インド自動車部品産業における中小企業の発展 (分
析リポート)
著者
内川 秀二
権利
Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア
経済研究所 / Institute of Developing
Economies, Japan External Trade Organization
(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp
雑誌名
アジ研ワールド・トレンド
巻
183
ページ
52-58
発行年
2010-12
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
URL
http://hdl.handle.net/2344/00004362
インドでは一九八〇年代から オートバイと乗用車への需要が急 速に伸びてきた。それに応じて急 速に拡大していく自動車部品市場 への中小企業の参入が相次いだ 。 主要部品では外国企業と外資・技 術提携を結んだ大企業が大きな シェアを占める一方で、一九八〇 年、九〇年代に参入した中小企業 が成長してきた。ところが、二〇 〇〇年代に入ると、自動車部品の 需要が急速に伸びているにもかか わらず、 新規参入が減少していく。 技術レベルが向上したために、参 入に必要な初期投資が増え、参入 障壁になったと考えられる。 他方、 安価な交換部品を生産してきた零 細企業が激しい価格競争に直面 し、雇用労働者数が九人以下の事 業所数は減少した。本稿はインド 自動車部品産業が発展していく過 程でどのような産業構造が形成さ れてきたのか、またどのように技 術が波及していったのかを明らか にする。 インドの零細・中小企業開発法 では機械への投資額が二五〇万ル ピー以下が零細企業、二五〇万ル ピーから五〇〇〇万ルピーが小企 業、五〇〇〇万ルピーから一億ル ピーが中企業と定められている 。 しかし、既存の工業統計は従業員 数によって区分されているため 、 本稿では従業員数が九人以下を零 細企業、一〇人から一〇〇人まで を小企業、一〇一人から三〇〇人 までを中企業とする。
●自動車部品産業
の
発展
インド乗用車産業の歴史を振り 返ると、一九八三年にスズキ自動 車が国営マルチと設立した合弁企 業が生産を開始したのが転換点と なった。それ以前は、乗用車の生 産量が少なかったため、組立メー カーは主要部品を自社内で生産 し、重要ではない部品のみを外部 から調達する傾向が強かった。と はいえ、主要部品を生産するメー カーが存在しなかったわけではな い。 一九五〇年代にはボッシュ ︵ B osc h︶やゴエッツ︵ G o e t ze ︶といった外資系企業がイン ドで生産を開始している。一九六 〇年代に入ると T V S グループや カリヤニ・グループのように現在 は欧米企業を買収し多国籍企業と なっている部品メーカーが外資 ・ 技術提携を結んで先進国企業から 技術を導入し、生産を開始した。 マルチは操業開始当時、部品を すべて日本から輸入していた。当 時インドはローカル・コテンツ規 制を外資系企業に課しており、マ ルチも政府と交わした国内調達比 率の目標を達成するために、国内 調達を増やす必要に迫られてい た。そのため、スズキ自動車は日 本で取引をしている部品メーカー にもインドに進出するよう要請し た。同時にマルチは、既存のイン ド企業と外資系企業からの部品調 達も増やしていった。マルチに部 品を供給している部品メーカー は、生産の増大とともに、一部の 部品を外部から調達した。こうし てマルチを中心に一次下請と二次 下請からなるピラミッド型の下請 関係が成立した。一九八〇年代は 外国直接投資のみならず国内の民 間投資にも規制があり、民間企業 の自由な投資が認められていな かった。小型乗用車市場はマルチ のほぼ独占状態にあり、生産が注 文の増大に追いついていかないよ うな状態となった。この独占状態 を背景に、マルチは下請企業に対 して技術および資金面での支援を 行い 、下請企業の育成を図った 一方で、マルチは部品を供給して いる下請企業を価格、品質、納期 の観点から厳しく管理し、評価に 応じて注文量を変化させた。下請 企業はマルチへの売り上げを増や内
川
秀
二
インド自動車部品産業における中小企業の発展
