政策決定過程における脅威認識と安全保障 : 的確な政策実施に向けて
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(2) 96. (606). 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). 政策問題の確認(Issue emergence) ⇒アジェンダ設定(Agenda setting)⇒政策案生政 (Alternative selection)⇒政策案採択(Enactment)⇒政策実施(Implementation) ⇒. 策評価(Evaluation). 出所:上段:宮川公男『政策科学 の 基礎』東洋経済新報社 1994 年 6 月 2 日 p. 176,下段:Thomas A. Birkland, An introduction to the policy process: theories, concepts, and models of public policy making/ME Sharpe Inc. 2001 年 p. 222. より筆者作成. 図 1 政策プロセス. 威認識を焦点として政策決定過程との関係性や. り,人間性,時間的視野,政策による社会的変. 影響性においての考察について,一部の知見を. 化の可能性などについての暗黙の仮定がおかれ. 利用する(キューバ危機:組織論)ことはある. たりすることがしばしばある.いわば「誤った. が,他分野を複数取り入れた多角的視点からの. 設定を解く」というハワード(Raiffa Howard). 考察 は 見当 ら な い.本研究 は,政策科学 と リ. の指摘する第三種の誤りを犯すことになる7).. スク工学からの多角的視点を取り入れ「脅威. またもっとも基本的なレベルでは,世界観やイ. 認識」と「政策決定過程」を 捉 え な お す こ と. デオロギーを無意識的あるいは,無批判的に選. によ り,安全保障問題に関する的確な政策決. 択することによって実体的問題の概念化と解と. 定過程 や 政策実施評価を捉える,新たな学術. を大きくゆがめ,政策分析が「仮装したイデオ. 的視点を得られると考える.. ロギー」8)という状況に陥ることもある.この. 2 アジェンダ設定と脅威認識. 政策問題へのアプローチのプロセスでは,世界 観とイデオロギーといった概念を含むことが指. ⑴ 政策決定過程における脅威認識の位置づけ. 摘されている.そのためこの世界観とイデオロ. ア ア ジェンダ設定の前段階において必要な. ギーといういわば,何を問題にするかという認. 事項. 識に焦点をあてることが重要であると考える.. 政策決定の流れの中で,アジェンダ設定は,. また,公共政策の出発点は,価値であるとい. 政策を推進する上で重要な過程であるが,ア. う指摘がある.人間の目的は,行為はすべて何. ジェンダ設定のために必要な事項として, 「政. らかの価値を追求するものである.人々が強く. 策問題の確認」という作業がある.図 1 は,政. 保持している価値が脅かされたり,あるいは,. 策プロセスの流れを示したもので,政策プロセ. 新しい価値が採用されたりするとき,そのよう. スは, 「政策問題の確認」 , 「アジェンダ設定」 ,. な価値を守り,あるいは推進しようとする圧力. 「政策案 の 生成」 , 「政策案採択」 , 「政策実施」 ,. が生じるため価値の概念を公共政策の出発点と. 「政策評価」の順で進んでいく.政策決定過程. することが適当である9).. の出発点というものが「政策問題の確認」とい. アジェンダ設定の前段階である政策問題のア. うことになる.政策にどのような方向性を持た. プローチの最初の部分の「政策問題の確認」に. せ,どのような政策にするのかというのが,こ. おいては,「認識」と「価値」の 2 つの視点が. の「政策問題の確認」というプロセスで決まる. 重要であるということが分かる.この「認識」. と考えられる.. と「価値」をどのように捉えるかによって政. この「政策問題の確認」においては,誤った. 策決定過程の流れが大きく変化すると考えられ. 世界観や特定のイデオロギーが前提にされた. る..
(3) 政策決定過程における脅威認識と安全保障(中島). (607). 97. イ 安全保障概念において必要な事項. 2001 年 3 月 15 日には,発せられていた14)にも. 安全保障の概念(または,安全の概念そのも. かかわらず,米国史上最大のテロ攻撃を受けて. の)は,歴史的文脈に応じた具体的意味に彩ら. しまったことになる15).. 10). れつつ,概念史上の変遷を経てきたが 「ある. こ の よ う に 安全保障 に お い て,「価値」と. 主体が,その主体にとってかけがえのない何ら. 「脅威」をどのように捕らえるかということ. かの価値を,何らかの脅威から,何らかの手段. が安全保障の出発点であり,最も重要な要素. によって,守る」という抽象度の高い分析的概. で あ る と 考 え ら れ る.す な わ ち 何 を「価値」. 11). 念から出発 している.安全保障概念において,. として守っていくか,何を「脅威」として認. 抽象度の高いと指摘しているのは,①いかなる. 識しその脅威に対処していくかということで. 価値を(保護対象の問題) ,②どのような脅威. ある.. から(脅威の性質の問題) ,③誰が(保護主体. ウ 脅威認識の変化よる変化要素. の問題)④いかなる手段によって(保護手段の. ①軍事組織. 問題)12),守るのかという事項を含んでいるこ. 安全保障環境 の 変化 は,軍事組織 に お い て. とである.. 「脅威認識」の変化に反応する(表 1 参照).. 現在の国際環境化では,①のいかなる価値を. 近代の総力戦の時代には「敵の侵略」が後期. (保護対象の問題)と②のどのような脅威から. 近代には「核戦争」がそれぞれ安全保障上の脅. (脅威の性質の問題)が複雑多様化の一途をた. 威として認識されていた.しかしながら,ポス. どっている. 「いかなる価値」については,国. ト近代期の脅威は民族紛争やテロといった国内. 家安全保障 の 概念 か ら 国連開発計画(UNDP). の非軍事的脅威であって,大規模な国家間の武. の『人間開発報告』 (1994)によって初めて提. 力紛争は主要な脅威として認識されなくなって. 唱された「人間の安全保障」の人間の尊厳や生. きた.いわゆる「非国家主体」による「非対称. 命を脅威から守り,個々の人々の自由と可能性. 的脅威」が 現代社会 の 主 た る 脅威 で あ る.米. を実現するための考え方として国際社会から理. 国の国防戦略は,それまでの「脅威基盤戦略」. 解と関心を集めつつある現状である.また②の. から「能力基盤戦略」へと転換した16).それに. どのような脅威から(脅威の性質の問題)につ. 伴い,新たにテロという非対称的脅威に備え. いては,冷戦が終結し,かつての大国間の世界. るための「リスク管理」が強調され,「本土防. 大戦の脅威は遠のいたが,国際テロ,感染症,. 衛」が重視される結果となり「国土安全保障省」. 環境問題等脅威の対象が多様化の一途をたどっ. が創設された17).さらに,2006 年 2 月に公表. て い る 現状 で あ る.こ の「保護対象 の 問題」. さ れ た「4 年毎 の 国防計画 の 見直 し(QDR)」. と「脅威 の 性質 の 問題」が 定 ま ら な い た め,. では,「国土防衛,対テロ・非正規戦,通常戦」. 対処の方法としての③誰が(保護主体の問題). の 3 つに焦点をあてた新たな戦力態勢が採用さ. ④いかなる手段によって (保護手段の問題)は,. れ る に 至った.「軍事組織 の 構造」は,総力戦. なおさら,右往左往状態になり,政策が事象の. に備えた大規模な徴兵制の大衆軍隊から,冷戦. 発生後,というように後手に回ってしまう状態. 期には米国では 1973 年に徴兵制から全志願制. である.この状態を端的に示しているのが,9.11. に移行したものの,米ソの軍事大国間の武力衝. 米国同時多発テロにおける米国政府の対応であ. 突に備えて比較的大規模な兵力が保持されてき. る.この 9.11 テロにおいて,国際テロ組織が,. た.だが,冷戦後には米国では兵力の削減が進. 米国を狙い攻撃している事実は,かなり以前か. み,冷戦期には 200 万を超えていた兵力が,冷. ら顕在化していた13).また,9.11 を予想させら. 戦後の 1996 年の時点では 105 万に縮小した18).. れる報告書も米国政府から 9.11 テロの直前の. 欧州各国においても徴兵制を廃止して小規模.
