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卒業年次における診療の補助技術トレーニング方法の検討(第1報)

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(1)

原著論文

卒業年次における診療の補助技術トレーニング方法の検討(第

1

報)

武内和子1) 小漬優子1) 谷山牧1) 一柳陽子1) 山崎千寿子1) 要 旨 本研究は、診療の補助技術の特性、および入職後も学び続けるための自己効力感の向上に 着目し、卒業年次における診療の補助技術(採血・輸液管理・勝脱内留置カテーテル挿入・ 口鼻腔吸引・血糖測定) トレーニング方法の検討を目的とした。 技術トレーニング方法は、学生同士で自由に練習でき、学生の疑問にすぐに応えられる環 境を設定して、任意参加で年4回の反復練習とした。調査方法は、学年始期・終期に質問紙 調査、学年終期に看護技術習得度の学生による自己評価を行った。その結果、本研究におけ る診療の補助技術トレーニングは、参加回数が増えると学生の技術習得度自己評価が高くな る傾向にあるが、自己効力感は相対的に高くなるとは言えないことが明らかになった。演習 はあくまで準備された環境においての体験であり、現場で実践していない不安から自己効力 感が高まらないことが考えられた。 キーワード:看護技術トレーニング、診療の補助技術、卒業年次

1

.

緒言

厚生労働省から出された

r

2

0

0

7

年看護基礎教育 の充実に関する検討会報告書』において、卒業直後 の看護師技術能力と臨床が期待している能力との聞 の事離が存在していることが指摘されている 1)。新 卒者は多くの看護技術を就職後に初めて行うという 現状があり、卒後に就職する施設ごとに様々な研修 や教育プログラムなどが提供されている。しかしな がら、新たな技術の修得に向けて多忙な環境でト レーニングを行うことは新卒者にとっては大きな負 担となることが予測され、技術修得に時間を要する 新卒者の場合には、技術の未熟さや焦りなど、から自 信をなくし、精神的健康が回害されたり、早期離職 にもつながる可能性があると考えられた。

A

看護短期大学の

2

0

0

5

年度臨地実習における看 護基本技術体験状況をみると、パイタルサインの測 定、日常生活援助についての実施は多いものの、診 察の補助技術(注射、採血、吸引、勝脱留置カテー テル挿入、導尿など)については見学のみとなって いる学生が多く、多少の差異はあるものの毎年同様 の傾向がみられた 2)。これらの技術を臨地実習にお いて実施することは困難であるが、看護師免許取得 後にはすぐに必要となる技術であると考えられ、卒 1)川崎市立看護短期大学 業前までにその基礎的な手技を身につけておくこと が求められる。 診療の補助技術は、演習などの限られた時間内で 習得できる技術ではなく、シュミレーターを使用し て練習するとしても緊張を伴う技術である。学生の 自己学習のため、看護実習室を自由に使用できる教 育機関も多いが、自己学習の限界を指摘する報告も ある 3)。そのため、今回、卒業年次の学生を対象に して、診療の補助技術を練習できる機会を提供し、 効果的なトレーニング方法を検討していきたいと考 えた。 また、技術の習得と同時に、新卒者が多くの看護 技術を就職後に初めて行うという現状に対応して、 入職後も自分からすすんで学習していく学問的姿勢 の育成に有効と考えられる自己効力感の向上に着目 した。多様に変化する今日の医療現場において、そ の学習を推進していく能力の育成は、教育と臨床の 事離を埋めるー教育方法となることが期待される。

1

1

.

研究目的

本研究は、診療の補助技術の特性、および入職後 も学び続ける状況に対応するための自己効力感の向 上に着目し、学生同士で自由に練習でき、学生の疑 問にすぐに教員が応えられる環境のもとで、任意参 加による反復練習を行い、卒業年次における診療の

9

(2)

-補助技術(注射一般・採血・輸液管理・勝脱内留置 カテーテル挿入・口鼻腔吸引、血糖測定)トレーニ ングによる学生の学習効果、および意識変化の検討 を目的とした。 具体的には、以下の

2

つに焦点化した。 1.看護技術力向上に向けて効果的な技術トレー ニング方法の検討とその評価 2.技術トレーニングが卒業時の自己効力感に与 える影響の検討

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l

l

.

