事例」と同様に、学校の置か れている環境等を踏まえて、授業を行う場合も臨時休業 とする場合もあり得る。例えば、山間部に位置する学校 で、鉄道が唯一の通学方法となっているような場合に は、臨時休業とする必要性が高い。逆に、都市部に位置 する学校で、代替の交通網が整備されている場合には、 臨時休業とする必要性は低い。しかしながら、いずれに しても、気象状況によって鉄道が運休する場合は、警報 が発表される前の計画運休か、警報が解除された後の被 害の大きさに因るものと考えられる。このような状況下 で生徒が臨時休業にはならないと判断し、登校した場合 には気象災害による二次被害を受ける可能性がある。以 上のような点に留意しつつ、学校の「実情」を踏まえて、 臨時休業基準に公共交通機関の運休時の規定を設ける必 要がある。 ⚓ 別の高校に通う兄の事例 本事例は、学校によって臨時休業基準が異なるため、 大雨警報の発表で臨時休業となる学校がある一方で、通 常の授業を実施する学校がある場合を想定している。結 果は、「兄は自宅待機すべき」17名(53.1%)、「兄は登 校すべき」15名(46.9%)となった(表⚓)。直接確率 計算を行ったところ、p = 0.86となり、有意な差は認め られなかった。本事例のような状況下での「兄は自宅待 機すべき」もしくは「兄は登校すべき」の判断は拮抗し ているといえる。 それぞれの選択の理由は以下のとおりとなった。「兄 は自宅待機すべき」に関しては、「警報が出ていること は、危険であると判断されているためだと思うから」、 「危険が迫っているから、警報が出ているので自宅待機 だと思う」、「臨時休業にならなくても兄自身が通学不可 能なら休んでも仕方ない」というように、大雨警報の発 表によって通学するには危険であると判断した例があっ た。また、「X市立Y高校では臨時休業になっているこ とを踏まえて、兄の学校に連絡をする」、「同じ地域に住 んでいるため、他校だと言っても、環境は等しいため」、 「X市立Y高校では午前⚗時の時点で自宅待機となるか ら」というように、通う学校が異なっていても、兄も同 じ地域(家庭)で暮らしているため、X市立Y高校の臨 時休業基準の規定を類推適用して判断した例もあった。 一方、「兄は登校すべき」に関しては、「学校ごとにルー ルが違うので自分の通っている学校のルールに従うべき だと思います」、「兄は自分の高校の基準に従って、行動 すべきである」、「別の学校の判断だから、学校があるっ て言うんだったら行かないといけないから」というよう に、学校には独自のルールがあることを踏まえて判断し ていた。 生徒の回答にもあるとおり、特に高校は独自性が強 く、各学校で臨時休業基準も大きく異なる場合がある。 これは、学校保健安全法が要求する「実情」を反映させ た結果でもあり、学校によって臨時休業基準が異なるこ とは当然でもある。そのため、この点を問題として指摘 することは控えなければならないものの、現実問題とし て、近隣の同じ校種の学校で危機管理上の対応が異なる ことには疑問が残る。そうであるからこそ、生徒の判断 も拮抗する結果になったのではないだろうか。また、近 隣の学校間で対応が異なることは保護者の不信を招くと いう指摘もある(山本 2015)。そのため、臨時休業基準 は各学校で作成されているものの、近隣の学校と規定内 容に関する連絡調整を行う必要があると考えられる。場 合によっては、教育委員会がこのような連絡調整の場を 設定することが求められるのではないだろうか。同じ地 域内に位置する高校といっても、県立高校、市立高校、 私立高校、附属高校等があり、全ての学校間で連携を図 ることは容易ではない。また、どこまでの地域的範囲の 学校で調整を図るかも問題となる。これらの点に関し て、教育委員会が関与することで、臨時休業基準の改善 の可能性が一段と高まると考えられる。本事例のよう 表⚓ 別の高校に通う兄の事例 項目 数 割合 兄は自宅待機すべき 17 53.1% 兄は登校すべき 15 46.9% n = 32

