• 検索結果がありません。

図形概念の学習を促進するための“If型焦点事例”と“Rf型焦点事例”の適用条件に関する研究―三角形及び四角形概念の学習の場合―

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "図形概念の学習を促進するための“If型焦点事例”と“Rf型焦点事例”の適用条件に関する研究―三角形及び四角形概念の学習の場合―"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

図形概念の学習を促進するための“If型焦点事例”

と“Rf型焦点事例”の適用条件に関する研究―三角

形及び四角形概念の学習の場合―

著者

胡 玉華

雑誌名

東北教育心理学研究

6

ページ

59-67

発行年

1998-03-25

URL

http://hdl.handle.net/10097/00121880

(2)

図形概念の学習を促進するための“

I

f

型焦点事例"と

Rf

型焦点事例"の適用条件に関する研究

一三角形及び四角形概念の学習の場合一

玉 華

(東北大学大学院教育学研究科)

1

.

問題と目的 子どもの概念学習を促進するために,その概念の複数 の正事例からどの事例を焦点事例として選ぶとよいのだ ろうか。これは概念学習の援助に関する lつの大きな 問題である。ここで言う焦点事例とは当該概念の判断基 準を学習者に教示する際に用いられる正事例である。上 述の問題に関連した研究に麻柄と伏見による一連の研究 がある。麻柄と伏見は幼児の図形概念(三角形及び四角 形)の学習を取り上げ,焦点事例の違いが学習結果を大 きく左右することを報告した(麻柄・伏見, 1982,伏 見・麻柄, 1986,伏見, 1990)。麻柄らは, iまがり角 (頂点)が3つあるのが三角で,まがり角(頂点)が 4 つあるのが四角だ」とし、う判断基準を子どもに教えるた めに, 2種類の焦点事例を考えた。 1つは Rf型焦点事 例 (regularfigure type)であり,麻柄ら(麻柄・伏見 1982)によれば, i見た目に“良い形"であり,見る機 会も多い,そして,実際に子どもが正しく“さんかく" -“しかく"と同定できる等辺,等角図形j,例えば,正 三角形,正方形である。もう1つはIf型焦点事例(ir -regular figure type)であり,同様に「見た目に“良い 形"ではなく,見る機会も少ない,またし、まだ子どもが 正しく同定できない不等辺,不等角図形j,例えば,不 等辺三角形,不等辺四角形である。彼らは,小学1年 生及び幼稚園年長児を対象にした実験を通じ,図形分類 課題においては, Rf型焦点事例よりもIf型焦点事例の ほ う が 効 果 的 で あ る こ と を 示 し た ( 麻 柄 ・ 伏 見 , 1982)。しかし,同実験では,If型焦点事例を受けた20 人からなる群の中の3名が低成績にとどまったという 事実から,If型焦点事例がすべての幼児に効果がある わけではないことがわかった。そのため,上記の3名 のような幼児にも学習効果を保証しうる焦点事例の検討 を目的とし,幼稚園年中児を対象にした実験が彼らによ って行われた(伏見・麻柄, 1986)。この実験では,If 型焦点事例を提示しでもあまり効果を示さない子どもが 探し出されたが,その数は全体の半数以上であった。そ して,これらの子どもに対し, iRf型事例を用いてルー ルを導入し,そのRf型事例を少しずつIf型事例へと変 形させ,それらにルールを適用させていく」とし、う事例 系列による援助が行われ,その事例系列の効果が示され Tこ。 これらの一連の実験結果では,If型焦点事例の有効 な学習者と有効でない学習者の存在が明らかにされてい る。なぜ同じIf型焦点事例を提示しでも学習者によっ て効果が大きく異なるのか? あるいはそれらの子ども たちの聞にどのような違いがあるのか? これらの問題 については麻柄らも自らの実験結果に基づいて解答を与 えている。それは次のような解答である。彼らの研究か ら該当する部分を引用することにする。 「事前テストにおいて多くの幼児は正三角形・正方形 あるし、はこれらと知覚的に類似している二等辺三角形・ 長方形のみを“さんかく"・“しかく"と認めた。このこ とは幼児が頂点の数や辺の数だけを手がかりにしている のではなく,三角形に関してはその図形が等辺(等角) を持っか否かに,四角形に関してはその図形が直角や等 辺を持っか否かにこだわっているといえる。・・・・・・これに 対して不等辺三角形や不等辺四角形を用いると,このよ うな“こだわり"を打ち破ることができるj(麻柄・伏 見, 1982)。しかし一方で,If型焦点事例による学習援 助が有効ではなかった学習者は「不等辺三角形,不等辺 四角形をそれぞれ“さんかく"・“しかく"と認めること に強い抵抗を示した者で、ある。つまり, 一..一強いこだわ りを持っていたといえるj(伏見・麻柄, 1986)。この ような「自分の誤った判断基準に強くしがみついている 子どもたちには・・・・・・彼らの考えと一致する事例を足がか

