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食品添加物規制の動向と消費者の対応

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食 品 添 加物規 制 の動 向 と消費 者 の対 応

岡   部    

昭   二

1  は   じ  め   に   自然 淘 汰 に よ る順 応 を 体験 して い な い食 品添 加 物 を は じめ とす る,新 な化 学 物質 の 安 全性 に 対 す る警 告 は,す で に1963年,ハ ーマ ン ・マ ラー(Hermann Joseph Muller)に よ って な され て い るが,最 近,こ の よ うな 化 学 物 質 の あ る も のは,DNAに 障 害 を与 え る こ とが 識 られ,変 異 原性 ・癌 原性 の深 刻 な 問題 を 提 起 す る に至 った 』   現 在,消 費 者 の 最 大 関 心 事 は 「安 全 性 の 問題 」 で あ り,「 安 全性 の問 題 」 の 最 重 要 課 題 と して 食 品 添 加 物 が あ る とい え よ う。 この小 論 に お い て は,昨 今 の 食 品添 加 物規 制 の動 向 と,消 費 者 の対 応 を展 望 す る と共 に,そ の在 り方 に つ い て若 干 の 問題 点 を指 摘 した い と思 う。 2  GRASリ ス ト   わ が 国 にお け る食 品 添 加 物 の 規 制 を 考 察 す る前 に,し ば ら く先 進 国 で あ る米 国 の 状 況 に つ い て 論 及 した い。 食 品 の 製造 に 際 し,不 当 な原 料 を 混入 した り, 偽 称 品 を 造 る こ とを 法 律 で禁 止 させ よ う との改 革 運 動 は1906年 の 「純 正 食 品薬 品 法」 と して結 実 した。 また,食 品 中 に酸 化 防 止 剤 や 香 味 料 な ど の化 学 物 質 を 使 用 す る こと の規 制 を 目的 と した 「食 品添 加 物 修 正 法 」 が 成 立 した の は1958年 で あ る。 化 学 物 質 は1957年 以 前 に は824品 目 も使 用 され て いた 。1958年 に は704 品 目の化 学 物 質 が 使 用 され,そ の うち 安全 性 が 確 認 され て い る もの は428品 目 に 過 ぎな い とい わ れ た。 米 国 公衆 衛生 局局 長 は 「食 品 中 の化 学 物 質 は 人 体 に悪 影 響 を 及 ぼ した おそ れ が あ り,そ の毒 性 の 程 度 も判 然 とせ ず,慢 性 毒 性 の 十 分 な情 報 に欠 除 し てい る。」と声 明 し,米 国 公 衆 衛 生 学 会 は 「食 品 中 の 化 学 物 質 は

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  98 健 康 を害 す る恐 れ が あ り,食 品産 業 が 将 来 当 面 す べ き最 大 の 問 題 とな ろ う。」 と警 告 した 。そ こで 強 力 な法 的措 置 を執 るべ く,食 品添 加 物 修 正 法 が 制 定 され         る運 び とな った の で あ る。 本 法 に よれ ぽ,食 品添 加 物 は 次 の二 つ の範 疇 の 何 れ か に 帰 属 す る こ とに な る。(1)一般 に 安 全 と認 め られ る物 質(Substances that are Recognized As Safe-GRAS)一 これ らは何 らの規 制 も受 け な:い。(2)そ の他 の も の に つ い て は,製 造 業 者 が 精 密 な毒 性 試 験 を 行 な い,安 全 性 が 確 認 され た も の を 認 め る。 この食 品添 加 物 修正 法 に よれ ば,す べ て の 食 品 添 加 物 は,あ らか じめ 厳 密 な毒 性 テ ス トを経 て,安 全 性 が 確 認 され て い な け れ ば な らな い と され て い る。 唯 一 の 例外 は 「一 般 に安 全 と認 め られ てい る場 合 」 で あ り,何 が そ れ に 該 当 す るか は,こ の 法 律 の 執 行機 関 で あ るFDA(米 国食 品医 薬 品 局)が 明 確 に 「 す る責 務 を 負 うこ とに な った。 そ こでFDAはGRASリ ス トを作 成 す べ く, 1958年1月1日 以 前 に 各 州 の 規 則 に よ り既 に食 品 と して適 当 で あ る と認 可 され て い る品 目,並 び に 何 年 か 食 品 に 継 続 的 に 使用 され,何 ら悪 影 響 が報 告 され て い な い 品 目を 対 象 に,189品 目の 化 学 物 質 を リス トア ップ し,同 年12月,全 米         900人 の 科 学 者 に 送 付 し た 。 そ の 結 果355人 が 回 答 し,う ち194人(全 体 の21%) だ け が 安 全 で あ る,若 し く は コ メ ン トを 付 さ な か っ た 。 残 りの 人 々 は 各 様 に 批 判 し た 。 炭 酸 ア ン モ ニ ウ ム,安 息 香 酸 ナ ト リ ウ ム,ア ン モ ニ ア,NDGA(臭 素 化 油 の 一 種),ビ タ ミ ンDな ど安 全 性 に 対 す る 疑 問 が 提 出 さ れ た が,そ れ ら は 「科 学 的 で な い 」  「安 全 性 は 確 認 さ れ て い る」  「食 品 中 の 残 留 量 は 極 め て 微 量 で あ る 」 な ど の 理 由 で 一 蹴 さ れ,結 局,他 の7種 が 削 除 され た に 止 ま り,G RASリ ス トは 最 初 に 認 可 さ れ た 時 点 で182品 目 も あ っ た 。 rGRASリ ス トの 作 成 に 当 り,900人 の 科 学 者 に 諮 問 した と 言 い ふ ら し て い る の はPRの た め で PH(public  health一 公 衆 衛生)の た め で は な い 」 と は 此 の 間 の 事 情 を 批 判 し た も の で あ る。 そ れ 以 降,FDAの 常 に 業 界 の 意 志 を 汲 も う とす る 姿 勢 に よ り, GRASリ ス トに リス トア ッ プ さ れ る 化 学 物 質 の 数 は 増 加 し て 行 っ た 。1961 (1}James  J. Turner坂 本 藤 良 ス タ デ ィ ・グ ル ー プ 訳:か らだ の 中 の 公 害p.220(1971)   講 談 社

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      食 品添 加 物 規 制 の動 向 と消費 者 の対 応    99・ 年,FDA局 長 ジ ョ ー ジ ・ラ リ ッ ク は 「リス トに は718品 目の 化 学 物 質 が 記 載

され て い る」 と証 言 し た 。

  米 国 連 邦 規 則 集(Code・f  Federal Regulations)のTitle  21 Food  and Drugs のPart  121-Food  AdditivesにSubpart  B-Exemtion  of certain Food  Ad-ditives From  Requirement  of Toleranceと い う項 目 が あ り,そ の 中 の §121,

101にGRAS物 質 が 記 載 さ れ て い る 。 GRAS物 質 に は 広 義 と狭 義 とが あ り, そ れ ら は 第1表 に 示 す 通 り で あ る 。 表 中,2の 狭 義 のGRAS物 質 の4)は 人 工 甘 味 料 で あ る が,サ ッ カ リン が1974年 のCFRよ り食 品 添 加 物 に 移 項 さ れ た 現 在,該 当 す る 品 目が な く な っ て い る 。GRASリ ス トは 用 途 別 分 類 の 性 格 上, 同 一 品 目 の も の が そ れ ぞ れ 異 に す る 用 途 に 分 類 さ れ る い わ ゆ る二 重 指 定 の 化 学 物 質 も若 干 存 在 す る が,そ れ を 重 複 し て 算 定 す る ほ か,GRASよ り価 値 が 低       第1表  GRAS物 質 1.通 常食 品成 分Common  food ingredients     食 塩 ・コ シ ョ ウ ・食 酢 ・ベ ーキ ング パ ウ ダ ー ・グル タ ミン酸 ナ ト リウムな どで す     べ て を記 載 す る こ とは不 可 能 で あ る。 2.GRAS物 質(狭 義) 品 種 ) ) ) ) 1 2 3 FO ) ) ) 戸0 7     8 固 結 防 止 剤 (ANTICAKING  AGENTS) 合 成 保 存 料 (CHEMICAL  PRESERVATIVES) 乳 化 剤( EMULSIFYING  AGENTS) 栄 養 強 化 剤(

NUTRIENTS  AND/OR  DIETARY   SUPPLEMENTS) イ ン ペ イ 剤 (SEQUESTRANTS) 安 定 剤 (STABILIZERS) 種 々 の,ま た は 一 般 的 目 的 の 食 品 添 加 物