(4) 98. (608). 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). 表 1 冷戦後の軍隊と社会 変 数. 近代(総力戦期) 20 世紀前半 1900─1945. 後期近代(冷戦期) 第 2 次世界大戦から冷戦終結. ポスト近代(冷戦後) 1990 年以降. 脅威認識. 敵の侵略. 核戦争. 国内的(民族紛争,テロ). 軍隊組織の構造. 大衆軍隊(徴兵制). 大規模専門職軍隊. 小規模専門職軍隊. 主要任務. 国土防衛. 同盟国支援. 支配的な軍人タイプ. 戦闘指揮官. 管理職,技術者. 軍人政治家,軍人学者. 軍隊への国民の態度. 支 持. 両面価値的. 無関心. マスコミとの関係. 共 同. 規 制. 厚 遇. 文民の雇用者. 少 数. 相当数. 多 数. 女性の役割. 別部隊又は排除. 部分的統合. 統 合. 配偶者と軍隊社会. 一 体. 部分的参加. 分 離. 軍隊内の同性愛者. 処 罰. 除 隊. 受 容. 良心的徴兵忌避. 宗教限定/原則禁止. 許 容. 文民分野で兵役代替. 新しい任務 (PKO,人道援助). 出所:Moskos, et al., The Postmodern Military, 2000, p. 15. な専門職軍隊へと移行する動きが目立ってき 19). 障政策 の 策定過程 で 最 も 重要 な 日常業務 と し. た .また全志願制への移行における軍事組織. て い る21).米国 は 国益 を 死活的国益(survival. 上の変化は,階級間の給与格差の縮小をもたら. interest) ,重要国益(vital interest) ,主要国益. した.さらに,削減された現役兵力を補うため,. (major interest) ,末梢的国益(minor interest). 予備兵力の役割が重視されはじめた.. の 4 段階に分けて評価を行っている22).死活的. 冷戦の終焉はまた「軍隊の主要な任務」にも. 国益に対する脅威は,第二次大戦中は枢軸国で. 変化をもたらした. 「敵の侵略」から国土を防. あり,冷戦期間中はソ連であり米本土に対する. 衛するという伝統的な軍隊の任務は,冷戦期に. 攻撃は真珠湾以外,一度も経験していなかった.. は「同盟国の支援」へと変わり,さらに冷戦後. それが 9.11 テロにより米本土という死活的国. には平和支援活動や人道援助,あるいは対テロ. 益に直接的な攻撃が加えられ,しかも 3 千人近. 活動などの 「新しい任務」へと変わりつつある.. くもの犠牲者が出たわけである.国家生存が危. 「9.11」以後,米英軍はアフガニスタン攻撃や. 機にさらされる死活的国益が脅かされたのは冷. イラク戦争に従事してきた.これらの作戦任務. 戦後,9.11 テロが初めてである.. も軍事作戦ではあるが,タリバン政権やフセイ. ア シュト ン・カーター(Ashton Carter)と. ン政権の崩壊後は,国家建設や復興支援・治安. ウィリ ア ム・ ペ リー( William Perry) は,. 維持などの非軍事的任務も含んでおり,広義に. “Preventive Defense”23)の 中 で 米国 の「脅威」. は「新しい任務」の範疇に入る20).このように. を A ~Cまでのリストにあげてその変遷を述. 純軍事的行動 か ら,治安維持,平和執行 な ど,. べている.「A リストの脅威」とは米国の本土. 非伝統的安全保障分野の領域への対応へと拡大. といった死活的国益に対する脅威であり,冷戦. してきている.. 期はソ連であったが冷戦後はこのリストは空欄. ②安全保障観. であった.「B リストの脅威」は米国本土に対. 米国大統領は, 「米国の国益をどのような脅. する直接的な脅威ではないが米国の重要国益に. 威 か ら 守 る か」と い う「脅威評価」を 安全保. 対する脅威であり,このリストには朝鮮半島と.
(5) 政策決定過程における脅威認識と安全保障(中島). (609). 99. ペルシャ湾が上げられている. 「C リストの脅. 値剥奪の理論に基づくパワーの理論は,失うべ. 威」は,重要な紛争であるが直接米国の安全保. きものを持っているアクターに対してのみ有効. 障には脅威とならない主要国益であり, コソボ,. で,何も失うものをもたないアクターには通じ. ボスニア,ソマリア,ルワンダ,ハイチがあげ. ない.従って,パワーを行使する側が,たとえ. 24). られている .. 核を持っていようとも,相手がテロ集団の場合. このことから考えれば,冷戦後の米国国防計. には報復は決定的な効果を持たない.その結果. 25) 画 の「2 正面作戦」 は「B リ ス ト」の 脅威 に. として,テロには抑止が効かず先制攻撃しかな. 基づいて策定されてきた.そして 9.11 テロが. い,という議論が次第に有力となってきたので. 起こった後, ワシントンで頻繁に聞かれる「9.11. ある.例えば,ブッシュ政権が 2002 年 9 月 20. テロ以後すべてが変わった」という表現が実現. 日に発表した「米国の国家安全保障戦略」 (ブッ. 性を帯びてくることになる26).すなわち冷戦後. シュ・ドクトリン)は「脅威が米国の国境に達. 空欄 で あった「A リ ス ト」に「テ ロ」と い う. するよりも前に探知し,破壊することで,米国. 脅威が入ったのである27).. 民と我々の国内外での利益を防衛する」と言っ. ③安全保障戦略(安心感). ている.しかし,「先制予防攻撃」には多くの. 9.11 テロにおいて冷戦後に広まった国際社会. 問題がある.例えばテロの目標や手段となるも. の安心感は失われてしまった.この不安を拭い. のは無限にありうるから,現実にはそれらへの. 切れない理由はいくつかある.まず米国があの. テロ行為に対して先制攻撃をしようにも,実際. テロ攻撃に対してまったく無力だったことであ. はきわめて困難で,先制攻撃がテロ行為そのも. る.国防は基本的に国外に対して守りの構えを. のを止めることには大きな効き目を期待できな. とっているもので,国家の内側に対してはほと. いからである29).. んど無防備といってもいい.内側の安全は治安 で, これは主として警察が受け持っている.9.11. ⑵ 政策決定過程と安全保障. テロは,米国が外から初めて受けた攻撃といわ. アジェンダ設定の前段階において必要な事項. れるが,実態としては実は内側から叩かれたの. として,「認識」「価値」の視点を必要かつ重要. である.軍隊は内側に対して銃を向ける訓練を. な事項として指摘し,安全保障概念における必. していない.9.11 テロ直後,米統合参謀本部議. 要な事項として,「価値」「脅威」の視点が必要. 長に就任することになっていたリチャード・メ. かつ重要であると指摘した.政策決定過程にお. イヤー(Richard Bowman Myers)が「脅威が. いては,何を「価値」として,問題をどのよう. 外から来るときは,われわられはかなりうまく. に認識し,政策を推進していくかということで. やれる.しかし,内からくるときは,あまり. あり,安全保障においては,何を「価値」とし. うまくない」と言ったのは言い逃れというよ. て守り,そのための「脅威」にどのように対処. 28). りも,おそらく本音だろう .. していくかということになる.. 第二に,核兵器を始めとする米国の様々なレ. 安全保障を政策決定過程におけるアジェンダ. ベルにおけるパワー,すなわち制裁し報復する. 設定の前段階として捉えると何を「価値」とし. 能力において,米国は,今日,圧倒的な物理的. てどのような「脅威」+「認識」において対処し. な力を誇っている.しかし,このことはテロ行. ていくのかということが言えるのではないかと. 動を止めさせる力には必ずしもならない.とい. 考える.つまり「価値」に対しての「脅威認識」. うのは,こうしたパワーが効くのは,相手が国. である.. 民や国土などを失うべき価値をもっている場合. この「価値」と「脅威認識」の 2 つの事項の. に限られるからである.言い換えれば,この価. 視点により,安全保障におけるアジェンダ設定.