研究枠組み

診察の補助技術は、目的的運動を遂行する上で必 要な感覚刺激の知覚と統合を可能にする操作的技 能、つまり精神運動技術 CPsychomotorSkill)と 言い換えることができる。精神運動技術の学習に影 響を与える要因として、手の器用さ、態度、動機づ け、自信、筋肉運動感覚、知能、年齢などの学生の 個人差があげられる。精神運動技能学習を行うため には精神的、身体的、情緒的な準備が整っている必 要があり、スムースな技術修得のためには、反復訓 練が必要であると考えられている。また、学習の最 図

1

本研究の枠組み 終段階は成功に終わることが大切で、そのことが強 化につながると指摘されている4)。 こういった背景、また入職後も現実の現場に対応 して L、く学習が続くことなどを考慮すると、診療の 補助技術は、極力リラックスした状態で反復練習 を行い、基礎教育終了段階においては、過度の不 安がなく、就職した現場で学習し続けられるモチ ベーションを備えた状態であることが望ましいと 考えられた。モチベーションを検討している理論 のーっとして、DeciとRyanの自己決定理論 CSelf -Determination Theory: SDT)があるの。 SDTに よると、人は自律性、自己効力、関係性に対するニー ズが満たされることにより、自ら何か行動を始めよ うとする内発的な動機付けが高まると考えられてい る。よって、技術の習得と同時に、精神運動技術教 育の成果として期待される自己効力感の向上が、今 後の自発的学習行動の基礎になることが推測され fこ。 本研究の枠組みは、関連要因、技術トレーニング の考え方とプログラムの実際、技術トレーニングの 期待効果から、図

1

のように考えた。 卒業時に期待される力 関連要因 診療に伴う技術(精神運動技術)習得への支援 (診療の補助技術の習得 +自発的学習行動) 技術トレーニング参加の 意志 技術練習を行う動機 自己効力感 本研究における診療の繍助妓術(精神 運動技術)トレーニングの考え方 1.反復訓練 2.教育方法 1 )自己主導型の学習 2)自己効力感を高める対応 ①早いフィード1¥"ク ②否定・批判なしの肯定的認知を基 盤として、間嬢的に学生に関わる トレーニング・プログラムの実際 1.診療の補助技術 5項目(年4回) 2.1)自己学習(グループ学習想定) 2)①会場・物品・参考書の準備、教員の常在 ②学生に求められたときに助言をする

-10-適切な技術の修得 自己効力感の向上

(3)

I

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.

研究方法

1 .研究期間 2008年4

月 -

2009年3

2

.

研究対象

A

看護短期大学の卒業年次学生 76名

3

.

調査方法 学年始期・終期に質問紙調査、学年終期に看護技 術習得度の学生による自己評価を行った。なお、学 生による自己評価は、今後の自己の課題を明確にす ることを目標に考えてとりいれた。

1

)学年始期の調査項目:技術トレーニングへの参 加の意志とその理由・一般性セルフェフィカ シー尺度 (GSESTest: General Self-Efficacy Scale Test坂野らが開発した 16項目からなる

2

リカートスケールで、定式質問紙を購入して 使用した、 16点満点)。

2

)学年終期の調査項目:参加回数・自由記述によ る参加した感想・一般性セルフエフィカシー尺 度、看護技術習得度自己評価チェックリスト(使 用テキストを参考にして作成した、各技術が

4

-8

項目からなる

2

リカートスケール)

4

.

技術トレーニング方法 1)卒業年次の学生を対象にして、技術トレーニン グを任意参加で年

4

回(①

4

月末、②

7

月末、 ③

1

1

月末、④

3

月上旬)実施した。技術トレー ニング日時は、授業、実習に支障のない日程の

1

日を確保し、学生の練習状況にあわせて

1

回 およそ 4-5時間開催した。

2

)トレーニングする看護技術の項目は、開催時期 ①②の観察結果から、学生が自分から練習に取 り組むことの多かった【採血】【血糖測定】【勝 脱内留置カテーテル挿入】【口鼻腔吸引】【輸 液管理】の

5

技術とした。【採血】【勝脱内留置 カテーテル挿入】【口鼻腔吸引】の

3

技術は、 シミュレーターを用いた技術トレーニングを 行い、【血糖測定】は自己血糖測定、【輸液管 理】は展示器具を用いた手技の確認を行った。 なお、【採血】は学生の希望を受けて

4

回目に 学生同士の採血の実際を行った。

3

)教員は会場・物品・参考書の準備をして、オリ エンテーションを行ったのち、同会場にいて見 守る姿勢で常在し、教員からの声かけは行わず 学生に求められたときに助言をするのみとし て、学生が極力リラックスした状態で主体的に 繰り返し練習できる環境を提供した。

5

.