(MISCELLANEOUS  AND/OR  GEN-  ERALGEN-  PURPOSE  FOOD  ADDITI-  VES) 十 二 ニ ロ 例 け い 酸 ア ル ミニ ウ ム ・カ ル シ ウ ム な ど ア ス コ ル ビ ン 酸 な ど コ ー ル 酸 な ど ア ラ ニ ン(L及 びDL型)な ど 酢酸 カ ル シ ウ ムな ど ア カ シ ア(ア ラ ビア ゴム)な ど 酢 酸 な ど 品 目数 7 1 3 9 6 8 1 9 飼 ー ハ 0 1 8 257

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  100 3.香 辛 料 天 然調 味 料 ・樹 脂 油 ・天 然エ キ スな ど 口 旧 1)  香 辛 料 ・天 然調 味料 ・風 味増 強 剤 2)  植 物 性 精 油 ・樹 脂 油 ・天 然 エ キ ス 3)  1)と 共 に 使 用 され る天 然 物 4)  2)と 共 に 使 用 され る天 然 物 5)雑 卜 二 二 口 例 シ ナ モ ン ・ガ ー リ ッ ク な ど カ カ オ ・ コ ー ヒ ー ・ ガ ー リ ッ ク な ど 褐 藻 ・紅 藻 な ど Peanut  stearineな ど りゅ うぜ ん こ う な ど 品 日数 89 172 3 Q ゾ F D 278 4.合 成 香 料 な ら び に 補 薬     ア セ トア ル デ ヒ ド・ベ ン ツ ア ル デ ヒ ド・酢 酸 エ チ ル ・リ モ ネ ン ・バ ニ リ ン な ど   27品0 5.食 品 包 装 に 使 用 さ れ る 紙 ・板 紙 か ら食 品 に 入 る物 質     酢 酸 ・塩 化 ア ン モ ニ ウ ム 。塩 化 カ ル シ ウ ム ・水 酸 化 カ ル シ ウ ム ・コ ー ン ス タ ー チ ・     デ キ ス ト リ ン ・グ リ セ リ ン 。二 酸 化 ケ イ 素 ・水 酸 化 ナ ト リ ウ ム ・尿 素 な ど   67品 目 6.乾 燥 食 品 包 装 に 使 用 さ れ る綿 ・綿 織 物 か ら食 品 に 入 る 物 質     酢 酸 ・塩 化 カ ル シ ウ ム ・CMC・ コ ー ン ス タ ー チ ・魚 油(水 素 添 加)・ ゼ ラ チ ン ・     ロ ウ ・水 酸 化 ナ ト リ ウ ム ・尿 素 ・塩 化 亜 鉛 な ど       41品 目       Code  of Federal  Regulations'74に 拠 る。

い とみ られ る狭 義 の 食 品 添 加 物 との 重 複 が あ るな ど問 題 点 は 多 い。

  1969年 の チ ク ロ事 件 を 契 機 と して 起 こ った 食 品 の 安 全性 に 関 す る消費 者 の要

望 に応 え,当 時 の ニ ク ソ ン大 統 領 はGRAS再 点 検 をFDAに 命 じた。 FDA

と して も1958年 か ら1960年 に か け てGRASに 認 定 され た 物 質 中 に,安 全 性 を 確 認 す るデ ー タが な く,単 に 人 体 に 悪 影 響 を 与 えな い との 理 由だ け で 認 可 され て い る もの が あ る こ と,さ らに 安 全性 の 確認 技 術 も こ こ10年 間 に急 速 に進 歩 し, 科 学 的 評価 が よ り厳 密 に な った こ とと相 俟 って,GRAS再 点 検 は 当 然 の こ と と受 け 取 って い た。FDAは 各GRAS物 質 に つ い て  (1)過去50年 間 の 安 全 性 に 関す る文 献 調査   ② ア ンケ ー ト形 式 に よ る消 費 実 態 調 査   (3)実験 動 物 を 用 い た 種 々の 毒 性試 験 の 三方 面 か ら検 討 を 開始 した 。 集 収 され た デ ー タは す べ てG

RAS物 質 特別 委員 会(Selected Committee on GRAS  Substances-SCOGS)Yこ 送

られ,審 議 の 上,そ の 物 質が 次 に示 す 四分 類 の何 れ に帰 属 す るか を判 定 し,F

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      食 品添 加 物 規 制 の 動 向 と消 費者 の 対 応    101 ③ 今 後,研 究 結 果 が 出 る ま で 使 用 中 止   (4)一応 安 全 と 考 え られ る が 情 報 が 不 充 分 で あ る た め,最 終 判 断 は 保 留 一 時 限 添 加 物(interim  F。od Additives)一 と す る。FDA長 官 は こ のSCOGSの 答 申 の も と に 更 に 検 討 し,そ の 結 果 を 官 報 に 告 示 す る。 告 示 後 約3か 月 の 指 定 され た 日 ま で に 関 係 者 は 意 見 を 提 出 こ と が で き,長 官 は そ れ ら を 勘 案 し,数 か 月 後 に 決 定 す る こ と に な っ て い る 。   1974年9月23日,FDAはGRASの 確 認 に 対 し て,新 な 基 準 を 提 案 し, G RAS決 定 に 当 り,次 の 三 つ の 範 聴 が あ る こ と を 示 し て い る 。 これ ら の 内 容 は 次 の 通 りで あ る。(1)GMPと の 関 連 で 制 限 の な いGRAS一 こ れ に 該 当 す る 物 質 はGMP(G・od  Manufacturing  Practices)に 従 っ て 使 用 さ れ る 時 にGRASと 認 め られ る も の で あ る 。 こ れ は 食 品 にGMPに 従 っ て 添 加 した 場 合 プ 結 果 と し て 使 用 量 が 制 限 さ れ る こ と に な る 。 す な わ ち,GMPと い う制 限 は 許 容 量 で は な い が,ガ イ ドラ イ ン の 性 格 上,使 用 量 が 自 然 に 制 限 され て く る と の 考 え で あ り,該 当 物 質 と し て は,安 息 香 酸,安 息 香 酸 ナ ト リ ウ ム,幽か ー リ ッ ク,ガ ー リ ッ ク オ イ ル,ジ ル,ジ ル オ イ ル,イ ン デ ィ ア ン ジ ル,イ ン デ ィ ア ン ジ ル オ イ ル, プ ロ ピ ル ガ レ ー トが あ る。   (2)最 高 使 用 量 が 制 限 さ れ るGRAS物 質 一GRAS確 認 の 第 二 の カ テ ゴ リ ー は,現 時 点 で はGRASと 認 め られ る が,将 来 そ の 物 質 の 使 用 量 の 増 加 や, 従 来 と は 異 な っ た 使 用 方 法 が 開 発 さ れ る 場 合 に は,安 全 性 に 疑 問 が 生 じ る と 考 え ら れ た も の で あ る。FDAは これ らの 物 質 に 対 し 七 使 用 し 得 る濃 度 の 上 限 を 設 定 した 。 こ の 理 由 は"Select  Committee  on GRAS  Substances  of Federation of American  Societies for Experimental  Biology"カ ミ,こ れ ら の 物 質 の 使 用 示 拡 大 され た と き に は,さ ら に 追 加 資 料 が 提 出 さ れ な け れ ば 安 全 性 を 確 認 し得 な い と'して い る か ら で あ り,こ の 種 のGRAS物 質 に は ロ ー カ ス トビ ン ガ ム が あ る。   (3)'GRSAの 再 検 討 は 続 行 す る が,特 殊 な 使 用 方 法 に 対 す るGRASの 確 認 一FDAは あ る特 定 な 物 質 に 対 し て, GRAS再 検 討 カミ終 了 し で い な い に も か か わ らず,特 定 の 用 途 に つ い てGRASを 認 め て い る 場 合 が あ る 。 ♂一シ ス テ ィ ン,エ チ ル ア ル コ ー ル,パ ン 酵 母 な どで あ る 。      晴

