流域を事例 と し た ESD 実践の検討
A Consideration of Lesson Plan on Education for Sustainable Development
(ESD) Based on Watershed Concept
阪 上 弘 彬*
南 埜
猛**
吉 水 裕 也***
SAKAUE Hiroaki
MINAMIN0 Takeshi
YOSHIMIZU Hiroya
本 プロ ジ ェ ク ト は, 新学習指導要領 を前提 と し た ESD 実践の検討 を目的 と し , ESD の授業 プラ ンを PDCA サイ ク ル適
用によ り 開発 ・ 構築す る も ので あ る。 本稿では Plan 段階の検討 を報告す る。 具体的には, 学習指導要領におけ る ESD の 位置づけ と ESD 実践の対象お よ び学習活動地域につい て, 取 り 扱 う 諸問題 (諸課題 ・ 戦略的視点) や地理教育で の位置 づけ の諸点か ら言及す る。 考察の結果, 以下のこ と が明 ら か と な っ た。 学習指導要領におけ る ESD の位置づけ につい て は, ESD の理念が新学習指導要領の中核に位置づけ ら れてい る こ と , 社会系教科のほと ん どの学年 で ESD にかかわる内 容が明示的 に示 さ れた こ と , ESD にかかわる学習が段階的 ・ 系 統的 に配置 さ れてい る こ と を明 ら かに し た。 ESD 実践の 対象お よ び学習活動 地域につい ては, 流域に焦点 をあ て て検討 し た。 流域は ESD 実践におい て有効 な素材で あ る こ と を 示 し た上で, ESD 実践におけ る 4 つのポイ ン ト (持続可能な社会の社会基盤, コ ンビ テ ン シー獲得, 未来志向, 持続可 能な社会の創 り 手) を指摘 し た。 キーワ ー ド : 学習指導要領, 持続可能な開発のための教育, sDGs, 社会系教科, 流域 K ey words : the courses of study, ESD, SDGs, social studies, watershed
1 . は じ めに
本 プロ ジェ ク ト は, 2017 ・ 18年に告示 さ れた次期学習 指導要領' ) (以下, 新学習指導要領 と 示す) を前提 と し た ESD (Education for Sustainable Development : 持 続 可能 な開発の ための教育実践の検討 を目的 と し , ESD の授業 プ ラ ン を PDCA サイ ク ル適用 に よ り 開発 ・ 構築 す る も ので あ る。 本稿 では Plan 段階の検討 を報告す る。 具体的には, 学習指導要領におけ る ESD の位置づけ と ESD 実践の対象 お よ び学習活動 地域につい て, 取 り 扱 う 諸問題 (諸課題 ・ 戦略的視点) や地理教育 での位置づ けの諸点から ESD 実践に向け ての前提 を検討 し, Do 段 階以降の方向性 を示す。
2 . ESD をめく、る近年の動向
1 ) ESD の取り 組み ESD は, 持 続可能 な 社会 を 形成 す る た めの教育 にお け る取り 組みである。 2005年から2014年は, 日本政府の 提 案 で 「 国 連 持 続 可 能 な 開 発 の た め の 教 育 の 10年 (UNDESD) 」 と し て, ユネ ス コ が主導機関 と な り , 世 界で積極的 な取 り 組みがな さ れた。 UNDESD の最終年 には, 2015年以降 も ESD の さ ら な る推進 ・ 拡大 を日指 す GAP (The Global Action Programme on Education for Sustainable Development) が採択 さ れ, ESD の取 り 組みは継続 し て行 われてい る。 後述す るよ う に, 新学習指導 要領 にお い て も ESD の視点 が明記 さ れ, さ ら に そ の理 念 を反映 し た ジオパー ク や世界遺産での取 り 組みも , 日 本各地で展開 さ れてい る。 ESD に つい て は, 地理学 , 地理教育 や社会科教育 の 各学会で も議論がな さ れて き た。 た と え ば, 地理科学学 会の2010年度秋季学術大会のシ ンポジウムでは 「サステ イ ナ ビリ テ イ い ま , 地理教育が問 われてい る も の」 が開 催さ れ (和田ほか, 2011) , その成果は中山ほか (2011, 2012) な どに ま と め ら れた。 日本社会科教育学会 で も 2010年の全国研究大会で シ ンポジウム 「持続可能 な社会 の形 成 の た め に 社会科 は何 が で き る か」 が開催 さ れた (井田, 2011) 。 ま た社会科教育 におけ る ESD の実践 と 課題が述べ ら れた井田 (2017) が出版 さ れてい る。 近年 においても , 2018年の日本地理学会の春季学術大会では, シ ン ポ ジ ウ ム 「新学習指導要領 と ジ オパ ー ク」 で ESD の点 が強調 さ れてい る な ど (河本ほか, 2018) , ESD の 視点やそ れを取 り 入 れた実践や議論の蓄積が進んでい る。 2 ) SDGs の取り 組み 近年の動向で特 に注目 し たい点は SDGs (Sustainable Development Goals ; 持 続可能 な 開発目標) の取 り 組 み であ る。 SDGs は2015年 9 月の国連サミ ッ ト で採択 さ れ * 兵庫教育大学教員養成 ・ 研修高度化セ ン タ ー 助教 * * 兵庫教育大学大学院教科教育実践開発専攻社会系教育 コ ース 教授 * * * 兵庫教育大学大学院教育実践高度化専攻授業実践開発 コ ース 教授 平成30年10月25 日受理
