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教職専門科目「教育方法学」における授業改善の試み(その1) : 多人数における実践的・双方向的授業を目指して(その1)

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Academic year: 2021

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(1)Title. 教職専門科目「教育方法学」における授業改善の試み(その1) : 多人数 における実践的・双方向的授業を目指して(その1). Author(s). 徳岡, 慶一. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 45(2): 1-13. Issue Date. 1995-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/5369. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 平成 7年3月. 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第4 5巻 第2号. March ,1995. I Se i fEduca i fHokka i do Un i i lo t t t J c onIC)VO ver s on( ourna yo .45 .2 , No. 教職専門科目 「教育方法学」 における授業改善の試み (その1) --多人数における実践的・双方向的授業を目指して(その1)-- 徳. 岡. 慶. 一. 1. 授業改善の視点 本研究の目的は, 筆者が行った教職専門科目 「教育方法学」 における授業改善の試みについて検討するこ と である‐. 筆者は, 一昨年度までは教職専門科目 「教育方法学」 を講義形式中心で行っていた‐ しかし授業改善の必 要性を痛感して, 昨年度から同科目の授業改善を実施した. その際, 次のような授業改善の視点を設定した‐ (1). 理論と実践の有機的統合. 、教員養成大学・学部に学ぶ学生は, そこでの教育に対して不満を持っている. 不満の中で多いのは, 授業 { 1 )彼らは の内容が教員養成にふさわしくなく, 教員になっ た時 に役に立ちそう にないことに対してである‐ 教員養成に役に立つ授業を求めているのである. 学生が求める将来 「役に立つ」 授業の内容が大学における 教員養成として適切かどうかについては, 慎重に検討しなければならない‐ しかし教員養成大学・学部の授 業に実践的内容を取り入れる必要があると筆者は考えている. なぜならば学生の授業に対する批判は, 教員 養成大学、 ・学部のカリキュラム上の問題点といわれる 「理論は大学で」 「実践は教育実習で」 という二分状 態 に向 けら れて いる か らである‐. 新しい教育職員免許法の施行によって, 教員免許状を取得する際の教職科目の必要単位として 「教育の方 法および技術」 に関する科目が新設された‐ これは実践的指導力 の基礎の育成を目指した科目である‐ これ らの科目には, 大学で行う教職や教科に関する専門科目と教育実習とをつなぐ役割が課せられているのであ る‐ つ ま り 先 ほ どの 二 分状 態 を 解消 し, 両 者 をつ な ぐ役 割 を 担 っ て いる の である- とする と, こ れらの 科目. で扱うテーマは理論的なものだけでなく, 実践的なものも扱い, 両者の有機的な統合を図らなければならな 2 ( ) い の で あ る‐. しかし一口に理論と実践の有機的統合といっても漠然としており, このままでは授業改善の具体的な方策 を導く こ と は でき な い. そ こで 筆 者 は, 理論 と 実践 の有 機 的 統 合 に 関 して, 次の2つ の視 点 を 設定 した‐. (1-1). 教師の活動の理解. (1 - 2). 教育 につ い ての 視 野拡 大. 教員養成大学に入学してきた学生が持つ教職観・教育観には誤解や狭さがある (例 「教師は楽な仕事だ.」 「授業をするのは簡単だ 」 ‐) . このような誤解や狭さが生じる のは, 学生が教師の活動の全体や自分が経験 してきたものとは違う多様な教育の存在を知らないからである. 確かに彼らは大学に入学するまでに児童・生徒の立場から教師の活動について観察している‐ しかし彼ら は教師の活動の全体を知っているわけではないのである. 授業をしている教師, 学校にいる時の教師, 場合.

(3) . 徳 岡 慶 一. によっては生活者としての教師のことについて知っている‐ しかし授業の計画を立てたり教材研究をしてい る教師, 授業中に思考している教師, 自らの授業を振り返り反省している教師についてはまるで知らないの である‐ また彼らは, 自らの経験に基づいて教育について考えるためにどう しても狭い教育観を形成してし まう のである‐. 大学における教員養成では, 学生が教師の活動や教育について正しく理解できるように指導しなければな らない. そこで教職専門科目 「教育方法学」 では, 授業にかかわる教師の多様な活動や多様な教育が存在す ることを学生に理解させなければならないのである.. (2). 双方向的授業. もう1つの視点は, 一方向的授業から双方向的授業への転換である.,教員養成大学・学部の学生に限らず, 大学における多人数授業にみられる 一方向的な授業に対する不満は多い‐ そこで双方向的な授業を行うために, 次のような具体的視点を設定した. (2 ー1). 学生 との コミ ュ ニケ ー シ ョ ン. (2-2). 学生の理解度の把握. 多人数の講義形式の授業は, 自分の意見を述べる機会がほとん どなく参加意識が生じにくいので授業を受 講する動機が低下し受け身になる, 学生の反応を確認しにくいので学生の理解度に応じた授業がやりにくい などの欠点を持つ‐ 一方向的な知識の伝達になりやすい講義に代って, 大学審議会の答申にもあるように, 現在は双方向的な授業が求められているのである‐ そこで学生とのコミュニケーションを図ることと, 学生の理解度を把握できるような授業を行う必要があ る のである.. ) 多人数授業における 3 筆者は, 以上のような授業改善の視点を設定して, 他大学の実践にも学 びながら{ , 実践的で双方向的な授業を構想し実践した‐ そこで本研究の課題は, 筆者が行っ た実践を検討することである‐ 具体的には, まず教職専門科目 「教育 方法学」 の授業の実際を述べ, 次に授業を受講した学生の感想や評価の分析を通して筆者の今回の授業改善 を評価する‐. 2. 授業改善の実際 ここでは筆者が取り組んだ授業改善の実際について述べる. 1で述べた授業改善の視点を踏まえて, 次のような授業の内容と方法を採用した (表1参照). 表1 ー. ・. 授業改善の視点と授業の内容・方法との対応 、. ビデオ. 教師の活動の理解. ○. 教育についての視野の拡大. ○. 実 習 発. 問. ネ ッ トワー ク. レポー ト. 感想文. ○. ○. ○ ‐. 、. 学生 と のコミ ュ ニ ケー シ ョ ン. ○. ○. 学生の理解度の把握. ○. ○. ○. ビデオ教材の活用 講義中心だっ たのを改め, 多人数という制約の中でできる限り実践的内容を扱う ために, ビデオ教材を. 2.