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102 3  わ が 国 に お け る食 品添 加 物 の規 制   わ が 国 に お い て は,食 品 衛 生 法 が 成 立 した の は 昭和23年 で あ り,当 時 は安 全 性 も確 認 されず,従 来 使 用 され て きた が 毒性 が実 際 上認 め られ なか った 化 学 物 質 が,食 品 添 加 物 に 指 定 され る こ とが 多 か っ た。 これ が国 際 的 に認 め られ た毒 性 テ ス トに よって 再 点 検 が 行 な わ れ るに 至 った の は 昭 和37年 か らの こ とで あ り,こ の 再 点 検 事 業 に よ り,現 在 まで に 食 品 添加 物 の 指定 削 除 を 受 け た 化学 物 質 は40品 目の 多 きに 達 す る。一 方,食 品添 加 物 の安 全 性 に 対 す る批 判 の系 譜 は, 古 く,天 野 慶 之 氏 の 「五 色 の 毒」(1953)に 始 ま り,同 氏 の 「恐 るべ き 食 物」 (1956)や,「 知 らず に 食 べ て い る有 害 食 品」(1962)な どの 先 駆 的 な 啓蒙 書 が あ り,こ れ に よって す で に食 品 添 加 物 に 関 心 を 抱 い て い た 消 費 者 もあ った が,そ れ が 国民 的関 心 に まで 拡 が った の は,1969年 の チ ク ロ事 件 で あ っ た とい え よ う。 米 国 に お け る禁 止 は10月18日 で あ り,禁 止 の 根 拠 とな る もの は,そ の11年 前 に成 立 した 「い か な る食 品 添 加 物 も人 体 も し くは 動 物 に 癌 を お こ させ る こ と が 判 明 した場 合 に は市 場 か ら排 除 す る こ と」 を 訴 えた デ ラ ニ ー条 項 で あ った 。 わ が 国 で は11月5日 に 指 定 削 除 の告 示 が な され,そ の 措 置 の 迅 速 性 は 一 般 消 費 者 に好 感 を 以 て迎 え られ た が,他 方 広 くそ の 安 全 性 が 認 め られ,許 容 量 もな く 一 般 食 品 に広 汎 に 使 用 され て い た サ イ ク ラ ミン酸 塩(チ ク ロ)が 禁 止 され た こ とは,食 品添 加 物 一般 に対 す る強 い不 信 感 を 与 え る こ とに な り,こ の た め 「食 品添 加 物 総 点検 」 が これ を契 機 として 叫 ば れ る こ とに な った 。 食 品 添 加 物 総 点 検 とは,人 間 の生 存 に不 可 欠 な食 品 の安 全 性 を確 保 す る視 点 か ら,食 品 添 加 物 を徹 底 的 に洗 い直 し,危 険 な 品 目に つ い ては,使 用 を 禁 止 す るか 制 限 す る こ と を意 図 した もの で あ る。 また,総 点 検 の理 由 とし て,サ イ ク ラ ミン酸 塩 の 指 定 削除 直 前,許 可 され て いた358品 目の食 品添 加 物 申,半 数 以 上 は 戦 前 か ら使 用 され て い た もの を そ の ま ま 採 用 した もの で,慢 性 毒 性 に つ い て は ほ とん ど検 討 され て い ない と の批 判 の背 景 が あ る。 政 府 は 従 来,「 有 害 で あ る こ とが 確 認 され れ ば 規制 す る」 との方 針 を とっ て きた が,食 品に つ い て は 「疑 わ しい 」 と い うだ け で暫 定 的 に政 府 は全 面 的 使 用 禁 止 の 措 置 を と るべ きだ,又,厚 生 省 は

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      食品添加物規制の動向 と消費者の対応   103 「国 内 で 独 自に毒 性 を 確認 す る まで は …」 と の理 由か ら,指 定 削 除 に 当 って は 慎 重 策 が 執 られ,海 外 の 資料 は も と よ り,国 内 に おい て厚 生 省 と無 関 係 に 発 表 され た 研 究 結 果 に対 して は 冷淡 で あ る との批 判 が な され て いた 。 こ の よ うな 背 景 の も とに,同 年10月28日,国 民生 活 審 議 会 の 消費 者 保 護 部 会 で 「食 品 添 加 物 の 安 全 性 の 確 保」 に つ い て の意 見 書 が ま とめ られ,経 済 企 画 庁 に提 出 され た 。 意 見 書 の 要 旨は 次 の通 りで あ る。     「食品添加物につ いて安全性に疑惑が生 じた場合は,食 品衛生法の趣 旨に基 づき,直   に禁止す るとい う原則を確認すべ きであ る。又,疑 惑の生 じた添加物のみでな く,す べ   ての添加物について科学技術 の進歩 に対応 して,常 に安全性が確実であ るか否かの検討   が行なわれることが必要である。国民の安全 の確保に立脚 した行政措置を とることが政   府の基本的責務であ る。」   厚 生 省 とし て も進 歩 した 試 験 技 術 に 即 応 した 安 全 性 の 再 検 討 に つ い て は,そ の必 要 性 を認 識 し て お り,す で に 昭 和37年 か ら再 点 検 事 業 が す す め られ,「 安 全 性 に疑 問が 生 じた 食 用 赤 色101号,ズ ル チ ン等13品 目の 添 加 物 に つ い て,使 用 禁 止 の措 置 を講 じて きた 」 こ とを 昭 和45年 の 厚 生 白 書 は 報 じて い る。 この 白 書 の 中 で は添 加 物 行 政 に 関 して 次 の 三 つ の 重要 な施 策 を 指摘 す る こ とが で き よ う。(1)安全 性 の面 で 問 題 が な くと も添 加 物 を 使 う必 要 性 の 少 な い 食 品 に まで添 加 物 を使 うこ とを 規 制 す るた め,昭 和45年 度 よ り広 範 な実 態 調 査 を 行 な い,そ の結 果 に 基 づ い て さ らに 規 制 を 強 化 す る こ と  (2)44年7月 の 食 品 衛 生 法 施 行 規 則 の 改 正 に よ って,容 器 包 装 に 入 れ られ た 加工 食 品 に は,一 定 の 食 品添 加 物 の 表 示 を 行 な うこ とが 義 務 づ け られ,45年7月1日 か ら完 全 実 施 に移 され た こ と (3)最近 と くに 問 題 に な って い る添 加 物 の相 乗 あ る い は相 加 毒 性 の 問題 に関 す る 研 究 を,昭 和45年 度 よ り大学 等 に 委 託 した こ とで あ る。   な お 再 点 検 は,昭 和45年 度 以降48年 度 に か け て,サ ッカ リン,デ ヒ ドロ酢 酸,食 用 赤 色102号 等25品 目につ い て,慢 性 毒 性 試 験 の ほか,催 奇 形 性 試 験, 代 謝試 験 等 の精 密試 験 が 行 な われ た。   食 品添 加 物 とし て指 定 し得 る五 項 日中の 一 つ に 「食 品 を 美 化 し魅 力 を 増 す も の」 の項 目が あ るが,従 来 と もす れ ば 濫用 に 陥 りや す く,鮮 度 の隠 弊 や 品質 の

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  104 偽 隔 に使 用 され る ご とが あ ら充 。 後 者 の例 とし て 「高 系 」 な 為甘 藷 に食 角 赤 色 102号 で 染 色 じ,噛皮 の 色 が赤 く美 味 なr金 時」 に見 せか け る こ とが行 なわ れ て い た 。 当 時 市場 で の却 値 は 「金蒔 ∫ が キ ロ80円 に対 し 「高来 」 は2∼3割 安 の 60臼 で あ った とい お れ る。 そ の 他,未 熟 な ゲ リン ピ ース に食 用 青 色i号 と食 用 黄 色4号 ℃ 自然 法 色 セと彩 色 した り,漂 白剤 で 白 く した サ トイ モ の 例 な:どが み ら れ た こ と も あ り,厚 生 省 は 昭 和44年7月25日 告示,同 年10月25日 施 行 で,食: 肉,鮮 魚 介 類,豆 類 お よび 野 菜 に つ い て着 色 料,野 菜 お よび 豆 類 に 亜 硫酸 系 の 漂 白剤 を禁 止 した の を始 め,昭 和46年10月4日 告 示,47年4月1日 施 行 で,き な粉,こ ん ぶ類,し ょ う油,茶,の り類,み そ お よび わ か め 類 に つ い て は 着 色 料,ご まに つ い て は 漂 白剤 の 使 用 を 禁 止 した 』 さ らに,昭 和47年12月13日 告 示, 48年6月13日 施 行 で,カ ス テ ラ,魚 肉つ け 物,食 肉つ け 物,ス ポ ン ジ ケ ー キ, マ ー マ レー ド及 び め ん類(ワ ン タ ンを 含 む)に 着 色 料 の 使 用 禁 止 が 追 加 され 現 在 に 至 って い る。   現在,紅 色 の か まぼ こは,食 用 赤 色3号,食 用 赤 色104号,食 用 赤 色106号 が お もに用 い られ,今 後 は 食用 赤 色3号 が 多用 され る と思 われ るが,以 前 は 紅 色 の か まぼ こが な か った こ と,実 験 室 的 な研 究 結 果 に よ る と,ペ プ シ ン ・ トリプ       ニの シ ンな どの 消 化 酵 素 活 性 が,通 常 の使 用 濃 度 に お い て も2∼3割 低 下 す る こ と か ら規 制 の 対 象 に す る こ とが 望 ま しい が,厚 生 省 と して は実 態 調 査 を行 な い, 必 要 度 の 少 い 商 品 に つ い て 規 制 を 実施 す る こ とか ら,行 政 措 置 に よ る規 制 を直 ち に 期 待 す る こ とは 不 可 能 と考 え られ,消 費者 運動 の成 果 に 俟 た な けれ ば な ら な い で あ ろ う。 又,漬 物 に お い て も,消 費 者 の 要 望 が あ る に もか か わ らず,市 販 の もの に 着 色 料 を 使 用 し「た もの が 多 く,と くに店 頭売 りに つ い て は表 示 のi義 務 が な い こ とは 問 題 で あ る。 4  純.正 食 品   「チ ク ロ問 題 」 を契 機 とし て,一 般 消 費者 に 食 品 添 加 物 の 不 信 の 声 が 高 ま り,そ れ に 呼 応 す る よ うに 伸 長 した もの に 「自然 食 品 」,「純 正 食 品 土 が あ る。 (3)榎 本則 行 他 。:佐 大農 彙,第29号,13(1970)

