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中学校理科における「指導と評価の一体化」のためのイメージマップの活用 ―第2学年「動物の生活と生物の変遷」を事例として―

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(1)Title. 中学校理科における「指導と評価の一体化」のためのイメージマップの 活用 ―第2学年「動物の生活と生物の変遷」を事例として―. Author(s). 森, 健一郎; 栢野, 彰秀; 髙橋, 弾. Citation. 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 : 教職大学院研究紀要 , 6: 109-118. Issue Date. 2016-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7903. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 第6号. 中学校理科における「指導と評価の一体化」のための イメージマップの活用 -第2学年「動物の生活と生物の変遷」を事例として- 森 健一郎*1、栢野 彰秀*2、髙橋 弾*3. 概 要 本研究は、 「指導と評価の一体化」を図るための具体的な手法を提示する研究の一部である。公立 中学校第2学年3学級(27名)を対象に、 「動物の生活と生物の変遷」単元において、 「呼吸」をキー ワードとするイメージマップを作成させ、書かれた語句の数などを確認した。イメージマップを用い たことによる学習効果については、 定期試験に評価問題に相当する設問を設け、 その正誤を確認した。 「書かれることが望ましい語句をイメージマップに書いている生徒数」と、 「評価問題を正答してい る生徒数」をクロス表にまとめ、フィッシャーの直接確率計算をおこなったところ、相互に関連性が あると判断された。本実践によって、ア)イメージマップを用いることで、個々の生徒の「呼吸」に ついての概念理解の状況を把握することができること、イ)イメージマップの結果から、 「呼吸」の 概念を中学校の学習内容に即したものに拡張していくための判断材料を得ることができること、以上 の2点が明らかとなった。ただし本稿では、個々のイメージマップにおける語句同士の連結の仕方に ついては分析をおこなっておらず、書かれることが望ましい語句の数のみに着目している。個々の概 念理解の状況をより詳しく把握するために、語句同士の連結の仕方について検討していくことが今後 の課題である。. 1.序 論 現行の中学校理科学習指導要領1)では、 「科学に関する基本的概念の一層の定着が図れるよう改善 する」ことが示されており、その際、 「小学校との接続にも十分に配慮する」ことが求められている。 ただし、このことについての具体的な指導事例などは、現時点ではほとんど報告されていない現状2) がある。そのため、理科教育において、 「小学校との接続にも十分に配慮する」ための具体的な実践 例を蓄積していくことが求められている。 「小学校との接続」という観点から考えると、 「小学校と中学校の双方で用いられ、かつ意味の変 化が生じる語句」に着目することが有効なのではないかと考えた。中学校理科で扱う語句のうち、例 えば「呼吸」や「電流」など、小学校理科ですでに学習している語句については、中学校理科で概念 の拡張がなされることになる。小学校においての「呼吸」は、 「体の中に酸素を取り入れたり、体の ───────────────────── *1. 北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)釧路. *2. 島根大学. *3. 釧路市立幣舞中学校. 109.

(3) 森 健一郎・栢野 彰秀・髙橋 弾. 外に二酸化炭素を出したりすること」3)である。中学校では、 その概念が拡張され「細胞で、 酸素を使っ て、吸収された栄養分からエネルギーが取り出され、二酸化炭素や水が出されること」4)までを含め 「- た意味となる。また、小学校においての「電流」は、 「電気の流れのこと」5)であるが、中学校では、 極から次々に飛び出して移動する電子の流れ」6)となる。 このように、小学校理科から中学校理科まで継続して用いられ語句のいくつかについては、中学校 でさらに学習が深められ、概念の拡張がなされる。ただし、中学校での定着が不十分であっても、同 じ語句であるために、生徒それぞれの理解の状況を把握することは困難である。例えば、中学校にお いて「呼吸」の理解が小学校段階のまま、つまり「気体の出入り」にのみ着目した状況であると、 「な ぜ栄養分が分解されてエネルギーが生じるのか」や「なぜ栄養分が分解されると水や二酸化炭素が生 じるのか」といった問いが解決できない可能性がある。 「呼吸」において「気体の出入り」は手段で あり、目的は「栄養分を分解してエネルギーを取り出す」ことであるが、小学校段階の理解のままで あると、「気体の出入り」を目的として認識してしまうことが考えられる。 「呼吸」を手段として認識 することで、呼吸系、消化系、循環系、排出系などを一体化したシステムとして捉えることができ、 「科学に関する基本的概念の一層の定着」を図ることができる。したがって、授業においては生徒の 理解の状況を単元の途中で評価し、後の指導を改善していくこと、すなわち「指導と評価の一体化」 が求められる。語句の概念の理解が小学校段階のままであるのか、あるいは学習を経て拡張されてい るのかを授業者が形成的に評価することで、より効果的な指導を展開することができると考える。. 2.本研究の意義と必要性 本研究は、より大きな観点から見ると、教育課程審議会の答申(2000)で打ち出された「指導と評 価の一体化」をより実質的なものにしていくことに貢献するものである。 「指導と評価の一体化」 とは、 「評価の結果によって後の指導を改善し、 さらに新しい指導の成果を再度評価すること」 (文部科学省、 2003)とである。この「指導と評価の一体化」は、 形成的評価の必要性を示したものであると同時に、 現行の学習指導要領におけるポイントの一つとなっている。例えば、国立教育政策研究所(2011)の 「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料(中学校理科) 」には、 「各学校では、生 徒の学習状況を適切に評価し、評価を指導の改善に生かすという視点を一層重視し、教師が指導の過. 図1 いわゆる4観点の評価に対する教員の意識(文部科学省、2009). 110.