(3)

りにしてルールを導入し,そのルールを子どもの考えと は一致しない事例にまで少しずつ拡大していくじわじわ 型の方が効果的なのであるJ(伏見・麻柄, 1993)。 以上の引用からわかるように,等辺・等角への「こだ わり」が強い学習者にはIf型焦点事例は有効ではなく, Rf→If型への変形した事例系列が有効で、あり,等辺・ 等角への「こだわり」がそれほど強くない学習者には If型焦点事例が有効であると彼らが考えていることが わかる。即ち,麻柄らは等辺・等角への「こだわり」の 強弱という内因を取り上げ,その違いによって有効な焦 点事例が異なると解釈する。しかしこれはあくまで事 後的な解釈であり,その妥当性は実験によって確認され る必要がある。「こだわり」要因の測定やその操作を考 える場合に考慮すべき点は以下の点である。 こだわりの強弱はむしろ図形概念の外延の認識の程度 として要因化すべきである。例えば,等辺・等角のRf 型事例しか三角形・四角形と認識しえない子どもはむろ ん存在しているが,その他にも, Rf型事例とIf型事例 の一部を三角形・四角形と認める子どもも存在するはず である。こうした違いが教授の際に用いられる焦点事例 の効果を異ならせていると考えられるし,その測定は 「こだわり」とし、う要因化に比べ,外延の分類課題によ って直接測定できると思われる。 したがって,本研究では,幼児の図形概念のうち三角 形及び四角形概念の学習事態を対照に,図形概念に関す る学習者の事前の学習到達度の違い,即ち図形概念の外 延の認識の違いを取り上げ,事前に測定し,図形概念の 学習を有効に援助するための“If型焦点事例"と“Rf 型焦点事例"の適用条件がそれによってどう異なるかを 明らかにすることを目的とする。

2

.

仮 説 研究の仮説を立てるにあたり,三角形及び四角形概念 に関するIf型事例と Rf型事例を以下のように規定して おく。 「三角形なら3頂点を持つ」とし、う三角形概念の共通 特徴に対して, 3つあるいは2つの等角性・等辺性とい う属性が付加された正三角形・二等辺三角形はRf型事 例であり,その他の不等辺三角形はIf型事例である。 同様に, i四角形なら4頂点を持つ」とし、う四角形概念 の共通特徴に対し, 4頂点をもつことに加え等角性・等 辺性とし、う属性が付加された正方形・長方形はRf型事 例であり,その他の不等辺四角形はIf型事例である。 以上の規定に基づき,本研究の仮説を次のように定め る。 三角形及び四角形概念の学習において, Rf型事例の みをその外延として認める子どもでは,If型焦点事例 よりもRf型焦点事例を提示したほうが効果的であろう; Rf型事例及びIf型事例の一部を外延として認めること ができる子どもでは, Rf型焦点事例よりもIf型焦点事 例を提示したほうが効果的であろう。 上の仮説を作業仮説として言い換えれば次のようにな る。事前テストの図形分類課題において,正答率の高低 にかかわらず,正答した図形がRf型事例だけの学習者 には,Rf型焦点事例を提示したほうが事後の図形分類 課題の正答率が高くなるだろう;正答した図形がRf型 事例と一部のIf型事例を含む学習者には,If型焦点事 例を提示したほうが事後の図形分類課題の正答率が高く なるだろう。 これらの仮説を提案する際の根拠となる考えは次の通 りである。 幼児はRf型事例は既知だが,If型事例は未知あるい は部分的に既知であることが予想しうる。もしそうだと すると,図形概念の学習では,ルールの適用範囲を既知 のRf型事例から未知のIf型事例に広げることが教授目 標となる。そこで,実際に幼児が図形概念を学習する前 にどのような既有知識を持っているかを知ることが重要 になる。伏見らの報告(伏見・麻柄, 1980)によると, 分類課題で,多くの幼児が正三角形・正方形あるいは二 等辺三角形や長方形しか正しく分類できなかった。彼ら はRf型事例に属する図形をすでに知っていて,そのわ ずかな事例から等辺・等角にこだわった判断基準を形成 したために他の図形を正しく分類できなかったと考えら れる。このような子どもに対しては,彼らが既知である Rf型事例,即ち正三角形・正方形を用いれば,内包に 関しては間違っていたあるいは不完全であっても,外延 の分類に関しては正解であった既有知識を生かすことが できる一方で,子どもの正三角形 ・正方形が持つ等角性 ・等辺性にこだわった誤った判断基準を,三角形及び四 角形概念の判断基準となる曲がり角(頂点)の数に着目 させる時に,正しいルールに変換させることが可能にな るであろう。逆に,もしそれらの学習者に未知のIf型 事例である不等辺三角形・不等辺四角形を提示したとす ると,その提示された図形は子どものすでに三角形及び 四角形と認めている図形との聞に形の違いがかなり大き いため,子どもにはそのIf型焦点事例を三角形あるい は四角形と認めること自体が難しく,ルールの理解も妨 げられるであろう。 一方,正三角形・正方形などのRf型事例に加え多少