(6) 100 (610). 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). における前決定段階を捉えることができ,安全 保障政策の方向性を考える上で重要な事項であ. 3 政策決定過程モデルに関する脅威認識. ると考える.また今日,日本と世界は,数々の. ここでは,政策決定過程の前決定過程を対象. かつてないほどに深刻な政策課題に直面してい. としたモデルにおいて,脅威認識をどのように. る.長期にわたる不況,産業の空洞化,失業率. 位置づけていくかを考察する.. の上昇,財政悪化,年金・医療保険など相互扶 助システムの破綻, 少子高齢化, コミュニティー 意識の希薄化・エゴイズムの蔓延,凶悪犯罪の. ⑴ 政策決定過程モデル:「政策の窓」理論に おける脅威認識. 増大,政治不信の拡大, ガバナンスの機能不全,. 政策アジェンダ設定に関する研究として高. テロリズム,国際的経済格差の拡大,地球温暖. く評価されているのが,キングダン(John W.. 化,自然破壊・生態系の撹乱,自然のみならず. Kingdon)の「政策の窓」理論33)の研究である.. 人間の存在自体さえも操作と改造の対象にする. 前決定過程に偶然性や流動性を加えた理論とし. 可能性を秘めている科学技術の飛躍的「進歩」. ては,「ゴミ箱」理論34)があり,これを発展さ. など,緊急かつ抜本的な対処を要する課題が山. せ,政策決定における前決定過程を対象とし,. 積している.これらに適切に対処するためには. 適用範囲が広く,決定過程のかなりのところま. 30). 高度な政策デザイン力が要求される .. でこのモデルで説明が可能なため,このモデル. 公共政策によって対処しようとする問題は,. を取り上げ,「脅威認識」の位置づけを考察す. ごくわずかな例外を除けばすべて, 「厄介な」. る.以下「政策の窓」理論を説明する.. (wicked)問題である.政策問題は客観的実在. キングダンのモデルは,政策決定プロセスの. ではなく,問題であると認識されてはじめて政. 中に次の三つの流れを考える.すなわち①「問. 策問題となる.それを問題であると考えるその. 題の流れ」②「政策の流れ」③「政治の流れ」. 個人や集団を離れて,それ単独で存在を主張す. である.. る こ と は で き な い.ダ ン(Dunn, William N.). 第 1 の 流 れ は,「問 題 の 流 れ」( problems. も強調したように,人間精神がつくりだした概. stream)である.いろいろな問題が政府内部. 念的構築物(思考の産物)にほかならないので. あるいは周辺の人たちの注意を引きつける.そ. ある31).従って,そもそも何が問題であるかが. のような問題の中から政策アジェンダに設定さ. 自明ではない.また,どこで分析・検討を打ち. れる問題がある.また問題を常に目立たせてお. 切るべきかについての終息ルールもない.一つ. くには,時間,努力,多くの活動家の動員が必. の問題が複雑な仕方で他の諸問題とつながって. 要であり,政策アジェンダ設定に失敗が続くと. いるし,問題をどのようなものと解釈するか,. 参加者は急激に意欲を失う傾向がある.ダウン. 多様な解釈のなかからどれをとるかが,解のあ. ズ35)は,以上のような現象を「問題への注意. り方を規定している.加えて,相互に対立する. の循環」 (issue-attention cycle)と呼んでいる.. 様々な解の背後には,利益や価値が容易に判定. 第 二 の 流 れ は,「政 策 の 流 れ」( policy. しがたい問題として潜んでおり,各々の解の真. stream)である.政策代替案はさまざまな人. 偽や相互間の優劣を判定するための客観的な尺. たちの間から生まれてくる.国会議員やそのス. 度もない.一言でいえば,正解があるような 「素. タッフたち,政府官僚,政党,利益団体,研究. 直な」問題ではないのである32).そのため,公. 者,あるいは時に一般国民の間からである.様々. 共政策においては,高度な政策デザイン力が必. な 政策提案 が 生 み 出 さ れ,議論 さ れ,修正 さ. 要とされるのである.. れ,真剣な考慮の対象として承認され,あるい は考慮外に葬り去られるといったプロセスであ.
(7) 政策決定過程における脅威認識と安全保障(中島). 問題の流れ Problem Stream. 問題の流れ Problem Stream 政策の流れ Policy Stream. (611) 101. 政策の窓開閉 Window of Opportunity. 政治の流れ Politics Stream. 政策の流れ Policy Stream 政治の流れ Politics Stream. 時間 Time 出所:Thomas A. Birkland, An introduction to the policy process:theories, concepts,and models of public policy making/ME Sharpe Inc. 2001 年,p. 225. より作成. 図 2 政策の窓モデル(policy window model). る.アイディアが提起され,法案として提出さ. (coupling)する.すなわち,問題が認識され,. れ,支持演説がなされ,反応によって修正を受. その解決案がすでに準備されており,政治的風. け, 再び提案される. このような政策がアイディ. 潮も変化の機が熟しており,そして行動を妨げ. アの中で生き残るための条件は以下の条件であ. る制約もなにもない時期が生まれる.政策案の. る.. 提唱者は,政策提案を準備し,それが適合する. 第一条件: 「技 術 的 フィージ ビ リ ティ (実現可能性) 」 第二条件: 「政策コミュニティーのメン バーの価値意識との整合性」. 問題がアジェンダに上程され,また政治の流れ が有利に展開するのを待つのである.このよ うな時期の出現をキングダンは,「政策の窓」 (policy window)の開放と呼ぶ(図 2 参照).. 第三条件: 「政策提案が直面する制約 (予. このような「政策の窓」が開かれるのは,そ. 算,大衆承認又は黙認・政府. う頻繁ではなく,またほんの短い時間の間だけ. 官僚承認) 」. である.しかも多くの政策提案が「待ち行列」. 第 三 の 流 れ は,「政 治 の 流 れ」( political. をつくって窓の開くのを待っているからであ. stream)で あ る.議会 に お け る 多数派政党 の. る.政策推進者は,もしその少ない機会と短い. 交代や数の消長とか政権交代のような政治的出. 期間を利用することができないかあるいは利用. 来事は,政策アジェンダに強い影響を与える.. しないならば,この機会は失われ,次にふたた. このような政治的流れには,選挙結果のほかに. び政策の窓が開くまで待たなければならない.. 全国的なムードの揺れや利益団体のキャンペー. そしてそれまでには長い時間がかかるかもしれ. ンなどが含まれる.このような国民ムードに加. ないのである.また政策の開閉に関連する研究. えて,政治的流れを構成する第二の要素は,利. では,人々の関心が持続するのは長くて 2 年で. 益集団や政治的エリートの行動など,組織され. あるという研究がある36).そのため機会が発生. た政治的な力である.. した時には,「鉄は熱いうちに打て」というよ. この三つの流れは完全に独立ではないが,三. うに,迅速な行動が必要とされるのである37).. つの流れは前述のようにそれぞれ異なる力に. このキングダンの「政策の窓」モデルで示. よって 動 か さ れ,別々の流れを形成する.三. された「問題の流れ」(Problem Stream),「政. つの別々の流れが,ある決定的な時期に合流. 策 の 流 れ」( Policy Stream),「政 治 の 流 れ」. 問題の流れ Problem Stream 政策の流れ Policy Stream. 問題の流れ Problem Stream. 政策の窓開閉 Window of Opportunity. 政治の流れ Politics Stream. 政策の流れ Policy Stream 政治の流れ Politics Stream. 時間 Time.