たも ので, 国連加盟193か国が2016年から2030年の15年 間 で達成す る ために掲げ た目標であ る。 SDGs は, SDGs に先行 し て実施 さ れた MDGs (M illennium Development Goals ; ミ レ ニ ア ム開発日 標) が主 と し て発展途上国で の実現 を目指 し たのに対 し て, 発展途上国のみな ら ず先 進国 も取 り 組む も のであ る。 sDGs で は, 持 続的 な世界 を実現す る ための17の目標 ( Goal) と 169の タ ーゲ ッ ト が設定 さ れてい る。 17の目標 の なかで教育は, 目標 4 「質の高い教育 を みんな に (す べ ての人に包括的かつ公正 な質の高い教育 を保証 し , 生 涯学習 の機会 を促進す る) 」 に位置づけ ら れ, ま た その 中の夕一 ゲ ッ ト 4.7に 「持続可能 な開発 を促進す る ため に も必要 な知識及 び技能の習得に向け て取 り 組む」 と さ れてい る。 及川 (2018) は, ESD が教育 にかかわる目 標 4 や タ ーゲ ッ ト 4.7に留 ま る も ので は な く , 17の日 標 すべ ての達成に貢献す る も のであ る と 指摘 し てい る。 3 ) ESD と 新学習指導要領 (1) 前文におけ る 「持続可能な社会の創 り 手」 新学習指導要領では, こ れま で になかっ た 「前文」 が つけ ら れた。 前文 は, 法令 や規約の条項の前に書かれる 文章 であ り , 制定の理由や目的が述べ ら れてい る も ので ある。 小 ・ 中 ・ 高等学校の前文には, 校種によ り 小学校 では 「児童」 と 表記 さ れてい る部分が, 中学校 と 高等学 校 では 「生徒」 と 表記 さ れる な ど多 少の表記の違いはあ る も のの, 内容 ・ 趣旨はほぼ同 じ で あ る。 こ の前文 では, 学校教育で育て る児童 ・ 生徒像が示 さ れてい る。 す なわち, 「 ・ ・ ・ 一人一人の児童 (生徒) が, ・ ・ ・ 持続可能 な社会の創 り 手 と な る こ と がで き る よ う にす る こ と が求め ら れる」 であ る。 こ の 「持続可能 な社会 の創 り 手」 に かか わ る表現は , ESD の日 標 ・ 目 的 2) に示 さ れた 「持続可能 な社会づ く り の担い手 と な る市民 を育成」 と 一致す る も のであり , 新学習指導要領 には ESD の理念が強 く 反映 し てい る こ と が読み取 れる。 こ のよ う に ESD の理念が明示的 に示 さ れた今回の新 学習指導要領は学校教育の大き な転換点 と し て と ら え る こ と がで き る。 (2) 社会系教科におけ る ESD の観点 第 1 表は, 新学習指導要領におけ る社会系教科目の構 造 を示 し たも のであ る。 第 1 表が示すよ う に, 新学習指 導要領では, 高等学校の地理歴史科およ び公民科の科目 の見直 し がな さ れた。 ま た持続可能 な社会づ く り およ び持続可能 な社会の創 り 手の育成の観点は, 小 ・ 中 ・ 高等学校の社会系教科の 改訂にも深 く 関連 し てい る (第 2 表) 。 と り わけ, 「持続 可能 な社会づ く り の観点 から 地球規模の諸課題や地域課 題 を解決 し よ う と す る態度 な ど, 国家及び社会の形成者 と し て必要な資質 ・ 能力 を育 んでい く こ と」 が, 小 ・ 中 ・ 高等学校 に共通す る点 と し て設定 さ れてい る。 加え て, 中等教育段階では教科の基本的 な考え方の一 つ と し て 「主権者 と し て, 持続可能な社会づ く り に向か う 社会参画意識の酒養やよ り よ い社会の実現 を視野に課 題 を主体的 に解決 し よ う と す る態度の育成」 が示 さ れ, その中 では ESD が重要な位置 を占 めてい る こ と が述べ ら れて い る 3)。 ま た第 3 表は, 新学習指導要領におけ る小学校から高 等学校 に至 る社会系教科の分野 ・ 科目等 に, ESD にか かわる記載内容 を示 し た も のであ る。 社会系教科に限定 し てみて も , 中学校社会科歴史的分野およ び高等学校公 民科倫理 を除 く ほぼすべ ての科目 ・ 分野におい て 「持続 可能社会」, 「持続可能性」 あるいは SDGs が示す地球的 ・ 地域的問題 を扱 う 学習内容が設定 さ れており , こ れら の 学習 を通 じ て, 持続可能 な社会の創 り 手の育成に貢献す 第 1 表 新学習指導要領における社会系教科目の構造 校種1 教科 学年 分野 ・ 科目 地 _ 理 8 同 歴
掌
史 2 校 公 民 1 地理探究 日本史探究 世界史探究 倫理 政治 ・ 経済 地理総合歴史総合
公共
3 中 社 1 地理的分野 歴史的分野 6 社 5 校 4 3 我が国の国の政治の働きや歴史, 我が国と関係の深い国の生活や国際社会における我が国の役割 我が国の国土と 産業の様子や特色 自分た ちの県 を中心 と し た地域の社会生活 自分た ちの市 を中心 と し た地域の社会生活 注 : 高等学校の科目は各学校によ っ て学年配当が異な るこ と が想定 さ れる。 出所) 筆者作成。第 2 表 社会系教科の改訂における ESD の観点 校種 教科 記載箇所の項目 記述内容 小学校 社会 第1章総説, 2. 社会科改訂の 趣旨及び要点 (1) 改定の 趣旨 持続可能な社会づ く り の観点か ら 地球規模の諸課題や地域課題 を解決 し よ う と す る態度な ど, 国家及び社会の形成者 と し て必要な資質 ・ 能 力 を育んでい く こ と が求め ら れ る。 (10.5) 持続可能な社会づ く り の観点か ら , 人口減少や地域の活性化, 国土や 防災安全に関す る内容の充実 を図 る と と も に, 情報化によ る生活や産 業の変化, 産業におけ る技術の向上な どに関す る内容につい て も 充実 す る方向で改善 を図 る. (D ie) 中学校 社会 第1章総説, 2. 