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数学的言語活動を充実させた授業構成

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Academic year: 2021

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(1)Title. 数学的言語活動を充実させた授業構成. Author(s). 亀田, 祟仁. Citation. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第49号: 65-70. Issue Date. 2017-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/9861. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 釧路論集 -北海道教育大学釧路校研究紀要-第49号(平成29年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.49(2017):65-70. 数学的言語活動を充実させた授業構成 亀 田 崇 仁 北海道教育大学釧路校学校カリキュラム開発専攻数学分野. Principle of Teaching Composition that Enhanced Mathematical Language Activities KAMETA Takahito Hokkaido University of Education Kushiro Campus 要旨 数学の特性を備えた言語活動である「数学的言語活動」を小学校算数科の授業の中で充実させていくための授業構成に ついて考察することが本稿の目的である。 「数学的言語活動」がどのようなものであるかを明らかとするために、ラカトシュ の可謬主義的数学論に着目した。そして可謬主義的数学論の考えを小学校算数科の授業に導入するために、誤答モデルを 活用した授業の分析を行った。その結果、誤答モデルを活用した授業は、可謬主義的数学論の概念を子どもに取り入れる ことの可能性を示すことができた。つまり、授業の中で、子どもたちが問題の正否だけでなく、解決過程に潜む誤りに対 しても注意を向けるようになったことが考察できた。. 1. はじめに. に真であるものではなく、常に反駁する可能性を持ってお. 本研究は、筆者が平成20年度小学校学習指導要領に登場. り、批判と改良を繰り返すことで成長していくものとす. した「言語活動の充実」というワードに関心を抱くように. る、数学に対する認識について述べたものである。. なったことに端を発している。. 1980年代まで、数学は、議論の余地のない絶対に確実と. 「言語活動の充実」は全教科において取り組むべきこと. されたものから厳密な証明に従って演繹的に全ての真理を. として学習指導要領には記載されている。しかし、教科に. 導き出すという方法論である、 「ユークリッド的方法論」. はそれぞれの特色がある。そこで、数学の特色を備えた言. が主流となっていた。小倉(1924)は当時の日本の数学教. 語活動である「数学的言語活動」に着目し、それを小学校. 育の現状について次のように述べている。 . 算数科の授業の中でどのように充実させていくかを明らか にしたいと考えた。. 「小学校はしばらくおき、中学校以上においてこれらの 各分科は、専門の数学者が研究し得た専門の事柄の初めの. 2. 研究の目的. 方を、教育のことなど何も考えずに、ほとんどそのままの. 本稿の目的は、数学的言語活動を充実させた授業を構成. 形で採り入れたものに過ぎない。 (中略). することである。. 今これらの数学の特徴を挙げれば、まづ第一は、論理的 ということである。後に詳論するがごとく、従来数学教育. 3. 研究の方法 . の価値ある所以は、それが論理的に組織されているため. 数学的言語活動とは何かを明らかとするため、文献研究. に、これを利用して推理力の陶冶練磨を施す点にあると考. を行う。また、数学的言語活動を充実させた授業の検討を. えられていた。(中略). 行うために、授業ビデオの分析を行った。. 要するに、論理的であり、専門的孤立主義であり、非実 用的である上に、難問題がすこぶる多い。これが日本数学. 4. 数学的言語活動の目的. 教育の現場である。」. (1) ラカトシュの可謬主義的数学論 数学的言語活動を充実させた授業を考察していく前に、. このように日本の数学教育においても、1980年代までは. 「数学的言語活動」とは何かということを明らかにする必. ユークリッド的方法論を用いた数学の捉え方をしているこ. 要がある。そこで、数理哲学の研究者であるラカトシュ. とが伺える。. (1980)が展開した可謬主義的数学論に着目した。. ラカトシュの可謬主義的数学論は、ユークリッド的方法. 可謬主義的数学論とは、数学を疑いの余地のない絶対的. 論の考え方とは異なり、非形式的で準経験的な数学が成長. - 65 -.