(4) . 教職専門科目 「教育方法学」 における授業改善の試み (その1). 活用することにした‐ 講義中心では単調になりがちである‐ また学生たちは教育や教師の実際の姿を知り たがっている. 教育実習が3年次に設定されている函館校では, 1, 2年次の学生に特にその希望が強い‐ そこで ビデオ教材の視聴を通じて学生が今まで知らなかった教師の活動内容や教育について具体的に理解 で きる こ とを 狙 っ た‐. 0. 実. 習④ -. 学 生 は教 える と いう 立 場 に立 っ た こ と が ほ と ん ど無 い の で, 「教 える こ と」 を 少 しで も 実感 さ せる ため. に実習させる‐ 実習という活動を取り入れることによって, 受け身になりがちな多人数授業に少しでも活 気をもたらしたい‐ 実習の内容は, 教室の前に立つ, 教科書を朗読するである‐ 今回は人数と時間と場所 の関係で全員が実習を体験するのではなく, 代表数人が行う‐ しかし他の多数の見ている学生についても 実習を見る ことを通して観察学習が行なわれることを期待した‐ ◎. 発. 問. 学 生 に思 考 を促 す とと も に, コミ ュ ニケ ー シ ョ ンを 図る ため に, 発 問を行う‐ ま た発 問を通 して学生 の. ) 理解度を把握する.(例,「新学習指導要領において高等学校の地理歴史科と公民科の中で必修科目は何か」 5 } ネ ッ ト ワ ー ク(. 多 人数授 業 にお い てす べ て の学 生 と コミ ュ ニケー シ ョ ンを図る の は至 難 である‐ そ こで 筆者 は 学生 と の コミ ュ ニ ケー シ ョ ンの手 段 と して, 毎 回授 業 の 最 後 に授 業 につ い てわか っ たこ とや 疑 問や 感 想 を 書く欄 と. 4版両面) を作成し使用した. 学生 それに対する筆者のコメントを書く欄を15回分設けた専用の用紙 (B‐ との コミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンを深 め, 学生 同士 の意見 の 交流 を 図る 意 味を込め て, ネ ッ トワーク と名 づ けた‐. 筆者はこれを毎回読んで, コメントを書いて次回に返却した. 学生全体に伝える必要のある内容について は, 次回の授業の最初に伝えた‐・またこれによって学生の理解度を把握することができ, 理解が不十分と 判断した場合は, 次の授業でもう一度詳しく説明した‐ 従 っ て授 業 のサイ ク ルは, ネ ッ トワ ーク の返却 → 前 回の 補 充 説 明又 はネ ッ トワーク にお ける 質問・ 感想 につ い ての 説 明→授 業 → ネ ッ トワー ク へ の 記 入→ ネ ッ トワ ーク の 回収→ ネ ッ トワーク へ の コメ ン トの記 入 となる. ) 6 レ ポ ー ト(. 学生の教育に対する見方を広げるために, 課題文を読ませ, 感想文を書かせる. そして学生の意見を集 約して授業で活用する. (注・内容的には感想文であるが, 後の感想文と紛らわしいので, 使い分けた-) o. 感‐ 想. 文の. 学生の教育に対する見方を拡大させるために, 新書本を読ませ, 感想文を書かせる. さらに学生の自己 学習に期待して関連する図書リストも提示した. 次に, 以上のような内容と方法を組み込んだ授業の概要を示す. 対象は, 9 3年度前期の教職専門科目 「教 育方法学」 は, 「教育方法学A」 (月曜日, 10:30~12:00 , 聴講カー ド提出者143人, 試験受験者136人) , 「教育 方 法 学B (木 曜 日 13:00~14:30 聴 講カ ー ド提 出 者122人 試験受験 者113人) の 2 コマ である 」 ‐ , , , 2 コマともほぼ同じ展開なので, 「教育方法学A一 の日付を示す‐ なお教科書として, 笠井尚他編著 『総合 3.

