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第50号記念特集

新しい工学教育と知の再構築

鈴木嘉彦

(平成11年9月27日受理)

A New Educational System for Engineering and Restructure

of intellectual Paradigms YoshihikoSUZUKI        Abstract   In order to improve or resolve the global environmental problems such as global warming, we have to change the method for education of engineering. The education system in the DESE (Department of Ecosocial System Engineering)is just different from it of the other departments. This paper presents the feature of the education in the DESE and discusses the importance of social and human science in the education of engineering. That is, this paper shows a new education system in the DESE and presents the necessity of restructure of intellectual paradigm. はじめに  筆者の所属する循環システム工学科は、現代 社会が直面している地球環境問題の要因を理解 し、持続可能な循環型社会の構築に貢献できる 人材を養成することを目的に昨年(1998年)4月 山梨大学工学部に全国で初めて創設された。こ こでは創設に直接関わった当事者として、新設 された循環システム工学科の紹介をかねて小論 をまとめる。  この小論を寄稿することとなった要因は二つ ある。一っは、本年3月創刊800号を迎えた 岩波書店の雑誌「科学」の特集号にある。800号 特集を中心に雑誌「科学」では「いま、科学の 何が問われているのか」を論じている。科学の 位置づけに関わる問題は、地球環境問題に立ち 向かおうとする循環システム工学科創設にも直 接間接に関わる課題である。そこで筆者が「科 学」のフォーラムへ循環システムエ学科創設の 基本的な考えをまとめ、小論と全く同じ題名で 寄稿することとなった。一方本誌工学部研究報 告も本年創刊50号を迎え、記念として特集を 組むことになり、循環システム工学科に関わる レビュー記事の寄稿を依頼された。これら二っ の原稿を時を同じくして提出することとなり、 両誌に共通の話題を論ずる意味で小論をまとめ ることとした。1)  そこで小論では、 「科学」が問いかけている 問題の原点を意識するとともに、21世紀に向 けた工学教育のあるべき姿を循環システム工学 科の掲げている設立の目的に沿って紹介する。 さらに具体的な工学教育の体系だけでなく、新 学科創設の背景に流れている新たな知の構築に 関わる問題にっいてその基本的な考えを論ずる こととする。 *循環システム工学科、Department of Ecosocial System Engineering