(3) 亀 田 崇 仁 していく過程を描写することを目的としていた点に注目し. ラカトシュの可謬主義的数学論と、中島の創造的な学習. たい。. 活動について触れてきた。ここで両者のそれぞれの理論に おける共通点について考察する。両者の共通点として挙げ. (2) 中島氏がとらえる算数・数学科の目標. られるのはどちらも「創造性」に重点を置いているところ. 数理哲学者として可謬主義的数学論を提唱したラカト. である。. シュについて触れてきた。可謬主義的数学論が数学教育学. 可謬主義的数学論は、数学が創造されていく過程を描写. においても、適応可能なものであるのかについて検討する. することを目的としていた。知識はいかに正確な真理であ. 必要がある。. ると見なされていたとしても、つねに誤りが発見され、修. 中島(1981)は、算数・数学教育の目的について次の4. 正される可能性を残したものとしなければならないという. 点を挙げている。. 認識のもと、数学を、誰にでも明らかであるとみられるよ うな場合でも注意深く吟味し続けなければならない。. ①人間が社会の一員として生活をするのに必要な知識や. 中島もすでに完成された数学の知識を教師が子どもに一. 能力を育成すること【実用的な目的】. 方的に教えるのではなく、教師が適切な発問や手立てを講. ②人間がこれまでに創り上げた学問や文化を、それ自. じることによって、子どもがあたかも自分で数学を発見. 体、人間にとって価値あるものとして、理解し、鑑賞する. し、創り上げたかのように仕向けることで、創造的な学習. ことができるようにすること【文化教養的な目的】. 活動をすることが重要であると述べている。. ③人間が本来備えているべき、また、備えることが望ま. よって、数理哲学としての可謬主義的数学論が、数学教. れる諸能力を、可能な限り引き出し育てること【陶冶的な. 育学においても適応可能であることが中島氏の主張から考. 目的】. えられる。. ④創造的な活動を実践し、 体験させ、 その過程を通して、. このことから、数学的言語活動とは、 「数学の中に含ま. 文化の創造や問題解決の美しさ楽しさを認め、味わうこと. れる誤りを注意深く吟味し、批判と修正を繰り返し、数学. ができるようにすること【創造的実践の体得と鑑賞】. を創り上げていくために用いられる言語活動」ととらえる ことができる。. ここで算数・数学教育の目的の中で中島の特徴が表れて いる箇所は④である。④について、次に示すように、更に. 5. 証明と論駁の構造. 詳しく説明している。. ラカトシュは可謬主義的数学論を実現していくために 「証明と論駁」という数学的活動を、彼の著書である「数. 「算数や数学では、ことがらの正否が他の学問と比べて. 学的発見の論理—証明と論駁—」の中で提唱している。. はっきりし、数量的に表されやすいこともあって、いわゆ. ラカトシュは、デカルト・オイラー予想をめぐる論争の. る数学嫌いなどをつくりかねない -途中省略- こうし. 歴史に着目し、数学がどのように成長していったのかを考. た点からいっても、数学の創造を促した価値観、 たとえば、. 察している。. 明確、統合などに、創造的な学習の体験を通して目を向け. ラカトシュは、数学が成長していく過程を大きく3段階. させ、その意味で価値観の多様化を図ることは、算数・数. に分けている。. 学において目指す人間性の育成という点で、きわめて重要. 「原推測」→「証明と論駁」→「改良された推測」. な意義を持つということが指摘できよう。 -途中省略-. オイラーは、すべての正多面体に対してV(頂点) -. 