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小売業者のリスク管理と選択的マーケティングチャネルの構築

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(1)論  説.      小売業者のリスク管理と. 選択的マーケティングチャネルci)構築. 松  井  建  二、. 1.はじめに  我が国ではいくつか¢)業種において,製造業者が主導権をとり選択的なマーケティング・チャネ. ルの形成を推進する傾向が強い.ζれは家電,自動車など特に買い回り品の分野を中心として多岐 の業種にわたる.本論文では製造業者・小売業者間のプリンシパル・エージェント困係を想定した 上で,小売店の販売促進活動へのインセンティブを高めるために,固定的な利益を予め製造業者が 、小売店に保証する契約を提供する状況を想定し,この下で選択的なマごケティングチャネルが形成. されることを説明づける一t結論としてiこの契約の下では小売店がリスク回避的に行動する程度が 低いと,販売促進へのモラル低下を防ぐために,製造業者はチャネルをより閉鎖的に設定し,少数 ρ小売業者による効率的な販売促進を行うことが明らかとなる.  製造業者・小売業者間の流通契約をエージェンシー理論の観点からモデル化した先行研究はいく つか存在する.典型的には例えば製造業者が,販売業務の役割を果tcす小売業を垂直統合するか, あるいは分離するか,どちらの意思決定を行うかの分析がこれまでなされてきた.これはエージェ ンシー理論の応用的研究として,組織の境界を議論したHolmstrom and Milgro皿(1994)の概念が. 主にそれらの研究に用いられているためである.組織の分割に関する意思決定の研究は流週の分野 では,製造業者・小売の分離・統合問題に応用することが可能である.一例としてLafontaine −artd Slade、(1996)はb}製造業者と小売店間のラランチャイズ料を伴う線形i契約をモデルとして構築し,. 結論として製造業者側は,販売量に基づいて小売店の販売促進に対する努力水準をモニタリングす る事が容易な場合は,販売額に応じた従量的な報酬分を増大させることを示している.このように 従量的な報酬部分が増大することは,製造業者が小売の機能を分離することを意昧する1).これに対. し,本論文は単にそうした統合・分離という二者択一的な問題ではなく,小売業者のリスク回避的 行動が,マーケティングチャネルの開放度にどの様な影響を与えるかを理論的に明らかにするもの である.通常,企業に対してはリスク中立者を仮定するのが一般的であるが,我が国の流週機構を. 念頭に置いた場合;従業員1∼2人規摸の自営の小売店が総店舗数の約半数存在し,諸外国と比べ ’比率が高い.これら零細店はリスク負担能力が低い経済主体として把握される.したがって小売店 のリスク回避的行動が,どのように製造業者のマーケティングチャネルの構築に関する行動を規定 するかを分析することは,我が国では重要な課題となる.従来,選択的なマーケティングチャネル は,特定の製造業者が小売店た対して行う関係特殊的な投資をP”他の製造業者によリフリーライド.