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問題の原点は何か  まず、議論の導入として、本年4月循環シス テム工学科に入学した新入生のために行われた 合宿研修のゼミの一部を紹介することにする。 筆者は新入生に次の質問を発することからゼミ を始めた。  「20世紀は驚異的なスピードで科学技術が 進展し、その成果が社会に還元された時代であ った。なぜこのようなスピードで技術開発を進 めることができたのだろうか。匠の技と呼ばれ るような個人が身につけている技と、大量生産、 超高精度、超高速などの処理を可能にした科学 技術の違いは何だろう。」  「大学の講義のような公教育の場における知 識や事象の表現方法や伝達方法と、たとえばオ ウム真理教の松本智津夫被告の説教との違いは どこにあるのだろうか。」  入学したばかりの学生にとって、これらの質 問は少々荷が重すぎた。しかし、大学の講義と 説教の違いは「誰にでも適用できる普遍的で客 観的な表現」と「個人の信念や価値観に依拠し た表現」の違いであるという説明にはなるほど とうなずき、その違いが「高度に発達した科学 技術を支える世界」と「匠の技の世界」の違い にも通じているという解説には驚きに近い反応 を示した。  このゼミを通して、生きることに歓びを感じ たり、自己の価値観を確立していくことと、科 学的に思考することの違いを理解して欲しいこ と。その上で、充実した人生を送るために何を 学ぶ必要があるのかを考えてほしいという、筆 者の願いが彼らに伝わったかどうかは定かでは ない。ましてや、これらの質問が循環システム 工学科の設立の背景に流れる知の枠組みに関わ る問題であるということを理解してもらうまで には時間が必要であろうし、 「普遍的で客観的 な表現」と「信念や価値観に依拠した表現」の 違いを論じていくことが「いま、科学の何が問 われているのか」という問いに答えることにつ ながるとは想像もできないであろう。  そこで今回の特集で筆者に与えられたこの紙 面を借りて、不明のままになっていたゼミの目 的を明確に伝えたいと思っている。         なぜ循環か  さて、エントロピー増大法則が成立している この世界で、生命を維持する個体は開放系でな ければならない。生命を維持するためには、エ ントロピーが低い物質やエネルギーを体内に取 り込み、エントロピーが増大してしまった物質 やエネルギーを体外に排泄しなければならない。 ところが人間をはじめとする多くの生命を支え ている地球は、周りを延々と続く真空の壁に囲 まれ、ものの出入りのない物質的には閉じた系 である。外界と出入りするのは、太陽の光や熱 を中心とした電磁波という形態でのエネルギー だけである。  この地上では、個体総数が60億にも達しよ うとする人間が、言語を中心とした知識体系と、 社会という共同体を創り上げ、太陽のエネルギ ーに由来した生態系を利用するだけでなく、自 然界に存在しなかった多くの化学物質を創り出 すことに成功した。新たに生成された物質は新 しい製品を生み出し、それらによって活発な産 業活動や経済活動が展開された。その結果、驚 異的な量の生産と消費を可能にし、財やサービ スのフローによって計られるGDPの評価基準 に従うと、驚くほど豊かな社会を実現した。  しかし、生産者としての植物、消費者として の動物、分解者としての微生物による、水と炭 素の大循環システムが地上の生物の生命維持の 基本的機能であることを理解しているにもかか わらず、人類が創りあげた社会では、資源から 廃棄に至る過程で、物質が循環していないこと にほとんど関心を示してこなかった。その結果、 資源は枯渇に近づき、処理しきれないほどの廃 棄物は地球環境を激変させる事態を招いた。そ して個体数が60億までに増大した人類は、自 らの生存基盤を危うくする状況に至った。  この危機的状況を脱し、人類が持続して豊か に生き続けられるような社会を構築するために は、太陽からの光エネルギーを有効に活用し、 生産、流通、消費のあらゆる段階で、資源やエ ネルギーの消費を極力抑え、使用後の製品につ いては再資源化や再利用を実現するいわゆる循 環型社会の構築が必須となる。  このような循環型社会を実現するための必要 条件として循環システム工学科は、三つの循環