(4)

のIf型事例である不等辺三角形・不等辺四角形も正し く分類できる幼児もいる。彼らは前述の幼児のように正 三角形・正方形の等角性・等辺性に強くこだわっている のではないが,一見三角形らしくないあるいは四角形ら しくない図形に対しては,曲がり角の数を基準にして判 断することがまだまだしっかりできていないと考えられ る。このような子どもに対しては,子どもが納得できる If型事例である不等辺三角形・不等辺四角形を用いれ ば,外延の分類に関してはわずかに所有している貴重な 正しい既有知識を強化することができる一方で,迷って いた判断基準への確信が新ルールの導入と同時に高めら れ,見慣れていない形の三角形及び四角形に対しでも, ルールの適用することができるようになるだろう。逆 に,もしそれらの学習者に

R

f

型事例である正三角形・ 正方形を提示Lたとすると,曲がり角の数に着目すべき ことは強化されるが,わずかながら既知であったIf型 事例の不等辺三角形・不等辺四角形は無視される。その ため,強化された判断基準がそのIf型事例に関する一 部の既有知識と関連つけられ,照合されることがなく, 判断基準の適用範囲をIf型事例への広げることができ ないだろう。 3. 方 法 (1)被験者 仙台市内にある2つの保育所の 4歳から 5歳までの 子ども50名。 (2) 実験概要 実験開始の初日,まず,被験者に 5分間の事前調査 をした。その直後に, 5分間の事前テストを行った。被 験者全員の事前調査と事前テストが終わった後,実験組 を構成するために群分け及び組分けの作業を行った。即 ち,被験者の事前テストの結果に基づき,正答した図形 が

R

f

型事例のみであった

R

f

型事例群と,正答した図 形に

R

f

型事例のほかにIf型事例も少なくとも

1

つを含 んでいたIf型事例群に分ける。分けられた2群はさら にそれぞれ等質な2組に分けられ,合わせて A ・B ・C .Dという 4組になる。 2週間後,

R

f

型事例群のA組 には

R

f

型焦点事例でソレールを教示し,その対比群であ るB組にはIf型焦点事例で、ルールの教示を行った。同 様に,If型事例群のC組には

R

f

型焦点事例で、ルールを 教示し,その対比群であるD組にはIf型焦点事例で、ル ールの教示を行った。ルール教示の所要時間は15分で、 あった。その直後に,事後テストを行った。 (Fig.1参 照) (3) 手 続 き 事前調査,事前テスト,教示,事後テストという4 つのセッションをすべて個別に行う。 a. 事前調査 事前調査は計数の可否についての調査である。 三角形及び四角形のルールを学習する時に,図形の頂 点を数える必要があるので, 5本のベン(場合によって, 5冊の本)を子どもに見せ, Iベンが何本ある? 指で 数えてみて下さし、」と聞き, 5までの計数能力を調べ る。計数不可能なものは実験の対象児から除外される。 b. 事前テスト 事前テストは図形分類課題である。 麻柄ら (1982)が用いた14個のテスト図形を参考に し,また,図形の位置(正立,斜立,倒立)と形(等辺 ・等角,不等辺・不等角)を考慮した上で, 20個の図 形(三角形と四角形いずれも10個。その中に

R

f

型事例 8個,If型事例12個)を選び,それぞれ5cmx5 cmの カードに描く (Fig.2参照)。そして,それらを一枚ず つ子どもに見せ, Iこの形は三角形かな,四角形かな, それともどちらでもないのかな? わからない時はわか らないと言ってね」と質問する。 ノレールを教示する際に提示される