(5) . 徳 岡 慶 一. 資料・教育学を学ぶ』 大阪教育出版を使用 した‐ 1 (4月12日) イ ン トロ ダク シ ョ ンと して, プリ ン トを 配布 して, テキス トの 指 定, 評価 の仕方, 感 想文 の 課題 図書. の指定と関連図書の紹介を行った. 次に, 授業の受け方を説明した‐ さらに, レポートの課題文である ( 8 )を 配布 した こ の 本 は 敗 戦 国 の ある 学 校 の 教 室 が舞 台 であ る そ の 教 室 にあ る 日 『 23分 間 の 奇 跡』 . ‐ ,. 戦勝国から若い女性教師が担任として新たに派遣されてくる‐ 彼女の目的は, 子 どもたちを戦勝国の文 化に洗脳することである. 彼女は巧みな技術を駆使してたった23分間でその教室の子どもたちの不安や 不信感を取り除いた上に彼らををすっ かり魔 にしてしまうのである‐ 今回は全文の中から若い女性教師 9 )配布した そしてこれを読んで感想を次回までに原稿用 の背景.心情等が書かれている部分を抜いて( . 紙( 40 0字詰め) 1枚に書いてくるように指示した. 最後にネッ トワークを配布して, これから毎回利 用することを告げた後, 授業名, 学生番号, 氏名等を記入した上で今回の授業の感想を書かせた後, 回 収 した‐. 2 (4月19日) 前回のレポートを受け取り, その後前回抜いた部分を配布した. そして完成した全文を改めて読んで 前回と同じ要領で次回までに感想を書いてくるように指示した‐ 続いて教育とは何か, 意図的教育・無 意図的教育について説明した‐ 表2. 『 23分間の奇跡』 を読んだ感想の集計. 先に配布した7枚のみを読んだ感想の内訳. 評価 +. O. 内. 容. 新しい教師の教育の仕方, 特に巧みな話術や授業技術, 子供にうそを つ か ない という 信 念 につ い て賛 同す る も の.. 人数 106名. 巧みな話術や授業技術には賛同し, 素晴らしい教師と思う一方, まち がっている点もあり, 又は, 何故か好きになれない. 半信半疑‐. 8 1名. 信仰といった個人の信念に属する問題にも自分の考えを押し付けてい る, 親や大人に対する不信感を抱かせていることなど, この新しい先 先生に反発するもの‐. 6 6名. 後の5枚も含めて全体を読んだ感想の内訳. 評価 十 O. 内. 容. なおこの新しい先生を支持するもの‐ 特に授業技術の感心する. 半信半疑. 新しい先生の教育は, 洗脳であり管理であった‐ 教育の恐ろしさや難 しさ・ 責任 につ い て 考 えさせ ら れた. そ. の. 他. 人数 17名 3 9名 153名 24名. 3 (4月26日) 前回のレポートを受け取り, その後前回提出されたレポートの結果を集計したものを配布した‐ それ 4.

(6) . 教職専門科目 「教育方法学」 における授業改善の試み (その1). による と新任の教師の行為を高く評価する感想が最も多く, 反対に評価しないは3割にすぎない (表 80度変り, 一種の 「洗脳」 と 2) 回 ところが全文を完成させて通して読むとその教師に対する評価は1 みなす意見が多くなっ た‐ 全文を通して読むと, この新任教師の巧みな技術がどんな意図をもっ て行わ れたかが分かるので, 彼女の技術の善し悪しをその意図と照合しながら評価できるのである‐ しかし1 回目 に はそ の部 分 を 抜い てお い たの で, 彼女 の行 為 がとても 素 晴 ら しく見 え て しまう の である‐ こ の結 果 を使 っ て, 一 見 す ばら しい授 業 技術 であ っ ても, そ れを使 っ て いる 教 師の意 図も 含め て判 断 しな い と,. その技術の善し悪しを誤って判断してしまうことを学生に実感させた‐ その上で, 教育における方法や 技術は独立して存在するのではなく, その目標と対応させて考えなければならないことを説明した‐ そ れから家庭教育・学校教育・社会教育の機能と関係について説明した. 4 (5月10日) 授業を構成する3つの基本的要素 (教師, 学習者, 教材) について説明した. 次に, 授業のサイクル ( i l l t an→ … …) につ い て 説 明 した‐ 教 師の 活 動 は授 業 を す る こ と だ け で は e→r ene c on→p an→do→s e p. なく, 事前の準備, 事後の評価といっ た活動があり, こうした一連の活動の流れの中に授業をする活動 があることを説明した‐ 特に授業をする活動にとって授業前の教材研究や授業設計と授業後の反省が欠 「授業の仕組みとはたらき」 放 かせないことを説明した. それから授業設計についての ビデオを見せ ( 送教育開発センター) , 授業設計の必要性を説明した. 5 (5月2 4日) 「クイ ズ どん なMONだい クイ ズ 番 組の ビ デオ を見 せ た ( 」 S T V). こ れは 問題 に対する 誤 っ た 答え. から元々の問題を考えるという形式のクイ ズである‐ これによってまず誤りから問題を読み取ることに 注目させた. 次に子 どもは誤りの天才であり, しかも子どもの誤りにはその子なりの論理があることを 説明した‐ その際引き算の誤っ た計算例を取り上げ, このように解答した子どもの論理は何かを学生に 考えさせた. それから教師はその論理を見極めた上でそれに応じた指導をする必要があり, 授業設計に 「見え おいて子どもの誤りを教師が予想することの大切さを説明した‐⑪続いて教育内容と教材の関係 ( る」 教材 ・ 「見 えない」 教育 内 容) につ い て説 明 した‐. 6 (6月1 4日) 教材の持つべき基本的条件として, 「典 型性」 と 「具体性」 を取り上げ説明した. 次に教材と教具の 違いについて具体的事例を使っ て説明した‐ 7 (6月21日) 戦後の教育が どのように変わり, これからどのようになろうとしているのかを理解するため, 学習指 導要領の変遷を取り上げ, これまでの学習指導要領の改訂の特徴について説明した‐ 次に, 新学習指導 「ひとりでできるもん」 NHK教 要領の大きな柱である 「自己教育力」 の一例となる ビデオを見せた ( 育 テ レ ビ)‐. 8 (6月28日) 数人の学生を大教室の前に出させて小学校の教科書を読ませるなどの実習を行っ た. これによって学 生に 「教えること」 の一端を実感させた. まず学生に実習させた‐ それから生徒全員に聞こえやすく読 5.