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の同時実現を提起した。一っは資源や廃棄物の 有効な活用という意味での物質の循環であり、 二っ目は市場経済の世界で財やサービスと貨幣 が家計や企業の間をスムーズに流れるという意 味での経済の循環であり、最後の循環は、これ ら二っの循環を支えるために利用される資源や 廃棄物、財やサービスの流れを正確に伝えるた めの情報の循環である。      新しい工学教育の試み  循環型社会の構築が人類の生存にとって必須 の条件であるのならば、循環型社会の構築に貢 献できる人材の養成は教育機関にとって不可欠 な要件となる。この考えに基づいて、物質の循 環、経済の循環、情報の循環を同時に教授でき る教育研究機関として本学科の創設が認められ た。  以上の位置づけからも明らかなように、循環 システム工学科の教育目的の第一は、物質的閉 鎖系である地上で構築された大量生産・大量消 費・大量廃棄の仕組みが地球環境問題発生の要 因であることを科学的に伝えることである。こ の事実の認識の上に立って次には、深刻な環境 問題を解決するために、物質の循環技術を知る だけでなく、経済の循環という意味での、経済 や経営の問題、社会システムの問題、法制度や 倫理の問題などを理解し、さらに情報の循環と いう意味で、これらの問題を的確に把握するた めの情報活用技術を習得することになる。  このような教育は科学技術の修得を中心に据 えた従来の工学教育の体制とは大きく異なるも のである。そこで、この新しい工学教育を実現 するために本学科では、数学・物理学・化学・ 生物学などのいわゆる自然科学系の基礎科目だ けでなく、経済学や社会学などの社会科学系の 科目、両者の中間的な領域として経営工学など が基礎科目として用意されている。さらに学科 全体のカリキュラムの組立にも新しい試みが取 り入れられている。従来の工学部では基礎科目 から専門科目へ、そして先端的科目へという積 み上げ方式によって教育が行なわれている。本 学科ではこの積み上げ方式を一部見直し、逆さ まの方式を導入した。  ,  っまり新入生に現代社会が直面している課題 が何であるのかをまず提示し、循環システム工 学科が設立されることになった背景を理解する ことができるような科目を用意した。具体的に は、地球環境問題の発生要因を自然科学・社会 科学の両面から捉えることによって問題の原点 を認識してもらうための科目。学科のカリキュ ラムや講座構成が地球環境問題の解明や解決と どのように関わっているのかを理解してもらう ための科目、学科所属の教師の専門領域と環境 問題との関係を紹介するための科目の三つを一 年次生を対象に開講している。  これらの学習を通して、解決してみたい課題 や学んでみたい専門領域を低学年で見つけ、物 質循環、社会システム、システム基礎と名付け られた3大講座の専門科目へと進んでいくこと になる。また上級学年に進んだ学生は、社会を 客観的な立場に立って理解し、循環型社会を構 築するために必要な条件を普遍的に表現できる ようにするため、新しい形のシステムの表現方 法を学ぶことになる。これらは、直面する問題 を客観的に認識し、普遍的に表現するためには、 数学的な表現以外の方法もひつようであること を認識してもらうためである。そのため、従来 から導入されている物理学や化学やコンピュv−一一 タなどに関わるシステムを記述する数学的・論 理的な表現を学ぶだけでなく、数学的な表現は できないが人文科学的な手法によって記述され る社会システムを学び、生態系や生命系などを 記述する多様な表現方法を学習することになる。  従来の工学教育に比較して相当に拡がりを持 ったこれらのカリキュラムと、必ずしも明確で ない専門性から構成されている本学科の教育方 法には疑問の声も少なくない。しかし創設に直 接関わった当事者としては、ここに示されたよ うな総合的なものの見方を習得するための教育 は、環境問題を理解し解決していくための教育 には不可欠な条件と考えている。20世紀まで のように右肩上がりの経済成長を想定し、それ を実現するために貢献してきた工学系の教育研 究体制から、持続可能な循環型社会への転換す るためには、本学科の新しい試みが必要である と考えている。それが全国の国立大学の中で初 めて設立を認められた最大の要因であると考え ている。