(2) 180 (342). 横浜経営研究 第26巻 第2号(2005). されないようにするための防止策とLて説明されるか(成生(1994)’),あるいは製造業者間の競争. が発生するとき,その中の特定の製造業者が小売業者に価格支配力を持たせることにより利得を増 大させるための戦略として説明されてきた(丸山(1992)).しかし選択的なチャネルを形成するこ との製造業者にとってのもう1つの大きなメリットは,小売店が自,らの製品を載極的に販売促進す. るように仕向けるために有効な,誘因メカニズムとなるという点にある.我が国における家電製品 の連盟店制はそのような例として挙げることができる(新飯田・三島(1991’))2).現在までこのよう. なエージェンシー理論,特に製造業者・小売業者間の異時点にまたがる動学的な契約の締結という 視点から,選択的なマーケティングチャネルが構築されることを説明する理論モデルはあまり見受 けられないことを考慮し,本稿はこの分野における基礎的な理論研究となることを目指した..  論文の構成は以下のとおりである.2節で契約モデルの仮定を設け,次にメーカー・小売業者摺 の契約の定式化を行い,重要な含意を灘く.最後に3節で結論の要約を行い,拡張の可能性を探る..                    2.モデル  本節では製造業者・小売間の契約に関するモデル化を行うが,それに先立ちモデルの仮定を提示 する.離散的な捌間が無限に続く状況下で,特定め財を製造する製造業者が存在する.またこの財 を取り扱うことのできる同質的な小売業者が[O,。。)に密度1で分布している.‘製造業者は第t期首 に小売店]▽,店1と契約し,財を卸すことが可能である.ただし,1店と契約するのに一・・一;diあたり・cだ. けのコストが必要とされる.これは販売促進のための商品知識め習得など,小売店に対してL一定の. 投資を行う必要があるがらである.次に隈界費用0で財を生産し,瓦のうちNtだけの小売店に財 を卸し,取引することを決定する.ここではある程度の広がりを持つ空間に消費者が一様に分布し ている状況を想定するため,製造業者は複数の小売業者を介して販売する方が費用を減少させるこ とができ,効率的である.しかしN,が増大すると,小売店聞のベル1トラン競争が生じることにより 財価格p,が低下するものと考える.よっで財価格はp,(N,)と表され,次の条件を満たす. d(P、(N,)’Ni)t.dNt>ei d;IV,(N,}N,ンdN,2<o(1).  また,単純化のために,卸売業の存在は考慮せず,製造業者は小売店に直接財を卸す状況を想定. する.                       1  次に小売店は第輻期に製造業者と取引を行う店と,取引から排除されている店の2種類が存在す るものとする.現在取引を行っている小売店iは,第t期の販売促進に対する努力水準elを決定す る.また小売店iの販売量司はel’のみに依存する亘 elは非負の連続的な値を取り,召1は次のよう’. に決定される.             .    ’  ” 召1−=εr’・{e: . (2). ε:剛に対す繰法的なノばを表L一定の麟分馴綱(εi)と,綱密度酬刀(副 を持ち,[O,。o)の範囲で分布する.かつ,この分布は小売店間で対称であり,時間を適して不変で. ある.すなわち,すべてのi,tに対して次が成立する. 巧」闇=禍瑞)・・f(e),E(・1}−1, V・・(ef)一σ2.

(3) 小売業者のリスク管理と1選択的マーケティングチャネルの構築(松井建二). (329) ]81. 以上は饗業瀞小売醗方に繍された鰯である・ただレ略・1渇の3変数において蹴 量glのみが鍵業者側が期末に観察可能である.  次に小売店のリスク回避行動を導入する.これは小売店のり.スク回避行動がチャネルの形成にど のような影響をもたらすかを見るこ.とが本論文の第1の目的であるためである.そこでユ期あたり. の小売店の効用蹴ヅに端対的危険嚥度一定の効用臓を採肌, >kのよう}こ表す.                ぴb∼の=一・xp [一 R(yi−c(・り)](3)  ・.  各々の文字の意味は以下のとおりである.まずRは小売店のリスク係数を表し,すべでの小売店 で同一である.yiは小売店iが製造業者の財を販売することにより得られる利得, C(bi)は財の販. 売に対する努力インセンティブを発揮することによる不効用関数であり,e’iに対し凸性を満たL, かロC’ i0)=0を満たすものとする..  