(7) . 徳 岡 慶 一. むにはどうすればよいかを説明し, もう1度読ませた. そして生徒として読むのと教師として読むのと は違うことを体験させた. 次に授業の3方向コミュニケーションを取り上げ, 実際に学生を相手に筆者 「授業の仕組みとはたらき」 放送教育 がKRを実演した‐ それから教授行為についての ビデオを見せ ( 開発センター) , 授業において教師が様々な教授行為 (発問, 指示等) を行っ ていることと, それらの 教授行為の働きについて説明した‐ 9 (7月5日) 教育評価の目的と種類を説明した. 次に新しい教育の試みとしてオープンスクールを取り上げた‐ そ の 特 徴 を 説 明 した 後, オー プンス ク ー ル につ い て の ビ デオ を見 せ た (「今 なぜ オ ー プンス ク ー ル か」 N. HK教育テレビ) . 10(7月12日) 「発電所はどこにあるか」 中学1年 社会科 授業者・ 授業の実際を知るために, ビデオ を見せた ( , , 漆間浩一) . ビデオ を見せながら途中で止めて説明するストッ プモーショ ン方式を使って教師の教授行 為を説明した.㈱その中ではある場面での教師の対応の仕方について学生に考えさせた後に発表させ, その場面での教師の教授行為についての解説も行っ た‐ 授業のまとめとして、 教師の在り方として の 15分) を使 っ て ア ンケー ト用 紙◎を 筆者 lh warm heart と coo ead につ い て 説 明 した‐ 最 後 に残 り 時 間 (. が配布し, 授業全般についての評価を無記名で求め, その場で回収した. 回答数は, 2クラス合わせて 181人であ っ た‐. 1 1 (7月19日) 試験. 3. 授業改善の評価 学生には今回の授業改善はどのよう に映ったのであろうか‐ ここでは, 学生による授業評価の結果と, ネ ッ トワークの記述を用いて授業改善を評価する. なおこの授業に対する学生による授業評価の詳細について は, 既に報告済みであり噂 それに関してはそこから必要な部分を取り上げる.. (1). 全般的感想. 1 45人) が8以上と評価している. 従って 3% ( まず授業に対する10段階評価では, 平均が8 ‐3で, しかも8 授業に対する評価はかなり高いことが分かる‐ 次に自由記述の全体的感想をみてみよう‐ ここでは得られた回答を読んでほぼ同じ意味のものをまとめて 項目化し, そのラベル数を数えた (表3. 以下同じ) ‐ 全体的感想で最も多かったのは, 授業がおもしろかった・楽しかった・興味深かったというものである. 以下, よかった・役に立った, 内容・方法のより一層の充実, 勉強になった・考えさせられたと肯定的なも のが続く‐ その後は不満・不安, 現状肯定, 授業に対する教師の姿勢, 反省・後悔である‐ 従って授業全体についての感想でも肯定的なものが圧倒的に多いのである. 各項目 ごとの記述を例示してみよう‐. 6.

(8) . 教職専門科目 「教育方法学」 における授業改善の試み (その1). 表3 自由記述の集計結果. 感 想 文 ・ レポ ー ト. 9 1 9 1 1. ネ ッ トワ ー ク. 151. 鰹. よ か った と こ ろ. 具体的・実践的な教材と方法 (内訳) ビデオ. 実習. 教育・教師・授業の素晴らしさ・難しさを考えさせられた. 20. 理解 しやすいス ピー ド・リラ ックス した雰囲気. 16. 教師の熱意. 4. 改 善 す べき と こ ろ. 内容・方法のより一層の充実. 29. 板書. 15. 時間配分. 12. 休講の連絡. 9. テ キス ト. 8. ビデオ機器の使い方. 7. 理論的・歴史的内容. 5. 出席. 5. 全 体 の感 想. 改善すべきところ無し及び無回答. 64. おもしろかっ た, 楽しかっ た, 興味深かっ た. 49. よかっ た, 役に立っ た. 34. 発展させて欲しい. 24. 勉強になっ た・考えさせられた. 23. 不満・不安. 23. 現状肯定. 8. 教師の態度. 6. 反省・後悔. 4. 【お も しろ か っ た・ 楽 しか っ た ・ 興 味深 か っ た}. ・レポートや感想文な ど提出するものが多く, はじめは大変だと思っ たが, レポートや感想文の課題が お も しろ い も の で, 余り苦 に はな らな か っ た.. ・教育方法学が私が一番したかった授業だと 思いま す. とてもお も しろ か っ たです. 【よかっ た, 役に立った】 ・他の授業をやっ ている時に 「ああこれは教育方法学でやったことだ」 などと思い出して参考になるこ と があ っ た. 教育 実習 に向 けて も ため になる 講義 だっ た と思う.. ・教師を目指すものとして実践的なものとして役立っ たと思う‐ 【内容・方法のより一層の充実 (後で述べるので省略)】. 【勉強になった・考えさせられた} ・今まで受けた教育に関する授業の中で一番ためになって考えさせられた授業だと思う‐ ・ 教 師という も の は, と ても 難 しい も の だと授 業 を受 ける た び に感 じま した‐ いろ いろ 知 らな か っ たこ と がある こ と に気 付 きま した‐ 7.