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      食品添加 物規制 の動向 と消 費者の対応    105 '当 時 ,醸 造 評 論 社 は,み そ ・し ょ う油製 造 業 者 側(う純 正 食 品に 対 す る考 え方       ㈹ を 譏 る 目的 で,全 国 の製 造 技 術 者 を対 象 と して ア ン ゲ ー トを 実 施 しだ 。 第2表 に そ の結 果 を示 す 。 そ れ に よ る と,み そ の 場 合,人 工 甘 味 料,漂 白剤(次 亜 硫 酸 ナ トリ ウム),醸 造 用 褐 変 防 止剤(塩 化 ア ル ミニ ウム),変 色 防 止剤(メ タ リ ン酸 ナ ト リウ ム)の 使 用 に つ い て は 回 答 者 の95%以 上 が否 定 し,こ の よ うな食 品 添 加 物 を 使用 した み そ は,純 正 とは い え な い との 考 え方 を極 め て 明 瞭 に示 し た 。1他方,グ ル タ ミン酸 ソー ダ ・イ ノ シ ン酸 ソ ー ダ ・グ ア ニ ル酸 ソー ダ な どの 調 味料;V.B2・ 炭 酸 カ ル シ ウム な どの 強 化 剤 の 使 用 に つ い て は 賛 否 相 半 ば す       第2表   純 正(自 然)み そ の 定 義 設 問 1。 原 材 料 に農 薬 な どの汚 染 が な く,食 品添 加 物 を一 切 使 用 して い   ない もの 2.製 造 工 程 に お いて,食 品 添 加 物 を一 切 使 用 して い な い もの 3.強 化 剤 の使 用 は認 め られ る 4.調 味 料 の使 用 は認 め られ る 5.人 工 甘 味料 の使 用 は 認 め られ る 6.漂 白剤 の使 用 は 認 め られ る 7.醸 造 用 褐変 防 止 剤 の 使用 は認 め られ る 8.変 色 防 止剤 の 使 用 は 認 め られ る 可 5 1 1 4 4 3 2 2 2 ﹃0 4 否 89 73 43 50 .90 91 92 92 純 正(自 然)し ょ う油 の定 義 設 問 1.  原 材 料 に農 薬 な どの 汚 染 が な く食 品 添 加 物 を一 切 使 用 して い な   い もの 2.製 造工 程 で食 品 添 加 物 は一 切 使 用 せ ず,ア ミノ酸 の 混 用 も しな   い もの 3.塩 酸 分解 の ア ミノ酸 液 は混 用 して 良 い 4.強 化剤 の使 用 は 認 め られ る 5.調 味料 の 使 用 は 認 め られ る 6.人 工 甘 味 料 の 使 用 は認 め られ る 7.変 色 防 止 剤 の使 用 は認 め られ る 可 3 22 23 38 44 3 2' 否 91 72 1 6 0 1 2 7 FO 5 9 9 醸 造 評 論 第201号(1970)に 拠 る (回 答 者数   94人) (4)醸 造 評 論,第201号 ・202号(1970)

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106 る結果 が得 られ た。 この 結果 か ら,み そ 製 造 技 術 者 の考 え る純 正 み そ は,本 来 は 食 品 添 加 物 を 一 切 含 まな い み そ を意 味す る で あ ろ うが,調 味 や 栄 養 強 化 に 関 して の 添 加 に は あ ま りこだ わ らな い とい うこ とに集 約 され よ う。   純 正 し ょ う油 に つ い て は,人 工 甘 味 料 や変 色 防 止 剤 を使 用 し て は な らな い と の 意 見 が 圧 倒 的 で,グ ル タ ミン酸 ソー ダ,イ ノシ ン酸 ・グ ア ニ ル酸 ・コハ ク酸 塩 な どの調 味 料,ビ タ ミン ・ア ミノ酸 の 強 化剤 に つ い て も使 用 しな い方 を可 と す る者 が 多 か った 。 な お,み そ ・し ょ う油 共 保 存料 を 使用 しな い こ とは,純 正 食 品 の前 提 条 件 と考 え られ るた め 設 問 か らは 除 外 され て い る。技 術 者 の中 に は, 調 味 料 や 強 化 剤 は 本 来 食 品 の成 分 で あ るか ら,こ れ らの 食 品 添加 物 を 使用 して も純 正 食 品 の名 を 妨 げ ない とす る者,あ るい は 本 来 の 醸 造 法 を用 い て い るの で あれ ば,法 的 に 認 め られ て い る食 品 添 加 物 の 使 用 は 構 わ な い と 「純 正」 の 意 味 を む し ろ製 造 技 術 面 に お く者 も見 受 け られ た 。 この よ うな 「純 正 み そ ・し ょ う 油」 に対 す る一 部 技 術 者 の考 え 方 に は,消 費 者 の 全 く容 認 し得 な い と こ ろで, 自然,天 然,純 生,無 添 加,保 健,健 康,純 食 品 な どを 冠 した 商 品 名 は,企 業 が 「自然 食 ブ ー ム」 に 便 乗 し,販 売 促 進 のた め に 利 用 して い る との 疑 念 を 払 拭 し得 ない と ころに 問 題 が あ った 。 自然 食 品 の 定 義 に 関 して は 多 年 の 消 費 者 の 要 望 に かか わ らず,公 正 取 引委 員 会 に おい ては 未 だ に 結 論 を 出 す 状 態 に 至 って い ない 。 し か し,消 費 者 一 般 は 少 くと も 「自然 食 品 は 食 品 添 加 物 を 一 切 使用 して い な い商 品」 とい うこ とで は一 致 して い る と理 解 され る。 昭 和45年 前 後 は,自 然 食 品 か ら保 存 料 な どが 検 出 され る例 も多 か った が,最 近 に お い て は 少 くと も 表 示 を要 す る添 加 物 を検 出す る例 は少 くな った 。 しか し,次 の 三 点 で 問 題 を 残 して い るo   (1)表 示一 ご ま,わ か め,ひ じ きな ど法 的 に漂 白剤 や着 色 料 の使 用 で きな い 商 品 や,す るめ な ど従 来 か ら添 加 物 を使 用 して い ない 商 品 に 自然 食 品 を 表 示 す る こ とは,消 費者 に対 し,一 般 に市 販 され て い る商 品 には 添 加 物 が 使 用 され て い るか の よ うな誤 認 を与 え る おそ れ が あ る。 また,逆 に 無 表 示 の食 塩 や 小 麦 粉 に は 自然 食 品 で あ る こ とを 明確 にす べ き で あ る。   (2)価 格一 自然 食 品 が一 般 品 に 比 し高 価 格 で あ る理 由 と して,企 業 規 模 が 小