ここでは先に述べたとおり,製造業者は取引を行う小売店に対して,販売額p、(N,)・ロtに依存す. る従量的な報酬ではなく,予め固定的に支払う報酬y,のみ決定するものと仮定する.このような契. 約のもとでは小売店は販売促進活動に関するモラル低下,すなわちeiの減少を起こす可能性がある から,これを防ぐモニタリングのメカニズムとして製造業者は当期の販売実績が相対的に悪かった 小売店との取引は次期には行わないものとする.これが小売店への脅威となり,販売努力を高める ことになる.他方,取引停止申の小売店はすべて対称的であり,次期に製造業者と取引を再開する 確率は一定の値aをとると仮定する軌この契約でぱ製造業者は唯一観察可能な変i数q、1から,小売                                        t 店が販売の努力を十分に行ったかどうかを各期で検定せねばならない.そこで,製造業者側が設定 したと皇いう閾値を¢一が下回っている小売店が取引停止さtz.るというルールを採用する.このもと で}小売店iの取引停止確率の定義を以下に行う、elの確率密度閲数・分布関数が各々f(ε),F(ε). であるから(2)式より,                 f(ε)= f(q /’e),F(ε)= F.(9 / e)     ・. である・分布関数Fの9に9を代入したものが取引停止確率となるから,これはF(皇ノのと表され・ る.∂F/∂召く0であるため,販売促進への努力を多く提供するほどこの確率は減少する..  以上.の仮定をもとに具体的に契約を定式化する.まず小売店の効用最大化簡題から考えるが,こ こでは異1時点間にまたがる取引契約を想定しているため,小売店の動学的な資産方程式を立てたう. えで契約への参加条件を導く必要がある.第t期に取引を行っている小売店の,将来の期待総効用. の割引現在価値をVE,,また取引停止状態にある小売店の,将来の期待総効用の割引現在価値を γび,と表す.以下ではあ1くまで代表的な小売店の問題を記述するため,小売店を表す上付き文宇を 省略する.これによりVE,,およびJITUtは次のように表される..       VE・=「≒←expLR(J・,−c剛+。−F転∫幅+帷1繊.」(4). 町=. g(−1 癌・+1+(1 一 ・)」・u,・・ )(5).

(4) 撹t浜経営研f究  第26巻  第2号 (2005). 182 (344). ρは効用の割引率を意味する.以上の定式化をもとに,現在取引している小売店はVE,をetに関 して最大化する.また,以下では計算の簡単化のためi新たにPiを次のように定義する. ・Pr≡γE,一ア聾. Ptは(4),(15)式より次のように計算される.直.                                  … “  Rt−「iρo−・xp剛コc(司)】+(1一蝿ノe・ ))iP,.1)(6).  VU,はetより独立であるため, VEiを現在のetに関’して最大化することは,島をetに関して最大化. することと同値である.したがって以下ではP,をetに関して最大化する.この一階条件∂Pt/∂et=0. を(6)式より計算L,それをytについて整理すると,次のように簡明な形で表せる..              Vt−c](e,)+:転鵜駕司(7).  (7)式が小売店の努力水2E etと,これを発揮させるために必要な報酬アtの対応関係を示した誘 因条件である.(7)式を(6)式へ代入することにより,P,の動学方程式が得られる..            誌〔1三ピ姻畿!司{8)  製造業者側は小売店の反応である(7)式を予測して期首に取引報酬y∫と、期末に取引を継続す る小売店数W,を設定する.したがって次に(7)式を用い,製造業者の動学的利潤最大化を考える.. 第t期首における製造業者の,将来の期待総利潤の割引現在価値を阻,とすると,これは以下のよ うに書かれる..          臓虞(1+卿瞭鱈・di)−」…碗](9)    一Σ(1”+ρ)一回((且(呪〉¢.一ッ、)呪一c呪)  」=’.  この動学的利潤最大化問題において,etの系列を(7)式を用いて先に消去して.ytを制御変数と して価値関数を最大化するのが通常の動的最大化問題の解法であるが,ytの系列を先1に消去してei を制御変1数として最大化する方が解析的にはより明快に解が得られるために・先にγ、を消去するこ とにするS}.・さらに(7),(9)式においては,qtが数式中において単独で出てくることはなく, 必ず亨、栖の懇み合わせの形で表れるために, Ar≡召,/er.