社会科改訂の 趣旨及び要点 ( 1) 改訂の 趣旨, ①社会科の成果と 課題 持続可能な社会づ く り の観点か ら 地球規模の諸課題や地域課題 を解決 し よ う と す る態度 な ど, 国家及び社会の形成者 と し て必要な資質 ・ 能 力 を育んでい く こ と が求められる。 (p 6) 第1章総説, 2. 社会科改訂の 趣旨及び要点 (1) 改訂の 趣旨, ②社会科の改訂の基本 的 な考 え方 (ウ) 主権者 と し て, 持続可能な社会づ く り に向か う 社会参画意識の 涵養や よ り よい社会の実現 を視野に課題 を主体的に解決 し よ う と す る 態度の育成 (略) 社会科におい ては, 従前の学習指導要領から一貫 し て重視 さ れ て き た, 課題の発見, 解決のための 「思考力, 判断力, 表現力等」 と も相ま っ て, 身近 な地域社会か ら 地球規模に至 る ま での課題の解決の 手掛か り を得 る こ と が期待 さ れてい る。 そのよ う な理念に立つ持続可 能な開発のための教育 (ESD) や主権者教育な どについ ては, 引き続 き 社会科の学習 におい て重要な位置 を占めてお り , 現実の社会的事象 を扱 う こ と ので き る社会科 な ら ではの 「主権者 と し て, 持続可能な社 会づ く り に向か う 社会参画意識の涵養や よ り よい社会の実現 を視野に 課題 を主体的に解決 し よ う と す る態度の育成」 が必要で あ り , 子供た ちに平和で民主的な国家及び社会の形成者 と し ての自覚 を涵養す る こ と が求められる。 (pp 9-10) 高等学校 地理歴史 第1章総説 第2節 地理歴史 科改訂の趣旨及び要点 1 地 理歴史科改訂の趣旨 (1) 社 会科, 地理歴史科, 公民科の 成果 と 課題 持続可能な社会づ く り の観点か ら 地球規模の諸課題や地域課題 を解 決 し よ う と す る態度 な ど, 国家及び社会の形成者 と し て必要な資質 ・ 能力 を育んでい く こ と が求め ら れ る。 (p 6) 第1章総説 第2節 地理歴史 科改訂の趣旨及び要点 1 地 理歴史科改訂の趣旨 (2) 地 理歴史科の改訂の基本的 な考 え方 ( ウ) 主権者 と し て, 持続可能な社会づ く り に向か う 社会参画意識 の涵養や よ り よい社会の実現 を視野に課題 を主体的に解決 し よ う と す る態度の育成 (略) 地理歴史科におい ては, 従前の学習指導要領か ら一貫 し て重視 さ れて き た, 課題 の発見, 解決のた めの 「思考力, 判断力, 表現力 等」 と も相ま っ て, 身近 な地域社会か ら 地球規模に至 る ま での課題 の 解決の手掛か り を得 る こ と が期待 さ れてい る。 そのよ う な理念に立つ 持続可能な開発のための教育 (ESD) や主権者教育な どについては, 引 き 続き 地理歴史科の学習におい て重要な位置 を占めてお り , 現実の 社会的事象 を扱 う こ と ので き る地理歴史科な ら ではの 「主権者 と し て, 持続可能な社会づ く り に向か う 社会参画意識の涵養や よ り よい社 会の実現 を視野に課題 を主体的に解決 し よ う と す る態度の育成」 が必 要で あ り , 子供た ちに平和で民主的 な国家及び社会の形成者 と し て の 自覚 を涵養す る こ と が求 め ら れ る。 (1010.9-10) 公民 第1章総説 第2節 公民科改 訂の趣旨及び要点 1 公民科 改訂の趣旨 (1) 社会科, 地 理歴史科, 公民科の成果 と 課 題 持続可能な社会づ く り の観点から 地球規模の諸課題や地域課題 を解 決 し よ う と す る態度 な ど, 国家及び社会の形成者 と し て必要な資質 ・ 能力 を育んでい く こ と が求められる。 (p 6) 第1章総説 第2節 公民科改 訂の趣旨及び要点 1 公民科 改訂の趣旨 (2)公民科の改 訂の基本的 な考え方 ( ウ) 主権者 と し て, 持続可能な社会づ く り に向か う 社会参画意識 の酒養や よ り よい社会の実現 を視野に課題 を主体的に解決 し よ う と す る態度の育成 (略) 公民科におい ては, 従前の学習指導要領か ら一買 し て重視 さ れ て き た, 課題の発見, 解決のための 「思考力, 判断力, 表現力等」 と も相ま っ て, 身近 な地域社会か ら 地球規模に至 る ま での課題の解決の 手掛か り を得 る こ と が期待 さ れてい る。 そのよ う な理念に立つ持続可 能な開発のための教育 (ESD) や主権者教育な どについ ては, 引き 続 き 公民科の学習 におい て重要な位置 を占めてお り , 現実の社会的事象 等 を扱 う こ と ので き る公民科な ら ではの 「主権者 と し て, 持続可能な 社会づ く り に向か う 社会参画意識の涵養や よ り よい社会の実現 を視野 に課題 を主体的に解決 し よ う と す る態度の育成」 が必要で あ り , 子供 た ちに平和で民主的 な国家及び社会の形成者 と し ての自覚 を涵養す る こ と が求めら れる。 (pp 9-10) 出所) 文部科学省 (2017a, 2017b, 2018a, 2018b) より筆者作成。
第 3 表 社会系教科目におけ る ESD に関連 し た学習内容 校種 l 教科 l 学年 分野 ・ 科 目
l 地 l 3
-
l 理 l 同 l 歴 l華l
史l
2 校1
公1
l 民 l l C 現代世界1こお1ナるこれ力らの日本の国 :f二像 l 政治・経済の諸課題 l 国際社会の諸課題 A 地図や地理 青報 ステムで提え る 現代 l世界 B風際理解と風際協力 C持続 可能な地城づくりと私たこち B自立したこ主体としてよりよい社会の 1こ参画する私たごち C持続 可能な社会 づくりの主体となる私たこちl