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に、警報が発表されているにも関わらず、同一の地域内 に暮らしていても通う学校が異なる故に、自宅待機とな るか通学することになるか、対応が異なる結果とならな いようにすることが必要である。 ⚔ 警報が発表されているZ市での部活動の事例 本事例は、臨時休業基準に規定されていないZ市に警 報が発表されている休日に部活動の大事な試合(コン クール)が行われる場合を想定した。結果は、「試合に 参加する」14名(43.8%)、「試合に参加しない」18名 (56.3%)となった(表⚔)。直接確率計算を行ったとこ ろ、p = 0.60となり、有意な差は認められなかった。本 事例のような状況下での「試合に参加する」もしくは 「試合に参加しない」の判断は拮抗しているといえる。 それぞれの選択の理由は以下のとおりとなった。「試 合に参加する」に関しては、「主催者がやらないとは言っ ていないから」、「まだ中止になっていないから」という ように、主催者による中止の発表がない限り参加すると 判断した例があった。また、「大事な試合が警報の中で 行われるかもしれないので」、「大事な試合だから」、「試 合という大事な⚑日でもあるので、交通機関などが安全 な状況であれば参加すれば良い」というように、大事な 試合であるために参加すると判断した例があった。さら に、「室内であれば大丈夫だと思う」、「外なら参加しま せんが、中ならいけます」、「試合が室内なら会場も大き く、安全だと思う」というように、室内で行われる試合 であれば問題ないと判断した例もあった。一方、「参加 しない」に関しては、「Z市に行くということは危険な 所に行くということだから」、「Z市には警報が出ていて 危ないから」、「警報が出ているところに自ら行くのは危 ないことだと思うから」というように、警報が発表され ていて危険な状況であると判断した例があった。また、 「Z市に警報が出ているということは、臨時休業基準の 規定で自宅待機しなければならない状況だから」、「活動 する場所に臨時休業になる警報が出ているから」という ように、臨時休業基準を類推適用して判断した例もあっ た。 熱心に取り組んでいるからこそ、部活動の大事な試合 (コンクール)への生徒の参加意思は相当に強いといえ る。その気持ちの対にあるのが、警報が発表されるほど の危険な状況である。このような場合には冷静な判断が できないともいえ、判断材料としての臨時休業基準で必 要な規定を提示する必要があろう。臨時休業基準は、学 校の位置している市町村や生徒の自宅が位置している市 町村等に警報が発表された場合を想定している。また、 平日に行われる授業を想定した対応を規定しているた め、休日の部活動、ましてや校外の他市で開催される試 合(コンクール)まで想定していないであろうし、そこ まで規定することは難しい。そのため、警報が発表され た場合には、部活動の管理運営を担う顧問の教員が対応 を指示することとなる。部活動は課外活動であり、学校 の管理下で行われているとしても、実際の管理運営は顧 問の教員の献身で成り立っている部分が大きく、危急時 の対応も顧問の教員の判断に委ねられているといえる。 例えば、本事例のように、Z市で大雨警報が発表された 際にどのように対応するかについて、管理職へ事前に連 絡・相談するというよりは、事後報告で済まされること が一般的である。この点に関して、顧問の教員の判断に 委ねられるとしても、危機管理上、一個人の判断になっ てしまうことを避ける必要がある。そのために考えられ る改善策としては、試合の主催者が警報の発表時に中止 等を決定することである。しかしながら、高校生が参加 する試合には、大学生や一般の社会人が参加する場合も あり、速やかに中止等を決定できるとは限らない。ま た、中止等の意思決定の際にタイムラグが生じるため、 主催者から顧問の教員、そして生徒へという情報伝達が 遅れ、既に生徒が家を出ている場合もあろう。そのた め、本事例のような場合に生徒の判断が拮抗している点 を踏まえ、休日の部活動等の課外活動に関しても臨時休 業基準に規定する等、判断の根拠を提示すべきであると 考えられる。警報の発表時には外出せず身の安全を確保 するという点を基本におき、警報の発表を確認する時間 は「家を出る時間」とし、警報が発表されている地域は 「目的地」とする等、幅をもたせた規定の必要性が考え られる。 ⚕ ⚗時より前に警報が発表された事例 本事例は、⚖時55分に大雨警報が発表されていること を知らずに家を出てしまい、登校中に警報発表に気付い た 場 合 を 想 定 し た。結 果 は、「自 宅 へ 帰 る」23 名 (71.9%)、「学校へ行く」⚙名(28.1%)となった(表 ⚕)。直接確率計算を行ったところ、p = 0.02となり、 表⚔ 警報が発表されているZ市での部活動の事例 表⚕ ⚗時より前に警報が発表された事例 項目 数 割合 試合に参加する 14 43.8% 試合に参加しない 18 56.3% n = 32 項目 数 割合 自宅へ帰る 23 71.9% 学校へ行く 9 28.1% n = 32