(5)         小売業者のリスク管理と選択的マーケティングチャネルの構築(松井建二)   ’( 345 )’183. と置き換えて,メーカーはq,の代わ.りにA,を制御変数として解いても問題ばない.、したがって,. 、以下では史を消去し,Atで代替して表す. 、                 一  、’まず,第t期におiけるメ・・一・力三の,’将来の期待総利潤の割引i現在価値を,(9)式に(7)式を代. 入し(,y−tの系列を消去すること1にタり・,表記することができる.      一.       一一誓。+ρ丁回〔∈)・el−c(e・)−F’ in〔隷 〕〕國(・・)ρ・.   これは確実性下における動的最大化問題であるから,最適制御理論における最大値原’理を用いて メーカーの利潤最大化問題を解ぐ.(ユ0)式よりハミルトニアンは次のように書かれる一f. 唖ρ)rt. m〔P’岡 c(et) ’一 i−li・ in〔藷…字緋一小威飾覗].(11).   状態変数N,’に関して次式が成立する.     ・                N,.1−(1−F(A,))呪+輌一晃),一(12).   なお第t期に取引することによる小売店:にとっての純資産価値P,は,定義より小売店側が前向き. に解くべき変数であり,メーカーが操作する状態変数ではないことに注意する必要がある.以上の 設定のもとで,3つの制御変数輪君,爾’に対する一階条件を書き下す..   ・    丑㈱一CT(et)一麦・謝六=・(13!.               (i+ρ鴫+欝〕一・’A・ ・ f(A・)一・(・4ジ.         、  ”二(1+ρ)−tc+・・λ,−0(15),.   また,λ,−At_r’ =∂H,/∂N,の条件より,N∫に関する動学方程式として次の式が成立する.. 一(己一A.t−E)=(i+ρ平)・ei−c酬罵…辮)〕+酬>et・N・〕一剛い}.   (め,(8)式および(12)∼(16)式の7本が最大値原理により得られる耀果であ鉱モ貢ル が閉じられる.このモデルに関していくつかの重要な命題が導かれるため,これを次にま.εめる・:.

(6) 184,({146). 横浜経営研究第26巻第2号(2005). 【命題11 定常状態では選択的マーケティングチャネルが設定される. 【言醐1こCでは定常状態が持続している状況を想定しているため,最大イ直原理により導か繊方. 程式体系に,例えばAt±At.1=…=オなどとして時商を表す下付き文字を肖‖除する.(14)式と (工5)式より,Aは他の状態変数から独立に決定されることが分かるため, A’は0ではない内点解を. 取る.これによりF(オ)>0となり,毎期一定数の小売店が取引停止される事が確認できる.  次に,取引店数1Vに閑する差分方程式として,(12)式が成立している.これより次式が成立する.                    ,     a    −. t’     ⊇ −  N=雨珂w. F(オ)>0であるから,上の式において取引小売店数N’は爾と等しくはない・このことは定常状 態で一部の契約店が取引を停止されており,選択的なチャネルが形成されていることを意味する. ■.  次にチャネルの開放1度は外生変数にどのように依存するかを探る.上に得られた方程式は非線1形 体系であり,このまま均衡を求めることは不可能なためいF(εr)を平均パラメーターO,分散パラメ ーターσ2の対数正規分布であると仮定し,次のように表す.. 哨1+E㎡[割  Erfは誤差関数を表す.σはeの標準偏差を表すから,モニタリングの難易度を示す指標として解 釈される.σ2が十分に小さければ分布の平均値は1に近似される・.このもとでまずリスク回避度R とチャネルの関係として,次の命題が成立する.. 【命題2】 ・丑が減少すると,オ,F(A’)はともに増大し, W玲壁は減少する.すなわち,小売店 のリズク回避的傾向が弱まるほど,閉鎖的1なチャネルが設定される. 【証明】. (14),(15)式より,次式が成立する..                据+鵠〕−c・∫ω/ ・. この左辺に一24σ呈を乗じたものをXと置くと,Xを全微分することにより,次式が得られる. 脳輌一砺・嫡卿←(inA)’ノ2・率吋ン』}治←21n A.IR2 taR. X=Oであるから,認当0とおくと, ・ 磁/dR−((2 /R−,疏・桓h・exp←輌)・12σ・ン・σ)砂(2・nA/k・).