l 8
中 l
l
: 社 : 子 : : 2l
l 1
B私たちと経済 i)私たちと国際'社会の諸課題 : : l l 6l
l
l l 51
社l
: 会 : 校 : : : : 4 : : l l 8 ( 2) 我が国の農業や水産業における食料生産 (4) 県内の伝続や文化, 先人の働き 注 1 : 表中斜字で示 さ れた学習内容は, 法的拘束力のある部分において, 「持続可能な社会」, 「持続可能性」, 「持続可能な 0 0 」 に関 す る項目が盛 り 込ま れてい る こ と を表 し て い る。 そ れ以外 は, 解説部分 にお い て同様の項目に関す る言及がな さ れて い る こ と を示 し て い る。 注 2 : 内容の位置は, 第 1 表の教科目の位置に対応。 出所) 文部科学省 (2017a, 2017b, 2018a, 2018b) より筆者作成。 る資質 ・ 能力の獲得が意図 さ れてい る。 (3) 地理学習におけ る ESD 地理歴史科におい て新設 さ れる 「 地理総合」 は, 戦後 教育 におけ る地理の科目では じ めて必履修科目 と し て設 定 さ れる も ので, 高等学校のすべての生徒が地理 を学習 す る こ と に な る。 そ の内容は, 「 A 地図 や地理情報 シ ス テ ムで捉え る現代世界」 , 「B 国際理解と 国際協力」 , 「c 持続可能 な地域づ く り と 私た ち」 の 3 つの大項目 か ら 構成 さ れてい る。 こ こ に示 さ れる よ う に , 「持続可 能な社会の創 り 手」 にかかわる 「持続可能な地域づ く り」 が大項目の一つに組み入 れら れてい る。 ま た新学習指導要領では, 小学校から高等学校におけ る段階性や接 続が以前 よ り も 意識 さ れてい る。 特 に地理 に関す る学習 と ESD と の関わり に注目 し た場合, 小学 校社会科では, 地域に対す る誇り の酒養や持続可能な産 業 を理解す る と い う 点から出発 し , 中学校社会科では, sDGs の示す持続可能ではない問題の構造 を考察す る こ と や地域づ く り におけ る 「持続可能性」 と い う 視点の活 用が学習 におい て意識 さ れてい る。 つま り 小 ・ 中学校で は, 持続可能 な開発その も の を知 り , 持続可能ではない 問題の構造 を認識 さ せ, 持続可能性 と い う 観点から 地域 づ く り や地域が抱え る問題の対策 を考え るこ と が重視 さ れてい る。 そ し て, こ れら を受け て, 高等学校では 「持 続可能 な地域づ く り 」 と あ るよ う に, 持続可能ではない 問題 を事例に課題 を設定 し , 探究す る活動が設定 さ れて い る。 換言す れば, よ り 問題解決的 な学習 を通 じ て, 持 続可能 な開発に対す る認識 を深め, 解決策 を考え, 吟味 す る過程が重視 さ れてい る と い え る。 そのなかで 「 地理 総合」 では防災や学習者であ る生徒たちが生活す る生活 圈, 「地理探究」 では現代世界におけ る日本の役割 と い う 視点 から 学習内容 ・ 活動が組織 さ れてい る。3 . 学習対象地域と し ての流域
本 プロ ジ ェ ク ト では, 流域に注目 し た取 り 組みを提案 す る。 こ こ では学習対象地域と し て流域を取り 上げるこ と につい て, 水循環の基本単位 と し ての流域, 地域開発 計画 と 流域, 学習単位 と し て の流域, ESD と 流域学習 の 4 点から考察す る。 1 ) 水循環の基本単位 と し ての流域 人間の体の 6 割以上は水分でで き てい る。 人間は水な し ではその生命 を維持す る こ と はで き ない。 水は生命 の 源で あり , そ し て水は経済や社会活動におい て も 不可欠 の資源で も あ る。 第 1 図は地球上の水の動 き を示 し た も ので あ る。 山 に降 っ た雨は, 大地に染 み込み, 斜面 を流第 1 図 流域の概念図 出所) プロ ジェ ク ト WET 「 木曽川流域版 ガイ ド ブ ッ ク」 作成 検討委員会 (2014) よ り引用。 れ, 渓流と な り , 川 と な り , 最後は海に注 ぐ。 そ し て太 陽のエ ネ ルギー を受け て, 水蒸気 と な り , 再び雨や雪 と な っ て大地に降り 注 ぐ。 こ のよ う に水は循環す る資源で あ る。 そ し て 「流域」 は, その水循環の基本単位であ る。 水循環につい て さ ら に詳 し く みて みる と , 山 か ら 海ま での旅の間 に, 水は人によ っ て繰り 返 し利用 さ れてい る。 上流部の田畑 を潤お し た水は再 び川 に流れ込み, 中流部 で も川から取水 さ れ田畑 を潤お し , そ し てま た川に戻 り , さ ら に下流部 におい て も 再利用 さ れる。 人の身 体 を通 る 飲 み水 や工場 での生産 に も かかわ っ て も , 水は循環 し な が ら利用 さ れてい る。 こ のよ う に流域内 におい て, 上流 から下流, そ し て海に至 るま で, 繰り 返 し利用がな さ れ る。 し か し , 流域外に水が持 ち出 さ れた場合は, その循 環は断ち切ら れる。 流 域外 に水 を 移動 さ せ る こ と を , 流 域変 更 (water transfer) と い う (白井, 1987, pp.15-18) 。 日本国内 で は, 吉野川分水や香川用水の例があり , 信濃川の水 を東 京に分水す る計画 も な さ れた。 流域変更は単に経済的側 面 だけ で な く , 生態系 や社会に大き な影響 を及ぼす もの であ る。 そ れは多 様 な生物 を育 み, 地域の人 と 暮ら し を 守 り , 文化 を培 っ てい る循環す る水のネ ッ ト ワークが断 ち切 ら れる こ と を意味す る か ら で あ る。 