(9) . 徳 岡 慶 一. ・私は教職を志望してこの大学には行ったわけではありません‐ けど, ビデオとかで実際の授業を見て, 教える っ てす ばら しい と思 いま した. ・ 今ま で にな か っ たタイ プの 講義 だ っ たの で, 多 少 戸 惑 いもあ っ た が, 回 を重 ねる ごと に理解 で きる よ. うになっていった‐ 1回の授業をするのに多大な努力 が必要だと言うことを身にしみて感じた. 【不満・不安 (後で述べるので省略)】. 【現状肯定】 ・ こ れ からも こう いう 授 業 を 続 けて 欲 しい.. 【反省・後悔} ・さぼらないで全部出れ ばよかったと後で後悔した‐ それだけ自分 の ため になる授 業 だ っ た か ら.. (2). 授業改善の効果の要因. (1) では肯定的な感想が圧倒的に多かった‐ ここでは何によっ てこのような感想がもたらされたのかを 検討する‐ ま ず 「授 業 でよ か っ た と ころ」 につ い ての 自 由記 述 を み てみよう (表3).. これによると実践的な教材と方法がよかったという意見が圧倒的に多い‐ その内訳をみると, ビデオを挙 げている 場 合 が最 も多く, 以 下ネ ッ トワーク, 感想 文 ・ レポー ト, 実習 と続く‐. それぞれの理由を見てみると, ビデオの場合, ビデオによっ て授業中の教師や学習者の姿を見ることがで き実践的である、 講義とは違い具体的で考えやすく説明がしっくりと理解できる, オープンスクールのよう な新しい試みがわかる, 将来の自分の姿とダブらせることができるという順である. ネ ッ トワ ーク につ い て は, 双方 向的 に意見 を 交換 する こ と ができ たこ と がよか っ たと いう 理 由 が多 い.. 学生を教室の前に出させて行った実習については, 実際に体験できることがよかっ たことが理由に挙げら れて いる‐. また授業全体を通して教育に対する見方が広まったという感想も見られた. 各項目ごとの記述を例示してみよう. 【ビデオ1 ・具体的な授業の様子をビデオなどで教師の視点から見ることができたこと‐ ・この授業はただ大学での講義という感じがしませんでした. ‐ 授業を受けていて一度も退屈だと 思いま せ んで した‐ ビ デオ がたく さ ん見 れて, 私 の ため にな っ たと思 います‐. ・ ビデオで実際の授業風景や学校の様子などを見ることで, 黒板だけで授業を進められるよりもより理 解が深まったと思う‐ おおげさだが 「百聞は一見にしかず」 という言葉が当てはまったような気がす る.. ・ ビデオ等で様々な授業の形態を見せてくれる等, 教育の現場で役に立つような実践的な内容が盛り込 ま れて いた ところ‐ ・新 しい 教育 につ い ての知 識 が増 え た‐ オー プンス ク ー ル は一度見 て みた か っ た の で楽 しか っ た.. 8.

(10) . 教職専門科目 「教育方法学」 における授業改善の試み (その1). 【ネ ッ ト ワ ーク】 ・ ネ ッ トワーク が 良か っ た‐ 自 分 の授 業 の感 想, 意見 に対 しての先 生 の コメ ン トが良か っ た と思う. ・ ネ ッ トワー ク を用 い て 教官 とコミ ュ ニ ケー シ ョ ンを とる こ と ができ た とこ ろ‐. 【感想文・レポート} ・ 、感想文を書くために読んだ 「ミ ュンヘンの小学生」 は教育学の先生に薦められていたので, この機会 に読 め てよ か っ た. ・ 「23分 間の 奇跡」 も 印象 に残 っ ていま す‐. 【実習} ・ 実 際 に 生 徒 を前 に出さ せ たり してや っ たこ と は, と て も い い と 思う. 教育実習だけでは足りないし, 頭 で (理 論 で) わ かる の と 実 際 に して みる の はま っ たく ち がう からい い こ と だと思う‐. 【教育・教師・授業についていろいろ考えさせられた】 ・ いろ いろ と 教育 という も の につ い て, 教 える ・ 育 てる ・育つ と いう こ と につ い て考 えさせ ら れ, 学 ぶ こ と ができ た と思 いま す‐ 次 に ネ ッ トワ ーク の 記 述 を み て みよう‐ こ こ で は, ビ デ オ (授 業 設 計 に関する ビ デオ を見 た 4 回 目), レ. ポート (第3回目) , 実習 (第8回目) に関してのネッ トワークに書かれた学生の代表 , 感想文 (第4回目) 的な感想をみてみよう‐. 】 【ビデオ (授業設計) ・1時間の授業の中には, 多くの教師の努力やねがいが含まれているのかが分かる‐ 授業をするには, 多く の 教材 や, 計 画 を立 て な けれ ばな らず, と ても たいへ んである な あ と 思っ た‐ 3年になると教育 実習があるが, がんばろうと思うので今のうちに勉強をしなけれ ばなあと思っ た‐ (2年, 女子) ・小中学校の頃, 「私達にばかり宿題を出して先生はズルイ……」 と思っ た記憶がある. 実は先生こそ 予 習 が大切 だ っ たと は… …. (2 年, 女子) ・ どん どん, 教育 と か授 業 と か, 教員 になる にあ た っ て, 知 らな けれ ばな らない こ と があ かさ れて いく‐. 今までは知らなくてもよかった” 舞台裏” のことだから, 先生方が, 今までにどんな苦労をして授業 をしているのかを, まざま ざと見せられているような気 がします. (2年, 女子) ・この講義の内容がいよいよ本格的な授業の進め方や, 組み立てなど, 教師になるために必要なものに な っ て き た‐ 今ま で, 簡 単 に考 え てき たが, と ても 複雑 で, 難 しい こ と がわ か っ た. (2 年, 男 子). 【レポート】 ・ 教育 は, 人 を洗脳 する た め のも ので はな い‐ 今 回の 一連 の 課題 で, 教育 の恐ろ しさ を感 じる こ と がで き た. 子 ども を い か に して 教える か, そ れは い か に して 自 分の 言う と おり にさせる こと ができる か に も多 少 か か わ っ てく る. も しか した ら, 多く の 教 師 に, 自 分 自身気 がつ かない ところ で 子 ども を誘導 している の かも しれな い と, ふ と感 じた‐ (2年, 男 子) 23分 間の 奇 跡』 とい う 話 を読 んで みて, 教師の 生徒 へ の 影響 の 大き さを 感 じま した‐ な ので, 生徒 ・ 『. に教える前に, もう一度自分を振り返って見ることが大切なんだなあと 思いま した. この 本はお も し 9.

