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若者の性意識・性行動におけるピア・プレッシャーおよびメディアの影響と性の健康教育について

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Academic year: 2021

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(1)Title. 若者の性意識・性行動におけるピア・プレッシャーおよびメディアの影 響と性の健康教育について. Author(s). 時田, 奈巳; 津村, 直子; 佐々木, 胤則. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 61(1): 303-312. Issue Date. 2010-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2288. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第61巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.61,No.1. 平成22年8月 August,2010. 若者の性意識・性行動におけるピア・プレッシャーおよび メディアの影響と性の健康教育について. 時田 奈巳・津村 直子・佐々木胤則 北海道教育大学札幌校教育保健研究皐. SexHealthEducationandtheInfluenceofPeerPressureand theMediaonSexualAwarenessandBehavioramongYoungPeople TOKITANami,TSUMURANaokoandSASAKITanenori DepartmentofHealthEducation,SapporoCampus,HokkaidoUniversityofEducation,SapporoOO2−8502. Abstracts. Thisresearchaimedtoclarifytheinfluenceofpeerpressureandmediaonsexualawarenessandbe− havioramongyoungpeople.Theinvestigationwascarriedoutusingananonymous,Self−registration. questionnairesurvey.Thesubjectswere312universityandspecialschooIstudents(132malesand1 females)intheSappororegion.Theresultsaresummarizedbelow.. Malesubjectsscoredmorehighlythanfemaleforthequestionconcerningthedegreeofpeerpres− Sure.Additionally,Significantdifferenceswerefoundbetweenmalesandfemalesfortheitems“Isome− timestalkwithmypeersaboutsex,’’“popularamongoppositesexisgood−lookingorenvious,’’and“there isafeelingthatweshouldhavesexualrelationsearly.’’Halfofmaleandfemalesubjectsanswered“agree OrStrOngagree’’tothepoint“itisgoodtoknowhowtorefuseapropositionfromsomebody.’’Itwas. Shownthatthesubjectshopedandwishedtoacquiremethodsandskillstoovercomepeerpressurefrom others. Intheareaofmediaitemsstronglyinfluencingtheirsexualawarenessandbehavior,60%ofmale Chose“adultvideosandDVDs,’’49%chose“pornographyandsexmagazine,’’and45%chose“adultweb− Site,’’while43%offemaleselected“teenmagazine,’’13%selected“pornographycomics,’’and8%selected “adultwebsites.’’Itwassuggestedsexualmediaweredeliberatelyprovidetargetedimagesasamer− Chandisestrategyontheproductionside,andthatmediawasnecessarytoenableuserstoidentifyexag−. geration andfalsecontent.. 303.