その意味 で , 流 域 を一 にす る住民は運命共同体 と みなす こ と がで き , 流 域 と その水資源はその持 続的 な社会の基盤 と し て常 に配 慮すべ き事項であ る と いえ る。 2 ) 地域開発計画 と 流域 前述のよ う に, 人間の生命維持 だけ で な く , 経済や社 会活動 におい て重要 な意味 を有す る流域は, こ れま で地 域開発計画の単位 と し て注目 さ れ, 取り 上げら れてき た。 流域 を単位 と す る開発 で最初にあげ ら れるのが, TVA ( テネ シ一川流域開発公社) であ る。 TVA はニ ユー デイ ー ル政策の一環と し て, 1933年に設立 さ れ, 多目的 ダムを 建設 し , 建設労働者雇用によ り 失業者の救済を行 う と と も に, 灌概整備によ る農業生産の向上, 水力発電事業に よ る安価 な電力 を利 用 し た ア ル ミ ニ ウ ム産業 の立 地, さ ら に ダムに よ る流量の調整に よ り 洪水防止の役割 を担 っ た。 ア メ リ カ合衆国では, 同様の開発が ミ ズ ー リ 一川, コ ロ ン ビア川 , コ ロ ラ ド川の流域で も 実施 さ れてい る。 こ のよ う な多 目的 ダムを基幹施設 と し て用い た開発は, 20世紀 にイ ン ド やエ ジ プ ト な ど世界各地で も 展開 し , 21 世紀 に入 っ て中国ではサ ン シ ヤ (三峡) ダムを中心 と す る長江流域の開発が行 われた。 日本におい ては, 1950年 に制定 さ れた国土総合開発法に基づいて1951 年に特別地 域開発計 画が策定 さ れ, TVA を モ デルと し て北上川や 木曽川 な どで 河川 の総合開発 が実 施 さ れた。 そ し て , 1965年に改正 さ れた河川法では, 水系毎によ る一貫 し た 河川管理 と な り , 現在は109水系が一級河川 と し て設定 さ れ, 国 に よ る管 理が な さ れてい る。 全国総合開発計画においては, 1977年の第三次全国総 合開発計画 (以下, 三全総と示す) と1998年の全国総合 開発計画 で あ る21 世紀の国土の グラ ン ド デザイ ン (第 五次) (以下, グラ ン ド デザイ ン と 示す) におい て, 流 域 を単位 と す る開発の提案がな さ れてい る。 三全総は, 地域の資源 を活かす と い う 視点 を多分に取 り 入 れ, 生活 環境の整備に主眼 をおい た定住圏 を設定 し , 圏内での産 業振興 を め ざす も ので あ っ た。 その定住圏 の一 つのモ デ ルと し て, 流域が取 り 上げ ら れ, 特に愛知県の矢作川流 域がモ デル事例 と し て示 さ れた。 グラ ン ド デザイ ンでは, 「流域圈」 と い う 概念が取 り 入 れら れた。 こ の流域圏 と は, (河川の) 流域お よ び関連す る水利用地域や氾濫原 で示 さ れる一定の範囲の地域 (圈域) と 定義 さ れてい る。 こ のよ う に流域は, 地域開発や計画の有効で有力 な地 域単位 と し て想定 さ れて き た。 なお三全総では将来的 な 地域像 を前提 に利水 を中心 と し た開発や保全 を中心 に議 論 さ れてい るの に対 し て , グラ ン ド デザイ ンで は国土保 全 や治水 と い っ た観点 が重視 さ れてい る。 3 ) 学習単位 と し ての流域 Smith (2000) は地理的文脈におけ る スケ ールの概念 を, 地図学的 スケ ール, 方法論的 スケ ール, 地理的 スケ ー ルの 3 つ のス ケ ールに分類 し てい る。 地図学的 ス ケ ール と は, 地図が作成 さ れる抽象化 レベ ルを意味 し てい る。 つ ま り , 地図 の縮尺が小 さ く な るほ ど, 地図 に表現 さ れ る事物の具体性 (解像度) は減少す る関係にあ る。 方法 論的 スケールと は, 研究者が特定の研究課題に応え るべ く 情報収集 を行 う ために選択す る空間的単位, たと え ば 国勢調査の統計区 であ る。 地理的 スケールは研究上の抽 象化 と い う よ り も , む し ろ自然 ・ 人文景観 を形成す る事 象 の生成 プロ セ ス に即 し た意味内容 を も っ てい る。 流域は, ロ ーカ ルあ るいはメ ソ レベルの地図学的 スケ ー ルであ り , 集水域と い っ た自然的条件に も と づ く 方法論
的 スケ ール と し て位置づけ ら れる と と も に , 舟運な ど を 通 じ て商圈や様々な地場産業の形成 な ど人文 ・ 社会的要 因 に基づ く な どの意味 か ら 地理的 スケ ール と し ての位置 づけ で と ら え る こ と がで き る。 吉水 (2011) は, 空間 と 時間あ るいはその組織化が, その社会によ っ て作 り 出 さ れる社会的生産物 であ る と い う 前提 を も つ地理的 スケ ールの理論 に依拠 し た授業 モ デ ルの開発 を行 っ てい る。 本 プロ ジ ェ ク ト では, 特 に流域 を地理的 スケ ールの位置づけ, 吉水 (2011) の授業モ デ ルの援用 を視野 に入 れて , 検討 を進め る。 4 ) ESD と 流域学習 (1) ESD の視点 流域 を単位 と す る学習 (以下, 流域学習 と 示す) を ESD と い う 視点 か ら みた と き , 次 の 4 つの ポイ ン ト を 指摘す る こ と がで き る。 一つ目の ポイ ン ト は, 持続可能な社会の社会基盤と い う 点 であ る。 水は人に と っ て生き てい く う え で, 必要不 可欠であり , 質, 量と も に十分であ るこ と が重要であ る。 