(4) 中学校理科における「指導と評価の一体化」のためのイメージマップの活用. 程や評価方法を見直して、より効果的な指導が行えるよう指導の在り方について工夫改善を図ってい くことが重要である」と示されている7)。図1に示されているように、学校現場、特に小学校と中学 校においては、4観点についての評価ではあるが、 評価の実践は蓄積されている8)と捉えられており9)、 小学校教員では約81%、中学校教員では約76%が「定着してきている」と感じている。 しかし、その一方で、図2に示されているように、学習状況の評価に負担を感じる教員が少なくな いことも課題として指摘されている。小学校教員では約59%、中学校教員では約66%、高等学校教員 では約63%が、学習状況の評価資料の収集・分析に負担を感じている。したがって、短時間でも運用 できる妥当性・信頼性の高い評価の方法が求められているといえる。. 図2 学習状況の評価に対する教員の意識(文部科学省、2009). 3.先行研究について このような現状を踏まえ、栢野ら(2015、2014、2013)および廣島(2015)は、イメージマップと いうツールを用いた簡便な形成的評価の方法を提案してきた。イメージマップとはキーワード (以下、 鍵概念)の周囲に連想した語句を書き込んでいく手法である。生徒が作成したイメージマップを例と して図3に示す。イメージマップは、もともと水越(1980)らによって視聴覚教育の分野で用いられ ていたものであるが、 近年、 黒上ら(2014)によって「総合的な学習の時間」における「思考ツール」 として紹介され注目されている。 図3のイメージマップは、ある生徒(中学2年生)が、本研究における授業実践の中で作成したイ メージマップである。これは、 「水蒸気」という鍵概念で作成されている。このようのワークシート を用いて作成させれば、ある授業の事前と事後のイメージマップを生徒が自己評価すること、すなわ ち振り返りも可能となる。このワークシートでは、 「作業③」で「作業①と作業②を比べて気がつい たことやわかったことを書いてみよう」という振り返りをさせ、さらに、 「作業④」で「作業③につ いて、なぜ2回目に変化が生じたのか(または生じなかったのか) 、理由を書いてみよう」という振 り返りをさせている。 栢野ら(2015)では、イメージマップテストによる評価手法を、実際に島根県松江市と北海道釧路 市の中学校理科「気象とその変化」単元の授業で用い、 その結果を比較検討している。その結果から、 生徒のメタ認知的な活動の可能性を検証している。さらに、イメージマップを活用した「指導と評価 の一体化」を図る授業の構成概念について、いくつかの示唆を得ている。 111.