分析方法 1)技術トレーニングへの参加の意志とその理由、 および参加した感想は、記述内容を読み、

1

つ の意味をもっ文節で区切り、類似した内容を質 的帰納的に分類した。

2

)看護技術習得度自己評価チェックリストは、各 技術の項目を「できる

J

1点、「できない

J

0点 として集計した。 3)一般性セルフエフィカシー尺度 (GSESTest: General Self-Efficacy Scale Test) は、 GSES 用紙に明記されている

5

段階評定表に従った。 上 記 2) 3)の集計の検定は、 SPSS11.5Jfor Windowsを用い、 2試料の場合はMann-Whitney のU検定、多試料の場合はWilcoxonの検定を行っ た。また、各技術習得度の得点と参加の有無の関連 はχ2検定を行った。有意水準は0.05%未満とした。

6

.

倫理的配慮 アンケー卜の協力は任意であり成績には関係がな いこと、アンケートは無記名であること、収集した データは研究以外に使用しないこと、結果は個人が 特定されないように処理すること、調査結果を学会 などで発表することなどを説明した。

v

.

結果

卒業年次の学年始期の質問紙調査、学年終期の質 問紙調査および看護技術の学生自己評価の結果は、 以下のとおりである。 1.アンケート回答者数および技術トレーニング参 加回数 アンケート回答者数(回収率)は、学年始期が 73名 (98.6%)、 終 期 が65名 (88.2%)であった。 技術トレーニングに参加した学生は、総数は40名 (52.6%)で、1回目 30名、2回目 19名、3回目6人、

4

回目 18人(重複あり)だった(図

2)

。参加回数 別人数(参加者総数40名における割合)は、

1

回 が14名 (35%)、2回が18名 (45%)、3回が5名 (12%)、4回が1名 (3%)、不明が2名 (5%)だっ た(図3)

2

.

技術トレーニングへの参加の意志とその理由 学年始期、技術トレーニングに参加を希望した学 生は、「是非参加したい

JI

参加したL、」を合わせ て68名 (93.2%)だった。技術トレーニングに参 加する理由としての自由記述式回答に記載したのは 61名で参加を希望する理由は、「技術に自信がない から・不安だから」が20名でもっとも多く、「技術を

(4)

-11-図

2

参加人数(参加者総数

4

0

名 重複あり) 高めたL、から」が

1

6

名、「実習に向けて」が

1

3

名、 「患者のため」が6名、「就職のため」が2名、その 他 (1予定しだい」など)が6名だった。

3

.

看護技術習得度の比較 1)各技術項目の自己評価(表1) 2)参加の有無による習得度の比較(図4) 技術トレーニングに参加した学生のほうが、すべ ての技術項目で技術習得度の自己評価が高い傾向に あった。とくに、【採血】において参加した学生の ほうが、自己評価が統計的に有意に高かった。 3 )参加回数による習得度の比較(図5) 【採血】【口鼻腔吸引】【輸液管理】の 3つの技術 項目で、統計的に有意ではなかったが、

3

回以上参 加した学生のほうが自己評価が高い傾向がみられ た。逆に、【血糖測定】【腸脱内留置カテーテル挿入】 の

2

つの技術項目では、

1

回、

2

回、

3

回以上参加 図3 参加回数別人数 4回 不明2名(5%) 1名 (3

%)

の順で自己評価が低くなる傾向がみられた。

4

)技術習得度の得点、と参加の有無の比較(表

2)

【採血】【口鼻腔吸引】で、“すべてに「できる」 と答えた満点の学生"が参加した学生の方に統計的 に有意に多く、【血糖測定】【輸液管理】でも参加し た学生のほうに多い傾向がみられた。一方、【勝脱 内留置カテーテル挿入】は、参加した学生のなかで も、満点の学生より、“できない項目がある学生" のほうが多かった。 4.自己効力感 (GSES得点)の比較 1 )学年始期と学年終期の自己効力感 (GSES得点) の比較 学年始期は平均

5

.

9

点、学年終期は平均

6

.

6

点で、 統計的に有意ではなかったが、始期より終期のほう が高い傾向にあった。 表1 各技術項目の自己評価 n 最小値 最大値 平均値 標準偏差 採血(項目7) 62

7

5.5

1

.7

血糖測定(項目 4) 64

4 3.6

0

.