本研究 で流域 を と り あげ る こ と は, 人が生き てい く 上で 最 も 基礎 と な る水 を取 り 上げ る こ と を意味 し , 持続可能 な社会 を形成す る ための基盤 を学習 す る こ と に な る。 水は, 循環す る過程で, さ ま ざま な要素 を結 びつけ複 雑 な ネ ッ ト ワ ー ク を形成 し て い る。 ESD で は コ ン ビ テ ン シー獲得が指摘 さ れてい る。 その一つ と し て統合的 ・ 総合的 に思考す る コ ン ビ テ ン シーの獲得 が目指 さ れてい る。 流域内の複雑 なネ ッ ト ワ ー ク の把握や理解に おい て は, 統合的 ・ 総合的 な観点が必要不可欠であ り , 二つの 目の ポイ ン ト と し ては , コ ン ビ テ ン シー獲得 に おい て , 流域が有効 な素材 であ る点 にあ る。 三つ目は未来志向 で あ る。 現在のわれわれに と っ て必 要不可欠の水は, も ち ろ ん将来の子 ど も に と っ て も 必要 不可欠 であ る。 流域学習 で も , 単に現状把握の議論だけ で な く , ESD の基本姿勢の一 つ で あ る未来志向 で 進め る必要があ る。 そ し て四つ目に, 持続可能な社会の創 り 手であ る。 現 在の水 をめ ぐ る議論 と 未来志向 を前提 と す る流域学習は, 必然的 に学習 者 に社会参画の意識 を形成 さ せ, ESD や 学習指導要領が求める 「持続可能な社会の創 り 手」 の育 成 につ なげ る こ と が出来 る。 (2) SDGs と のつながり すでに指摘 し たよ う に, 及川 (2018) は ESD が SDGs の基盤的役割 を有 し てい る こ と を指摘 し てい る。 こ こ で は, 水や流域と い う 観点 で, sDGs と の関連に注目 し て み る 。 直接的 には, 水 や流域がかかわっ てい る目標 と し て, 目標 6 「安全 な水 と ト イ レ を世界中に (すべての人に水 と 衛生への ア ク セ ス と 持続可能 な管理 を確保す る)」 が あ る。 その他 に水力発電 と のかかわり か ら みれば, 目標 7 「 エ ネ ル ギ ー を み ん な に そ し て ク リ ー ン に ( す べ て の人々に手 ご ろ で信頼で き , 持続可能かつ近代的 なエ ネ ルギ ーへの ア ク セ ス を確保 す る) 」 があ り , ま た目標 9 「産業 と 技術革新の基盤 をつ く ろ う (強,靭「な イ ン フ ラ を 整備 し , 包摂的で持続可能な産業化 を推進す る と と も に, 技術革新の拡大 を図 る) 」 , 目標11 「住み続け ら れるま ち づ く り を (都市 と 人間の居住地を包摂的, 安全, 強靭か つ持続可能にす る)」 , 目標12 「 つ く る責任 つかう 責任 (持続可能 な消費 と 生産のパ タ ー ン を確保す る) 」 や目標 13 「気候変動に具体的 な対策 を (気候変動 と その影響に 立 ち向かう ため, 緊急対策 を取 る) 」 な ど も 関連 を見出 す こ と がで き る。 こ のよ う に流域 を学習対象 地域 と す る こ と で , ESD や SDGs と の関連性 を意図す る学習が展開 し やすい と い え よ う 。
4 . 流域学習の先行事例の検討
流域 を単位 と す る ESD 実践の先行事例は, 管見の限 り多 く はない。 流域を学習対象地域と す る流域学習自体 も そ れほ どない。 その要因 の一 つは, :t直岡 (2018) で指 摘 さ れる よ う に, 暮 ら し を考え る時の範囲が 0 0 町や 0 0 市, 0 0 県 と い っ た 「行政の区分」 で と らえ るこ と が 多 く , 暮ら し が行政区分で成り 立 っ てい るから であ る。 し か し なが ら , 飲料水 を供給す る事業は, 行政区分での 説明が難 しい事例である。 岡 (2018) ではこ の点に着 目 し て, 流域と い う 見方から , 「水は どこ から」 (小学校 第 3 ・ 4 学年) の学習 を提案 し てい る。 こ の学習 を通 じ て, 暮 ら し が遠 く の人た ちの生活で成り 立 っ てい る こ と (成 り 立 たせ る こ と ) を実感 で き る こ と , 山 か ら 海ま で のスケ ールで, 鳥の目で俯瞰す る こ と がで き る点 を流域 学習の利点 にあげてい る。 加藤 (2002) で も 流域を素材と す る授業提案 を行 っ て い る。 そ こ での問題意識は, 市町村 と い う 行政的 に区画 さ れた形式 地域 を素材 と し て学習す る こ と への問いかけ であ る。 実質 地域 と し ての流域 を取 り 上げ る こ と で, 位 置や空間的広がり , 環境条件, 人間の営みのな どを関連 付け た社会の見方や考え方 を, 形式地域で取り 上げた場 合よ り も よ り よ く 育成で き るこ と , そ し て批判的で創造 的 な見方や考え方がで き るこ と を, 中学校社会科地理的 分野で矢作川流域 を事例 と し た授業実践 を通 じ て示 し て い る。 ESD 実践におけ る流域学習 と し ては小玉 (2010) が あ る。 小玉 (2010) は, 霞 ケ浦流域地域 を単位 と し た ESD 実践 を行 っ て い る。 具体的 には, ①霞 ケ浦 地域の 自然再生 と 社会 シス テ ムの変革 を目的, ②学校 ・ 行政 ・ NP0 を中心 と し た組織的 な教育体制 を構築 し て大人 と子 ども が協働 し た学習活動 を展開, ③自然系の環境教育 から 出発 し て地域の持続可能に関す る課題の解決 を学習 活動 に組 み込 む, の 3 つの段階で 学習 を展開 し てい る (小玉, 2010, p ie6) 。 こ の実践で注目 し たい点は, な ぜ学習対象地域 を流域 と し たのかであ る。 