(5) 森 健一郎・栢野 彰秀・髙橋 弾. 図3 生徒が作成したイメージマップの例. 廣島ら(2015)は、イメージマップを利用して学習を振り返るような授業実践を小学校理科第6学 年「水溶液の性質」単元においておこなっている。その結果から、イメージマップを利用して学習の 振り返りをおこなうと、学習者は単元学習に関連した連想語とそれらを多く含む連想系列で構成され たイメージマップを作成することを明らかにしている。 栢野ら(2014)は、イメージマップを活用した「指導と評価の一体化」を図る小学校理科授業の実 際(単元は「水のすがた」 、 「水のゆくえ」 )を報告するとともに、その枠組みでの授業づくりのあり 方に検討を加えている。具体的には、授業づくりの際に、児童が作成したイメージマップと、教師が 作成したイメージマップを比較する作業を通して、生徒の認識の問題点を明らかにするというもので ある。ここでは、児童らが課題を克服するための授業展開における留意点が報告されている。 栢野ら(2013)は、イメージマップを分析するためのデータ処理方法に工夫・改善を加えて形成的 評価をおこなうための具体的手法について報告している。これは、各小単元の学習終了後、子どもが 書いたイメージマップと予め教師が書いたイメージマップを比較するというものである。 結果として、 小学校理科(単元は「水のすがた」 、 「水のゆくえ」 )における形成的評価に関してイメージマップの 活用が有効であることを報告している。 これらの先行研究では、学習状況の評価に対する負担感を軽減するため、特定の語句にのみ注目す るという手法が示されている。生徒が作成するイメージマップには、さまざまな語句が書かれること になるが、すべてを分析対象にするのではなく、 特定の語句にのみ注目するという簡便な手法でイメー ジマップを活用できれば、 単元の途中での形成的評価が可能となる。本研究では、 簡便な手法でイメー ジマップを活用し、特に概念の変容に着目することとした。単元の途中で生徒個々の概念理解の状況 を把握し、その結果に基づいて単元指導計画を修正することで、概念の拡張がなされたのかどうかを 112.

(6) 中学校理科における「指導と評価の一体化」のためのイメージマップの活用. 検証できると考えた。 本研究により、 「概念の拡張」に焦点を当てた評価、特に指導過程における形成的評価についての 具体的な事例を提供したい。ここでは「呼吸」の概念の拡張に着目した評価の具体を提示し、小学校 理科から中学校理科への接続を意識しつつ、形成的評価の実践事例を提示することを試みた。. 4.方 法 201X年、公立中学校第2学年1学級(27名)を対象に、理科「動物の生活と生物の変遷」単元に おいて、 「呼吸」を鍵概念とするイメージマップを2回作成する指導計画を立てた。1回目のイメー ジマップで学習状況を確認し、 その結果によって以後の指導計画を改善する。改善した指導計画の後、 2回目のイメージマップを実施し、再度、学習状況を確認する。最終的にはイメージマップだけでは なく、評価問題の結果もあわせて判断する。理解がなされていると判断されれば、概念の拡張がなさ れたと判断することとした。 この「動物の生活と生物の変遷」単元は、以下のように1章から5章までで構成されている。その 「内呼吸」 うちの3章で「動物の生命維持」に関わる内容を扱う10)。この3章はさらに4節に分かれ、 や「外呼吸」については2節「エネルギーを取り出すしくみ」で学習する。この節の内容は、実験や 観察を伴っていないので、文章記述のみで学習することになっている。 3『動物の世界と生物の移り変わり』 (総時数40) 1章「生物の細胞と個体」 (4時間) 2章「動物の行動のしくみ」 (4時間) 3章「動物の生命維持のしくみ」 (12時間) 1節 栄養分を取り入れるしくみ 2節 エネルギーを取り出すしくみ 3節 栄養分や酸素を運ぶしくみ 4節 不要な物質を排出するしくみ 4章「動物のなかま」 (9時間) 5章「生物のなかまとその移り変わり」 (3時間) ※上記の時数のほかに、 8時間がゆとりとして設定されており、 それも含めて40時間となっている。 本実践で導入した実験・観察はこの8時間の中で実施された。 2節で「内呼吸」を「細胞で、酸素を使って、吸収された栄養分からエネルギーが取り出され、二 酸化炭素や水が出されること」として学習し、最終的にはこれを「呼吸」の拡張された定義として理 解することになる。この学習を終えた直後にイメージマップを1度実施し、 「呼吸」の概念が拡張さ れたかどうかを確認する。イメージマップの評価方法は、書かれることが望ましい語句を事前に授業 者が検討しておき、その語句の有無のみを確認するという手法である。この手法を用いれば、イメー ジマップの分析を短時間で終えることができる。確認に用いる表を図4として示す。 分析により学級全体が概ね理解していると判断されれば3節の学習に進むが、理解がほとんどなさ れていないと判断された場合は、指導計画を一部変更し、 「内呼気」の理解を促進するための実験・ 観察を導入することとする。理解を促進させるための実験・観察については、先行研究(Mori、 113.