9

鵬脱内留置カテーテル挿入(項目8) 64 8 5.6 2.6 口鼻腔吸引(項目 5) 64

5 3.8

1

.

8 輸液管理(項目的 64 6 5.1

1

.

3 1 2

(5)

-7.0 6.0

5.0

4.0

3.0

2.0 1.0 0.0 図 4 参加の有無による習得度の比較

*

ロ参 加 図不 参加 採 血 血糖理,Jr

跨脱内・・・ 口鼻腔吸引 輸;夜管理

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検定

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参加回数による習得度の比較 8.0 6.8 7.0 6.0

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い ロ3以回上

2.0 1.0 0.0 採 血 血糖理Jr定 時脱内・・・ 口鼻腔吸引 輸 液 管 理 13

(6)

2

技術習得度の得点と参加の有無の関連 (小項目すべてに「できる」と答えた学生とそうでない学生の比較) すべてに「できるJと 答 え た 学 生 人 ( %) 参加 21(53.8) 採血 不参加 5(22.7) 参加 31(78.0) 血 統 測 定 不参加 17(73.9) 勝脱内留置 参加 18(45.0) カテーテル挿入 不参加 7(30.4) 参加 26(65.0) 口鼻腔吸引 不参加 8(34.8) 参加 23(58.0) 輸液管理 不参加 12(52.2) 図6 参加の有無による自己効力感 (GSES得点) の比較 一 一 ー 一 一 6.9 F玄ナー宅 6.8 6.6 6.4j , 不安加 6.2I r:-t;".'!':'"s r fI ロ重要加 6.0 5.8 5.6 2 )参加の有無による自己効力感の比較 (図6) 参加は平均

6

.

9

点、不参加は平均

6

.1点で、統計 的に有意ではなかったが、技術トレーニングに参加 した人のほうが不参加の人より高い傾向にあった。

3

)参加回数による自己効力感 の 比 較 (図7) 1回が平均7.0点、 2回が平均7.7点、 3回以上 が平均4.0点で、統計的に有意ではなかったが2回 参加した人がもっとも高く、続いて

1

回、

3

回以上 できない項目がある n 学 生 人 (%) 人 ( %) p 18(46.2) 39(100)

*

17(77.3) 22(100) 9(23.0) 40(100) 6(26.1) 23(100) 22(55.0) 40(100) 16(69.6) 23(100) 14(35.0) 40(100)

*

15(65.2) 23(100) 17(43.0) 40(100) 11(47.8) 23(100)

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1倹定

*

:

P <0. 05 図7 参加回数による自己効力感 (GSES得点)の 9.0 8.0 7.0 6.0 5目0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 比較 7.0 7.7 参加した人の順で高い傾向にあった。

5

.

参加した感想 ロ1回 ロ2回 ロ3回以上 自由記述式回答に記載したのは お 名 だった。分 析した結果、「技術の手技を確認できた」が

1

4

名、「自 信になった」が

1

4

名、「楽しかった、友だち ・先生 と話ができた」が6名、その他(1実習では使わなかっ たJ)

1

名であった(重複回答あり)。就職の不安に 関する直接的な記述はみられなかった。

-

1

4

(7)

-羽.考察

今回の結果から、焦点化した

2

つの研究目的につ いて、以下のことが明らかとなった。 1.看護技術力向上に向けての効果的な技術卜レー ニング方法の検討とその評価 「参加の有無による習得度の比較Jl

r

技術習得度の 得点、と参加の有無の関連』の結果から、本研究で試 みた診療の補助技術トレーニングは、診療の補助技 術に対する学生の自己評価を高める傾向にあると考 えられた。昨今、診療の補助技術は、臨床の場にお ける患者の人権への配慮や医療安全確保のための取 り組みが強化されるなかで、技術実習の範囲や機会 が限定されて学習機会が少なくなり 6)、学生は

2

年 次の講義・演習以来の長い学習ブランクが起こりや すくなっている。今回、卒業年次の学生に技術トレー ニングを行ったことで、学生にとって診療の補助技 術の復習の機会となり、また、学生同士で主体的に 教員や資料を活用して学ぶことで、学生個々の課題 解決の機会が得られ、学生は看護技術にある程度自 信がもてる状態になったと考えられた。 だが、『参加回数による習得度の比較』では、【採 血】【口鼻腔吸引】【輸液管理】の