理由 と し て, 行政単位の縦割 り 型環境保全策の問題点 を乗り 越え る た めであ っ たこ と が指摘 さ れてい る。 こ れら 3 つの先行事 例で共通し てい る点は, 行政区分や行政単位の存在の確 認 と そ れら が も た ら し てい る制約 で あ る。 流域学習 は, そ の制約 を外 し た新 た な枠 組 みの思考 を も た ら す も ので あ る。 学校教育の授業実践ではないが, 流域を対象 と し て様々 な学習のア ク テ イ ビテ イ を提案 し た も のと し て, プロ ジ ェ ク ト WET4) 『木曽川流域版 ガイ ド ブ ッ ク』 作成検討委 員会監修 (2014) があ る。 こ の ガイ ド ブ ッ ク はア メ リ カ では, 前述の コ ロ ラ ド川流域開発で有名 な コ ロ ラ ド川流 域 を事例 と し て作成 さ れた。 そ れを基に し て プロ ジ ェ ク ト WET ジ ャパ ンが木曽川版 を作成 し てい る (第 2 図) 。 そ れが プロ ジ ェ ク ト WET 『木曽川流域版 ガイ ド ブ ッ ク』 で あ る。 『木曽川流域版 ガイ ド ブ ッ ク』 の内容は, 具体 的 に12の ア ク テ イ ビ テ イ が示 さ れて い る。 12の ア ク テ イ ビテ イは, 「流域を知 る」 , 「流域の生き物」 「流域の歴史」, 「 流域の水利用」 , 「流域の文化 ・ 芸術」 のに分類 さ れて い る。 こ の ガイ ド ブ ッ ク に特徴的 な こ と は, 学習指導要 領 と の関連が示 さ れてい る点 で あ る。 具体的 には, 12の ア ク テ イ ビテ イ が各校種 ・ 学年 ・ 教科の どの単元 で使え る かが示 さ れてい る。 第 2 図 コ ロ ラ ド川 と木曽川の プロ ジ ェ ク ト WET ガイ ド ブ ッ ク 5 . お わ り に 本 プ ロ ジ ェ ク ト は , 新 学習 指 導 要領 を 前提 と し た ESD 実 践 の検討 を 目 的 と し , ESD の授 業 プ ラ ン を PDCA サイ ク ル適用 によ り 開発 ・ 構築す る も ので あ る。 本稿 では Plan 段階の検討 と その成果 を示 し た。 検討 で 得 ら れた知見 を整理す る と 以下の と お り であ る。 ま ず, 学習指導要領におけ る ESD の位置づけ につい ては, ESD の理念が新学習指導 要領の中核 に位置付け ら れた こ と を指摘 し た。 ま た, 学習内容におい て も 社会 系 教科のほ と ん どの学年 で ESD にかかわ る内容が明示 的 に示 さ れる と と も に, ESD にかかわる学習が段階的 ・ 系 統的 に配置 さ れてい る こ と を明 ら かに し た。 ま た日本 政府, さ ら には世界で取り 組ま れてい る sDGs に注目 し , そ こ で も ESD が重要な役割 を果た し てい る こ と に言及 し た。 ESD 実践の対 象 お よ び学習 活動 地域 に つい て は, 本 研究で取 り 上げ る流域に焦点 をあてて検討 し た。 人間の 生命 維持 におい て も っ と も重要 な物質 は水 で あ る。 その 存在の特徴は循環にある こ と 指摘 し , 流域はその循環の 基本単位で あ る こ と を示 し た。 ま た流域は歴史的 に も生 産活動や地域開発の単位 と し て用い ら れてき た。 学習単 位 と し て流域は地理的 スケ ールと し て も と ら え る こ と が で き る。 こ れら の点 を踏ま え て, 流域 を ESD 実践にお い て学習活動 地域と し て用い る こ と の意義 を 4 つのポイ ン ト (持続可能な社会の社会基盤, コ ンビ テ ン シー獲得, 未来志向, 持続可能な社会の創り 手) にま と めて示 し た。 一方, さ ま ざま な点 で流域を学習活動地域にす る利点 はあ る も のの, 実際の流域学習 の事例は, 管見の限り わ ずかで あ る。 先行事例 で も , 流域学習 そのも のにねら い があ るのではな く , 既存の行政単位 (市町村) の枠組み を取 り 払 う 意図で流域が用い ら れてい た。 ま た筆者 ら は, 流域に関す る基本情報の収集 を行 っ た。 その際には, 行 政区分 ・ 行政単位の枠組みだけ で な く , 河川行政におい ては農林水産省 と 国土交通省 な どの行政部門の枠組みの 存在 も大 き い こ と を見い だ し た 5)。 そ し て そのこ と が, 一般に, 流域全体で思考す る大 き な妨げ と な っ てい る。 最後に, 今後の研究の方向性 を示す。 本 プロ ジェ ク ト で は , Plan 段 階 か ら Do 段 階 さ ら に は Check 段 階 , Action 段 階へ と 展開 す る。 次 の Do 段 階 で は , 実 際 の ESD 実践の授業 プ ラ ン を, 加古川流域 を学習対象 と し て取 り 上げて検討す る。 河川の利水 ・ 治水 におい て, ダ ムと い う 技術が用い ら れる こ と で20世紀は大き な転換点 と な っ た。 加古川流域は, 利水 と 治水の両面 におい て, ダムが用い ら れ高度に統合的管理 を実現 し た流域であ る。 技術の移転は, 政治的経済的条件が整えば容易に行われ, 将来的 にはすべ ての河川におい て, 加古川流域で みら れ る よ う な河川の管理や運用 が実現 さ れる。 その意味 で , 加古川流域は人 と 川 と の関係や河川管理におい て先進的 な姿 を示 し てお り , 流域学習 の一 つの典型モ デルにな る と 考え る。 Do 段階の具体的 な授業 プ ラ ンの検討 に お い ては , 先 行研究 で取 り 上げた プロ ジ ェ ク ト WET 『木曽川流域版 ガイ ド ブ ッ ク』 を モ デルと し て, その加古川流域版の作 成 を試み, 授業 を実施 し , 効果の検討 を行 う 。 先行研究が指摘す るよ う に, 流域と い う 単位で学習す