R

f

型焦点事例一図 形11・13とIf型焦点事例一図形8・12の4個を除く計 16個を採点対象にし,各図形の正答に 1点を与える。 なお, 0点あるいは15点以上の子どもは分析対象から除 外される。 c. 教 示 「まがり角3つあるのが三角形で,まがり角 4つある のが四角形だ」とし、う三角形及び四角形概念のルールを 使って,正しく図形を判断することができるようになる ことを教授目標とする。 それぞれの焦点事例は10cmX 10 cmのカードに描か れている。 A組には正三角形(図形11) と正方形(図 形13)を提示し, B組には不等辺三角形(図形 8) と不 等辺四角形(図形12)を提示する。同様に,

C

組には 正三角形(図形11) と正方形(図形13)を提示し, D 組には不等辺三角形(図形8) と不等辺四角形(図形 12)を提示する。なお,各組への教示内容は同一であ り,その内容は以下の通りである。 まず,実験者が焦点事例を示し,サインベンで角にし るしをつけながら, Iこうし、う形にはとがった曲がり角 があるね。この形は曲がり角がなん個あるかな,一緒に 数えてみましょう。そうだ, 3つだ。曲がり角 3つある

(5)

(連続) メ

│事問査│→│事前テスト│

[群分け] [組分け]

間隔 2週間 --

I

';f 一 心 一 市 ト ν-E ・ 、 ' レ 一 R f型焦点事例 ルール教示

(

1

5

分) 同 口 口 H ワ 臼 Fig. 1 実験流れの見取り図 のが三角形です。この形は曲がり角がなん個あるかな, 一緒に数えてみましょう。そうだ。 4つだ。曲がり角が 4つあるのが四角形なんだよ」と三角形及び四角形概念 のルールを教える。その後,子どもにベンをわたし,同 じ提示事例の頂点にしるしをつけさせてから,各図形の 頂点を数えさせ,ルールを確認する。 次に,焦点事例の2分のlの大きさの相似形を提示 する。そして,子どもに角にしるしをつけさせて,頂点 の数を数えさせてから,図形の名前を尋ねる。答えが間 違っていた場合には,前の手順をもう一度行い,頂点の 数を正確に数えた上で、答えを修正する。その後,焦点事 例の2倍の大きさの相似形を提示し,同じようにして, ノレーノレを学習させる。 最後に,ルールを覚えているかどうかを確かめるため にルーノレの想起を求める。 d.事後テスト ノレール教示の直後に,対象児全員に事前テストと同じ 手続きでその分類課題を行う。 3. 結果と考察 (1) 対象児の選択と実験群の構成 実験を進めていく中で,実験対象者に該当しない幼児 がし、たので,それらの幼児を対象から除外し,対象者を 選択した。その際,以下の2つの基準を用いた。①事 前調査で5までの計数ができた者;②事前テストで1 点から14点まで、の点数を得た者。従って,計数できな かった5人と,事前テストで.15点を得た1人を除く, 残り44人が実験対象児となった。対象児の平均年齢は 4才6カ月(レンジ:3才11カ月-4才11カ月)であっ た。 44人の対象児をさらに事前テストの結果から正答し た図形がRf型事例のみであった Rf型事例群と,正答 した図形にはRf型事例の他にIf型事例も少なくとも 1 つを含んでいたIf型事例群に分け, Rf型事例群を等質 なA組13人, B組12人に,If型事例群を等質なC組9 人, D組10人に分けた。 しかしベンや本などの馴染み深い具体的なものに対 しては計数がで、きたが,ルール教示中に馴染みのない抽 象的な“角"を数えることができなかった幼児が3人 いた。これら3人をさらに対象児から除いた。このた -

(6)

62-一一一一一~

(注1) 図形のそばに書いてある数字が提示順を示す。 (注

2

)

R

f

型焦点事例一一・・図形

1

1

1

3

,If型焦点事例..…図形

8

1

2

Fig.2 テスト図形 め,最終的には,

A

1

1

人,

B

1

1

人,

C

9

人,

D

(2) 各実験組の等質性について 組10人の構成になった (Table1)。 仮説の検証に際しては,まず,各実験組対の等質性が Table 1 事前テストの結果と焦点事例による4つ の組分け 一事前-"-テス- _トの-結菓-_ "_焦¥点事例

RF

型 If型

R

f

型事例のみ分類できる者 A(l1人) B(l1人) (Rf型事例群) Rf事例+多少(Ifの事If例事群例)も分 類できる者 C( 9人) D(10人) 確認される必要がある。各組の成績をTable2に示す。 Table 2に示したように,

R

f

型事例群の

A

B

組の事 前テストの平均得点はほぼ等しかった (A組 :3.5 ; B 組 :

3

.