(3) 時田 奈巳・津村 直子・佐々木胤則. Ⅰ.はじめに 若者の性意識・性行動は開放的・早期化傾向に. について』とする10項目,妊娠や性感染症に関わ. る性行動に対する自覚・認識等を含む『性に関す る行動について』とする10項目,仲間に対するイ. あり,歪められた性情報や興味本位に性を描写す. メージと度合いを計る質問を含む『仲間からの影. るメディアがそれらを助長している1)。一方,医. 響(ピア・プレッシャー)について』とする10項. 療保健関係者の時機を得た対策が行われているに. 目,影響を受けているメディアに関する認識を含. もかかわらず,十代の望まない妊娠やHIV感染. む『性情報について』とする2項目,自己効力感. は依然として社会問題であり,性の健康に対する. やセルフエステイーム得点に関する『普段のあな. 効果的な支援が求められている。若者世代におい. たについて』とする10項目で構成した く資料〉。. て,性に関する知識や意識,態度が形成されるう えで,同世代からのメッセージ,とりわけ仲間の. Ⅱ.結 果. 影響(ピア・プレッシャー)は重要な位置を占め. ていると指摘されている2)。そこで本研究では, マスメディアおよびピア・プレッシャーが若者の. 1.性に関する情報・教育の受け入れやすさ. 性に関する情報・教育の受け入れやすさを尋ね. 性意識や性行動に与えている影響について,性行. た設問では,男子は高い順に「友人から」が52%,. 動が最も活発になるとされる学生を対象に,状況. 「教師から」16%,「先輩から」11%であった。. を明確にするためのフィールド調査を行い,性の. 女子では,「友人から」52%,「教師から」20%,「保. 健康教育のための基礎資料を得ると共に,問題行. 護者から」5%の順であった(図1)。. 動への有効な取り組みの提案を試みることとし 0 5. %. た。. 0 4. ロ男子 %. 0 3. %. Ⅱ.調査対象および方法. 0 2. 入,回収が行われた。回収数は18∼34歳の男子136. n=180. _」■■. %. 厳密に守られる旨の説明の後,その場で配付,記. ●女子. %. ンケート調査を行った。質問紙はプライバシーが. 0. 門学校に在籍する学生を対象に無記名自記式のア. 0 1. 育学部)大学,医療系(看護および救急救命)専. %. 2008年9月から10月,札幌市近郊の教育系(教. n=132. 斬㌔♂㌔♂㌔ 図1 性に関する情報・教育の受け入れやすさ. 名,女子187名,計323名であったが,25歳以上の 者を除いた18∼24歳の312名(男子132名,女子180. 2.ピア・プレッシャーと性意識との関連. 名)を分析の対象とした。平均年齢は,男子18.8. 1)仲間からの影響(ピア・プレッシャー). 歳,女子19.3歳であった。質問紙の回答には,設 問ごとに無回答がみられたが,回答は有効とし, その項目を除いて集計を行った。. 質問紙の集計・解析は,エクセル統計2004を用 い,有意検定はズ2検定を用いた。 質問項目は,基本属性(性,年齢,恋人の有無). に関する項目と男女の違い,避妊や性感染症の知 識,性教育の影響を含む『性に関する知識・意識. 304. (手性に関わる会話. 「仲間と,性の問題について話す」の質問に対 し,「しょっちゅう話す」と回答したのは男子22%,. 女子12%であり,「たまに話す」と回答したのは 男子62%,女子56%であった(図2)。男子は女 子に比べて日常的に仲間と性に関わる会話をして いることが示された(p<0.05)。.

(4) 若者の性意識・性行動におけるピア・プレッシャーおよびメディアの影響と性の健康教育について. %. く思っていることが示された(p<0.05)。. % %. 0 0 0 0 0 0 0 0 7 6 5 4 3 2 1. %. 男女の回答パターンには有意差があり,男子が強. % % % %. ①しょっちゆう話す②たまに話す③全然話さない 図2 仲間と性の問題について話す. ①強く思う ②そう思う ③思わない 図4 仲間の性に関する十分な知識. (卦仲間の性的経験. 「仲間の性的な行動や経験が気になる」につい ては,「非常に気になる」と回答したのは,男子 10%,女子3%,「少し気になる」と回答したのは. 男子42%,女子46%であったのに対し,「全然気 にならない」と回答したのは,男子48%,女子50% であった(図3)。. 60%. ①強く思う ②そう思う ③思わない. 50%. 図5 もてることに対する嫉妬心 40% 30% (彰仲間の性体験に関するとらえ方. 20%. 「仲間うちでセックスを早く経験したほうがよ. 10%. いという雰囲気がある」の質問に対して,「強く. 0%. ①非常に 気になる. ②少し気 ③全然気 になる. にならない. 図3 仲間の性的な行動や経験が気になる. 思う」と回答したのは男子8%,女子0%であり, 「そう思う」と回答したのは男子27%,女子7% であった(図6)。女子に比べて男子は,早期の. 男子17%,女子7%であり,「そう思う」と回答. (彰異性にもてること. 「もてるのは『かっこいい』『うらやましい』. は男子24%,女子9%であり,「そう思う」と回 答したのは男子50%,女子49%であった(図5)。. 2 1. と思う」の質問には,「強く思う」と回答したの. 4 3. したのは,男子68%,女子63%であった(図4)。. 7 丘U 5. 思う」に関しては,「強く思う」と回答したのは. 0 0 0 0 0 0 0 0 0. 「仲間は性に関する知識を十分に持っていると. % % % % % % % % %. 8. (卦仲間の性に関する知識. 78. ①強く思う ②そう思う ③思わない. 図6 仲間うちでセックスを早く経験することの とらえ方. 305.