(7) 森 健一郎・栢野 彰秀・髙橋 弾. 2015)においてイースト菌を用いた事例11)があるので、それを活用する。これは、イースト菌による 有機物の分解と、それに伴う発熱や音の発生を生徒に観察させるというものである。ここで使用した 有機物は、パン作りに通常用いられる小麦粉と砂糖である。これらを用いることで、単細胞生物によ る「内呼吸」の理解が深められると考えた。発酵による発熱と音の発生から「エネルギー」を、イー スト菌という単細胞生物から「細胞」を関連づけて意識することを期待した。その後、 2回目のイメー ジマップを実施して評価をおこなう。 最終的な評価としては、定期試験に評価問題に相当する設問(図5)を設けた。各生徒の正誤を確 認し、個々の2回目のイメージマップの状況と合わせて分析する。具体的には、書かれることが望ま しい語句を書いている生徒数と、評価問題を正答している生徒数をクロス表にまとめ、フィッシャー の直接確率計算をおこなうという手順である。これにより、学習内容の理解がなされていること、つ まり概念の拡張がなされていることと、望ましい語句がイメージマップ書かれることとの間に、何ら かの関連があることが分かれば、 「小学校との接続にも十分に配慮する」ための具体的な実践例が提 示できたことになる。. 生徒番号 酸素 二酸化炭素 水 細胞 消化 栄養 エネルギー 内呼吸 外呼吸 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 図4 イメージマップの分析に用いる表(一部). 図5 評価問題とその解答. 114.

(8) 中学校理科における「指導と評価の一体化」のためのイメージマップの活用. 5.結 果 2節で「内呼吸」を「細胞で、酸素を使って、吸収された栄養分からエネルギーが取り出され、二 酸化炭素や水が出されること」として学習した後、イメージマップを実施した。その結果を表1とし 「二酸化炭素」 「水」 「細胞」 て示す12)。書かれることが望ましい語句は、表1中にあるように「酸素」 「消化」「栄養」 「エネルギー」 「内呼吸」 「外呼吸」である。特に重点とした語句は「細胞」と「エネ ルギー」であったが、 「細胞」を書いた生徒は4名、 「エネルギー」を書いた生徒は0名であった(表 の下部の数字が人数を示している) 。この結果から、理解がほとんどなされていないと判断し、指導 計画を一部変更して、 「内呼気」の理解を促進するための実験・観察を導入することとした。 表1 1回目のイメージマップの結果. 生徒番号 酸素 二酸化炭素 水 細胞 消化 栄養 エネルギー 内呼吸 外呼吸 1 ○ ○ ○ 2 ○ ○ 3 ○ ○ ○ 4 ○ ○ 5 ○ ○ 6 ○ ○ 7 ○ ○ 8 ○ ○ 9 10 ○ ○ ○ 11 ○ ○ ○ ○ 12 ○ ○ 13 ○ ○ 14 ○ ○ ○ 15 ○ 16 ○ ○ 17 ○ ○ 18 ○ ○ 19 ○ ○ ○ 20 ○ ○ ○ 21 ○ ○ ○ 22 ○ ○ 23 ○ ○ 24 ○ ○ 25 ○ ○ 26 ○ ○ 27 ○ ○ ○ 26 25 5 4 1 0 0 0 0. 実験・観察後、2回目のイメージマップを実施し、評価問題の結果と合わせてまとめたものが表2 である。表中の網掛けは、その後に実施した評価問題を正答した生徒を表す。 書かれることが望ましい語句のうち、特に「細胞」と「エネルギー」の語句のどちらか(または両 方)を書いている生徒数と、評価問題を正答している生徒数をクロス表(表3)にまとめた。2回目 のイメージマップでは、 「細胞」と「エネルギー」の2つを同時に書いた生徒は8名、両方を書いて いた生徒は8名であった。そして、評価問題を正答した生徒が9名、誤答した生徒が18名であった。 フィッシャーの直接確率計算をおこなったところ、人数の偏りは有意であった(両側検定:p=.04)。 115.