3

)

,三角形と四角形の図形別に見ても,ほぼ等し くなっている(三角形 :A組2.5キB組2.7;四角形 :A 組0.9キB組0.7)0If型事例群のC とD組の事前テスト の 平 均 得 点 も ほ ぼ 等 し か っ た

(

C

組 :10.0 ;

D

組 : 10.1),三角形と四角形の図形別に見ても,ほぼ等しく

(7)

なっている(三角形 :C組6.5=D組6.5;四角形:C組 3.5キD組3.6)。従って, A組と B組, C組とD組はそ れぞれ等質とみなし得る。 (3) 事後テス卜の得点における実験組毎の差異について 本研究における仮説は iRf型事例のみを三角形・四 角形と認める子どもには,If型焦点事例よりもRf型焦 点事例を提示したほうが効果的であろう;Rf型事例及 びIf型事例の一部を三角形・四角形と認めることがで・ きる子どもにはRf型焦点事例よりもIf型焦点事例を提 示したほうが効果的であろう」といったものであった。 この仮説が妥当であるならば,実験結果は

i

A

組 の 事 後成績がB組よりも高く, D組の事後成績が C組より も高し、」というようになるはずである。ここでは事後テ スト得点で,そのことを確認してみる。各組の成績を示 しているTable2からわかるように,ルールを学習した A,B組は両方とも事後成績が伸びたが (A組:正答率 22%→54%; B組:正答率21%→31%),焦点事例条件 に有意な差が見られ, Rf型焦点事例を提示したA組の ほ う がB組 よ り も 得 点 が 高 か っ た (t=4.09,df= 18, p<.OOl)。同様に,ルールを学習したC,D組は両方と も事後成績が伸びたが (C組 : 正 答 率63%→74%;D 組:正答率63%→89%),焦点事例条件に有意な差が見 られ,If型焦点事例を提示したD組のほうが C組より も得点が高かった (t=2.44,df=19, p<.05)。 し か し A組の事後正答率が予想通りに B組の事後 正答率より高かったとは言え,教示を受けた後で、も,正 答率は54%と低かった。その原因を考えてみると,課 題の難易度が関係していると思われる。今回のテスト図 形のほとんどは麻柄ら (1982)が小学1年生及び幼稚 園年長児を対象とした実験で、用いた図形であった。麻柄 Table 2 各組の事前と事後の平均得点と正答率 Rf型事例群 If型事例群 A B C D pre post pre post pre post pre post 三(8角問形) (3201995 4 ) (651063%) (30249974) (43109226) (8601-.9956) (97019836) 8(615 01%)(9709 69%) 四(8角問形) (10019796) (4304 82%)(009 •• 9776) (Z118 32%) 4(314..9546) (5418..9646) (4316 55%)(7616901 6 ) Total(2312 •• 9456) (5814.9676) 2(311.943 6 ) (35219206) 1(6203.9306) 1(72149936) 1(60239416 ) 1(84199406 ) (16問) 注 : ( )内はSDを表す らの実験では,それらの図形の事前正答率は,小学生の 被験者では66%,幼稚園年長者では38%であったのに 対し,今回のRf型事例群の幼稚園年中児では22%に達 していなかった。このように事前正答率が低いことから 今回のテスト問題が幼稚園年中児には難しかったと考え られる。また,図形5・16・10のような図形判断を混 乱させやすい独特な“形"をしている図形も含んでいた ため,子どもがそれらの問題を“図形(四角形)"より は“実物(鉛筆・紙飛行機・ダイヤモンドなど)"とし てとらえてしまったことが多かった。つまり,子どもに はこれらのテスト問題の答えを正しく判断するのは困難 であったと思われる。 テスト問題には,各組の学習に用いた事例も含まれて いた。それらの提示事例にあたる図形の正答率を組ごと に見てみる (Table3)0