(5) 時田 奈巳・津村 直子・佐々木胤則. 性体験を必要と感じ取っていることが示された (p<0.01)。. 3.性意識や性行動とメディアとの関連 1)自分の性意識や性行動に影響を与えているメ ディア. (彰仲間からの誘い. 「仲間からの誘いに対して,断る言葉や断る方. 自分の性意識や性行動に強く影響を与えている. メディアについて複数回答で求めた。この結果を. 法があったらいいのにと思うことがある」につい. 表1に示した。男子の上位の回答は「アダルトビ. ては,「強く思う」と回答したのは男子10%,女. デオ・DVD」60%,「ポルノ雑誌・H雑誌」49%,. 子3%であり,「そう思う」と回答したのは男子. 「インターネットのアダルトサイト」45%であり,. 38%,女子44%であった(図7)。男女とも約半. 女子の上位の回答は「ティーン雑誌」43%,「ポ. 数の者が,ピア・プレッシャーに対応するスキル. ルノコミック」13%,「インターネッ1、のアダル. を求めていることがうかがえた。. トサイト」8%という結果であった(表1)。. 0. 6. %. 0. 表1 自分の性意識・性行動に強く影響を与えて. 0 0. ■b. %. いると思うもの(複数回答). 0. %. 0. 男子 女子. 3. 13% 2%. ③ティーン雑誌. 13% 43%. %. 4. ②グラビア雑誌 ④ポルノコミック. 12%. %. 49% 2%. %. 0. ①ポルノ雑誌(H雑誌). %. 2. (性描写のあるコミック). ①強く思う ②そう思う ③思わない 1. 図7 仲間からの誘いに対して断る言葉や断る方法 があったらいいのにと思うことがある. 2)ピア・プレッシャースコア. ⑤アダルトビデオ・DVD. 60%. ⑥インターネットアダルトサイト 45% 8% ⑧出会い系サイト. 5% 1% 2% 1%. ⑨ミクシイ、モバゲー. 5% 4%. ⑲その他. 9% 7%. 豆)裸やセックス描写のあるゲーム. ピア・プレッシャーに対する質問の6項目を,. 12点満点とし,スコアの高い6∼12点を高値群,. 2)友達や仲間の性意識や性行動に影響を与えて. 0∼5点を低値群とした。平均は男子4.8点,女. いるメディア. 子3.9点であった。高値群は男子36%,女子22%. 友達や仲間の性意識や性行動に強く影響を与え. であり,高値群の割合は男子に有意に多かった。. ているメディアについて複数回答で求めたとこ. 高値群のうち「仲間からの誘いに対して,断る言. ろ,男子は「アダルトビデオ・DVD」71%,「ポ. 葉や断る方法があったらいいのにと思うことがあ. ルノ雑誌・H雑誌」58%,「インターネットのア. る」の質問に「強く思う」「そう思う」と答えた. ダルトサイト」48%と「自分の場合」との上位の. 者は,男子66%,女子65%であった。. 変化はなかったが,女子は「ティーン雑誌」33%,. また,ピア・プレッシャー高値群で,「性に関す る情報・教育を最も受け入れやすい」の項目で「友. 「アダルトビデオ・DVD」22%,「ミクシイ, モバゲーなど」14%が上位であった。(表2). 人」または「先輩」とあげているのは,男子70%, 女子68%であった。. 3)メディアを通じた出会い. 「出会い系サイト ミクシイ,モバゲーを通じ て友人や恋人をつくったことがある」の質問に, 「ある」と答えた者は,男子18%,女子17%であっ. 306.