る こ と で, 市町村の枠組みや行政部門の枠組みを超え た 別の認識が可能 と な る点がこ の学習の利点の ひと つであ る。 一方で教材づ く り と い う 点から は, 大き な課題が存 在する。 それは各種統計資料が, 市町村単位や行政部門 単位で整備 さ れてお り , 流域単位のも のはあま り ない こ と で あ る。 も ち ろ ん個々の市町村 デー タ を集約す れば流 域 デー タ を作成す る こ と は可能 で あ る。 し か し , 必ず し も市町村の行政界 と 流域界が一致す る と は限 ら ない。 こ のよ う な課題が, 流域 を単位 と す る教材開発の大 き な制 約条件 と な り , 流域学習の実践の障害 と な っ て き た と 考 え る。 こ の点 の解決策 と し ては, GIs ( 地理情報 シス テ ム) の活用が考え ら れる。 た と え ば, 国土交通省が整備 し てい る国土数値情報には, 多種多様な統計 データがメ ツ シ ユ デ ー 夕 と し て提 供 さ れ て い る 。 そ れ ら デ ー タ か ら GIs の空間加工機能 ( ジ オ プロ セ シ ン グ) を用い て流域 単位の統計 を整備す る こ と が可能であ る。 本稿 で は, ESD と 流域学習 と に かかわ っ て , 4 つの ポイ ン ト を示 し た。 実際の授業づ く り におい ては, そ れ ら の ポイ ン ト を どのよ う に組み込むのか。 ま た流域学習 は, 社会科学習や生活科学習の教科学習のほか, 総合学 習 ( ク ロ ス ・ カ リ キ ュ ラ ム) や学校全体の取 り 組みな ど 多 様 な形が想定 さ れ, どの学年, どの教科で展開す るの かに よ っ てその学習内容は大 き く 異 な っ て く る。 さ ら に 地理総合の導入 に と も な っ て, 小学校から高校ま での学 年 , 校種の系統性につい て も 視野に入 れて検討す る こ と が求 め ら れてい る。 以上の課題 を念頭に置き ながら , 授業開発に取 り 組む と と も に, そ れぞれの段階での検討 を記録 と し て残す こ と で, 「 流域」 を事例 と す る ESD 実践の基礎研究 と し て モ デル を提示 し たい。 ま た, 日本には一級河川 と し て, 109の水系が設定 さ れてい る。 並行 し て, 同様の検討 を 他の流域で も検討 し , それら の比較検討 を通 し て一般化 を試 みたい。 注 1 ) 全面実施は, 小学校2020年, 中学校2021年, 高校は 2022年から学年進行での実施であ る。 2 ) 地球的視野で考え , さ ま ざま な課題 を自 ら の問題 と し て捉え , 身近な と こ ろから取 り 組み, 持続可能な社 会づ く り の担い手 と な る市民 を育成す る こ と (「国連 持続可能な開発のための教育の10年」 関連省庁連絡会
議, 2011) 。
3 ) ESD が重 要 な位置 を占 め る理由 と し て , 社会科 , 地理歴史科, 公民科が 「従前の学習指導要領から一貫 し て重視 さ れて き た, 課題の発見, 解決のための 『思 考力, 判断力, 表現力等』 と も相ま っ て, 身近な地域 社会から 地球規模に至 るま での課題の解決の手掛かり を得るこ と が期待」 (文部科学省, 2017a, p 5 ; 2017b, p 6 ; 2018a, p 6 ; 2018b, p 6) さ れており , ESD がこ のよ う な理念 に立 っ てい る た めで あ る。 4 ) プロ ジ ェ ク ト WET と は, ア メ リ カ の NP0 組織 で 体験型の水教育 プロ グラ ムに取 り 組 んでい る組織で あ る。 日本におい ては, 2003年 よ り その使用権 を得 て, 河川財団が プロ ジ ェ ク ト WET ジ ャパ ンと し て活動 し てい る。 かれら の活動 の主 な も の と し て 「 ヵ リ キ ユラ ムア ン ド ア ク テ イ ビ テ イ ガイ ド」 があ り , その活動 は, 河川や水資源, 水に関す る様々な問題等 を理解 し , 興 味 を持ち, 将来にわた っ て考え , 行動す るための大き な き っ かけ と な る こ と を目的 と し てい る。 人 と 水 と の 関わり につい て, 単に知識 を与え る と い う こ と で な く , 子 ども たちが自 ら考え ながら楽 し く 学ぶ工夫 し てい る 点 に特徴があ る。 その具体的 な形が, 「Discover a Wa tershed」 の シ リ ーズ で あ る。 5 ) 2018年に兵庫県が設置 さ れてから150年 を迎え る こ と から , そ れに関連す る事業 と し て 「兵庫県政150周 年事業」 が実施 さ れてい る。 その関連で , 「加古川流 域を潤す水文化の交流 ・ 連携と継承に関する調査研究」 を2017年度に受託 し , 流域に関す る情報収集と 整理す る と と も に, デー タ ベ ース化 を行い , そ れら を報告書 と し て ま と めた。 ま たそ れら の情報 を も と に, 啓蒙パ ン フ レ ッ ト 案 を作成 し た。 付記 本稿の内容は, 2018年度地理科学学会春季学術大会に おい て口頭発表 し た。 なお, 本研究は, 平成30年度兵庫 県委託 「加古川流域の水文化の交流 ・ 連携と 継承に関す る調査研究」 (研究代表者 : 南埜 猛) によ る研究成果 の一部であ る。参考文献
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