算数なり、数学にふさわしい創造的な活動を体験させ、. E(辺) + F(面)= 2 が成り立つことを多くの試. それを通して創造的に考察し処理する能力や態度をのばす. 行錯誤の上に気づいた。そして、このことがどんな多面体. ようにすることが、しだいに重要な意味を持ってくること. にでも適用できるのではないかと推量した。これが「原推. がわかる。 」. 測」に当たる。 オーギュスタン・コーシーはオイラーの原推測に対し. 算数・数学というと、答えが一つだけしか存在せず、必. て、すべての多面体に対して V(頂点) - E(辺) +. ず正しい方法で正確に答えを導かなければならないという. F(面)= 2 が成り立つことを証明した。しかし、コー. イメージをもっている人が少なくない。 これは、 ラカトシュ. シーの証明が発表されると、その証明を巡って様々な数学. が危惧していたユークリッド的方法論による数学のとらえ. 者たちが論駁や反例を提示した。. 方をしていることに他ならない。中島も同様にこのような. ラカトシュは、論駁や反例に対して、数学者たちがどの. 数学のとらえ方を問題視し、創造性に重点を置いた指導を. ように対処していったのかについて考察している。. 行うべきだと主張している。. ラカトシュは最初に、反例は2種類に分けられることを. . 述べている。証明に対する反例である「局所的反例」と、. (3)ラカトシュと中島の共通点. 原推測に対する反例である「大局的反例」である。. - 66 -.

(4) 数学的言語活動を充実させた授業構成 「局所的であり、大局的でない反例」は、証明を修正す. 用いて証明していた。小松は、二人の児童の活動が、活動. ることによって反例を回避することができる。. レベルとしては演繹的な証明は用いておらず、低位なもの. 「大局的であり、局所的でない反例」に対しては、大き. ではあったと述べている。しかし、児童が自身の推論に対. く分けて4通りの対処の仕方があるとラカトシュは述べて. して、教師が反例を提示した時には、反例を対処するため. いる。. におはじき等を用いて試行錯誤を繰り返し、自身の推論を. その4つとは、 「モンスター排除法」 「例外排除法」 「モ. 修正していった。そして最終的に、 「二桁の整数とその位. ンスター調整法」 「補題組み込み法」である。. の数を入れ替えた数との和は11の倍数になることを見つけ. この中で、ラカトシュは、数学を創造し、成長させてい. 出すことに成功した。. くうえで有効となる働きかけを行うものとして「補題組み. 小松はこのような二人の児童の活動はラカトシュが考え. 込み法」を挙げている。大局的反例が提示される時、証明. るような「証明と論駁」に近づく活動であり、小学校段階. の中には反証可能な補題(有罪補題)が含まれている。こ. においても、具体物を用いた証明活動を行うことによって. の有罪補題を推測に取り入れ、推測の適用範囲が大局的反. 「証明と論駁」が実現可能であると述べている。. 例によって論駁されない範囲まで縮小することによって反. さらに小松は、証明と論駁の活動を小学校段階の授業の. 例に対処していく。この方法を補題組み込み法という。補. 中へ導入するために、証明と論駁を誘発させるような課題. 題組み込み法は、証明をよく吟味し、有罪補題を発見し、. の設定が必要であると述べている。. それを推測に取り入れることで自身の推測を改良してい. 小松の先行研究を考察し、証明と論駁が、小学校段階の. く。補題組み込み法は、 「証明」と「論駁」とを積極的に. 