A

組では,ルールの教示で、提示 したRf型焦点事例である図形11・13の正答者率がどち らも事後では100%だったのに対し, B組で、はルールの 教示で提示したIf型焦点事例である図形8・12に対し てまだ一部の子どもが正答できなかった(正答者率はそ れ ぞ れ78%,67%であった)。このことは,予想してい たようにRf型事例のみを三角形及び四角形と認めてい る幼児にはIf型焦点事例が既有知識との聞にギャップ があるので,それを学習しにくいことを示しているとい える。また,前述したように今回の課題が困難であった ため, Rf型焦点事例の提示に対して高成績を示した組 でも,その学習結果を生かして,未知のIf型事例一図 形8・12へ適用することができた人はわす.かであった (正答者率はそれぞれ28%,18%であった)0C組では, Rf型焦点事例の正答者率は事前と同じ全部正解だった が,予想していたようにルールの適用範囲がIf型事例 ー 図 形8・12へと十分に広がらなかった(正答者率はそ れぞれ82%,73%であった

L

Rf型事例及びIf型事例の 一部を三角形及び四角形と認めるD組は,提示された If型焦点事例を完全に受け入れた(図形8・12とも正答 者率は100%であった)。 Table 3 焦点事例の各組の事前と事後の正答者率 Rf型事例群 If型事例群 A B C D pre post pre post pre post pre post 焦R点f事型例 図形118210089 89100 100 100 100 図形1382 100 78 89 100 100100100 焦I点f型事例 図形 8

28

o

78 64 82 60 100 図形14

18

o

67 55 73 60 100

(8)

Rf型焦点事例あるいはIf型焦点事例を受けた子ども が新しいルールを多くの問題に適用するようになったか どうか,あるいはどんな問題に適用することがで、きたか を分析するため, Rf型事例 (6コ)とIf型事例 (10コ) ごとに各組の平均得点と正答率を見てみる (Table4)。 Rf型事例群の場合では,

B

組と比べて,Rf型焦点事例 を受けたA組は事後テストでより多くのRf型事例にル ールを適用することができた一方で,多少のIf型事例 も 分 類 で き る よ う に な っ た (A組:Rf型事例58%→ 97%, If型事例0→28%;B組:Rf型事例55%→65%, If型事例O→11%)0 If型事例群の場合では, C組と比 べて,If型焦点事例を受けたD組のほうがより多くの If型事例にルールを適用することができるようになっ た

(

C

組 :47%→64%;

D

組 :46%→81%)。 要 す る に,それぞれの適切な焦点事例を受けた学習者が量的に より数多くの分類課題を解決した一方で,性質の異なっ た問題への解決もより進んでいた。 (4) 誤答分析による仮説の検証 事前テストから事後テストへの得点の伸びの分析の結 果では,本研究の仮説が支持された。ここでは,テスト の誤答パターンの分析によって,さらに本研究の仮説の 傍証を得ることを試みる。 事前及び事後テストにおける誤答反応の分析を行っ て,以下の5つの誤答パターンを得た。 誤答a 三角形を「四角形」と答える; 誤答 b:四角形を「三角形」と答える; 誤答c :

r

なんでもない」と答える* 誤答 d:

r

わからなし、」と答える; 誤答e:形の似ている物の名前を答える料。 各誤答パターンの違いを検討すると,次のような解釈 が可能である。誤答a'bは分類はするが,まがり角の 数に着目せず,正答に至らない水準であり,誤答c・d .eは分類もぜず,図形の名前も答えられない水準であ Table 4 Rf型事例とIf型事例ごとの各組の事前 と事後の平均得点と正答率 Rf型事例群 If型事例群 A B C D pre post pre post pre post pre post Rf(6型問事)例 3.5 5.8 3.3 3.9 5.3 5.5 5.4 5.9 58% 97% 55% 65% 90% 91% 90% 98% If(型10事問例)

2.8

1.1 4.7 6.4 4.6 8.1 28% 11% 47% 64% 46% 81% Table5 各組の事前と事後の各誤答パターンの割 合(%) 誤答a 誤答b 誤答c 誤答 d 誤答e pre post pre post pre post pre post pre post 事R例f型群 A 10 8 11 1023 11 22 11 12 6 B 9 8 12 11 25 20 20 1713 13 事If例型群 C 7 4 17 12 5 3 2 2 6 5 D 9 3 14 7 6

3

5 1 total 9 6 14 10 14 8112 7 9 6 ると考えられる。 また, Table 5に示したように,事前では各反応の割 合がほぼ等しい 2組対において,事後では異なる反応 を示す傾向があった。すなわち, B組と比べて, A組 の方は特に誤答c・d.eの人数が大幅に減少した。ま た,同じ傾向の変化はC組と D組にも見られた。 D組 の誤答パターンはC組に比べると誤答a.bに集中し た。このように誤答c・d.eパターンが減少したこと から,事後では, A組は B組よりも,また D組は C組 よりも課題解決の水準が上になったと判断できる。 このように得点及び誤答パターンの事前一事後の推移 からA組の学習が B組よりも進み, D組の学習が C組 よりも進んだことが見てとれる。したがって, Rf型事 例のみを三角形及び四角形と認める学習者には,If型 焦点事例よりもRf型焦点事例を提示した方が効果的で、 あり, Rf型事例及びIf型事例の一部を三角形及び四角 形と認めることができる学習者には, Rf型焦点事例よ りもIf型焦点事例を提示した方が効果的で、あるという ことが示されたといえる。

4

.