(7) 小売業者のリスク管理と選択的マーケティングチャネルめ構築(松井建二). (347) 185. 図1 リスク回避度月の増i大に伴う誘因条件のシフト ア. t. …傘畷1・辮一ωi. fx’・一一. y= c(e). 小売業者のリスク面避度が高まるにつれて,誘因条件は右下方向へ推移していき,最終的には鍵型へと 収束する.製造業者が一定の報酬を支払う場合,』リスク回避度が低い方が取引を行う小売業者数Nは小 さくなり,チャネルはより閉鎖的となることが理解される.. が得られるが,ln A<0であるためdA/dR<0が成立する吐また, F(A)はAに関して単調増加 であるから,dF(A)/dR<0も成立する.ざらに,(12)式より,d(N’ 11Yf)/dR>0が成立する. したがって,リス’ク回避度が低下する’ほど,より閉鎖的なチャネルが形成きれる. ■.  この命題2は図1に即すると理解が容易である.小売店の誘因条件を示す(7)式は,図1の取 引小売業者数・報酬水準の閤係を示す平面上では,小売業者のリスク係数が低いときにより左上に .描かれるが,リスク係数が高まるにつれ右下ヘシフトし,リスク回避度が無限大へ発散するときに 鍵型へと収束することになる、製造業者が一・定の報酬yを支払う場合,リスグ回避度が低い方が取. 引を行う小売業者数Nは少なくなり,チャネルはより閉鎖的となることが理解される.このことは 小売店のリスク回避度が小さい状況下では,小売店は販売促進活動に対するモラル低下を起こす可 能性が高いため,製造業者はできるだけ専売店制に近い閉鎖的チャネルを構築し,効率的な販売促 進を行うことを意味する..  以上により小売業者のリスク回避度が低いと,製造業者は閉鎖的なチャネルを形成することがよ り利益を得るためにより有利となることが導かれたが,このような状況に対応する説明可能な分野 としては現実的にどのようなものが挙げられるであろうか.1つの例としては,家電製品が考えら れる.家電の分野では,メーカーは過去より連盟店制と呼ばれる自らの商品を重点的に取り扱う店 舗網を組織し,シェアの拡大を志向してきた.この制度のもとでは小売め段階で完全な専売店制が とられるのではなく,各店舗は他メーカーの製品も取り扱う併売制が採用され,いわゆるコモン・. エージェントとしての役割を果たすことになる.この点は各ディーラーが特定の1メーカーの商品 しか取り扱わない自動車と大きく異なる.連盟店制のもとでは?仮に小売店側は特定のPt ”か一か ら取引を停止されたとしても,他メーか一の商品を併売するピどは可能であり,販売活動は継続的 に行えるから,本稿で示した1モデルと良く合致しているように思われる.逆にメーカー側の視点か. ら見るとこうした状況は選択的なwケティングチャネルを形戌していることを意味し,故意に少.