授業の中でも導入可能であることが示された。また、二つ. 活用するため、ラカトシュはこの方法を「証明と論駁」と. の疑問点が発生した。その2つの疑問点は、次のようなも. 名付け、数学に特徴的な発見法としてこれを推奨した。. のである。. 6 小学校段階における、 「証明と論駁」の活動を取り入. ・毎日の通常授業で取り扱う課題を証明と論駁を発生させ. れた授業の検討. るものへ作り変えることは可能であるのか。. (1)小松による先行研究の考察. ・課題の難易度が高くなってしまい、すべての子どもが活. 次に、小学校段階における、 「証明と論駁」を取り入れ. 動に参加することが可能となるのか。 . [表1]. た授業構成についての検討を行う。ラカトシュが「数学的 発見の論理―証明と論駁―」の中で、デカルト・オイラー. 小松の先行研究では、通常の授業では使われない特殊な. 予想を例として「証明と論駁」という活動がどのようなも. 課題を用いていた。しかし、毎日の通常の授業の中で、証. のであるのかを説明している。ここで使われている「証. 明と論駁を発生させるような課題へ作り変えていくことは. 明」は、高度な演繹的手法が用いられている。小学校段階. 現実的に難しいように感じられる。私は、数学的言語活動. における算数授業を考える際、高度な数学的知識をもとめ. を毎日の通常の授業の中で充実させていきたいと考えてい. られるような課題へと取り組むことは難しい。一般に数学. るため、課題を変容することによって、 「証明と論駁」を. における「証明」とは「仮説が正しいことを数学記号を用. 発生させる授業をつくることは理想的ではあるが、限界が. いて演繹的に説明すること」という捉えをすることができ. あるのではないかと考える。また、先行研究では二人の児. る。 証明の定義をより広義に 「事柄が正しいことを具体物、. 童を対象にしていた。一斉授業の中で行うとなると全ての. 図、表、グラフ等を用いて筋道を立てて論理的に説明する. 子どもが証明と論駁の活動に参加できるのかという懸念が. こと」とすることによって、小学校段階においても、証明. ある。さらに課題の難易度も高くなってしまう可能性が考. と論駁が可能になるのではないかと考えた。. えられる。. 小学校段階での「証明と論駁」の活動を取り入れた授業. そこで課題から証明と論駁を発生させるのではなく、別. の検討は小松(2014)などが行っている。小松の先行研究. の方法で、毎日の通常の授業の中で「証明と論駁」の活動. をもとに、小学校段階での証明と論駁を取り入れた授業の. に全ての子どもが参加できるような方法の検討が必要であ. 可能性について検討していく。. ると考えた。. 小松(2014)は、小学校段階においても、 「証明と論駁」 の考えをもとに、 「操作的証明」という方法を用いて証明. (2)誤答モデルを活用した授業の検討. の指導が可能であることを先行研究で述べている。. 新たな方法による「証明と論駁」の活動の検討について. 小松は、小学校5年生の二人の児童を対象に、調査課題. 考えるとき、 「誤答モデル」の導入による授業が新たな方. として「二桁の整数とその位の数を入れ替えた数との和. 法として考えられる。. (32+23=55)の性質の推測」を提示した。. 誤答モデルを導入した授業が「証明と論駁」を発生させ. 二人の児童は、提示された課題について話し合い、推測. るかどうかについて検討していく前に、 「誤答」の定義並. を立て、その推測が正しいことを具体物であるおはじきを. びに、「誤答モデル」の定義を規定する。. - 67 -.