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      食 品添加 物規制 の動向 と消費者の対応  107 さい,生 産 コス トが 高 い,需 要 が 少 い 点 な どが 指 摘 され て い るが,ご ま,海 藻 類 をは じめ,よ うや く一 般 市 場 に も見 られ るに至 った 無 漂 白粉 に 比 し,高 価 格 で あ る理 由 は存 在 し得 な い もの と思 わ れ る。   (3)品 質 管 理 一 「自然 食 品」 の イ メ ー ジに よ って,消 費 者 が 自己 の健 康 維 持 を 図 る こ とが 購 買 動 機 で あ る と 考 え られ るだ け に 品質 管 理 の 徹 底 が 望 まれ る が,最 近,三 重 県 に お い て,き し め ん の過 酸 化 物 価 が,品 質 保 持 上 の 目安 と さ れ て い る20meq/勿 を起 え る な どの例 が あ り,酸 化 防 止 剤 を 使 用 しな い 以 上, と くに 品質 管理 に充 分 な配 慮 が な され るべ きで あ う う。     5  消 費 者 の 対 応   昨年,2一(2一 フ リル)一3一(5一ニ トロー2一フ リル)ア ク リル酸 ア ミ ドに癌 原 性 と 変 異 原 性 とが認 め られ て禁 止 に な り,続 い て 同 様 に,わ が 国 で 開 発 され た食 用 赤 色104号 が,胎 児 の培 養 細 胞 に 突 然 変 異 を 起 こす こ とが,国 立 遺伝 研 究 所 に お い て発 表 され た 。 厚 生 省 で は この よ うな 情 況 を勘 案 し,遺 伝 的 安全 性 の試 験 を実 施 す る こ とに し,と りあ えず 哺 乳 動 物 を用 い て  (1)代謝 と宿 主経 由試 験 ② 生 体 内染 色体 異 常 の検 定   (3)優生 致 死法 の テ ス トを実 施 して い る。 この よ う な状 況 下,消 費 者 団 体 が 昭 和50年 の 運 動 の 課題 と して,追 放 す べ き食 品添 加 物 を 掲 げ てい る も のは 次 の とお りで あ る。   食 用 赤 色104号 一 日本 婦人 有 権 者 同盟 な ど。 タ ー ル色 素 全 般 一 文 京 区 消 費 者 の 会,千 葉 市 消 費 生 活 協 議会,習 志 野 市 消 費生 活 研 究 会,横 須 賀 市 消 費 生 活 研 究 会 な ど。 食 品添 加 物 一般 一 公 害 か ら暮 し を守 る会 な ど。   また,日 本 消 費者 連盟 は,着 色料 ・発 色 剤 ・漂 白剤 ・小 麦 粉 改 良剤 な どの 禁 止 と,昨 年10月 に な っ て 問題 化 した 食 用 赤 色104号,そ れ に 化 学 構 造 が 類 似 して い る食 用 赤 色105号 ・106号の 禁 止 を 訴 え て い る。 又,神 奈 川 県 企 画 調 査 部 消 費生 活 課 の商 品 の安 全 性 に つ い て の調 査(昭 和49年 度 第2回 消 費 生 活 モ ニ タ         一 ア ン ケ ー ト調 査 一49年11月 一)結 果 に よ る と,最 も 不 安 に 思 う商 品 と し て 食 料 品 と答 え た 人 が 圧 倒 的 に 多 く378人(82.6%)で,第2位 の 医 薬 品43人(9.4 (5)国 民 生活 セ ン ター編:生 活 行 政 情 報 第91号43-44(1975)

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 108 %)以 下 を 大 き く引 き離 した 。 不 安 の 内容 と して は 「食 品 添 加 物 」 が 最 も多 く 400件(27.2%)で 以 下 「残 留 農薬 」243件(16.5%)「 成 分 等 の表 示 不 十 分 」 229件(15.6%)と な って い る。 食 料 品め 不 安 へ の 対 応 策 と して は,積 極 的 な 対 応 と考 え られ る 「手 づ く りの料 理 を 多 くす る」 が207人(45.3%)と 半 数 近 くを 占め,ま た,「 添 加 物 使 用 の食 品 を さけ る」 「不 安 な も の は食 べ ない 」.「加 工 食 品 は 買 わ な い 」 とい った 対 応 が224人(49.0%)で 相 半 ば して い る。   当 時 は ハ ム ・ソ ーセ ー ジ類 に 使 用 して い るAF-2が 問題 に な って いた 事 情 も あ るが,日 々摂 取 す る食 品 添 加 物 に 関 す る不 安 が 大 きい こ とは 多 くの ア ンケ ー ト結 果 が 報 じて い る と こ ろで あ る。 本 年2月,愛 知 県生 活 学 校 大 会 に お い て も ター ル色 素 及 び 学 校 給 食 用 の ハ ム ・ソー セ ー ジに 使 用 す る発 色 剤 の 禁 止 な どが 決 議 され た。・・ 6  考慮すべ き問題 点  一 般 の 食 品製 造 業者 や販 売 業 者 に は 「消 費 者 に 便 益 を 与 え,資 源 の有 効 利 用 に も大 い に 貢献 して い る加 工 食 品 は,食 品 添 加 物 が あ って こそ は じめ て 可 能 で あ り,食 品 添 加物 は基 準 量 さえ守 って いれ ば 危 険 な もので な く,消 費 者 が い た ず らな 不 安 に 陥 って い るの は マ ス コ ミの煽 動 に よ る。」 との 意 見 を有 す る者 が 多 い 。 この 対 極 と して 「食 品添 加 物 は 化学 物 質 で あ る限 りす べ て有 毒 で あ る。 従 っ て これ を 使 用 して い る加 工 食 品 は す べ て 有害 で あ る。」  と見倣 す一 部 消 費 者 の 考 えが あ る。 も と よ り,こ の 間 に種 々の 論 が 介在 す るわ け で あ るが,何 れ にせ よ,食 品添 加 物 を論 議 す る場 合 に は 次 の 諸 点 を 考 慮 す べ きで あ ろ う。   (1)安 全性 確 認 技 術 の進 歩 一FAO・WHOの 食 品 添 加 物 に 関 す る合 同 専 門 家委 員会 の第8回 会議(1964)に お い て,タ ール 色 素 中,食 用 赤 色2号(ア 々 ラ ソス),食 用 黄 色5号(サ ンセ ッ トエ ロ ーFCF),食 用 黄 色4号(タ ー トラ ジ ソ)の3品 目が,一 日許 容 摂 取 量 も 定 め られ,最 も'安全 で あ る と 認 め られ   た 。 第3表 に 示 す 。 し か し,1970年,ア マ ラ シ ス は ソ 連 研 究 者 に よ り,ラ ッ トに 妊 娠 率 低 下,胎 児 死 亡 な ど の 毒 性 が 認 め ら れ,FDAに よ っ て も 確 認 さ れ た 。

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      食品添加 物規制 の動向 と消費者の対応   109 第3表    最 も安全で あると認 められたタール色素 C.1.No. Amaranth… … … ・・… … … ・… … …16185 Sunset  Yellow  FCF… … … …15985 Tartrazine… … ・… ・… ・… … … …19140

Acceptable  daily  intakes for  man  in  mg  per  kg     body-weight

        匹1.5

        as.0

        0-7.5

    (出典)FAO  Nutrition Meetings Report Series No.38(1965)

    (注)Amarnthは その後毒性が確認 された ので,第16回FAO/WHO食 品添加物に関す る       (7)         合同専門家委員会において暫定 ・ADIと して0一一〇.75が定められた。 年 々 の 厚 生 白 書 に は 「添 加 物 の 安 全 性 を 確 認 す る た め の 毒 性 試 験 の 技 術 水 準 等 は 年 々 向 上 し て い る の で,新 し い 学 問 的 視 野 で そ の 安 全 性 を 再 確 認 し,よ り安 1全性 を 高 め る こ と 炉 必 要 で あ る。」 と 謳 わ れ て い る 。 こ の よ うに 従 来 安 全 と さ れ て い る 化 学 物 質 に お い て も,安 全 性 に 関 して の 疑 問 か ら量 的 な 規 制 を 受 け た り,禁 止 措 置 が と られ る 例 は 決 し し て 少 く な か っ た 。 従 っ て,そ れ ま で に 摂 取 し 続 け た こ の よ う な 化 学 物 質 に よ る 健 康 へ の 影 響 も 憂 慮 さ れ る と こ ろ で あ る。 こ れ を 防 止 す る た め に は,あ らゆ る 化 学 合 成 品 に つ い て は 一 応 食 品 添 加 物 と し て の 使 用 ・販 売 等 一 切 を 禁 止 す る 原 点 に 立 ち 還 り処 置 し て い か な け れ ば な ら な い 。 具 体 的 に は,実 際 的 に 必 要 度 が 低 く,ほ と ん ど 使 用 され て い な い 添 加 物 を 削 除 す る こ と は も と よ り,商 品 価 値 を 高 め る た め に 使 用 され る,製 造 ・加 工 上 の 必 要 性 の 稀 薄 な 添 加 物 は 規 制 す る 姿 勢 が 望 ま れ る 。 幸 い 厚 生 省 に お い て は 現 在 と の 方 針 を 執 っ て い る こ と は 認 め られ る が,一 層 の 拡 大 強 化 が 要 望 さ れ る。 ま た,食 品 添 加 物 の 新 な 指 定 に あ た っ て は,充 分 な 毒 性 の 検 討 が 必 要 と さ れ て い る。 し か し,最 も重 要 な こ と は,安 全 性 に 疑 惑 を 生 じた 場 合 に は,迅 速 に 食 品 衛 生 調 査 会 で 検 討 し,研 究 方 法 ・解 析 に 異 論 が な け れ ば,暫 定 的 に 全 面 的 使 用 禁 止 措 置 を 執 る こ とが 必 要 で あ る。 な お,ク エ ン 醜 の 如 き 生 体 内 成 分 で あ る物 質 は,西 独 で は 食 品 添 加 物 と し て み な し て い な い 。 こ の よ うに 食 品 添 加 物 を 検 討 す る に 際 し て;生 体 内 成 分 で あ る も の は,成 分 規 格 が 充 分 満 足 す べ き も の で あ り,使 用 量 も適 正 で あ れ ば,安 全 性 は 極 め て 高 い と 考 え て よ い で あ ろ