(8) 102 (612). 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). (Politics Stream)の中において,脅威認識は,. 東京都内の営団地下鉄日比谷,丸ノ内線の電車. 「問題 の 流 れ」 (Problem Stream)に 相当 す る. 内で,同時多発的に強い刺激臭が漂い,多数の. と考えられる.この問題の流れでは,危機や大. 人が体の不調を訴え,築地,茅場町など 16 駅. 災害といった事象だけで,そのまま問題が政策. から乗客や駅員ら 909 人が病院に運ばれ,警視. アジェンダに設定されることは多くない.すで. 庁 は,薬物 は 長野県松本市 で 94 年 6 月 に 発生. に人々の心の中にある問題意識が強化され,将. したものと同じ猛毒のサリンと断定した39).こ. 来来るべき問題についての早期警報になってい. の地下鉄サリン事件により 12 人が死亡,5500. ると人々が考えるか,または他の類似の出来事. 人が重軽傷を負った40).これらの危機は,正に. と結合されて問題が大きくなることによって,. 人々の安全安心を脅かすものであるあり,そこ. アジェンダ設定へ大きく働くのである.このよ. での行政府の対応は,迅速であるべきものであ. うに人々の問題に対する認識が根底にあり,そ. る.しかし,この危機管理,安全保障の転機と. れを強化することになる.脅威認識において. なった「阪神・淡路大震災」 「地下鉄 サ リ ン 事. も,同様なことが言える.大規模で突発的な脅. 件」において,初動の対応やその後の脅威認識. 威が実際に迫っていても,政策アジェンダに設. の保持については,十分とは言えないと思われ. 定されるのは,政策決定者や人々の認識の中に. るが,危機管理,安全保障の機運はこれを境に. 以前から認識されている脅威認識であると言え. 日本では活発化してくる状況である.1995 年の. る38).そのため問題の流れにおいて,的確な脅. 「阪神・淡路大震災」 「地下鉄サリン事件」の反. 威認識の醸成が最重要課題の一つとなってくる. 省から自衛隊の主要な活動であった災害派遣の. のである.. 権限強化(自主派遣基準の明確化や警察官と同 等の権限等)が図られ,自衛隊の危機対応能力. ⑵ 政策過程と脅威認識:政策の窓モデルから の視点. が強化され,その後「北朝鮮による弾道ミサイ ル 発射」 「能登半島沖不信船事案」 , 「9.11 米国. 政策過程と脅威認識について,危機的事象が. 同時多発 テ ロ」 「イ ラ ク 人道復興支援」等危機. 発生した場合,その危機に対してどのような脅. 管理・安全保障事案が続くこととなる.先の 「政. 威認識を持ち,対処するのかについて考察を行. 策の窓モデル」における「問題の流れ」が先行. う.事例として,阪神大震災と世界的に類例の. する形で,政策が後からついてくるという形を. ない化学兵器による無差別テロを引き起こした. とっており,安全保障や脅威認識の醸成が国民. オウム真理教の地下鉄サリン事件における日本. の間で浸透していき,それに対応するように安. 政府の対応と米国同時多発テロにおける米国の. 全保障政策関連の実施が行われてきた状況であ. 対応について考察する.. る.またそれに伴い防衛省が対応する事象は. ア 日本における危機に対する脅威認識(阪神. 年々増加し,多様な任務形態と迅速さが求めら. 大震災・地下鉄サリン事件) 1995 年は,日本にとって危機管理,安全保障 にとって転機の年となった.この年の 1 月 17. れる状況になってきている(図 3 参照) . イ 米国におけるテロの脅威認識(米国同時多 発テロ). 日午前 5 時 46 分 に 阪神・淡路大震災 は,マ グ. 9.11 米国同時多発テロにおいて,米国及び国. ニチュード 7.3 の地震が発生した.この災害に. 際社会は,国際テロ組織が大きな脅威であると. よる人的被害は,死者 6,434 名,行方不明者 3 名,. 認識させられた.その脅威への米国政府の対処. 負傷者 43,792 名という戦後最悪の極めて深刻な. は,迅速であった.ブッシュ政権は,新たなテ. 被害をもたらした(消防庁調べ,平成 17 年 12. ロの脅威に対抗するための新組織を設立,国土. 月 22 日現在. ) .ま た 3 月 20 日午前 8 時 す ぎ,. 安全保障戦略 を 本格的 に 採択 し た.ま ず 2001.
(9) 政策決定過程における脅威認識と安全保障(中島). (613) 103. 出所:平成 19 年度防衛白書. 図 3 拡大する防衛省・自衛隊の活動. 年 10 月 8 日,大統領令第 13228 号によりホワ. の対応策,そしてインテリジェンス情報集約の. イトハウス内に国土安全保障局が発足, その後,. 4 部局が設けられている.初代長官にはトム・. 11 月 25 日,ブッシュ大統領 が 国土安全保障設. リッジ(Tom Ridge)元ペンシルベニア州知事. 立法案に著名し,米国史上初の国土安全保障省. が就任した41).第 2 期ブッシュ政権においては,. が新設された.当初,同省は小規模な組織とし. 2005 年 3 月 3 日,第 2 代長官としてマイケル・. て稼動開始したが,その後 2003 年 3 月 1 日ま. チャート フ(Michael Chertoff)元司法副長官. で に,運輸保全局,移民帰化管理局,シーク. が 就任 し た.2002 年 7 月 に は,ブッシュ政権. レット・サービス,税関,沿岸警備隊,国境警. で 初 の 国土安全保障戦略(National Strategy. 備隊,連邦緊急事態管理庁(FEMA)な ど 22. for Homeland Security)を 発表.そ の 後,テ. の政府機関 を 統合して,職員数約 17 万人以上. ロ対策に関連した複数の国家戦略を公表してき. という,連邦政府組織で第 3 番目の規模を誇る. た.こ れ ら の 公式文書42)の 関連性 は,図 4 の. 大組織 と なった.こ れ は,1947 年 の 国防総省. とおり国家安全保障戦略と同列に国土安全保障. 設立,1977 年のエネルギー省設立に次ぐ,大. 戦略がおかれている.. 規模な政府組織編成であった.国土安全保障省. さらに,行政府と独立して,立法府である米. の主任務は,テロ対策のため関係省庁間の調整. 連邦議会も諮問委員会を設置して,国土安全保. とテロに対する先制的予防策の実践とされ,同. 障戦略に関連した報告書を作成43)してきた44).. 省内には任務別に国境及び運輸安全管理,緊急. 先の「政策の窓モデル」からの視点ではまず. 事態への準備及び対応,生物・化学・核攻撃へ. 「問題の流れ」として 9.11 米国同時多発テロは.