(5) 亀 田 崇 仁 ここでは、誤答モデルとは「根拠をもって解決に辿り着. このような定義のもと、誤答モデルの導入により、小学. いてはいるが、その根拠に有罪補題が含まれており、論駁. 校段階でも「証明と論駁」の活動が実現できるかどうか授. できる可能性を持っているもの」と定義する。有罪補題と. 業分析をもとに検討していく。. は、証明の中に含まれる反証可能な補題のことである。. 今回は、北海道教育大学附属釧路小学校教諭である髙瀬. 誤答の定義をこのように規定する際、誤答モデルは、 「有. 氏の授業をもとに分析を行う。. 罪補題を意図的に設定したもので、子どもがその有罪補題. 次の授業記録は、髙瀬氏による第4学年「変わり方調べ」. を論駁することによって証明と論駁の活動へ向かわせるた. の5/6時間である. めの教師の仕掛けとして用いられるもの」と規定した。 ◯本時の目標 伴って変わる2量の関係の意味を表や式を用いて考え、説明できる。 授業の流れ. 児童の発言. ○問題提示 「三角形を100個ならべるには、ぼうが何本入りますか?」 4分. ○誤答モデルの提示. 7分     . ○課題提示 「かんとくの考え『三角形を 100 個ならべたら、棒が 300 本 いる』は正しい?正しくない?」わけを説明しよう。 ○個人思考(10 分) ○表と三角形の図をもとに、誤答モデルの考え方の誤ってい 「三角形が 2 個の時には、棒の数は 5 個になる。なぜなら、 2 個目から 2 本で三角形を作る る部分を探す。 ことができるから」 「横に見ると、三角形が 1 個増えるごとに棒の数が 2 本ず ○表で見つけたきまりをもとに式を考える つ増えていく。 」 ・99 × 2 + 3 ・3 × 1+ 2 × 99 ○児童から提案された3+ 99×2 という式について、「三角 「最初の三角形で使うぼうが 3 本で、残りの 99 個の三角形 形が 1 個増えると棒が2ずつ増えるっていうけど、そうなって を作るのに 2 本の棒を使うから」 なくない?はじめが3になってるよ?」「3角形を 100 個作らない といけないのに、100 っていう数が式にないよ」といった発問 によって、式の見方を変え、さらに改良していくよう促した。. 分. 28. 最初の三角形を 1 本に 2 本を足したものと考えると、1+2 ×100と考えることができ、推測を更により良いものへ改良す ることができた。 ◯まとめ「むずかしい 2 つの数のかんけいも図と表をつなげ て考えればわかる」 ◯練習問題 四角形の数(□)と棒の数(△)の関係を表した式はあっ ていますか?まちがっていたら、正しくなおしてください。 →□×4= △ ① ② . →□×4= △. ②について、「一番左端の棒を 1 本と見ると、3 本ずつ増え ていくから正しくない」. - 68 -.

(6) 数学的言語活動を充実させた授業構成 ○ 本授業の分析と考察. 必要であるという話し合いに落ち着いた。. 髙瀬氏の授業では『くまったくん』という誤答モデルを. ここで髙瀬氏はさらに式と図の三角形に着目し、3+99. 用いている。本時の授業では、 「三角形を100個ならべるに. ×2という式をさらに改良できないかという話へと展開し. は、ぼうが何本入りますか?」という問題を取り扱った。. ていった。これにより、1+2×100という式がたてられ、. 『くまったくん』はこの問題に対して、授業開始4分頃に. まとめへと進んでいった。. 提示されたような解決方法を提示し、その結果、棒は300. ここで髙瀬氏が児童が一応の納得のいく話し合いが終. 本必要であるという結論に至った。 『くまったくん』が提. わった後に1+2×100という式へと進めていった意図と. 示した解決方法に対して、子どもはそれは誤りが含まれて. して②の有罪補題の存在が影響していると考えられる。 「三. いるとし、正しい解決方法を求めようと学習活動を進めて. 角形が1個増えると棒が2ずつ増えるっていうけど、そう. いった。. なってなくない?はじめが3になってるよ?」「3角形を. 今回の授業を証明と論駁の観点から分析していく。. 100個作らないといけないのに、100 っていう数が式にな. ラカトシュは証明に対する批判を2つに区分している。. いよ」といった発問には、児童達が出した3+99×2という. 推測自体に対する反例を大局的反例、証明に対する反例を. 式に対する反例を示している。. 局所的反例とした。. 1+2×100をだすことにより、 「3角形が100個だから」. 