(11) . 徳 岡 慶 一. る い け ど, 続き があ れ ばい い の に… … と思 いま した‐ (2年, 女子). ・今回, プリントの物語を全部読んでからは, 自分が教員になろうとしていることが, とても大変なこ と である こ とを感 じて しま い, 本当 にいい の だ ろう か と 不 安 にな っ て しま いま した‐ 自分 がこ のよう にな らな け れ ばい いの です け ど… …‐ (2年, 女 子). ・やはり, 全編を通して読んでみるとガラリと感想がかわりました. 何の戦争の時代の何処の国の話か な? と思 っ てい た の です が, フィ ク シ ョ ン だっ た ん です ね‐ 感 じた こ とは色々 あり ま したが, や はり,. 教育は, 一歩間違えると危険な両刃 の剣のようなものだなと思いました‐ (2年, 男子) ・ 2 回の レポー トを書 い て と ても お も しろ か っ た. レポー トをや る こと によ っ て, こ れか ら, どんな こ. とを学ぶのかわかって良かっ たと思います. 教育は本当に難しいことだと思います. 自分の考えが子 ども に影響するのはこわいと思う‐ (2年, 女子). 【感想文】 ・ 課題 に出 て いた 「ミ ュ ンヘ ンの小 学 生」 を読 ん だ‐ と ても 興 味深く 読 むこ と ができ た‐ 家 教 (筆 者 注,. 家庭教師の略) 先で生徒に 「モモ」 の話しをしたらとても気に入ってくれた‐ 時間の話しは難しいか 、 物語風なので話しやすか た (2年 女子) も知れないが, っ ‐ , ・ 「子 ども と学 校」 お も しろ か っ た です‐ こう いう 話 には前 から 興 味があ っ たので, 河 合隼 雄 の他の 本 も 読 んで み たい‐ (2 一年, 女子). 【実習I ・教科書の読み方一つにも, やはり 「先生」 としてのやり方があるのだなと再確認しました‐ ただ答え を教えるだけなら, 誰にでも (?) できることだと思います‐ 生徒の関心を どれだけ授業に引き込め るかがその先生の魅力 だと思います. (2年, 男子) ・ 「K R」 に もい い 「K R」 と悪 い 「K R」 があ り, 生徒 と のか かわり を もつ ため に必 要 だという こと. が, 今納得できたような気がします. 今日, 前に出て本を読みましたが実は 足が ガク ガク で した. こ の 緊張 は私 と して は, いや な の で, も っ と 人前 に 立 つ 練習 が したい です. (2年, 女 子). ・KRの大切さを通して, 対人関係をうまくやる必要性を感じた. 実習は見ているだけでも緊張した. (2年, 男子) ・実際に人の前に出しての講義はとてもよかっ た‐ 自分が実際に教師になったときの姿を想像でき, 本 当の意味で, 教師について考えられる唯一の時間である. 教室全体が一つになるような空気を感じる こ と がで き てと て も嬉 しく 思 っ た‐ (2 年, 女 子) ・ 今 回は 実 際 に授 業 の 内 容 につ い て 入 っ てい っ たわ けです が,「ア イ コ ンタク ト」はお も しろ か っ た です. 最初 読 ん だ時 は 本当 に自 己完結 して しま っ てい た エネ ル ギー が, アイ コ ンタ ク トする とエネ ル ギー の 広 がり という か外 に 向か っ て 発 散さ れている と いう 感 じが しま した‐ 子 ども にわか っ て ほ しい, とい. う気持ちをこめて語りかけるのが大切なんですね. あとはビデオの 「もっと子供の発想が出てくるよ うな授業をしたい」 というのが, 子供に考えさせる授業は教育の理想だなあと考えさせられました‐ (2年, 女子) 授業設計に関するビデオを見た学生は, 教師が授業設計という活動をしていることを知り驚いている‐ そ して授業は簡単にできるものではないことや授業設計の大切さを理解している‐ 『 2 .教育することの 3分間の奇跡』 を使ったレポートでは, 子どもに対する教師の影響力の大きさを知り, 10.