(10) 104 (614). 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). 出所:Government Accountability Office, “Combating Terrorism: Interagency Framework and Agency Programs to Address the Overseas Threat”, GAO Report, GAO-03-165. 図 4 「テロとの戦い」における米国の各種報告書の相関関係. 一般の人々に対して,国際テロ組織の活動は,. え考察を行う.. 「今そこにある最大の脅威」であると米国民の 意識の中に定着していた.また「政治の流れ」. ⑴ 政策実務における政策実施及び評価. では,ブッシュ政権におけるテロに対して強力. ア 政策の実施. なリーダーシップを発揮した「テロとの戦い」. どんなによい政策決定がなされても,それが. に象徴されるような戦時下の意識が政治の流れ. 期待されたように実施され,その成果が生きな. を汲み,また 9.11 同時多発テロ直後に迅速な. ければ意味がない.しかしながら政策研究者は. テロ対策における政策実施を可能とした. 「政. もっぱら政策決定に研究の重点をおき実施の問. 策の流れ」ではクリントン政権における国務省. 題は行政官に任せられるべき「実務的」問題と. にテロや環境問題といった非伝統的安全保障を. する傾向があった.実施の研究に対する関心の. 扱うグローバルアフェアーズ局を設置したりテ. 欠如は,政策研究における「欠落した連結環」. 45). で示し. (missing link)を意味する46).重大な安全安心. たりしたことにより,国際テロに対する行政・. にかかわる事態において,その事態をどう認識. シンクタンク等の研究が進み,テロ対策の醸成. し,政策実施に結びつけることが出来るのかが,. が整っていたことが挙げられる.これらの 3 つ. 今後の人々の安全安心に重要であり,それが政. の流れがひとつになり「政策の窓」が開き実効. 策実施及び評価に結びつくことが求められる.. 性のある対テロ政策が可能となったと考える.. イ 政策評価. ロ対策の重要性を他国訪問時の演説. 4 政策実施及び評価と脅威認識. 「評価」という言葉は人によって思い浮かぶ イメージが大きく違う.世界的にも「評価」に. 安全保障 に お け る 危機的事象発生後 に お い. 関する一般的な合意は存在しない47).評価に関. て,その事象を評価し,その後政策につなげる. して豊富な実績を有するアメリカでは「評価」. ため,政策実施評価の視点から日米の事例を交. の意味は時代とともに拡張されて,「政策」の.
(11) 政策決定過程における脅威認識と安全保障(中島). 事前段階(企画立案の段階)から事後段階まで. (615) 105. 政策分野であると考える.. のそれぞれにおける分析評価活動一般を含むよ うになってきている.アメリカの実際の利用例. ⑵ 政策実施及び評価から見た脅威認識. では, 「政策」に関する 「目的,目標,介入理論,. ア 日本におけるテロの脅威認識の変化. 実施過程,結果,成果,効率性を明らかにする. 地下鉄サリン事件以後,日本政府は,化学テ. 48). ための体系的な社会調査活動」 と定義されて. ロに対しての対応を細々と以下のように行って. いる.この定義から明らかなように, 「政策評. きた.1997 年 7 月に政府は,化学テロを想定. 価」は中央政府や地方自治体だけでなく,公益. した極秘の図上演習を行った.日本で初めて毒. 法人,NGO,コ ミュニ ティー組織 な ど に お け. 物テロを対象にしていた.ある政令指定市が協. 49). る活動に対しても利用可能である .また,政 策評価の目的は以下の 3 つがあげられる50). ①意思決定(Decision-Making)の 改善 の た め の材料を提供する.. 力し,警察や消防,医師ら総勢 58 人が参加した. 「地下鉄サリン事件」から 4 年後のことだった. 政府はこうした BC(生物・化学兵器)テロへ の対応を重ねてきた.だが,その評価は低い.. 「政策評価」の 導入により,従来の「投入量. 衆院テロ特措法特別委では参考人から「政府の. 指向型管理」から「成果指向型管理」への移行. 危機管理は幼稚園の年少組レベルだ」との発言. が可能となる.そしてコスト・パフォーマンス. も飛び出した53).このように行政府は,演習に. (効率性)等が評価されこの情報にもとづいて. 対し初歩的な状態で実施していた.この地下鉄. 「政策」の 拡大,縮小,継続,廃止が決定され. サリン事件をどのように認識し,今後の危機管. 51). る .. 理や安全保障の脅威認識に結びつけていくかと. ②財政的,人的,物的,時間的,情報的(ノウ. いうことでも官僚組織が弊害となっている状況. ハウ,信用等)資源配分(Resource-Allocation). である.日本の行政も立法も世論も「サリン事. を 最適化・効率化するための材料を提供す. 件」を,「特殊な団体の特殊な事件」と見てい. る.. る状況である.オウム真理教を取り締まれば解. 「政策評価」に よって,既存 の「政策」に お. 決だと考え,あくまで治安問題であり,「第 2,. いてもどこで非効率が発生しているのか,その. 第 3 のオウム」は想定しなかった.破防法は論. 場合どう改善すべきなのかの情報が提供され. 議されても,「生物・化学兵器を撒く罪が必要. る.. かどうか」は語られなかった.しかし米国は違っ. ③納税者 へ の 説明責任(Accountability)を 向. ていた.化学兵器対策を根本的に見直し,国家. 上させるための材料を提供する.. を対象とした条約で封じ込められるはずだった. 納税者の税金の使われ方に対する関心は今日. が,宗教団体に実行されてしまったからだ.米. ますます高まっている.税金が有効に使われ. 国にとっては安全保障問題と認識され,米国同. ているか,そして代替的な「政策」と比較した. 時多発テロの 1 ヶ月後の 2001 年 10 月には,下. 場合にも現在の「政策」がベストな政策なのか. 院公聴会がサリン事件を取りあげ,膨大なデー. 等に関する判断のための情報が「政策評価」に. タが政府や議会に積み上げられていた54).この. 52). よって提供される .. ように日本は脅威認識の低さを露呈した形に. 政策評価はその後の政策にどのように反映さ. なってしまっており,地下鉄サリン事件に対し. れているかが重要であり,安全保障分野におい. て日米における脅威に対する重みがまったく違. て,脅威を認識した場合,その後の安全保障政. う状態であった55).この状況を打開したのが,. 策に十分反映されなければ,重大な影響や被害. 9.11 米国同時多発テロであり,米国がテロとの. をうけることになり重要視しなければならない. 戦いを宣言してから日本のテロ対策は徐々に動.