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⚕%水準で有意な差が認められた。本事例のような状況 下では、「学校へ行く」よりも「自宅へ帰る」という判 断になることが示唆される。 それぞれの選択の理由は以下のとおりとなった。「自 宅へ帰る」に関しては、「自宅待機という指示が出てい るから」、「⚗時までに警報が出ていたら臨時休業なので 自宅へ帰る」、「⚗時までに大雨警報が出ていたら臨時休 業だから。学校に電話してどうすべきか聞く」というよ うに臨時休業基準の規定を踏まえて判断した例があっ た。さらに、「学校に行って、帰ってこれなくなるのも 困るから」、「学校に行って待機すると、交通手段が断た れるかも知れないから」というように、帰宅するための 交通手段まで考慮している例もあった。一方、「学校へ 行く」に関しては、「警報が出ているのに、戻るという 行動は危険だし、学校の方が安全だから」、「帰るより学 校に行ってから、先生の指示を仰ぐ」というように、学 校へ行く方が安全であると判断した例があった。また、 「そのまま帰ったら、もし10時に解除されたら面倒くさ いから。もしかしたら、⚗時で解除されることもあるか ら」、「まだ⚗時になっていないのと、学校に行っている 途中にもしかしたら解除されるかも知れないから」とい うように、解除になる可能性を踏まえて判断した例も あった。 X市立Y高校の臨時休業基準には、午前⚗時の時点で 警報が発表されている場合は自宅待機と規定されている ため、午前⚖時55分に警報が発表されていれば自宅待機 が正しい選択となる。本事例では、警報発表を確認する 時間よりも前に自宅を出ている生徒の場合には、どのよ うに対応すべきであるかについて取り扱った。そもそ も、小中学校と異なり、高校の通学範囲は広範にわたっ ていることに加え、統廃合や学区再編の影響により、学 校の所在する市町村外からの生徒の通学は特別なことで はない。このような現状では、警報発表を確認する時間 よりも早くに自宅を出なければいけない生徒も一定数存 在すると考えられる。また、早朝練習や早朝補習等に よって、日常的に早く自宅を出る生徒も存在するであろ う。自宅を早く出て、学校に着くまでの道中で臨時休業 基準の規定する時間に警報の発表があったことを知った 場合にどのように対応すべきであろうか。その時点で自 宅待機は決定している訳であるが、どのように行動すべ きであるかは難しい問題である。自宅を出てすぐの範囲 であれば自宅へ帰ることが可能かもしれないが、長い道 のりの結果、学校近くに来てしまっているのであれば自 宅へ帰ることはできない。その場合には、登校して教師 の指示を仰ぎ、臨時休業が決定する時間(X市立Y高校 の臨時休業基準では10時)までは、教室で自習等をする ことになろう。本事例のような場合に生徒は自宅へ帰る と判断する傾向にあるものの、生徒がこのような場合に 陥った状況を想定し、その際の判断の根拠となるような 臨時休業基準の規定を検討する必要があると考えられ る。次に述べる「⚖ ⚗時より後に警報が発表された事 例」とも関連し、通学途上で警報が発表された場合や警 報の発表に気付いた場合等においては、自宅又は学校の うち安全に行くことのできる場所へ向かうものとすると いう旨の規定を検討する必要がある。その一方で、そも そも臨時休業基準の設定段階で、生徒が警報の発表を確 認すべき時間を慎重に検討しなければならないともいえ る。そのためには、通学区域の最端部から学校までの所 要時間等の「実情」を学校として把握することが求めら れる。 ⚖ ⚗時より後に警報が発表された事例 本事例は、登校中の⚗時05分に大雨警報が発表されて いることに気付いた場合を想定した。「⚕ ⚗時より前 に警報が発表された事例」との相違は、X市立Y高校の 臨時休業基準に規定されている警報の発表を確認する時 間である⚗時よりも前に発表されたか、後に発表された か と い う 点 で あ る。