すためには、コスト削減、品質向 上、納期の厳守に向けて恒常的に 努力しなければならなかった。 オートバイ市場においても一九 八〇年代に外資提携・技術提携に 基づき 、ヒーロー ・ホンダやバ ジャージが生産を急速に伸ばして いく。生産の増大とともに、これ らの企業を中心とした下請関係が 確立していった。これらの企業も 下請企業の育成と同時に、評価に よる管理を行った。 一九九一年から経済改革のなか で外国直接投資に対する規制が緩 和され、国内民間投資に対する規 制は徐々に撤廃された。このよう な状況の中でホンダ、トヨタ、現 代、フォード、 GM といった外資 系組立メーカーが乗用車市場に相 次いで参入した。これらの外資系 企業はインド進出と同時に自国の 下請企業にも進出を要請した。現 代自動車の場合 、韓国部品メー カー一七社が進出した。現代自動 車はこれらの企業から主要な部品 を調達すると同時に、インドおよ び外資系部品メーカーからも調達 を開始した 。これらの部品メー カーの中にはマルチから技術支援 を受けていた企業も含まれてい る。 自動車組立メーカー間の競争が 激しくなり、市場シェアが低下す る中で、マルチは調達戦略の変更 を迫られた。一九八〇年代におい てマルチは約四〇〇社から部品を 調達していたが、二〇〇〇年代に は調達先が二二〇社に絞られてい る。この間にマルチの生産台数は 増大しているので、優秀な下請企 業に集中的に発注するようになっ たことが分かる。現に、主要な自 動車部品において少数の大企業が 大きなシェアを占めている。二〇 〇三年度から二〇〇六年度までの 間 、クランクシャフトではバー ラット ・ フォージが六〇 % 以上を、 燃料噴射装置ではボッシュが七 五 % 以上を、ピストン・リングで はゴエッツが二五 % 以上を占めて いた。これらの企業は複数の組立 メーカーに部品を供給していた。 乗用車の年間生産台数の増大 は、一九九〇年代に入ってさらに 加速する。一九九四年度の二六万 台から二〇〇八年度の一六二万台 へと再び急増している。オートバ イの年間生産台数も一九九四年度 の六五万台から二〇〇八年度の六 八〇万台へと増大している。この 結果、自動車部品の生産額は、二 〇〇一年度の四五億米ドルから二 〇〇七年度の一八〇億米ドルへと 伸びた。●
中小企業
の
下請関係
へ
の
参入
本稿において 、﹁下請﹂は購入 者と合意した仕様の部品を長期間 供給する契約と定義する。下請と いう言葉には否定的なニュアンス がこめられることもあるが、ここ では技術移転の経路と捉える。こ こでいう長期間という意味は、将 来にわたり継続されるということ を意味しない。組立メーカーは複 数のモデルを生産し、定期的にモ デル・チェンジを行う。新しいモ デルのための部品の仕様と価格 は、開発段階で決められる。重要 な部品については、組立メーカー は部品メーカーと共同開発を行 う。一度下請企業が新モデルの部 品生産を受注すると、契約は通常 そのモデルの生産が続く限り、継 続される。しかし、さらに新しい モデルが導入されるときに、同じ 下請企業が旧モデルと同様の部品 を受注するという保証はない。 下請企業は親企業から︵一︶一 定期間内のコスト削減を反映した 部品価格の引き下げ 、︵二︶部品 の品質維持︵欠陥製品を供給しな い︶ 、︵三︶納期の厳守、を求めら れる。他方で、親企業は自社のエ ンジニアを派遣したり、下請企業 の従業員に対して研修を実施する ことで、下請企業の生産性向上を 支援する。下請企業は、特定の親 企業と取引を継続することで、技 術を習得できる。自社が製造した 部品の欠陥についての情報や品質 を向上させるための親企業からの アドバイスが下請企業に蓄積さ れ、それが下請企業の技術向上に つながるのである。また、親企業 と下請企業の関係は、排他的では ない。むしろ、インドにおいては 一部品メーカーが複数の企業に部 品を供給していることが圧倒的に 多い。 発展途上国において、組立メー カーと部品メーカーの間に下請関 係が発展するためには、いくつか の条件が満たされなければならな い。第一に、部品一品当たりの需 要が規模の経済性を享受できるレ ベルまで増大することである。外 資系組立メーカーは部品の輸入価 格と国内調達価格を比較する。国 内組立メーカーは調達価格と自社 内での生産価格を比較する。自社 内で生産した方が品質管理と納期 の調整は容易であるため、調達価 格はより安価でなければならな。 は、一九八〇年、九〇年代に中小 企業の自動車部品産業への参入が 相次ぎ、これらが一次・二次下請 企業となったことである。 中小企業の参入状況を調べるた めに、インド自動車部品製造業者 協会の発行した二〇一〇年版﹁バ イヤーズ・ガイド﹂を分析してみ る。同協会には四輪・二輪の部品 およびトラクターの部品メーカー も加盟している。