討 論 本研究では,学習者の内因としてどのような図形を概 *質問に従って,“どちらでもなし、"と答えた子どもは 1人もいなかった。実験者は“なんでもなし、"と答 えた子どもにさらに“つまり,どちらでもないんで す か ?"と尋ねたが,結局,ほとんどの子どもが相 変わらず“なんでもなし、"と再度答えた。 料例としては,直角三角形である図形4をサンドウイ ッチ,台形である図形 2を新幹線,ひし形である図 形10をダイヤモンドなどとすることであった。ま た,誤答eを示した子どもの中には,言語能力の不 足のためか,ボディランゲージ,即ち,身体の動作 を通じて答える子どももいた。実験者は子どもの動 作から彼らが表現した物を推測した。

(9)

念の外延として認めるかとし、う事前の学習到達度を取り 上げ,その違いによって,援助の際に用いる図形を違え ることが有効であることを確認で、きた。本研究で確認で きた観点からすれば,従来の麻柄らの研究の結果はどの ように再解釈できるだろうか? ここではそのことを試 みる。 まず,If型焦点事例の提示効果があった実験(麻柄 ・伏見, 1982)を1回目の実験とし,If型焦点事例の 提示効果がなかった実験(伏見・麻柄, 1986)を2回 目の実験とする。 1回目の実験の事前テストで用いられ た問題は, Rf型事例とIf型事例とに分けると, Rf型 事例3個とIf型事例7個を含む10問であった。そして, 報 告 さ れ た 平 均 正 答 率 よ り 高 い 正 答 率 を 示 し た 図 形4 個のうち, 3個はRf型事例で, 1個はIf型事例であっ た。この結果からこの時の被験者はRf型事例及び一部 のIf型事例も三角形・四角形と認めていたと考えられ る。 2回目の実験の事前テストの問題は, Rf型 事 例 4 個とIf型事例8個を含む12問であった。そして,報告 された平均正答率より高い正答率の図形は4個のRf型 事例の中の2個だけであった。この結果からこの時の 被験者はRf型事例のみを三角形・四角形と認めていた と考えられる。 したがって, 2実験の結果の違いを再解釈してみると, l回目の実験では,被験者はRf型事例をわかったうえ に,多少のIf型事例もわかっていたので,Rf型焦点事 例よりもIf型焦点事例の方が有効であったと考えられ る。これに対して, 2回目の実験では,被験者はRf型 事例しかわかっていなかったので,If型焦点事例の提 示は効果がなかったのではないかと考えられる。 麻柄-伏見の一連の研究では,“等辺・等角への「こ だわりJ"が内因として取り上げられ,その強弱によっ て教授の際の焦点事例の効果が異なると解釈されたが, 上述のようにRf型事例とIf型事例に対する外延として の事前認識の違いという要因化によって,結果を解釈可 能である。彼らの2つの実験では,事前テストは実施 されていたものの,正答率でしか群の等質性は保証され ていなかったし, Iこだわり」という内因は結果の解釈 として提出されたに過ぎなかった。「こだわり」という 内因化よりは,本研究で提案した学習到達度としての外 延の認識の違いとし、う要因化の方が,その測定や操作の 上で容易であると考えられる。今後は本研究で取り上げ たような学習到達度という内因の検討とそれによる実験 群・統制群の構成を考慮することが必要とされるといえ よう。一方,本研究は事前の正答率の高低については重 視していなかった。したがって,学習者の内因として事 前テストにおける全正答率に加え,外延の認識の度合い をも考慮した実験を立案することが必要となろう。 文 献 1. 麻柄啓一・伏見陽児 1982 図形概念の学習に及ぼ す 焦 点 事 例 の 違 い の 効 果 教 育 心 理 学 研 究 30, 57-61頁 2. 伏見陽児・麻柄啓一 1986 図形概念の学習に及ぼ す 発 問 系 列 の 違 い の 効 果 東 北 教 育 心 理 学 研 究 1, 1-9頁 3. 伏見陽児 1990 焦点事例の違いが児童の図形概念 の 学 習 に 及 ぼ す 効 果 シ オ ン 短 期 大 学 研 究 紀 要 第 30号, 121-130頁 4. 伏見陽児・麻柄啓一 1993