結 果 は、「自 宅 へ 帰 る」17 名 (53.1%)、「学校へ行く」15名(46.9%)となった(表 ⚖)。直接確率計算を行ったところ、p = 0.86となり、 有意な差は認められなかった。本事例のような状況下で の「自宅へ帰る」もしくは「学校へ行く」の判断は拮抗 しているといえる。 それぞれの選択の理由は以下のとおりとなった。「自 宅へ帰る」に関しては、「⚗時の場合は自宅待機なので、 ⚑回自宅に帰る」、「自宅待機になると思うから」、「⚗時 以降だから。一旦自宅へ戻る」というように、臨時休業 基準の規定を踏まえて判断した例があった。さらに、 「電車に乗って、間がないため、すぐに引き返して家に 帰る方が早いため」、「学校に帰る時間よりも短いと思っ たから」というように、学校までの距離と家までの距離 を比較して判断した例もあった。一方、「学校へ行く」 に関しては、「⚗時には出ていなかったので、行くだけ 行って先生と相談する」、「⚗時過ぎてから警報出ても意 味ないから」、「⚗時までに警報になっていなかったた め、臨時休業にはならないから」というように、臨時休 業基準を字義通り解釈して判断した例もあった。 X市立Y高校の臨時休業基準では「⚗時の時点」で警 報の発表が確認された場合に臨時休業となる。「⚕ ⚗ 表⚖ ⚗時より後に警報が発表された事例 項目 数 割合 自宅へ帰る 17 53.1% 学校へ行く 15 46.9% n = 32

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時より前に警報が発表された事例」のように⚖時55分に 発表された場合、通常⚗時まで継続すると想定できるた め、臨時休業基準の規定通りに判断できるといえる。一 方、⚗時05分に発表され、⚗時の時点では発表されてい なかった場合には、どのように対応すべきかに関して、 本事例では取り扱った。生徒の判断は、臨時休業基準を 字義通りに解釈し、⚗時の時点で警報が発表されていな い場合は臨時休業ではないため、学校へ行くというもの があった。「⚕ ⚗時より前に警報が発表された事例」 と本事例では、いずれも既に家を出ている場合を想定し ているものの、明らかに異なる結果を示している。その ため、警報の発表が⚗時より前であろうと後であろう と、登校中に警報の発表に気付いた場合の対応を臨時休 業基準に規定する必要がある。まず、⚗時より後に警報 が発表された場合も自宅待機とする旨の規定が必要であ る。その上で、既に家を出ている生徒に対する規定とし て、「⚕ ⚗時より前に警報が発表された事例」と同様 に、通学途上で警報の発表に気付いた場合は、自宅又は 学校のうち安全に行くことのできる場所へ向かうものと する旨の規定を検討する必要がある。そして、このよう な事態が生じた場合に学校のホームページやメール等で 改めて情報提供することも求められる。 Ⅳ おわりに 本研究は、生徒の視点から臨時休業基準の規定に関し て探索的に検討を行った。臨時休業基準は警報の発表時 における学校の対応の指針として、生徒が読んで理解で きるものでなければならず、必要事項を簡潔明瞭に記載 することが求められる。学校の内規であれば何通りかの 解釈があったとしても、校長の責任によって一つの選択 肢に決定することができる。しかしながら、臨時休業基 準のように生徒が読んで自ら判断する必要に迫られる可 能性のあるものは、何通りかの解釈があってはならな い。生徒に大人と同様の注意義務を課すことはできない のであり、生徒自身に判断を委ねることは避けるべきで あろう。 本研究では生徒がどのように判断するかを踏まえ、 「大雪警報が発表されている事例」で学校周辺において 発表される警報に関する規定、「鉄道が運休している事 例」で気象状況によって鉄道が運休した場合に関する規 定、「別の高校に通う兄の事例」で近隣の学校の規定と の整合性、「警報が発表されているZ市での部活動の事 例」で休日に関する規定や他市での警報発表に関する規 定、「⚗時より前に警報が発表された事例」及び「⚗時 より後に警報が発表された事例」で通学途上での警報発 表に気付いた場合の規定について、考えられる改善策に 論及した。各学校はこれらを踏まえるとともに、学校の 「実情」に応じて、臨時休業基準を作成する必要がある。 しかしながら、本研究で得られた知見は少数の高校生 を対象とする調査結果に基づいている。