(6) 若者の性意識・性行動におけるピア・プレッシャーおよびメディアの影響と性の健康教育について. 表3 セルフエステイームスコアとピア プレッシャーの平均得点. 表2 友達や仲間の性意識・性行動に強く影響を 与えていると思うもの(複数回答). 男子 女子. セルフエステイームスコア. (彰ポルノ雑誌(H雑誌). 58% 12%. (塾グラビア雑誌. 12% 3%. 中央得点群(8∼10点). (卦ティーン雑誌. 13% 33%. 高得点群(11∼20点). 低得点群(0∼7点). 男子 女子. 5.5 4.9 4.1. 4.4 3.8 3.5. 9%. ④ポルノコミック (性描写のあるコミック). ⑤アダルトビデオ・DVD. Ⅳ.考 察. 71%. ⑥インターネットアダルトサイト 48% 13% 9% 2%. (む裸やセックス描写のあるゲーム (参出会い系サイト. ⑨ミクシイ,モバゲー. 8% 7% 13% 14% 6% 5%. ⑲その他. 性に対する知識・意識・態度が形成されるうえ で,“同世代からの情報のやりとり”は重要な位. 置を占めている2)とされている。本調査におい て,男女とも過半数が性情報をおもに「友人」か ら得ていると答えている。そして,その友人たち. た(図8)。男女とも2割弱が,メディアを介し. の「性情報の入手先」は,男子の72%が「アダル. た出会いを経験していることが示された(図8)。. トビデオ・DVD」,女子の33%が「ティーン雑誌」 ととらえていた。実際にどのような情報が友人間 でやりとりされ,若者がどのような性意識を持ち,. 100%. 性の保健行動に影響を与えているかを明らかにす. 80%. ることは,性の健康教育を進めていくうえで重要. 60%. であると考えられる。 40%. 本研究では,ピア・プレッシャーの度合いに関. 20%. する質問をスコア化したところ,高値群は男子が. 0%. 女子より有意に多くなっていた。「とくに男子は ①ある. ②ない. 図8 出会い系サイト,ミクシイ,モバゲ一等を 通じた友人や恋人. 性的強さや経験を誇示する傾向にある」3)と池上. が述べているように,女子にくらべて男子の方が ピア・プレッシャーを強く受けていることがうか がえた。若者世代においては,仲間である友人が,. 4.セルフエステイームとピア・プレッシャーの 関連. 1)セルフエステイームスコアとピア・プレッ. 性に関する知識,意識,行動に対して大きな影響 力を持つこと,特に男子はその影響を受けやすい 傾向にあることが改めてとらえられた。また,「仲. シャーの平均点. 間と,性の問題について話す」「もてるのは『かっ. セルフエステイームスコアとピア・プレッ. こいい』『うらやましい』と思う」「仲間うちでセッ. シャーの平均点との関係をみてみると,セルフエ. クスを早く経験した方がよいという雰囲気があ. ステイームスコア低得点群(0∼7点)はピア・. る」の項目には男女に有意差がみられ,これらに. プレッシャー男子5.5点,女子4.4点,中央得点群. は男女に意識の違いがあることを伝える必要があ. (8∼10点)はピア・プレッシャー男子4.9点,女. 子3.8点,高得点群(11∼20点)はピア・プレッ シャー4.1点,女子3.5点であった(表3)。. る。. 仲間からの誘いについては,「断る言葉や断る 方法があったらいいのにと思うことがある」に対 して,男女とも対象者の半数が,「強く思う」「そ う思う」と答えた。ピア・プレッシャーに打ち勝. 307.