協会への加盟は 任意であるため 、すべての部品 メーカーが加盟しているわけでは ない。このデーターに偏りがある のは確かであるが、二輪および四 輪組立メーカーが調達先を選定す る際に、同協会のメンバー・リス トを参考にすることを考えると 、 同協会のメンバーが一次・二次下 請企業の趨勢を表していると考え ることができる。二〇一〇版では 生産開始年と雇用人数の両方が記 載されている企業が五六七社あ る。これを生産開始年代別に整理 すると、図 1 のようになる。一九 八〇年、九〇年代にはそれぞれ一 五〇社を超える新規参入があっ た。 中小企業が成長していること は 、﹁バイヤーズ ・ガイド﹂の分 析から分かる。二〇〇五年版と二 〇一〇年版を用いて従業員数を比 較してみると、データーが比較可 能な三五二社のうち二〇七社が従 業員を二〇 % 以上増やしている 。 二〇一〇年における規模が 小 ・ 中 ・ 大企業のいずれの場合にも五五 % 以上の企業が従業員を五年間の間 に二〇 % 以上増やしている。つま り、一九八〇年、九〇年代に参入 した中小企業は二〇〇〇年代に成 長している。中には大企業となっ たものもある。 ところが、二〇〇〇年代に入る と、需要が急増しているにもかか わらず、新規参 入は四六社にま で 減 少 し て い る。さらに、二 〇〇〇年代に参 入した四六社の うち小企業は一 二 社 に 過 ぎ な い。これは二〇 〇〇年代におい ては小企業が参 入するのが難し くなったことを 示している。 では 、一次 ・ 二次下請企業の 関係はどのよう になっているのであろうか。二〇 一〇年版 によると、二次下請企業三六三社 のうち三〇九社が一次下請企業と して組立メーカーにも供給してい る。一次と二次の関係は硬直的な ものではなく、ビジネス・チャン スに応じて、各部品メーカーが柔 軟に対応していることが伺える。 外資系組立メーカーは研究・開 発と投資コストを節約するため に、インド以外で生産している既 存のモデルを、あるいは若干の修 正を加えたモデルを導入すること 200 150 図1 生産開始年代ごとの従業員数別企業分布(2010年)
インド自動車部品産業における中小企業の発展
が多い。そのため、新モデルの導 入当初は部品の輸入が増える︵図 2 ︶。二〇〇〇年代において四輪 部品の輸入が急増しているのは 、 このためである。他方で、部品の 輸出も急増している。二〇一〇年 版﹁バイヤーズ・ガイド﹂による と、インド自動車部品製造業者協 会の加盟企業五八五社のうち二二 六社が外国の組立メーカーに、一 九七社が外国の部品メーカーに部 品を供給している。さらに、一八 一社が外国の交換部品市場に輸出 している。これらの輸出企業には 中小企業が数多く含まれている 。 これらの企業は生産量が比較的少 ないモデルの部品を生産してお り、ニッチ市場を対象とすること で輸出競争力を維持している。イ ンドの中小企業による輸出が伸び ていることは、これらが価格と品 質の面で国際競争力を持っている ことだけではなく、マーケティン グ能力も併せ持つことを示してい る。●衰退す
る
零細企業
インド自動車部品製造業者協会 のメンバー以外にも 多くの零細・小企業 が国内向け交換部品 を生産している。ま た、自動車部品メー カーから熱処理や鍛 造などの工程を請け 負う零細・小企業が 存在する。これらの 企業については事例 研究ある。 アワスティ他は二 〇〇〇年代末にパン ジ ャ ブ 州 で 調 査 を 行っている。零細お よび中小企業一八三 社のうち、四九社が 国内および外国の組立メーカーの 一次・二次下請業者として部品を 供給するか、あるいは外国の交換 部品市場に輸出を行っている。零 細企業一〇六社を含む残りの一三 四社が、国内の交換部品市場に供 給している。両者の間の技術格差 は、二〇〇六年における機械への 投資額の差から見て取れる。前者 の投資額は一億ルピーに達してい るのに対し、後者はわずか一二〇 万ルピーに過ぎない。技術水準の 格差は品質の差となって表れる 。 前者の返品率は〇・三五 % である が、後者の場合には一〇・五 % と なっている。また、この事例研究 によると一次・二次下請業者は製 品の三五 % を国内交換市場にも供 給している。 クマールは、チェンナイ地域で の事例研究に基づき、自動車部品 メーカーを︵一︶一次下請企業と して組立メーカーに供給している 大企業 、︵二︶二次下請企業とし て大企業に供給している中企業 、 ︵三︶国内交換部品市場に供給し ている零細・小企業の、三種類に 分類している。