(12) 106 (616). 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). 表 2 気候変動に関する意見 否定派の主な意見. 科学的見解. ○地球の気温上昇や気候変動を主に引き起こしているのは太陽 ○太陽が発する熱量の変化は過去 50 年でもごくわずかで,現 だ.最近の温暖化現象に影響を与えているのは太陽に違いな 在の温暖化は説明できない.自然だけではなく,人間活動も影 い. 響している. ○ 98 年は記録的に暑い年だった.以来,CO2 排出量は増え続 ○ 98 年は強力なエルニーニョ現象のため,突出して暑かった. けているが,あのときほど暑い年はない.温暖化は終わったに 05 年はエルニーニョなしでも 98 年に並ぶ暑さ.気温の上昇傾 違いない. 向は続いている. ○南極の氷の調査によれば,前回の氷河期では気温上昇の後に ○気温上昇は植物の成長を促し,CO2 レベルを上げる.だが CO2 が増加した.つまり温暖化が CO2 の増加を招くのであっ CO2 の増加で太陽熱が大気中に閉じ込められ,温暖化につな て,逆ではない. がっている側面も. ○ここ約 100 年間の気温上昇や近年の異常気象の頻発は,通常 ○今世界で起きている温暖化は過去に見られたものより 10 倍 の地球の気候変動の一部に過ぎない.次は氷河期が訪れるかも も大きい.こうした気温上昇が自然の変動である確率は 10% 知れない. に満たない. 出所:NEWSWEEK(日本版)2007. 9. 5, pp. 40─46. より作成. き始めることになる.政策実施や評価の観点か. が,干ばつの長期化や豪雨の増加,熱波の深刻. らは,未曾有のテロが首都東京で行われた事実. 化の原因になっている可能性は 90% 以上だと. を国民の立場から深刻に受け止められず,一種. いう.地球温暖化の脅威を認識する人が増えた. の事件としての扱いで済まされ,治安問題の一. のは確かである. . 部とされてしまった感がある.今後の安全保障. 米国 の 産業界 は 80 年代後半以降,温暖化 へ. 政策としての政策に反映されることはなく,安. の懸念を広めることで事実を隠蔽しようとして. 全保障問題として国際テロを認識し始めるの. きた.彼らはまず,広告や新聞への寄稿,ロビー. は,認識変化 と も い う 9.11 米国同時多発 テ ロ. 活動などを通して,「世界は温暖化していない」. の米国の脅威認識の外圧というべきものであっ. 「温暖化を示すデータには不備がある」と論じ. たと考える.. た.さらには,温暖化は自然界が引き起こした. イ 米国における地球温暖化における脅威認識. もので,人間の活動とは無関係だとも主張する.. の変化. 仮に温暖化が起きても無視できるほど微々たる. 米国は,地球温暖化対策について,これまで. ものだと主張している56).米国では,地球温暖. 京都議定書の脱退に始まり,否定的又は消極的. 化に対して,利害関係のあるエネルギー関連産. な態度を示してきた.しかし今日米国は,地球. 業及びその関係者は温暖化と人為的な関係にお. 温暖化に対する姿勢を徐々に変化させてきてい. いて否定的な態度をとっている57)(表 2 参照).. る.地球温暖化問題に関して,米国内では,石. しかしこのような否定派は,かつての勢いを. 油メジャー等の資源エネルギー関連を中心に根. 失って い る の は 確 か で あ る.ニューズ ウィー. 強い「地球温暖化はでたらめだ」とするキャン. クの世論調査によれば気候変動はアメリカに. ペーンが組織的に行われてきた.2007 年 2 月. とって 最 も 深刻 な 環境問題 だ と 考 え る 人 が. 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC). 38% に達し,7 年前の 3 倍になった.ジョン . が第 4 次報告書で, 「温暖化が進んでいるのは. D.ロック フェラー 4 世( John Davison “ Jay”. 間違 い な い」と 宣言 し た.こ の 報告書 は,40. Rockefeller Ⅳ)上院議員(民主党)ら は 2006. カ国にわたる政府や学界,環境保護団体,企業. 年 10 月,気候変動について「怪しげなデータ. の約 600 人の研究者が作成.彼らの見方では,. を 広 め て き た」ICE(Information Council on. 化石燃料を燃やす際に排出される温室効果ガス. the Environment 環境 に 関 す る 情報協議会58)).
(13) 政策決定過程における脅威認識と安全保障(中島). (617) 107. などに総額 1900 万ドルの資金提供を行ってき. に対して,変化をもたらした.しかし国民の将. たとしてエクソンモービルを非難.以来,同社. 来を懸念して,早期に対策を採られたわけでは. はそうした団体への支援を減らしている.報告. なく,未だ顕在化されていない脅威に対して. 書や研究論文がどんなに脅威を訴えても,アメ. は,9.11 米国同時多発テロの時のような迅速な. リカ人は行動を改めないかもしれない.アメリ. 政策実施とその後のテロに対する脅威評価など. カ人の態度を変えられるものがあるとしたら,. を行った米国政府においてさえも,政府サイド. それは気候変動そのものだろう.2007 年夏テ. からの政策実施及び政策評価の難しさが浮き彫. キサス州は豪雨と洪水に見舞われ,ラスベガス. りとなる事実が突き付けられることを地球温暖. は記録的な猛暑に襲われた.2007 年 9 月発表. 化問題を通して認識させられることとなった.. された研究によればヨーロッパでは過去 100 年. この科学的に将来確実視される脅威を的確に認. 間に熱波の期間が 2 倍に延び,その頻度は 3 倍. 識し,政策実施及び政策評価に向けられるかが,. 近くに増加した.都市や農地への水の供給で,. 今後の安全保障政策にとって最大の課題となる. 重要な役割を果たしている雪塊氷河も後退を続. と考える.. 59). けている .また「ハリケーンがカテゴリー 4 ~5 に発達する割合が過去 30 年で 1.5 倍以上に 高まった」とジョージア工科大学の研究チーム. 5 安全保障における政策への反映: 失敗学的見地からの政策. が,米国の科学誌「サイエンス」60)に掲載され. 9.11 米国同時多発テロは,遠因として米情報. た.カテゴリー 5 は,日本の台風で言えば, 「猛. 機関のテロに対する脅威認識の欠如とその後の. 61). 烈な台風」に匹敵する .今後ますます地球温. 対応の失態により同時多発テロを防止すること. 暖化の影響で気候変動が起こる可能性が高まっ. を妨げたという報告内容を米国政府による公的. ている.気候変動における異常気象が増加する. 調査により明らかにされた62).安全保障におい. につれ人々の地球温暖化に対する意識に変化を. て,脅威を的確に把握することができなければ,. もたらす可能性を示している.. その後の対処や政策を実施することはできず,. 2007 年ドイツで開催されたハイリゲンダム. 国民・国家において重大な損害を与えることに. サ ミット で は,気候変動 が 主要議題 と さ れ,. なる.また安全保障において,費用対効果の政. 2050 年までに世界の温室効果ガス排出量を少. 策評価は,どのような効果が上がったのかとい. なくとも半減すべきことを真剣に検討すること. うことが必ずしも明確にできていないことがい. が合意された.国際社会として大枠で,地球温. える.では今後ますます拡大する非伝統的安全. 暖化における脅威認識は共有されつつあるが,. 保障の分野で的確な安全保障政策を実施するた. CO2 排出大国である米国の今後の動向と地球温. め,安全保障観 を 一変 さ せ た 9.11 米国同時多. 暖化と気候変動の関係性に対する米国内外の情. 発テロの対応の失敗をどう生かすかが,今後の. 勢変化は,今後ますます注視する必要が出てき. 安全保障政策に求められると考える.そこで,. ている(表 3,図 5 参照) .. 近年注目を集めている失敗学63)の視点から考. 政策実施及び評価の観点から地球温暖化の問. 察を行う.. 題は,国連の IPCC(気候変動に関する政府間. 「人は誰でも失敗をする」は真実である.し. パネル)において,科学的データが提供され,. かし,その失敗の内容を見れば,実はどこか. ハリケーンカトリーナに代表される温暖化が原. で聞いたような失敗だったことに気づく,つ. 因と推定される異常気象に対する人々の地球温. まり「人は誰でも同じような失敗をする」が. 暖化がもたらす人類への脅威を認識する意識が. 正 し い64).工学的 な 事故等 に 関 し,失敗 の 要. 醸成され,温暖化対策に消極的な産業界や政府. 因を中尾政之氏は,分析し 41 に分類を行った..