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 110 う。   (2)変 異 原 性 一 食 品添 加 物 の毒 性 試 験 と して は,急 性 ・亜 急 性 ・慢 性 毒 性 を は じめ,発 癌 試 験,妊 娠 動 物 に 被 検 物 質 を 投 与 す る こ とに よ る奇 形 の発 生 を調 べ る催 奇 形 試 験,次 世 代 に 及 ぼ す 影 響 を 調 査 す る次 世 代試 験,そ の ほ か ア レル ギ ー を調 査 す る特 殊 毒 性 試 験 を 含 め 多 様 な 方 法 が 採 用 せ られ ,毒 性試験 の体系 が ほ ぼ確 立 され るか に み えた 。 しか しな が ら,放 射 能 の み な らず 化学 物 質 の 中 に 変 異 原 性 の あ る こ とが 重 要 視 され,1969年,ア メ リカに 環 境 変 異 原 学 会(En-vironmental Mutagen Society-EMS)が 設 立 され,続 い て1970年 に は ヨー ロ ッパ に お い て,1972年 には わ が 国に おい て,1973年 に は 国 際EMSの 設 立 を見 る に 至 っ た。 わが 国に おい て実 施 され た ニ トロフ ラ ン誘 導 体 の 一 連 の 研 究 に お い て, 外 村 晶 らはAF-2が 強 い突 然 変 異 性 を 有 す る こ とを 認 め,食 品 衛 生 調 査 会 に お け るAF-2の 変 異 原 性 の 審 議 との 関連 に お い て,「 食 品 添 加 物 な どの 遺 伝 的 安 全 性 評 価 の基 準(案)」 な らび に 「実 施 要 領(案)」 が 作 成 され た。  「発 癌 や 奇 形 は そ の障 害 の認 識 は 容易 で あ るが,早 くて 子 の 代(優 性 突 然 変 異 の 場 合 も し くは 伴性 劣 性 突 然 変 異 の あ る組 合 わ せ の 場 合),多 くは 劣 性 突 然 変 異 に よ る も の な の で,数 代 以 後 の世 代 に な って あ らわ れ て くるた め,障 害 の 発 生 を 実 感 を も って認 識 す る こ とが む ず か しい,あ るい は 不 可 能 と言 った 方 が 正 しい か も         知 れ な い」 とい われ てい る。 さ らに 突 然 変 異 を 誘 起 す る要 因 と して,放 射 線 よ り も環 境 中 に存 在 す る化 学 物 質 の寄 与 が は るか に 大 で あ る と され てい る点,ま た,遺 伝 的影 響 に関 して は 閾値 は考 え られ ない こと。 最:近の研 究 に よれ ば 変 異 原 性 を 有 す る もの は発 癌 性 を有 す る こ とが 識 られ,今 後 の添 加 物 の安 全 性 を 考 慮 す る場 合 に は,極 め て 重要 な 因 子 に な る と考 え られ る。 現 在 使 用 され て い る 食 品 添 加 物 に お い て は,亜 硝 酸塩(発 色剤)が 酸 性 条 件 で生 成 す る亜 硝 酸 に 強 い 変 異 原 性 の あ る こ とが 知 られ,亜 硫 酸水 素 ナ ト リウム(漂 白剤)がE.coli や バ ク テ リオ フ ァー ジ に 対 して 突 然 変異 誘 発 性 を 示 し,さ らに は 過 酸 化 水 素 (殺 菌 料)の 微 生 物 に 対 す る突 然 変 異 作用 が報 告 され,ま た,染 色体 異 常 を起 (8)田 島弥 太 郎=公 害 研究3,37(1974)

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      食 品添加物規制の動 向と消費者の対応   111         こす こ と も識 られ てい る。 研 究 の推 移 に よ って は,変 異原 性 を有 す る物 質 は 更 に 増 加 す る と思 われ,こ の点 か らも食 品 添 加 物 の 使 用 は慎 重 を 要 し,い や し く も企 業 の 営利 性 の 追究 に基 づ くも の で あ って は な らな い とい え よ う。   (3)食 品成 分 との反 応一 プ レス ハ ム な どで 成 分 の第 二 ア ミンが,発 色剤 と し て 添 加 され た 亜 硝 酸 ナ ト リウム と反 応 し,ニ トロ ソア ミンを 生 成 す る例 な どが あ る。 ニ トロ ソア ミンの生 成 速 度 は通 常 の食 品 中 で は 遅 い が,ヒ トの 胃腔 の 如 く酸 性 条 件 下 で は 速 い の で,と くに食 べ 合 わ せ の問 題 と して 社 会 問 題 化 して い る。 この 為 わ が 国 で は 畜 肉 ハ ム ・ソー セ ー ジ に亜 硝 酸 ナ トリ ウムを 硝 酸 根 と し て70ppmま で 認 め て い るが,社 団 法 人 日本 食 肉加 工 協 会 及 び 日本 ハ ム ・ソ ー セ ー ジ工 業 協 同 組 合 で はす で に50ppmの 自主 規 制 を行 な って い る。 又,ノ ール ウ エ ーで は1973年1月 以 来,ポ ー ク ソー セ ー ジ な どへ の 使 用 を 禁 止 した。   (4)表 示一 消 費者 の購 買選 択 の便 を 図 るた めに 現 在,着 色 料 ・発 色 剤 ・漂 白 剤 ・甘 味 料 ・保 存 料 ・酸 化 防 止 剤 ・殺 菌 料 ・糊 料 及 び発 酵 調 整 剤 に,用 途 別 又 は 品 名 の 表 示 義 務 が あ るが,毒 性 の 点 で 問題 の あ る品 目を 有 す る着 色 料 ・保 存 料 ・酸 化 防 止 剤 な どに つ い て は 品 名 を 明記 す べ き もの で あ る と考 え られ る。 現 状 で は,食 用 赤 色104号 使 用 の 食 品 を 回避 し よ う と して も,消 費 者 は そ の術 を 知 らぬ 状 況 に お か れ て い る。 また,指 定 削除 を受 け,適 用 直 後 に な お市 場 に 流 通 す る食 品 添 加 物 の食 品 衛 生 法 違 反 の 事 例 が 多 い が,そ の 防止 に も有 効 で あ る と考 え られ る。 さ らに 全 国 各 地 の 消 費生 活 セ ン ター に おい て は,食 品 ・医 薬 品 に使 用 され て い る着 色 料 の 鑑 定 に 多 大 の 労 力 を費 して い るが,そ の労 力 の大 部 分 を,'よ り重 要 な 商 品 テス トの 分 野 に 転換 す る こ とが可 能 で あ ろ う。   ⑤   効 果 の 点 検 と新 な 使 用方 法 の 開 拓一 食 品添 加 物 は本 来 安 全 性 と必 要 性 と が 確 認 され て か ら使 用 す べ き もの で あ るが,毒 性 試 験 技 術 の進 歩 に よ り,当 初 安 全 と認 め られ た 品 目に 安 全 性 に 対 す る疑惑 が 生 じた り,添 加 物 の使 用 効 果 が 明確 で な い も の も あ り,従 って,前 者 に対 す る措 置 と して は 当該 品 目の量 的 規 制 又 は代 替 品 目の 開 発,後 者 に 対 す る措 置 と して は 使用 効 果 の確 認 と,使 用 効 {9)岩 原 繁 雄:食 衛 誌15 ,417(1974)

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 112 果 を 高 め る手 段 の 開 発 が 要 請 され る。 この観 点 に 基 づ き,農 林 省 で は昭 和46年 度 か ら3か 年 計 画 で 「食 品 添 加 物 の 適 正 使用 法 に 関 す る研 究」 の 事業 を実 施 し た 。 そ の 概 要 を 第4表 に 示 す 。 食 品添加物の適正使用法に関する研究の概要(農 林省) 第4衷 担 当 場 所 部 室 画 計 次 年 48 47 46 研 究 項 目 食総研応用微生物 部 食総研応用微生物 部 畜試加工部 食総研応用微生物 部 東海区水研保蔵 部 食総研応用微生物 部 食総研応 用微生物 綿 密試加工 部,千 葉大 腐敗研究所 東京農試 食総研分析栄養 部 食総研食品流通 部, 分析栄養部 畜試加工 部 食総研食品流通 部 畜産加工 部 食総研食 品理化学部 東海区水研利用部 乳 製 品 み そ ・あ ん 水 産 食 品 調 味 波 食 肉 製 品