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        知の再構築  小文で提示しておきたい本学科創設に関わる もう一つの問題は、循環型社会の構築という現 実的な課題の背景にある、より根源的な「知の 再構築」に関する問題である。ここで「知の再 構築」という表現を採用したのは昨年10月に 発表された大学審議会の「答申」に謳われた「知 の再構築」という言葉を意識しているからであ る。循環システム工学科の設置にむけ比較的に 早い時期から自然科学の知の枠組みの問題を意 識し、その不足する知の領域を補う必要性を感 じていた筆者は、知の再構築の必要性がどこに あるのか、具体的に知の再構築を実現するため には何が必要なのかを提示しておきたいと思っ ている。  人類の生存を脅かすまでに至った現代社会の 大量生産・大量消費・大量廃棄の社会構造を循 環型社会の構造に転換するということは、きわ めて具体的で現実的な課題であるが同時に、す ぐれて根源的なレベルでの知の枠組みの再構築 の問題でもある。もちろん現実の社会は必ずし も知の世界が導く結果にしたがって変化するわ けではない。しかし、大量生産・大量消費・大 量廃棄という現代社会を支えてきたのが自然科 学の知の成果であったことも疑いのない事実で ある。その意味で、循環型社会への構造転換が 不可欠であるという事実は、その社会を支えた 知の再構築も同時に不可欠であると判断せざる をえない。  ところで自然科学の知の枠組みの転換、つま りパラダイムの転換は、現実の結果と論理の不 整合を乗り越えるため、ニュートン理論からア インシュタイン理論という新しい知の枠組みを 生み出すような変革により実現されてきた。と ころが直面している知の再構築という課題は、 現実と論理の不整合から生まれているわけでは ない。  課題発生の要因は、地球の物理化学的な性質 に関わる知、水と炭素の循環を説明する知、生 産用役市場と消費財市場を通して成立する経済 循環を記述する知、生きることの意味を展開す る知などの、それぞれが独自の知の枠組みの中 で論理を展開し、互いの枠組みの整合をとるこ とのないまま、知を語るべき人間自身の生存が 脅かされる事態が差し迫って来たということで ある。っまり、異なった知の枠組みを構築して いる世界が、それぞれ独自の知の論理を展開し ているだけでは対応できない困難に直面してし まったのである。     「自然科学の知」を超える知  この知の枠組みの問題を工学教育の世界に限 定して考えるならば、問題が発生する最大の要 因は科学技術を支える「自然科学の知」の特殊 性にある。  自然科学の知は、数学や物理学や化学といっ た普遍的で客観的な表現を利用し、一貫した論 理の展開によって、多様な価値観や感性が論理 展開の過程に入り込む余地がないように構築さ れている。自然科学の対象が普遍的で客観的な 手法によって表現されるようになった結果、解 くべき問題はどんなものなのかが世界中の誰に も理解できるような形で表現されるようになっ た。その結果、提示された問題に誰でも回答でき るようになり、理論は驚くほどのスピードで展 開されていった。これは、個人の伝統的な技能 であった匠の技ではなしえなかったことである。 一人の師匠が直接手ほどきして伝える限られた 知識伝承形態から、世界規模で問題を共有するこ とができる共通処理が可能な基盤を確保したの である。そして、誰にもが利用できる基盤を確保 した自然科学の知の成果は、次々と技術へ応用 され、驚くべき速度での科学技術の進展を実現 した。  しかし、普遍的で客観的な表現や論理的な理 論展開を可能にした「自然科学の知」は同時に いくっかの問題をも包含している。前提条件で ある普遍的で客観的な表現は、それに適合しない 固有な問題や主観的な問題を知の枠組みから排 除することになった。っまり、自然科学の知の 体系を修得するということは、脱個性化を前提 にすることを意味し、脱場所化を受け入れるこ とでもあった。  ところが社会を構成している人間一人ひとり は、それぞれが固有な価値観を持ち、多様な感 性を備え、主観的な判断を行う生き物である。 それぞれの地域は、固有な自然環境と独自の歴 史や文化を育ててきたのである.そのため、脱個