(12) . 教職専門科目 「教育方法学」 における授業改善の試み (その1). の 難 しさ を 実感 している‐. 感想文については, 指示された課題図書を読んで興味を示し, 図書リストで提示した関連図書を読んだ, もしくは読もうとしている学生がいる‐ 感想文が学生の自己学習の起爆剤になっ ている場合がある‐ 実習 につ い て は, 実習 をや っ た学 生の みな ら ず, 見 て いる 学生 も 緊張 した と述べ て いる よう に, 他 人 ごと. としてではなく自分 の課題として実習を捉えていることが分かる. そして見ている学生も教師として教科書 を読むことがいかに難しいかを実感しており, 観察学習は十分成立していると判断できる.. (3) 改善点と希望 改善すべき項目についてみてみよう‐ 改善すべきところ は大きく分けて, 授業の内容・方法に関するもの と, 授業の運営に関するものとに分かれる (表3). 前者に該当するのは, 内容・方法のより一層 の充実 (具体的には, より実践的に, 少人数化, 内容の拡大 を など) , 板書, 時間配分, テキスト, 理論的・歴史的内容である. なかでも内容・方法のより一層の充実 求める意見が多い. 後者に該当するのは, 休講の連絡, ビデオ機器の使い方, 出席である‐ ここでは筆者が採用した授業改善のための内容・方法に直接関係する 【内容・方法のより一層の充実】 の 自由記述をみてみよう‐ 【内容・方法のより一層の充実】 ・ 「改 める」 という より は今 回の 講義 で行 っ て い たこ と はそ れは そ れで 意 味のある も のである と思 う の で 「広 げる」 「増 や す」 という 方 向で 次回以 降の 講義 につ い て は検 討 して い っ た らい か がで しょ う か‐ ・よ り 実践 的 であ っ て ほ しい と 思っ た‐ ・ も っ と 現場 の授 業 のV TR を 取り 入 れる べ き‐ ・ も っ とも っ と多く 学生 に発 言 の 場 を与 え て も 良い‐ ・や はり 大 人数 なの が気 にな っ た‐ ・ 学生 に実 際 にや らせる の を多 く する‐. 次に授業の方法についての学生の希望を見る と, もっ と人数を減らして, 実習形式を増やしてほしい, も 160 12 7人) であり, これに現状肯定を含めれば, 実に86% ( っ とビデオを見たいという意見が合わせて68% ( 人) になる‐ 要するにここでは, 学生は筆者が授業改善のために採用 した内容・方法をより一層充実させるよう に希望 している こ と が分 かる の である‐. (4). 全体の考察. 1で設定した授業改善の視点は, 達成されたのであろうか‐ ま ず 「教 師の 活動 の 理解」 につ い て は, 先 にみ たよう に ビ デオ, 実習 によ っ て 教 師の 活動 につ い ての 理解. はかなり深まったと言える‐ 特にビデオの効果は大きかった‐ 例えば, 授業設計に関するビデオを見た学生 は, 教 師 が授 業 設計 と いう 活動 を して いる こ とを知り 驚い てい る‐ そ して授 業 は簡単 にできる も の ではな い. ことや授業設計の大切さを理解しているのである. 次 に 「教育 につ い ての 視野 の 拡 大」 につ い て は, ビ デオ, レポー ト, 感 想 文 によ っ て 学 生 がこ れま で知 ら. なかった教育が存在することや違っ た視点から教育を考えるきっかけになっているといえる‐ 教師や教育に 11.

(13) . 徳 岡 慶 一. つ いて 考え させ ら れた という 学生 は多 い‐ さ ら に 「学 生と のコミ ュ ニ ケー シ ョ ン」 につ い て は, 発 問, ネ ッ トワ ーク, レポー トによ っ て 図 れた と思. う. 特にネッ トワークは大いにその効果を発揮したことが学生の記述から分かる. またネッ トワークを通し て毎回学生の書いたものに眼を通すことで学生の考えていることがこれまでよりはるかによく理解でき, コ メ ン トを 書く こと によ っ て 学生 と の コミ ュ ニケ ー シ ョ ンを以前 よ り はる か に図る こと ができた と いう の が筆. 者の実感である. 最後に 「学生の理解度の把握」 についても, 特にネッ トワークを通してかなりの程度行えたというのが筆 者の実感である. 従って学生による授業評価の結果やネッ トワークの記述から判断すると, あらかじめ設定した授業改善の 視点のかなりの部分については達成できたと判断できるのである. そして学生は今回の授業にはかなり満足し, 今回の授業改善は多くの学生から支持されていることが分か る‐ そのためこの授業では学生に対して実習や感想文を課すなど, 質・量ともに豊富だっ たにもかかわらず, 学生の評価は高かったのである. 今一度学生の記述例をみてみよう. ・私 に と っ て は, 「あ あ, 教育 大 だな あ」 っ て初 め て実感 でき た 講義 で, と てもお も しろ か っ た です.. ・教員養成課程にいるのだからこういった授業を聴きたかったので, 結構おもしろかった. 要するにビデオや実習を取り入れた今回の授業改善の方向性を学生の大多数が支持しているとともに, 彼 らは筆者が授業改善のために採用 した内容・方法をより一層充実させるように希望しているのである.. 4. 今後の課題 教職専門科目 「教育方法学」 の授業改善の初年度の試みについて検討した‐ 初年度の試みなので, うまく いくかどうか大きな不安があっ た. しかも前期の科目に学生が集中して, 学生の多さ, それに伴う教室の変 更など予定外のことま で起こり, 不安は増幅した‐ 大教室での実習はうまくいくだろうか. 学生が恥ずかし が っ て動 かな いの で はない か. ネ ッ トワーク に学 生 は授 業 の こ と につ い て書 い てく れる だ ろう か. しら けて 書 い てく れないの で はない か‐. しかしこういったことはすべて妃憂に終わっ た. 大教室での実習ではあったが, 代表の学生たちは緊張し ながらも頑張ってくれた‐ またネッ トワークにも学生はいろいろなことを書いてくれ, 参考になることが多 か っ た‐. こうして多人数授業において実践的で双方向的な授業を目指した筆者の試みは,おおむねその目標を達しゾ 学生の評価も高かった. しかし改善すべき点があることも確かである. 教育に関わっている者はよりよい授業を目指して常に創意 工夫を重ね, 改善に努めなければならない‐ 上記のような結果に甘えることなく, 反省点を改善し, よりよ い授 業 を目 指 して い き たい‐. 先に述べた学生が希望するようなより実践的な授業を実現するために克服すべき問題がある. 最後に, こ れらを今後の課題として提示しておきたい‐ 第1に, 受講学生の人数の多さの問題がある. 「教育方法学」 は4コマ開設されている. 対象とする学生 は年間300人前後で1コマ当たりの受講学生は平均する と80人前後になる‐ この人数は, 学生が希望する密 12.