(14) 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). 108 (618). 表 3 温暖化をめぐる日米欧の提案 米 国 米国主導で,中国,インドなどを含めた 主要排出国と協議し,排出削減に向けた 世界規模 の 長期目標 を 2008 年末 ま で に 設定.国ごとの特性にもとづく中期的戦 略づくりにも取り組む. 日 本 排出を 2050 年までに現状から半減する ことを世界共通の目標に.次期枠組みで は①主要排出国の参加②各国の事情に配 慮した柔軟で多様な枠組み③環境と経済 の両立の 3 原則を提示. EU(議長国・独) EUとして 2020 年までに排出量を 90 年 比 で 少 な く と も 20% 削減.先進国 で 20 年 ま で に 30%,50 年 ま で に 60~80% 削 減 を 目指 す.次期枠組 み は 2009 年 ま で に交渉を終える . 出所:朝日新聞 2007 年 6 月 2 日「「温暖化防げ」G8 挑戦 日米欧がポスト京都案」. 出所:EDMC/エネルギー・経済統計要覧 2009 年版,全国地球温暖化防止活動推進センター (http://www.jccca.org/). 図 5 世界の CO2 排出量の割合. この 41 の要因にほとんどの失敗が分類できる. 失敗は,巨大行政機関であり,冷戦を勝ち抜い. としている(表 4 参照).. た米国中央情報局(CIA)が起こしたことに注. ここで政策の実施にあたり,注目しなければ. 目する必要がある.CIA は多額の予算,多く. ならないのは, 「個人や組織の怠慢」 「悪意の産. の人員,最新の装備を駆使して,米国の国益を. 物」 (36) ~ (41)の項目で,これらの要因が的. 阻害する要因を早期発見対処することに大きな. 確な脅威認識の阻害要因となっている.9.11 米. 存在価値がある.しかし,巨大行政機関がゆえ. 国同時多発テロにおける情報機関の的確な脅威. に他機関との連携が取れず情報共有が進んでい. 認識不足は,ここでいう「悪意の産物」を見抜. なかった.そのため今そこにある脅威を見過ご. けなかったことによる「個人や組織の怠慢」が. してしまったことである.そしてその責任の所. 招いた結果であるといえる.この重大な対応の. 在が不明確(責任を誰もとっていない)なまま,.
(15) 政策決定過程における脅威認識と安全保障(中島). (619) 109. 表 4 失敗の 41 の要因 ●材料の崩壊 (1)脆性破壊 (2)疲労破壊 (3)腐食 (4)応力腐食割れ (5)高分子材料. ●想定外の制約 (15)特殊使用 (16)落下物・付着物 (17)逆流 (18)塵埃・動物 (19)誤差蓄積. ●構造の転倒 (6)バランス不良 (7)基礎不良 (8)座屈. ●火災・天災からの逃げ遅れ (20)油脂引火 (21)火災避難 (22)天災避難. ●構造の振動 (9)共振 (10)流体振動 (11)キャビテーション. ●連鎖反応で拡大 (23)脆弱構造 (24)フィードバック系暴走 (25)化学反応暴走 (26)細菌繁殖 (27)産業関連. ●想定外の外力 (12)衝撃 (13)強風 (14)異常摩擦. ●冗長系の非作動 (28)フェイルセーフ不良 (29)待機系不良. ●作業で手を抜く (30)入力ミス (31)配線作業ミス (32)高分子材料 ●設計で気を抜く (33)自動制御ミス (34)流用設計 (35)だまし運転 ●個人や組織の怠慢 (36)コミュニケーション不足 (37)安全装置解除 ●悪意の産物 (38)違法行為 (39)企画変更の不作為 (40)倫理問題 (41)テロ. 出所:中尾政之『失敗百選─41 の原因から未来の失敗を予測する─』森北出版 2005 年 10 月 20 日,p. 27. 9.11 の 公的調査 は 終了65)し て し まった.行政. 後者のように犠牲者総数が多いのに情報が少な. 機関による政策の失敗は,単発的な事件や事故. い分野では,特徴として原因を安易にヒューマ. での損害と違い国家全体に影響を及ぼすもので. ンエラーとして決着することが多い.そして,. ある.特に安全保障分野はその顕著なものであ. 「人の命が重いことを常に心に刻もう」「今こそ. る.政策分野は,失敗があまり探求されていな. 気合と根性を入れ直そう」というような精神論. い.そして失敗に関しての改善やデータ蓄積は. で対処される.また事故を人為的に隠蔽したた. 分野において相当な開きがある.. めに事実顕在化や原因追及が疎かになっていた. 例えば,化学,原子力,航空機,宇宙,鉄道,. 分野 が 建築土木,医療過誤,環境公害 で あ る.. 船舶,食品のように,先人の努力の結果,いま. いまだに失敗と確定することさえ皆で避けてい. や日本では合わせても 1 年平均で死者が 100 名. るのが,企画,開発,政策,教育,経済などの. 以下になっている膨大な科学データが蓄積して. 分野である.あまりにも深く人間の恣意的で主. いる分野がある.この分野には専属の学協会や. 観的な判断に頼りすぎて,原因調査しようにも. 学者が多くいて,事故のたびに徹底的に調査が. 担当者の秘密主義により調査が出来ない状況あ. 行 わ れ る.一方 で,現在 で も 1 年平均 で 7000. る.さらに失敗というよりも “災い” として受. 名も出る交通事故や,犠牲者ではおそらくそれ. け止められているものが,地震,火山爆発,津. 以上(米国では 4 万人の交通事故死に対して,. 波のような天災や,伝染病,飢餓,生態系変化. 医療過誤死は 10 万人といわれる)の医療過誤,. のようなバイオ災害である66) (図 6 参照).. おのおの 2000 名程度の労働災害と火災,など. 図 7 は,組織 の 責任者 が 失敗 に 気 づ い た と. のように,犠牲者が多い割には,一度に大量の. きに,それを隠せたら支出しなくてすんだ金. 死者が出ないから,大きな「事件」として社会. 額(失敗利益額)を横軸に,失敗が発覚して世. やマスコミがしつこく追及しない分野がある.. 間がその失敗に対して憤り,その組織が支出し.
(16) 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). 110 (620). 出所:中尾政之『失敗百選─41 の原因から未来の失敗を予測する─』森北出版 2005 年 10 月 20 日,p. 24. 図 6 失敗事例が密集している分野. た金額(失敗損額)を縦軸に,それぞれ示した. 安全安心の根幹を成すものであり,そこでの安. ものである.各種の失敗が座標上に記してあ. 全安心に対する脅威認識は,常に正確さ的確さ. るが,原点を通る 45°の直線より上の部分が,. が求められるので,失敗に対しては,早期に原. 損失額が利益額を上回った領域で,民間企業の. 因の解明と改善を行わなければならない分野で. 製品リコール事故は 10 倍以上,損失額が多く. ある.. なる.不祥事だとさらに 100 倍以上と損失額が. 安全保障の失敗は,多くの人々の生命を失う. 拡大する.これは主に株価が失敗の公開ととも. ことであり,その早期発見ともいうべき,脅威. に急落して時価総額が 1000 億円規模で減少し. 認識は,安全保障政策が有効に機能し始める初. たことが大きい.一方で 45°の直線より下の. めの分岐点となるのである.. 部分が損失額を下回った領域で,つまり隠した ほうが得,という領域である.これは公共サー ビスの失敗が含まれており,失敗の再発が怖く. 6 的確な安全保障政策を求めて:情報共有の 必要性. ても利用者は鉄道や電力を使わないと生活でき. 安全保障における脅威認識においては,今日. ないことを示している.株自体がないから評価. 複雑化する安全保障環境下においては,何が脅. できないが,国や公共事業体は失敗しても損は. 威と結びつき,脅威が顕在化するか一部門の情. しない.だからこそ公共サービスのリーダー. 報機関だけでは把握することが難しい.我々の. は,noblesse oblige(高い身分に伴う道義上の. 社会 は,不確実性 と 複雑性 の 中 で 生活 し て お. 義務)のような使命感をもって仕事にあたらな. り,的確な脅威認識を持ち対処することが難し. 67). ければならない ,との指摘がある.このよう. い時代に入っている.そこで,それを克服す. な公共分野において,安全保障分野は,人々の. るためには,学際性を兼ね備えた情報の共有が.