食 類     食 類    食 頬 嚢 脂   ・装 脂    装 脂 包 油     包 油     包 油 環境条件の お よぼす影 響 乳 酸 飲 料 み     そ 水 産 食 品 し ょ う ゆ 豆 腐 ・あ ん 食 肉 製 品 へ 賞 品 響 品 形 食 の ・   品 ・   品 ・ 品      品      品 食 類 製 造 類 型 食 額 装 脂     装 脂    装 脂 包 油 乳 包 油 乳 包 油 水産食品へ の適正使用 条 件の決定急 性毒性 の 評価 ン . !、 乳 製 品 み そ 水 産 食 品 豆    腐 食 肉 製 品 へ 質 品 響 品 影 食 の 食 品 ・包装 乳 製 品 包 装 食 品 乳 製 品 油 分 の び 性 的 , の 果 ら 毒 備 泊 り 効 な 性 予 力 よ ,討 急 価 討 ヌ 津 離 検 に 評 検     ロ ム 保 の プ ウ デ そ       シ 1  保 存 料 の使 用 法 と そ の 代 替手 段 1)  プ ロ ピオ ン酸 カル ②   デ ヒ ドロ酢 酸 お よ   び そ の塩 類 (3) ソル ビン駿 才 ル   と   ド ラ チ   法   イ パ ﹂ブ   用   マ ,酸   使 段 ラ 酸 香   の 手 フ 香 息 ル 、 料 替 ル 息 安 テ 菌 代 リ 安 シ ス 殺 の フ   キ エ   そ 4          2      ・⊥ ②  過酸化水素 3  酸 化 防 止剤 の 使用 法 と代 替 手 段 1) ブ チ ル ヒ ドロキ シ   トル エ ン(BHT) (2)  ブ チ ル ヒ ド ロ キ シ   ア ニ ソ ー ル(BHA) (3)  ト コ フ ェ ロ ー ル (4)天 然 抗 酸 化剤 の開   発

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113 食品添加物規制の動向 と消費者の対応 担 当 場 所 部 室 画 計 次 48 47 年 46 日 項 究 研 食総研分析栄養部 食総研分析栄養 部 食総研分析栄養部 食 総研新庄支所 畜試 加工部,東 京都 農 業試験場 愛媛県総合化学指沸 所 東海区水研保蔵部, 生物化学 部 食総研穀類貯蔵加工 部 ,応 用微生物 部 食 総研食品流通部 食総研食 品理化学部 食総研新庄支所 東 海区水研利用部 食 品中の残 留亜硫酸の 動 向 法 用 利 野菜加工品 の 酸 使 品 ン 正 製 リ 適 件 り 合 の 条 ね 重 臨 月 パ ) の 性     の ( む 料 特     性 粉 含 糊 の     特 麦 を 種 用     工 討 小 ン 各 利     加 検 品 も     の 工 け   準 加 つ   基 実 産   価 定 果 農 の 評 決 残 の       般 索

食 留 動     食 検 も    品 粥 製 産 額 肉 農 の 食 品   上 製 乳   同 小 麦 粉(パ ンを含 む) 各 種糊 料 の 利 用 の特 性 加工特性 の 検討 ,も   水 蓄 成 す 詰 け     の の び ぼ 缶 つ   物 へ よ 及 実 産   加 物 お に 響 築 磯 の 海 産 横 長 影 食 品 全 般 も     品 粥 製 産 類 肉 農 の 食 肉 ジ 重 症 然 分 負 一 の の 天 の , セ 中 塩 と 量 卵 一 料 酸 法 有 無 ソ 原 硝 最 合 析 白剤の食品中の 硫 酸 お よび そ の 漂 動 亜   挙   塩 4     D     開 法     の 用 素 素 使 色 色 の 系 然 料 ル 天 色 一 替 用 着       発 PD   1   2 ,銅,ク 口 回 フ ン ーNa 色 剤 の 適 正 使 用 タ 代 利 銭 リ 発         イ   法       0 ◎       4 心 品質改良剤 6 小麦粉改良剤 料 糊 7       8 9  甘 味 料 1)糖 ア ル コ ール(ソ ル ビ ヅ ト,キ シ リッ   トな ど) 2)代 替 天 然 甘 味 料 の 開発 利 用 10 養魚飼料添加物 (出典)農 林水産技術会議事務局:昭 和47年度特別 研究 ・別枠研究成果 の概要  表 に よ り明 らか な如 く,保 存 料 ・殺 菌 料 ・酸 化 防 止 剤 ・漂 白剤 ・着 色 料 ・発 色剤 ・糊 料 ・甘 味 料 を対 象 と して,適 正 な 使 用 条 件 ・代 替 的 手 段 の 解 明 に つ い       ゆゆ て検 討 が 行 なわ れ た 。 そ の 一 例 を 示 せ ば,食 肉 製 品 に対 す る発 色 剤 の効 果 と し

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114 て は,食 肉加 工 品 を10。Cに2∼3週 間 保 存 し,種 々 の 発 色助 剤 の 発 色効 果 を 検 討 した 結果,硝 酸 カ リウ ム ・ニ コチ ン 酸 ア ミ ド ・リジ ン の 効 果 は 期 待 し得 ず,ア ス コル ビ ン酸 ナ ト リウム とニ コチ ン酸 ア ミ ドの 同 時 併 用 が 有 効 で あ る こ とを認 め て い る。 そ して今 後 の問 題 点 と して,亜 硝 酸 ナ トリウ ムの 使用 量 を抑 制 し,天 然 着 色料 を併 用 す る こ とな どが 指 摘 され て い る。   ⑥  使用 実 態 の 調査 と必 要 性 の点 検 一 使 用 実 態 の 調 査 は す で に 科学 技 術 庁 に よ って な され て い る が,近 年 の加 工 技 術 ・保 存 技 術 の 進 歩(真 空 パ ック等 包装 技 術 の革 新,冷 凍 保 存 設 備 の普 及 な ど)に よ って,添 加 物 の 必要 性 も変 化 して きて い る。 この よ うに技 術 進 歩 の著 しい 昨 今 に おい て は,つ ね に 確 実 な使 用 実 態 を 把 握 す る こ とが必 要 で あ る。 厚 生 省で は本 年 度 か ら食 品 添 加 物 使用 基 準 再 点 検5カ 年 計画 を実 施 した。 これ は使 用 実 態 の調 査 及 び 必 要 性 ・有 効 性 の 試験       ゆ を実 施 し,使 用 基 準 の再 点検 を行 な う もの とされ て い る。対 象 の 食 品添 加 物 は 保 存 料 ・殺 菌料 ・酸 化 防 止剤 ・漂 白剤 に含 まれ る37品 目,対 象 食 品 は67食 品 で あ る。 これ を第5表 に示 す 。 調 査 内容 は 国 立 衛 生 試 験 所 に お い て 実 施 され る有       第5表   食品添加物使用基準再点検5カ 年計画 の概要(厚 生 省) 対 象 食 品 添 加 物 保 存 料 殺 菌 料 安 息 香 酸,安 息 香 酸 ナ ト リ ウ ム サ リ チ ル 酸 ジ フ ェ ニ ル ソ ル ビ ン 酸,ソ ル ビ ン酸 カ リ ウ ム デ ヒ ド ロ酢 酸,デ ヒ ド ロ酢 酸 ナ ト リ ウ ム パ ラ オ キ シ 安 息 香 酸 エ ス テ ル 類 プ ロ ピ オ ン 酸 カ ル シ ウ ム,プ ロ ピ オ ン酸 ナ ト リ ウ ム ラ ウ リ ル ト リ メ チ ル ア ン モ ニ ウ ムー2,4,5.一 ト リ ク ロ ル フ ェ ノ キ サ イ ド 過 酸 化 水 素 高 度 サ ラ シ 粉,サ ラ シ粉 次 亜 塩 素 酸,次 亜 塩 素 酸 ナ ト リ ウ ム 2一(2一フ リ ル)一3一(5一ニ ト ロー2一フ リル)ア ク リ ル 酸 ア ミ ド 対 象 食 品 キ ャ ビア等 清     酒 レ モ ン 等 み そ,漬 物 等 チ ー ズ 等 し ょ う油等 パ ソ,洋 菓 子 等 ミ  カ  ン う ど ん 等 魚 肉 ハ ム ・ ソ ー セ ー ジ,豆 腐 等 Oo)農 林 水産 技 術 会 議 事 務局:昭 和47年 度 特 別 研 究 ・別 枠 研 究 成果 の概 要PP,56一 一60   (1973) (鶏 宮 沢香,石 井 甲一:食 品工 業9月 号,PP.97-99(1974)