零細・小企業は物 品税を減税される優遇措置を受け ているが、 厳しい競争に晒されて、 長期的観点からすると企業の利益 を損ねる水準にまで販売価格を引 き下げざるを得ない状況に追い込 まれている。 図 3 はインド自動車部品産業の 構造を図式化したものである。著 者は二〇一〇年四月から六月にデ リー近郊の従業員数四〇〇人以下 の企業一七社に対してヒアリング を行った。対象企業の中には外国 の交換部品市場への輸出に特化し ている企業が三社あったが、残り の一四社は国内の組立メーカーと 部品メーカーに供給している一 次・二次下請企業であった。一七 社のうち六社は設立当時の従業員 数が九人以下の零細企業であった が、現在は組立メーカーの下請企 業になっていた。さらに、この六 社のうち一社を除き、五社は一九 八〇年以前に設立されており、現 在は二代目、三代目の創業者家族 が経営を行っている。新世代の経 営者は十分な教育を受けており 、 生産工程と経営についての知見を 有している。現在の零細企業の経 営者の多くは、労働者として働き ながら習得したスキルの基づき生 産を行っており、十分な資金がな いこともあり、技術革新に追いつ いていくのは難しい。 国内の交換部品市場は、乗用車 2500 2000 1500 1000 500 0 1999年度 2000年度 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 (100万米ドル) 四輪部品の輸入(HS コード8708) 四輪部品の輸出(HS コード8708) 二輪部品の輸出(HS コード8714) 図2 インドにおける自動車部品の輸出入 (出所)インド商工業省ホームページの輸出入データー・バンク (http://commerce.nic.in/eidb/default.asp)より著者作成。問題は、 % 、非ブランド部品 が一八 % 、輸入部品が三 % であっ た。消費者が価格よりも品質を重 視するようになったため 、組立 メーカー販売部品のシェアが増え る一方で、非ブランド部品のシェ アが減少する傾向にある。 つまり、 零細企業に対する需要が縮小して いるのである。 インドの工業統計では、従業員 数が一〇人以上の企業が組織部 門、九人以下の企業が未組織部門 として分類され、前者は工業統計 表、後者は全国標本調査の対象と なっている。表 1 は組織部門と未 組織部門のうち従業 員数が六人から九人 の企業について自動 車・同部品産業︵四 輪︶の事業所数と粗 付加価値の成長率を 全国標本統計が実施 された年度に基づき 計 算 し た も の で あ る。注意しなければ ならないことは、産 業分類が一九九八年 に大幅に改定され 、 一九九八年度以降は 自動車修理工場も自 動車産業に含まれる ようになったため 、 事業所数と粗付加価値の成長率が 過大に評価されていることであ る。現に組織部門いついては一九 九七年度までは事業所数が二〇〇 〇以下であったにもかかわらず 、 一九九八年度以降は二六〇〇以上 に増大している。重要な点は、二 〇〇〇年度から二〇〇五年度の間 に組織部門の粗付加価値が年率で 二四・五 % も増大しているにもか かわらず、未組織部門は六 % しか 成長しておらず、事業所数が減少 していることである。ここから激 しい競争の中で、零細企業が淘汰 されていると判断できる。
●
自動車部品産業
に
お
け
る
技
術進歩
大企業が技術を習得していく経 路として 、︵一︶組立メーカーと の共同開発 、︵二︶下請契約に基 づく特定の組立メーカーとの取 引、 ︵三︶自社内での研究・開発、 ︵四︶外資 ・技術提携による先進 国企業からの技術の導入 、︵五︶ 先進国部品企業の買収、が考えら れる。 外資系組立メーカーとの共同開 発は国際水準の技術を導入するた めの絶好の機会である 。しかし 、 この機会は重要部品を生産する一 部の企業に限られている。既に述 べたように、下請企業にとって下 請関係を締結するメリットは、取 引組立メーカーからの価格、 納期についての条件を満たすよう に努力する中で、結果として技術 が社内に蓄積されることである 大企業は研究 新製品を開発するだけでなく、ラ イバル企業の製品を分析したり コスト削減と品質向上につながる 生産方法を研究している。 大企業の多くは過去に、または 現在においても先進国企業と外 資・技術提携を締結して技術を導 入している。先進国市場において 多国籍企業は製品開発に膨大な資 金を投入し、技術革新を進めてい る。インド企業が多国籍企業と対 等に技術革新を進めていくだけの 資金はない。先進国で既に普及し ているが、インド市場では優位に 立てる技術を購入し、研究・開発 に必要な時間と資金を節約するこ とで、製品開発コストを引き下げ ている。外資提携は輸出先の拡大 につながることもある。先進国の 部品企業は価格競争で優位に立て なくなった市場を提携先のインド 企業に譲り、技術指導料をかせぐ 戦略をとる場合がある。インド企 零細企業 供給 ギャップ 供給 大企業 および 中小企業 一次下請部品メーカー 二次下請部品メーカー 輸出市場 国内交換部品市場 組立メーカー (出所)著者作成。インド自動車部品産業における中小企業の発展