(17) 政策決定過程における脅威認識と安全保障(中島). (621) 111. 出所:中尾政之『失敗百選─41 の原因から未来の失敗を予測する─』森北出版 2005 年 10 月 20 日,p. 39. 図 7 失敗の利益と損失との関係. 必要である.例えばバイオテロや感染症の拡大. サリン関連の記事を執筆した.同年 9 月,記事. など発生から感染爆発までの兆しがつかみにく. を見た警察庁科学警察研究所の技官から「サリ. い問題などでは,すでに始まっている.ドラッ. ンの加水分解物などに関する毒物データが不. グストアでの風邪薬の売れ方から,インフル. 明」と,捜査に協力を求めるファクスが届き,. エンザなど感染症の流行をいち早く察知出来. それに対しトゥー氏は,知人を通じて分解物. ることを国立感染症研究所が 2 年余りにわたっ. に関する米軍の資料を 30 数枚入手して送った.. て全国 600 薬局のデータを基に検証し,市販薬. その後もやりとりは続き,同月 30 日付の科. の「予知能力」を立証したことによってわかっ. 警研からの送信に「いただいたデータから,鑑. た.発生が懸念されている強毒性新型インフル. 定上の分析条件その他注意すべき点が把握でき. エンザ(H5N1 型)や新型肺炎 SARS など深刻. た」と記されていた.その秋,警察は山梨県上. な感染症を早期に察知するシステムに応用でき. 九一色村の教団施設近くから採取した土壌を分. る.被害拡大を防ぐ手軽で有力な手段68)とな. 析し,問題の分解物を検出することに成功す. 69). る可能性がある .またオウム真理教のサリン. る.教団とサリンが初めて結びついた70).この. 事件おいては,米国の学者が捜査に協力したコ. ように生物・化学テロ及び感染症拡大に関して. ロ ラ ド 州立大学名誉教授(毒性学)の ア ン ソ. は,情報の共有及び学際的知見の活用が行われ. ニー・トゥー(杜 祖 健)氏 は,1994 年 6 月 の. てきているこれらの先例を参考に今後安全保障. 松本事件後, 「現代化学」 (東京化学同人)に. 分野,特に多様な分野に跨る非伝統的安全保障.
(18) 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). 112 (622). 分野にいて,情報の共有及び学際的知見の活用 を積極的に促進していく必要があるのではない かと考える. 2009 年 6 月 11 日弱毒性新型インフルエンザ (H1N1 型)に対し,世界保健機関(WHO)は, 警戒水準を世界的大流行(パンデミック)を意 味する最高の「フェーズ 6」へ引き上げた71). これが強毒性であった場合,世界的に安全保障 問題化するのは必至である. 安全保障政策 の 課題 は,も は や 行政府 の 防 衛・外交機関だけでは的確な早期発見段階であ る脅威認識を把握することはできず,総合的知 見の集約が必要不可欠な段階に来ている.. 注 1)国際政治=国家間 の 作用・反作用 の 過程,国 家(具体的行為者)=内的環境,外的環境,社 会的構造と行為,政策立案決定要因=組織的変 数(権限 の 領域),情報的変数(通信 と 情報), 心理的変数(動機). 2)Graham T. Allison『決 定 の 本 質』宮 里 政 玄 (訳)中央公論社 1977 年 8 月 . 3)Rose McDermott, “Prospect Theory in International Relations: The Iranian Hostage Resue Mission,” Political Psychology, vol. 13, no. 2, June 1992, pp. 237─263. 4)Rose McDermott and Jacek Kugle, “Comparing Rational Choice Prospect Theory Analysis: The U.S. Decision to Launch Operation ‘Desert Storm’ January 1991” The Jurnal Strategic Studies, Vol. 24, No. 3, September 2001, pp. 49─85. 5)加藤朗「危機管理の概念と類型」『日本公共政 策学会年報 1999 』1999─01─02. 6)河田潤一,荒木義修『ハンドブック 政治心理 学』北樹出版 2003 年 4 月 . 7)Raiffa, Howard, Decision Analysis: Introductory Lectures on Choice under Uncertainty,AddisonWesley 1968 年,p. 264. 第 1 種の誤り:仮設が正しいにもかかわらず それを否認してしまう誤り 第 2 種の誤り:仮設が誤っているにもかかわ らずそれを承認してしまう誤り 8)Tribe,Laurence H, “Policy Science: Analysis or Ideology?” Philosophy and Public Affairs 2, 1972, pp. 66─110.. 9)宮川公男『政策科学入門第二版』東洋経済新 報社 1994 年,p. 129. 10)中西寛「安全保障概念の歴史的再検討」赤根 谷達雄・落合浩太郎編著『新しい安全保障論の 視座─人間・環境・経済・情報』 亜紀書房 2001 年, p. 68. 11)防衛大学校安全保障学研究会編著『最新版・ 安全保障学入門』亜紀書房 2003 年,p. 3. 12)山中倫太郎「安全保障理論としての立憲主義 ─「国家からの自由」と「国家による自由」の 狭間で」村井友秀・真山全編著『リスク社会の 危機管理』明石書店 2007 年 3 月 31 日,p. 198. 13)例を挙げると,1993 年 2 月 26 日の世界貿易 セ ン タービ ル 爆破事件(6 名死亡,約 1000 名 負傷) ,1998 年 8 月 7 日 の 駐 ケ ニ ア(291 名死 亡 5000 名負傷)及び駐タンザニア(10 名死亡, 77 名負傷) ・アメリカ大使館爆破事件,2000 年 10 月 12 日米イージス艦コール襲撃事件(17 名 死亡,37 名負傷)などである. 14)クリントン大統領によって 1997 年に設置さ れ た 合衆国国家安全保障・21 世紀委員会 の 最 終報告書では, 「アメリカ本土におけるアメリ カ市民に対する直接攻撃が今後四半世紀の間に 発生しそうである」と指摘していた. 15)安全保障 に お け る 基本的概念 と し て,多 く の研究者が「価値」「脅威」の視点からの定義 を行っている.その一例を挙げると以下のよ うに指摘されている. ○「安全保障 と は,客観的 に 獲得 し た 価値 に 対 す る 脅威 の 不在,主観的 に は,獲得 し た 価値 が攻撃される恐怖の不在」と定義した Arnold Wolfers, Discord and Collaboration: Essays on International Politics, Balitimore: Johns Hopkins University Press, 1962, chapter 10, p. 150. ○「安全保障とは,その主体が所有している中 核的価値に対する他者による脅威から自由で あ る こ と を 意味 す る.問題 は,個人 の,国家 の,あるいは国際的安全保障のどのレベルの安 全保障 か で あ る が,冷戦時代 は ほ ぼ,軍事的 条件 に よって 規定 さ れ る 国家安全保障 で あっ た.」Baylis, John, “International Security in the Post-Cold War Era,” in Baylis, John and Steve Smith, eds., The Globalization of World Politics: An Introduction International Relation (Oxford: Oxford University Press) , p. 194. ○「国家安全保障機能は,外的脅威から市民の物 理的安全保障を守るというその本来の,根本的 意味において,普遍的にすべてに見出せる.そ の環境のなかの脅威を認識せずに,国家安全 保障を守るために行動する政府の歴史の中に 例をみることは困難である. 」Smoke, Richard, “National Security Affairs” in Greenstein, Fred I. and Nelson W. Polsby, eds., International.
図
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『台灣省行政長官公署公報』2:51946.01.30.出版,P.11 より編集、引用。
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(出典)※1 教育・人材育成 WG (第3回)今村委員提出資料 ※2 OriHime :株式会社「オリィ研究所」 HP より ※3 「つくば STEAM コンパス」 HP より ※4 「 STEAM