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性化を前提とする自然科学の知の世界は、個性 を持っている人間自身とはどんどん乖離してい くことになる。脱場所化を条件とする自然科学 の知は、世界中どこに行っても同じような建造 物が建ち、同じような製品があふれる世界を創 りあげたが、地域に固有な自然や歴史や文化と はどんどん乖離することになった。  このような自然科学の知の問題点は、地球環 境が人類の生存を脅かすほど深刻になっても、 科学技術の社会的な評価から科学技術自身を見 し直したり、人々の不満の声を取り上げて知の 展開に反映するようなるような機能を自身の知 の枠組みの中に許容できないことである。普遍 的でもなく客観的でもない、個人の価値判断や、 感性に依拠した問題は自然科学の知の枠組みの 中では処理できないのである。そのため、自ら が引き起こした地球規模での環境問題の社会的 な側面については自らの知をもっては対処でき ないのである。この深刻な状況を克服するために は、脱個性化し脱場所化している「自然科学の 知」の枠組みを見直し、これまで排除してきた感 性や価値観などの固有で主観的な領域を、自ら の枠組みに取り込むような新たな知の構築が必 要になるのである。       新しい教育の糸口  ところが自然科学の知に感性や価値観などの 固有で主観的な領域を加えた新たな知を構築す るためには大きな壁が二つ立ちはだかっている。 一つは、 「自然科学の知」の世界で育ってきた 人間によってほとんど占められている自然科学 の知の教育現場において、これまで排除してき た領域を受け入れることができる教師が本当に 居るのかという問題である.もう一っは、感性や 価値観に関わるような固有で主観的な領域の問 題を、いかに新しい知の対象として表現し、伝 達するのかという問題である。  この二つの壁を乗り越えるための糸口は、1. プリゴジンらが展開している散逸構造の理論に 始まるカオスや複雑系などの一連の成果である と考えている。っまり、普遍的で客観的な論理 展開の結果として現れるカオスや複雑系の世界 の意味するところを明確に認識することである。 表現を変えれば生き物には「必然と偶然」が同 居しているという事実を受け入れることである。 普遍的で客観的に表現された問題を論理的に展 開してえられる必然の結果と、一人ひとりの人 間によってまったく違った価値判断や受け止め 方がされる偶然ともいえる結果は、同じ人間の 中に同居しているという事実を、知の枠組みの 前提条件として承認することである。この前提 に立てば、 「われわれはもはや科学的価値と倫 理的価値の古い先天的な区別を受け入れること はできない」という1.プリゴジンの発言を素直 に受け入れることができる。  この新しい知の枠組みを教育の場に導入する ことは、今世紀はじめ以来続けられたアカデミ ズムについての論争に一っの方向性を与えるこ とでもある。つまり、学問を教える場として理 論的な体系を重視する教育に主眼を置くのか、 文化創造を担う直感や感性を育てることを重視 するのかというアカデミズムに関しての論争に 対して、両者を統合した教育を提案することに なる。   新しい教育の構築とその果たす役割  いま重要なことは、自然科学の知を超えた新 たな知を具体的に構築できるような教育研究体 制を確立することである。工学教育の場におい ては、普遍的で客観的な表現方法と論理的な理 論の展開を教授することは難しいことではない。 しかし、自然科学の知の体系を習得することの 重要性と同様に、直感的に捉えることや個人的 な価値判断の重要性をも教授することは容易で はない。  従来のように自然科学の知の枠組みの中で育 った教師集団だけではこれを実現することはほ とんど不可能と思われる。幸いに循環システム 工学科には人文社会系出身の複数の教師もいる。 また、本学科では自然科学系と人文社会系の講 座の壁を取り払い、循環型社会の構築という共 通の課題の下で、新たな知の枠組みの構築をめ ざすことを確認している。また教育面では「現 代思想」や「プレゼンテーション論」や「シス テム論」などの講義科目を通して、人間には普 遍的で客観的な論理展開の能力と同時に、豊か な感性や多様な価値観が備わっていることを伝 え、新たな知の枠組みの構築の必要性を語って

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いくことになっている。これらにより、脱個性 化し脱場所化した自然科学の知が排除した領域 を、カバーする新たな工学教育の確立を目指し ているのである。  ここに示した新たな知の枠組みの構築は、雑 誌「科学」の800号特集号で提起されたいく つかの論説に直接関わる問題であり、提示され た問題への解答を与えものである。例えば平川 の提起した、対抗的科学の構築に貢献できるよ うな人材とは、単なる自然科学の知の世界で育 った人間ではなく、本文で提案している豊かな 感性や多様な価値観についてその重要性を認識 している人材と考えられる。同様に、金森が提 起した環境の政治学は、自然科学とそれをはみ 出す価値的判断を視座に組み込む話であり、本 論では、それを可能にするための糸口を新たの 知の構築という形で提示したと考えている。さ らに上田が提起した、科学技術がいかに自らを 再編できるかという問いに対する一つの回答が 本文そのものであると考えている。 学教育の試みと新しい知の枠組みの実現方法に ついて論じた。ここで展開した新しい工学教育 の実践と知の再構築への努力の問題は、単に本 学科において必要というだけではない。地球環 境問題に直面している科学技術のあらゆる領域 っまり、あらゆる工学教育の現場においても必 要と考えている。  また小論で展開した新しい知の再構築の問題         xは、大学審議会が答申した「知の再構築」と同 レベルの問題として全国の自然科学系の学部に おいて本格的に議論される必要があると考えて いる。知の再構築の問題を考えることを通して、 21世紀に向けた工学教育のあるべき姿の議論 が実りあるものになっていくと考えている。そ の結果大衆化された時代における大学教育、特 に工学教育の改善に少しでも役立てばと願って いる。 参考文献       1) 鈴木嘉彦:「新しい工学教育と知の再構築」、         まとめ       科学(岩波書店)Vo1.69、 No.11、 PP865−868、1999 循環システム工学科が目指している新しい工

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