(8) 186 (348)              1  横浜経営研?1: 第26巻  第2号 (・2005)’                「−                                                               r                                      叶 数の小売店にしか卸さなピ寧で,モニタリ1ングをより完壁なものにして効率的な販売を行っている. と解釈ができる7)..                     3.おわりに. 本論文では小売店のリスク回避的な行動を仮定し,その販売促進の努力を高める目的のために, メ”カーが選択的なマーケティングチャネルを形成するととをエージェンシー理論を用いて説明し一 た.結論として,固定的な報酬を製造業者が予め保証する契約の下では,小売店のリスク回避度が 低k・ほど,販売効率を高めるために,メーカーはチャネルをより閉鎖的に設定することが示された..  本稿は理論研究でありニチャネルの形成に閨して実証的な分析を行わなかったが・1節で概観し たこれまでの実証的研究の蓄積ではJ小売業者にとっての資金制約がメーカーとの契約の選択に影 響を与えていることが示されている.しかしこうした操業にあたっての資金1の制約も小売店にとっ での広義のリスクであると解釈することも可能であるから,本稿の理論的含意はこれまでの実証研 究と深く関わるもの1である,流通に関する統計は他分野の統計と比較すると相対的に貧弱であるが 故に,実証分析は困難にならざるをえないが;契約に焦点を当てた研究は先に述べたようにフラン チャイズ制の選択に関する分析などが内外で幾つか存在する.これにならい,ここで論じた選択的 チャネルの構成の意思決定に関して,小売店のリスク回避度やモニタリングの難易度が真に影響を 与えているのかを実証することも可能である..  またここでは予め1固定的な報酬を与えるタイプの契約のもとで結論を導いたが,他の契約,例え ば売上に応じて比例的に増大する報酬部分ど,固定的な報酬部分から成立する一般的な線形契約と の比較を行うならばどうなるであろうか.小売業者のリスク回避度があまりtに小さく,固定的な報 酬契約の下では販売促進へのモラル低下を起こす危険性が高い場合,製造業者は本稿でモデル化を 行った固定的な報酬を保証する契約ではなく,むしろ線形契約を選好する可能性がある.なぜなら そうした状況下では,・例え1ぱ商品の買い取り契約を前提として,販売数量に応じて報酬が得られる. という契約を締結すれば,自動的に小売業者の販売促進へのインセンティブを高めることが可能と                 1 なるためである.こうした1出来高的な…報酬の契約下ではメニカーは小売業者に対するモニタリング を行う必要がもともと無い:ため,できるだけ多くの小売業者と取引を行うという完全に開放的なチ・. ヤネルを設定する状況が考えちれる:逆に小売業者側もリスク回避度が低い状態ではそうした契約 を選好する可能性がある.ζ.ケした契約間の比較は線形契約のモデルを定式化した上で議論しない と明確な結論は得られないため,稿を改めて分析を行う必要がある.J.                              t.                       注                   .  1 1)エージェンシー’理論の重要な先行研究の1つであるStiglitz and Weiss紅983)では,プリンシパル・エー  ジェントがともにリスク申立的であると仮定した上で,前者が後者に対し,インセンティブを喚起するた  めに何らかの形で故意にレシトを発生させることにより,エージェントのモラルハザードを防ぎ,経済的  成果をより効率的に挙げられることを示している.さらにまたこのモデルではエージェン‘トに対してこう  ・したレントを発生させる代わりに,一部のエージェントを取引や雇用などの経済活動から排除するというz,  一種の剖当(rationing)が生じるという結論を導いている.こめモデルは金融における信用剖当の現象  (Spiglitz and IWeiss(1981))と,労働市場における非自発的失業とこれを引き起こす効率的賃金  (e伍ciency wage)の説明(Shapiro且nd Stiglitz(1984))に応用されている、. 2)本稿は理論研究であるが,製造業者・小売業者間の契約に関する実証的研究としては小本(1999)が挙げ  られる.そこではフランチャイズ制を線形契約とLてとらえた上で,ロイヤリティー・レート(従盈的報.