3

つの技術項目で、 参加回数の多い学生のほうが自己評価の高い傾向が みられたのに対し、【血糖測定】【鰐脱内留置カテー テル挿入】の

2

つの技術項目は自己評価が低くなる 傾向がみられた。『技術習得度の得点と参加の有無 の関連』として【腸脱内留置カテーテル挿入】が参 加した学生のなかでも“できない項目がある学生" が多いこと、逆に【血糖測定】は不参加の学生でも 満点の学生が多いことから、学生は【腸脱内留置カ テーテル挿入】を難度の高い技術であると感じ、【血 糖測定】を難度の低い技術であると感じやすいこと が考えられた。また、演習状況として、【採血】【口 鼻腔吸引】【輸液管理】を行う学生が多い場面がみ られていた。【勝腕内留置カテーテル挿入】【血糖測定】 の自己評価が低くなる傾向は、学生の技術の難度や 関心の高さなどによる複合的な理由が考えられた。 学生が自由に学習できる環境においては、主体的に 取り組む姿勢を習得できる反面、学生の関心などに よる技術学習到達度の学生聞のバラツキがみられる おそれのあることが示唆された。 その他、【採血】の習得度に有意差が出たことは、

4

回目で学生同士の採血を実施したことが大きな要 因と考えられ、より臨床現場に近い手技での練習の 有効性が考えられた。 2.技術トレーニングが卒業時の自己効力感に与え る影響の検討 『学年始期と学年終期の自己効力感

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得点、) 比較Jl

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参加の有無による自己効力感の比較』の結 果から、自己効力感は学年始期より終期のほうが高 い傾向にあり、技術トレーニングに参加した学生の ほうが不参加の学生より高い傾向にあった。卒業年 次の学生は、 3月になると学生生活の終了を真近に 控え自己成長感も高まって、看護職への自信がもて るようになっており、技術トレーニングに参加した ことでさらにその自信が高くなっていることが考え られた。臨床では、医療技術の進歩、変化がめざま しく、新人の看護師として送り出す立場としては、 臨床現場の変化に対応し、自ら考え、自ら切り開い ていく力を学生が身につけていくことを期待するも のである。 だが一方、『参加回数による自己効力感の比較』 では、技術トレーニングの参加回数を重ねること が、必ずしも自己効力感を高める結果にはつながら なかった。下村ら 7)は、看護学生の臨床実習前後 の看護技術に対する自己効力感の変化パターンをと らえ、「講義や演習などの座学によって得た知識と 実際の看護経験とを臨床実習でうまく結び、つけられ ることが、看護技術全般に対する自己効力感を高め るためには重要である」としている。学内における 講義・演習のみでは、臨床実践に向けての自己効力 感の向上に限界があることを指摘している。このこ とは、臨地実習における経験度と自信の程度が相関 するといった先行研究8)やトレーニング中に「本当 (の患者さん)はどんな感じですか」と言った学生 がいたことによっても裏づけられた。今後、学生の 過度の不安、自信低下が認められた場合、知識と実 際の看護経験とを臨床実習でうまく結び、つけられて きているかなどを指標として、就職後のリアリティ ショック緩和対策などのフォローアップの必要性が 検討課題となった。 その他に、自己効力感の個人内変化は相対的に現 れている可能性があることなども考えられ、学生個 別の自己効力感の変化を捉えることが必要とされ る。

3

.

研究の限界・今後の課題 技術トレーニングへの参加希望は93.2%と高かっ たが、実際に参加した学生は52.6%にとどまった。 参加者数が少なかった理由として、参加希望の記述 内容をみると、技術に自信がないことや不安などの

15

(8)