(9) 森 健一郎・栢野 彰秀・髙橋 弾. したがって、「イメージマップに「細胞」や「エネルギー」の語句を書くこと」と「評価問題を正答 すること」との間には関連性があると判断された。 表2 2回目のイメージマップの結果(評価問題の正答には網掛け). 生徒番号 酸素 二酸化炭素 水 細胞 消化 栄養 エネルギー 内呼吸 外呼吸 1 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 2 ○ ○ ○ ○ ○ 3 ○ ○ ○ ○ 4 ○ ○ ○ ○ 5 ○ ○ 6 ○ ○ ○ ○ ○ 7 ○ ○ ○ 8 ○ ○ ○ ○ 9 ○ ○ ○ ○ 10 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 11 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 12 ○ ○ ○ ○ 13 ○ ○ ○ ○ ○ 14 ○ ○ ○ ○ 15 ○ 16 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 17 ○ ○ ○ ○ ○ 18 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 19 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 20 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 21 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 22 ○ ○ ○ ○ 23 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 24 25 ○ ○ ○ ○ ○ 26 ○ ○ ○ 27 ○ ○ ○ 25 24 5 14 3 2 9 20 20 表3 一致した語句数と評価問題の正誤についてのクロス表. 6.考 察 本研究は、 「指導と評価の一体化」を図るための具体的な手法を提示する研究の一部であり、特に 中学校理科における「概念の拡張」に焦点を当てた形成的評価についての事例を提供することを目的 とした。望ましい語句をイメージマップに書いている生徒数と、評価問題を正答している生徒数をク ロス計にまとめ、フィッシャーの直接確率計算をおこなったところ、相互に関連があることが確認さ れた。単細胞生物のイースト菌による有機物の分解と、それに伴う発熱や音の発生を生徒が観察した 116.

(10) 中学校理科における「指導と評価の一体化」のためのイメージマップの活用. ことで、「細胞で、酸素を使って、吸収された栄養分からエネルギーが取り出され、二酸化炭素や水 が出されること」が印象づけられ、その結果、 「呼吸」の概念が変容し、イメージマップに「細胞」 や「エネルギー」の語句が書かれることになったと考えられる。 本実践によって、以下の2点が明らかになったといえる。 ア)イメージマップを用いることで、個々の生徒の「呼吸」についての概念理解の状況を把握するこ とができる。 イ)イメージマップの結果から、 「呼吸」の概念を中学校の学習内容に即したものに拡張していくた めの判断材料を得ることができる。 ただし、本研究では、個々のイメージマップにおける語句同士の連結の仕方については分析をおこ なっておらず、書かれることが望ましい語句の有無のみに着目している。個々の概念理解の状況をよ り詳しく把握するために、語句同士の連結の仕方について検討していくことが今後の課題である。さ らに、形成的評価により指導計画を変更したものの、 評価問題の正答率そのものは高くない(27名中、 正答は9名)。これは、この単元の学習段階(中学校第2学年)では、 「エネルギー」という概念の定 義づけがなされていないことも関係していると考えられる13)。この点についても、今後検討していき たい。. 7.結 果 公立中学校第2学年の生徒を対象に「呼吸」を鍵概念とするイメージマップを作成させ、書かれた 語句の内容や数について確認することで概念理解の状況を評価した。イメージマップを用いたことに よる学習効果については、定期試験に評価問題に相当する設問を設け、その正誤を確認することでお こなった。書かれることが望ましい語句をイメージマップ書いている生徒数と、評価問題を正答して いる生徒数をクロス計にまとめ、フィッシャーの直接確率計算をおこなったところ、相互に関連があ ることが示された。本実践によって、ア)イメージマップを用いることで、個々の生徒の「呼吸」に ついての概念理解の状況を把握することができること、イ)イメージマップの結果から、 「呼吸」の 概念を中学校の学習内容に即したものに拡張していくための判断材料を得ることができること、以上 の2点が明らかとなった。 付 記 本研究は、JSPS科研費(基盤研究(B)課題番号26285170、研究代表者:玉井康之)の資金援 助によっておこなわれた。 註 1)文部科学省(2008)中学校学習指導要領解説理科編、大日本図書、p. 9 2)CiNii(国立情報学研究所学術情報データベース)の検索機能を用いて「小学校との接続」 、 「理科」でキーワー ド検索をしたが、結果は0件であった(2015年9月27日確認)。 3)教育出版「未来をひらく小学理科6」p.26 4)教育出版「自然の探究 中学校理科2」p.135 5)教育出版「未来をひらく小学理科4」p.45 6)教育出版「自然の探究 中学校理科2」p.67. 117.