(9) 1. 小売業者のリスク管理と選択的マーケティングチャネルめ構築(松井建⇒. (335) 187.    酬)と,FCヲー1−(固定報酬)がどのような要因により決定される・かを分析している.また諸外国の実証    研究で・は,BriCkley and Dark(1987), Norton(1988), Minkler(1990), Lafontaine(1992), Scott. ’  (1995)が挙げられ,我が国と比較して多数の蓄積がある.さらにこれらの結論はLafontaine and Slade    (1997)にまとめられている..  3)tの仮定は,小売店は販売に際して,状況に応じて適宜メーカーに商品を発注し,メーカー側もこれに弾    力的に対応できる状況を想定しており,・Lafontaine and Slade(1996)を中心とした一連の流通契約モデル    に共通する仮定.である..  4)各小売店は取引再開のための様々な活動を行い,そう・した活動を行うほ’ど取引再開確率は上昇することが    予測されるが,モデルの単純化のためそうした要因は考慮しない.        1  5)(7)式より.JTiはe,の単調増加閲数であり,1対1で対応しているため,このような操作は問題がない.  6)lnA>0であれば・(14),口5)式よりiAの解は存在しな・いことが分かる. ’7’)またメーか一’の小売業者に対する関係特殊的投資と,それに基づく継続的取引は,我が国の閉鎖的チャネ    ル,特に専売店制の成立に対して重要な要因であるが(成生・為居(1996)),本稿のモデルにおいてはこ    うした投資はむしろ報酬),,の中に含まれると考えるごとも可能である・異時点にまたがる繰り返し契約に  、 おいて,このようなア、をメーカ・一は継続的に提供することで,小売店はメーカ≒へのロイヤルティを持ち    モラルを高め,メーカー側もまたさらにそうLた投資を継続して小売店へ行う状況を説明していると解釈    ’できる.. 参考文献 ’小本恵照(1999),「フランチャイズ契約の実証分析」細本経済研究」No3&p皿1−23.        ’. 成生達彦(1994),硫通の経済理謝名古屋大学出版会. 成生達彦・鳥居昭夫(1996),「流通における継続的取引関係」 『日本の企業システム1 東京大学出版会∫ 新飯田宏・三島万里(1991)’,「流通系列化の展開:家庭電器」 『,日本の流通』東京大学出版会.. 丸山雅祥(1992),細本市場の競争構造』 創文社. Brickley,エand Dark, F.{1987};,“The Choice of Organizational Form:The’CaSe of Fi‘anchising,”JOurnal ef   1可」1a刀da∫EconomicS, V《)1.].5, pp.385・395, HOEmstrom, B: and Milgroin, P,{19941“The Firm as ari rneentiΨe ・System,”、AMerican .EcθnoMic・ ReVii’ ”1 Vol..’84,.   PPL 972−991. Lafon苗ine, F.(1992),“Agency Theory and Franclユisin■Some Empirical Rεsults,’ RA.ND. Journat Of EcOnomics,   ’Vo1,23, pp.263−283.. Lafontaine, F. and Slade, M.E.{1996),“Retail Contracting and Costly Monitoring:Theory and EVide.nce,r   」室utqP eaiコEconoMic Rev∫e1杭Vol」40, pp.923・932.. Lafontaine. R and Slade,]ULE,(ユ997),“Retail Centracting:Theory a皿d Practicer Je.urnal of Jndtistrial   Econ’On2ics, VoL45i .pP; 4−25‘. Minklet, A,(199Q},“An Empirica聖An註ysis of a Firm l s Decision to Franchise.”Economics Lettetsj Vo1. 34, pp、.   77−82. Norton, S VLT.{1988),岬An Empifical Look at Franchising as an Organizational Form.“JOurnal●]f Business, ’Voll 、    61,p1コ.197−21・7:. Scoft, F. A.(1995},“Franchising vs, Compapy Qwnership as a Decision Variab匡e of tlle Firm,怜Re、7輌ew of   ユhdus励10tga血iza tion, Vol.10, pp.69・81.                    、 Shapiro,.C. an’d Stiglitz, J.E,{1984X“EquiUbrium Unemployme雄as a Worker Discipline Device,?A刀1erfca刀   .Econ omic ’Reγfe w, VoL 74i pp,433・444.. Stigli巳r J.E, afid Weiss, A.11981),℃redit Rationing in Maオkets witll Imperfect Inforlnatioll∴Ainel’icati   Eco刀σmic Revfe冊㌃V⑪L 71, PP.393411. Stiglitz, JE and’WeiSs, A(1983);“lncentive Effects of Terminations:ApplicationS to the、Credit alld Labor.   Markets,”Ametican Economic Review, VolL 73, PP.912・927.       L. 〔まつい けんじ 横浜国立’大学経営学部助教授〕.             〔2005年9月27旧受理〕. L.

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これは有効競争にとってマイナスである︒推奨販売に努力すること等を約