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食品添加物規 制の動向 と消費者 の対応  115 対   象   食   品   添   加   物 酸 化 防 止 剤 漂 白 剤 エ リ ソ ル ビ ン 酸,エ リ ソ ル ビ ン 酸 ナ ト リ ウ ム dl一α一 トコ フ ェ ロ ー ル(ビ タ ミンE) グ ア ヤ ク 脂,ノ ル ジ ヒ ドロ グ ア ヤ レチ ッ ク 酸 L一 シ ス テ イ ン塩:酸 塩 ジ ブ チ ル ヒ ド ロ キ シ トル エ ン フ チ ル ヒ ド ロ キ シ ア ニ ソ ー ル 没 食 子 酸 プ ロ.ピル 亜 塩素 酸 ナ トリウ ム 亜 硫酸 水 素 ナ トリ ウム,亜 硫 酸 水素 ナ トリウ ム液 亜 硫 酸 ナ ト リウム(結 晶)・ 亜 硫 酸 ナ ト リウム(無 水) 次 亜 硫酸 ナ トリウ ム 無 水亜 硫 酸 メ タ重:亜硫 酸 カ リウ ム 対 象 食 品 池 月旨,バ タ ー パ ン,天 然 果 汁 魚 介 冷 凍 品 チ ュ ー イ ン ガ ム 等 油 月旨,!ミ タ 「 さ く らん ぼ 等 か ん び ょ う 干 しア ンズ ブ ドウ酒 等 対   象   食   品 ソ コ ︻ ベ ソ ジ 一 一 七 七 ﹂ 一 ソ ソ ○     ・ ム ム 八 八 肉 肉 食 魚 魚 肉練 り製 品(か まぼ こ,ち くわ は んぺ ん,揚 げ物) 清 涼 飲 料 水,し ょ う油 み そ,あ ん類 チ ー ズ,バ タ ー,マ ー ガ リ ン 豆'  腐 対 象 食 品 添 加 物 2一(2一フ リル)一3一(5一ニ ト ロー2一フ リル)ア ク リ ル 酸 ア ミ ド(AF-2) 亜 硝 酸 ナ ト リ ウ ム ソ ル ビ ン 酸 ソ ル ビ ン 酸 カ リ ウ ム       ム    . ウ       リ       カ   素 酸 酸   水 ン ン   ヒ ビ ビ   イ P 酸 ル ル A 過 ソ ソ 安 息香 酸 安 息香 酸 ナ トリウ ム パ ラオ キ シ安 息 香 酸 エ ス テル(5品 目) ソ ル ビ ン 酸 ソ ル ビ ン 酸 カ リ ウ ム デ ヒ ドロ酢 酸 デ ヒ ドロ酢酸 ナ トリウ ム 酸 化 防 止剤 ト フ ロ ンノ (AF-2)

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  116 効 性 及 び 必 要 量 の 再 点 検 試 験 と食 品 衛 生 監視 員 に よ る食 品製 造 所 の使 用 実 態 調 査 の 二 つ か ら成 る。 後 者 の 調 査項 目は 次 の通 りで あ る。1.製 造 所 の名 称2.対 象 食 品 名  3.製 造 所 所 在地 の都 市形 態  4.流 通 形 態(製 造 直 販,卸 等 の 別) 5.流 通 期 間  6.従 業 員 数:7.月 間生 産 量  8.製 造 方 法  以 下 は各 対 象 食 品 の製 造 業 別 に行 なわ れ る。9.対 象 添 加 物 の 使用 の 有無   10.使 用 量  11.使 用 し て い る理 由(流 通形 態 上,食 中毒 防止 のた め 等)  12.使 用 して い な い 理 由お よび 止 め た 理 由(消 費者 の要 望,売 れ 行 きが 悪 くな る,必 要 が ない,安 全 性 に 問題 が あ る等)   この実 態 調 査 は必 要 性 に関 す る再 点 検 で あ り,厚:生 省 の 目的 とす る使 用 基 準 再 点 検 の重 要 な資 料 と な る こ とが 期 待 され て い る。 (7)そ の他一 的 確 な 消 費 者 情 報 の 提 供,研 究 体 制 の 整 備 ・拡 充 な どの問 題 が あ る。 7  食 品添加物 の分類   す で に 述 べ た よ うに 米 国 に お い て は,広 義 の食 品添 加 物 はGRAS物 質(広 義)と 食 品添 加 物(狭 義)と か ら成 立 し,GRAS物 質 が 用 途 別 分 類 に な って い る関 係 上,同 一 品 目の ものが 二 重 指 定 され る例 が あ る こ とは も と よ り,GR AS物 質 が狭 義 の食 品添 加 物 に も指 定 され るな どの 例 が認 め られ 複 雑 で あ る。 この 点,わ が 国 に おい て は食 品 添 加 物 の リス トは 整 備 され て お り,年 々 の厚 生 白書 に お い ては 品 目の実 数 が 記 載 され て い るほ か 整 備 され た食 品 添 加物 公 定 書 が 存 在 し てい る。   現 在,法 令 で 指 定 され て い る食 品 添 加 物 は336品 目で あ り,こ れ らは 使 用 目 的 に よっ て着 色 料 ・着 香 料 ・漂 白 剤 ・発 色剤 な ど25種 に分 類 され る が,安 全 性 の 観 点 か らの 分 類 と して 次 の もの が あ る。(1)栄養 強 化 剤 ・調 味 料 な どの よ うに 問 題 の少 ない もの  (2)保存 料 ・殺 菌 料 ・酸 化 防止 剤 な どの よ うに 注 意 を 要 す る もの  (3)着色 料 ・着 香 料 な どの よ うに上 記(1)および(2)にまた が る もの の 三 つ に 大 別 す る こ とが で きる との分 類 で あ る。 しか し,こ れ を 考 え るに 保 存 料 と して ⑫   科 学 技 術庁 資 源 調 査会 編;食:品 添加 物 の現 状 と問 題 点PP.16-17(1969)

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      食:品添加物規制 の動向 と消費者 の対応   117 広 く使用 され て い る ソル ビ ン酸 は,体 内 で代 謝 され 炭 酸 ガ ス と水1こな り,.種 々 の毒 性 研 究 の結 果 極 めて 安 全 性 が 高 い と され て お り,同 じ保 存 籾 の サ リチ ル 酸,デ ヒ ドロ酢 酸 とは 異 に し,酸 化 防 止 剤 で は"一 α一トゴ フ 出 戸」ル は 安 全 性 が 高 く,BHTは 毒 性 の点 で 問 題 に な って い るな ど安 全 性 の 視 点 か らの 分類 は 用 途 別 分 類 で な く,品 目別 に 行 なわ な け れ ば な らな い と考 え られ る。 安 全 性 の 視 点 と消 費 者 動 向 とを 考 慮 して の 食:品添 加 物 分 類 例 を 一 つ の 試 論 として 掲 げ るo

・一

難 灘 薫1灘 ぴ ト

一 驚 難欝i欝 鮨

  消 費 者 の立 場 に よ り何 が 安 全 性 が 高 い か に 関 して は若 干 異 論 も あ り,消 費 者 の 一 部 に(1)に分 類 した もの に も禁 止 運 動 が 展 開 され て い る の は この為 で あ る。 何 れ に して も消 費者 が正 しい理 解 の うえ で運 動 をす す め てい るか が問 われ なけ れ ば な らな い。 な お1973年 開 催 され たFAO・WHO食 品 添 加 物 に関 す る専 門 家 委 員 会 に おい て,亜 硝酸 塩 や 硝 酸 塩 は適 当 な代 替 品 が な い 以 上,Clostridium botulinumの よ うな毒 素 産 生 菌 の抑 制 に 現 段 階 で は 必 要 で あ る こ とが 承 認 され てい る ので 表 記 の よ うに 分 類 した 。 消 費 者 運 動 と して 現 在 各 地 で 「無 添 加 ハ ム 運 動 」一 発 色剤(亜 硝 酸 塩)・ 着 色 料 な どを 使用 しな い ハ ムー の購 買活 動 を拡 げ る運 動 が 展 開 され,そ れ な りに 価 値 を有 して い るが,亜 硝 酸 塩 は硝 酸 塩 含 量 の 高 い 野 菜 を 噛 ん で い る と きに,舌 背 後半 部 の表 面組 織 に よ り秒 単 位 で急 速 に生 成 され る こ と,硝 酸 塩 含 量 の 高 い食 品 を食 して後,1∼2時 間 で 唾 液 中 の 亜 硝 酸 塩 量 が 著 し く増 加 す る こ と,一 夜 漬 に は条 件 に よって は 亜 硝 酸 塩 の 生 成 が 多 量 に認 め られ る こ とな どカミ報 告 され てい る こ とか ら,食 品 添 加 物 の 安 全性 に 関 す る論 議 は,さ らに広 い視 野 に立 って 行 な う必 要 が あ り,す べ て 食 品添 加 物 の

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禁 止 を希 求す る消 費 者 運 動 は,真 に 科 学 性 に 立脚 した もの で な けれ ば な1うな い こ とを,消 葺者 一 般 ㊧食 品添 加 物 に 関 す る意 識 が 高 い だ け に一 層強 調 し なけ れ ば な らな い と考 え られ る。

参照

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