-漠然としたメンタル面をあげる学生が多く、学生の なかでの参加目的が具体的でないことが

1

つの要因 として考えられた。また、

3

月上旬の参加学生の減 少は、参加した学生の感想に就職に関することの記 載がなかったことから、 3月上旬は実習や国家試験 が一段落し卒業式直前にあって、看護師になる実感 をまだ感じられにくい時期であることも考えられ た。本研究は、看護基礎教育終了後の技術能力と臨 床が期待する能力との事離を埋めることをねらいと して取り組みを始めたが、学生の任意参加には限界 があり、今後は参加目的を明確にして開催していく ことが必要であると考えられた。 2009年 3月厚生労働大臣直轄の「看護の質の向 上と確保に関する検討会」中間とりまとめで、卒後 臨床研修の制度化があげられた。これは、医療施設 と看護基礎教育機関の連動を求めるものであり、看 護基礎教育の果たすべき役割の見直しが必要とされ るものである。卒業時の学生が習得しておきたい知 識・技術はどのようなものか、その到達度を明確に して、就職する医療施設の継続教育に伝達、連携し ていくことが重要になっている。今後さらに、卒業 前の学生の技術修得度の確認や、それに対応した学 習援助は欠かせないものになると考えられ、実施対 象学生の検討、学内における演習や臨地実習での経 験度との連関、到達目標を明らかにした技術獲得の ための体制整備などが課題になると考えられた。

V

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.

結論

診療の補助技術の特性、および入職後も学び続け るための自己効力感の向上に着目して、

1

看護短大 の卒業年次にある学生を対象に、診療の補助技術ト レーニング(学生同士で自由に練習でき学生の疑問 にすぐに応えられる環境を設定した任意参加の反復 練習)を実施し、学年始期・終期に質問紙調査、学 年終期に看護技術習得度の学生による自己評価を 行った。その結果、本研究の技術トレーニングは、 参加回数が増えると学生の技術習得度自己評価が高 くなる傾向にあるが、自己効力感は相対的に高くな るとは言い難いことがわかった。学内での演習には 実践力獲得の限界があり、卒業時の到達目標を明確 にして、学生が就職していく医療機関の卒後臨床研 修との連動を視野に入れた、実践的な指導体制の整 備が求められるものと考えられる。 なお、本研究は川崎市立看護短期大学平成20年度教育 特別研究として提出したものである。また、本研究の一 部を日本看護技術学会第8回学術集会、日本看護教育学 会第19回学術集会で発表した。

16

(9)

-【引用・参考文献】 1)厚生労働省.看護基礎教育の充実に関する検討会報告書.

2

0

0

7

.

2) 末長由里,今泉郷子,清水佐智子他.臨地実習における看護基本技術の体験および修得状況.川崎市立看 護短期大学紀要.

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)荒川裕美,平賀愛美,布施淳子.新人看護師の看護基礎教育における基礎看護技術未経験項目の実態とそ の自己学習に関する研究.北日本看護学会誌.

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)厚生労働省.看護基礎教育における技術教育のあり方に関する検討会報告書.

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7)下村英雄,岡美智代,藤生英行.臨床実習前後の看護技術に対する自己効力感の変化と関連要因.カウン セリング研究,

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)浅川和美他.看護基礎教育における看護技術教育の検討 看護系大学生の臨地実習における看護技術経験 状況と自信の程度一.茨城県立医療大学紀要.

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上妻尚子,藤田美貴.学生自己評価と教員評価による血圧測定技術の習得に関する検討. 日本看護技術学 会誌.

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村山稜子,渡遺典子.助産婦教育における分娩介助実習の検討(第

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報)一分娩介助実習での学生のス卜 レス反応の測定. 日本看護科学学会誌

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石田貞代,望月好子.看護婦・看護学生の

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得点と臨床経験年数との関連.静岡県立大学短期大学 部研究紀要.

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福井トシ子.看護基礎教育と新卒看護師初期の教育を連動させるための試み.看護展望.

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図 2 参加人数(参加者総数 4 0 名 重複あり) 高めた L 、から」が 1 6 名、「実習に向けて」が 1 3 名 、 「患者のため」が 6 名、「就職のため」が 2 名、その 他 ( 1 予定しだい」など)が 6 名だった。 3
表 2 技術習得度の得点と参加の有無の関連 ( 小項目すべてに「できる」と答えた学生とそうでない学生の比較) すべてに「できる J と 答 え た 学 生 人 ( % ) 参加 2 1 ( 5 3

参照

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2022年 3月期 自己資本比率 (%) 55.5 55.7 54.8 57.5 59.5 時価ベースの自己資本比率 (%) 135.8 102.1 65.2 133.4 83.9 キャッシュ・フロー. 対有利子負債比率

〇新 新型 型コ コロ ロナ ナウ ウイ イル ルス ス感 感染 染症 症の の流 流行 行が が結 結核 核診 診療 療に に与 与え える る影 影響 響に

2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 自己資本比率(%) 39.8 39.6 44.0 46.4 時価ベースの自己資本比率(%) 48.3 43.3 49.2 35.3

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