(14) . 教職専門科目 「教育方法学」 における授業改善の試み (その1). 度の濃い実習をするには多すぎる. しかしこれ以上コマ数を増やせない現状では, この程度の人数を前提に 考え ざるえない‐ 従っ て少なく とも粗指定のような受講人数を平準化し特定のクラスへの集中を避ける何ら かの方策が必要である. 第2に, 実習をする場合, 活動が制約されるので, 机とイスが固定されている一般の講義室はふさわしく ない‐ そこで教育実践研究棟の特別教室を活用していきたい. 特別教室にはオープンスペースに ビデオ設備 と共に, 個人用の可搬式の机・いすが利用できて, 小グループによる実習に適しているから が完備している- である‐ 第3 に, 8 0人程度の人数で実習をするとすれば, 学生が一人もしくは数人のグループで自学自習によって 実習 す る こ と が主 になる‐ と す れ ばそ のよう な実習用 のマ ニ ュ ア ルや ワ ーク シー ト類 が必 要 になる‐ そこ で. それらを開発する必要がある‐ 第4に, より実践的な授業を行うためには, その目的にあった適切なビデオ教材のより一層の充実を図る 必要がある‐. 註 1 ) 例えば, 国立大学協会教員養成制度特別委員会中間報告 「教育大学・教育学部学生の教職への意識と意見」 99 3年. ( ,1 ( 2 ) 理論と実践の有機的統合にっいては, 教員養成大学・学部のカリキュラム全体で考えなければならない大きな問題である‐ ( ) 特に次の2人の実践からは学ぶところが多かった. 若原直樹 「教職専門科目の講義改善の試み 多人数授業に 『実習』 を取り入れ 3 9‐ 2 45頁, 199 る--一 日本教育大学協会第2常置委員会編 『教科教育学研究 第1 1集』 22 3年, 第一法規‐ 織田揮準 「大福帳による授 業改善の試み--大福帳効果の分析--」 『三重大学教育学部研究紀要』 第42巻, 教育科学, 1 99 1年, 1 6 5‐ 1 7 4頁‐ ( ) 若原, 同上‐ 4 ) 織田, 前掲論文‐ ( 5 6 ) 松本敏 「『社会科教育法』 の授業における 『概念〈だき』 の意義と実践 ( 『÷÷教職教育の自己言及性・自己組織性の視点から--」 『明 2年, 77‐ 治大学文学部人文論集』 9 92頁‐ , 19 ( 7 ) 二杉孝司 「授業にっいて学ぶ学生にすすめる11冊の本」 『授業づくりネットワーク会員i碗 N 42 1年3月1 0日を参考にした‐ o , 199 ( 8 ) J. クラベル, 青島幸男訳 『 23分間の奇跡』 198 3年, 集英社‐ ( ) 1回目には例えば, 次のような部分が抜けている‐ 9 「先生は みんながキャンディを たべおわるのを待っていた ここまでのやりかたは すべて教えられたとおりに運んだまでのこ . , , , とだ. しかし, これで子 どもたちはあたしのいうことをよくきくよう になり, りっ ぱな市民として育っていくだろうと思った‐ 先生は 窓から外を見た‐ 日が, さんさんとあたっている‐ 広い, すばらしい土地だ‐ この土地を胸いっ ぱい吸いこむのだ‐ でも先生の胸が熱 くなってきたのは, さんさんとあたる太陽のせいではなかった. 先生は, この学校の, いやこの土地の, すべての子どもたち, すべて の男や女たちが, おなじ信念をもって, おなじような手順のもとに, 教育されていくであろうことを思うと, 胸が熱くなるのだ. その 手順は, 年齢のグループによっても, 要求のどあいによってもちがうけれど. 先生は, うでどけいを, ちらと見た‐ 九時二十三分だった.」 (同上, 82 4頁) ‐8 ‐ 回 ここで配布したのは, 表2の上半分である‐ レポートの2回目の集計を学生に配布できるのは, 4回目においてである‐ しかし一の 評価が多くなることが十分予想できたので, レポート受領後すぐに説明を行った. なお, 1回目で若い女性教師の指導技術に対して否 定的な意見が意外に多いのは, これが以前テレビで放映されたことがあり, これを見ていた学生は文章の一部が抜けていることに気付 いていたためである. テレビ放映のことは, 後からネットワーク上で学生に指摘された. 回 子供の誤りとそれへの指導については, 徳岡慶一 「授業における 「誤ルール(面)」 に関する一考察 (その1)」 『人文論究』 第5 3号, 「 「 如 『 25~1 19 92年, 1 37頁‐ 徳岡慶一 授業における 誤ルール(罰)」 に関する-考察 (その2)」 人文論 』 第54号, 19 9 2年, 15 5~1 66頁 参照. 回 藤岡信勝 『ストッ プモーション方式による授業研究の方法』 199 1年, 学事出版‐ 「 回 アンケートの項目にっいては, 徳岡慶一 教員養成大学における授業評価--授業科目 「教育方法学」 における試み--」 教育情報 科学 (北海道教育大学函館校) 2号, 199 4年, 106頁参照‐ , 第2 1‐1 18頁. 回 同上, 10 (助 教授, 函 館 校) 13.

(15)

参照

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