(11) 森 健一郎・栢野 彰秀・髙橋 弾. 7)ここでは、中学校理科の参考資料について述べたが、各校種、各教科の参考資料についても同様の内容が示さ れている。 8)調査時は「関心・意欲・態度」 、 「思考・判断」 、「技能・表現」 、「知識・理解」の4つであったが、平成22年5 月11日に文部科学省が発出した「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び 指導要録の改善等について」 (通知)によって、現在は「関心・意欲・態度」、 「思考・判断・表現」、 「技能」、 「知識・ 理解」の4つに変更されている。ただし、これは単に「表現」の箇所が移動したことを示すだけではない。この通 知では、評価の観点は、学校教育法及び学習指導要領の総則に示された学力の要素に合わせて整理され、新たに設 定された「思考・判断・表現」は、 「それぞれの教科の知識や技能を活用して課題を解決すること等のために必要 な思考力・判断力・表現力等を児童生徒が身に付けているかどうかを評価するものとして設定されている。従前の 「技能・表現」の観点は、 「各教科において習得すべき技能(や表現)を児童生徒が身に付けているかどうかを評 価するもの」とされているので、同じ「表現」という語句ではあるものの意味は異なっている。 9)文部科学省委託調査(2009) 「学習指導と学習評価に対する意識調査」による。データはweb上で公開されている。 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/095/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2013/01/29/1330122_02. pdf(参照2015年9月27日) 10)教育出版「自然の探究 中学校理科2」 11)この実践自体は第3学年の「自然と人間」単元を扱ったものである。ここでは、 「微生物が有機物を分解するこ とで、生活のためのエネルギーを得ていること」を理解させるために、イースト菌の発酵を用いた実験・観察を設 定した。今回の実践は異なる学年・単元ではあるが、細胞の呼吸をイースト菌の発酵を観察することで理解させた いと考え、活用することとした。 12)生徒番号は、実際の生徒の出席番号とは一致していない。 13)「エネルギー」の定義について扱うのは、第3学年の 「運動とエネルギー」 単元である。中学校理科のカリキュ ラムにおいては、この段階で「エネルギー」が科学用語として定義されることになる。第1学年や第2学年の教科 書でも「エネルギー」の語句は用いられているが、この段階での「エネルギー」は、日常語としての「エネルギー」 といえる。こういったカリキュラム上の配慮から、小学校理科の教科書では「エネルギー」の語句そのものは扱わ ないことになっているが、小学校家庭科の栄養素に関する記述では、 「エネルギー」の語句が頻繁に見られるとい う現状が一方である。. 参考文献 廣島亨,栢野彰秀,森健一郎(2015)イメージマップを利用した学習のふりかえり:小学校理科第6学年「水溶液の 性質」単元を事例として,北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要,第5巻,65-74. 栢野彰秀,大山朋江,髙橋弾,森健一郎(2015) 「指導と評価の一体化」を図る授業の構想と中学校理科における実際 (2) ,島根大学教育臨床総合研究,第14巻,127-140. 栢野彰秀,山代佳菜美,廣島亨,森健一郎(2014) 「指導と評価の一体化」を図る小学校第4学年「水のすがた」,「水 のゆくえ」単元の理科授業づくり―イメージマップの活用を通して―,島根大学教育学部紀要,第48巻,11-26, 2014. 栢野彰秀,廣島亨,森健一郎(2013)イメージマップを活用した形成的評価に基づく授業づくりのための基礎的研究―小 学校理科第4学年「水のすがた」 , 「水のゆくえ」単元を事例として―,島根大学教育学部紀要,第47巻,29-40. 黒上晴夫,田村学,滋賀大学教育学部附属中学校(2014)こうすれば考える力がつく! 中学校 思考ツール,小学 館 水越敏行,吉崎静夫,三宅正太郎(1980)映像視聴能力の形成と評価に関する実証的研究:みどりの地球の継続視聴 から,放送教育研究,10巻,1-20. K.Mori(2015)“Understanding Junior High School Students’Perceptions of Scientific Concepts through Image Mapping” ,in Proceedings of the fifth Pacific Rim Conference on Education,110-117.. 118.

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