業にとっては、インド市場で優位 に立てる技術が導入できると同時 に輸出市場を確保できる。著者が 行ったヒアリングの中で、このよ うな事例があった。しかし、 外資 ・ 技術提携は安定したものではな い。先進国企業が戦略を変更する ことで、契約が更新されない場合 もある。あるインド部品メーカー は納入先の外資系組立メーカーか ら自国内で下請関係にある企業を 技術提携先として紹介され、技術 提携を締結した。その後、インド の部品需要が急速に拡大したた め、提携先の企業がインド市場へ の進出を決定し、提携契約が更新 されなかった 。外資系組立メー カーは従来のモデルについてはイ ンド部品メーカーからの調達を継 続したが、新モデルについては新 たに進出した外資系部品メーカー から調達を開始した 。この結果 、 インド部品メーカーの外資系組立 メーカーへの供給は急減した。 T V S グループのスンダラム ・ ファスナーは二〇〇三年にイギリ ス企業を買収した。現在、同企業 は五カ国で操業している 。また 、 カリヤニ ・ グループのバーラット ・ フォージは二〇〇四年にドイツ企 業を、二〇〇五年にアメリカ企業 を買収している。これらのグルー プが先進国企業を買収する目的 は、買収先に蓄積された技術を吸 収することにある。 中小企業が技術を習得していく 経路として 、︵一︶特定企業との 取引を継続することで習得される 技術とくに納入先からの指導およ び提案 、︵二︶おもに逆エンジニ アリングによる研究・開発、 ︵三︶ アフターサービスとして実施され る機械納入業者によるトレーニン グ、 ︵四︶業界団体や組立メーカー によるクラスター開発プログラ ム 、︵五︶コンサルタントによる 指導が考えられる。これらの五点 は著者が実施したヒアリングの中 で中企業の経営者によって指摘さ れたものである。 大企業の場合と同じく、中小企 業も親企業との下請契約のもとで 取引を継続することによって技術 や経営ノウハウを吸収することが できる。組立メーカーや大手部品 メーカーはサプライ・チェーンを 管理するために、自社のエンジニ アを下請企業に定期的に派遣し 、 工場のレイアウトから生産管理や コスト削減の方法まで様々な点に ついて指導を行っている 。また 、 中小企業が納品した製品について のフィードバックも重要な情報と なる。ヒアリング対象企業の経営 者の多くが、親企業からのアドバ イスを高く評価していた。中企業 は研究・開発に十分な資金をつぎ 込める余裕はない。大企業の製品 を分解して、 分析することが研究 ・ 開発の中心となる 。コンピュー ター数値制御の機械が普及したこ とで、生産現場で労働者によって 発揮される技能の余地が狭まっ た。機械の操作方法は、各企業の エンジニアが機械を納入した業者 が行う研修に参加することで習得 されている。日本の生産現場では 熟練工が数値を入力するが、イン ドではエンジニアの仕事となって おり、労働者は製品の取り外しの みを行う。親企業からのアドバイ スと並んで評価されているのが 、 業界団体や組立メーカーが行うク ラスター開発プログラムである 。 これは特定地域の中小企業が集ま り、経営者がお互いの工場を訪問 し 、コメントをするものである 。 自動車部品は多岐にわたるため 、 用いられている機械設備や技術は 異なるが、生産マネージメントに ついては共通するものがあり、刺 激を受けているようである。ヒア リング対象企業の中には経営コン 表1 部門別事業所数および粗付加価値の成長率(%) 1989年度∼ 1994年度 1994年度∼ 2000年度 2000年度∼ 2005年度 組織部門 事業所数 1993年度粗付加価値 2.9 7.7 9.0 4.8 2.8 24.3 未組織部門 (従業員数6人∼9人) 事業所数 1993年度粗付加価値 -8.8 -14.7 29.9 29.4 -2.4 6.0 (出所)組織部門、中央統計局、工業統計表 未組織部門、全国標本調査局、全国標本調査、45、51、56、62ラウンド・ プーネおよびアー チェーンに入ることで、 一次 ・