(7) 時田 奈巳・津村 直子・佐々木胤則. つ方法,スキルを身につける希望・欲求を本人な. 強調しているものや女性を商品化した表現のもの. りに持っていることが示された。. も多くあり,これらは性知識において正確性に欠. 性に関する情報源として友人が果たす役割が大 きいこと,ピア・プレッシャーの影響力が大きい. けるものが多い。多くの情報から正しい情報を選 択する力をつけることが重要である。. ことから,「ピアエデュケーション」や「ピアカ. 性教育や予防啓発を行う者も,どのような怪情. ウンセリング」などのピアサポートという方法が. 報が雑誌などで氾濫しているのか,その内容や虚. 注目され,全国的な広がりを見せている4)。忠津. 偽にも敏感になる必要があると考える。. らの2004年の調査では,大学生の「ピアエデュケー ションまたはピアカウンセリングの認知」に関し. て,知名度が2割弱と低かった4)。また現在,ピ. ミクシイ(mixi)等のコミュニティーサイトは, 若者の間で爆発的な大流行となっている。 ミクシイ,モバゲ一等のコミュニティーサイ1、. アエデュケーターの養成講座の受講者は看護学生. とは,【インターネットのコミュニティーサイト。. など女子学生が多く5),ピア・プレッシャーを受. 携帯電話やパソコンを用いて,日記を公開したり. けやすいとされる男子のピアエデュケーターを多. メッセージを送ったり,様々なことをきっかけに. く養成していくことが望まれる。. 身近な友人や同じ趣味,関心をもつ人と交流でき. しかし一方で,斎藤は「ピアは若者という同世. る。会員制であり,すでにユーザーになっている. 代にとっての心強いサポートにもなりうるが,同. 人から招待のメールをもらわなくては入会するこ. 時に,優劣・競争関係をもたらすプレッシャーに. とができない】2004年くらいから始まり,有効. もなりやすい両義的な側面を持っている。さらに,. ID登録数1500万人とも言われている。. ピアが教育者の単なる代弁者にしかならない可能. ミクシイ,モバゲ一等が恋人や友達との出会い. 性も排除できない」6)と指摘している。セクシュ. のきっかけとなったことがある者は,男子18%,. アルヘルスプロモーションの展開において,『当. 女子17%であった。これまでも,新たな性産業や. 事者性』と『リアリティ』に基づぐ情報・サービ. メディアが登場するたびに,青少年が巻き込まれ. ス提供としての若者主導型のピアプログラムは,. ているとして,社会問題となってきている。イン. 教育者が支援するプログラムとの相互補完関係を. ターネットを通じた出会いは,本当の姿を当人も. とりながら,それぞれ長所を生かした内容にして. 相手も語らないことによって成り立つ出会いであ. いくことが必要になるであろうと考える。. る。若者の出会いのツールとして,今後もコミュ. 本調査において,性知識や性行動への影響を与. ニティーサイトが大きなウェイトを占めていく可. えていると思うメディアを聞いたところ,男子で. 能性があることを念頭において,その危険性の示. 最も多い回答は「アダルトビデオ・DVD」,「ポ. 唆もまじえた性教育を進めていく必要がある。. ルノ雑誌」,「インターネットのアダルトサイト」. メディアやインターネットを通じて流されるさ. の順であり,女子の上位の回答は「ティーン雑誌」,. まざまな性情報が若者への影響力が大きいもので. 「ポルノコミック」,「インターネットのアダルト. ある以上,性教育を行う教員がただ科学的で客観. サイト」といずれも性を商品化したメディアから. 的な性情報を伝えるだけでは不十分になってきて. の情報であった。さらに,友達や仲間の性意識や. いると考える。若者がメディアに対して能動的・. 性行動に強く影響を与えていると感じているメ. 批判的な態度で読み解き,さまざまな情報のなか. ディアについては,男子は自分の場合と同様に上. から自分にとって必要で適切な情報を選び取るこ. 位の変化はなく,女子は「ティーン雑誌」,「アダ. とができるようなメディア・リテラシー. ルトビデオ・DVD」,「ミクシイ,モバゲー」と. 養っていく必要がある。すでに9割の者が観てい. なっていた。. るとされている1)AVに対して「見てはいけない」. これらの性的メディアには,性の快楽性のみを. 308. と禁止や抑制するだけでは,その効果のほどは期. の力を.