今回の例で言えば、誤答モデルが提示した「3角形を. という考え方は間違っていないが、その考えをもとにした. 100個ならべると300個の棒が必要だ」というのが推測であ. 式を改良することができた。これにより、誤答モデルの②. る。その推測の証明となっているのが、授業開始4分頃に. の有罪補題が正しい推測へと改良された。. 提示されたものである。. 髙瀬氏の授業分析から、誤答モデルを導入することの利 点として次のようなものが考えられる。. 三角形の数(○) 1 × 3 棒の数(△) 3×3. 2×3 6×3. 3×3 9×3. … …. ・通常の教科書で用いられる問題を利用して証明と論駁を 行うことができる。. 三角形の数(○)× 3= 棒の数 ( △ ) だね。だから三 角形を 100 個並べるには 100 × 3=300 で棒が 300 本必 要ってことだね. ・有罪補題を意図的に設定することができ、議論のポイン トを決めることができる。. [表3]. これまでの考察より、小学校段階の算数授業において 児童は初め、誤答モデルの推測が間違いであることを指. も、証明と論駁の活動は誤答モデルの導入により実現でき. 摘し、誤答モデルの推測は正しいか、正しくないか、わけ. る可能性が示されたと考えている。. を説明するというのを課題とした。ここで児童は推測が 誤っている原因となっている証明部分に着目し、有罪補題. 7. 成果と課題. を見つけ出した。授業で取り上げられた有罪補題は2点あ. 本稿では、主に2つの成果があげられた。一つは数学的. る。. 言語活動とは何かを明らかにすることができたことであ る。数学的な性質をもった言語活動とは、ラカトシュが考. ① 三角形が1つ増えると3ずつ増える. える証明と論駁のような活動のことであった。推測を立. ② 三角形を100個作るんだから、3×100になる。. て、それを証明し、推測を論駁する反例が提示されると、 [表2]. 証明の中に含まれる有罪補題を見つけ、推測を修正する。 このような数学を創り上げていく活動が数学的言語活動で. ①については、表を使って正しい三角形と棒の数の変わ. あると定めることができた。. り方を調べ、説明し合った。その結果、最初の三角形は棒. もう一つは、証明と論駁を小学校段階での算数授業に導. が3個必要だが、それから三角形が1増えるごとに必要な. 入可能であるかを検討したことである。その結果、 「誤答. 棒は2つずつであり、2個目以降から棒の増える数は2であ. モデル」の活用によって小学校段階においても、証明と論. ることがわかった。これにより、誤答モデルの有罪補題①. 駁の活動を取り入れた授業が実現可能であることを示すこ. が見直され、正しい推測へと改良されていった。. とができた。. 次に、 表を使って見つけた決まりをもとに、 式を考えた。. しかし、次のような課題が残った。証明と論駁が、数学. 児童からでた式は99 × 2 + 3であった。この式の説明とし. 的言語活動の構造のすべての側面を含んでいるとは言い難. て児童は「最初の3というのは1個目の三角形のことで、. い。数学的言語活動の構造の一部分として「証明と論駁」. 残り99個の三角形を作るのに棒が2本ずつ使われるから99. が含まれていることが明らかになったが、より別の観点か. ×2」という説明をしている。この説明により、児童の間. ら数学的言語活動の構造を分析する必要があるということ. では、3+99×2という式が正しい式であり、棒は201本. である。. - 69 -.

(7) 亀 田 崇 仁 誤答モデルの活用による授業の検討については、今回の 授業分析だけにとどまらず、単元を通した長期的な授業分 析を行うことで、子どもの変化を追跡することによって、 誤答モデルを活用した授業の利点や改善すべき点をより明 らかにしたいと考えている。今後、長期的な授業観察を通 しての分析に取り組みたい。 引用・参考文献 中島 健三 2015『算数・数学教育と数学的な考え方』東 洋館出版社 I・ラカトシュ 著 佐々木力 訳 1980『数学的発見の論理 -証明と論駁-』共立出版 小倉 金之助 1924『数学教育の根本問題』イデア書院 小松孝太郎 2014『算数・数学教育における証明指導の改 善』東洋館出版社 北海道教育大学附属釧路小学校『自ら学ぶ意味を創造でき る児童・生徒の育成』2016. - 70 -.

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