W

授業づくりの心理学』 国土社,103-104頁 5. 伏見陽児・麻柄啓一 1980幼児の学習における教 材の劇化およびストーリー化の効果教育心理学研究 29,132-136頁 付 記 この実験を行うにあたり実験の実施にご協力頂いた保 育所の園児の皆さんと職員の皆さんに感謝いたします。 また本稿の作成に貴重な助言を頂いた東北大学教育心理 研究室の皆さん,及び論文を通じて様々な示唆を与えて くださった麻柄啓一,伏見陽児両先生,直接ご指導を賜 りました細谷純先生,宇野忍先生に深く感謝いたしま す。 -

(10)

66-The A

p

p

l

i

c

a

b

l

e

C

o

n

d

i

t

i

o

n

s

o

f

I

f

-

t

y

p

e

I

n

s

t

a

n

c

e

s

"

and

“Rf

-

t

y

p

e

I

n

s

t

a

n

c

e

s

"

f

o

r

H

e

l

p

i

n

g

C

h

i

l

d

r

e

n

'

s

L

e

a

r

n

i

n

g

o

f

t

h

e

T

r

i

a

n

g

l

e

and Q

u

a

d

r

i

l

a

t

e

r

a

l

Concept

Yuhua Hu

There are two types of focus instances to helping children's learning of the triangle and quadrilateral concept in which common critical attributes are defined as“自gureswith three vertexes are triangles and those with four vertexes are quadrilaterals". The one called “Rf-type instances" such as equilateral triangles or isosceles triangles and squares or rectangles particularize the common critical attributes of triangles and quadrilaterals with equality of angles and sides. The other one called“If-type instances" such as scalene triangles and scalene quadrilaterals just generally represent the common criteria of triangles or quadrilaterals. The purpose of this study was to investigate whether there is different applicable condition of each type of in -stances on the basis of the difference of children's prior readiness, in other words, their different understanding about extension of the figure concept. 50 pre-school children participated in this experiment. This experiment consisted of four sections. a) Interview: This was designed to a伍rmwhetherthe children have the numerating ability which is neccessary to study rule of the triangle and quadrilateral concept. Children who could not numerate up 5 were excluded from the expen立lent.

b) Pretest: Children were given 20 figures (8 Rf-type instances, 12If-type instances) andwere asked whether the figures belonged to the triangle or the quadrilateral concept. According to their performance, the children were divieded into two groups:Rf-group who gave correct answers only for the Rf-type instances, andIf-group who gave correct answers not only for the Rf-type instances but also at least one for theIf-type instances. On the basis of scores, Rf-group was further divided into 2 equal groups: A and B, and If-group was further divided into 2 equal groups: C and D.

c) Instruction: Children were all taught the same rule of the triangle concept and the quadrilteral concept-“figures with three angles are triangles, and those with four are quadrilaterals", but A and C were presented by a equilateral triangle and a square, and B and D were presented with a scalene triangle and a scalene quadrilateral.

d) Posttest: The same procedures as used for the pretest were adopted.

The results supported the hypothesis that each type of instances has its different applicable condition according to children's prior knowledge about the figure concept: The effect of Rf-type instances is better than that ofIf-type in -stances for the children who can only realize some of the Rf-type instances, on the contrary, the effect ofIf-type in -stances is better than that of Rf-type instances for the chilren who not only realize some of theRf-type instances but also some of the If-type instances. key words: conceptuallearning, Rf-type instances, If-type instances

参照

関連したドキュメント

これらの協働型のモビリティサービスの事例に関して は大井 1)

[r]

について最高裁として初めての判断を示した。事案の特殊性から射程範囲は狭い、と考えられる。三「運行」に関する学説・判例

2.1で指摘した通り、過去形の導入に当たって は「過去の出来事」における「過去」の概念は

条例第108条 知事は、放射性物質を除く元素及び化合物(以下「化学

3 学位の授与に関する事項 4 教育及び研究に関する事項 5 学部学科課程に関する事項 6 学生の入学及び卒業に関する事項 7

斜面の崩壊角度については,添付第 2-20 図に示すとおり,安息角と内部摩

「学部・学年を超えた参加型ディスカッションアクティビティ」の事例として、With café