(8) 若者の性意識・性行動におけるピア・プレッシャーおよびメディアの影響と性の健康教育について. 待できない。AVはあくまでも作製側の売る目. 性行為のあり方も,実に多様である。つまり,人. 的を主とした商品戦略の中で製造される作為的映. 間の性は,個性的で文化的な営みであるといえる。. 像であることを確認し,演出内容について,「誇. 性を学ぶのは,それが人間にとって文化的な行為. 張したもの」「嘘のもの」の部分を指摘すること. として営まれているからであると考える。この点. によって,アダルトビデオの中身を信じ込むこと. を,若者および教育に携わる者は互いに認識・理. なくメディアについて考える力を身につけていけ. 解しながら健康教育と予防行動を展開するのが望. るのではないかと考える。. ましいととらえられた。. 筆者は母子保健に関わる授業で,多くの若者が 観ているとされているアダルトビデオについて,. Ⅴ.まとめ. よくあるシーンを具体的に取り上げて,1つ1つ 検証していく形で展開している。. 我々は,大学生・専門学校生312名(男子132名,. 本調査のセルフエステイームの尺度には,主に. 女子180名)を対象に,性に関する意識・行動の. 桧下の尺度を用いたが,自己顕示欲に関連する項. 実態について2008年9月から10月に調査した。こ. 目を削除することによって得点に差がなくなった. れらについて,性行動や性の健康問題に,ピア・. ので,男女を含めたものも検討が可能となった。. プレッシャーやメディアがどのような影響を与え. 本調査において,セルフエステイームスコアが 高いほど,ピア・プレッシャーを感じていないと. ているかを中心に検討した。 男子は女子に比べてピア・プレッシャーを強く. いう結果が示された。また,セルフエステイーム. 受ける傾向があり,男女とも半数の者が「仲間か. とピア・プレッシャーとの間に負の相関が認めら. らの誘いに対して,断る言葉や断る方法があった. れた。セルフエステイームの形成には幼少の噴か. らいいのにと思うことがある」と考えているとい. らの親の養育態度の積み重ねの影響が大きいと考. うことが明らかになった。. えられる。したがって,自己肯定感が高い者は,. また,自分や仲間の性意識や性行動に強く影響. ピア・プレッシャーを受けにくいライフスキルが. を与えているメディアは,男子は「アダルトビデ. 身についていることがうかがえた。. オ・DVD」「ポルノ雑誌・H雑誌」「インターネッ. 青年期の若者は,性行動が活発化し,性の健康. トのアダルトサイト」,女子は「ティーン雑誌」「ポ. 問題に最も直面している時期であることから,高. ルノコミック」「インターネットのアダルトサイ. 等教育における性教育は必要性が高いと考えられ. ト」という結果であった。. る。一回の性教育の指導効力は3か月が限度であ. 教育に携わる者は,若者が発達段階・発達過程. る2)ことが指摘されており,繰り返し教育を行い,. の特徴として,若者は無意識のうちにもピア・プ. 予防行動を促す情報に頻繁に触れることが重要で. レッシャーを受けていることを踏まえること,若. ある。また,繰り返しの教育は,妊娠や性感染症. 者に流れるメディア内に氾濫している情報に触れ. がいかに身近で重大であるかを再認識させ,意識. る意識を持ち,メディア・リテラシーの力を身に. を持続させて予防行動を定着させるのに役立つと. つけられるよう支援していくことが必要であるこ. 考えられる。学校は最も入手しやすく信頼できる. とが示唆された。. 情報源としての位置づけが可能な場であると考え る。 これまで人間の性的欲求や性行動は,「本能」. また,自己の自尊感情に最も敏感な時期である 青年期の性の健康教育では,人間の性は,個性的. で文化的な営みであることを基本に,仲間間での. の範疇で扱われてきた7)が,人間の性は,生殖の. 自己肯定感の育成を目指した関わりの醸成と性に. ための性行為,健康のための性行為,快情動を満. 関する効果的支援の実践プログラムが必要とされ. たす性行為,人とのつながりのための性行為と,. た。. 309.

(9) 時田 奈巳・津村 直子・佐々木胤則. 文 献 1)財団法人 日本性教育協会編「若者の性」白書,第 6凶音少年の性行動全国調査報告,小学館,2007 2)松田美穂・金子典代・高山智子・上村茂仁:10代若 者の性感染症に対する認識,性情報の伝達,相談行動. の実態,思春期学,23(1),131−141,2005 3) 池上千寿子:若者の性と保健行動および予防介入. についての考察,日本エイズ学会誌,5,48−54,2003 4)忠津佐和代他:大学生の性に関する認識の実態とピ アカウンセリングヘの期待,川崎医療福祉学会誌,17(2), 313−331,2008. 5)忠津佐和代・津島ひろ江他:ピアカウンセリング手 法を用いた思春期性教育とその実践,川崎医療福祉学. 会誌,12(2),259−270,2002 6)斎藤真緒:セクシュアルヘルスプロモーションの射. 程,立命館人間科学研究,14,167−181,2007 7)村瀬幸浩:セクソロジー・ノート,十月舎,2004. (時田 奈巳 北海道保健看護大学校) (津村 直子 札幌校教授) (佐々木胤則 札幌校教授). 310.

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参照

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