そのため、他の 高校生を対象とする調査を行った場合、本研究とは異な る結果になることが予想される。この点に関する検討も 含めて今後の課題としたい。 注 1)学校教育法施行規則第63条 「非常変災その他急迫の事情があるときは、校長は、臨 時に授業を行わないことができる。この場合において、 公立小学校についてはこの旨を当該学校を設置する地方 公共団体の教育委員会(公立大学法人の設置する小学校 にあつては、当該公立大学法人の理事長)に報告しなけ ればならない」 2)気象庁が発表する大雨警報、洪水警報、暴風警報、暴風 雪警報、大雪警報、波浪警報、高潮警報を指すものとす る。 3)例えば、午前10時に大雨警報が発表中の場合は臨時休業 とするというように、臨時休業となる場合に関して、ど のような警報が何時にどこに発表されるかを示したも の。 4)学校保健安全法第29条 「学校においては、児童生徒等の安全の確保を図るため、 当該学校の実情に応じて、危険等発生時において当該学 校の職員がとるべき措置の具体的内容及び手順を定めた 対処要領を作成するものとする」 5)「防災ジュニアリーダー合宿」はA県教育委員会の主催 により、例年、夏休みに⚒泊⚓日で実施され、県内から 中学生及び高校生の代表が参加している。その実施要項 の趣旨には「高校生等防災リーダーを育成し、支援者と しての視点から安全で安心な社会づくりに貢献する意識 を高める教育を推進する」とある。 6)生徒が臨時休業基準をどのように理解し判断しているか を明らかにするためには、全国規模での抽出調査を行う 必要がある。しかしながら、その前段階として、防災へ の関心の高い生徒を対象とする調査を行うことは、その 後の研究の方向性を考える上でも有効であると考えら れ、防災への関心の高い生徒が集う場である「防災ジュ ニアリーダー合宿」における調査を実施した。 7)小川・當山(2019a)が指摘する、警報の捉え方に関し て「大雪警報が発表されている事例」、交通機関に関し て「鉄道が運休している事例」、近隣校との均衡に関し て「別の高校に通う兄の事例」、通学区域に関して「警 報が発表されているZ市での部活動の事例」、通学区域 及び情報伝達に関して「⚗時より前に警報が発表された 事例」及び「⚗時より後に警報が発表された事例」を作 成した。 8)なお、上告審(最高裁判所第一小法廷2019(令和元)年 10月10日判決)において、学校側の事前防災が不十分で あったとして、市と県に損害賠償を命じた仙台高等裁判 所判決が確定した。 引用文献 小川雄太・當山清実「公立高校の気象災害に対する危機管理 ―臨時休業基準の『設定』と臨時休業の『判断』をめぐっ て―」『学校改善研究紀要』日本学校改善学会、第⚑号、

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2019年 a、16-30頁 小川雄太・當山清実「気象現象に対する学校の防災管理に関 する検討―A県の新任管理職等への意識調査から―」 『スクール・コンプライアンス研究』日本スクール・コ ンプライアンス学会、第⚗号、2019年 b、97-107頁 河内祥子「学校の危機管理マニュアルからみる『危機』とリ スク・マネジメントの課題」『スクール・コンプライア ンス研究』日本スクール・コンプライアンス学会、第⚖ 号、2018年、⚖-15頁 坂田仰「大規模災害と学校の危機管理―クライシス・マネジ メントを中心に―」『スクール・コンプライアンス研究』 日本スクール・コンプライアンス学会、第⚕号、2017年、 63-72頁 當山清実・小川雄太「気象警報による臨時休業に関する基準 の設定と公表の在り方の検討―兵庫県の高校を事例とし て―」『兵庫教育大学学校教育学研究』第30号、2017年、 29-37頁 内閣府(防災担当)「避難勧告等に関するガイドラインの改 定~警戒レベルの運用等について~」、2019年 文部科学省『学校の危機管理マニュアル作成の手引』、2018 年 山本豊「教育法規相談事例研究―学校から寄せられた質問に 対する教育法規に基づいた回答―」『東京福祉大学・大 学院紀要』第⚖巻第⚒号、2015年、73-86頁 (おがわ ゆうた・兵庫県立視覚特別支援学校教諭)

参照

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